特許第5740120号(P5740120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740120
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】水中ポンプ及び水中ポンプ用ケーシング
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/04 20060101AFI20150604BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   F04D7/04 H
   F04D29/42 E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-204751(P2010-204751)
(22)【出願日】2010年9月13日
(65)【公開番号】特開2012-57603(P2012-57603A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年7月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 央隆
(72)【発明者】
【氏名】佐渡島 茂
(72)【発明者】
【氏名】高田 典幸
(72)【発明者】
【氏名】重永 幸哉
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0126228(US,A1)
【文献】 特公昭39−010991(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 7/04
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に吸入口、側壁に吐出口が形成されるとともに内周壁に沿って径方向の深さが漸次大きくなる流路が形成された円筒状のケーシングと、
このケーシング内に回転自在かつ同軸的に配置された羽根車と、
この羽根車を回転させるモータとを備え、
前記ケーシングの流路の軸方向の幅が前記ケーシング内部に、前記羽根車側の出口流路に対向配置されると共に、前記吐出口近傍まで連なる突出部により規制されることで、前記羽根車側の出口流路幅よりも小であり、前記吐出口近傍で同等に形成されていることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項2】
羽根車が収納され、当該羽根車が回転することで、流体を圧送する水中ポンプ用ケーシングにおいて、
中央部に吸入口、側壁に吐出口が形成されるとともに内周壁に沿って径方向の深さが漸次大きくなる流路が形成された円筒状のケーシング本体と、
このケーシング本体の内周壁に沿って形成された流路とを具備し、
前記流路は、軸方向の幅が前記ケーシング内部に、前記羽根車側の出口流路に対向配置されると共に、前記吐出口近傍まで連なる突出部により規制されることで、前記羽根車側の出口流路幅よりも小であり、前記吐出口近傍で同等に形成されていることを特徴とする水中ポンプ用ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水等の送水に適した水中ポンプ及び水中ポンプ用ケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
汚水等の送水に用いる水中ポンプ(排水ポンプ)等には、渦巻形のケーシング内に羽根車が収容された渦巻ポンプが用いられる。水中ポンプは、ケーシングの下方側に吸込口、ケーシングの側方に吐出口が設けられ、羽根車が回転することで、吸込口から吸い込まれた汚水を、吐出口から吐出させる構成である。
【0003】
このような汚水等の送水に用いられる水中ポンプは、汚水中に異物(汚物等)が含まれる虞があり、汚物が巻き込まれる等による故障を防止するために、汚水中に含まれる汚物を確実に排出できる構成が要求される。
【0004】
このため、汚水等の送水に用いられる水中ポンプは、例えば、汚物を球状と仮定した場合に、口径に対して70%以上の粒径の汚物が通過できるように規定されている。このため、羽根出口流路の幅が、吸込口の幅に対して、70%〜100%となるように形成された羽根車が用いられている。
【0005】
一方、羽根車とケーシングは、通過粒径(流路を通過することのできる球の最大直径)が流路の途中で変化しないように設定されていることが一般的であり、羽根車の出口流路幅とケーシングの流路幅とはほぼ等しい。
【0006】
こうした水中ポンプでは、通過粒径を確保するために羽根出口流路幅が大に設定されるため、ポンプの動力が大きくなる。一方、羽根出口流路幅を大きくするとポンプ効率が低下する。このため、通過粒径を確保しつつ、吐出し量を絞るために羽根出口流路幅を小に設定し吐出し量を減少させてポンプ効率を高めた羽根車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−144531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようにポンプ効率を高めるために羽根出口流路幅を小に設定した羽根車を有する水中ポンプでは、次のような問題があった。すなわち、このような羽根車は回転体であることから、出口流路幅を小に設定するために偏肉にして形成されるため、重量バランスが悪く、ポンプ運転の際に振動が生じやすいという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、重量バランスを崩すことなくポンプの吐出し量を減少させ、ポンプ運転の際の振動を抑えるとともに高いポンプ効率を確保することができる水中ポンプ及び水中ポンプ用ケーシングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の水中ポンプ及び水中ポンプ用ケーシングは次のように構成されている。
