(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5739909
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】リニアモータ圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 35/04 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
F04B35/04
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-547412(P2012-547412)
(86)(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公表番号】特表2013-516567(P2013-516567A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】BR2010000443
(87)【国際公開番号】WO2011082461
(87)【国際公開日】20110714
【審査請求日】2013年8月2日
(31)【優先権主張番号】PI1000181-6
(32)【優先日】2010年1月5日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】506198746
【氏名又は名称】ワールプール・エシ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リリー,デイートマー・エリツヒ・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】パフ,リナルド
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−200682(JP,U)
【文献】
英国特許出願公告第902184(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル(1)の内部において、
シリンダ(12)を画定するブロック(10)と、
シリンダ(12)内で往復作動するピストン(20)、作動手段(40)およびピストン(20)を作動手段(40)に結合するロッド(30)によって形成された可動組立体と、
直径方向に従って配設され、第1の固定手段(MF1)によって同軸に可動組立体(20、30、40)に、第2の固定手段(MF2)によってブロック(10)にそれぞれ取り付けられた第1および第2の端部(50a、50b)を有する共振ばね(50)であって、第2の固定手段(MF2)が、ブロック(10)に対しおよび当該共振ばね(50)の第2の端部(50b)に対して固定される共振ばね(50)と
を備えるタイプの、リニアモータ圧縮機であって、
第2の固定手段(MF2)が、共振ばね(50)の軸の方向、前記第2の端部(50b)の直径方向、および前記2つの方向と直交する直径方向に向く、互いに直交する3つの方向のブロック(10)に対する共振ばね(50)の変位に沿って、また、互いに直交する前記3つの方向を中心とする共振ばね(50)の第2の端部(50b)の角度変位に沿って定められる調整可能な相対位置で、前記第2の端部(50b)をブロック(10)に固着させることを特徴とする、リニアモータ圧縮機。
【請求項2】
第2の固定手段(MF2)が、共振ばね(50)の軸の方向、および共振ばね(50)に対して直径方向であり、共振ばねの軸および前記第2の端部(50b)の直径方向に直交する軸を中心にそれぞれの、ブロック(10)に関連する前記第2の固定手段(MF2)の線形変位および角度変位に沿って画定された位置でブロック(10)に固着され、前記第2の端部(50b)が、前記第2の端部(50b)の直径方向および前記第2の端部(50b)の方向と直交する直径方向の共振ばね(50)の線形変位に沿って、ならびに前記第2の端部(50b)の前記直径方向を中心におよび共振ばね(50)の軸の方向を中心に共振ばね(50)の角度変位に沿って画定された位置で、第2の固定手段(MF2)に固着されることを特徴とする、請求項1に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項3】
