(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ赤道上をタイヤ周方向に連続してのびる1本のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のミドル主溝と、前記ミドル主溝と接地端との間をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記センター主溝と前記ミドル主溝との間を継ぐ複数本のセンター横溝と、前記ミドル主溝と前記ショルダー主溝との間を継ぐ複数本のミドル横溝と、前記ショルダー主溝と前記接地端との間を継ぐ複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、
前記センター主溝と前記ミドル主溝と前記センター横溝とで区分されたセンターブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のセンターブロック列、前記ミドル主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列、及び、前記ショルダー主溝と前記接地端と前記ショルダー横溝とで区分されたショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のショルダーブロック列を具えた重荷重用空気入りタイヤであって、
前記ミドル横溝及び前記ショルダー横溝は、略直線状にのびかつ溝幅が4.0〜16.0mmであり、
前記ミドル横溝及び前記ショルダー横溝の溝底には、最も深い溝底からの隆起高さが前記各横溝の最も深い溝深さの50%以上のタイバーが設けられることなく、
前記センターブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるセンター領域のランド比は、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるミドル領域のランド比の1.05〜1.25倍であり、
前記センター横溝は、タイヤ軸方向に対する角度が15〜45°かつ前記ミドル横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大であることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
前記ミドル横溝と、該ミドル横溝に隣接する前記センター横溝とは、同一のピッチでタイヤ周方向に隔設され、かつ、タイヤ周方向に半ピッチ位相をずらせて配置されている請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、トレッド部のセンター領域のランド比とミドル領域のランド比との比を改善し、さらに、センター横溝、ミドル横溝及びショルダー横溝の形状を改善することを基本として、排水性能と耐摩耗性能とをバランス良く向上させた
重荷重用空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、タイヤ赤道上をタイヤ周方向に連続してのびる1本のセンター主溝と、該センター主溝のタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のミドル主溝と、前記ミドル主溝と接地端との間をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝と、前記センター主溝と前記ミドル主溝との間を継ぐ複数本のセンター横溝と、前記ミドル主溝と前記ショルダー主溝との間を継ぐ複数本のミドル横溝と、前記ショルダー主溝と前記接地端との間を継ぐ複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記センター主溝と前記ミドル主溝と前記センター横溝とで区分されたセンターブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のセンターブロック列、前記ミドル主溝と前記ショルダー主溝と前記ミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列、及び、前記ショルダー主溝と前記接地端と前記ショルダー横溝とで区分されたショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のショルダーブロック列を具えた
