(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(a)と、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、ブロック共重合体(a)とは異なるブロック共重合体(b)を、質量比(a)/(b)が20/80〜50/50となる範囲で含み、共役ジエン含有率が20〜30質量%であるブロック共重合体樹脂組成物からなる中間層と、中間層の両面に積層されたポリエステル系樹脂からなる表裏層とを含んでなるシートを、少なくとも1軸に延伸してなり、
80℃10秒における熱収縮率が40%以上であり、
延伸軸方向において引張速度500mm/minで分離したときの層間接着強度が0.6N/15mm以上であり、
前記ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が65/35〜41/59で、数平均分子量が2万から10万であり、
(1)一方の端部がビニル芳香族炭化水素からなるブロック部で、これに続くブロック部が共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなり、他方の端部に向かって徐々に共役ジエンが減少するテーパードブロック部を有し、
(2)テーパードブロック部に含まれるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が20/80〜60/40であり、
(3)ブロック共重合体中のテーパードブロック部の割合が60質量%以上である
直鎖状ブロック共重合体からなり、
ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が80/20〜90/10で、少なくとも一方の端部がビニル芳香族炭化水素からなるブロック部で、数平均分子量が10万以上30万以下である直鎖状ブロック共重合体からなる、熱収縮性積層フィルム。
ブロック共重合体樹脂組成物が、ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)を、質量比(a)/(b)が25/75〜45/55となる範囲で含む、請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が60/40〜45/55で、数平均分子量が5万から8万であり、テーパードブロック部に含まれるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が30/70〜57/43であり、ブロック共重合体中のテーパードブロック部の割合が70質量%以上である直鎖状ブロック共重合体からなり、
ブロック共重合体(b)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が82/18〜88/12で、数平均分子量が14万以上20万以下である直鎖状ブロック共重合体からなる、請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る熱収縮性積層フィルムは、中間層と該中間層の両面に積層された表裏層とを含んでなる樹脂シートを、少なくとも1軸に延伸してなる。中間層は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体(a)と、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、ブロック共重合体(a)とは異なるブロック共重合体(b)とを必須に含むブロック共重合体樹脂組成物を含んでなり、表裏層は、ポリエステル系樹脂からなる。
【0009】
以下、中間層、表裏層、熱収縮性積層フィルム自体について、順に説明する。
【0010】
[中間層]
中間層はブロック共重合体樹脂組成物からなり、該ブロック共重合体樹脂組成物は、ブロック共重合体(a)と、該ブロック共重合体(a)とは異なるブロック共重合体(b)とを必須に含み、場合によっては更に他のブロック共重合体等の重合体等を含みうる。
【0011】
<ブロック共重合体(a)>
ブロック共重合体(a)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0012】
ブロック共重合体(a)におけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比は、65/35〜41/59であり、好ましくは60/40〜45/55である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が41/59未満では、成形加工時のフィッシュアイによりフィルムの外観が悪化する。一方で、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比が65/35を超えると、十分な層間接着強度が得られない。
【0013】
ブロック共重合体(a)の数平均分子量は、20,000〜100,000が好ましく、特に好ましくは50,000〜80,000である。ブロック共重合体の数平均分子量が20,000未満では、成形加工時にネックインしやすくなり、良好なフィルムが得られない。一方で、ブロック共重合体の数平均分子量が100,000を超えると成形加工時のフィッシュアイが発生しやすくなり、良好なフィルムが得られない。
【0014】
また、ブロック共重合体(a)は、一方の端部がビニル芳香族炭化水素からなるブロック部で、これに続くブロック部が、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなり、他方の端部に向かって徐々に共役ジエンが減少するテーパードブロック部である。該テーパードブロック部に含まれるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比(つまり、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン)は、20/80〜60/40であり、更に好ましくは30/70〜57/43である。この質量比が60/40を超えると層間接着強度が低下する。また、20/80未満では成形加工時のフィッシュアイが発生しやすくなる。