第2の固定手段(MF2)が、共振ばね(50)の軸の方向、および共振ばね(50)に対して直径方向であり、前記第2の端部(50b)の直径方向と直交する軸を中心にそれぞれの、線形変位に沿っておよび角度変位に沿って画定された位置でブロック(10)に取り付けられた基部本体(70)と、基部本体(70)に押し付けて着座し、それによって前記第2の端部(50b)の方向と直交する直径方向に直線的に、かつ共振ばね(50)の軸の方向を中心に角度的に変位される中間本体(80)であって、共振ばね(50)の第2の端部(50b)がその上に着座する基部本体(70)上に着座する面の反対側の面を有する、中間本体と、基部本体(70)に取り付けられ、それによって共振ばね(50)の第2の端部(50b)を中間本体(80)の前記対向する面に対して、および中間本体(80)を基部本体(70)に対して押し付ける、上部本体(90)とを備えることを特徴とする、請求項2に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項4】
中間本体(80)の前記反対側の面には、共振ばね(50)の第2の端部(50b)が中に着座するくぼみ(82)が設けられ、前記上部本体(90)が、前記基部本体(70)に取り付けられ、それによって共振ばね(50)の第2の端部(50b)を中間本体(80)のくぼみ(82)内に押し込むことを特徴とする、請求項3に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項5】
ブロック(10)が、シリンダ(12)に対して直径方向に向かい合い、長手方向のスロット(16)が設けられた自由端部をそれぞれが有する2つの長手方向の突出部(15)を有し、前記基部本体(70)が、対向する端面(70a)と、正面(70b)と、ブロック(10)の長手方向の突出部(15)のスロット(16)を通って装着されるねじ(17)を受け入れ保持するために端面(70a)からそれぞれ設けられた2つの同軸の穴(71)とを有することを特徴とする、請求項3または4に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項6】
中間本体(80)が、基部本体(70)の正面(70b)に対して着座する後面(80a)と、正面(80b)とを有し、中間本体(80)の後面(80a)および基部本体(70)の正面(70b)の部分の一方が、基部本体(70)の正面(70b)によっておよび中間本体(80)の後面(80a)によって画定された部分の一方内に設けられた楕円形のくぼみ(72)の内部において嵌合され案内される、円筒状のピンの形態の直交する突出部(81)を組み込み、前記楕円形のくぼみ(72)が、穴(71)の共通軸に対して平行であり、共振ばね(50)の第2の端部(50b)の直径方向と直交する長手方向軸を有することを特徴とする、請求項5に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項7】
直交する突出部(81)が、圧縮可動組立体(20、30、40)の軸に対して同軸または略同軸であることを特徴とする、請求項6に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項8】
上部本体(90)が、基部本体(70)内にその正面(70b)から設けられたそれぞれのねじ込み式穴(73)に軸方向に位置合わせされた少なくとも2つの貫通穴(91)によって互いに結合された後面(90a)および正面(90b)を有し、各貫通穴(91)が、基部本体(70)のそれぞれのねじ込み式穴(73)の内部に固着されるねじ(92)を受け入れることを特徴とする、請求項5、6または7のいずれか一項に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項9】
基部本体(70)および上部本体(90)によって画定された部分の一方が、前記部分の他方に向けられたその面(70b、90a)内に、他方の部分の方向に突出し、隣接するねじ(92)の締め付け時にその部分上に着座するスペーサ(75)を組み込むことを特徴とする、請求項8に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項10】
第1の固定手段(MF1)が、互いに対向し、共振ばね(50)の第1の端部(50a)のそれぞれの延長部が部分的に中に収容される、凹型クレードルの形態のくぼみ(61)が各々に設けられた2つの軸受部分(60)を含み、前記軸受部分(60)が、作動手段(40)に組み込まれ、一方の軸受部分(60)を、共振ばね(50)の第1の端部(50a)の周りで他方に対して押し付けることができる、少なくとも1つの締め付け手段(62)に結合されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項11】
作動手段(40)が、2本のアーム(43)を備えたニッパの形態のフレーム(42)を備え、各アームが、他方のアーム(43)に固着された基端部(43a)と、一体品としてそれぞれの軸受部分(60)を担持する自由端部(43b)とを有することを特徴とする、請求項10に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項12】
