(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜
図4は、第1実施形態に係る金型温度調節装置を説明するための説明図である。
なお、
図1、
図3、
図4及び
図5(a)においては、媒体を流通させる管路(配管)等を、実線等で模式的に示している。
【0016】
本実施形態に係る金型温度調節装置1は、
図1に示すように、金型2に設けられた媒体流通路3に第1媒体を循環供給する第1媒体供給部10と、媒体流通路3に第1媒体とは異なる温度の第2媒体を循環供給する第2媒体供給部20と、媒体流通路3に第1媒体に対応させた第3媒体を循環供給する第3媒体供給部30とを備えている。
本実施形態では、第1媒体供給部10を、高温媒体を循環供給する高温媒体供給部10とし、第2媒体供給部20を、低温媒体を循環供給する低温媒体供給部20とし、第3媒体供給部30を、高温媒体の温度に対応させた高温媒体を循環供給するプレ高温媒体供給部30とした例を示している。
これら各媒体供給部10,20,30の各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36は、切替接続部としてのバルブユニット40によって金型2の媒体流通路3に切替接続され、このバルブユニット40の各弁は、後記するように、所定のプログラムに従って、制御盤50の制御部としてのCPU51によって開閉制御乃至は切替制御がなされる。
【0017】
当該金型温度調節装置1によって加熱及び冷却される金型2としては、どのようなものでもよく、一般的には、固定型と可動型とを有したものとしてもよい。このような金型2では、固定型と可動型とによって形成されるキャビティ等に、射出成形機(不図示)のシリンダ等で溶融された樹脂がノズル等から射出されて充填され、成形品が成形される。この金型2には、当該金型2の温度を上昇または降下させるための媒体が流通する媒体流通路3が設けられている。なお、符号4は、金型2の温度を検出する温度センサーであって、この温度センサー4の検出温度に基づいて、後記する金型加熱工程や金型冷却工程への切り替えを実行するようにしてもよい。また、各工程の切り替えは、射出成形機の成形動作に連動させて切り替えるようにしてもよく、例えば、射出成形機からの型閉信号や保圧信号、型開信号等に基づいて切り替えるようにしてもよい。
【0018】
この金型2の媒体流通路3の入口には、後記するバルブユニット40に接続された送媒路5が接続され、媒体流通路3の出口には、バルブユニット40に接続された返媒路6が接続されている。
なお、図例では、金型2の固定型及び可動型のそれぞれに一本の送媒路5及び返媒路6を接続した例を示しているが、金型2の固定型及び可動型に設けられた媒体流通路3,3の本数に合わせて、これら送媒路5及び返媒路6を複数本に分岐させて金型2の媒体流通路3の入口及び出口に接続するようにしてもよい。
【0019】
各媒体供給部10,20,30の構成は、本実施形態では、略同一とした例を示しており、媒体を貯留する貯留部としての貯留タンク11,21,31と、これに貯留された媒体を加熱する熱交換手段としてのヒーター(加熱手段)12,22,32と、貯留タンク11,21,31に貯留された媒体を冷却する熱交換手段としての冷却路(冷却手段)13,23,33と、貯留タンク11,21,31に貯留された媒体を各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36を介して金型2に設けられた媒体流通路3に循環供給するための循環ポンプ17,27,37とをそれぞれに備えている。これら循環ポンプ17,27,37は、当該装置1の稼働中は、原則的には常時、作動させるようにしてもよい。
【0020】
また、各媒体供給部10,20,30の貯留タンク11,21,31には、バルブユニット40に接続された送媒路15,25,35及び返媒路16,26,36がそれぞれに接続されている。各貯留タンク11,21,31とバルブユニット40との間の各送媒路15,25,35には、上記した循環ポンプ17,27,37と手動弁とがそれぞれに配設されている。バルブユニット40と各貯留タンク11,21,31との間の各返媒路16,26,36には、手動弁とフィルターとがそれぞれに配設されている。
また、各媒体供給部10,20,30の各貯留タンク11,21,31の出口側(送媒側)等の適所には、媒体の温度を検出する温度センサー14,24,34がそれぞれに設けられており、原則的には(通常制御状態では)、各媒体が予め設定された所定温度となるように、各温度センサー14,24,34の検出温度に基づいて、上記各熱交換手段の作動制御がCPU51によってなされる。
【0021】
また、各媒体供給部10,20,30の貯留タンク11,21,31には、媒体供給源(給水源)に接続された媒体供給管路(給水管)7と、媒体排出管路(排水管)8とが分岐されてそれぞれに接続されている。各媒体供給部10,20,30に分岐された各給水管7には、フィルターがそれぞれに設けられ、各フィルターの下流側が更に分岐され、冷却管が設けられている。これら各冷却管には、各貯留タンク11,21,31に収容された螺旋状の冷却路13,23,33が接続されている。また、これら各冷却管には、冷却弁V11,V21,V31がそれぞれに設けられている。また、冷却管との分岐部と各貯留タンク11,21,31との間の各給水管7には、供給(給水)弁V12,V22,V32がそれぞれに設けられている。
また、冷却路13,23,33の排出側は、排水管8に合流接続されている。これら各合流部と各貯留タンク11,21,31との間の各排水管8には、排出(排水)弁V13,V23,V33がそれぞれに設けられている。
【0022】
上記構成とされた各媒体供給部10,20,30においては、当該装置1の起動時には、供給弁V12,V22,V32及び排出弁V13,V23,V33を開放させ、所定の媒体圧(給水圧)の媒体を各貯留タンク11,21,31に所定レベルまで貯留し、供給弁V12,V22,V32及び排出弁V13,V23,V33を閉止させる。当該装置1の稼働中は、各貯留タンク11,21,31における媒体が所定レベルに維持されるように、媒体の増減等をレベル計やフロートスイッチ等によって検出し、これら供給弁V12,V22,V32及び排出弁V13,V23,V33を開閉制御し、適宜、媒体を補給乃至は排出させるようにしてもよい。
