特許第5739757号(P5739757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739757
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   H01R13/42 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-158292(P2011-158292)
(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公開番号】特開2013-25959(P2013-25959A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】赤木 洋介
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−050018(JP,A)
【文献】 特開2010−118150(JP,A)
【文献】 特開平08−227750(JP,A)
【文献】 特開2001−332335(JP,A)
【文献】 特開2003−045546(JP,A)
【文献】 特開2013−008572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
H01R 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング本体と、
前記ハウジング本体に形成された部品収容空間に挿入され、前記ハウジング本体に装備された部品係止手段によって挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決め可能な挿入装着部品と、を備えるコネクタであって、
前記挿入装着部品は、その外側壁の一方の面に装備されて当該挿入装着部品が前記仮係止位置に移動したときに前記部品係止手段と係合して前記挿入装着部品の挿入方向への移動を規制する仮係止部と、外側壁の他方の面に装備されて当該挿入装着部品が前記本係止位置に移動したときに前記部品係止手段と係合して前記挿入装着部品の挿入方向への移動を規制する本係止部と、を備え、
前記部品係止手段に係合した前記仮係止部に作用する押圧荷重と、前記部品係止手段に係合した前記本係止手段に作用する押圧荷重が、互いに逆向きになることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング本体は、前記外側壁の一方の面に対向する第1対向壁面と、前記外側壁の他方の面に対向して設けられ前記第1対向壁面との間に前記外側壁を前記挿入装着部品の挿入方向に移動自在に挟む第2対向壁面と、前記第1対向壁面に装備されて前記挿入装着部品が前記仮係止位置に移動したときに前記仮係止部と係合する第1の部品係止手段と、前記第2対向壁面に装備されて前記挿入装着部品が前記本係止位置に移動したときに前記本係止部と係合する第2の部品係止手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記仮係止部及び本係止部は、前記外側壁の表面から板厚方向に突出した突起で、前記挿入装着部品の挿入方向に位置をずらして配置され、
更に、前記仮係止部は前記第1対向壁面への当接によって前記本係止部の前記第1対向壁面側への撓み変位を規制し、前記本係止部は前記第2対向壁面への当接によって前記仮係止部の前記第2対向壁面側への撓み変位を規制することを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング本体と、前記ハウジング本体に形成された部品収容空間に挿入されて挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決め可能な挿入装着部品と、を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子収容孔に装着された端子金具の位置決め、或いは二重係止のために、別体の部品がハウジング本体に挿入装着されるコネクタが各種開発されている。
【0003】
このようなコネクタでは、ハウジング本体に挿入装着される挿入装着部品は、ハウジング本体側に装備される部品係止手段との係合によって、仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決め可能にされる。
【0004】
ここに、仮係止位置とは、端子金具の位置決め、或いは二重係止を行う前の仮止め位置である。また、本係止位置とは、仮係止位置から更にハウジング内に挿入装着部品を押し込んだ位置で、挿入装着部品の一部が端子金具を位置決め、或いは二重係止する位置である。
【0005】
図5図7は、ハウジング本体に挿入装着部品が挿入装着されるコネクタ100の従来例を示したものである。図5図7に示したコネクタ100は、下記特許文献1に開示されたものである。
