【文献】
JOURNAL OF CLINICAL MICROBIOLOGY,1993年,vol.31 no.6,pp.1562-1569
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
SAdV−39のヘキソンタンパク質、配列番号11のアミノ酸1ないし940であるヘキソンタンパク質、SAdV−39のペントンタンパク質、配列番号6のアミノ酸1ないし532であるペントンタンパク質、およびSAdV−39のファイバータンパク質、配列番号22のアミノ酸1ないし489であるファイバータンパク質、を含んでなるアデノウイルスキャプシド、を有する組換えアデノウイルスであって;ならびに
前記キャプシドが、宿主細胞中でのその転写、翻訳および/若しくは発現を指図する発現制御配列に作動可能に連結されている遺伝子を保有する異種分子を被包化する、上記アデノウイルス。
前記ベクターが、SAdV−39、SAdV−30、SAdV−25.2、SAdV−37、SAdV−38およびSAdV−26から選択される1種以上のキャプシドタンパク質を含んでなる、請求項5に記載のアデノウイルス。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の詳細な記述]
サルアデノウイルス39、SAdV−25.2、SAdV−26、SAdV−30、SAdV−37およびSAdV−38からの新規核酸およびアミノ酸配列(それらの全部はチンパンジー糞便から単離された)が提供される。
【0014】
組換えタンパク質若しくはフラグメントまたは他の試薬のin vitro製造での使用のための新規アデノウイルスベクターおよびこれらの配列に基づくベクターを製造するためのパッケージング細胞株もまた提供される。治療若しくはワクチンの目的上の異種分子の送達における使用のための組成物がさらに提供される。こうした治療若しくはワクチン組成物は挿入された異種分子を保有するアデノウイルスベクターを含有する。加えて、該新規SAdV配列は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの製造に必要とされる不可欠のヘルパー機能の提供において有用である。従って、こうした製造法でこれらの配列を使用するヘルパー構築物、方法および細胞株が提供される。
【0015】
核酸若しくはそのフラグメントを指す場合の「実質的相同性」若しくは「実質的類似性」という用語は、適切なヌクレオチドの挿入若しくは欠失を伴い別の核酸(若しくはその相補鎖)と最適に整列される場合に、整列された配列の最低約95ないし99%のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。
【0016】
アミノ酸若しくはそれらのフラグメントを指す場合の「実質的相同性」若しくは「実質的類似性」という用語は、適切なアミノ酸の挿入若しくは欠失を伴い別のアミノ酸(若しくはその相補鎖)と最適に整列される場合に、整列された配列の最低約95ないし99%のアミノ酸配列同一性が存在することを示す。好ましくは、相同性は、完全長配列若しくはそのタンパク質、または長さ最低8アミノ酸若しくはより望ましくは最低15アミノ酸であるそのフラグメントにわたる。適するフラグメントの例を本明細書に記述する。
【0017】
核酸配列の文脈の「同一性パーセント」若しくは「同一の」という用語は、最大の対応のため整列される場合に同一である該2配列中の残基を指す。一配列を別のものと整列するためにギャップが必要とされる場合、ギャップに対するペナルティを伴わないより長い配列に関してスコアリングの程度が計算される。ポリヌクレオチド若しくはそれによりコードされるポリペプチドの機能性を保存する配列はより緊密に同一である。配列同一性比較の長さは、ゲノムの完全長(例えば約36kbp)、遺伝子のオープンリーディングフレーム、タンパク質、サブユニット若しくは酵素の完全長(例えば、アデノウイルスコーディング領域を提供する表を参照されたい)にわたることができるか、または、最低約500ないし5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしながら、例えば最低約9ヌクレオチド、通常は最低約20ないし24ヌクレオチド、最低約28ないし32ヌクレオチド、最低約36若しくはそれ以上のヌクレオチドのより小さいフラグメントの間の同一性もまた望ましいことができる。同様に、「配列同一性パーセント」はタンパク質の完全長若しくはそのフラグメントにわたるアミノ酸配列について容易に決定しうる。適しては、フラグメントは長さ最低約8アミノ酸でありかつ約700アミノ酸まででありうる。適するフラグメントの例を本明細書に記述する。
【0018】
同一性は、本明細書で定義されるようなアルゴリズムおよびコンピュータプログラムをデフォルトの設定で使用して容易に決定される。好ましくは、こうした同一性は、タンパク質、酵素、サブユニットの完全長にわたるか、若しくは長さ最低約8アミノ酸のフラグメントにわたる。しかしながら、同一遺伝子産物が使用されている使用に適する場合、同一性はより短い領域に基づいてもよい。
【0019】
本明細書に記述されるところのアライメントは、インターネットのウェブサーバーを通じてアクセス可能な「Clustal W」のような多様な公的に若しくは商業的に入手可能な多配列アライメントプログラムのいずれかを使用して実施する(Thompsonら、1994、
Nucleic Acids Res、22、4673−4680)。あるいは、Vector NTI
(R)ユーティリティ(InVitrogen)もまた使用される。上述されたプログラムに含有されるものを包含する、ヌクレオチド配列同一性を評価するのに使用し得る当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列はGCG Version6.1中のプログラムFastaを使用して比較し得る。Fastaは、クエリおよび検索配列の間の最良のオーバーラップ領域のアライメントおよび配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、GCG Version6.1(引用することにより本明細書に組み込まれる)に提供されるところのそのデフォルトのパラメータ(6のワードサイズ(word size)およびスコアリングマトリックスのNOPAMファクター)でFastaを使用して決定し得る。同様に、アミノ酸アライメントを実施するためのプログラムが利用可能である。一般に、これらのプログラムはデフォルト設定で使用するとは言え、当業者はこれらの設定を必要とされるとおり変更し得る。あるいは、当業者は、少なくとも参照されるアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるもののような同一性のレベル若しくはアライメントを提供する別のアルゴリズム若しくはコンピュータプログラムを利用し得る。
【0020】
ポリヌクレオチドに適用されるところの「組換え」は、該ポリヌクレオチドが、クロー
ニング、制限若しくはライゲーション段階、および天然に見出されるポリヌクレオチドと異なる構築物をもたらす他の手順の多様な組合せの産物であることを意味している。組換えウイルスは組換えポリヌクレオチドを含んでなるウイルス粒子である。該用語は、それぞれ元のポリヌクレオチド構築物の複製物および元のウイルス構築物の子孫を包含する。
【0021】
「異種」は、それが比較されている実体の残部のものと遺伝子型が異なる実体由来を意味している。例えば、遺伝子工学技術により異なる種由来のプラスミド若しくはベクターに導入されるポリヌクレオチドは異種ポリヌクレオチドである。その本来のコーディング配列から取り出されかつそれが連結されて天然に見出されないコーディング配列に効果的に連結されているプロモーターは異種プロモーターである。ウイルスのゲノム、若しくは該ウイルスのゲノムがそれを天然に含有しないウイルスベクターにクローン化されている部位特異的組換え部位は異種組換え部位である。組換え酵素のコーディング配列をもつポリヌクレオチドを使用して、通常は組換え酵素を発現しない細胞を遺伝子的に変える場合、該ポリヌクレオチドおよび該組換え酵素の双方が該細胞に対し異種である。
【0022】
本明細および請求の範囲を通じて使用されるところの「含んでなる(comprise)」という用語、および他の変形のなかでも「含んでなる(comprises)」、「含んでなること」を包含するその変形は、他の成分、要素、整数、段階などに包括的なものである。「よりなる」若しくは「よりなること」という用語は他の成分、要素、整数、段階などを除外する。
【0023】
I.サルアデノウイルス配列
本発明は、それらが天然に会合している他物質から単離されているサルアデノウイルス39(SAdV−39)、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38の核酸配列およびアミノ酸配列を提供する。
【0024】
A.核酸配列
本明細書に提供されるSAdV−39核酸配列は配列番号1のヌクレオチド1ないし36553を包含する。本明細書に提供されるSAdV−25.2核酸配列は配列番号130のヌクレオチド1ないし36629を包含する。本明細書に提供されるSAdV−26核酸配列は配列番号162のヌクレオチド1ないし36628を包含する。本明細書に提供されるSAdV−30核酸配列は配列番号98のヌクレオチド1ないし36621を包含する。本明細書に提供されるSAdV−37核酸配列は配列番号33のヌクレオチド1ないし36634を包含する。本明細書に提供されるSAdV−38核酸配列は配列65のヌクレオチド1ないし36494を包含する。
【0025】
本明細書に引用することにより組み込まれる配列表を参照されたい。一態様において、本発明の核酸配列は、それぞれ配列番号1、130、162、98、130若しくは65の配列に相補的である鎖、ならびに以下の配列およびそれらの相補鎖の配列に対応するRNAおよびcDNA配列をさらに包含する。別の態様において、該核酸配列は、配列表に98.5%以上同一、および好ましくは約99%以上同一である配列をさらに包含する。一態様において、配列番号1、130、162、98、130若しくは65に提供される配列およびそれらの相補鎖の天然のバリアントおよび工作された改変もまた包含する。こうした改変は、例えば、当該技術分野で既知である標識、メチル化、および天然に存在するヌクレオチドの1個若しくはそれ以上の縮重ヌクレオチドでの置換を包含する。
【0031】
一態様において、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38の配列、ならびにそれらの相補鎖、それらに相補的なcDNAおよびRNAの
フラグメントが提供される。適するフラグメントは長さ最低15ヌクレオチドであり、そして機能的フラグメントすなわち生物学的に興味深いフラグメントを包含する。例えば、機能的フラグメントは、所望のアデノウイルス産物を発現し得るか、若しくは組換えウイルスベクターの製造で有用でありうる。こうしたフラグメントは本明細書の表に列挙される遺伝子配列およびフラグメントを包含する。該表は、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列中の転写領域およびオープンリーディングフレームを提供する。ある種の遺伝子について、転写物およびオープンリーディングフレーム(ORF)は配列番号1、130、162、98、130若しくは65に提示されるものに相補的な鎖上に位置する。例えばE2b、E4およびE2aを参照されたい。コードされるタンパク質の計算された分子量もまた示される。SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のE1aオープンリーディングフレームおよびE2bのオープンリーディングフレームは内部スプライス部位を含有することに注意されたい。これらのスプライス部位は上の表中に示される。
【0032】
SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデノウイルス核酸配列は、治療薬としてならびに多様なベクター系および宿主細胞の構築で有用である。本明細書で使用されるところのベクターは、裸のDNA、プラスミド、ウイルス、コスミド若しくはエピソームを包含するいかなる適する核酸分子も包含する。これらの配列および産物は、単独で、または他のアデノウイルス配列若しくはフラグメントと組合せ、あるいは他のアデノウイルス若しくはアデノウイルス以外の配列からのエレメントと組合せで使用しうる。SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列は、アンチセンス送達ベクター、遺伝子治療ベクター若しくはワクチンベクターとしてもまた有用である。従って、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列を含有する核酸分子、遺伝子送達ベクターおよび宿主細胞がさらに提供される。
【0033】
例えば、本発明は本発明のサルAd ITR配列を含有する核酸分子を包含する。別の例において、本発明は所望のAd遺伝子産物をコードする本発明のサルAd配列を含有する核酸分子を提供する。本発明の配列を使用して構築されるなお他の核酸分子は、本明細書に提供される情報を鑑みれば当業者に容易に明らかであろう。
【0034】
一態様において、本明細書で同定されるサルAd遺伝子領域を異種分子の細胞への送達のための多様なベクターで使用しうる。例えば、パッケージング宿主細胞中でウイルスベクターを生成させる目的上、アデノウイルスキャプシドタンパク質(若しくはそのフラグメント)の発現のためのベクターを生成する。こうしたベクターはトランスでの発現のため設計しうる。あるいは、こうしたベクターは、所望のアデノウイルス機能、例えばE1a、E1b、末端反復配列、E2a、E2b、E4、E4ORF6領域の1種若しくはそれ以上を発現する配列を安定に含有する細胞を提供するよう設計する。
