【実施例】
【0027】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネスを配索したハイブリッド自動車を示す模式図である。また、
図2は第一導電路を示す構成図、
図3は第一導電路を曲げた状態を示す斜視図、
図4は第二導電路を示す構成図、
図5は導電路接続部の斜視図、
図6は導電路接続部の要部を示す図である。
【0028】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0029】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0030】
モータユニット3とインバータユニット4は、公知の高圧ワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4は、本発明のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10(後述する第一導電路15)が車体床下11の地面側に配索されている(室内側であってもよいものとする)。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が貫通形成されている。貫通孔の部分は特に図示しないが防水構造を有している。
【0031】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13がコネクタ又はボルトにて接続されている。ワイヤハーネス9の後端13側は、自動車室内側となる床上に配索されている。床上には、ワイヤハーネス9の前端14側も配索されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4にコネクタ又はボルトにて接続されている。
【0032】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0033】
以下、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0034】
ワイヤハーネス9は、第一導電路15と、第二導電路16、17と、導電路接続部18と、コネクタ19又は接続端子とを備えて構成されている。第一導電路15は、これ自身にてワイヤハーネス9の配索経路に沿った形状保持をすることが可能な剛性を有している。すなわち、第一導電路15は、例えば直線の状態から曲げを施すと、元に戻らずに曲げの形状を維持することが可能な剛性を有している。また、第二導電路16、17は、第一導電路15よりも低い剛性を有するとともに、柔軟性を有している。さらに、導電路接続部18は、第一導電路15及び第二導電路16、17の各導体端末を外部に対し絶縁しつつ接続する接続構造を有している。
【0035】
第一導電路15は、引用符号Aの範囲に配置されている。第一導電路15は、この範囲A内において上記の形状保持をすることが可能になっている。また、第二導電路16、17は、引用符号B、Cの範囲に配置されている。第二導電路16、17は、この範囲B、C内において上記の低い剛性や柔軟性を発揮することが可能なものになっている。
【0036】
図2(a)において、第一導電路15は、高圧となる一対の絶縁線心20、20と、この一対の絶縁線心20、20を並べた状態で一括して設けられるシールド部材21と、シールド部材21の外側に押し出し成形されるシース22とを備えて構成されている。絶縁線心20は、導体23と、この導体23の外側に設けられる絶縁体24とを備えて構成されている。第一導電路15は、外装部材レスの電線として形成されている。また、第一導電路15は、導通、電磁シールド、形状保持、電線保護のような各種機能の統合がなされた電線として形成されている。
【0037】
導体23としては、アルミニウム又はアルミニウム合金製の丸棒線(丸単心となる導体構造)が用いられている。尚、角棒線(四角形の単心となる導体構造)やバスバー形状となる導体構造であってもよいものとする。また、上記の形状保持をすることが可能な剛性を発揮できれば、撚り線導体となる構造のものが用いられてもよいものとする。この他、材質に関しては、特に限定されないものとする。すなわち、銅や銅合金製であってもよいものとする。本実施例においては、安価且つ軽量であるというメリットを有するアルミニウム製のものが用いられている。
【0038】
絶縁体24は、導体23に対する被覆であって、公知の樹脂材料を押し出し成形することにより形成されている。
【0039】
シールド部材21は、一対の絶縁線心20、20を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔を含んで筒状に形成されている。或いは、金属箔単体などにて筒状に形成されている。シールド部材21は、一対の絶縁線心20、20の全長とほぼ同じ長さに形成されている。
【0040】