【0023】
また、後記する強制作動状態以外の通常制御状態においては、各貯留タンク11,21,31に貯留された媒体が所定の設定温度となるように上記各熱交換手段の作動制御がなされる。媒体を加熱する場合には、ヒーター12,22,32を稼動させて加熱がなされる。一方、媒体を冷却する場合には、冷却弁V11,V21,V31を開放させ、冷媒(冷却水)を冷却路13,23,33に送給させて冷却がなされる。この通常制御状態においては、各温度センサー14,24,34の検出温度に基づいて、ヒーター12,22,32及び冷却弁V11,V21,V31を、例えば、PID制御するようにしてもよい。
なお、媒体を冷却する冷却手段としては、このような冷却路によって貯留タンクに貯留された媒体と間接的に熱交換を行い冷却するものに限られず、例えば、媒体が水の場合には、冷水を供給することで媒体を冷却(直接冷却)するものとしてもよい。この場合は、所定の給水圧の冷水を供給し、必要に応じて所定圧以上で開放される排水弁等を排水管等に設けるようにしてもよい。
また、各貯留タンク11,21,31に貯留された媒体は、各循環ポンプ17,27,37を作動させることで、各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36を介して、各貯留タンク11,21,31とバルブユニット40との間を循環供給される。
【0024】
なお、これら各媒体の設定温度は、溶融されて充填される樹脂の温度や金型2の設定温度等にもよるが、例えば、高温媒体としては、90℃〜180℃程度としてもよく、低温媒体としては、5℃〜70℃程度としてもよい。
また、上記給水圧や各循環ポンプ17,27,37の吐出圧力は、媒体の種類や各管路の径、長さ等の圧力損失因子等にもよるが、例えば、水(清水)を媒体とした場合で、高温媒体の設定温度が常圧の沸点よりも高温である場合には、その温度に合わせて媒体が沸騰しない圧力となるように系内の圧力が維持されるものとしてもよい。
また、図示は省略しているが、系内の圧力を検出する圧力計や、系内の圧力を維持するリリーフバルブ、系内の圧力の異常上昇を防止する安全弁等が適所に設けられている。
また、媒体としては、水に限られず、油系、アルコール系等の他の媒体を採用するようにしてもよい。
【0025】
また、各媒体供給部10,20,30の貯留タンクや循環ポンプ等は、図示を省略しているが、それぞれの筐体(ケーシング)内に収容されている。または、このように各媒体供給部のそれぞれを独立した筐体を有したものとする態様に代えて、これらが備える上記した各部を一つの筐体内に収容させた媒体供給装置としてもよい。
また、各媒体供給部10,20,30からバルブユニット40までの各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36に、断熱材を外装(被装)するようにしてもよい。
また、図例では、図示を簡略化しているが、各媒体供給部10,20,30及びバルブユニット40には、各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36を接続する接続口等が設けられている。また、バルブユニット40には、金型2の媒体流通路3に接続される送媒路5及び返媒路6が接続される接続口等が設けられている。
また、上記冷却手段に供給する冷媒としては、低温媒体の設定温度に応じて、適宜のチラー等の冷却器等によって冷却されたものとしてもよく、または、工場等に設置されるクーリングタワー等からの冷水を冷媒としてもよく、さらには、常温の水道水としてもよい。
【0026】
バルブユニット40は、各媒体供給部10,20,30の各貯留タンク11,21,31に接続された各送媒路15,25,35及び各返媒路16,26,36を、金型2の媒体流通路3に切替可能に連通させる複数の切替弁V1,V2,V3,V4を備えている。
図例では、4つの三方切替弁V1,V2,V3,V4を採用した例を示しており、高温媒体(第1媒体及び第3媒体)側と低温媒体(第2媒体)側とを切り替える送媒側に設けられた高・低送媒切替弁V1と、高温媒体(第1媒体及び第3媒体)側と低温媒体(第2媒体)側とを切り替える返媒側に設けられた高・低返媒切替弁V2と、第1媒体側と第3媒体側とを切り替える送媒側に設けられた高・高送媒切替弁V3と、第1媒体側と第3媒体側とを切り替える返媒側に設けられた高・高返媒切替弁V4とからなる。
【0027】
高温媒体供給部10の送媒路15は、高・高送媒切替弁V3の一接続口(ポートB)に接続され、返媒路16は、高・高返媒切替弁V4の一接続口(ポートB)に接続されている。
低温媒体供給部20の送媒路25は、高・低送媒切替弁V1の一接続口(ポートC)に接続され、返媒路26は、高・低返媒切替弁V2の一接続口(ポートC)に接続されている。
プレ高温媒体供給部30の送媒路35は、高・高送媒切替弁V3の一接続口(ポートC)に接続され、返媒路36は、高・高返媒切替弁V4の一接続口(ポートC)に接続されている。
高・高送媒切替弁V3の一接続口(ポートA)と、高・低送媒切替弁V1の一接続口(ポートB)とは、高・高(第1・第3)送媒路44によって接続され、高・高返媒切替弁V4の一接続口(ポートA)と、高・低返媒切替弁V2の一接続口(ポートB)とは、高・高(第1・第3)返媒路47によって接続されている。また、これら高・高送媒路44と高・高返媒路47とは、バイパス路48によって接続されている。
【0028】
また、高・低送媒切替弁V1の一接続口(ポートA)には、金型2の媒体流通路3に接続される送媒路5に接続された送媒路45が接続され、高・低返媒切替弁V2の一接続口(ポートA)には、金型2の媒体流通路3に接続される返媒路6に接続された返媒路46が接続されている。送媒路45には、金型2の媒体流通路3に供給される媒体の温度(入口側の媒体温度)を検出する温度センサー45aが設けられ、返媒路46には、金型2の媒体流通路3から排出された媒体の温度(出口側の媒体温度)を検出する温度センサー46aが設けられている。