【0035】
加えて、該アデノウイルス遺伝子配列およびそれらのフラグメントは、ヘルパー依存ウイルス(例えば必須機能を欠失されたアデノウイルスベクター、若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV))の製造に必要なヘルパー機能を提供するのに有用である。こうした製造方法のため、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列を、ヒトAdについて記述されたものに類似の様式でこうした方法で利用し得る。しかしながら、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列とヒトAdのものの間の配列の差違により、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列の使用は、rAAV産生の間に感染性アデノウイルス汚染物質(contaminant)を産生しうるヒトAd E1機能を保有する宿主細胞、例えば293細胞中でのヘルパー機能との相同的組換えの可能性を大きく最小化するか若しくは排除する。
【0036】
アデノウイルスヘルパー機能を使用するrAAVの製造方法はヒトアデノウイルス血清型とともに文献に詳細に記述されている。例えば米国特許第6,258,595号明細書およびその中に引用される参考文献を参照されたい。米国特許第5,871,982号明細書;第WO 99/14354号明細書;第WO 99/15685号明細書;第WO
99/47691号明細書もまた参照されたい。これらの方法はヒト以外の霊長類のAAV血清型を包含するヒト以外の血清型のAAVの製造でもまた使用しうる。必要なヘルパー機能(例えばE1a、E1b、E2aおよび/若しくはE4 ORF6)を提供するSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列は、ヒト起源に典型的であるrAAVパッケージング細胞中に存在するいずれかの他のアデノウイルスとの組換えの可能性を最小化若しくは排除する一方での必要なアデノウイルス機能の提供においてとりわけ有用であり得る。従って、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38の選択された遺伝子若しくはオープンリーディングフレームをこれらのrAAV製造方法で利用しうる。
【0037】
あるいは、組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターをこれらの方法で利用しうる。こうした組換えアデノウイルスサルベクターは、例えば、チンパンジーAd配列が例えばAAV 3’および/若しくは5’ITRならびにその発現を制御する制御配列の制御下の導入遺伝子から構成されるrAAV発現カセットに隣接しているハイブリッドチンパンジーAd/AAVを包含しうる。当業者は、なお他のサルアデノウイルスベクターおよび/またはSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38遺伝子配列が、rAAV、およびアデノウイルスヘルパーに依存する他のウイルスの製造に有用であることができることを認識するであろう。
【0038】
なお別の態様において、核酸分子は、所望の生理学的効果を達成するための宿主細胞中の選択されたアデノウイルス遺伝子産物の送達および発現のため設計する。例えば、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38 E1aタンパク質をコードする配列を含有する核酸分子を癌治療薬としての使用のため被験体に送達しうる。場合によっては、こうした分子を脂質に基づく担体中で処方しかつ癌細胞を優先的に標的とする。こうした製剤を他の癌治療薬(例えばシスプラチン、タキソールなど)と組合せうる。本明細書に提供されるアデノウイルス配列のなお他の用途は当業者に容易に明らかであろう。
【0039】
加えて、当業者は、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列を、治療および免疫原性分子のin vitro、ex vivo若しくはin vivo送達のための多様なウイルスおよびウイルス以外のベクター系のための使用に容易に適合させ得ることを容易に理解するであろう。例えば、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38サルAd配列を多様なrAdおよびrAd以外のベクター系で利用し得る。こうしたベクター系は、とりわけ、例えばプラスミド、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノ随伴ウイルス系を包含しうる。これらのベクター系の選択は本発明の制限でない。
【0040】
本発明は、本発明のサルおよびサル由来タンパク質の製造に有用な分子をさらに提供する。本発明のサルAd DNA配列を包含するポリヌクレオチドを保有するこうした分子は、裸のDNA、プラスミド、ウイルス若しくはいずれかの他の遺伝因子の形態にあり得る。
【0041】
B.SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデ
ノウイルスタンパク質
本明細書に記述されるアデノウイルス核酸によりコードされるタンパク質、酵素およびそれらのフラグメントのようなSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデノウイルスの遺伝子産物が提供される。他の方法により生成されるこれらの核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のタンパク質、酵素およびそれらのフラグメントがさらに包含される。こうしたタンパク質は、上の表で同定されるオープンリーディングフレームによりコードされるもの、配列表に提供される配列番号を参照して下表で同定されるタンパク質、ならびに該タンパク質およびポリペプチドのそれらのフラグメントを包含する。
【0043】
従って、一局面において、実質的に純粋である、すなわち他のウイルスおよびタンパク質性タンパク質を含まない独特なサルアデノウイルスタンパク質が提供される。好ましくは、これらのタンパク質は最低10%同種、より好ましくは60%同種、および最も好ましくは95%同種である。
【0044】
一態様において、独特なサル由来キャプシドタンパク質が提供される。本明細書で使用されるところのサル由来キャプシドタンパク質は、これらのタンパク質の生成手段に対する制限を伴わず、キメラキャプシドタンパク質、融合タンパク質、人工キャプシドタンパク質、合成キャプシドタンパク質および組換えキャプシドタンパク質を制限なしに包含する、上で定義されたところのSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38キャプシドタンパク質またはそれらのフラグメントを含有するいかなるアデノウイルスキャプシドタンパク質も包含する。
【0045】
適しては、これらのサル由来キャプシドタンパク質は、本明細書に記述されるところの多様なアデノウイルス血清型のキャプシド領域若しくはそれらのフラグメントまたは改変されたサルキャプシドタンパク質若しくはフラグメントと組合せの1種若しくはそれ以上のSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38領域またはそれらのフラグメント(例えばヘキソン、ペントン、ファイバー若しくはそれらのフラグメント)を含有する。本明細書で使用されるところの「変えられた向性を伴うキャプシドタンパク質の改変」は、変えられたキャプシドタンパク質、すなわちペントン、ヘキソン若しくはファイバータンパク質領域、またはファイバー領域のノブドメインのようなそれらのフラグメント、あるいは特異性が変えられているようなものをコードするポリヌクレオチドを包含する。サル由来キャプシドは、本発明のサルAdの1種若しくはそれ以上、またはヒト若しくはヒト以外の起源のものでありうる別のAd血清型を用いて構築しうる。こうしたAdは、ATCC、商業的および学術的供給源を包含する多様な供給源から得ることができるか、またはAdの配列はGenBank若しくは他の適する供給源から得ることができる。
【0046】
SAdV−39(配列番号6)、SAdV−25.2(配列番号135)、−26(配列番号167)、−30(配列番号103)、−37(配列番号38)若しくは−38(配列番号70)のペントンタンパク質のアミノ酸配列が提供される。適しては、このペントンタンパク質若しくはそれらの独特のフラグメントを多様な目的上利用しうる。適するフラグメントの例は、上および配列番号6、103、135、38、70、167若しくは70で提供されるアミノ酸番号付けに基づき約50、100、150若しくは200アミノ酸のN末端および/若しくはC末端切断を有するペントンを包含する。他の適するフラグメントはより短い内部、C末端若しくはN末端フラグメントを包含する。さらに、ペントンタンパク質は当業者に既知の多様な目的上改変しうる。
【0047】
SAdV−39(配列番号11)、SAdV−25.2(配列番号140)、−26(配列番号172)、−30(配列番号108)、−37(配列番号43)若しくは−38(配列番号75)のヘキソンタンパク質のアミノ酸配列もまた提供される。適しては、このヘキソンタンパク質若しくはそれらの独特のフラグメントを多様な目的上利用しうる。適するフラグメントの例は、上および配列番号11、140、172、108、43若しくは75に提供されるアミノ酸番号付けに基づき約50、100、150、200、300、400若しくは500アミノ酸のN末端および/若しくはC末端切断を有するヘキソンを包含する。他の適するフラグメントはより短い内部、C末端若しくはN末端フラグメントを包含する。例えば、1種の適するフラグメントDE1およびFG1と呼称されるヘキソンタンパク質のループ領域(ドメイン)若しくはその超可変領域。こうしたフラグメントは、配列番号11、140、172、108、43若しくは75を参照して、サルヘキソンタンパク質のアミノ酸残基約125ないし443;約138ないし441にわたる
領域、若しくは、約残基138ないし残基163;約170ないし約176;約195ないし約203;約233ないし約246;約253ないし約374;約287ないし約297;および約404ないし約430にわたるもののようなより小さいフラグメントを包含する。他の適するフラグメントは当業者により容易に同定されうる。さらに、ヘキソンタンパク質は当業者に既知の多様な目的上改変しうる。ヘキソンタンパク質はアデノウイルスの血清型の決定子であるため、こうした人工ヘキソンタンパク質は人工血清型を有するアデノウイルスをもたらすとみられる。他の人工キャプシドタンパク質を、チンパンジーAdペントン配列および/若しくは本発明のファイバー配列ならびに/またはそれらのフラグメントを使用してもまた構築し得る。
【0048】
一態様において、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ヘキソンタンパク質の配列を利用する変えられたヘキソンタンパク質を有するアデノウイルスを生成しうる。ヘキソンタンパク質を変えるための適する一方法は米国特許第5,922,315号明細書(引用することにより組み込まれる)に記述されている。この方法では、アデノウイルスヘキソンの最低1個のループ領域が別のアデノウイルス血清型の最低1個のループ領域で変えられる。従って、こうした変えられたアデノウイルスヘキソンタンパク質の最低1個のループ領域は、SAdV−39のサルAdヘキソンループ領域である。一態様において、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ヘキソンタンパク質の1個のループ領域が別のアデノウイルス血清型からの1個のループ領域により置き換えられる。別の態様において、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ヘキソンのループ領域を使用して別のアデノウイルス血清型からのループ領域を置き換える。適するアデノウイルス血清型は、本明細書に記述されるところのヒトおよびヒト以外の血清型のなかから容易に選択しうる。適する血清型の選択は本発明の制限でない。SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ヘキソンタンパク質配列のなお他の用途は当業者に容易に明らかであろう。
【0049】
SAdV−39(配列番号22)、SAdV−25.2(配列番号151)、−26(配列番号183)、−30(配列番号118)、−37(配列番号54)若しくは−38(配列番号85)のファイバータンパク質のアミノ酸配列が提供される。適しては、このファイバータンパク質若しくはそれらの独特のフラグメントを多様な目的上利用しうる。1種の適するフラグメントは配列番号22、151、183、119、54若しくは85内に位置するファイバーノブである。他の適するフラグメントの例は、配列番号22、151、183、119、54若しくは85に提供されるアミノ酸番号付けに基づき約50、100、150若しくは200アミノ酸のN末端および/若しくはC末端切断を有するファイバーを包含する。なお他の適するフラグメントは内部フラグメントを包含する。さらに、ファイバータンパク質は当業者に既知の多様な技術を使用して改変しうる。
【0050】
SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のタンパク質の独特のフラグメントは長さ最低8アミノ酸である。しかしながら他の所望の長さのフラグメントを容易に利用し得る。加えて、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38遺伝子産物の収量および/若しくは発現を高めるために導入されうるところの改変、例えばSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38遺伝子産物の全部若しくは1フラグメントが高めるための融合パートナーと(直接若しくはリンカーを介してのいずれかで)融合される融合分子の構築が、本明細書で提供される。他の適する改変は、通常切断されるプレ若しくはプロタンパク質を除外しかつ成熟タンパク質若しくは酵素を提供するためのコーディング領域(例えばタンパク質若しくは酵素)の切断、および/または分泌可能な遺伝子産物を提供するためのコーディング領域の突然変異を制限なしに包含する。なお他の改変は当業者に容易に明らかであろう。本明細書に提供されるSAdV39、SAdV−25.2、−26、−
30、−37若しくは−38タンパク質に対する最低約99%の同一性を有するタンパク質がさらに包含される。
【0051】
本明細書に記述されるところの、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のアデノウイルスキャプシドタンパク質を含有する本発明のベクターは、中和抗体が他のAd血清型に基づくベクターならびに他のウイルスベクターの有効性を低下させる応用での使用にとりわけ良好に適する。rAdベクターは、反復遺伝子治療若しくは免疫応答(ワクチン力価)を高めるための再投与でとりわけ有利である。
【0052】
ある状況下では、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38遺伝子産物の1種若しくはそれ以上(例えばキャプシドタンパク質若しくはそのフラグメント)を使用して抗体を生成することが望ましいことがある。本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、あるエピトープに特異的に結合することが可能である免疫グロブリン分子を指す。抗体は、例えば高親和性ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、キメラ抗体、組換え抗体およびヒト化抗体を包含する多様な形態で存在しうる。こうした抗体は免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEから発する。
【0053】
こうした抗体は当該技術分野で既知の多数の方法のいずれを使用しても生成しうる。適する抗体は、公知の慣習的技術、例えばKohlerとMilsteinおよびその多くの既知の変法により生成しうる。同様に、所望の高力価抗体は、これらの抗原に対し発生されたモノクローナル若しくはポリクローナル抗体に既知の組換え技術を適用することにより生成する(例えば、PCT特許出願第PCT/GB85/00392号明細書;英国特許出願公開第GB2188638A号明細書;Amitら、1986
Science、233:747−753;Queenら、1989
Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、86:10029−10033;PCT特許出願第PCT/WO9007861号明細書;およびRiechmannら、
Nature、332:323−327(1988);Huseら、1988a
Science、246:1275−1281を参照されたい)。あるいは、抗体は本発明の抗原に対する動物若しくはヒト抗体の相補性決定領域を操作することにより製造し得る。例えば、E.MarkとPadlin、“Humanization of Monoclonal Antibodies”、第4章、The Handbook of Experimental Pharmacology、Vol.113、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、Springer−Verlag(June、1994);Harlowら、1999、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク;Harlowら、1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;Houstonら、1988、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびBirdら、1988、
Science 242:423−437を参照されたい。抗イディオタイプ抗体(Ab2)および抗抗イディオタイプ抗体(Ab3)が本発明によりさらに提供される。例えば、M.Wettendorffら、“Modulation of anti−tumor immunity by anti−idiotypic antibodies.”Idiotypic Network and Diseases、J.CernyとJ.Hiernauxにより編中、1990
J.Am.Soc.Microbiol.、ワシントンDC:pp.203−229を参照されたい)。これらの抗イディオタイプおよび抗抗イディオタイプ抗体は当業者に公知の技術を使用して製造する。これらの抗体は、診断および臨床的な方法およびキットを包含する多様な目的上使用しうる。
【0054】
ある状況下で、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38の遺伝子産物、抗体、若しくは本発明の他の構築物に検出可能な標識(label)若しくは標識(tag)を導入することが望ましいかもしれない。本明細書で使用されるところの検出可能な標識(label)は、単独で若しくは別の分子との相互作用に際して検出可能なシグナルを提供することが可能である分子である。最も望ましくは、標識は免疫組織化学的分析若しくは免疫蛍光顕微鏡検査での即座の使用のために例えば蛍光により視覚的に検出可能である。例えば、適する標識は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、コリホスフィン−O(CPO)若しくはタンデム色素、PE−シアニン−5(PC5)およびPE−テキサスレッド(ECD)を包含する。これらの蛍光色素の全部は商業的に入手可能であり、また、それらの用途は当該技術分野に既知である。他の有用な標識はコロイド状金標識を包含する。なお他の有用な標識は放射活性化合物若しくは元素を包含する。加えて、標識は、アッセイで比色シグナルを表すよう機能する多様な酵素系を包含し、例えばグルコース酸化酵素(グルコースを基質として使用する)は生成物として過酸化物を放出し、過酸化物は過酸化酵素、およびテトラメチルベンジジン(TMB)のような水素供与体の存在下で青色として見られる酸化型TMBを産生する。他の例は、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ならびに、ATP、グルコースおよびNAD+と反応してとりわけ340nmの波長で増大された吸光度として検出されるNADHを生じるグルコース−6−リン酸脱水素酵素を伴うヘキソキナーゼを包含する。
【0055】
本明細書に記述される方法で利用される他の標識系は他の手段により検出可能であり、例えば、色素が埋め込まれている着色ラテックス微粒子(Bangs Laboratories、インジアナ州)を、標的配列と複合体を形成して適用されるアッセイで生じる複合体の存在を示す視覚的シグナルを提供する酵素の代わりに使用する。
【0056】
所望の分子と標識の結合若しくは会合方法は同様に慣習的でありかつ当業者に既知である。既知の標識結合方法が記述されている(例えば、Handbook of Fluorescent probes and Research Chemicals、第6版、R.P.M.Haugland、Molecular Probes,Inc.、オレゴン州ユージーン、1996;Pierce Catalog and Handbook、Life Science and Analytical Research Products、Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード、1994/1995を参照されたい)。従って標識および結合方法の選択は本発明を制限しない。
【0057】
SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38の配列、タンパク質およびフラグメントは、組換え製造、化学合成若しくは他の合成手段を包含するいずれかの適する手段により製造しうる。適する製造技術は当業者に公知である。例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)を参照されたい。あるいは、ペプチドは公知の固相ペプチド合成法(Merrifield、
J.Am.Chem.Soc.、85:2149(1962);StewartとYoung、Solid Phase Peptide
Synthesis(Freeman、サンフランシスコ、1969)pp.27−62)によってもまた合成し得る。これらおよび他の適する製造方法は当業者の知識内にあり、そして本発明の制限でない。
【0058】
加えて、当業者は、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38配列が治療および免疫原性分子のin vitro、ex vivo若しくはin vivo送達のための多様なウイルスおよびウイルス以外のベクター系のための
使用に容易に適合され得ることを容易に理解するであろう。例えば、一態様において、本明細書に記述されるサルAdキャプシドタンパク質および他のサルアデノウイルスタンパク質は、遺伝子、タンパク質、ならびに他の所望の診断、治療および免疫原性分子のウイルス以外のタンパク質に基づく送達に使用される。こうした一態様において、本発明のタンパク質は、アデノウイルスの受容体をもつ細胞へのターゲッティングのためのある分子に直接若しくは間接的に結合される。好ましくは、ヘキソン、ペントン、ファイバーのようなキャプシドタンパク質若しくは細胞表面受容体のリガンドを有するそれらのフラグメントをこうしたターゲッティングに選択する。送達に適する分子は、本明細書に記述される治療分子およびそれらの遺伝子産物のなかから選択される。脂質、ポリLysなどを包含する多様なリンカーをリンカーとして利用しうる。例えば、サルペントンタンパク質は、Medina−Kauwe LKら、
Gene Ther.2001 May;8(10):795−803およびMedina−Kauwe LKら、
Gene Ther.2001 Dec;8(23):1753−1761に記述されるものに類似の様式でサルペントン配列を使用する融合タンパク質の製造によりこうした目的上容易に利用しうる。あるいは、サルAdタンパク質IXのアミノ酸配列を、米国特許出願第20010047081号明細書に記述されるとおり細胞表面受容体にベクターの標的を定めるのに利用しうる。適するリガンドはCD40抗原、RGD含有若しくはポリリシン含有配列などを包含する。例えばヘキソンタンパク質および/若しくはファイバータンパク質を包含するなお他のサルAdタンパク質をこれらおよび類似の目的上使用されるため使用しうる。
【0059】
なお他のSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデノウイルスタンパク質を、当業者に容易に明らかであろう多様な目的上、単独として若しくは他のアデノウイルスタンパク質と組合せで使用しうる。加えて、該SAdVアデノウイルスタンパク質のなお他の用途が当業者に容易に明らかであろう。
【0060】
II.組換えアデノウイルスベクター
本明細書に記述される組成物は、治療若しくはワクチンいずれかの目的上細胞に異種分子を送達するベクターを包含する。本明細書で使用されるところのベクターは、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、プラスミド若しくはウイルスを制限なしに包含するいかなる遺伝因子も包含しうる。こうしたベクターはSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のサルアデノウイルスDNAおよびミニ遺伝子を含有する。「ミニ遺伝子」若しくは「発現カセット」により、選択された異種遺伝子、ならびに宿主細胞中での該遺伝子産物の翻訳、転写および/若しくは発現を駆動するのに必要な他の調節エレメントの組合せを意味している。
【0061】
典型的には、選択されたアデノウイルス遺伝子に固有の領域中の他のアデノウイルス配列を含有する核酸分子中にミニ遺伝子が配置されるようなSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38由来アデノウイルスベクターを設計する。該ミニ遺伝子は、所望の場合はその領域の機能を破壊するように既存の遺伝子領域に挿入しうる。あるいは、該ミニ遺伝子は部分的に若しくは完全に欠失されたアデノウイルス遺伝子の部位に挿入しうる。例えば、該ミニ遺伝子は、選択されうるもののなかで、機能的E1欠失若しくは機能的E3欠失の部位などの部位に配置しうる。「機能的に欠失された」若しくは「機能的欠失」という用語は、該遺伝子領域が遺伝子発現の機能的産物を産生することがもはや可能でないように十分な量の遺伝子領域が除去または別の方法で例えば突然変異若しくは改変により損傷されることを意味している。所望の場合は遺伝子領域全体を除去しうる。遺伝子破壊若しくは欠失の他の適する部位は本出願の別の場所で論考する。
【0062】
例えば、組換えウイルスの生成に有用な生産ベクターについて、該ベクターは、ミニ遺伝子、ならびにアデノウイルスゲノムの5’端若しくはアデノウイルスゲノムの3’端の