尚、シールド部材21は、本実施例において金属箔を含んでいるが、この限りでないものとする。すなわち、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば極細の素線を多数有する編組が用いられてもよいものとする。編組は、導電性を有して筒状に形成されるものが用いられるものとする(金属箔は、編組と比べて格段に軽量化を図れることがメリットである)。シールド部材21の電気的な接続に関しては後述するものとする。
【0041】
シース22は、耐熱性、耐摩耗性、耐候性、耐衝撃性、押し出し成形性等の各種特性が良好な樹脂材料が選定され、その上で押し出し成形することにより形成されている。シース22は、この表面が第一導電路15の外面に相当するようなものに形成されている。シース22は、石跳ねや水跳ねから第一導電路15を保護することができるように形成されている。シース22は、第一導電路15において外装部材レスを可能とするように形成されている。
【0042】
ここで、第一導電路15の他の例について説明をする(符号に関し、
図2(a)の例と区別するためにダッシュ付きの符号を付すものとする)。
【0043】
図2(b)において、一つ目の例となる第一導電路15′は、これが一対となるように備えられている。一対の第一導電路15′、15′は、導体25と、この導体25の外側に押し出し成形される絶縁体26と、絶縁体26の外側に巻き付けられるシールド部材27と、シールド部材27の外側に押し出し成形される第一シース28及び第二シース29とを備えて構成されている。第一導電路15′は、公知のシールド電線と同様の構成を有している。
【0044】
導体25は、上記導体23と同じものが用いられている。また、絶縁体26も上記絶縁体24と同じものが用いられている。シールド部材27は、絶縁体26と第一シース28との間に介在する電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、導電性の金属箔単体などにて筒状に形成されている(編組であってもよいものとする)。
【0045】
第一導電路15′は、特に限定するものでないが、シースが二層構造となっている。すなわち、第一シース28及び第二シース29にて構成されている。外側となる第二シース29は、上記シース22と同じ機能を発揮することができるように形成されている。尚、第一シース28及び第二シース29は、二層構造にすることでプロテクト機能を高めるという効果を奏するが、これに限らず上記シース22と同様に一層構造にしてもよいものとする。
【0046】
図2(c)において、二つ目の例となる第一導電路15″は、プラス極導体30と、このプラス極導体30の外側に押し出し成形される絶縁体31と、絶縁体31の外側に設けられるマイナス極導体32と、このマイナス極導体32の外側に押し出し成形される絶縁体33と、絶縁体33の外側に巻き付けられるシールド部材34と、シールド部材34の外側に押し出し成形される第一シース35及び第二シース36とを備えて構成されている。
【0047】
プラス極導体30は、上記導体23、25と同じものが用いられている。また、絶縁体31、33も上記絶縁体24、26と同じものが用いられている。さらに、第一シース35及び第二シース36も上記第一シース28及び第二シース29と同じものが用いられている。さらにまた、シールド部材34も上記シールド部材27と同じものが用いられている。
【0048】
マイナス極導体32は、絶縁体31を介在させた状態でプラス極導体30と同心円でこれを囲む筒状の形状に形成されている。マイナス極導体32は、プラス極導体30のサイズに対して同じか大きくなるように形成されている。すなわち、例えばプラス極導体30のサイズが15sqの場合、マイナス極導体32はこのサイズが15sq以上となるように形成されている。理由としては、マイナス極導体32のサイズを大きくすることにより、グランド接続をすることができるとともに、電気的安定度を向上させることもできるというメリットを有するからである。
【0049】
第一導電路15″は、プラス極導体30、マイナス極導体32、及びシールド部材34の配置から、導電性の部分が同軸三層構造を構成するようなものになっている。
【0050】
第一導電路15″に関し、この第一導電路15″は
図2(b)の一対の第一導電路15′、15′を一本にすることができるので、配索の省スペース化を実現することができるとともに、軽量化を図ることもできるという効果を奏する。また、ワイヤハーネス組み立てに係る工程において、二本から一本になるため、工数を低減することができるという効果を奏する。さらに、導体や絶縁体の使用量を減らせることができるので、材料費削減を図ることもできるという効果を奏する。
【0051】
この他、マイナス極導体32がプラス極導体30を囲むことから、また、マイナス極導体32とプラス極導体30のそれぞれに流れる電流の向きが逆になることから、大きなシールド効果を期待することができるとともに、外部へのノイズ漏れをなくすことができるので、例えば誤作動のリスクを低減することもできるという効果を奏する。