重荷重用空気入りタイヤであって、前記ミドル横溝及び前記ショルダー横溝は、略直線状にのびかつ溝幅が4.0〜16.0mmであり、前記ミドル横溝及び前記ショルダー横溝の溝底には、最も深い溝底からの隆起高さが前記各横溝の最も深い溝深さの50%以上のタイバーが設けられることなく、前記センターブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるセンター領域のランド比は、前記ミドルブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるミドル領域のランド比の1.05〜1.25倍であり、前記センター横溝は、タイヤ軸方向に対する角度が15〜45°かつ前記ミドル横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大であることを特徴とする
重荷重用空気入りタイヤである。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記トレッド部には、タイヤ外面をなすトレッドゴムが配され、前記トレッドゴムの複素弾性率E*は、6.3〜7.7MPaである請求項1記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記センター主溝は、タイヤ周方向に直線状にのびかつその溝幅が前記ミドル主溝の溝幅よりも小さく、前記ミドル主溝及び前記ショルダー主溝は、タイヤ周方向にジグザグ状にのびかつ各溝中心線の振幅が2mm以上である請求項1又は2記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記センター横溝は、タイヤ赤道の一方側に配される第1センター横溝と、タイヤ赤道の他方側に配される第2センター横溝とを含み、前記第1センター横溝と、前記第2センター横溝とは、同一のピッチでタイヤ周方向に隔設され、かつ、タイヤ周方向に半ピッチ位相をずらせて配置されている請求項1乃至3のいずれかに記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記ミドル横溝と、該ミドル横溝に隣接する前記センター横溝とは、同一のピッチでタイヤ周方向に隔設され、かつ、タイヤ周方向に半ピッチ位相をずらせて配置されている請求項1乃至4のいずれかに記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記センター横溝は、前記センター主溝からタイヤ軸方向の外側に直線状にのびる内側溝部と、前記ミドル主溝からタイヤ赤道側に直線状にのびる外側溝部とを含み、前記内側溝部と前記外側溝部とは、タイヤ周方向に位置ずれしている請求項1乃至5のいずれかに記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【0012】
また請求項7記載の発明は、前記トレッド部は、回転方向が指定された方向性パターンを具え、前記センター横溝は、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ回転方向の後着側へ傾斜する請求項1乃至6のいずれかに記載の
重荷重用空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の
重荷重用空気入りタイヤでは、トレッド部は、センター主溝とミドル主溝とセンター横溝とで区分されたセンターブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のセンターブロック列、ミドル主溝とショルダー主溝とミドル横溝とで区分されたミドルブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列、及び、ショルダー主溝と接地端とショルダー横溝とで区分されたショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設された一対のショルダーブロック列を具える。
【0014】
ミドル横溝及びショルダー横溝は、略直線状にのびかつ溝幅が4.0〜16.0mmである。このようなミドル横溝及びショルダー横溝は、排水抵抗が小さい。このため、排水性能が向上する。また、ミドルブロック及びショルダーブロックの剛性が高く確保される。このため、耐摩耗性能が向上する。ミドル横溝及びショルダー横溝の溝底には、最も深い溝底からの隆起高さが各横溝の最も深い溝深さの50%以上のタイバーが設けられることがない。これにより、摩耗末期でも、ミドル横溝及びショルダー横溝の溝容積が確保される。従って、排水性能が、さらに向上する。
【0015】
センターブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるセンター領域のランド比は、ミドルブロックのタイヤ軸方向の両端を通るタイヤ周方向線間の領域であるミドル領域のランド比の1.05〜1.25倍である。これにより、センターブロックの剛性がミドルブロックの剛性よりも高く確保され、直進走行時、大きな荷重が作用するセンターブロックと、センターブロックよりも小さな荷重の作用するミドルブロックに生じる接地圧を均一化できる。従って、タイヤ転動によるセンターブロック及びミドルブロックのすべり量がバランス良く低減され、耐摩耗性能が向上する。