また、これら切替弁V1,V2,V3,V4の各媒体供給部10,20,30側の各送媒路15,25,35と各返媒路16,26,36とは、バイパス路41,42,43によってそれぞれ接続され、各バイパス路41,42,43には、バイパス弁V5,V6,V7がそれぞれに設けられている。
【0029】
この切替接続部としてのバルブユニット40は、各媒体供給部10,20,30に付設するように設けたり、筐体内に組み込むようにして設けたりするようにしてもよいが、本実施形態では、上記した各弁等を集合させたバルブユニット40として、金型2の近傍に設置されるものとしている。このバルブユニット40は、例えば、金型2の近傍に架台等を設置し、この架台上に設置されるものとしてもよい。または、金型2下方の床等に載置されるものとしてもよい。これによれば、従来のような装置近傍乃至は装置内で高温側と低温側とを切り替えるようなものと比べて、切り替えの際に各媒体供給部と金型の媒体流通路とを接続する共通の送媒側の管路及び共通の返媒側の管路に相当する容積を比較的に小さくすることができる。従って、各媒体供給部における熱交換手段への負荷を比較的に小さくできるとともに、各媒体の温度を比較的により迅速に設定温度に復帰させることができる。この結果、迅速な切り替え制御が可能となり、成形サイクルの短縮化をより効果的に図ることができる。
【0030】
なお、上記した給水管や排水管、送媒路、返媒路、バイパス路などの各管路に設けられた各弁としては、電磁弁やエアーオペレート型の電磁弁、モータ駆動弁等、後記するCPU51によって開閉制御乃至は切替制御が可能なものであればどのようなものでもよい。エアーオペレート型の電磁弁を採用した場合には、駆動用の圧縮空気を供給する圧縮空気源に、フィルターやレギュレーター等を介して接続するようにしてもよい。
また、上記した各切替弁は、後記する各切り替え状態(各媒体供給状態など)を実行可能なものであればどのようなものでもよく、図示のような三方切替弁に代えて、単独の開閉弁を組み合わせる態様としてもよく、さらには、その他の多ポート多位置型の切替弁等を適所に設けるようにしてもよい。
【0031】
制御盤50は、計時手段や演算処理部等を有し、当該金型温度調節装置1の上記した各弁や各機器、各部を所定のプログラムに従って制御するCPU51と、このCPU51に信号線等を介してそれぞれ接続された記憶部52及び表示操作部53とを備えている。このCPU51には、信号線等を介して、上記した各弁や各機器、各種センサー等が接続されている。
表示操作部53は、各種設定操作や、事前設定入力項目(金型設定温度や各媒体の設定温度、後記する切替時間など)などを設定、入力したり、各種設定条件や、各種運転モードなどを表示したりする。
記憶部52は、各種メモリ等から構成されており、表示操作部53の操作により設定、入力された設定条件や入力値、後記する基本動作などの種々の動作を実行するための制御プログラムなどの各種プログラム、予め設定された各種動作条件や各種データテーブル等が格納される。
なお、この制御盤50は、いずれかの媒体供給部10,20,30の筐体に組み込むようにしてもよく、いずれかの媒体供給部10,20,30の筐体の上部や側部等に設置するようにしてもよい。
【0032】
次に、上記構成とされた金型温度調節装置1において実行される基本動作の一例を
図2〜
図4に基づいて説明する。
なお、
図2(a)に示すグラフでは、横軸を、時間軸、縦軸を、金型2の入口側の媒体温度を検出する温度センサー45aの検出温度とし、その推移を模式的に示しており、また、各弁の開閉動作や切替動作を模式的に図示している。
また、
図2(b)に示すグラフは、従来の金型温度調節装置を用いて
図2(a)と同じ時間制御で実行した場合の金型2の入口側の媒体温度の推移を模式的に示している。
また、
図3及び
図4では、開状態の開閉弁を白、閉状態の開閉弁を黒で示し、通常制御されている状態の冷却弁を梨地状で示している。また、各切替弁の連通された各ポートを白、遮断されたポートを黒で示している。また、高温の媒体が流通する管路を点線、低温の媒体が流通する管路を一点鎖線で概念的に示している。
【0033】
本動作例では、金型2の媒体流通路3に第2媒体(低温媒体)を循環供給する第2媒体供給状態からは、媒体流通路3に第3媒体(第1媒体に対応させた高温媒体)を循環供給する第3媒体供給状態とした後に、媒体流通路3に第1媒体(高温媒体)を循環供給する第1媒体供給状態に切り替えるようにしている。
また、上記第3媒体供給状態とした後、少なくとも媒体流通路3内及び媒体流通路3とバルブユニット40とを接続する管路5,6内に残留する上記第2媒体を上記第3媒体に置換させた後に、第1媒体供給状態に切り替えるようにしている。
また、第1媒体供給状態からは、第2媒体供給状態に切り替えるとともに、第2(低温)媒体供給部20の熱交換手段(本実施形態では、冷却手段としての冷却弁V21)を強制的に作動させた後に、第2媒体が予め設定された所定温度となるように第2媒体温度センサー24の検出温度に基づいて熱交換手段V21の作動制御を実行するようにしている。
【0034】
さらに、本動作例では、第3媒体の設定温度を第1媒体としての高温媒体の設定温度よりも高く設定している。なお、以下では、第1媒体の設定温度を145℃、第2媒体の設定温度を60℃、第3媒体の設定温度を160℃とした例について説明するが、各媒体の温度はこれらに限定されるものではない。例えば、第1媒体の設定温度よりも高く設定される第3媒体の設定温度としては、余りにも高すぎればそれに応じた給水圧としたり、それに応じた耐圧性を確保したりする必要があるため、第1媒体の設定温度よりも10℃〜40℃程度、高い温度を設定温度とするようにしてもよい。
以下、具体的に各切替状態及び各切替状態において実行される各工程について説明する。
【0035】
<金型加熱工程:第1媒体供給工程>