いずれかまたはアデノウイルスゲノムの5’および3’端の双方を含有しうる。アデノウイルスゲノムの5’端は、パッケージングおよび複製に必要な5’シスエレメント、すなわち5’末端逆位配列(ITR)(複製起点として機能する)ならびに天然の5’パッケージングエンハンサードメイン(直鎖状Adゲノムをパッケージングするのに必要な配列およびE1プロモーターのエンハンサーエレメントを含有する)を含有する。アデノウイルスゲノムの3’端はパッケージングおよび被包化に必要な3’シスエレメント(ITRを包含する)を包含する。適しては、組換えアデノウイルスは5’および3’双方のアデノウイルスシスエレメントを含有し、また、ミニ遺伝子は該5’および3’アデノウイルス配列の間に配置される。SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38に基づくアデノウイルスベクターは付加的なアデノウイルス配列もまた含有しうる。
【0063】
適しては、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38に基づくアデノウイルスベクターは、本発明のアデノウイルスゲノム由来の1個若しくはそれ以上のアデノウイルスエレメントを含有する。一態様において、該ベクターはSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38からのアデノウイルスITRならびに同一アデノウイルス血清型からの付加的なアデノウイルス配列を含有する。別の態様において、該ベクターはITRを提供するものと異なるアデノウイルス血清型由来であるアデノウイルス配列を含有する。
【0064】
本明細書で定義されるところのシュードタイピングされた(pseudotyped)アデノウイルスは、アデノウイルスのキャプシドタンパク質がITRを提供するアデノウイルスと異なるアデノウイルスからであるアデノウイルスを指す。
【0065】
さらに、キメラ若しくはハイブリッドアデノウイルスを、当業者に既知の技術を使用して、本明細書に記述されるアデノウイルスを使用して構築しうる。例えば米国特許第7,291,498号明細書を参照されたい。
【0066】
ITRのアデノウイルス供給源およびベクター中に存在するいかなる他のアデノウイルス配列の供給源の選択も本態様の制限でない。多様なアデノウイルス株がAmerican Type Culture Collection、バージニア州マナサスから入手可能であるか、若しくは多様な商業的および組織的供給源から求めにより入手可能である。さらに、多くのこうした株の配列は例えばPubMedおよびGenBankを包含する多様なデータベースから入手可能である。他のサル若しくはヒトアデノウイルスから製造された相同なアデノウイルスベクターが公表された文献に記述されている(例えば米国特許第5,240,846号明細書を参照されたい)。Ad5型(GenBank受託番号M73370)を包含する多数のアデノウイルス型のDNA配列がGenBankから入手可能である。アデノウイルス配列は、血清型2、3、4、7、12および40のような、ならびに現在同定されているヒト型のいずれもさらに包含するいずれの既知のアデノウイルス血清型からも得ることができる。同様に、ヒト以外の動物(例えばサル)を感染されることが既知のアデノウイルスもまた本発明のベクター構築物で使用しうる。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照されたい。
【0067】
本明細書に記述されるベクターの構築で使用されるウイルス配列、ヘルパーウイルス(必要な場合)および組換えウイルス粒子、ならびに他のベクター成分および配列は上述されたとおり得られる。本発明のSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38サルアデノウイルス配列のDNA配列を、ベクターおよびこうしたベクターの製造で有用な細胞株を構築するのに使用する。
【0068】
配列の欠失、挿入および他の突然変異を包含する本発明のベクターを形成する核酸配列
の改変は、標準的な分子生物学技術を使用して生成することができ、そして本態様の範囲内にある。
【0069】
A.「ミニ遺伝子」
導入遺伝子の選択、「ミニ遺伝子」のクローニングおよび構築ならびにウイルスベクターへのその挿入に使用される方法は、本明細書に提供される教示を考えれば当該技術分野の熟練内にある。
【0070】
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質若しくは他の産物をコードする導入遺伝子に隣接するベクター配列に異種の核酸配列である。核酸コーディング配列は、宿主細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳および/若しくは発現を可能にする様式で調節成分に効果的に連結されている。
【0071】
導入遺伝子配列の組成は生じるベクターが利用されるであろう使用に依存することができる。例えば、1種の導入遺伝子配列は、発現に際して検出可能なシグナルを生じるレポーター配列を包含する。こうしたレポーター配列は、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を包含する膜結合タンパク質、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、およびそれに向けられた高親和性抗体が存在するか若しくは慣習的手段により製造され得る当該技術分野で公知の他者、ならびにとりわけヘマグルチニン若しくはMycからの抗原標識ドメインに適切に融合された膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列を制限なしに包含する。これらのコーディング配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと会合される場合に、酵素的、X線撮影、比色、蛍光、若しくは他の分光学的アッセイ、蛍光標示式細胞分取アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を包含する免疫学的アッセイを包含する慣習的手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを保有するベクターの存在はβ−ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出する。導入遺伝子がGFP若しくはルシフェラーゼである場合、該シグナルを保有するベクターはルミノメーターで色若しくは光産生により視覚的に測定しうる。
【0072】
一態様において、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素若しくは触媒的RNAのような生物学および医学で有用である産物をコードするマーカー以外の配列である。望ましいRNA分子はtRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒的RNAおよびアンチセンスRNAを包含する。有用なRNA配列の一例は、処置された動物中での標的にされた核酸配列の発現を識別する配列である。
【0073】
導入遺伝子は、例えば遺伝子欠損の処置に、癌治療薬若しくはワクチンとして、免疫応答の誘導のため、および/または予防ワクチンの目的上使用しうる。本明細書で使用されるところの免疫応答の誘導は、ある分子(例えば遺伝子産物)に対するT細胞および/若しくは体液性免疫を誘導する該分子の能力を指す。本発明は、例えば多サブユニットタンパク質により引き起こされる状態を是正若しくは改善するため複数の導入遺伝子を使用することをさらに包含する。ある状況において、異なる導入遺伝子を、タンパク質の各サブユニットをコードする、または異なるペプチド若しくはタンパク質をコードするのに使用しうる。これは、該タンパク質サブユニットをコードするDNAの大きさが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子若しくはジストロフィンタンパク質について望ましい。細胞が多サブユニットタンパク質を産生するために、細胞を多様なサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに感染させる。あるいは、1タンパク質の多様な
サブユニットを同一導入遺伝子によりコードしうる。この場合、単一導入遺伝子がサブユニットのそれぞれをコードするDNAを包含し、各サブユニットのDNAは配列内リボソーム進入部位(IRES)により分離される。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAの大きさが小さい、例えばサブユニットをコードするDNAおよびIRESの全体の大きさが5キロ塩基未満である場合に望ましい。IRESに対する一代替として、該DNAは翻訳後事象で自己切断する2Aペプチドをコードする配列により分離されうる。例えばM.L.Donnellyら、
J.Gen.Virol.、78(Pt 1):13−21(Jan 1997);Furler,S.ら、
Gene Ther.、8(11):864−873(June 2001);Klump H.ら、
Gene Ther.、8(10):811−817(May 2001)を参照されたい。この2AペプチドはIRESよりかなり小さく、空間が制限因子である場合にそれを使用に十分に適するようにする。しかしながら、選択された導入遺伝子はいかなる生物学的に活性の産物若しくは他の産物、例えば研究に所望の産物をコードしてもよい。
【0074】
適する導入遺伝子は当業者により容易に選択されうる。導入遺伝子の選択は本態様の制限であるとみなされない。
【0075】
2.調節エレメント
ミニ遺伝子について上で同定された主要エレメントに加え、該ベクターは、本発明により製造されるプラスミドベクターでトランスフェクトされた若しくはウイルスに感染した細胞中でのその転写、翻訳および/若しくは発現を可能にする様式で導入遺伝子に作動可能に連結されている必要な慣習的調節領域もまた包含する。本明細書で使用されるところの「作動可能に連結されている」配列は、目的の遺伝子に隣接する発現制御配列、およびトランスで若しくは少し離れて作用して目的の遺伝子を制御する発現制御配列の双方を包含する。
【0076】
発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;ならびに所望の場合はコードされる産物の分泌を高める配列を包含する。
【0077】
天然の、構成的、誘導可能および/若しくは組織特異的であるプロモーターを包含する多数の発現制御配列が、当該技術分野で既知でありかつ利用されうる。構成的プロモーターの例は、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によってはCMVエンハンサーを伴う)(例えばBoshartら、
Cell、41:521−530(1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター(Invitrogen)を制限なしに包含する。
【0078】
誘導可能なプロモーターは遺伝子発現の調節を可能にし、そして外的に供給される化合物、温度のような環境因子、若しくは特定の生理学的状態、例えば急性期、細胞の特定の分化段階の存在により、または複製細胞中でのみ調節され得る。誘導可能なプロモーターおよび誘導可能な系はInvitrogen、ClontechおよびAriadを制限なしに包含する多様な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記述されておりかつ当業者により容易に選択され得る。例えば、誘導可能なプロモーターは、亜鉛で誘導可能なヒツジメタロチオニン(metallothionine)(MT)プロモーターおよびデキサメサゾン(Dex)で誘導可能なマウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモー
ターを包含する。他の誘導可能な系は、T7ポリメラーゼプロモーター系(第WO 98/10088号明細書);エクジソン昆虫プロモーター(Noら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346−3351(1996))、テトラサイクリンで抑制可能な系(Gossenら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992))、テトラサイクリンで誘導可能な系(Gossenら、
Science、378:1766−1769(1995)、Harveyら、
Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512−518(1998)もまた参照されたい)を包含する。他の系は、FK506二量体、カストラジオール(castradiol)を使用するVP16若しくはp65、ジフェノールムリスレロン(diphenol murislerone)、RU486で誘導可能な系(Wangら、
Nat.Biotech.、15:239−243(1997)およびWangら、
Gene Ther.、4:432−441(1997))ならびにラパマイシンで誘導可能な系(Magariら、
J.Clin.Invest.、100:2865−2872(1997))を包含する。いくつかの誘導可能なプロモーターの有効性は時間とともに増大する。こうした場合には、複数のリプレッサーをタンデムに挿入することにより(例えばIRESによりTetRに結合したTetR)こうした系の有効性を高め得る。あるいは、所望の機能についてスクリーニングする前に最低3日待機し得る。この系の有効性を高めるための既知手段により所望のタンパク質の発現を高め得る。(例えばウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を使用して)