軸受部分(60)の各々が、隣接するくぼみ(61)に対して変位され、ねじの形態の締め付け手段(62)を受け入れるように構築された穴(63)であって、くぼみ(61)の軸と直交する同じ軸に従って配設される穴(63)を有することを特徴とする、請求項11に記載のリニアモータ圧縮機。
【請求項13】
共振ばね(50)が、同じ直径を有し、隣接する端部を有する2つの挿入されたばねワイヤによって形成され、隣接する端部が、互いに同軸であり、共振ばね(50)の軸と直交する直径方向に従って配設され、それによって結合して共振ばね(50)の第1および第2の端部(50a、50b)を画定することを特徴とする、請求項12に記載のリニアモータ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータによって駆動されるタイプの圧縮機内の共振ばねのための装着装置に関し、より詳細には、圧縮可動組立体、すなわちピストンロッド作動手段組立体を、圧縮機シェルの内部に固着されたシリンダブロックによって全体的に画定された非共振組立体に結合するタイプの共振ばねのための装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同封された図面の
図1に例示的に示されるように、一般に冷凍に使用され、リニアタイプの電気モータによって駆動される圧縮機は、通常は気密性の、かつ、たとえばコイルばねなどの懸架ばね11を用いてシェル1内に装着され得るブロック10を含む非共振組立体を収容するシェル1を備える。
【0003】
ブロック10は、圧縮チャンバ13が内部に画定されるシリンダ12を組み込み、圧縮チャンバは、通常は弁プレート14およびヘッド25によって閉じられる端部13aと、圧縮チャンバ13の内部において往復するピストン20がそこから装着される反対側の開放端部13bとを有する。ピストン20は、一般にロッド30を用いて、ブロック10に装着されたリニアモータMによって作動される磁石41を担持する作動手段40に結合される。
【0004】
リニアモータMは、ピストン20をシリンダ12の圧縮チャンバ13の内部において変位させるのに必要な駆動を発生させ、結果として、ガスの形態の冷凍流体を圧縮する役割を担っている。
【0005】
ピストン、ロッドおよび作動手段によって画定された可動組立体には、共振ばね50が結合され、この共振ばねは、ピストン20が圧縮チャンバ13の内部において軸方向の変位を往復させるときに、ピストン20上に反対の軸方向の力を及ぼすようにして装着される。共振ばね50は、ピストン20の軸方向の変位のためのガイドとして作動し、さらに、圧縮機のリニアモータMと共に圧縮可動組立体上で作動する。圧縮可動組立体および共振ばねは、圧縮機の共振組立体を画定する。
【0006】
図1に例示される従来技術の構造では、共振ばね50は、直径方向に配設されたばね延長部によって画定された第1および第2の端部50a、50bを有するコイル形状を有し、前記端部は、第1の固定手段MF1によって圧縮可動組立体(通常は作動手段50)に、第2の固定手段MF2によって非共振組立体、たとえばブロック10またはその支持構造にそれぞれ取り付けられる。
【0007】
同封された図面の
図1に示されるこのタイプの構造では、各々の第1および第2の固定手段MF1、MF2は、可動組立体および非共振組立体にそれぞれ堅固に取り付けられる基部b1、b2と、それぞれの基部b1、b2に対してねじ込まれるカバー部分t1、t2とを備えて、前記基部b1、b2とカバー部分t1、t2の間に、共振ばね50の第1および第2の端部50a、50bをそれぞれ保持する。基部およびカバー部分は、共振ばね50の直径方向の端部50a、50bが着座するための凹型のクレードルを画定するそれぞれのスリーブ部分を画定するように構成される。このタイプの装着装置は、隙間を発生させる可能性がある、また、精密な寸法設定、すなわち製造公差および装着公差を低減する必要があるといったいくつかの欠点を有する。
【0008】
図1に示される装着装置のタイプでは、圧縮機の取り付け中、共振組立体の長手方向の寸法調整、すなわちピストン20の上部と弁プレート14の間の距離の寸法調整を行うことは可能ではない。さらに、共振ばね50の軸を中心に共振組立体のいかなる回転調整も行うことは可能ではない。唯一可能であるのは、ねじの最終締め付け前に、共振ばね50の端部を、ばねの軸と直交する直径方向におよびばね50の前記端部50aの軸を中心に、直線的におよび角度的に変位させることによって調整を実施することである。
【0009】
