特許第5740136号(P5740136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740136
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 21/14 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   F25D21/14 F
   F25D21/14 Q
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-243001(P2010-243001)
(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2012-93070(P2012-93070A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】ハイアールアジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109368
【弁理士】
【氏名又は名称】稲村 悦男
(72)【発明者】
【氏名】山川 貴志
【審査官】 仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−007771(JP,U)
【文献】 特開2001−152979(JP,A)
【文献】 実開昭49−150964(JP,U)
【文献】 実開昭59−016975(JP,U)
【文献】 実開昭64−031985(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内箱と外箱との間に断熱材が充填された断熱壁の内部を貯蔵室とし、この貯蔵室の奥部に冷却器を配置すると共にこの冷却器の下方の前記内箱に排水口を設け、この排水口に連結したドレンパイプを前記断熱壁を通して下方へ導出させるようにした冷却貯蔵庫において、前記ドレンパイプは弾性を有するゴム製で且つその中間部周囲に上下2つの環状の突出部を一体形成し、前記ドレンパイプが挿通される前記外箱にはこの外箱の底板よりその上部が上方へ突出すると共にその下部が前記底板より下方へ突出し且つ前記ドレンパイプを挿通させた際にこのドレンパイプ下部を下方へ突出させて前記底板の下方から手で掴める長さを有する円筒状の挿通部を一体形成し、前記ドレンパイプの上下2つの前記突出部の間隔を前記挿通部の高さ寸法より小さく設定し、上の前記突出部の外径は前記挿通部の外径よりも大きく設定すると共に下の前記突出部は下から上に向けて径が大きくなるテーパー形状を有し、前記挿通部の下端には内側に折曲してその内径が下の前記突出部の外径より小さくて下の前記突出部上面に係止する係止部を形成することにより、前記内箱と前記外箱との間に前記断熱材を充填する前に、前記ドレンパイプを前記排水口及び前記挿通部に挿通させた際に、前記挿通部より下方へ突出した前記ドレンパイプの下端部を前記底板の下方から手で掴んで下方へ引っ張ると、下のテーパー形状の前記突出部がそのテーパーに沿って前記挿通部下部へと導かれて前記係止部を乗り越えて該係止部下面が下の前記突出部上面に当接すると共に上の前記突出部下面が前記挿通部の上端部に当接することにより、前記挿通部の上下端を上下2つの前記突出部にて弾性的に挟持するようにしたことを特徴とする冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内箱と外箱との間に断熱材が充填された断熱壁の内部を貯蔵室とし、この貯蔵室の奥部に冷却器を配置すると共にこの冷却器の下方の前記内箱に排水口を設け、この排水口に連結したドレンパイプを前記断熱壁を通して下方へ導出させるようにした冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却貯蔵庫では、冷却器に付いた霜を定期的に除霜ヒータで融かし、そのドレン水を前記冷却器の下の内板に開設した排水口に連結したドレンパイプを介して断熱壁を通して下方の蒸発皿に排出させるようにしている。
【0003】
前記ドレンパイプは断熱壁の外板に設けた挿通穴を通して導出させるようにしているので、この導出部分からの発泡断熱材を形成する際の発泡漏れを防ぐために、前記ドレンパイプにシール材を十分に巻く必要があり、この作業が煩わしいものであった。
【0004】