【0006】
このコネクタ100は、ハウジング本体101と、このコネクタハウジング101に挿入装着される挿入装着部品としてのホルダ111と、を備えている。
【0007】
ハウジング本体101は、後端101a側が端子収容部102となっている。この端子収容部102には、図示はしないが、端子金具が挿入装着される複数の端子挿入孔がハウジングの前後方向(図5の矢印Y1方向)に貫通して設けられている。また、ハウジング本体101の前端101bは相手のコネクタが嵌合するフード部103である。
【0008】
フード部103の内奥で、端子収容部102の前方に位置する空間は、図6に示すように、ホルダ111が挿入装着される部品収容空間104である。即ち、部品収容空間104は、ハウジングの前面に開放する空間で、図5の矢印Y2に示す方向に、ホルダ111が挿入装着される。
【0009】
図6に示すように、ハウジング本体101の両外側壁の内面には、ホルダ111の挿入方向に沿って、ガイド溝105が延設されている。
【0010】
ガイド溝105は、後述するホルダ111の外側壁113が挿入方向に移動可能に嵌合する溝である。
【0011】
ホルダ111は、端子収容部102に装着された端子金具の前端側を保持して、端子金具の保持精度を向上させる部材である。このホルダ111は、端子収容部102内の前端側に位置決めされる前部壁112と、この前部壁112の両側から挿入方向に沿って延出したアーム状の外側壁113とを備える。
【0012】
外側壁113は、両面がフード部103の両側壁と平行で、且つ、挿入方向に沿って延在する帯状の板である。この外側壁113は、上下の外側面に仮係止部116と本係止部117とが装備されている。
【0013】
仮係止部116は、外側壁113の上側の側面113aから上方に突出した突起である。この仮係止部116は、図7に示すように、外側壁113の上側の側面113aと対向するガイド溝105の上部内面105aに突設された第1の部品係止手段106との係合によって、ホルダ111を仮係止位置に固定する。図6は、仮係止部116が第1の部品係止手段106に係合して、ホルダ111が仮係止位置に固定された状態を示している。
【0014】
本係止部117は、外側壁113の下側の側面113bから下方に突出した突起である。この仮係止部117は、図7に示す状態から更に外側壁113がガイド溝105に押し込まれると、ガイド溝105の下部内面105bに突設された第2の部品係止手段107を乗り越えて、第2の部品係止手段107に係合した状態になる。
【0015】
ガイド溝105の下部内面105bは、外側壁113の下側の側面113bと対向する面である。
【0016】
本係止部117は、第2の部品係止手段107を乗り越えて、第2の部品係止手段107と係合した状態となることで、ホルダ111を本係止位置に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−343483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、特許文献1に記載のコネクタ100の場合は、仮係止部112や本係止部113が、外側壁114の上下側面から壁面に沿って上下方向に突出する突起である。そのため、ハウジング本体101側の部品係止手段106,107との係脱時に必要となる変形が外側壁114の外面に沿う上下方向の圧縮変形となる。一般に、面方向の圧縮では、板材の側面は撓み変形し難い。
【0019】
そこで、特許文献1のコネクタ100の場合、仮係止部116や本係止部117が設けられている上下の側面113a,113bが撓み変形し易いように、外側壁113の中央部に、切り欠き113cを形成している。切り欠き113cを形成したことで、外側壁113の上下の側面113a,113bは、それぞれ板厚の薄い梁状になり、撓み変形が容易になる。
【0020】
しかし、切り欠き113cを設けたことで、外側壁113の強度が低下し、ハウジング本体へのホルダ111の着脱を繰り返すと、外側壁113の変形や破損を招くおそれがあった。
【0021】
また、外側壁113の強度低下を回避するために、切り欠き113cを設けない構造とすると、仮係止部116や本係止部117が形成されている上下の側面113a,113bが撓み変形し難くなり、部品係止手段106,107との係脱時の抵抗力が大きくなるため、ホルダ111の装着が困難になるという問題が生じた。
【0022】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ハウジング本体への挿入装着部品の装着が容易で、しかも、ハウジング本体への着脱を繰り返しても、挿入装着部品に変形や破損が生じることを抑止することができるコネクタを提供することを目的とする。更に、仮係止位置及び本係止位置への挿入装着部品の固定強度を向上させることができるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)ハウジング本体と、