したがって、前記従来技術の装着装置では、ピストン20、ロッド30、作動手段40、および共振ばね50によって画定される部分の寸法設定および装着は、圧縮機の正しい作動に必須であると考えられ、以下に規定され得る2つの装着条件を保証するために実行するには複雑で費用がかかるものとなる厳しい公差で製作されることが必要とされている:
第1に、圧縮チャンバの内部における冷凍ガスの死容積を最小限に抑え、したがって圧縮機の効率損失を最小限に抑えるために、ピストンを上死点状態、すなわち圧縮ストロークの端末状態において弁プレートにできるだけ近付けること可能にするように、装着状態において、弁プレートに対してピストンの上部の位置、および
第2に、軸受(油または空気式)上の負荷を最小限にするために、シリンダに対してピストンの位置合わせ。
【0010】
しかしながら、ピストンの上部からシリンダの上部までの正しい距離を得るために、装着プロセス中、述べられている距離の最終公差が許容レベル内に収まるように、一連の小さい公差が維持される。
【0011】
さらに、シリンダに関連するピストンの正しい位置合わせを得るために、圧縮機の主軸と直交する公差に対して同じ低いレベルを維持することが必要である。これは、関係する構成要素に対する製造コストが高くなることを示している。
【0012】
ピストン20は作動手段40に結合されて、これらの間の力の伝達および圧縮チャンバ13の軸と一致する軸方向に従ったピストン20の変位を可能にし、それによってピストン20に対するブロック10の横断方向の反動力を最小限に抑える。ピストン20に対するブロック10のそのような横断方向の反動力は、ピストンとシリンダブロックの間に過剰な摩擦を引き起こす恐れがあり、結果として、エネルギー消費が増大することにより圧縮機の効率性が低下し、より大きい摩擦レベルにさらされた構成要素の摩耗が加速して、圧縮機の耐用年数が短縮され、摩擦によって騒音が発生することに至る。
【0013】
上記で述べられた問題により、ピストン、ロッド、作動手段、およびシリンダブロックによって画定された部分を装着するための装置であって、比較的大きい製造公差および組み立て公差を有する構成要素部分を用いて、シリンダの軸に対するピストンの位置合わせ、およびピストンの装着状態または静止状態における、弁プレートに関連するピストンの上部の正しい位置決めを保証する、構成が望ましくなる。
【0014】
共振ばねをリニア圧縮機内に装着する際の前記問題に対する解決策は、本出願人のブラジル特許出願第07055541−2号明細書に提案されている。
【0015】
前記従来技術の解決策によれば、共振ばねは、第1の固定手段によって圧縮機のシリンダブロックに固着された第1の端部と、第2の固定手段によって、ピストン、ロッドおよび作動手段によって画定された可動組立体に固着された第2の端部とを有する。
【0016】
前記従来の構造では、第1および第2の固定手段の少なくとも1つは、共振ばねの端部の1つの周りに第1の側が先に固着され、その反対側に固定面を有する軸受部分と、シリンダブロックおよび可動組立体の部分の一方に1つの側が先に取り付けられ、反対側に結合面を有する軸受受け入れ部分とを備える。固定手段の軸受部分および軸受受け入れ部分の前記固定面および結合面は、互いに着座して融合され、それによってばねのそれぞれの端部を可動組立体およびシリンダブロックの部分の一方に取り付け、前記可動組立体をシリンダと同軸に所定の軸方向の位置決めで維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ブラジル特許出願第07055541−2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
低複雑度の簡単な構造を用いて、シリンダの内部におけるピストンの正しい位置決めを、関係する部分の公差を小さくする必要なく可能にするが、この知られている解決策は、互いに熱的に融合し、圧縮力を受けたときに可撓性または弾性変形を有し、それによって共振ばね上で作動する力の予期せぬ増幅および共振ばねの励起における不均衡を許す、プラスチック材料を使用するという不都合性を有している。
【0019】
プラスチック材料を使用する上での他の不都合性は、固定手段の弾性を低減し、熱化学劣化による老朽化に対する抵抗を最大限にするために、特別かつコスト高の材料を使用する必要があることである。特別なプラスチックを用いても、この従来技術の解決策は、圧縮機の全耐用年数の間、信頼高い装着装置を提供するという問題に依然として直面している。
【0020】
上記で述べられた不都合性を鑑みて、本発明は、上記で考慮されたタイプのものであり、かつシリンダの内部におけるピストンの正しい心出し位置決めを得るために、比較的簡単な構造および組み立てを有し、非常に厳密な公差を必要としない構成要素部分を使用することを可能にする、線形圧縮機内の共振ばねのための装着装置と、共振ばねの作動特性を妨げず、圧縮機の全耐用年数にわたって耐久性がある、信頼高い装着装置とを提供するという全般的な目的を有する。