金型2に設けられた媒体流通路3に高温媒体を循環供給して金型2を加熱する際において、当該装置1の稼動時には、各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、第1媒体(高温媒体)供給状態とする。
すなわち、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、各切替弁V1,V2,V3,V4の各ポートAと各ポートBとを連通させた状態とし、各ポートCを遮断した状態とする。また、高温媒体供給部10に接続された送媒路15と返媒路16とを接続する第1バイパス路41に設けられた第1バイパス弁V5を閉とし、低温媒体供給部20に接続された送媒路25と返媒路26とを接続する第2バイパス路42に設けられた第2バイパス弁V6及びプレ高温媒体供給部30に接続された送媒路35と返媒路36とを接続する第3バイパス路43に設けられた第3バイパス弁V7をそれぞれ開とする。
【0036】
この状態では、各媒体供給部10,20,30に設けられた循環ポンプ17,27,37によって、高温媒体供給部10側では、高温媒体が各送媒路15,44,45,5及び各返媒路6,46,47,16を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が加熱される。また、低温媒体供給部20側では、第2バイパス路42を経て低温媒体が循環され、プレ高温媒体供給部30側では、第3バイパス路43を経て高温(第3)媒体が循環される。
また、この第1媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、金型2との熱の授受や金型2のキャビティへの溶融樹脂の射出工程等に伴い若干は上下するが、予め設定された高温媒体の設定温度(例えば、145℃)程度で推移する。
【0037】
<金型冷却工程:第2媒体供給切替工程>
上記第1媒体供給工程の後、本動作例では、第2媒体供給状態とするとともに、低温媒体供給部20の熱交換手段としての第2冷却弁V21を強制的に作動させる第2媒体供給切替工程を実行するようにしている。
この工程では、第1媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、第2媒体(低温媒体)供給状態とする。
すなわち、
図2(a)及び
図3(b)に示すように、各切替弁V1,V2,V3,V4の各ポートAと各ポートCとを連通させた状態とし、各ポートBを遮断した状態とする。また、第1バイパス路41に設けられた第1バイパス弁V5を開、第2バイパス路42に設けられた第2バイパス弁V6を閉とし、第3バイパス路43に設けられた第3バイパス弁V7は開のままとする。
【0038】
この状態では、各媒体供給部10,20,30に設けられた循環ポンプ17,27,37によって、低温媒体供給部20側では、低温媒体が各送媒路25,45,5及び各返媒路6,46,26を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が冷却される。また、高温媒体供給部10側では、第1バイパス路41を経て高温(第1)媒体が循環される。また、プレ高温媒体供給部30側では、上記同様、第3バイパス路43を経て高温(第3)媒体が循環されるとともに、高・高送媒路44と高・高返媒路47とを接続するバイパス路48を経て高温(第3)媒体が循環される。このように、第3バイパス路43の金型2側の管路内にもバイパス路48を経て高温(第3)媒体を循環させることで、これらの管路内において高温媒体の温度降下が生じ難く、次に後記する第3媒体供給状態とされた際に、迅速に高温の媒体を金型2側に供給することができる。
【0039】
また、本動作例では、上記のように第1媒体供給状態から第2媒体供給状態に各弁を開閉乃至は切り替えるとともに、第2冷却弁V21を強制的に全開させて、低温媒体供給部20の冷却路23に最大量の冷媒(冷却水)を供給するようにしている。上述のように通常制御では、第2媒体温度センサー24の検出温度に基づいて、第2冷却弁V21がPID制御等される。しかしながら、上記第1媒体供給状態から第2媒体供給状態に切り替えられた直後は、金型2の媒体流通路3内や媒体流通路3に接続された送媒路5,45内及び返媒路6,46内等に高温の第1媒体が残留しており、その残留高温媒体が低温媒体供給部20に返媒され、低温媒体供給部20の貯留タンク21の媒体温度が急激に上昇し、通常制御を実行すれば、所定の低温媒体の設定温度に復帰させるまでに比較的に長い時間を要してしまう。
【0040】
つまり、
図2(b)に示すように、金型の入口側の媒体温度は、第1媒体供給状態から第2媒体供給状態に切り替えられた直後は低温媒体の設定温度程度に急激に低下するが、残留高温媒体の返媒により、上昇する。そして、この上昇した低温媒体の温度を、PID制御等の通常制御によって所定の設定温度に復帰させるには、設定温度に近づくに従い冷却路23への冷却水の送媒率が低下するため、比較的に長い時間を要する。
そこで、本動作例では、第1媒体供給状態から第2媒体供給状態に切り替えられた直後は、第2媒体温度センサー24の検出温度に基づく通常の温度制御に代えて、第2冷却弁V21を強制的に全開させて、低温媒体供給部20の冷却路23に最大量の冷却水を供給するようにしている。これにより、
図2(a)の概略グラフに示すように、低温媒体供給部20から供給される低温媒体を迅速に所定の設定温度(例えば、60℃)に復帰させることができる。このような制御を実行した場合、金型2の入口側の媒体温度は、若干はアンダーシュートすることとなるが、金型2は比較的に熱容量が大きく前工程において加熱されているため、問題が生じるようなことはなく、より迅速に金型2を冷却することができる。
【0041】
この第2媒体供給切替工程において実行される低温媒体供給部20の熱交換手段としての第2冷却弁V21の強制作動は、予め設定された所定の強制作動時間が経過するまで継続させるようにしてもよい。上記強制作動時間は、稼動テスト等に基づいて予め設定し、事前設定入力項目として表示操作部53から入力させ、記憶部52に格納させるようにしてもよい。
