(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はこの実施の形態に係る板厚測定装置の使用状態を示す図(
図1(A))と、測定対象である、鋼管柱42内での板厚測定時の走査部20の状態を示す、鋼管柱42を上方向から見た図(
図1(B))であり、
図2は板厚測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【0014】
図1および
図2を参照してこの実施の形態に係る板厚測定装置10は、土壌と接触している地際部分41における鋼管柱42の腐食状態を測定する。なお、地際より下部の測定も可能である。ここでは、鋼管柱42はたとえば、ガードレールを固定する円筒部材である。板厚測定装置10は、鋼管柱42において板厚を測定する探触子11を着脱自在に保持する走査部(移動手段)20と走査部20に接続された制御部30とを含む。走査部20は後に説明する探触子送り込み治具で所望の板厚測定位置に位置決めされる。走査部20と制御部30とは電送線25で接続されている。制御部30から走査部20へ電源の供給、走査部の制御用信号、走査部からの計測データの送信等はこの電送線25を介して行なう。
【0015】
制御部30は走査部を制御する制御器31と超音波探傷器32とを含む。超音波探傷器32は測定結果波形を示すモニタを含む。
【0016】
図1(B)に示すように、所望の測定位置に載置された走査部20は、図中矢印Aで示すように、鋼管柱42の内面に沿って移動しながら探触子11を用いて、その地点における板厚を測定する。なお、
図1(B)には円筒部材においてガードレールを固定する固定ボルト43も示している。
【0017】
図2に示すように、走査部20は探触子11を保持する探触子保持部29と、走査用のモータ23と、エンコーダ24と、マグネットローラ26と、探触子11を鋼管柱42に当接する方向に回転させる回転駆動部28とを含む。
【0018】
探触子保持部29は、超音波を発射する探触子11と、探触子11を鋼管柱42の内周に正対させるためのマグネットローラ12と、受信した超音波信号を超音波探傷器32に送信する送信装置(送信手段)13とを含む。なお、超音波探傷器32はメモリカードを内蔵しており、メモリカードを介して測定データが別の場所に設けられたパソコン33に送られて、そこで、データ解析やグラフ化が行なわれる。
【0019】
図3は探触子送り込み治具(位置決め手段)50を用いて、走査部20を鋼管柱42の内部に送り込む状態を示す図である。なお、
図3(A)には鋼管柱42も示している。また、ここでは、鋼管柱42の上端部は開口されている状態を示す。
図3を参照して、探触子送り込み治具50は挿入板51と、挿入板51の先端部に設けられた走査部保持部52と、保持部52とは反対側の挿入板端部に設けられた把手部53とを含む。走査部20は走査部保持部52によって保持されて、ユーザが把持部53で治具50を把持して鋼管柱42の所望の高さまで下ろす。なお、探触子送り込み治具50は走査部20を保持して所望の高さまで下ろすときに、固定ボルト43と鋼管柱42との隙間を問題なく通過できる寸法となっていることから、ガードレールを取外さなくても測定でき、作業時間の短縮が可能である。また、測定装置の小型化を図っていることから、小口径の鋼管の板厚測定ができる。
【0020】
次に板厚測定装置10を用いた具体的な測定方法について説明する。
図4は鋼管柱42の板厚を測定している状態を示す図であり、
図1(B)に示した走査部20が鋼管柱42の内面に位置している状態を示す断面図である。
図4に示すように、鋼管柱42に、図示の無い磁石で当接した走査部20は探触子11を保持する。探触子11はアレイ式の探触子であり、鋼管柱42の一定の幅wを同時に測定可能である。但し、単一の探触子での測定も可能である。走査部20を
図4において矢印で示す円周方向に走査させて、探触子11によって鋼管柱42を探傷することによって地際等の所望の位置における鋼管柱42の板厚を容易に測定可能である。
【0021】
図5は走査部20の概要を示す模式図である。
図5(A)は走査部20の全体の概要を示す斜視図であり、
図5(B)は
図5(A)において、矢印B−Bで示す部分の概略矢視図である。
図5を参照して、走査部20は中央部に探触子11を着脱自在に保持する探触子保持部29を有する全体が直方体状である。走査部20は短辺側から見ると、矩形部分とその下部に設けられた矩形部分の一辺を共通とする台形状の部分とからなり、この台形状の部分の短辺と斜辺との交点部分に駆動部としての、マグネットローラ26が設けられている。マグネットローラ26は、走査部20の長手方向の両端部にそれぞれ一対設けられている。
【0022】
マグネットローラ26a〜26dは磁性を有するローラであり、鋼管柱42のような磁性体に吸着しながらマグネットローラ26a〜26dが回転することにより磁性体に沿って移動する。マグネットローラは走査部20の長手方向の一方側と他方側とに設けられているため、全部で4個のマグネットローラが設けられている。
【0023】
マグネットローラの回転軸は走行装置23の長手方向に沿った方向であり、それによって、
図5(B)において、矢印B−Bで示す方向に円弧に沿って移動可能である。
【0024】
図5(A)に示すように、探触子ホルダ21は探触子11を保持する探触子保持部29を収容する。探触子保持部29は直方体状であり、長手方向の両端部において、それぞれ一対のマグネットローラ12a〜12dが設けられている。マグネットローラ12a〜12dの回転軸は、走査部20のマグネットローラ26a〜26dの回転軸と同じ方向である。