前記ハウジング本体に形成された部品収容空間に挿入され、前記ハウジング本体に装備された部品係止手段によって挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決め可能な挿入装着部品と、を備えるコネクタであって、
前記挿入装着部品は、その外側壁の一方の面に装備されて当該挿入装着部品が前記仮係止位置に移動したときに前記部品係止手段と係合して前記挿入装着部品の挿入方向への移動を規制する仮係止部と、外側壁の他方の面に装備されて当該挿入装着部品が前記本係止位置に移動したときに前記部品係止手段と係合して前記挿入装着部品の挿入方向への移動を規制する本係止部と、を備え、
前記部品係止手段に係合した前記仮係止部に作用する押圧荷重と、前記部品係止手段に係合した前記本係止手段に作用する押圧荷重が、互いに逆向きになることを特徴とするコネクタ。
【0024】
(2)前記ハウジング本体は、前記外側壁の一方の面に対向する第1対向壁面と、前記外側壁の他方の面に対向して設けられ前記第1対向壁面との間に前記外側壁を前記挿入装着部品の挿入方向に移動自在に挟む第2対向壁面と、前記第1対向壁面に装備されて前記挿入装着部品が前記仮係止位置に移動したときに前記仮係止部と係合する第1の部品係止手段と、前記第2対向壁面に装備されて前記挿入装着部品が前記本係止位置に移動したときに前記本係止部と係合する第2の部品係止手段と、を備えることを特徴とする上記(1)に記載のコネクタ。
【0025】
(3)前記仮係止部及び本係止部は、前記外側壁の表面から板厚方向に突出した突起で、前記挿入装着部品の挿入方向に位置をずらして配置され、
更に、前記仮係止部は前記第1対向壁面への当接によって前記本係止部の前記第1対向壁面側への撓み変位を規制し、前記本係止部は前記第2対向壁面への当接によって前記仮係止部の前記第2対向壁面側への撓み変位を規制することを特徴とする上記(2)に記載のコネクタ。
【0026】
上記(1)の構成によれば、挿入装着部品を仮係止位置及び本係止位置に位置決めするために挿入装着部品に装備される仮係止部と本係止部は、挿入装着部品の外側壁の表面に設けてあり、ハウジング本体側の部品係止手段から仮係止部や本係止部に作用する荷重は、外側壁が撓み変形し易い外側壁の板厚方向の荷重となる。
【0027】
そのため、仮係止部や本係止部が部品係止手段と係脱する際に必要となる操作力を低減させることが可能になる。言い換えると、挿入装着部品の部品係止手段との係脱時の抵抗力が小さくなり、ハウジング本体への挿入装着部品の装着を容易にすることができる。
【0028】
しかも、挿入装着部品に装備される仮係止部と本係止部は、外側壁の表裏に分けて装備しているため、部品係止手段に係合した仮係止部に作用する押圧荷重と、部品係止手段に係合した本係止手段に作用する押圧荷重が、互いに逆向きになる。
【0029】
そのため、ハウジング本体への挿入装着部品の着脱を繰り返しても、一定方向の荷重が作用し続けることがなく、一定方向に曲がる塑性変形や破損が外側壁に生じることを防止することができる。
【0030】
従って、ハウジング本体への着脱を繰り返しても、挿入装着部品に変形や破損が生じることを抑止することができる。
【0031】
本発明のコネクタにおいて、ハウジング本体に挿入装着される挿入装着部品としては、端子金具を二重係止するスペーサ、端子金具を位置決めするホルダが挙げられる。
【0032】
上記(2)の構成によれば、ハウジング本体への挿入装着部品の挿入装着時、ハウジング本体に装備された第1対向壁面及び第2対向壁面は、挿入装着部品の外側壁を挟んで、挿入装着部品を挿入方向に案内するガイド部として機能する。
【0033】
そのため、挿入装着部品の挿入動作を安定させることができ、挿入装着部品の装着を容易にすることができる。
【0034】
上記(3)の構成によれば、外側壁上の仮係止部と本係止部の配置が挿入装着部品の挿入方向に位置をずらして設定されているため、仮係止時に部品係止手段から外側壁に作用する押圧荷重(曲げ荷重)の作用点と、本係止時に部品係止手段から外側壁に作用する押圧荷重(曲げ荷重)の作用点とは、挿入装着部品の挿入方向に位置がずれる。そのため、部品係止手段から押圧荷重を受ける頻度が、各作用点に分配され、挿入装着部品のハウジング本体への着脱を繰り返しても、同一作用点に押圧荷重が作用する頻度を半減させて、繰り返し荷重による疲労の発生を抑止することができる。
【0035】
また、上記(3)の構成によれば、仮係止部と本係止部との2つの係止部は、それぞれが対面する対向壁面への当接によって、他方の係止部が対面する対向壁面とは逆側に撓み変位することを規制する。
【0036】
即ち、仮係止部と本係止部との2つの係止部は、他方の係止部が対向壁面に当接する支点となって曲げ剛性を強化して、部品係止手段との係合による固定強度を高める。
【0037】