【0052】
以上のような第一導電路15(15′、15″)は、これを製造した後、図示しないベンダー機を用いて所定位置(例えば
図3の矢印Dの位置)に曲げを施すと、
図3に示す如く屈曲部37が形成されるようになっている。屈曲部37が形成されると、第一導電路15はワイヤハーネス9の配索経路に沿った形状に保持されるようになっている。また、屈曲部37が形成されると、第一導電路15(15′、15″)は特に導体23(導体25、プラス極導体30)の剛性によって、元に戻らずに曲げの形状を維持することができるようになっている。
【0053】
尚、引用符号38は固定用のクランプを示している。第一導電路15(15′、15″)は、形状保持をすることができることから、固定に関し、クランプ38のような小さなものでも十分となっている。
【0054】
上記図示しないベンダー機に関し、この機械設置位置は特に限定されないものとする。すなわち、ワイヤハーネス製造現場であってもよいし、ワイヤハーネス配索現場等であってもよいものとする。作業性等に配慮して適宜設置位置を決めればよいものとする。
【0055】
図4において、第二導電路16、17は、高圧となる一対の絶縁線心39、39と、これらを覆うシールド部材40とを備えて構成されている。絶縁線心39は、導体41と、この導体41の外側に押し出し成形される絶縁体42とを備えて構成されている。このような第二導電路16、17は、それぞれ柔軟性を有する管体43に挿通されてている。すなわち、第二導電路16、17は、管体43によって保護されている(管体43の設定は任意であるものとする)。第二導電路16、17は、上記の如く、第一導電路15よりも低い剛性を有するとともに、柔軟性を有している。
【0056】
導体41は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の素線を撚り合わせてなる撚り線導体であって、上記の柔軟性を確保することができるものが用いられている。尚、所望の柔軟性を確保できれば丸棒線や角棒線であってもよいものとする。材質に関しては、特に限定されないものとする。すなわち、銅や銅合金製であってもよいものとする。本実施例においては、安価且つ軽量であるというメリットを有するアルミニウム製のものが用いられている。
【0057】
絶縁体42は、導体41に対する被覆であって、公知の樹脂材料を押し出し成形することにより形成されている。
【0058】
シールド部材40は、一対の絶縁線心39、39を覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用の部材)であって、第一導電路15のシールド部材21(
図2(a)参照)と同じものになっている。すなわち、第一導電路15のシールド部材21は金属箔を含んでなることから、これと同じものになっている。
【0059】
シールド部材40は、一対の絶縁線心39、39の全長よりも長く伸びるように形成されている。具体的には、導電路接続部18(
図5参照)の要部を覆って伸びるような長い筒形状に形成されている。シールド部材40における引用符号44は、導電路接続部18の要部を覆う膨出筒部を示している。この膨出筒部44は、第一導電路15との接続を行う側に形成されている(
図5参照)。
【0060】
第二導電路16、17において、第一導電路15との接続を行わない側となる端末には、公知のコネクタ19(
図1参照)又は接続端子が公知の方法で取り付けられている。尚、コネクタ19には、公知のシールド端末処理構造が設けられている。
【0061】
管体43は、本実施例において公知のコルゲートチューブが用いられている(柔軟性を有する樹脂チューブが好適であるものとする)。管体43は、絶縁性を有している。
【0062】
第二導電路16、17は、柔軟性を有することから所望の配索形状にされた後、例えば上記クランプ38(
図3参照)等を用いて固定されるようになっている。
【0063】
図5において、導電路接続部18は、導体接続構造部45と、シールド接続構造部46と、接続構造被覆部47とを備えて構成されている。導電路接続部18は、単なる接続をする部分ではなく、第一導電路15及び第二導電路16、17の構成及び構造に配慮した接続をすることができる部分になっている。
【0064】
図5及び
図6において、導体接続構造部45は、第一導電路15及び第二導電路16、17の各導体端末を外部に対し絶縁しつつ接続をする部分であって、絶縁ボックス48と、この絶縁ボックス48の開口部分を覆うように嵌合する絶縁カバー49と、絶縁ボックス48内に収容固定される接続端子50とを備えて構成されている。
【0065】