または、第2媒体温度センサー24の検出温度が低温媒体の設定温度に達するまで継続させるようにしてもよい。
これら所定条件に達したか否かの判別はCPU51においてなされる。
なお、このように低温媒体供給部20の熱交換手段としての第2冷却弁V21を所定条件に達するまで強制作動させる態様に代えて、上記のように所定条件に達するまでは、第2媒体温度センサー24の検出温度に基づいて、二位置制御(ON/OFF制御)するようにしてもよい。これによってもPID制御等の通常制御を実行する場合と比べて、比較的、迅速に低温媒体を所定の設定温度に復帰させることができる。
また、この第2媒体供給切替工程が実行されている間は、第2媒体供給部20の加熱手段としてのヒーター22は、強制的に停止させておくようにしてもよい。つまり、設定温度に基づく温度コントロールを無効としておくようにしてもよい。
【0042】
<金型冷却工程:第2媒体供給工程>
上記所定条件に達すれば、すなわち、上記強制作動時間が経過すれば(または第2媒体温度センサー24の検出温度が設定温度に達すれば)、低温媒体が設定温度となるように第2媒体温度センサー24の検出温度に基づく通常制御を実行し、第2媒体供給工程を実行する。
すなわち、
図2(a)及び
図4(a)に示すように、各弁を上記第2媒体供給状態のままとし、金型2の媒体流通路3に低温媒体を循環供給して、金型2を冷却する。
この第2媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、金型2との熱の授受等に伴い若干は上下するが、上記アンダーシュートした温度から予め設定された低温媒体の設定温度(例えば、60℃)程度で推移する。
【0043】
<金型加熱工程:第3媒体供給工程>
上記第2媒体供給工程の後、第2媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、第3媒体(高温媒体)供給状態とし、第3媒体供給工程を実行するようにしている。
すなわち、
図2(a)及び
図4(b)に示すように、高・低送媒切替弁V1及び高・低返媒切替弁V2の各ポートAと各ポートBとを連通させた状態とし、各ポートCを遮断した状態とし、他の切替弁V3,V4は、上記第2媒体供給状態のままとする。また、第2バイパス路42に設けられた第2バイパス弁V6を開、第3バイパス路43に設けられた第3バイパス弁V7を閉とし、第1バイパス路41に設けられた第1バイパス弁V5は開のままとする。
【0044】
この状態では、各媒体供給部10,20,30に設けられた循環ポンプ17,27,37によって、プレ高温媒体供給部30側では、高温(第3)媒体が各送媒路35,44,45,5及び各返媒路6,46,47,36を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が加熱される。また、高温媒体供給部10側では、第1バイパス路41を経て高温媒体が循環され、低温媒体供給部20側では、第2バイパス路42を経て低温媒体が循環される。
この第3媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、第2媒体供給状態から第3媒体供給状態に切り替えられた直後は、低温媒体の設定温度程度から高温(第3)媒体の設定温度(例えば、160℃)程度まで急激に上昇するが、その後、金型2の媒体流通路3内や媒体流通路3に接続された送媒路5,45及び返媒路6,46内等に低温の第2媒体が残留しており、その残留低温媒体が第3媒体供給部30に返媒されるため、第3媒体供給部30の貯留タンク31の媒体温度が急激に降下し、これに伴い金型2の入口側の媒体温度も降下する。本動作例では、上述のように第3媒体の設定温度を第1媒体の設定温度よりも高く設定しているため、例えば、
図2(b)に示すような従来のものよりも、温度降下の度合いを小さくすることができる。
【0045】
この第3媒体供給工程は、少なくとも媒体流通路3内及び媒体流通路3とバルブユニット40とを接続する管路5,6内に残留する低温の第2媒体(残留第2媒体)を高温の第3媒体に置換させるまで実行するようにしてもよい。
この場合、上記残留第2媒体が第3媒体に置換されたことをCPU51によって判別するようにしてもよい。このようなCPU51による上記判別は、事前設定や稼動テストに基づき設定された切替時間に基づいて判別するようにしてもよく、温度センサーや流量計等の各種検出手段による検出値に基づいて判別するようにしてもよい。
例えば、予め設定された所定の第3媒体供給時間が経過するまで上記第3媒体供給状態を継続させるようにしてもよい。上記第3媒体供給時間は、稼動テスト等に基づいて予め設定し、事前設定入力項目として表示操作部53から入力させ、記憶部52に格納させるようにしてもよい。
【0046】
または、金型2の出口側の媒体温度を検出する温度センサー46aの検出温度が所定の切替温度を上回るまで継続させるような態様としてもよく、さらには、第3媒体温度センサー34の検出温度若しくは金型2の入口側の媒体温度を検出する温度センサー45aの検出温度が所定の切替温度を下回るまで継続させるような態様としてもよい。このような切替温度は、上記同様、稼動テスト等に基づいて予め設定し、事前設定入力項目として表示操作部53から入力させ、記憶部52に格納させるようにしてもよい。
さらには、上記残留第2媒体に相当する流量を適宜の箇所に設置した流量計において検出し、判別するような態様としてもよい。
【0047】
なお、上記第2媒体供給状態から第3媒体供給状態に切り替えられた際に、第3媒体供給部30のヒーター32を、上記所定条件(第3媒体供給時間や切替温度、流量等)に達するまで強制的に稼動させるようにしてもよい。または、上記所定条件に達するまで第3媒体温度センサー34の検出温度に基づいて、二位置制御(ON/OFF制御)するようにしてもよい。これらの態様によれば、低温媒体の流入に伴う温度降下の度合いを小さくでき、より高温の第3媒体を迅速に循環供給することができる。