【0079】
別の態様において、導入遺伝子の天然のプロモーターを使用することができる。該天然のプロモーターは、該導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣すべきであることが望ましい場合に好ましいことがある。該天然のプロモーターは、導入遺伝子の発現が一時的に若しくは発達的に、または組織特異的様式で、または特定の転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用しうる。さらなる一態様において、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位若しくはコザックコンセンサス配列のような他の天然の発現調節領域もまた天然の発現を模倣するのに使用しうる。
【0080】
導入遺伝子の別の態様は組織特異的プロモーターに作動可能に連結されている導入遺伝子を包含する。例えば、骨格筋での発現が望ましい場合は筋で活性のプロモーターを使用すべきである。これらは、骨格筋β−アクチン,ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子からのプロモーター、ならびに天然に存在するプロモーターより高い活性をもつ合成筋プロモーター(Liら、
Nat.Biotech.、17:241−245(1999)を参照されたい)を包含する。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝(アルブミン、Miyatakeら、
J.Virol.、71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、
Gene Ther.、3:1002−9(1996);α−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnotら、
Hum.Gene Ther.、7:1503−14(1996))、骨オステオカルシン(Steinら、
Mol.Biol.Rep.、24:185−96(1997));骨シアロプロテイン(Chenら、
J.Bone Miner.Res.、11:654−64(1996))、リンパ球(CD2、Hansalら、
J.Immunol.、161:1063−8(1998);免疫グロブリンH鎖;T細胞受容体鎖)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、
Cell.Mol.Neurobiol.、13:503−15(1993))、神経フィラメントL鎖遺伝子(Piccioliら、
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5611−5(1991))、および神経特異的vgf遺伝子(Piccioliら、
Neuron、15:373−84(1995))のような神経の(neuronal)について既知である。
【0081】
場合によっては、治療上有用な若しくは免疫原性の産物をコードする導入遺伝子を保有
するベクターは、選択可能なマーカー若しくはレポーター遺伝子もまた包含しうるはとりわけジェネチシン、ハイグロマイシン若しくはピューリマイシン(purimycin)耐性をコードする配列を包含しうる。アンピシリン耐性のような、こうした選択可能なレポーター若しくはマーカー遺伝子(好ましくはウイルス粒子中にパッケージングされるべきウイルスゲノムの外側に配置される)を、細菌細胞中の該プラスミドの存在を知らせるのに使用し得る。ベクターの他成分は複製起点を包含しうる。これらおよび他のプロモーターならびにベクターエレメントの選択は慣習的であり、そして多くのこうした配列が入手可能である(例えばSambrookら、およびその中に引用される参考文献を参照されたい)。
【0082】
これらのベクターは、当業者に既知の技術とともに本明細書に提供される技術および配列を使用して生成する。こうした技術は、教科書(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)に記述されるもののようなcDNAの慣習的クローニング技術、アデノウイルスゲノムのオーバーラップオリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応および所望のヌクレオチド配列を提供するいずれかの適する方法を包含する。
【0083】
III.ウイルスベクターの製造
一態様において、サルアデノウイルスプラスミド(若しくは他のベクター)を使用してアデノウイルスベクターを製造する。一態様においてアデノウイルスベクターは複製欠損であるアデノウイルス粒子である。一態様において、アデノウイルス粒子はE1aおよび/若しくはE1b遺伝子中の欠失により複製欠損にされている。あるいは、アデノウイルスは、場合によってはE1aおよび/若しくはE1b遺伝子を保持しつつ別の手段により複製欠損にされている。該アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムに対する他の突然変異、例えば他の遺伝子中の温度感受性突然変異若しくは欠失もまた含有し得る。他の態様において、アデノウイルスベクター中に無傷のE1aおよび/若しくはE1b領域を保持することが望ましい。こうした無傷のE1領域は、アデノウイルスゲノム中のその天然の場所に配置しうるか、若しくは天然のアデノウイルスゲノム中の欠失の部位(例えばE3領域中)に置くことができる。
【0084】
ヒト(若しくは他の哺乳動物)細胞への遺伝子の送達のための有用なサルアデノウイルスベクターの構築において、ある範囲のアデノウイルス核酸配列を該ベクター中で使用し得る。例えば、アデノウイルス後初期遺伝子(delayed early gene)E3の全部若しくは一部分を、組換えウイルスの一部を形成するサルアデノウイルス配列から除外しうる。サルE3の機能は組換えウイルス粒子の機能および産生に無関係であると考えられている。E4遺伝子の少なくともORF6領域、およびより望ましくはこの領域の機能の冗長性によりE4領域全体の欠失を有するサルアデノウイルスベクターもまた構築しうる。本発明のなお別のベクターは後初期遺伝子E2a中に欠失を含有する。欠失はサルアデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1からL5のいずれで行ってもまたよい。同様に中間遺伝子(intermediate gene)IXおよびIVa
2中の欠失がいくつかの目的上有用でありうる。他の欠失を他の構造的若しくは非構造的アデノウイルス遺伝子中で行いうる。上で論考される欠失は個別に使用しうる。すなわち、本明細書に記述されるところの使用のためのアデノウイルス配列は単一領域のみに欠失を含有しうる。あるいは、遺伝子全体、若しくはそれらの生物学的活性を破壊するのに効果的なそれらの部分の欠失をいかなる組合せで使用してもよい。例えば、一例示的ベクター中で、アデノウイルス配列は、E3の欠失を伴う若しくは伴わない、E1遺伝子およびE4遺伝子、若しくはE1、E2aおよびE3遺伝子、若しくはE1およびE3遺伝子、若しくはE1、E2aおよびE4遺伝子などの欠失を有しうる。上で論考されたとおり、こうした欠失を温度感受性突然変異のような他の突然変異とともに使用して所望の結果を達成しうる。
【0085】
いずれかの必須アデノウイルス配列(例えばE1a、E1b、E2a、E2b、E4 ORF6、L1、L2、L3、L4およびL5)を欠くアデノウイルスベクターは、ウイルスの感染性およびアデノウイルス粒子の増殖に必要とされる該欠けているアデノウイルス遺伝子産物の存在下で培養しうる。これらのヘルパー機能は、1種若しくはそれ以上のヘルパー構築物(例えばプラスミド若しくはウイルス)またはパッケージング宿主細胞の存在下で該アデノウイルスベクターを培養することにより提供しうる。例えば、1996年5月9日に公開されかつ引用することにより本明細書に組み込まれる国際特許出願第WO96/13597号明細書中に「最小」ヒトAdベクターの製造について記述される技術を参照されたい。
【0086】
1.ヘルパーウイルス
従って、ミニ遺伝子を保有するため使用されるウイルスベクターのサルアデノウイルス遺伝子内容に依存して、ヘルパーアデノウイルス若しくは非複製ウイルスフラグメントが、該ミニ遺伝子を含有する感染性組換えウイルス粒子を製造するのに必要な十分なサルアデノウイルス遺伝子配列を提供するのに必要でありうる。有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクター構築物に存在せずかつ/若しくは該ベクターがトランスフェクトされるパッケージング細胞株により発現されない、選択されたアデノウイルス遺伝子配列を含有する。一態様において、該ヘルパーウイルスは複製欠損でありかつ上述された配列に加えて多様なアデノウイルス遺伝子を含有する。こうしたヘルパーウイルスは、望ましくはE1発現細胞株とともに使用する。
【0087】
ヘルパーウイルスは、Wuら、
J.Biol.Chem.、374:16985−16987(1989);K.J.FisherとJ.M.Wilson、
Biochem.J.、299:49(April 1、1994)に記述されるところのポリカチオン複合物中にもまた形成しうる。ヘルパーウイルスは場合によっては第二のレポーターミニ遺伝子を含有しうる。多数のこうしたレポーター遺伝子が当該技術分野に既知である。アデノウイルスベクター上の導入遺伝子と異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在が、Adベクターおよびヘルパーウイルスの双方が独立にモニターされることを可能にする。本第二のレポーターは、精製に際して、生じる組換えウイルスとヘルパーウイルスの間の分離を可能にするのに使用する。
【0088】
2.補完細胞株
上述された遺伝子のいずれかで欠失された組換えサルアデノウイルス(Ad)を生成するためには、欠失された遺伝子領域の機能を、該ウイルスの複製および感染性に不可欠である場合はヘルパーウイルス若しくは細胞株、すなわち補完若しくはパッケージング細胞株により該組換えウイルスに供給しなければならない。多くの状況で、ヒトE1を発現する細胞株を使用してチンパンジーAdベクターをトランス補完し(transcomplement)得る。これは、本発明のチンパンジーAd配列と現在入手可能なパッケージング細胞で見出されるヒトAdE1配列の間の多様性により、現在のヒトE1含有細胞の使用が複製および製造過程の間の複製能力のあるアデノウイルスの生成を予防するため、とりわけ有利である。しかしながら、ある状況では、E1欠失サルアデノウイルスの製造に利用し得るE1遺伝子産物を発現する細胞株を利用することが望ましいであろう。こうした細胞株は記述されている。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照されたい。
【0089】
所望の場合は、本明細書に提供される配列を利用して、選択された親細胞株中での発現のためのプロモーターの転写制御下にSAdV39からの少なくともアデノウイルスE1遺伝子を発現するパッケージング細胞若しくは細胞株を生成しうる。誘導可能な若しくは構成的プロモーターを本目的上使用しうる。こうしたプロモーターの例は本明細の別の場
所に詳述されている。親細胞をいずれかの所望のSAdV39遺伝子を発現する新規細胞株の生成のため選択する。制限なしに、こうした親細胞株は、とりわけHeLa(ATCC受託番号CCL 2)、A549(ATCC受託番号CCL 185)、HEK 293、KB(CCL 17)、Detroit(例えばDetroit 510、CCL 72)およびWI−38(CCL 75)細胞でありうる。これらの細胞株は全部American Type Culture Collection、10801 University Boulevard,Manassas,Virginia 20110−2209から入手可能である。他の適する親細胞株は他の供給源から得ることができる。
【0090】
こうしたE1発現細胞株は組換えサルアデノウイルスE1欠失ベクターの生成で有用である。加えて、若しくは、あるいは、1種若しくはそれ以上のサルアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2aおよび/若しくはE4 ORF6を発現する細胞株を、本質的に同一の手順を使用して構築し得るを組換えサルウイルスベクターの生成で使用する。こうした細胞株を、それらの産物をコードする必須遺伝子が欠失されたアデノウイルスベクターをトランス補完する、若しくはヘルパー依存ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要なヘルパー機能を提供するのに利用し得る。宿主細胞の製造は選択されたDNA配列の集成のような技術を必要とする。この集成は慣習的技術を利用して成し遂げうる。こうした技術は、ポリメラーゼ連鎖反応、合成法、および所望のヌクレオチド配列を提供するいずれかの他の適する方法と組み合わせた、公知でありかつ上で引用されたSambrookらに記述されるcDNAおよびゲノムクローニング、アデノウイルスゲノムのオーバーラップオリゴヌクレオチド配列の使用を包含する。
【0091】