更にブロック共重合体(a)中のテーパードブロック部の割合は、60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。60質量%未満では層間接着強度が低下する傾向がある。
【0015】
<ブロック共重合体(b)>
ブロック共重合体(b)もビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体であり、その製造に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、ブロック共重合体(a)の場合と同様に、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を挙げることができるが、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。また共役ジエンとしては、ブロック共重合体(a)の場合と同様に、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0016】
ブロック共重合体(b)におけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの質量比(つまり、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン)は、ブロック共重合体(a)におけるものと異なり、80/20〜90/10であり、好ましくは82/18〜88/12である。この質量比が80/20未満では、フィルムのコシ強度(剛性)が悪化する。一方で、この質量比が90/10を超えると、フィルムの引張伸度が低下しラベルとして加工する時に切れやすくなる。
【0017】
またブロック共重合体(b)の数平均分子量は、100,000〜300,000が好ましく、特に好ましくは140,000〜200,000である。ブロック共重合体(b)の数平均分子量が100,000未満では、溶融粘度が低下するため成形加工性が低下する。一方で、ブロック共重合体(b)の数平均分子量が300,000を超えると、溶融粘度が高すぎるため成形加工性が低下し、良好なフィルムが得られない。
【0018】
またブロック共重合体(b)は、一方の端部がビニル芳香族炭化水素からなるブロック部であればそれに続くブロックの構造は特に限定されないが、好ましい例としては下記のような一般式を有するものが挙げられる。
(i) A−B
(ii) A−B−A
(iii) A−C−A
(iv) A−C−B
(v) A−C−B−A
(vi) A−B−B
(vii) A−B−B−A
【0019】
ここで、上式中、Aはビニル芳香族炭化水素の重合鎖、Bはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合鎖、Cは共役ジエンの重合鎖を示し、各式は、これら重合鎖の配列順を表す。ブロック共重合体(b)は、これら(i)〜(vii)の構造のものを単独で用いても複数の混合物でもよい。また、一般式中にA、BあるいはCが複数存在しても、分子量、共役ジエンの質量割合、共重合鎖のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの分布状態などはそれぞれ独立していて、同一である必要はない。共重合鎖Bの分子量および組成分布は、主にビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの添加量と添加方法により制御される。
【0020】
<ブロック共重合体(a)、(b)の製造方法>
ブロック共重合体(a)、(b)は、有機溶媒中で有機リチウム化合物を重合開始剤とし、1種以上のビニル芳香族炭化水素単量体と1種以上の共役ジエン単量体とをリビングアニオン重合させることにより製造できる。
【0021】
有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。
【0022】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0023】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素単量体及び共役ジエン単量体は、前記のものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記の有機リチウム化合物を開始剤とするリビングアニオン重合では、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素単量体及び共役ジエン単量体はほぼ全量が重合体に転化する。
【0024】
例えば、ビニル芳香族炭化水素ブロック部と、それに続くテーパードブロック部を有するブロック共重合体を得る場合は、まずビニル芳香族炭化水素単量体を仕込み、反応が終了してからビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体を同時に仕込めばよい。このときビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの反応性比の違いによりブロック部の成長に伴うテーパー部分の組成比率は変化するが、それはランダム化剤の濃度で調整することができる。
【0025】
ランダム化剤は極性を持つ分子であり、主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0026】
ランダム化剤の添加量としては、全仕込みモノマー100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましい。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合鎖の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0027】
本発明に用いられるブロック共重合体(a)、(b)の分子量は、モノマーの全添加量に対する開始剤の添加量により制御できる。