また、これらの態様を実行する場合には、第3媒体供給工程が実行されている間は、第3媒体供給部30の冷却手段は、強制的に停止させておくようにしてもよい。
【0048】
<金型加熱工程:第1媒体供給工程>
上記所定条件に達すれば、第3媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記第1媒体供給状態とし、第1媒体供給工程が実行される。
すなわち、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、高・高送媒切替弁V3及び高・高返媒切替弁V4の各ポートAと各ポートBとを連通させた状態とし、各ポートCを遮断した状態とし、他の切替弁V1,V2は、上記第3媒体供給状態のままとする。また、第1バイパス路41に設けられた第1バイパス弁V5を閉、第3バイパス路43に設けられた第3バイパス弁V7を開とし、第2バイパス路42に設けられた第2バイパス弁V6は開のままとする。
【0049】
この第1媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、上記第3媒体供給状態から第1媒体供給状態に切り替えられた直後に、高温媒体の設定温度程度まで急激に上昇し、その後、金型2との熱の授受等によって若干は降下するが、上記第3媒体供給状態において、残留第2媒体が第3媒体供給部30に送給されているため、大幅に降下することなく、高温媒体の設定温度に近づき、この設定温度程度で推移する。
このように本動作例によれば、第1媒体供給状態において、迅速に所定の設定温度の第1媒体を金型2の媒体流通路3に供給することができる。
つまり、
図2(b)に示すように、従来の装置によれば、第2媒体供給状態から第1媒体供給状態に切り替えた場合には、金型の入口側の媒体温度は、第2媒体供給状態から第1媒体供給状態に切り替えられた直後は高温媒体の設定温度程度に急激に上昇するが、残留低温媒体の返媒により、降下し、この降下した高温媒体の温度を所定の設定温度に復帰させるには、比較的に長い時間を要する。一方、本動作例によれば、第1媒体供給状態において、迅速に所定の設定温度の第1媒体を金型2の媒体流通路3に供給することができる。
以下、同様にして、第1媒体供給工程と、第2媒体供給切替工程と、第2媒体供給工程と、第3媒体供給工程とがこの順で繰り返し、実行される。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る金型温度調節装置1によれば、金型加熱工程から金型冷却工程に切り替えられた際、及び金型冷却工程から金型加熱工程に切り替えられた際に、各媒体の温度を迅速に所定の低温媒体の設定温度及び高温媒体の設定温度に復帰させることができ、これらを金型2の媒体流通路3に循環供給することができる。従って、金型2を迅速に加熱乃至は冷却することができ、成形サイクルを短縮化することができる。
また、上記のような一時貯水タンク等に交互に熱水と冷水とを一時的に貯蔵させるようなものと比べて、混合や放熱等の外乱による温度降下乃至は温度上昇が生じ難く、より確実かつ迅速に各工程に切り替えられた際に、各媒体を所定の低温媒体の設定温度及び高温媒体の設定温度に復帰させることができる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る金型温度調節装置1によれば、上記動作例のように、高温の第1媒体の設定温度と、高温の第3媒体の設定温度とを異ならせるような制御も簡易に実行することができる。
また、上記動作例のように、第3媒体供給工程を、少なくとも媒体流通路3内及び媒体流通路3とバルブユニット40とを接続する管路5,6内に残留する低温の第2媒体(残留第2媒体)を高温の第3媒体に置換させるまで実行するようにすることで、高温媒体供給部10に返媒される残留第2媒体量を効果的に小さくでき、より迅速に所定の設定温度の第1媒体を金型2の媒体流通路3に供給することができる。
なお、上記動作例では、第3媒体の設定温度を第1媒体の設定温度よりも高く設定した例を示しているが、これらを同じ設定温度としてもよい。
【0052】
次に、本発明に係る金型温度調節装置の他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5は、第2実施形態に係る金型温度調節装置について説明するための説明図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、同様の動作例についても説明を省略または簡略に説明する。
【0053】
本実施形態に係る金型温度調節装置1Aでは、
図5(a)に示すように、第1媒体供給部10Aを、低温媒体を循環供給する低温媒体供給部10Aとし、第2媒体供給部20Aを、高温媒体を循環供給する高温媒体供給部20Aとし、第3媒体供給部30Aを、低温媒体の温度に対応させた低温媒体を循環供給するプレ低温媒体供給部30Aとした例を示している。
また、本実施形態に係る金型温度調節装置1Aにおいて実行される基本動作例においては、第3媒体の設定温度を第1媒体としての低温媒体の設定温度よりも低く設定している。なお、例えば、第1媒体の設定温度よりも低く設定される第3媒体の設定温度としては、余りにも低すぎればそれに応じた冷媒等を供給する必要があるため、第1媒体の設定温度よりも10℃〜40℃程度、低い温度を設定温度とするようにしてもよい。以下では、高温媒体及び低温媒体の設定温度は、上記第1実施形態と同様とし、第3媒体の設定温度を45℃とした例について説明する
以下、本実施形態に係る金型温度調節装置1Aにおいて実行される基本動作の一例について
図5(b)に基づいて説明する。
【0054】
<金型加熱工程:第2媒体供給工程>
金型2に設けられた媒体流通路3に高温媒体を循環供給して金型2を加熱する際において、当該装置1の稼動時には、上記第1実施形態において説明した基本動作例と同様、各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記第2媒体(高温媒体)供給状態とする。