【0016】
センター横溝は、タイヤ軸方向に対する角度が15〜45°である。これにより、センターブロックの先着側の端縁は、接地時の路面からの衝撃を分散して緩和する。このため、センターブロックのすべり量が小さくなる。また、センター横溝のタイヤ軸方向に対する角度が、ミドル横溝のタイヤ軸方向に対する角度よりも大である。これにより、センターブロックの先着側の端縁、及びミドルブロックの先着側の端縁は、接地時の路面からの衝撃がバランス良く緩和される。このため、センターブロック及びミドルブロックのすべり量が均一化され、耐摩耗性能がさらに向上する。従って、本発明の
重荷重用空気入りタイヤでは、排水性能と耐摩耗性能とがバランス良く向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤは、例えばトラック・バス用の重荷重用の空気入りタイヤとして好適に利用され、タイヤの回転方向Rが指定された非対称のトレッドパターンを具える。タイヤの回転方向Rは、例えばサイドウォール部(図示せず)に、文字等で表示される。
【0019】
本実施形態のタイヤのトレッド部2には、タイヤ赤道C上をタイヤ周方向に連続してのびる1本のセンター主溝3Aと、該センター主溝3Aのタイヤ軸方向両側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のミドル主溝3Bと、ミドル主溝3Bと接地端Teとの間をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝3Cとが設けられる。また、本実施形態では、トレッド部2に、センター主溝3Aとミドル主溝3Bとの間を継ぐ複数本のセンター横溝4Aと、ミドル主溝3Bとショルダー主溝3Cとの間を継ぐ複数本のミドル横溝4Bと、ショルダー主溝3Cと接地端Teとの間を継ぐ複数本のショルダー横溝4Cとが設けられる。
【0020】
これにより、トレッド部2は、センター主溝3Aとミドル主溝3Bとセンター横溝4Aとで区分されたセンターブロック5がタイヤ周方向に隔設された一対のセンターブロック列5R、ミドル主溝3Bとショルダー主溝3Cとミドル横溝4Bとで区分されたミドルブロック6がタイヤ周方向に隔設された一対のミドルブロック列6R、及び、ショルダー主溝3Cと接地端Teとショルダー横溝4Cとで区分されたショルダーブロック7がタイヤ周方向に隔設された一対のショルダーブロック列7Rが配される。
【0021】
ここで、「接地端」Teは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。そして、正規状態において、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。また、タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
【0022】
また、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合には、正規内圧は180kPaである。
【0024】
さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。但し、タイヤが乗用車用の場合には、正規荷重は、前記各荷重の88%に相当する荷重である。
【0025】
図2に示されるように、トレッド部2には、タイヤ外面2aをなすトレッドゴム2Gが配される。このようなトレッドゴム2Gの複素弾性率E*は、6.3〜7.7MPaであるのが望ましい。即ち、トレッドゴム2Gの複素弾性率E*が6.3MPa未満の場合、タイヤ転動時のブロック5乃至7のすべり量が大きくなり、摩耗量が増加する。また、ヒールアンドトウ摩耗がブロック5乃至7に生じるおそれがある。トレッドゴム2Gの複素弾性率E*が7.7MPaを超える場合、各主溝3A乃至3Cや各横溝4A乃至4Cの溝底に「割れ」が発生しやすくなり、耐TGC(Tread Groove Cracking )性能が悪化するおそれがある。このため、トレッドゴム2Gの複素弾性率E*は、より好ましくは6.5MPa以上であり、より好ましくは7.5MPa以下である。
【0026】
図3に示されるように、本実施形態のセンター主溝3Aは、例えば、タイヤ周方向に直線状にのびる。このようなセンター主溝3Aは、溝内の排水をタイヤ回転方向の後方へスムーズに排出するとともに、直進走行時、大きな荷重の作用するセンターブロック5のタイヤ周方向の剛性を高く確保して、耐摩耗性能や耐偏摩耗性能を向上させる。
【0027】