【0028】
このようにして得られたブロック共重合体(a)、(b)は、水、アルコール、有機酸、無機酸、及びフェノール系化合物などの重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。なお、重合活性末端の失活量論数は加えた重合停止剤の化学量論数に比例するので、重合の途中で一部の重合活性末端のみを失活させ、引続き原料モノマーを追加添加してさらに重合を継続させる製造方法も採ることができ、ブロック共重合体(a)と(b)を同時に製造することも可能である。途中の失活回数については重合活性末端を全て失活させない限り特に制限はない。ただし、重合の完了時には活性末端を全て失活させることが必要である。
【0029】
得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0030】
前述のように、本発明のブロック共重合体樹脂組成物は、ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)を樹脂成分として必須に含み、場合によっては更に他のブロック共重合体等の重合体等を含みうるが、本発明では、ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の質量比を、(a)/(b)=20/80〜50/50とし、且つ当該ブロック共重合体(a)及び(b)の全体における共役ジエンの含有率が20〜30質量%でなければならない。(a)成分と(b)成分の更に好ましい質量比は(a)/(b)=25/75〜45/55で、共役ジエン含有率は22〜28質量%が好ましい。(a)成分が20質量%未満では層間接着強度が低下し、50質量%を超えるとコシ強度(剛性)が低下する。共役ジエン含有率が20質量%未満では層間接着強度が低下し、30質量%を超えるとコシ強度(剛性)が低下し、更に成形加工時にフィッシュアイが発生しやすくなり外観が悪化する。
【0031】
本発明のブロック共重合体樹脂組成物に含めることができるブロック共重合体(a)、(b)以外の更なるブロック共重合体としては、ビカット軟化温度が65℃〜90℃で共役ジエン含有量が20〜30質量%であるビニル芳香族と共役ジエンからなるブロック共重合体が例示され、その混合量は、ブロック共重合体樹脂組成物に対し、40%質量以下とするのが好ましい。尚、ビカット軟化温度はJIS K7206に準拠して測定された、荷重10Nにおける測定値である。
【0032】
更に、本発明のブロック共重合体樹脂組成物には、スチレン系重合体を含めることができる。スチレン系重合体としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられるが、ポリスチレンが特に好ましい。スチレン系重合体を混合する場合、その質量比は、ブロック共重合体(a)及び(b)の合計100質量部に対し0.1質量部以上20質量部以下であり、好ましくは5質量部以上15質量部以下である。スチレン系重合体の質量比が20質量部を超えると層間接着性や熱収縮性が低下する場合がある。
【0033】
また更に、本発明のブロック共重合体樹脂組成物には、表裏層に用いるものと同様でも異なっていてもよいポリエステル系樹脂を混合することもでき、これを混合する場合は、中間層を構成する樹脂組成物に対し10質量%以下が好ましい。また、本願の積層フィルムを作成する際に発生するリサイクル材を混合してもよい。
また、本発明のブロック共重合体樹脂組成物には、これまでに述べた重合体以外の重合体も含有させることが可能であるが、その量は、本発明の目的を阻害しない範囲でなければならず、通常は、当該樹脂組成物に対し40質量%以下、好ましくは25質量%以下である。
【0034】
更に、上記ブロック共重合体組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の添加剤を必要に応じて混合することができる。このような添加剤としては、各種安定剤、加工助剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、フィラー、顔料、染料、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0035】
前記の安定剤としては、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト等の燐系酸化防止剤等が挙げられる。加工助剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、フィラー、顔料、難燃剤等は、一般的な公知のものが挙げられる。また、滑剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンジ脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、炭化水素系ワックス等が挙げられる。
【0036】
ブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(a)、ブロック共重合体(b)及びその他の任意成分の重合体を混合することによって得られ、その混合方法は特に規定はないが、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等でドライブレンドしてもよく、更に押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、各重合体の製造時、重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で添加してもよい。必要に応じて添加剤を配合する場合は、例えば前記ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)にこれら添加剤を更に所定の割合で配合し、前記と同様の混合方法によることができる。
【0037】
[表裏層]