また、前記ドレンパイプにシール部材を巻きつける代わりに、ドレンパイプの外周に弾性部材を取り付け、この弾性部材をドレンパイプの導出部分に弾性的に密着させることにより、発泡漏れを防ぐようにしたものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3806861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドレンパイプの導出部分の間に弾性部材を介在させるものでは部品点数が多くなるばかりでなく、弾性部材を導出部分に密着させるために断熱壁の内板及び外板の形状を複雑にしなければならず、密着させるための作業も複雑になるなど、コスト高や作業ミスを招きやすくなる欠点があった。
【0007】
そこで本発明は、冷却器の除霜によって発生したドレン水を排出するためのドレンパイプの断熱壁導出部分における発泡漏れを簡単、且つ、確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、内箱と外箱との間に断熱材が充填された断熱壁の内部を貯蔵室とし、この貯蔵室の奥部に冷却器を配置すると共にこの冷却器の下方の前記内箱に排水口を設け、この排水口に連結したドレンパイプを前記断熱壁を通して下方へ導出させるようにした冷却貯蔵庫において、前記ドレンパイプは弾性を有するゴム製で且つその中間部周囲に上下2つの環状の突出部を一体形成し、前記ドレンパイプが挿通される前記外箱にはこの外箱の底板よりその上部が上方へ突出すると共にその下部が前記底板より下方へ突出し且つ前記ドレンパイプを挿通させた際にこのドレンパイプ下部を下方へ突出させて前記底板の下方から手で掴める長さを有する円筒状の挿通部を一体形成し、前記ドレンパイプの上下2つの前記突出部の間隔を前記挿通部の高さ寸法より小さく設定し、上の前記突出部の外径は前記挿通部の外径よりも大きく設定すると共に下の前記突出部は下から上に向けて径が大きくなるテーパー形状を有し、前記挿通部の下端には内側に折曲してその内径が下の前記突出部の外径より小さくて下の前記突出部上面に係止する係止部を形成することにより、前記内箱と前記外箱との間に前記断熱材を充填する前に、前記ドレンパイプを前記排水口及び前記挿通部に挿通させた際に、前記挿通部より下方へ突出した前記ドレンパイプの下端部を前記底板の下方から手で掴んで下方へ引っ張ると、下のテーパー形状の前記突出部がそのテーパーに沿って前記挿通部下部へと導かれて前記係止部を乗り越えて該係止部下面が下の前記突出部上面に当接すると共に上の前記突出部下面が前記挿通部の上端部に当接することにより、前記挿通部の上下端を上下2つの前記突出部にて弾性的に挟持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、内箱と外箱との間に断熱材を充填する前に、ドレンパイプを排水口及び挿通部に挿通させた際に、前記挿通部より下方へ突出した前記ドレンパイプの下端部を前記底板の下方から手で掴んで下方へ引っ張ると、下のテーパー形状の突出部がそのテーパーに沿って前記挿通部下部へと導かれて係止部を乗り越えて該係止部下面が下の前記突出部上面に当接すると共に上の前記突出部下面が前記挿通部の上端部に当接することにより、前記挿通部の上下端を上下2つの前記突出部にて弾性的に挟持することにより、ドレンパイプの断熱壁導出部分が完全にシールされるため、この部分における発泡漏れを簡単、かつ、確実に防止できる。
【0011】
また、前記ドレンパイプの下の前記突出部は下から上に向けて径が大きくなるテーパー形状を有しているため、ドレンパイプの下の突出部をテーパーに沿って挿通部に滑らかに通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】冷却貯蔵庫としての冷凍冷蔵庫の正面図である。
図2図1の冷凍冷蔵庫のA−A線断面図である。
図3図2のB部を拡大した断面図で、ドレンパイプの取り付け過程を示すものである。
図4】同じく図2のB部を拡大した断面図で、ドレンパイプの取り付け完了状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における冷却貯蔵庫の実施の形態を、図1乃至図4を用いて説明する。冷却貯蔵庫である冷凍冷蔵庫の本体は、前面が開口している断熱箱体1で構成されている。この断熱箱体1は断熱壁で形成され、後述するように内箱2と外箱3との間の空間S内に発泡ウレタン等の断熱材を充填したものである。