この状態では、各媒体供給部10A,20A,30Aに設けられた循環ポンプ17,27,37によって、高温媒体供給部20A側では、高温媒体が各送媒路25,45,5及び各返媒路6,46,26を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が加熱される。また、低温媒体供給部10A側では、第1バイパス路41を経て低温媒体が循環される。また、プレ低温媒体供給部30A側では、上記第1実施形態と同様、第3バイパス路43を経て低温(第3)媒体が循環されるとともに、低・低送媒路44と低・低返媒路47とを接続するバイパス路48を経て低温(第3)媒体が循環される。このように、第3バイパス路43の金型2側の管路内にもバイパス路48を経て低温(第3)媒体を循環させることで、これらの管路内において低温媒体の温度上昇が生じ難く、次に後記する第3媒体供給状態とされた際に、より迅速に低温の媒体を金型2側に供給することができる。
【0055】
<金型冷却工程:第3媒体供給工程>
上記第2媒体供給工程の後、上記第1実施形態において説明した基本動作例と同様、第2媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記第3媒体(低温媒体)供給状態とし、第3媒体供給工程を実行する。
この状態では、各媒体供給部10A,20A,30Aに設けられた循環ポンプ17,27,37によって、プレ低温媒体供給部30A側では、低温(第3)媒体が各送媒路35,44,45,5及び各返媒路6,46,47,36を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が冷却される。また、低温媒体供給部10A側では、第1バイパス路41を経て低温媒体が循環され、高温媒体供給部20A側では、第2バイパス路42を経て高温媒体が循環される。
【0056】
この第3媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、第2媒体供給状態から第3媒体供給状態に切り替えられた直後は、高温媒体の設定温度程度から低温(第3)媒体の設定温度(例えば、45℃)程度まで急激に降下するが、その後、金型2の媒体流通路3内や媒体流通路3に接続された送媒路5,45内及び返媒路6,46内等に高温の第2媒体が残留しており、その残留高温媒体が第3媒体供給部30Aに返媒されるため、第3媒体供給部30Aの貯留タンク31の媒体温度が急激に上昇し、これに伴い金型2の入口側の媒体温度も上昇する。本動作例では、上述のように第3媒体の設定温度を第1媒体の設定温度よりも低く設定しているため、温度上昇の度合いを上記第1実施形態と略同様、小さくすることができる。
【0057】
この第3媒体供給工程は、上記第1実施形態と同様、少なくとも媒体流通路3内及び媒体流通路3とバルブユニット40とを接続する管路5,6内に残留する高温の第2媒体(残留第2媒体)を低温の第3媒体に置換させるまで実行するようにしてもよい。
この場合、上記同様にして、上記残留第2媒体が第3媒体に置換されたことをCPU51によって判別するようにしてもよい。このようなCPU51による上記判別は、上記同様、第3媒体供給時間や各種検出手段による検出値に基づいて判別するようにしてもよい。
【0058】
なお、上記第2媒体供給状態から第3媒体供給状態に切り替えられた際に、第3媒体供給部30Aの冷却弁31を、上記所定条件(第3媒体供給時間や切替温度、流量等)に達するまで強制的に全開させるようにしてもよい。または、上記所定条件に達するまで第3媒体温度センサー34の検出温度に基づいて、二位置制御(ON/OFF制御)するようにしてもよい。これらの態様によれば、高温媒体の流入に伴う温度上昇の度合いを小さくでき、より低温の第3媒体を迅速に循環供給することができる。
また、これらの態様を実行する場合には、第3媒体供給工程が実行されている間は、第3媒体供給部30Aの加熱手段は、強制的に停止させておくようにしてもよい。
【0059】
<金型冷却工程:第1媒体供給工程>
上記所定条件に達すれば、上記第1実施形態において説明した基本動作例と同様、第3媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記第1媒体供給状態とし、第1媒体供給工程を実行する。
この状態では、各媒体供給部10A,20A,30Aに設けられた循環ポンプ17,27,37によって、低温媒体供給部10A側では、低温媒体が各送媒路15,44,45,5及び各返媒路6,46,47,16を介して金型2の媒体流通路3に循環供給され、金型2が冷却される。また、高温媒体供給部20A側では、第2バイパス路42を経て高温媒体が循環され、プレ低温媒体供給部30A側では、第3バイパス路43を経て低温(第3)媒体が循環される。
【0060】
この第1媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、上記第3媒体供給状態から第1媒体供給状態に切り替えられた直後に、低温媒体の設定温度程度まで急激に降下し、その後、金型2との熱の授受等によって若干は上昇するが、上記第3媒体供給状態において、残留第2媒体が第3媒体供給部30Aに送給されているため、大幅に上昇することなく、低温媒体の設定温度(例えば、60℃)に近づき、この設定温度程度で推移する。
このように本動作例によれば、上記第1実施形態と同様、第1媒体供給状態において、迅速に所定の設定温度の第1媒体を金型2の媒体流通路3に供給することができる。
【0061】
<金型加熱工程:第2媒体供給切替工程>
上記第1媒体供給工程の後、本動作例では、上記第1実施形態と略同様、第2媒体供給状態とするとともに、高温媒体供給部20Aの熱交換手段としてのヒーター(第2ヒーター)22を強制的に作動させる第2媒体供給切替工程を実行するようにしている。
つまり、上記第1実施形態と同様、この工程では、第1媒体供給状態とされた各弁をCPU51によって開閉制御(乃至は切替制御)して、上記第2媒体(高温媒体)供給状態とする。
【0062】