【0011】
中央部に吸入口、側壁に吐出口が形成されるとともに内周壁に沿って径方向の深さが漸次大きくなる流路が形成された円筒状のケーシングと、このケーシング内に回転自在かつ同軸的に配置された羽根車と、この羽根車を回転させるモータとを備え、前記ケーシングの流路の軸方向の幅が前記ケーシング内部に、前記羽根車側の出口流路に対向配置されると共に、前記吐出口近傍まで連なる突出部により規制されることで、前記羽根車側の出口流路幅よりも小であり、前記吐出口近傍で同等に形成されていることを特徴とする。
【0012】
羽根車が収納され、当該羽根車が回転することで、流体を圧送する水中ポンプ用ケーシングにおいて、中央部に吸入口、側壁に吐出口が形成されるとともに内周壁に沿って径方向の深さが漸次大きくなる流路が形成された円筒状のケーシング本体と、このケーシング本体の内周壁に沿って形成された流路とを具備し、
前記流路は、軸方向の幅が前記ケーシング内部に、前記羽根車側の出口流路に対向配置されると共に、前記吐出口近傍まで連なる突出部により規制されることで、前記羽根車側の出口流路幅よりも小であり、前記吐出口近傍で同等に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、重量バランスを崩すことなくポンプの吐出し量を減少させ、ポンプ運転の際の振動を抑えるとともに高いポンプ効率を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水中ポンプを示す縦断面図。
図2】同水中ポンプに用いられる羽根車及びケーシングの構成を一部断面で示す斜視図。
図3】同水中ポンプに組み込まれたケーシングにおける流路を模式的に示す説明図。
図4】同ケーシングを図3におけるX−X線の位置で切断して矢印方向に見た断面図。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る水中ポンプに組み込まれたケーシングにおける流路を模式的に示す説明図。
図6】同ケーシングを図3におけるY−Y線の位置で切断して矢印方向に見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る水中ポンプ10の構成を断面で示す説明図、図2は同水中ポンプ10の要部であって、特にケーシング50及び羽根車60の構成を一部断面で分解して示す斜視図、図3は、同ケーシング51の流路51aを模式的に示す図であって、図4におけるX4−X4線の位置で切断して矢印方向に見た説明図、図4は、ケーシング51を図3におけるX3−X3線の位置で切断して矢印方向に見た断面図である。
【0016】
である。なお、図1中、Bはボルトを、Fは水の流れを、Kは電源ケーブル、Lはライナリングをそれぞれ示す。
【0017】
図1に示すように、水中ポンプ10は、モータ20と、軸封装置30と、ポンプ本体40とを備えている。このような水中ポンプ10は、汚水槽や下水道等に設置され、異物(汚物等)を含む水を移送する所謂排水水中ポンプと呼ばれるものである。
【0018】
モータ20は、モータケーシング21と、モータケーシング21の内周面に取り付けられた固定子22と、回転子23と、この回転子23に取り付けられた回転軸24とを備えている。またモータ20は、外部電源等に接続される電源ケーブルKが接続されている。モータケーシング21は、両端が閉塞する円筒形状に形成され、一方の端面が軸封装置30にボルトB等により固定される。
【0019】
固定子22は、電源ケーブルKを介して供給された電力により、回転子23を回転可能に形成されている。回転軸24は、モータケーシング21の一端側から突出し、かつ、モータケーシング21にベアリング等の軸受25を介して回転自在に軸支されている。なお、回転軸24は、モータケーシング21に、重力方向に延設される。
【0020】
軸封装置30は、シールケーシング31と、メカニカルシール32とを備えている。軸封装置30は、モータ20、ポンプ40及び回転軸24間を液密に仕切る機能を有している。
【0021】
シールケーシング31は、内部にメカニカルシール32を収納可能に形成されている。このようなシールケーシング31は、両端が閉塞する円筒状に形成され、その両端面に回転軸24を挿通する挿通孔33を備えている。また、シールケーシング31は、その内部に、メカニカルシール32の潤滑油を充満可能な油室34を形成する。
【0022】
メカニカルシール32は、シールケーシング31と回転軸24との間を密閉することで、ポンプ40からの汚水の浸入及びモータ20への潤滑油の浸入を防止可能に形成されている。このように、軸封装置30は、潤滑油により充満したシールケーシング31内にメカニカルシール32を設けることで、モータ20への異物混入を防止する所謂二段構造が用いられる。
【0023】
ポンプ40は、ケーシング50と、羽根車60とを備えている。ケーシング50は、その内部に羽根車60を収納する渦巻ケーシングであり、その内部にポンプ室52を形成する円筒状のケーシング本体51と、このケーシング本体51の上部に配置された蓋部材59とを備えている。
【0024】
ケーシング本体51は、内周壁に沿って形成された流路51aが設けられており、この流路51aは、径方向に相当する流路深さDが羽根車60の回転方向Rに沿うとともに、後述する吐出口55に向けて漸次大きく形成されている。また、流路51aには、軸方向に突出部51bが形成されており、流路51aの流路幅Hが、羽根車60側の流路幅Wのほぼ半分程度に規制されている。その規制される範囲は内周壁から舌部56を通る円の外径D3までである。また、突出部51bは吐出口55近傍で終わり、流路幅Hが羽根車60側の流路幅Wとほぼ同じ幅となっている。なお、突出部51bの径方向の幅は流路51aの流路深さとほぼ同等である。