ミドル主溝3Bは、例えば、タイヤ周方向にジグザグ状にのびる。本実施形態のミドル主溝3Bは、ミドル長辺部8Aとミドル短辺部8Bとが交互に配されている。ミドル長辺部8Aは、タイヤ回転方向後着側に向かって接地端Te側からタイヤ赤道C側に傾斜する溝中心線10aを有する。ミドル短辺部8Bは、ミドル長辺部8Aの溝中心線10aと逆向きに傾斜する溝中心線10bを有する。ミドル長辺部8A及びミドル短辺部8Bの傾斜の向きは、夫々逆でも良い。
【0028】
溝中心線10a、10bを含むミドル主溝3Bの溝中心線10は、ミドル主溝3Bのタイヤ軸方向内側の内側溝縁10xのタイヤ軸方向の最も内側の点a1と、ミドル主溝3Bのタイヤ軸方向外側の外側溝縁10yのタイヤ軸方向の最も内側の点a2との中間点s1、及び内側溝縁10xのタイヤ軸方向の最も外側の点a3と外側溝縁10yのタイヤ軸方向の最も外側の点a4との中間点s2を交互に継いで得られる。
【0029】
ミドル主溝3Bの溝中心線10の振幅λ1は、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上である。即ち、ミドル主溝3Bの振幅λ1が、2mm未満であると、旋回走行時の排水性能が悪化するおそれがある。なお、ミドル主溝3Bの振幅λ1が8mmを超えると、直進走行時の排水抵抗が大きくなり、排水性能が悪化するおそれがある。このため、ミドル主溝3Bの振幅λ1は、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。本明細書において、ミドル主溝3Bの溝中心線10の振幅λ1は、中間点s1と中間点s2とのタイヤ軸方向の距離である。
【0030】
ショルダー主溝3Cは、例えば、タイヤ周方向にジグザグ状にのびる。本実施形態のショルダー主溝3Cは、
ショルダー長辺部12Aとショルダー短辺部12Bとが交互に配されている。ショルダー長辺部12Aは、タイヤ回転方向後着側に向かって接地端Te側からタイヤ赤道C側に傾斜する溝中心線13aを有する。ショルダー短辺部12Bは、タイヤ回転方向後着側に向かってタイヤ赤道C側から接地端Te側に傾斜する溝中心線13bを有する。ショルダー長辺部12A及びショルダー短辺部12Bの傾斜の向きは、夫々逆でも良い。
【0031】
溝中心線13a、13bを含むショルダー主溝3Cの溝中心線13は、ショルダー主溝3Cのタイヤ軸方向内側の内側溝縁13xのタイヤ軸方向の最も内側の点a5と、ショルダー主溝3Cのタイヤ軸方向外側の外側溝縁13yのタイヤ軸方向の最も内側の点a6との中間点s3、及び内側溝縁13xのタイヤ軸方向の最も外側の点a7と外側溝縁13yのタイヤ軸方向の最も外側の点a8との中間点s4を交互に継いで得られる。
【0032】
ショルダー主溝3Cの溝中心線13の振幅λ2は、ミドル主溝3Bの溝中心線10の振幅λ1と同様の理由より、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。ショルダー主溝3Cの溝中心線13の振幅λ2は、中間点s3と中間点s4とのタイヤ軸方向の距離で定義される。
【0033】
図2に示されるように、センター主溝3Aの溝幅W1は、ミドル主溝3Bの溝幅W2よりも小さい。これにより、大きな荷重が作用するセンターブロック5のセンター主溝3Aの溝縁近傍の接地圧が小さくなり、耐摩耗性能が向上する。
【0034】
上述の作用と排水性能とをバランス良く高めるため、センター主溝3Aの溝幅W1(溝の長手方向と直角な溝幅で、以下、他の主溝3B、3Cについても同様とする。)は、好ましくはトレッド接地幅TWの0.8%以上、より好ましくは1.2%以上であり、好ましくは2.4%以下、より好ましくは2.0%以下である。同様に、ミドル主溝3Bの溝幅W2は、好ましくはトレッド接地幅TWの1.5%以上、より好ましくは1.0%以上であり、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下である。また、ショルダー主溝3Cの溝幅W3は、好ましくはトレッド接地幅TWの1.0%以上、より好ましくは1.5%以上であり、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.5%以下である。
【0035】
排水性能を高めつつ、各ブロック5乃至7の剛性を確保する観点より、各主溝3A乃至3Cの溝深さD1乃至D3は、例えば、15〜25mmが望ましい。
【0036】
図1に示されるように、センター主溝3Aは、タイヤ赤道C上に設けられる。ミドル主溝3Bとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L2は、トレッド接地幅TWの12〜22%が望ましい。ショルダー主溝3Cとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L3は、トレッド接地幅TWの28〜33%が望ましい。これにより、各ブロック5乃至7のタイヤ軸方向の剛性がバランス良く確保される。また、トレッド部2と路面との間の水膜がスムーズに排水される。各主溝3A乃至3Cの各位置は、それらの溝中心線で特定される。また、本実施形態のように、ジグザグ状の非直線であるミドル主溝3B及びショルダー主溝3Cでは、ミドル主溝3Bの溝中心線10の振幅中心線G1、ショルダー主溝3Cの溝中心線13の振幅中心線G2が用いられる。