また、上記のように第1媒体供給状態から第2媒体供給状態に各弁を開閉乃至は切り替えるとともに、第2ヒーター22を強制的に稼動させて、高温媒体供給部20Aの貯留タンク21内の媒体を強制加熱するようにしている。つまり、上記第1実施形態と略同様、所定条件に達するまでは、当該第2媒体供給切替工程を実行し、PID制御等の通常制御に基づいて第2ヒーター22の通電制御を実行せずに、強制的に稼動させるようにしている。これにより、高温媒体供給部20Aから供給される高温媒体を迅速に所定の設定温度(例えば、145℃)に復帰させることができる。このような制御を実行した場合、金型2の入口側の媒体温度は、若干はオーバーシュートすることとなるが、金型2は比較的に熱容量が大きく前工程において冷却されているため、問題が生じるようなことはなく、より迅速に金型2を加熱することができる。なお、このオーバーシュートを見越して媒体が沸騰しないように系内の圧力を設定しておくようにしてもよい。
【0063】
なお、このように高温媒体供給部20Aの熱交換手段としての第2ヒーター22を所定条件に達するまで強制作動させる態様に代えて、上記第1実施形態において説明したように所定条件に達するまでは、第2媒体温度センサー24の検出温度に基づいて、二位置制御(ON/OFF制御)するようにしてもよい。これによってもPID制御等の通常制御を実行する場合と比べて、比較的、迅速に高温媒体を所定の設定温度に復帰させることができる。
また、この第2媒体供給切替工程が実行されている間は、第2媒体供給部20Aの冷却手段としての第2冷却弁V21は、強制的に閉止させておくようにしてもよい。つまり、設定温度に基づく温度コントロールを無効としておくようにしてもよい。
【0064】
<金型加熱工程:第2媒体供給工程>
上記所定条件に達すれば、高温媒体が設定温度となるように第2媒体温度センサー24の検出温度に基づく通常制御を実行し、第2媒体供給工程を実行する。
すなわち、各弁を上記第2媒体供給状態のままとし、金型2の媒体流通路3に高温媒体を循環供給して、金型2を加熱する。
この第2媒体供給工程では、金型2の入口側の媒体温度は、金型2との熱の授受等に伴い若干は上下するが、上記オーバーシュートした温度から予め設定された高温媒体の設定温度(例えば、145℃)程度で推移する。
以下、同様にして、第2媒体供給工程と、第3媒体供給工程と、第1媒体供給工程と、第2媒体供給切替工程とがこの順で繰り返し、実行される。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る金型温度調節装置1Aによれば、上記第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
なお、上記動作例では、第3媒体の設定温度を第1媒体の設定温度よりも低く設定した例を示しているが、これらを同じ設定温度としてもよい。
【0066】
また、上記各動作例では、第3媒体供給状態とした後、少なくとも媒体流通路3内及び媒体流通路3とバルブユニット40とを接続する管路5,6内に残留する第2媒体を第3媒体に置換させた後に、第1媒体供給状態に切り替える制御を実行するようにした例を示しているが、残留第2媒体の全量を置換させることなく第1媒体供給状態に切り替える制御としてもよい。これによっても従来のものと比べて、第1媒体供給部における温度降下乃至は温度上昇を比較的に小さくすることができ、成形サイクルの短縮化を図ることはできる。
また、上記各動作例では、第1媒体供給状態からは、第2媒体供給状態に切り替えるとともに、第2媒体供給部の熱交換手段を強制的に作動させた後に、通常制御で熱交換手段の作動制御を実行するようにした例を示しているが、このような強制作動を実行しないようにしてもよい。これによっても従来のものと比べて、一方の媒体(第1媒体)の温度は比較的に迅速に設定温度に復帰させることができるので、成形サイクルの短縮化を図ることはできる。
【0067】
なお、上記各実施形態においては、各バイパス弁V5,V6,V7をそれぞれに設けた各バイパス路41,42,43をバルブユニット40に組み込んだ例を示しているが、これらを各媒体供給部側に設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、上記したような各部を備えた金型温度調節装置1,1Aとして説明したが、第1媒体供給部としての第1媒体供給装置10(10A)と、第2媒体供給部としての第2媒体供給装置20(20A)と、第3媒体供給部としての第3媒体供給装置30(30A)と、バルブユニット40と、CPU51等を有した制御ユニット50とを備えた金型温度調節システム1(1A)として把握するようにしてもよい。
【0068】
また、上記各実施形態では、第1媒体供給部と、第2媒体供給部と、第1媒体に対応させた第3媒体を循環供給する第3媒体供給部とを備えた金型温度調節装置について説明したが、さらにこれに加えて、第2媒体に対応させた第4媒体を循環供給する第4媒体供給部を備えたものとしてもよい。この場合は適宜、さらに切替弁等を設けるようにし、上記各動作例において説明した第2媒体供給切替工程に代えて、第4媒体供給工程を第3媒体供給工程と略同様にして実行させるようにしてもよい。つまり、金型2の媒体流通路3に第1媒体を循環供給する第1媒体供給状態からは、媒体流通路3に第4媒体を循環供給する第4媒体供給状態とした後に、媒体流通路3に第2媒体を循環供給する第2媒体供給状態に切り替えるようにしてもよい。さらには、このような第3媒体供給部や第4媒体供給部を複数設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態では、種々の稼動態様に適応可能なように、また、装置構成を複雑化しないよう、各媒体供給部を略同一構成とした例を示しているが、このような態様に限られない。高温媒体を供給する高温媒体供給部として専用の媒体供給部を採用し、低温媒体を供給する低温媒体供給部として専用の媒体供給部を採用するようにしてもよい。また、これらに準じた専用のプレ媒体供給部を第3媒体供給部として採用するようにしてもよい。