本発明の表裏層は、ポリエステル系樹脂からなる。ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を主体とした重縮合物であり、多価カルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸などが挙げられる。これらの多価カルボン酸成分は1種または2種以上を使用できる。また、多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらの多価アルコール成分は1種または2種以上を使用できる。
【0038】
好ましい多価カルボン酸としてはテレフタル酸が、好ましい多価アルコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの重縮合物が好適に使用できる。
【0039】
前記ポリエステル系樹脂の市販品としては、イーストマンケミカルズ社製「PETG 6763」、SKケミカルズ社製「SKYGREEN S2008」などが挙げられる。
【0040】
表裏層を構成するポリエステル系樹脂は、単体でも2種類以上のブレンド物であってもよい。例えば、ラベルとして耐熱性が必要な場合は、ジオール成分にネオペンチルグリコールを含む重縮合物をブレンドすることができる。また、資源再利用の観点で使用済みのPET製食品容器やPETボトルをフレーク状に加工したものをブレンドしてもよい。
【0041】
また、これらのポリエステル系樹脂には、フィルムを製造する際に、本発明の目的を阻害しない範囲で滑剤、安定剤、ブロッキング防止剤、造核剤などの各種添加剤を必要に応じて混合することができる。
【0042】
<熱収縮性積層フィルム>
本発明の熱収縮性積層フィルムは、前記のブロック共重合体樹脂組成物を中間層(内層)として、ポリエステル系樹脂を表裏層として、各々押出機で溶融し、フィードブロック法、マルチマニホールド法等を用いて接着層を介さず二種三層に積層化したシートを得た後に一軸、二軸あるいは多軸に延伸することによって得られる。一軸延伸の例としては、押し出されたシートをテンターで押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸する方法等が挙げられる。二軸延伸の例としては、押し出されたシートをロールで押し出し方向に延伸した後、テンター等で押し出し方向と直交する方向に延伸する方法、押し出されたチューブ状フィルムを押し出し方向及び円周方向に同時又は別々に延伸する方法等が挙げられる。
【0043】
尚、Tダイ式シート押出機を用いて積層化したシートを製造する場合、押出機の温度は180〜260℃が好ましい。180℃未満ではポリエステル樹脂の可塑化が不十分となる。260℃を超える場合はブロック共重合体樹脂組成物の熱劣化によるフィッシュアイを助長し、外観が悪化し易くなる。
【0044】
本発明の熱収縮性積層フィルムの層比は、中間層の厚みが全体の厚みの55%以上90%以下であり、好ましくは65%以上80%以下である。
【0045】
また、本発明の熱収縮性積層フィルムを製造する場合、延伸温度は80〜120℃が好ましい。延伸温度が80℃未満では延伸時にフィルムが破断する場合がある。一方、延伸温度が120℃を越える場合は、フィルムの良好な収縮特性が得られない場合がある。特に好ましい延伸温度は、フィルムを構成する組成物のガラス転移温度(Tg)に対して、Tg+5℃〜Tg+20℃の範囲である。多層フィルムの場合は、Tgが最も低い層の重合体組成物のTgに対して、Tg+5℃〜Tg+20℃の範囲が特に好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、フィルムを構成する組成物の損失弾性率のピークの温度から求めたものである。延伸倍率は特に制限はないが、1.5〜7倍、更に好ましくは4.5倍〜5.5倍が好ましい。1.5倍未満では熱収縮性が不足してしまい、また、7倍を越える場合は延伸が難しいため好ましくない。
【0046】
延伸することで得られた熱収縮性積層フィルムの厚さは全体で30〜80μmが好適であり、更に好ましくは35〜60μmである。
【0047】
これらの熱収縮性積層フィルムを熱収縮性ラベルとして使用する場合、主延伸軸における熱収縮率は80℃10秒間で40%以上であることが好ましい。熱収縮率が40%未満では収縮時に高温が必要となるため、被覆容器の生産性が低下したり、被覆される物品に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0048】
積層フィルムの層間接着強度は主延伸軸において0.6N/15mm以上あればよい。0.6N未満では容器に装着する前段階のラベルカット時に剥離したり、熱収縮による容器への装着時にセンターシール部より剥がれやすくなるため好ましくない。尚、層間接着強度は、試験片を主延伸軸方向(TD)100mm、直交方向(MD)15mmに切削し、TD方向の50mmを予め剥離させておき、TD方向のT型剥離強度測定となるように引張試験機のチャックに挟み、初期チャック間隔50mm、引っ張り速度500mm/minで剥離させる際の最大点荷重により求めることができる。
【0049】
本発明の熱収縮性積層ラベルは、公知の方法により作製することができ、例えば延伸フィルムを印刷し、主延伸軸方向を円周方向にして溶剤シールすることにより作製することができる。
【0050】
本発明の熱収縮性積層フィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合の容器は、特に限定されないが、ぶりき製、TFS製、アルミニウム製等の金属缶容器(3ピース缶及び2ピース缶、または蓋付のボトル缶等)、ガラス製の容器またはポリエチレンテレフタレート(PETと略称される)製の容器等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示して本発明を説明する。但し、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0052】
実施例、比較例に用いたブロック共重合体は、以下の参考例に示した方法により作製した。
【0053】
[参考例1]