【0021】
本発明はまた、上記で引用されたものなどの、ピストンをシリンダに装着する際、ピストンの上部と弁プレートの間の所定の距離を保証し、それによって圧縮機の適切な容積能力を保証することができる、装着装置を提供するという目的も有する。
【0022】
本発明の他の目的は、ピストンの変位軸と直交する2つの方向に適切な同心性を有して、さらに前記ピストン軸を中心に角度的に、モータ(M)に対して磁石(41)を正しく位置決めすることを保証して、磁石をモータの積層部間の空間内で、前記積層部に接触することなく直線的に変位させることを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記で引用された目的に適合させるために、本発明は、シェルの内部において、シリンダを画定するブロックと、シリンダ内で往復作動するピストン、作動手段およびピストンを作動手段に結合するロッドによって形成された可動組立体と、直径方向に従って配設され、第1の固定手段によって同軸に可動組立体に、および第2の固定手段によってブロックにそれぞれ取り付けられた第1および第2の端部を有する共振ばねとを備えるタイプのリニアモータ圧縮機内の共振ばねのための装着装置を提供する。
【0024】
共振ばねの製造プロセスにより、端部は、他方の端部と鋭角を形成することが可能であるため、その直径方向の端部は、互いに平行であることは強制ではないことに留意されたい。
【0025】
本発明によれば、第2の固定手段は、調整可能な相対的位置決めにより、ブロックおよび共振ばねの第2の端部に取り付けられ、それによって前記第2の端部を、互いに直交し、かつ共振ばねの軸の方向、前記第2の端部の直径方向、および前記2つの第1の方向と直交する直径方向によって画定された3つの方向の、ブロックに関連する共振ばねの変位に沿って、また、互いに直交する前記3つの方向を中心に共振ばねの第2の端部の角度変位に沿って画定された位置で、ブロックに固着させる。
【0026】
2つの部分の軸が同軸に維持される状態における、共振ばねと圧縮可動組立体との従来の固定を考えると、本装着装置に提案された構造は、特に第2の固定手段に対して、圧縮可動組立体の装着中、圧縮機のシリンダおよびモータに関連する共振組立体の必要な位置合わせおよび軸方向の位置決めを行うことを可能にする。
【0027】
本発明はさらに、共振ばねの第1の端部を、前記ばねの第1の端部の直径方向および前記方向を中心にその相対変位に沿って画定された位置で圧縮可動組立体に取り付けることを可能にして、共振ばねと圧縮可動組立体との同軸の位置合わせを容易にする、第1の固定手段のための簡易化された構造を提供する。
【0028】
本発明は、同封された図を参照して、本発明を実施する方法例を用いて以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】従来技術の構成による、リニアモータによって駆動され、組立圧縮機および非共振組立体の部分に装着された共振ばねを有する圧縮機の簡易化された長手方向の概略断面図である。
【
図2】シェルが除かれているが、本発明の装着装置を含む、
図1に示されたタイプの圧縮機の簡易化された長手方向の概略断面図である。
【
図3】
図2のものに類似するが、長手方向の断面が、
図2の図に対して90度ずれている図である。
【
図4】第1の端部が、可動組立体によって担持された第1の固定手段に装着されている共振ばねを示す、
図2および
図3に示された圧縮機の一部の斜視図である。
【
図5】第2の端部が、ブロックにすでに装着された第2の固定手段に固着されている共振ばねを示す、
図2および
図3に示された圧縮機の他の部分の斜視図である。
【
図6B】
図2、
図3、および
図5に示された第2の固定手段の別の構成要素部分の斜視図である。
【
図6C】
図2、
図3、および
図5に示された第2の固定手段の別の構成要素部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
すでに述べられたように、本発明の共振ばねのための装着装置は、リニアモータによって駆動される冷凍圧縮機の構造に対して説明される。
【0031】
図2に示されるように、本発明の共振ばねのための装着装置が適用される冷凍圧縮機は、通常は気密性のシェル1の内部に、
図1に示されるリニアモータ圧縮機に関して本明細書の導入部で説明された同じ基本的構成要素を備え、前記共通の構成要素は、同じ参照番号で規定される。
【0032】