なお別の代替において、必須アデノウイルス遺伝子産物はアデノウイルスベクターおよび/若しくはヘルパーウイルスによりトランスに提供される。こうした場合に、適する宿主細胞は、原核生物(例えば細菌)細胞、ならびに昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を包含する真核生物細胞を包含するいかなる生物有機体からも選択し得る。とりわけ望ましい宿主細胞は、A549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK 293細胞若しくはPERC6(その双方は機能的アデノウイルスE1を発現する)(Fallaux,FJら、(1998)、
Hum Gene Ther、9:1909−1917)、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、ならびにヒト、サル、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを包含する哺乳動物由来の初代線維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を制限なしに包含するいかなる哺乳動物種のなかからも選択される。該細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明の制限でなく、哺乳動物細胞すなわち線維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞などの型もそうでない。
【0092】
3.ウイルス粒子の集成および細胞株のトランスフェクション
一般に、ミニ遺伝子を含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する場合、該ベクターは、約1×10
4細胞ないし約1×10
13細胞、および好ましくは約10
5細胞に対し約5μgから約100μgまでのDNA、および好ましくは約10ないし約50μgのDNAの量で送達される。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択されるベクター、送達方法および選択される宿主細胞のような因子を考慮に入れて調節してよい。
【0093】
該ベクターは、裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルスなどを包含する当該技術分野で既知の若しくは上で開示されたいずれのベクターでもよい。ベクターの宿主細胞への導入は、トランスフェクションおよび感染を包含する当該技術分野で既知の若しくは上で開示されたところのいずれの手段によっても達成しうる。アデノウイルス遺伝子の1種若しくはそれ以上が、宿主細胞のゲノム中に安定に組込まれうるか、エピソームとして安定に発現されうるか、若しくは一過性に発現さ
れうる。遺伝子産物は全部、エピソーム上で一過性に発現されうるか若しくは安定に組込まれうるか、または、遺伝子産物のいくつかが安定に発現されうる一方で他者は一過性に発現される。さらに、アデノウイルス遺伝子のそれぞれのプロモーターは、構成的プロモーター、誘導可能なプロモーター若しくは天然のアデノウイルスプロモーターから独立に選択しうる。プロモーターは、例えば生物体若しくは細胞の特定の生理学的状態により(すなわち分化状態により、または複製中の若しくは静止状態の細胞中で)、あるいは外的に添加される因子により調節しうる。
【0094】
宿主細胞中への(プラスミド若しくはウイルスのような)分子の導入は、当業者に既知のおよび本明細を通じて論考されるところの技術を使用してもまた達成しうる。好ましい態様において、標準的トランスフェクション技術、例えばCaPO
4トランスフェクション若しくは電気穿孔法を使用する。
【0095】
アデノウイルスの選択されたDNA配列(ならびに導入遺伝子および他のベクターエレメントの多様な中間プラスミドへの集成、ならびに組換えウイルス粒子を製造するためのプラスミドおよびベクターの使用は全部慣習的技術を使用して達成される。こうした技術は、教科書(上で引用されたSambrookら)に記述されるもののようなcDNAの慣習的クローニング技術、アデノウイルスゲノムのオーバーラップオリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、および所望のヌクレオチド配列を提供するいずれかの適する方法を包含する。標準的トランスフェクションおよびコトランスフェクション技術、例えばCaPO
4沈殿技術を使用する。使用される他の慣習的方法は、ウイルスゲノムの相同的組換え、アガーオーバーレイ中のウイルスのプラーク形成(plaquing)、シグナル生成の測定方法などを包含する。
【0096】
例えば、所望のミニ遺伝子含有ウイルスベクターの構築および集成後に、該ベクターをヘルパーウイルスの存在下にin vitroでパッケージング細胞株にトランスフェクトする。相同的組換えがヘルパーおよびベクター配列間で起こり、それは該ベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列が複製されかつビリオンキャプシドにパッケージングされることを可能にし、組換えウイルスベクター粒子をもたらす。こうしたウイルス粒子の現在の製造方法はトランスフェクションに基づく。しかしながら本発明はこうした方法に制限されない。
【0097】
生じる組換えサルアデノウイルスは選択された細胞への選択された導入遺伝子の移入において有用である。パッケージング細胞株中で増殖される組換えウイルスを用いるin vivo実験において、本発明のE1欠失組換えサルアデノウイルスベクターは、サル以外の、好ましくはヒトの細胞への導入遺伝子の移入における有用性を示す。
【0098】
IV.組換えアデノウイルスベクターの使用
組換えサルアデノウイルス−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38に基づくベクターは、in vitro、ex vivoおよびin vivoでヒト若しくはサル以外の家畜患者への遺伝子移入に有用である。
【0099】
本明細書に記述される組換えアデノウイルスベクターを、異種遺伝子によりコードされる産物のin vitroでの製造のための発現ベクターとして使用し得る。例えば、E1欠失の場所に挿入された遺伝子を含有する組換えアデノウイルスを、上述されたところのE1発現細胞株にトランスフェクトしうる。あるいは、複製能力のあるアデノウイルスを別の選択された細胞株で使用しうる。該トランスフェクトした細胞をその後慣習的様式で培養して、組換えアデノウイルスにプロモーターから遺伝子産物を発現させる。該遺伝子産物をその後、既知の慣習的なタンパク質単離および培養物からの回収方法により培地から回収しうる。
【0100】
SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38由来組換えサルアデノウイルスベクターは、生物体が1種若しくはそれ以上のAAV血清型に対する中和抗体を有する場合であっても、選択された宿主細胞に選択された導入遺伝子をin
vivo若しくはex vivoで送達し得る効率的遺伝子移入媒体を提供する。一態様において、rAAVおよび細胞をex vivoで混合し;慣習的方法論を使用して感染細胞を培養し;そして形質導入した細胞を患者に再注入する。これらの組成物は、治療目的上、および保護免疫を誘導することを包含する免疫化のための遺伝子送達にとりわけ良好に適する。
【0101】
より一般的には、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38組換えアデノウイルスベクターは、下述されるとおり治療若しくは免疫原性分子の送達に利用することができる。本発明の組換えアデノウイルスベクターが組換えアデノウイルスベクターの反復送達を必要とするレジメンでの使用にとりわけ良好に適することが双方の応用について容易に理解されるであろう。こうしたレジメンは、典型的に、ウイルスキャプシドが変えられている一連のウイルスベクターの送達を必要とする。ウイルスキャプシドは、各その後の投与について、または予め選択された数の特定の一血清型キャプシドの投与(例えば1、2、3、4回若しくはそれ以上)の後に変えることができる。従って、あるレジメンは、第一のサルキャプシドをもつrAdの送達、第二のサルキャプシドをもつrAdを用いる送達、および第三のサルキャプシドを用いる送達を必要としうる。単独で、相互と組合せで、若しくは他のアデノウイルス(好ましくは免疫学的に交差反応性でない)と組合せで本発明のAdキャプシドを使用する多様な他のレジメンが当業者に明らかであろう。場合によっては、こうしたレジメンは、本明細書に記述されるような他のヒト以外の霊長類のアデノウイルス、ヒトアデノウイルス若しくは人工配列のキャプシドをもつrAdの投与を必要としうる。レジメンの各相は、単一Adキャプシドを用いる一連の注入(若しくは他の送達経路)の投与、次いで異なるAd供給源からの別のキャプシドを伴うシリーズを必要としうる。あるいは、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターを、他のウイルス系、ウイルス以外の送達系、タンパク質、ペプチドおよび他の生物学的に活性の分子を包含する他のアデノウイルスに媒介されない送達系を必要とするレジメンで利用しうる。
【0102】
以下のセクションは、本発明のアデノウイルスベクターを介して送達しうる例示的分子に焦点を当てることができる。
【0103】
A.治療分子のAd媒介性送達
一態様において、上述された組換えベクターを公表された遺伝子治療方法に従ってヒトに投与する。選択された導入遺伝子を持つサルウイルスベクターは、好ましくは生物学的に適合性の溶液若しくは製薬学的に許容できる送達ベヒクルに懸濁して患者に投与しうる。適するベヒクルは滅菌生理的食塩水を包含する。製薬学的に許容できる担体であることが既知かつ当業者に公知の他の水性および非水性の等張の滅菌注入溶液ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液を本目的上使用しうる。
【0104】
該サルアデノウイルスベクターは、医学の技術分野の当業者により決定され得る、標的細胞を形質導入し、ならびに不要な有害作用を伴わず若しくは医学上許容できる生理学的効果を伴い治療上の利益を提供するのに十分なレベルの遺伝子移入および発現を提供するのに十分な量で投与する。慣習的かつ製薬学的に許容できる投与経路は、限定されるものでないが、網膜への直接送達および他の眼内送達法、肝への直接送達、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸、経口および他の非経口投与経路を挙げることができる。投与経路は、所望の場合は組合せうるか、または導入遺伝子若しくは状態に依存して調節しうる。投与経路は主として処置されている状態の性質に依存することができる
。
【0105】
ウイルスベクターの投与量は、主として、処置されている状態、患者の齢、重量および健康状態のような因子に依存することができ、そして従って患者間で異なりうる。例えば、ウイルスベクターの治療上有効な成体のヒト若しくは家畜の投与量は、一般に約1×10
6から約1×10
15粒子まで、約1×10
11ないし1×10
13粒子、若しくは約1×10
9ないし1×10
12粒子のウイルスの濃度を含有する約100μLから約100mLまでの担体の範囲にある。投与量は動物の大きさおよび投与経路に依存して変動することができる。例えば、筋肉内注入に適するヒト若しくは家畜の投与量(約80kgの動物について)は、単一部位について1mLあたり約1×10
9ないし約5×10
12粒子の範囲にある。場合によっては複数の投与部位が送達されうる。別の例において、適するヒト若しくは家畜の投与量は、経口製剤について約1×10
11ないし約1×10
15粒子の範囲にありうる。当業者は、投与経路および該組換えベクターを使用する治療若しくはワクチンの応用に依存してこれらの用量を調節しうる。導入遺伝子の発現のレベル、若しくは免疫原については循環抗体のレベルをモニターして投与量の投与頻度を決定し得る。投与の頻度のタイミングのなお他の決定方法は当業者に容易に明らかであろう。
【0106】
任意の方法の一段階は、適する量の短時間作用型免疫調節物質のウイルスベクターの投与と同時、またはその前若しくは後のいずれかの患者への共投与を必要とする。選択される免疫調節物質は、本発明の組換えベクターに向けられる中和抗体の形成を阻害することが可能な、若しくは該ベクターの細胞溶解性Tリンパ球(CTL)排除を阻害することが可能な剤と本明細書で定義する。免疫調節物質は、Tヘルパーサブセット(T
H1若しくはT
H2)とB細胞の間の相互作用を妨害して中和抗体形成を阻害しうる。あるいは、免疫調節物質は、T
H1細胞とCTLの間の相互作用を阻害して該ベクターのCTL排除の発生を低下させうる。多様な有用な免疫調節物質およびそれらの使用のための投与量が、例えばYangら、
J.Virol.、70(9)(Sept.、1996);1996年5月2日公開の国際特許出願第WO96/12406号明細書;および国際特許出願第PCT/US96/03035号明細書(全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0107】
1.治療的導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療的産物は、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様増殖因子IおよびII(IGF−1およびIGF−II)、TGF、アクチビン、インヒビンを包含するトランスフォーミング増殖因子スーパーファミリーのいずれか1種、若しくは骨形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれか、ヘレグルイン(heregluin)/ニューレグリン/ARIA/増殖因子のneu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1種、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1種、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグならびにチロシン水酸化酵素を制限なしに包含するホルモンならびに増殖および分化因子を包含する。