【0014】
そして、前記断熱箱体1の内部空間、即ち庫内となる貯蔵室は、略水平な3個の断熱仕切り壁4、5、6で、上下4つの空間に仕切られ、最上部空間が冷蔵室7、上から2段目の空間が縦仕切壁(図示せず)により左右に仕切られて製氷室8及び第1冷凍室9、上から3段目の空間が温度切替室10、また最下部空間が第2冷凍室11となっている。
【0015】
そして、前記冷蔵室7の前面開口は観音開きの断熱扉13で開閉自在に閉塞され、製氷室8、第1冷凍室9、温度切替室10、及び第2冷凍室11の前面開口は、それぞれ引き出し式の断熱扉14乃至17で開閉自在に閉塞されている。
【0016】
前記冷蔵室7奥部には、この冷蔵室7内に冷気を供給する冷蔵室用通風ダクト、送風機及び冷却器(共に図示せず)が設けられている。また、前記製氷室8、第1冷凍室9、温度切替室10、及び第2冷凍室11の奥部には、送風機18及び冷却器19を備えると共に、第1冷気ダクト20、この第1冷気ダクト20上部と連通する第2冷気ダクト21及びこの第2冷気ダクト21下部に連通すると共に第2冷凍室11に連通する戻り通風ダクト22が形成されたダクト形成体23が配置されている。
【0017】
また、前記両冷却器19(他方は図示せず)は圧縮機、凝縮器、キャピラリーチューブ等の減圧装置、及びアキュムレータ等の気液分離器などと共に順次冷媒配管で接続された冷凍サイクルユニットを構成するものであり、この冷凍サイクルユニットにおいて減圧装置と気液分離器の間に接続され、蒸発器として作用するものである。そして、圧縮機及び凝縮器等は断熱箱体1の後部下側に形成されている機械室25に蒸発皿26とともに配置されている。
【0018】
そして、上方の冷却器(図示せず)で生成された冷気は送風機により冷蔵室用通風ダクトを介して前記冷蔵室7内に冷気が供給され、冷蔵室用通風ダクト下部を介して戻り、また下方の前記冷却器19で生成された冷気は送風機18の運転により第1冷気ダクト20、第2冷気ダクト21を経て、各吹出し口27を介して製氷室8、第1冷凍室9、温度切替室10及び第2冷凍室11に供給され、これらの貯蔵室内を冷却した後に、戻り通風ダクト22等を介して前記第1冷気ダクト20の下部に戻る構成である。
【0019】
そして、前記冷蔵室7は冷気量をダンパー等で調節することにより室温が、例えば5°C前後に維持され、第1冷凍室9は室温がマイナス7°C程度に維持され、温度切替室10はダンパーの切り換えにより室温が5°C〜マイナス20°Cの範囲で切り換えて使用され、第2冷凍室11は室温がマイナス20°C程度に維持されるようにしてある。
【0020】
また、前記冷却器19の下方には、除霜ヒータ28が設けられ、この除霜ヒータ28は、タイマー等によって設定された霜取り時や、霜取りセンサ(図示せず)が一定量の霜を検出した時に通電されて発熱し、冷却器19などに付着した霜を融かすものである。
【0021】
そして、機械室25の上壁である断熱箱体1の底壁1Aには、この冷却器19などから滴下するドレン水を受けるためにドレン受け部30が形成され、このドレン受け部30は排水口31に向けて低く形成されている。そして、このドレン受け部30の排水口31に連結されたゴム製のドレンパイプ32が前記底壁1Aを貫通して貯蔵室外の機械室25に導出されている。前記ドレン受け部30のドレン水はドレンパイプ32を通って、このドレンパイプ32に連通された排水管33を介して機械室25に配備されている蒸発皿26に導かれて回収されるようにしてある。
【0022】
ここで、上述したドレンパイプ32の取り付け方法を説明する。前述したように、機械室25の上壁である断熱箱体1の底壁1Aは合成樹脂製の内箱2と、外箱3としての合成樹脂製の底板35及び鋼板製の底板36と、この内箱2と両底板35、36から成る外箱3との間に充填される発泡ウレタンからなる断熱材とから構成されるが、この発泡ウレタンの発泡充填前に、以下のように、取り付けられる。
【0023】
前記内板2には、上述したドレン受け部30及び排水口31が一体形成され、外箱3としての底板35には前記ドレンパイプ32が挿通される円筒状の挿通部37が一体形成されている。この挿通部37上部は底板35より上方へ突出するように形成されると共に、挿通部37下部は底板35より下方へ突出するように形成される。そして、この挿通部37の下端部には全周に亘って、内方に折り曲げられて係止部37Aが形成される。