図示される構造によれば、共振ばね50は、同じ直径を有し、隣接する端部を有する2つの挿入されたばねワイヤによって形成されたコイル形状を有し、隣接する端部は、互いに同軸であり、共振ばね50の軸と直交する直径方向に従って配設され、それによって結合して、共振ばね50の第1および第2の端部50bを画定する。先に述べられたように、共振ばね50の2つの端部50a、50bは、互いに対して平行であることは強制ではないが、共振ばね50に対して直径方向の位置決めを維持する。
【0033】
図2から
図6Cに示される本発明の構造によれば、第1の固定手段MF1は、2つの軸受部分60を備え、軸受部分は互いに対向し、その各々には、通常は半円プロファイルを有する凹型クレードルとして作動するように構成されたくぼみ61が設けられ、その内部には、共振ばね50の第1の端部50aのそれぞれの延長部が部分的に収容され、前記端部は、図示される構造では、2つのばねワイヤの同軸かつ隣接する端部によって画定されている。
【0034】
共振ばね50は、開放式に、すなわち2つのばねワイヤの同軸延長部によって画定され、または閉鎖式に、それぞれのばねワイヤの同軸の延長部が、任意の結合手段によって互いに接合された状態で画定された、一方または両方の端部50a、50bを有することができることを理解されたい。
【0035】
2つの軸受部分60は、これらの間に、共振ばね50の第1の端部50aを包含し、固定するように構成される。
【0036】
2つの軸受部分60は、作動手段40に組み込まれ、たとえばねじなどの少なくとも1つの締め付け手段62に結合され、締め付け手段は、共振ばね50の第1の端部50aの周りで少なくとも1つの締め付け手段62を作動させることにより、一方の軸受部分を他方に対して移動させ他方に対して押し付け、前記第1の端部50aを2つの軸受部分60の2つの相互に直面するくぼみ61の内部に保持することができる。図示される構造では、2つの軸受部分60は、一体品として、2本のアーム43を備えたニッパの形態のフレーム42を備える作動手段40に組み込まれ、アームの各々は、他方のアーム43に取り付けられた基端部43aと、それぞれの軸受部分60を担持する自由端部43bとを有する。
【0037】
軸受部分60の各々は、隣接するくぼみ61に対して変位され、ねじの形態の締め付け手段62を受け入れるように構築された穴63を有し、穴63の1つは、雌ねじ式になり得る。軸受部分60の穴63は、くぼみ61の軸と直交する同じ軸に従って配設される。
【0038】
2つの軸受部分60は、これらが、共振ばね50の第1の端部50aの周りで一方を他方に押し付け、それによって共振ばね50の第1の端部50aを可動組立体に固着するように選択的に変位され得るという条件のもと、さまざまな方法で作動手段40に組み込まれ得ることを理解されたい。
【0039】
図2、
図3、および
図4に示されるように、ピストン20は、フレームの前記2本のアーム43が互いに取り付けられるフレーム42の端部に、ロッド30によって同軸に結合される。
【0040】
また、図に示される構造のタイプによれば、作動手段40のフレーム42は、永久磁石の形態を有する磁石41を担持する。
【0041】
第1の固定手段MF1に関して提案された構造は、2つの軸受部分60を作動手段40のフレーム42内に画定することを可能にして、第1の固定手段MF1の形成を大幅に簡易化し、共振ばね50の第1の端部50aを、2つの軸受部分60の最終締め付け前に、その内部を通って前記第1の端部50aの軸の直径方向に従って直線的に、それと共に前記直径方向の軸を中心に角度的に変位させることを可能にする。したがって、共振ばね50の第1の端部50aの位置決めは、可動組立体の装着中、締め付け手段62の最終圧縮前に直線的におよび角度的に調整可能であり、それによって作動手段40に対する、すなわち圧縮可動組立体に対する共振ばね50の所望の同軸の固定を容易に得ることを可能にする。共振ばね50は、共振ばね50の軸に対して直径方向にかつ中央に、但し必ずしも互いに平行にする必要なく配置された端部50aおよび50bを有するように構成されることを理解されたい。
【0042】
好ましい図示される構造では、共振ばね50の第1および第2の端部50a、50bは、互いに対して同一平面にかつ共振ばね50の軸と直交する方向に従って配設される。この場合、軸受部分60は、これもまた共振ばね50の軸に対して直交方向に配設されたくぼみ61の軸を有し、それによってばねの第1の端部50aの位置決めの線形の調整が、共振ばね50の軸と直交する方向に従って行われること、および前記第1の端部50aの角度調整が、前記第1の端部50aの軸を中心に共振ばね50を角度的に変位させることによって行われることを可能にする。
【0043】
作動手段40は、たとえば鋳造アルミニウム合金などの任意の適切な材料で構築されたニッパの形態のフレーム42を有することができる。