そのため、例えば外側壁の板厚の増加等を行わずに、仮係止位置及び本係止位置への挿入装着部品の固定強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によるコネクタによれば、ハウジング本体側の部品係止手段から仮係止部や本係止部に作用する荷重は、外側壁が撓み変形し易い外側壁の板厚方向の荷重となる。そのため、仮係止部や本係止部が部品係止手段と係脱する際における仮係止位置や本係止位置の変位挙動が小さな操作力で可能になり、ハウジング本体への挿入装着部品の装着を容易にすることができる。
【0039】
しかも、挿入装着部品に装備される仮係止部と本係止部は、外側壁の表裏に分けて装備されていて、部品係止手段に係合した際に作用する押圧荷重が互いに逆向きになる。
【0040】
そのため、ハウジング本体への挿入装着部品の着脱を繰り返しても、一定方向の荷重が作用し続けることがなく、一定方向に曲がる塑性変形や破損が外側壁に生じることを防止することができる。
【0041】
従って、ハウジング本体への着脱を繰り返しても、挿入装着部品に変形や破損が生じることを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明に係るコネクタの一実施形態の分解斜視図である。
図2図1に示したハウジング本体及び挿入装着部品の正面図である。
図3図2の挿入装着部品のB部の拡大図である。
図4図2に示した挿入装着部品が、ハウジング本体の部品収容空間に挿入装着される際の動作を示したもので、図4(a)は挿入装着部品を装着する前の部品収容空間内の部品係止手段の状態を示す拡大図、図4(b)は挿入装着部品が仮係止位置に到達した状態における挿入装着部品と部品係止手段との係合状態の拡大図、図4(c)は挿入装着部品が本係止位置に到達した状態における挿入装着部品と部品係止手段との係合状態の拡大図である。
図5】従来のコネクタの分解斜視図である。
図6図5に示したハウジング本体にホルダが仮係止された状態を示す斜視図である。
図7図6のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1図4は本発明に係るコネクタの一実施形態を示したもので、図1は一実施形態のコネクタの分解斜視図、図2図1に示したハウジング本体及び挿入装着部品の正面図、図3図2の挿入装着部品のB部の拡大図、図4図2に示した挿入装着部品がハウジング本体の部品収容空間に挿入装着される際の動作を示したもので、図4(a)は挿入装着部品を装着する前の部品収容空間内の部品係止手段の状態を示す拡大図、図4(b)は挿入装着部品が仮係止位置に到達した状態における挿入装着部品と部品係止手段との係合状態の拡大図、図4(c)は挿入装着部品が本係止位置に到達した状態における挿入装着部品と部品係止手段との係合状態の拡大図である。
である。
【0044】
この一実施形態のコネクタ1は、図1及び図2に示すように、ハウジング本体10と、挿入装着部品としてのスペーサ20と、を備える。
【0045】
ハウジング本体10は、不図示の端子金具が挿入装着される複数の端子収容孔11(図2参照)と、端子収容孔11を横断する部品収容空間としてのスペーサ収容空間12と、を備えている。端子収容孔11には、適正に挿入が完了した端子金具に係合して端子金具の抜けを防止するランスが設けられている。
【0046】
スペーサ収容空間12は、ハウジング本体10の下面側(図2で、下面側)に開口する収容空間で、図2に矢印Y3で示す方向にスペーサ20が挿入装着される。
図2の矢印Y3の示す方向は、端子収容孔11への端子金具の挿入方向と直交する方向である。
【0047】
スペーサ収容空間12は、ハウジング本体10の幅方向(図1の矢印W1方向)に対向するスペーサ20の両外側壁21,21の位置に対応して、側壁ガイド空間13を有している。側壁ガイド空間13は、図2に示すように、その一部が、ハウジング本体10の正面から視認可能である。
【0048】
この側壁ガイド空間13は、スペーサ20がスペーサ収容空間12に挿入される際に、スペーサ20の両外側壁21,21を挿入方向に沿って誘導する空間である。
【0049】
この側壁ガイド空間13は、ハウジング本体10の幅方向に対向する第1対向壁面13aと第2対向壁面13bとで、外側壁21が挿入可能な空間を画成している。
【0050】
第1対向壁面13aは、外側壁21の一方の面である外側壁面21aに対向する垂直な平坦面である。第2対向壁面13bは、外側壁21の他方の面である内側壁面21bに対向する垂直な平坦面である。第2対向壁面13bは、第1対向壁面13aに対向配置されていて、第1対向壁面13aとの間に外側壁21をスペーサ20の挿入方向に移動自在に挟む。
【0051】
本実施形態のハウジング本体10の場合、図4に示すように、第1対向壁面13aには第1の部品係止手段15が装備され、第2対向壁面13bには第2の部品係止手段16が装備されている。第1の部品係止手段15及び第2の部品係止手段16は、横断面形状が台形状の突起である。