【0025】
ケーシング本体51の下面には水中ポンプ10を据付面に据付ける複数の脚部53を備えている。また、ケーシング本体51は、その底面であって、複数の脚部53間に設けられた吸込口54と、その側面に設けられた吐出口55とを備えている。なお、吸込口54は、羽根車60を回動可能に支持する第2支持部54aを有している。
【0026】
蓋部材59は、シールケーシング31に結合している。蓋部材59は、上述した挿通孔33の下方に、羽根車60を回動可能に支持する第1支持部59aを有している。
【0027】
なお、挿通孔33、第1支持部59a及び第2支持部54aには、回転軸24及び羽根車60と摺動可能なライナリングLが設けられる。
【0028】
図2に示すように、羽根車60は、ノンクロッグのクローズド羽根車である。このような羽根車60は、例えば、一対のシュラウド61,62と、これらシュラウド61,62間に一体に設けられた羽根63と、を備えている。羽根車60は、その流体を吸込む吸込孔64と、吸込んだ流体を吐出する吐出孔65を有している。
【0029】
シュラウド61は、円板状に形成されている。シュラウド61は、その中央側に、回転軸24が挿通可能、且つ、キー溝が形成された挿通孔61aが形成され、その外周に第1被支持部61bが形成されている。
【0030】
シュラウド62は、円環状に形成されている。シュラウド62は、その中央側に、吸込孔64が形成され、その外周に第2被支持部64aが形成されている。
【0031】
第1被支持部61bは、ライナリングLを介して第1支持部59aに回転及び摺動自在に支持される。第2被支持部64aは、ライナリングLを介して第2支持部54aに回転及び摺動自在に支持される。
【0032】
羽根63は、シュラウド61,62間に例えば1枚設けられている。なお、複数でも良い。羽根63は、シュラウド61,62の中心からの径が各位置で異なる形状、例えば渦巻形状やインボリュート形状に形成されている。なお、その詳細な形状は、羽根車60が、水を所定のポンプ効率で圧送(移送)可能な形状であれば、適宜設定可能である。
【0033】
羽根63は、シュラウド61,62間に、シュラウド62の吸込孔64から吸い込まれた水をポンプ室52内へと移動させる吐出孔65を形成する。この吐出孔65は、吸込孔64から吸込んだ水をポンプ室52へと吐出する。
【0034】
このように構成された水中ポンプ10は、電源ケーブルKを介して電力が供給されることで、モータ20を駆動される。モータ20は、固定子22により、回転子23に固定された回転軸24を回転させる。回転子23の回転により、ポンプ40は、羽根車60が回転する。
【0035】
図1の水の流れFに示すように、ポンプ40は、羽根車60の回転により、吸込孔64から吸い込まれた水が羽根車60の吐出孔65から吐出され、ケーシング50及び羽根車60により圧送される。この圧送によりポンプ40は、この圧送された水を、吐出口55を介して水中ポンプ10の二次側へ移送することが可能となる。
【0036】
このように構成された水中ポンプ10によれば、流路51aの流路幅Hは、吐出口55付近の流路幅Hよりも狭く形成されている。このため、吐出し量を少なくすることができ、ポンプ効率を向上させることができる。また、ケーシング本体51を偏肉しているので、回転体である羽根車60の重量バランスは崩れず、振動や騒音を最小限に抑えることができる。なお、吐出口55付近では、吐出幅Hを確保しているので、所定の粒径の汚物は通過可能である。
【0037】
上述したように本実施の形態に係る水中ポンプ10によれば、重量バランスを崩すことなくポンプの吐出し量を減少させ、ポンプ運転の際の振動を抑えるとともに高いポンプ効率を確保することが可能となる。
【0038】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る水中ポンプ10Aに組み込まれたケーシング50Aの流路51aを模式的に示す図であって、図6におけるX6−X6線の位置で切断して矢印方向に見た説明図、図6は、ケーシング50Aを図5におけるX5−X5線の位置で切断して矢印方向に見た断面図である。なお、図5,6において、図3,4と同一機能部分には同一符号を付した。
【0039】
ケーシング本体51Aは、内周壁に沿って形成された流路51aが設けられており、この流路51aは、径方向に相当する流路深さDが羽根車60の回転方向Rに沿うとともに、後述する吐出口55に向けて漸次大きく形成されている。また、流路51aには、軸方向に突出部51cが形成されており、流路51aの流路幅Hが、羽根車60側の流路幅Wのほぼ半分程度に規制されている。また、突出部51cは吐出口55近傍で終わり、流路幅Hが羽根車60側の流路幅Wとほぼ同じ幅となっている。なお、突出部51cは径方向の厚さが一定に形成されており、突出部51cの内径は舌部56を通る円の外径D3である。
【0040】
このように構成されたケーシング50Aが組み込まれた水中ポンプ10Aであっても、上述した水中ポンプ10と同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、図中下方向から突出部を形成したが、上方から突出部を形成し、流路幅Hを制限するようにしてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
10,10A…水中ポンプ、20…モータ、40…ポンプ、50,50A…ケーシング、51,51A…ケーシング本体、51a…流路、51b,51c…突出部、52…ポンプ室、56…舌部、59…蓋部材、60…羽根車、B…ボルト、F…汚水の流れ、K…電源ケーブル、L…ライナリング、D2…羽根車外径、D3…舌部を通る円の外径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6