【0037】
センター横溝4Aは、タイヤ赤道C側から接地端Te側に向かって、タイヤ回転方向後着側に傾斜している。このようなセンター横溝4Aは、タイヤの転動を利用して、タイヤ赤道C側から接地端Te側に溝内の水をスムーズに排水し得る。
【0038】
図3に示されるように、センター横溝4Aのタイヤ軸方向に対する角度θ1は、15〜45°である。即ち、センター横溝4Aの角度θ1が15°未満の場合、センターブロック5の先着側の端縁5x(
図3では、センターブロック5の下側の端縁)は、接地時の路面からの衝撃をタイヤ周方向に分散できない。このため、センターブロック5のすべり量が大きくなり、耐摩耗性能や耐偏摩耗性能が悪化する。また、直進走行時の排水性能が悪化する。センター横溝4Aの角度θ1が45°を超える場合、センターブロック5のタイヤ軸方向の剛性が小さくなり、耐摩耗性能や耐偏摩耗性能が悪化する。旋回走行時の排水性能が悪化する。このため、センター横溝4Aの角度θ1は、好ましくは20°以上であり、好ましくは40°以下である。なお、センター横溝4Aの角度θ1は、センター横溝4Aの両側の開口端のタイヤ周方向の中間点b1、b2間を結んだセンター横溝4Aの溝中心線14の角度とする(以下、ミドル横溝4B及びショルダー横溝4Cの角度θ2、θ3が同様に定義される)。
【0039】
図1に示されるように、本実施形態のセンター横溝4Aは、タイヤ赤道Cの一方側(
図1では左側)に配される第1センター横溝15Aと、タイヤ赤道Cの他方側(
図1では右側)に配される第2センター横溝15Bとを含んで形成される。第1センター横溝15A、及び、第2センター横溝15Bは、同一のピッチPaでタイヤ周方向に隔設されている。第1センター横溝15A、及び、第2センター横溝15Bは、タイヤ周方向に半ピッチ位相をずらせて配置されている。即ち、センター横溝4Aとセンターブロック5のタイヤ周方向の中央部とがタイヤ軸方向に並ぶ。これにより、センター横溝4Aの角度θ1を上述の範囲としたことによって、タイヤ軸方向の剛性が小さいセンターブロック5のタイヤ周方向の両端近傍のタイヤ軸方向へのすべりが抑制される。従って、耐摩耗性能や耐偏摩耗性能が向上する。
【0040】
図4に示されるように、センター横溝4Aは、センター主溝3Aからタイヤ軸方向の外側に直線状にのびる内側溝部16Aと、ミドル主溝3Bからタイヤ赤道C側に直線状にのびる外側溝部16Bとを含む。内側溝部16Aと外側溝部16Bとは、タイヤ周方向に位置ずれしている。例えば、内側溝部16Aの溝中心線17aのタイヤ軸方向の外端17eと、外側溝部16Bの溝中心線17bのタイヤ軸方向の内端17iとのタイヤ周方向距離Laは、内側溝部16Aの溝幅W4aの13〜23%である。このようなセンター横溝4Aは、排水性能とセンターブロック5のタイヤ周方向の端部の剛性とをバランス良く向上する。
【0041】
内側溝部16Aの溝中心線17aのタイヤ軸方向の外端17eは、センター主溝3Aからタイヤ軸方向外側に向かって直線状でのびるセンター横溝4Aの溝縁18x、18yのタイヤ軸方向の外端の中間点である。外側溝部16Bの溝中心線17bのタイヤ軸方向の内端17iは、ミドル主溝3Bからタイヤ軸方向内側に向かって直線状でのびるセンター横溝4Aの溝縁18z、18wのタイヤ軸方向の内端の中間点である。
【0042】
このようなセンター横溝4Aの溝幅W4(溝中心線14と直角な平均の溝幅であって、ミドル横溝4B、ショルダー横溝4Cも同様とする)は、タイヤ転動時、タイヤ赤道C側から接地端Te側に溝内の水をスムーズに排水する観点、及びセンターブロック5の剛性を確保する観点より、例えば、4〜16mmであるのが望ましい。
【0043】
ミドル横溝4B及びショルダー横溝4Cは、略直線状にのびる。これにより、ミドル主溝3Bからミドル横溝4B及びショルダー横溝4Cを介して車両外側へのスムーズな排水が可能になる。また、ミドルブロック6及びショルダーブロック7の剛性が高く確保される。従って、排水性能と耐摩耗性能とがバランス良く向上する。
【0044】
図4に示されるように、「略直線状」とは、ミドル横溝4Bでは、タイヤ周方向の一方側の溝縁20x(
図4では上側の溝縁)上でミドル横溝4Bの溝中心線21に最も近接する点20aと、タイヤ周方向の他方側の溝縁20y(