【0044】
さらに、本発明によれば、第2の固定手段MF2は、共振ばね50の第2の端部50bを圧縮機のブロック10に結合させ、たとえば鋼金属合金または焼結材料などの任意の適切な材料で構築され得る、基部本体70、中間本体80、および上部本体90を備える。
【0045】
基部本体70は、シリンダ12の輪郭に対して直径方向に対向するブロック10の2つの長手方向の突出部15の自由端部間に収容される2つの対向する端面70aを有するように寸法設定される。ブロック10の各々の長手方向の突出部15の自由端部には、好ましくは開放端部を有する長手方向のスロット16が設けられ、このスロットを通してねじ17が取り付けられ、このねじは、正面70bも有する基部本体70の直面する端面70a内に設けられたそれぞれの穴71の内部にねじ込まれる本体を有する。
【0046】
上記で引用された構造では、基部本体70は、互いに対向し、同軸である2つの穴71を有し、その各々は、ブロック10のそれぞれの長手方向の突出部15の長手方向のスロット16を通して装着されたそれぞれのねじ17を受け入れ保持する。穴71は、それぞれのねじ17のねじ込み式本体を保持するために雌ねじが設けられてもよく、または前記穴を通して配設され、締め付けナットに結合された単一ねじの本体を収容するように寸法設定されるだけでもよいことを理解されたい。
【0047】
したがって、基部本体70は、共振ばね50の長手方向軸の方向に直線的に、かつ共振ばね50の軸および共振ばね50の第2の部分50bの軸と同時に直交する方向に従って配設された、2つのねじ込み穴71の共通軸を中心に角度的に変位され得る。この構造は、ねじ17を最終的に締め付けて基部本体70をブロック10内に固定化する前に、基部本体70の2つの(長手方向に線形のおよび角度的に)位置決め調整を実施することを可能にする。
【0048】
図示される構造では、基部本体70は、さらに、その正面70b内に、この先で説明されるように、所定の延長部だけ前方向に突出するスペーサ75を組み込む。
【0049】
中間本体80は、基部本体70の正面70bに着座する後面80aと、正面80bとを有する。
【0050】
後面80aは、圧縮可動組立体の軸に対して同軸または略同軸に維持されるように配置された、通常は円筒状のピンである直交する突出部81を組み込むことができ、直交する突出部81は、基部本体70の正面70b内に設けられた楕円形のくぼみ72の内部に嵌合され案内されるように寸法設定される。楕円形のくぼみ72は、穴71の共通軸に対して平行である長手方向の軸を有する。直交する突出部81および楕円形のくぼみ72の位置は、これらの要素が効果的に設けられる場合、逆にされてもよく、すなわち、直交する突出部81が基部本体の正面70bに組み込まれ、楕円形のくぼみ72が中間本体80の後面80a内に設けられ得ることを理解されたい。
【0051】
この構造は、中間本体80を、基部本体70の正面70bに沿って直線的に変位させ、穴71の共通軸の方向に、すなわち共振ばね50の軸および共振ばね50の第2の端部50bの直径方向と直交する方向に、基部70によって案内することを可能にする。
【0052】
中間本体80はまた、その直交する突出部81と一緒に、直交する突出部81の軸を中心に、すなわち圧縮可動組立体の軸と一致するまたは平行の方向を中心に回転することも可能である。しかしながらこの構造は、中間本体80を、基部本体70に対して、楕円形のくぼみ72の長手方向軸と直交する直径方向に従って、すなわち共振ばね50の第2の端部50bの直径方向に従って直線的に変位させることを可能にしない。
【0053】
中間本体80はさらに、その正面80bの全幅に沿って、通常は半円プロファイルまたはたとえばV形状などのばねワイヤの断面輪郭に匹敵する任意の他の形状を備えた凹型クレードルを画定するくぼみ82であって、基部本体70の穴71の軸および共振ばね50の軸と直交する軸を有するくぼみを有する。くぼみ82は、共振ばね50の第2の端部50bの延長部が中に着座するクレードルとして作動するように寸法設定される。
【0054】
図面の図は、基部本体70および中間本体80に対する任意の他の構造は示していないが、中間本体80は、直交する突出部81を有さずに構築されることが可能であり、この場合、楕円形のくぼみ72は基部本体70から削除されることを理解されたい。この場合、共振ばね50の第2の端部50bが中間本体80のくぼみ82内で摺動する代わりに、中間本体80が基部本体70上で、共振ばね50の第2の端部50bと一致する直径方向に従って摺動する。
【0055】