【0052】
第1の部品係止手段15は、スペーサ20が後述の仮係止位置に移動したときに、スペーサ20上の仮係止部(図3の仮係止突起25)と係合して、スペーサ20を仮係止位置に留める(固定する)。
【0053】
第2の部品係止手段16は、スペーサ20が後述の本係止位置に移動したときに、スペーサ20上の本係止部(図3の本係止突起26)と係合して、スペーサ20を本係止位置に留める(固定する)。
【0054】
スペーサ20は、図1及び図2に示すように、ハウジング本体10の幅方向に対向する両外側壁21間に、複数の端子挿通部22,23と、を備える。それぞれの端子挿通部22,23には、当該スペーサ20が本係止位置に移動したときに端子金具の凹部に係合して端子金具の抜けを防止する端子係止突起24が設けられている。
【0055】
本実施形態のスペーサ20は、端子収容孔11への端子金具の挿入方向と直交する方向(図2の矢印Y3の方向)に沿ってスペーサ収容空間12に挿入され、ハウジング本体10に装備された第1の部品係止手段15及び第2の部品係止手段16によって仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決めされる。
【0056】
ここに、仮係止位置とは、スペーサ20の端子係止突起24がハウジング本体10の端子収容孔11内に突出しない状態に維持され、ハウジング本体10の端子収容孔11に対して端子金具の着脱を許容する位置である。また、本係止位置とは、仮係止位置から更にハウジング内にスペーサ20を押し込んだ位置で、スペーサ20の端子係止突起24が端子収容孔11内に突出して端子金具に係合し、端子金具の抜けを防止する位置である。
【0057】
スペーサ20は、本係止位置に移動すると、ハウジング本体10内のランスにより抜け止めされている端子金具に端子係止突起24が係合することで、端子金具がランスと端子係止突起24とによって二重に抜け止めされた二重係止状態を作る。
【0058】
本実施形態のスペーサ20は、仮係止部としての仮係止突起25と、本係止部としての本係止突起26と、を備えている。
【0059】
仮係止突起25及び本係止突起26は、図3に示すように、外側壁21の表面から板厚方向(図3の矢印T方向)に突出した突起である。
【0060】
仮係止突起25は、図3に示すように外側壁21の外側壁面21aに装備されており、図4(b)に示すように、当該スペーサ20が仮係止位置に移動したときに、第1の部品係止手段15を乗り越えて第1の部品係止手段15と係合し、スペーサ20の挿入方向への移動を規制する。
【0061】
スペーサ20が仮係止位置に移動して、仮係止突起25が第1の部品係止手段15に係合した状態では、図4(b)に示すように、第1の部品係止手段15から仮係止突起25に、押圧荷重F1が作用する。この押圧荷重F1は、ハウジング本体10の幅方向の内側に外側壁21を付勢する荷重である。
【0062】
本係止突起26は、図3に示すように外側壁21の内側壁面21bに装備されており、図4(c)に示すように、当該スペーサ20が本係止位置に移動したときに、第2の部品係止手段16を乗り越えて第2の部品係止手段16と係合し、スペーサ20の挿入方向への移動を規制する。
【0063】
スペーサ20が本係止位置に移動して、本係止突起26が第2の部品係止手段16に係合した状態では、図4(c)に示すように、第2の部品係止手段16から本係止突起26に、押圧荷重F2が作用する。この押圧荷重F2は、ハウジング本体10の幅方向の外側に外側壁21を付勢する荷重である。
【0064】
即ち、本実施形態のコネクタ1では、図4(b),図4(c)に示すように、第1の部品係止手段15に係合した仮係止突起25に作用する押圧荷重F1と、第2の部品係止手段16に係合した本係止突起26に作用する押圧荷重F2とは、互いに逆向きになる。
【0065】
また、本実施形態のスペーサ20の場合、外側壁21上の仮係止突起25と本係止突起26は、図3に示すように、スペーサ20の挿入方向(図3の矢印Y4方向)に、距離L1だけ、位置をずらして配置されている。
【0066】
本実施形態のコネクタ1では、本係止突起26が第2の部品係止手段16に係脱する際、仮係止突起25は第1対向壁面13aへの当接によって、本係止突起26を支持する支点として機能して、本係止突起26の第1対向壁面13a側への撓み変位を規制する。言い換えると、図4(c)において、本係止突起26は第2の部品係止手段16からの押圧荷重F2によって第1対向壁面13a側に撓み変位するが、その時の撓み変位を、仮係止突起25が第1対向壁面13aに当接することで抑制して、距離L1の範囲で撓み変位を許容しているので、第2の部品係止手段16と本係止突起26との係合による固定強度を高めることができる。
【0067】