図4では下側の溝縁)上で溝中心線21に最も近接する点20bとの溝中心線21に対する直角方向の距離W5aが、ミドル横溝4Bの溝幅W5の80%以上の溝である。このようなミドル横溝4Bは、排水抵抗が小さく確保されるため、高い排水性能が維持される。ショルダー横溝4Cの「略直線状」とは、ミドル横溝4Bの場合と同様に、ショルダー横溝4Cの最内側距離W6aが、ショルダー横溝4Cの溝幅W6(
図1に示す)の80%以上の溝である。
【0045】
ミドル横溝4Bは、タイヤ赤道C側から接地端Te側に向かって、タイヤ回転方向後着側に傾斜している。このため、センター横溝4Aの場合と同様に、タイヤ転動時、タイヤ赤道C側から接地端Te側に溝内の水をスムーズに排水できる。同様の観点より、ショルダー横溝4Cも、タイヤ赤道C側から接地端Te側に向かって、タイヤ回転方向後着側に傾斜している。
【0046】
ミドル横溝4Bの溝幅W5は、4.0〜16.0mmである。即ち、ミドル横溝4Bの溝幅W5が4.0mm未満の場合、排水性能が悪化する。ミドル横溝4Bの溝幅W5が16.0mmを超える場合、ミドルブロック6のタイヤ周方向の剛性が小さくなり、耐偏摩耗性能が悪化する。このため、ミドル横溝4Bの溝幅W5は、好ましくは4.5mm以上であり、好ましくは15.5mm以下である。同様の観点より、ショルダー横溝4Cの溝幅W6は、4.0mm以上、好ましくは4.5mm以上であり、16.0mm以下、好ましくは15.5mm以下である。
【0047】
図3に示されるように、ミドル横溝4Bのタイヤ軸方向に対する角度θ2は、センター横溝4Aの角度θ1よりも小さい。直進走行時、センターブロック5は、ミドルブロック6よりも大きな荷重が作用する。このため、上述のように各横溝4A、4Bの角度を規定することで、センターブロック5の先着側の端縁5x、及びミドルブロック6の先着側の端縁6xは、接地時の路面からの衝撃がバランス良く緩和される。従って、センターブロック5及びミドルブロック6のすべり量が均一化され、耐摩耗性能がさらに向上する。
【0048】
センターブロック5、ミドルブロック6及びショルダーブロック7のすべり量を均一にするため、ミドル横溝4Bの角度θ2は、ショルダー横溝4Cのタイヤ軸方向に対する角度θ3よりも大きく形成されるのが望ましい。
【0049】
上述の作用を効果的に発揮させるため、ミドル横溝4Bの角度θ2は、好ましくは3°以上、より好ましくは4°以上であり、また好ましくは10°以下、より好ましくは9°以下である。ショルダー横溝4Cの角度θ3は、好ましくは0.5°以上、より好ましくは1°以上であり、また好ましくは5°以下、より好ましくは4.5°以下である。
【0050】
図1に示されるように、ミドル横溝4BのピッチPbは、センター横溝4AのピッチPaと同一である。ミドル横溝4Bとセンター横溝4Aとは、タイヤ周方向に半ピッチ位相をずらせて配置されている。即ち、センター横溝4Aとミドルブロック6のタイヤ周方向の中央部とがタイヤ軸方向に並ぶ。また、ミドル横溝4Bとセンターブロック5のタイヤ軸方向の中央部とがタイヤ軸方向に並ぶ。これにより、センターブロック5のタイヤ周方向両側の端縁のタイヤ軸方向へのすべり及びミドルブロック6のタイヤ周方向両側の端縁のタイヤ軸方向へのすべりが抑制される。従って、さらに、耐摩耗性能や耐偏摩耗性能が向上する。
【0051】
図2に示されるように、本実施形態のミドル横溝4Bの溝底には、タイバーが設けられていない。これにより、摩耗末期でも、ミドル横溝4Bの溝容積が確保される。従って、排水性能が、さらに向上する。なお、ミドル横溝4Bの溝底には、最も深い溝底からの隆起高さH1がミドル横溝4Bの最も深い溝深さD5の50%未満のタイバー(破線で示される)Tが設けられても良い。このようなタイバーTは、排水性能に大きな影響を与えるおそれが小さい。排水性能をさらに向上させる観点より、本実施形態のショルダー横溝4Cの溝底にも、タイバーは設けられていない。なお、ミドル横溝4Bの場合と同様に、最も深い溝底からの隆起高さH2がショルダー横溝4Cの最も深い溝深さD6の50%未満のタイバー(破線で示される)Tが設けられても良い。
【0052】
特に限定されるものではないが、排水性能と各陸部5、6、及び7の剛性をバランス良く確保するため、センター横溝4A及びミドル横溝4Bの溝深さD4、及びD5は、例えば、15.0〜25.0mmが望ましい。ショルダー横溝4Cの溝深さD6は、例えば10.0〜20.0mmが望ましい。
【0053】
図4に示されるように、センター領域5Aのランド比Lcは、ミドル領域6Aのランド比Lmの1.05〜1.25倍である。センター領域5Aは、センターブロック5のタイヤ軸方向の両端5e、5eを通るタイヤ周方向線5c、5c間の領域である。ミドル領域6Aは、ミドルブロック6のタイヤ軸方向の両端6e、6eを通るタイヤ周方向線6c、6c間の領域である。センター領域5Aのランド比Lcが、ミドル領域6Aのランド比Lmの1.05倍未満である場合、又は、センター領域5Aのランド比Lcが、ミドル領域6Aのランド比Lmの1.25倍を超える場合、センターブロック5の剛性とミドルブロック6の剛性とをバランス良く確保することができず、センターブロック5及びミドルブロック6の走行時の接地圧が不均一になる。このため、タイヤ転動時、センターブロック5及びミドルブロック6のすべり量の差が大きくなり、耐偏摩耗性能が悪化する。