(1)反応容器中に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン300kgと22kgのスチレンモノマーを仕込み、30℃に保った。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液を2080mL加え、スチレンモノマーをアニオン重合させた。
(3)スチレンモノマーが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に保ちながら、総量33kgのスチレンモノマーと、総量45kgのブタジエンを同時に添加し、反応を継続させた。
(4)反応が終了した後、水を330g添加し失活させ、参考例1の重合体を含む溶液を得た。
(5)仕込モノマー100質量部あたり、安定剤として住友化学(株)製スミライザーGSを0.4質量部と、(株)アデカ製AO−50Fを0.3質量部溶解させた。
(6)重合溶液を予備濃縮し、さらに減圧ベント付き2軸押出機で脱揮押出しして、それぞれペレット状のブロック共重合体を得た。
【0054】
[参考例2〜18]
参考例1と同じ設備を用い、同様の手順で参考例2〜18のブロック共重合体を作成した。なお、各段階(1)〜(4)における原料類の添加量については参考例1と合わせ表1,表2にまとめて示した。
参考例5、11、12においては、段階(3)と(4)間で反応系の内温を70℃に保った状態でスチレンモノマーを、参考例5では23kg、参考例11,12では各々55kg仕込んで重合を実施した。よって、これら参考例におけるスチレンモノマーの仕込み量は、これらの量と表1,2に記載の段階(1)、(3)における量を合計した量となる。参考例10においては、段階(2)と(3)の間で反応系の内温を70℃に保った状態でブタジエンを12kg仕込み(よって段階(3)での量と合わせると、15kg)、重合を実施した。
【0055】
上記のようにして合成したブロック共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって、下記の装置・条件を用いて測定した。
装置名:東ソー製「HLC−8220GPC」
使用カラム:昭和電工製,商品名「Shodex GPCKF−404」,直列4本
カラム温度:40℃
検出方法:紫外分光法(254nm)
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(Polymer Laboratories社製)
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
[実施例1]
(1)参考例1のブロック共重合体33質量%と参考例10のブロック共重合体67質量%の混合物を中間層とし、SKケミカル社製SKYGREEN S2008が98質量%、住化カラー株式会社製ナチュラルEPM−7Y029が2質量%のポリエステル系樹脂混合物を表裏層として準備した。
(2)Tダイ式多層シート押出機(Tダイリップ幅300mm)で、表裏層用の40m/m押出機を240℃に設定し、中間層用65m/m押出機を200℃に設定し、ダイス温度210℃にて、層比15/70/15、シート厚0.25mmの積層シートを得た。
(3)得られたシートを、テンター式横延伸機で、90℃で横方向に5倍延伸して50μm厚の熱収縮性積層フィルムを得た。
(4)このようにして得た積層フィルムの熱収縮率は、80℃の温水中に10秒間浸漬し、次式より算出し、次の評価基準で評価した。
熱収縮率={(L1−L2)/L1}×100
ここで、L1:浸漬前の長さ(延伸方向)、
L2:80℃の温水中に10秒間浸漬した収縮後の長さ(延伸方向)
(5)積層フィルムの層間接着強度は、以下の方法で測定した。
試験片を主延伸軸方向(TD)100mm、直交方向(MD)15mmに切削し、TD方向の50mmを予め剥離させておき、TD方向のT型剥離強度測定となるように株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機RTG−1210のチャックに挟み、初期チャック間隔50mm、引張速度500mm/minで剥離させる際の最大点荷重により求めた。試験回数7回の平均値を測定値とした。それ以外の測定条件はJIS K6854−3に準拠して測定した。
(6)引張弾性率、引張伸度は、JIS K6871に準拠し、エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機(RTC−1210A)を用いて測定した。試験片を主延伸軸方向(TD)10mm、直交方向(MD)100mmに切削し、初期チャック間隔40mm、引張速度200mm/minで測定した。引張弾性率は、900MPaあれば実使用上問題ない。引張伸度は300%あれば実用上問題ない。
【0059】
[実施例2〜9、比較例1〜11]
表3、4の構成で実施例1と同様な方法でシート化、フィルム化を行なった。
尚、表3,4に記載されている「ポリスチレン」は、東洋スチレン(株)製トーヨースチロールG−200Cを用いた。中間層に混合するPETは、SKケミカル社製SKYGREEN S2008を用いた。表3の実施例9に記載されている「ブロック共重合体」は、ビカット軟化点70℃、スチレン/ブタジエン=76/24(質量%)、数平均分子量13万のものを用いた。
比較例5においてはフィルム外観でフィッシュアイが多く観察され、実用に供しないと判断し、フィルム物性評価は行なわなかった。
比較例9においては、シート製膜時のネックインが大きく、フィルム延伸ができなかった。
比較例10においてはシート成形が安定せず、フィルム延伸ができなかった。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
<ラベルの製造>
実施例1で得られたフィルムをスリットし、主延伸軸方向が周方向となるように筒状にし、フィルム端部をテトラヒドロフランにて溶着することにより、熱収縮性ラベルを得た。
【0063】
<フィルム被覆容器の製造>
円筒部の直径が66mmのアルミ製ボトル缶(蓋付)に、実施例1の熱収縮性ラベルを被せ、90℃で10秒間加熱し、ラベルを熱収縮させフィルム被覆容器を作成した。
装着したラベルは溶着部分からの層間剥離は観察されず、収縮仕上がり性も良好であった。