【0024】
また、前記ドレンパイプ32は可撓性及び弾性を有するゴム製であり、その長手方向の中間部の外周囲には外方に突出した環状の係止部38、39が一体形成されている。そして、図3に示すように、上下2つの突出部38及び39間の間隔L1は挿通部37の高さL2よりも小さく設定されると共に、突出部38の外径は挿通部37の外径よりも大きく設定され、更に挿通部37の下端部を内側に折曲して形成した係止部37Aの内径は突出部39の外径より小さく設定されている。そして、突出部39は下から上に向けて径が大きくなるようなテーパー形状を有しており、ドレンパイプ32が断熱箱体1の内部空間内で上方から排水口31に挿通した際に底板35の挿通部37をも挿通し挿通部37よりも下方に突出して、機械室25の背面開口を介して手を挿入してこの突出した部分を底板35の下方から手で掴めるような長さに設定されている。即ち、このドレンパイプ32の突出部39よりも下の長さは、手で掴むのに十分な長さに設定されている。
【0025】
そして、前記ドレンパイプ32の上端周縁部には外方へ水平方向に突出した平面状のフランジ32Aが形成され、このフランジ32Aがドレン受け部30に形成された排水口31の周縁部の平坦面30Aに当接して気密に取り付け可能である。即ち、排水口31の内径よりも前記ドレンパイプ32の外径が僅か小さく設定されていて、且つ排水口31の内径よりも前記ドレンパイプ32のフランジ32Aの外径が大きく設定されているので、ドレン受け部30の排水口31にドレンパイプ32が挿通された際に、排水口31の周縁部の平坦面にフランジ32Aが上方から係止されることとなる。
【0026】
従って、内箱2と外箱3との間に断熱材を充填する前に、図3に示すように、ドレンパイプ32をドレン受け部30の排水口31及び底板35の挿通部37に挿通し、機械室25の背面開口を介して手を挿入して、挿通部37より下方へ突出したドレンパイプ32の下端部を掴んで下方へ引っ張る。すると、ドレンパイプ32下部の突出部39はそのテーパーに沿って挿通部37下部へと滑らかに導かれ、ついには挿通部37の係止部37Aを乗り越え、この係止部37A下面が突出部39の上面に喰い込むように当接する(図4参照)。
【0027】
このとき、挿通部37の係止部37A下面が突出部39の上面に当接しており、上下2つの突出部38及び39の間隔L1を挿通部37の高さL2より小さく設定してあるため、端部において2つの突出部38及び39の間隔L1がL2と等しくなるように離間するように引き伸ばされる。このため、外箱3の挿通部37はドレンパイプ32の上下2つの突出部38及び39間に弾性的に挟持されるようになり、しかも、挿通部37の内方に折曲されて形成された係止部37Aが突出部39の上面に喰い込み、ストッパー作用が働くようにしてある。
【0028】
このようにして、ドレンパイプ32の下側の突出部39上面が挿通部37の係止部37A下面に弾性的に当接し、ドレンパイプ32の上側の突出部38下面が挿通部37の上端部に弾性的に当接して、ドレンパイプ32を底板35から導出させる部分が完全にシールされる。このため、内箱2と外箱3との間に断熱材を充填する際に、ドレンパイプ32の底板35からの導出部分における断熱材の発泡漏れを簡単、且つ、確実に防止することができる。
【0029】
しかも、ドレンパイプ32の下側の突出部39上面が挿通部37の係止部37A下面に弾性的に当接した状態では、底板35の挿通部37の係止部37Aが下側の突出部39に喰い込むため、ドレンパイプ32の底板35からの導出部分のシールがより完全になると共に、ストッパー作用が働き、ドレンパイプ32の突出部38及び39が挿通部37から外れる心配もない。
【0030】
その後、図4に示すように、底板35の挿通部37に排水管33を嵌め込んで連結して、ドレンパイプ32に排水管33を連通させ、この排水管33を介して機械室25に配備されている蒸発皿26にドレン水を導びき、回収させる。なお、排水管33をドレンパイプ32に連結するようにしてもよい。
【0031】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0032】
1 断熱箱体
2 内箱
3 外箱
19 冷却器
30 ドレン受け部
31 排水口
32 ドレンパイプ
35 底板
37 挿通部
37A 係止部
38、39 突出部
図1
図2
図3
図4