上部本体90は、共振ばね50の第2の端部50bを中間本体80のくぼみ82に、それと共に中間本体80を基部本体70の正面70bに対して押し付ける機能を有する。この目的のため、上部本体90には、後面90aと前記上部本体90の正面90bを結合させ、正面70bから基部本体70内に設けられたそれぞれのねじ込み式穴73と軸方向に位置合わせされた少なくとも2つの貫通穴91が設けられる。各貫通穴91は、基部本体70のそれぞれのねじ込み式穴73の内部に固着されたねじ92を受け入れ、上部本体90を基部本体70に引き付け、共振ばね50の第2の端部50bを中間本体80に対して、および中間本体80を基部本体70に対して圧縮する。中間本体80は、ねじ92の間に配置されるように寸法設定され、したがって基部本体70と上部本体90の間に圧縮されことに留意されたい。図示される実施形態では、基部本体70の正面向きに組み込まれたスペーサ75は、隣接するねじ92を、スペーサ75が上部本体90の後面90aに押し付けて作動するまで締め付けることを可能にする。したがって、他方のねじ92は、シリンダ12に関連する共振組立体の位置合わせを正しく調整した後、共振ばね50の第2の端部50bを最終的に保持するように締め付けられ得る。そうではあるが、スペーサ75は、任意選択により、一体品として上部本体90の後面90aに組み込まれ得ることを理解されたい。
【0056】
第2の固定手段MF2に関して提案された構造では、ブロック10のねじ17および上部本体90のねじ92の最終的な締め付け前に、共振ばね50の第2の端部50bを以下の位置決め調整にかけることが可能である:
a−ブロック10に関連する基部本体70(および中間本体80、上部本体90、共振ばね50、および圧縮可動組立体20、30、40によって形成された組立体)の軸方向の変位、
b−基部本体70の穴71の軸と一致し、それと同時に共振ばね50の軸および共振ばね50の第2の部分50bの軸と直交する軸を中心に基部本体70(および共振ばね50の第2の部分)の角度変位、
c−共振ばね50の軸に直交し、基部本体70の穴71の軸に対して平行である方向の中間本体80(および共振ばね50の第2の端部50b)の線形変位、
d−直交する突出部81の軸を中心に、圧縮可動組立体の軸を中心に、すなわちばねおよび圧縮可動組立体の軸と一致するまたは平行の方向を中心に中間本体80(および共振ばね50および圧縮可動組立体20、30、40)の角度変位(回転)、
e−中間本体80の直交する突出部81が基部本体70の楕円形のくぼみ72内に嵌合されて存在するときの、前記ばねの第2の端部の方向の、中間本体80のくぼみ82の内部における共振ばね50の第2の端部50bの線形変位、および
f−中間本体80のくぼみ82の内部における、共振ばね50の軸と直交する軸である前記第2の端部50bの軸を中心に、共振ばね50の第2の端部50bの回転変位。
【0057】
直交する突出部81および楕円形のくぼみ72は、中間本体および基部70それぞれから削除されるとき、項目「e」で上記に説明された位置決め調整は、共振ばね50の第2の端部50bと一致する直径方向に従って、中間本体80を基部本体70上で摺動させることによって行われることに留意されたい。この場合、位置決め調整は、中間本体80のくぼみ82内で摺動する共振ばね50の第2の端部50bではなく、基部本体70上の中間本体80である。
【0058】
本発明の装着装置が可能にするのは、共振ばね50を可動組立体20、30、40およびブロック10に最終的に固定する前に、共振ばね50が、第1の端部50aを、ばねの軸に対して横断方向に、かつ第1の端部50aの軸を中心に角度的に移動させることができ、第2の端部50bもまた、共振ばね50の軸の方向に、互いに直交しねじ軸に関連する2つの直径方向に、それと共に、互いに直交し、その1つが共振ばね50の第2の端部50bと一致する共振ばね50の直径方向の軸である3つの軸を中心に角度的に移動させることができることである。
【0059】
熱化学劣化を受けない剛性構成要素の装着調整をこうして実現できることにより、シリンダ12の内部におけるピストンおよびモータMに関連する磁石の同軸装着を実現することが可能になり、前記同軸性は、圧縮機の作動中に維持されて、シリンダ12の内面に対するピストン20の衝撃を最小限に抑え、または防止さえする。本発明の装着装置が可能にするのはまた、シリンダ12の上部に関連するピストン20の相対的な軸方向の位置決めを調整し、それによって圧縮機の作動に関して事前に計画された容積変位および冷凍容量を保証することである。
【0060】
本発明の装着装置は、シリンダの軸に関連する可動組立体の同軸の位置決め、および圧縮機の変位容量および対応する冷凍能力を規定するためのピストン20の上部から弁プレート14までの距離を損なうことなく、シリンダ12および共振ばね50の軸の方向ならびに互いにかつ前記軸と直交する方向の両方において構成要素の非常に厳密な公差を必要としない。