また、本実施形態のコネクタ1では、仮係止突起25が第1の部品係止手段15に係脱する際、本係止突起26は、第2対向壁面13bへの当接によって仮係止突起25の第2対向壁面13b側への撓み変位を規制する。言い換えると、図4(b)において、仮係止突起25は第1の部品係止手段15からの押圧荷重F1によって第2対向壁面13b側に撓み変位するが、その時の撓み変位を、本係止突起26が第2対向壁面13bに当接することで抑制して、第1の部品係止手段15と仮係止突起25との係合による固定強度を高めることができる。
【0068】
以上に説明した一実施形態のコネクタ1においては、スペーサ20を仮係止位置及び本係止位置に位置決めするためにスペーサ20に装備される仮係止突起25と本係止突起26は、スペーサ20の外側壁21の表面に設けてあり、ハウジング本体10側の第1の部品係止手段15から仮係止突起25や本係止突起26に作用する荷重は、外側壁21が撓み変形し易い外側壁21の板厚方向の荷重となる。
【0069】
そのため、仮係止突起25や本係止突起26が部品係止手段15,16と係脱する際に必要となる操作力を低減させることが可能になる。言い換えると、スペーサ20の部品係止手段15,16との係脱時の抵抗力が小さくなり、ハウジング本体10へのスペーサ20の装着を容易にすることができる。
【0070】
しかも、スペーサ20に装備される仮係止突起25と本係止突起26は、外側壁21の表裏に分けて装備しているため、図4に示したように、第1の部品係止手段15に係合した仮係止突起25に作用する押圧荷重F1と、第2の部品係止手段16に係合した本係止突起26に作用する押圧荷重F2が、互いに逆向きになる。
【0071】
そのため、ハウジング本体10へのスペーサ20の着脱を繰り返しても、一定方向の荷重が作用し続けることがなく、一定方向に曲がる塑性変形や破損が外側壁21に生じることを防止することができる。
【0072】
従って、ハウジング本体10への着脱を繰り返しても、スペーサ20に変形や破損が生じることを防止することができる。
【0073】
また、以上に説明した一実施形態のコネクタ1においては、ハウジング本体10へのスペーサ20の挿入装着時、ハウジング本体10に装備された第1対向壁面13a及び第2対向壁面13bは、スペーサ20の外側壁21を挟んで、スペーサ20を挿入方向に案内するガイド部として機能する。
【0074】
そのため、スペーサ20の挿入動作を安定させることができ、スペーサ20の装着を容易にすることができる。
【0075】
また、以上に説明した一実施形態のコネクタ1においては、外側壁21上の仮係止突起25と本係止突起26の配置がスペーサ20の挿入方向に距離L1だけ位置をずらして設定されているため、仮係止時に第1の部品係止手段15から外側壁21に作用する押圧荷重(曲げ荷重)の作用点と、本係止時に第2の部品係止手段16から外側壁21に作用する押圧荷重(曲げ荷重)の作用点とは、スペーサ20の挿入方向に距離L1だけ位置がずれる。そのため、それぞれの部品係止手段15,16から押圧荷重を受ける頻度が、各作用点に分配され、スペーサ20のハウジング本体10への着脱を繰り返しても、同一作用点に押圧荷重が作用する頻度を半減させて、繰り返し荷重による疲労の発生を抑止することができる。
【0076】
また、以上に説明した一実施形態のコネクタ1においては、仮係止突起25と本係止突起26との2つの係止部は、それぞれが対面する対向壁面13a,13bへの当接によって、他方の係止部が対面する対向壁面とは逆側に撓み変位することを規制する。
【0077】
即ち、仮係止突起25と本係止突起26との2つの係止部は、他方の係止部が対向壁面に当接する支点となって曲げ剛性を強化して、部品係止手段15,16との係合による固定強度を高める。
【0078】
そのため、例えば外側壁21の板厚の増加等を行わずに、仮係止位置及び本係止位置へのスペーサ20の固定強度を向上させることができる。
【0079】
なお、本発明のコネクタは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0080】
例えば、前述した実施形態における本係止突起26と仮係止突起25とのずれ量や、これらの係止突起25,26の具体的形状は、適宜に設計変更することができる。
【0081】
また、本発明のコネクタにおいて、ハウジング本体に挿入装着される挿入装着部品は、端子金具を二重係止するスペーサに限るものではなく、端子金具を位置決めするホルダも該当する。
【符号の説明】
【0082】
1 コネクタ
10 ハウジング本体
12 スペーサ収容空間(部品収容空間)
13 側壁ガイド空間
13a 第1対向壁面
13b 第2対向壁面
15 第1の部品係止手段(部品係止手段)
16 第2の部品係止手段(部品係止手段)
20 スペーサ(挿入装着部品)
21 外側壁
21a 外側壁面
21b 内側壁面
25 仮係止突起(仮係止部)
26 本係止突起(本係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7