【0054】
本実施形態の各ブロック5乃至7には、平面視略クランク状でタイヤ軸方向にのびる細溝22が設けられる。このような細溝22は、各ブロック5乃至7のタイヤ周方向長さを小さくして、タイヤの転動によるすべり量を抑制する。
【0055】
各ブロック5乃至7の剛性を高く確保しつつ、すべり量を抑制するために、細溝の幅W7は、1.0〜3.0
mm程度が望ましい。同様に、細溝の深さD7(
図2に示す))は、1.0〜4.0mm程度が望ましい。
【0056】
センターブロック5、ミドルブロック6及びショルダーブロック7には、各主溝3と各横溝4とが交差する頂部、及び各主溝3と細溝22とが交差する頂部には、略三角形状で斜めに切り欠いた面取り部mが設けられる。このような面取り部mは、各ブロック5乃至7の剛性を高めることができ、ブロック欠けや偏摩耗の起点となるのを抑制する。
【0057】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されるものでなく、種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0058】
本発明の効果を確認するために、
図1の基本パターンを有し、表1の仕様に基づいた11.00R20の重荷重用の空気入りタイヤがテストされた。表1に記載された溝を除いて各溝の溝幅及び角度等は、
図1に示される通りである。なお、各タイヤの主な共通仕様は以下の通りである。
トレッド接地幅TW:242.4mm
各主溝の溝深さ:21.0mm
センター横溝の溝深さ:21.0mm
ミドル横溝の溝深さ:21.0mm
ショルダーの溝深さ:14.5mm
細溝の溝深さ:2.0mm
テスト方法は、次の通りである。
【0059】
<排水性能(ウェットブレーキ)>
各試供タイヤが、下記の条件で、8t積みの国産トラック(2−D車、ABSブレーキ装着)の全輪に装着された。そして、テストドライバーは、テスト車両を、水深0.5〜2.0mmのアスファルト路面のテストコースを走行させ、速度65km/hから急ブレーキを作動させた。このとき、速度が60km/hから20km/hになるまでの制動距離が測定された。結果は、制動距離の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好であるが、90以下は不適格とする。
リム:8.00×20
内圧:780kPa
積載条件:ドライブ軸にタイヤ1本当たり30.4kN
タイバーの長さ/タイバーが設けられる各横溝の溝中心線の長さ:30% (実施例6、7及び比較例5、6)
【0060】
<耐摩耗性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、乾燥アスファルト路面を10000km走行させた。その後、センター主溝及びミドル主溝の溝残量がタイヤ周上で8か所測定された。結果は、溝残量の平均値であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きい方が良好であるが、90以下は不適格とする。
【0061】
<耐偏摩耗性能>
上記耐摩耗性能で使用された各テストタイヤのセンターブロックのタイヤ周方向の両側のブロック縁の摩耗量の差、及び、ミドルブロックのタイヤ周方向の両側のブロック縁の摩耗量の差が、タイヤ周方向で8カ所測定された。結果は、摩耗量の差の平均値の逆数であり、実施例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きいほど良好であるが、90以下は不適格とする。
【0062】
<耐TGC性能>
濃度50pphmのオゾン(500L/H)を吹き付けながら、各テストタイヤが下記条件にて、ドラム試験機上を走行した。走行後、溝底の割れが試験者の肉眼によって観察された。結果は、割れが一番大きかったタイヤを「1」、割れの生じなかったタイヤを「5」とする5点法で表示された。試験条件は次の通りである。
内圧:780kPa
荷重:30.4kN
速度:80km/h
走行時間:400時間
テストの結果などが表1に示される。
【0063】
【表1】
【0064】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて各性能がバランス良く向上していることが確認できる。また、ミドル横溝及びショルダー横溝の溝幅を好ましい数値の範囲内で変化させてテストを行ったが、このテスト結果と同じであった。