絶縁ボックス48及び絶縁カバー49は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、図示しない嵌合部同士を嵌合させると、一つの筐体になるように形成されている。引用符号51は絶縁線心20及び絶縁線心39に対する挿通穴を示している。また、引用符号52は隔壁を示している。絶縁ボックス48及び絶縁カバー49は、本実施例において、外面側にエッジ部分のない形状に形成されている。絶縁ボックス48及び絶縁カバー49については、導体接続構造部45の絶縁ができていればよく、これらの代わりに絶縁性のテープやチューブやシート等を用いてもよいものとする。テープやチューブやシート等を用いれば、この部分を小型化することが可能になるのは勿論である。
【0066】
接続端子50は、導体端末を接続する部分であって、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。本実施例における接続端子50は、略帯状の基板53と、この基板53の側部に連成される複数の導体加締め部54と、同じく基板53の側部に連成される絶縁体加締め部55とを有して図示形状に形成されている。
【0067】
導体加締め部54は、加締めを施す部分であって、基板53に対し、絶縁線心20及び絶縁線心39の導体23及び導体41を電気的に接続することができるように形成されている。また、絶縁体加締め部55も加締めを施す部分であって、基板53に対し、絶縁線心20及び絶縁線心39の絶縁体24及び絶縁体42を機械的に固定することができるように形成されている。
【0068】
シールド接続構造部46は、シールド部材21及びシールド部材40同士を電気的に接続することによりなる部分となっている。すなわち、第一導電路15のシールド部材21の端末に対し、第二導電路16、17のシールド部材40の膨出筒部44を電気的に接続することによりなる部分となっている。膨出筒部44は、導体接続構造部45を覆った状態でシールド部材21の端末に接続されている。以下、もう少し具体的に説明をする。
【0069】
図6(b)において、シールド接続構造部46は次の各部分を有している。引用符号56は折り返し部を示している。この折り返し部56は、第一導電路15のシールド部材21をシース22の外面側に折り返すことにより形成されている。また、引用符号57は金属製の内側リング部材を示している。この内側リング部材57は、筒形状に形成されており、折り返し部56とシース22との間に挿入されるようになっている。内側リング部材57は、加締めに対する受け部分となるように設けられている。引用符号58は金属製の外側リング部材を示している。外側リング部材58は、折り返し部56と、この上に重ねられた膨出筒部44の端末とを、加締めにより電気的に接続することができるように形成されている。
【0070】
シールド接続構造部46は、
図5に示す如く、導体端末の接続位置(導体接続構造部45)に対し、ずれた位置に配置されることから、導体接続構造部45自体が大型化することはなく、また、ずれた配置であることから接続作業もし易くなっている。
【0071】
以上のようなシールド接続構造部46により、シールド部材21及びシールド部材40同士を電気的に接続すると、ワイヤハーネス9はこの全体がシールドされるようになっている。
【0072】
図5において、接続構造被覆部47は、接続状態にあるシールド部材21及びシールド部材40同士の外側に設けられるようになっている。また、接続構造被覆部47は、外部に対して絶縁及び/又は保護をすることができるようになっている。このような接続構造被覆部47は、第一導電路15のシース22と、第二導電路16、17の外側の管体43とに跨って取り付けられている。接続構造被覆部47としては、例えば公知のゴムブーツやテープ巻き等が挙げられるものとする。
【0073】
以上、
図1ないし
図6を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス9は、経路保持部材としてプロテクタを用いる必要がなく、従って樹脂成形金型も不要であることから、安価なワイヤハーネス9を提供することができるという効果を奏する。また、ワイヤハーネス9は、第一導電路15のシース22を外装部材としても機能させることから、少なくとも第一導電路15の部分で外装部材を用いる必要がなく、結果、安価なワイヤハーネス9を提供することができるという効果を奏する。
【0074】
この他、ワイヤハーネス9によれば、屈曲部37の形成にあたりベンダー機を用いることから、経路形成をプログラミングにて行うことができ、これによって各種期間の短縮を図ることができるという効果を奏する。また、設計変更を容易にすることができるとともに、設計に掛かる工数削減もすることができるという効果を奏する。さらに、設計変更に係る費用に関し、プログラミング組み換えのみの場合と金型修正の場合とを比べると、前者の方が格段に安価であることから、コスト削減に寄与することができるという効果を奏する。
【0075】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。