図5(B)に示すように、走査部20の短辺側から見たとき、探触子保持部29のマグネットローラ12a〜12dは走査部20のマグネットローラ26a〜26dに挟まれてその下部に位置し、それによって、探触子保持部29のマグネットローラ12a〜12dと走査部20のマグネットローラ26a〜26dとは同じ円弧上(すなわち、鋼管柱42の内周面)を移動可能である。
【0025】
また、探触子ホルダ21は直方体状の探触子保持部29をその長手方向の対向する2面で収納可能な対向する壁面21aと、それぞれの壁面21aの中央部に設けられた円筒形状の突起部21bとを含む。探触子保持部29はその長手方向の対向する2面のそれぞれに、突起部21bに係合して突起部21bの回転に応じて回転する円筒状の係合凹部14を有している。走査部20は突起部21bを回転駆動するための回転駆動部28(
図2参照)を有し、それによって、探触子保持部29は走査部20に対して
図5(A)において矢印Cで示す方向に回転可能である。
【0026】
すなわち、探触子11は走査部20が鋼管柱42の内周面に沿って円周方向に移動しながら、走査部20の長手方向の中央部を回転中心として鋼管柱42に当接、または、離隔する方向に回転可能である。
【0027】
なお、
図5(A)に示すように、走査部20の長手方向の両端部には磁石22a,22bが設けられている。なお、この磁石22a,22bはマグネットローラ26a〜26dが設けられている側に設けられている。これによって、走査部20はより安定して鋼管柱42の内周面に保持される。
【0028】
次に、走査部20の詳細について説明する。
図6(A)は走査部20の平面図(
図6(B)においてVIA-VIAで示す部分の矢視図)であり、
図6(B)はその側面図(
図6(A)においてVIB-VIBで示す部分の矢視図)である。
図6を参照して、平面図において矩形状を有する探触子ホルダ21は、走査部20に設けられた取付けノブ28a〜28dによって走査部20に取り付けられている。取付けノブ28a〜28dは矩形状を有する探触子ホルダ21をその四隅で保持している。
【0029】
また、探触子保持部29のほぼ中央部には測定時に必要な接触媒質(ここでは水)を供給する接触媒質供給口27が設けられている。
【0030】
次に、この実施の形態に係る板厚測定装置10の動作について説明する。
図7はこの実施の形態における板厚測定装置の動作を示すフローチャートである。
図7を参照して、まず事前準備を行なう(ステップS11,以下、ステップを省略する)。具体的には、板厚測定装置を構成する部材である、探触子11、走査部20、超音波探傷器32、探触子送り込み治具50、板厚測定装置の較正を行なうための、所定の厚みを有する調整用試験片等をそろえる。
【0031】
次に、探触子11を探触子保持部29にセットし、調整用試験片を用いて、板厚測定装置を較正する(S12)。走査部20に探触子保持部29を取付ける(S13)。探触子11が保持された走査部20を探触子送り込み治具50を用いて鋼管柱42内に送り込む(S14)。所定の高さまで送り込んだら走査部20を自走させて鋼管柱内周面に正対させ、その後、走査部20を所定の開始位置に移動させることによって鋼管柱42の板厚の計測を開始する(S15)。計測が終了すれば走査部20を回収する(S16)。その後、測定すべき別の鋼管柱に移動する(S17)。これを全ての鋼管柱について実行する。全ての鋼管柱について計測が完了すれば後作業を行なう(S18)。後作業が終了後、事務所等でパソコンを用いて計測結果を解析する(S19)。
【0032】
次に
図7において、S15で示した計測処理について説明する。
図8はこの計測処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、制御部30の有する制御器31(具体的には制御器の有するCPU)が行なう動作である。
【0033】
図8を参照して、ここでは、まず走査部20を探触子送り込み治具50の上から鋼管柱42の内周に沿って移動させる(S151)。走査部20が鋼管柱内を360°移動したか、すなわち、鋼管柱42内を一周したか否かを判断する(S152)。一周したら(S152でYES)、適切な探傷データが得られているか否かを判断して処理を終了する(S153)。これは、鋼管柱42の内周面に異物等が堆積したり、塗装時において塗料が一部に堆積して、走査部20(探触子11)が鋼管柱42の内周面に密着できないことが起こりうるためである。S152で一周していなかったり(S152でNO)、S153で適切な探傷データが得られていないときは(S153でNO)、S151に戻って走査部20を移動させる。
【0034】
なお、上記実施の形態においては、探触子送り込み治具で所望の位置に走査部を載置する場合について説明したが、これに限らず、鋼管柱の上端部の開口に走査部をセットし、そこから所望の探傷位置まで制御部の制御によって移動させるようにしてもよい。なお、この場合は、マグネットローラの軸方向は任意の方向に回転可能とするのが好ましい。
【0035】
また、円周方向のみでなく、鋼管柱の軸方向に走査して軸方向に板厚を測定してもよい。
【0036】
また、上記実施の形態においては、走査部のみならず、探触子にもマグネットローラを設けたが、探触子にはマグネットローラを設けなくてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態においては、走査部に磁石を設けた場合について説明したが、これに限らず、磁石を設けなくてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態においては、探触子と制御部との交信は有線で行なう場合について説明したが、これに限らず、無線で行なってもよい。
【0039】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。