【0108】
他の有用な導入遺伝子産物は、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を包含する)、単球化学誘因物質タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子、ならびにインターフェロン、および幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを制限なしに包含する免疫系を調節するタンパク質を包含する。免疫系により産生される遺伝子産物もまた本発明で有用である。これらは、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに工作された免疫グロブリンおよびMHC分子を制限なしに包含する。有用な遺伝子産物は、補体調節タンパク質、メンブレンコファクタープロテイン(MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質もまた包含する。
【0109】
なお他の有用な導入遺伝子産物は、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の受容体のいずれか1種を包含する。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体およびスカベンジャー受容体を包含するコレステロール調節のための受容体を包含する。本発明は、グルココルチコイド受容体およびエストロゲン受容体を包含するステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバー、ビタミンD受容体ならびに他の核受容体のような遺伝子産物もまた包含する。加えて、有用な遺伝子産物は、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETSボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAATボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS結合タンパク質、STAT、GATAボックス結合タンパク質例えばGATA−3、およびウィングドヘリックスタンパク質のフォークヘッドファミリーのような転写因子を包含する。
【0110】
他の有用な遺伝子産物は、カルバモイル合成酵素I、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギノコハク酸脱離酵素、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸加水分解酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、α−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲン脱アミノ酵素、第VIII因子、第IX因子、シスタチオンβ合成酵素、分枝状鎖ケト酸脱炭酸酵素、アルブミン、イソバレリルcoA脱水素酵素、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoA脱水素酵素、インスリン、β−グルコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシン脱炭酸酵素、H−プロテイン、T−プロテイン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)配列およびジストロフィンのcDNA配列を包含する。
【0111】
他の有用な遺伝子産物は、挿入、欠失若しくはアミノ酸置換を含有する天然に存在しないアミノ酸配列を有するキメラ若しくはハイブリッドポリペプチドのような天然に存在しないポリペプチドを包含する。例えば、一本鎖の工作された免疫グロブリンはある種の免疫無防備状態の患者で有用であり得る。他の型の天然に存在しない遺伝子配列は、標的の過剰発現を低下させるのに使用し得るアンチセンス分子およびリボザイムのような触媒核酸を包含する。
【0112】
遺伝子の発現の低下および/若しくは調節は、癌および乾癬がそうであるように過剰増殖細胞を特徴とする過剰増殖状態の処置にとりわけ望ましい。標的ポリペプチドは、過剰増殖細胞中で独占的に若しくは正常細胞と比較してより高レベルで産生されるポリペプチ
ドを包含する。標的抗原は、myb、myc、fynのような癌遺伝子ならびに転位遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFによりコードされるポリペプチドを包含する。標的抗原としての癌遺伝子産物に加え、抗癌処置および保護レジメンのための標的ポリペプチドは、いくつかの態様において自己免疫疾患の標的抗原としてもまた使用される、B細胞リンパ腫により作成される抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域を包含する。モノクローナル抗体17−1Aおよび葉酸結合ポリペプチドにより認識されるポリペプチドを包含する、腫瘍細胞中でより高レベルで見出されるポリペプチドのような他の腫瘍関連ポリペプチドを、標的ポリペプチドとして使用し得る。
【0113】
他の適する治療的ポリペプチドおよびタンパク質は、細胞受容体を包含する自己免疫と関連する標的および自己に向けられた抗体を産生する細胞に対する広範な保護免疫応答を賦与することにより自己免疫疾患および障害に苦しめられている個体を処置するのに有用でありうるものを包含する。T細胞媒介性自己免疫疾患は、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮病、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ヴェゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を包含する。これらの疾患のそれぞれは、内在性抗原に結合しかつ自己免疫疾患と関連する炎症カスケードを開始するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。
【0114】
本発明のサルアデノウイルスベクターは、導入遺伝子の複数のアデノウイルス媒介性送達が望ましい治療レジメンに、例えば同一導入遺伝子の再送達を必要とするレジメン、若しくは他の導入遺伝子の送達を必要とする併用レジメンでとりわけ良好に適する。こうしたレジメンは、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38サルアデノウイルスベクターの投与、次いで同一血清型アデノウイルスからのベクターを用いる再投与を必要としうる。とりわけ望ましいレジメンは、第一の投与で送達されるベクターのアデノウイルスキャプシド配列の供給源がその後の投与の1回若しくはそれ以上で利用されるウイルスベクターのアデノウイルスキャプシド配列の供給源と異なるSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38サルアデノウイルスベクターの投与を必要とする。例えば、治療レジメンは、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターの投与、および同一若しくは異なる血清型の1種若しくはそれ以上のアデノウイルスベクターを用いる反復投与を必要とする。別の例において、治療レジメンは、アデノウイルスベクターの投与、次いで第一の送達されるアデノウイルスベクター中のキャプシドの供給源と異なるキャプシドを有するSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターを用いる反復投与、および、場合によっては前の投与段階でのベクターのアデノウイルスキャプシドの供給源と同一であるか若しくは好ましくは異なる別のベクターを用いるさらなる投与を必要とする。これらのレジメンは、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38サル配列を使用して構築されるアデノウイルスベクターの送達に制限されない。むしろ、これらのレジメンは、SAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターの1種若しくはそれ以上と組合せの、他のサルアデノウイルス配列(例えばPan9若しくはC68、C1など)、他のヒト以外の霊長類のアデノウイルス配列またはヒトアデノウイルス配列を制限なしに包含する他のアデノウイルス配列を容易に利用し得る。こうしたサル、他のヒト以外の霊長類およびヒトのアデノウイルス血清型の例は本文書の別の場所で論考する。さらに、これらの治療レジメンは、アデノウイルス以外のベクター、ウイルス以外のベクター、および/または多様な他の治療上有用な化合物若しくは分子と組合せのSAdV39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデノウイルスベクターの同時若しくは連続いずれかの送達を必要としうる。本発明はこれらの治療レジメンに制限されず、多様なそれらが当業者に容易に明らかであろう。
【0115】
B.免疫原性導入遺伝子のAd媒介性送達
該組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターは免疫原性組成物としてもまた使用しうる。本明細書で使用されるところの免疫原性組成物は、それに対する体液性(例えば抗体)若しくは細胞性(例えば細胞傷害性T細胞)応答が、哺乳動物、および好ましくは霊長類への送達後に該免疫原性組成物により送達される導入遺伝子産物に対し開始される組成物である。組換えサルAdは所望の免疫原をコードする遺伝子をそのアデノウイルス配列欠失のいずれかに含有し得る。該サルアデノウイルスは、ヒト起源のアデノウイルスに比較して多様な動物種で生組換えウイルスワクチンとしての使用により良好に適することがありそうであるが、しかしこうした使用に制限されない。該組換えアデノウイルスは、免疫応答の誘導にきわめて重要でありかつ病原体の伝播を制限することが可能な抗原(1種若しくは複数)が同定されておりかつcDNAが利用可能であるいかなる病原体に対する予防的若しくは治療的ワクチンとしても使用し得る。
【0116】
こうしたワクチン(若しくは他の免疫原性)組成物は上述されたとおり適する送達ベヒクル中で処方する。一般に免疫原性組成物の用量は治療的組成物について上で定義された範囲にある。選択された遺伝子の免疫のレベルをモニターしてブースターの必要性(あれば)を決定し得る。血清中の抗体力価の評価後に、任意のブースター免疫化が望ましいかもしれない。
【0117】
場合によっては、本発明のワクチン組成物は例えばアジュバント、安定剤、pH調節剤、保存剤などを包含する他の成分を含有するように処方しうる。こうした成分はワクチンの技術分野の当業者に公知である。適するアジュバントの例は、リポソーム、アルム、モノホスホリルリピドA、およびサイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、リガンドのようないずれかの生物学的に活性の因子、ならびに最適にはそれらの組合せを制限なしに包含する。これらの生物学的に活性の因子のあるものは例えばプラスミド若しくはウイルスベクターを介してin vivoで発現させ得る。例えば、こうしたアジュバントは、抗原のみをコードするDNAワクチンでのプライミングに際して生成される免疫応答と比較して抗原特異的免疫応答を高めるように、抗原をコードするプライミングDNAワクチンとともに投与し得る。
【0118】
組換えアデノウイルスは「免疫原性量」、すなわち所望の細胞をトランスフェクトしかつ免疫応答を誘導するために十分なレベルの選択された遺伝子の発現を提供するためにある投与経路で効果的である組換えアデノウイルスの量で投与する。保護免疫が提供される場合、該組換えアデノウイルスは、感染および/若しくは再発性疾患の予防において有用なワクチン組成物であると考えられる。
【0119】
あるいは、若しくは加えて、本発明のベクターは、選択された免疫原に対する免疫応答を誘導するペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質をコードする導入遺伝子を含有しうる。本明細書に記述される組換えSAdVベクターは、該ベクターにより発現される挿入された異種抗原タンパク質に対する細胞溶解性T細胞および抗体の誘導で高度に有効であると期待される。
【0120】
例えば、免疫原は多様なウイルス科から選択しうる。それに対する免疫応答が望ましいとみられるウイルス科の例は、感冒の症例の約50%の原因であるライノウイルス属を包含するピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コックサッキーウイルス、エコーウイルスおよびA型肝炎ウイルスのようなヒトエンテロウイルスを包含するエンテロウイルス属;ならびに主にヒト以外の動物における口蹄疫の原因であるアプトウイルス属を包含する。ウイルスのピコルナウイルス科内の標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびV
PGを包含する。別のウイルス科は、流行性胃腸炎の重要な原因病原体であるノーウォーク群のウイルスを包含するカルシウイルス(calcivirus)科を包含する。ヒトおよびヒト以外の動物で免疫応答を誘導するための抗原の標的化における使用に望ましいなお別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラ、東部および西部ウマ脳炎を包含するアルファウイルス属、ならびに風疹ウイルスを包含するルビウイルスを包含するトガウイルス科である。フラビウイルス科は、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介性脳炎ウイルスを包含する。他の標的抗原は、C型肝炎、あるいは伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数のヒト以外のウイルスおよび感冒を引き起こしうるヒト呼吸器コロナウイルスならびに/または非A、非B若しくは非C型肝炎を包含するコロナウイルス科から生成しうる。コロナウイルス科内の標的抗原は、E1(M若しくはマトリックスタンパク質ともまた呼ばれる)、E2(S若しくはスパイクタンパク質ともまた呼ばれるS)、E3(HE若しくはヘマグルチン−エルテロース(hemagglutin−elterose)ともまた呼ばれる)糖タンパク質(全コロナウイルスに存在するわけではない)またはN(ヌクレオキャプシド)を包含する。なお他の抗原は、ベシクロウイルス属(例えば水疱性口内炎ウイルス)およびリッサウイルス属(例えば狂犬病)を包含するラブドウイルス科に対し標的とされうる。
【0121】
ラブドウイルス科内の適する抗原はGタンパク質若しくはNタンパク質に由来しうる。マールブルグおよびエボラウイルスのような出血熱ウイルスを包含するフィロウイルス科は抗原の適する供給源となりうる。パラミクソウイルス科は、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(流行性耳下腺炎ウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびイヌジステンパーを包含するモルビリウイルス、ならびにRSウイルスを包含するニューモウイルスを包含する。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科内に分類され、そして抗原の適する供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブニヤウイルス科は、ブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス(リフトバレー熱)、ハンタウイルス(プレマラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス(ナイロビ羊病)および多様な割り当てられていないブンガウイルス(bungavirus)を包含する。アレナウイルス科はLCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルス科は、レオウイルス、ロタウイルス(小児で急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルスおよびクルチウイルス(cultivirus)(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)属を包含する。
【0122】
レトロウイルス科は、ネコ白血病ウイルス、HTLVIおよびHTLVII、レンチビリナル(lentivirinal)(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルスおよびスプマビリナル(spumavirinal)を包含する)のようなヒトおよび家畜の疾患を包含するオンコリビリナル(oncorivirinal)亜科を包含する。レンチウイルスのなかで多くの適する抗原が記述されそして容易に選択し得る。適するHIVおよびSIV抗原の例は、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、NefおよびRevタンパク質、ならびにそれらの多様なフラグメントを制限なしに包含する。例えば、Envタンパク質の適するフラグメントは、gp120、gp160、gp41のようなそのサブユニット、若しくは例えば長さ最低約8アミノ酸のそれらのより小さいフラグメントのいずれも包含しうる。同様にtatタンパク質のフラグメントも選択しうる。(米国特許第5,891,994号明細書および米国特許第6,193,981
号明細書を参照されたい。)D.H.Barouchら、J.Virol.、75(5):2462−2467(March 2001)およびR.R.Amaraら、
Science、292:69−74(6 April 2001)に記述されるHIVおよびSIVタンパク質もまた参照されたい。別の例において、HIVおよび/若しくはSIVの免疫原性タンパク質若しくはペプチドを使用して融合タンパク質若しくは他の免疫原性分子を形成しうる。例えば、2001年8月2日公開の第WO 01/54719号明細書および1999年4月8日公開の第WO 99/16884号明細書に記述されるHIV−1 Tatおよび/若しくはNef融合タンパク質ならびに免疫化レジメンを参照されたい。本発明は本明細書に記述されるHIVおよび/若しくはSIV免疫原性タンパク質若しくはペプチドに制限されない。加えて、これらのタンパク質に対する多様な改変が記述されているか、若しくは当業者により容易に作成され得る。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記述される改変gagタンパク質を参照されたい。さらに、いかなる所望のHIVおよび/若しくはSIV免疫原も単独若しくは組合せで送達しうる。こうした組合せは単一ベクター若しくは複数のベクターからの発現を包含しうる。場合によっては、別の組合せは、タンパク質の形態の免疫原の1種若しくはそれ以上の送達を伴う1種若しくはそれ以上の発現された免疫原の送達を必要としうる。こうした組合せを下により詳細に論考する。
【0123】
パボーバウイルス科は、ポリオーマウイルス亜科(BKUおよびJCUウイルス)ならびにパピローマウイルス亜科(癌若しくは乳頭腫の悪性の進行と関連する)を包含する。アデノウイルス科は呼吸器疾患および/若しくは腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を包含する。パルボウイルス科ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルス。ヘルペスウイルス科は、シンプレックスウイルス(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス(偽性狂犬病、帯状疱疹)属を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス)を包含するベータヘルペスウイルス亜科、ならびに、リンホクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、伝染性鼻気管炎、マレック病ウイルスおよびラジノウイルス属を包含するガンマヘルペスウイルス亜科を包含する。ポックスウイルス科は、オルトポックスウイルス(大疱瘡(天然痘)およびワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルス属を包含するチョルドポックスウイルス亜科、ならびにエントモポックスウイルス亜科を包含する。ヘパドナウイルス科はB型肝炎ウイルスを包含する。抗原の適する供給源となりうる1種の分類されないウイルスはD型肝炎ウイルスである。なお他のウイルス供給源は、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスおよびブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルスを包含しうる。アルファウイルス科はウマ動脈炎ウイルスおよび多様な脳炎ウイルスを包含する。
【0124】
他の病原体に対しヒト若しくはヒト以外の動物を免疫するのに有用である免疫原は、例えば、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物を感染させる細菌、真菌、寄生性微生物若しくは多細胞寄生動物、または癌細胞若しくは腫瘍細胞からを包含する。細菌性病原体の例は、病原性グラム陽性球菌を包含するは肺炎球菌;ブドウ球菌;および連鎖球菌を包含する。病原性グラム陰性球菌は髄膜炎菌;淋菌を包含する。病原性腸グラム陰性桿菌は、腸内細菌科(enterobacteriaceae);シュードモナス、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびエイケネラ(eikenella);類鼻疽;サルモネラ(salmonella);シゲラ(shigella);ヘモフィルス(haemophilus);モラクセラ(moraxella);軟性下疳菌(
H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ(brucella);野兎病菌(
Francisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルジニア(yersinia)(パスツレラ);ストレプトバシラス モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリルムを包含し;グラム
陽性桿菌は、リステリア モノシトゲネス(listeria monocytogenes);エリジペロスリックス ルシオパチエ(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(
Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(
B.anthracis)(炭疽);ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫);およびバルトネラ症を包含する。病原性嫌気性細菌により引き起こされる疾患は破傷風;ボツリヌス中毒;他のクロストリジア(clostridia);結核;らい;および他のミコバクテリアを包含する。病原性スピロヘータ疾患は梅毒;トレポネーマ症;イチゴ腫、ピンタおよび風土病性梅毒;ならびにレプトスピラ症を包含する。より高病原性の細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染症は、放線菌症;ノカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症およびコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症およびムコール症;スポロトリクス症;パラコクシジオイデス真菌症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫およびクロモミコーシス;ならびに皮膚糸状菌症を包含する。リケッチア感染症は、発疹チフス、ロッキー山熱、Q熱およびリケッチア痘を包含する。マイコプラスマおよびクラミジア感染症の例は:マイコプラスマ肺炎;性病性リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染症を包含する。病原性真核生物は病原性原生動物および蠕虫を包含し、また、それらにより生じられる感染症は:アメーバ症;マラリア;リーシュマニア;トリパノソーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスチス カリニ(
Pneumocystis carinii);
Trichans;トキソプラスマ(
Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア症;旋毛虫症;フィラリア症;住血吸虫症;線虫;吸虫(trematodes)すなわち吸虫(flukes);および条虫(cestode)(条虫(tapeworm))感染症を包含する。
【0125】
これらの生物体および/若しくはそれらにより産生されるトキシンの多くは、生物学的攻撃での使用のための潜在性を有する剤として疾病対策センター(Centers for Disease Control)((CDC)、米国保健省の部門)により特定されている。例えば、これらの生物学的剤のいくつかは、炭疽菌(
Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(
Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(
Yersinia pestis)(ペスト)、大疱瘡(天然痘)、野兎病菌(
Francisella tularensis)(野兎病)、ならびにウイルス性出血熱(フィロウイルス(例えばエボラ、マールブルグ)ならびにアレナウイルス(例えばラッサ、マチュポ))(それらの全部は現在カテゴリーAの剤に分類されている);コクシエラ ブルネティ(
Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ属(Brucella)スピーシーズ(ブルセラ症)、バークホルデリア マレイ(
Burkholderia mallei)(鼻疽)、類鼻疽菌(
Burkholderia pseudomallei)(メロイドーシス(meloidosis))、トウゴマ(
Ricinus communis)およびそのトキシン(リシントキシン)、ウェルシュ菌(
Clostridium perfringens)およびそのトキシン(εトキシン)、ブドウ球菌属(
Staphylococcus)スピーシーズおよびそれらのトキシン(エンテロトキシンB)、オウム病クラミジア(
Chlamydia psittaci)(オウム病)、水の安全性に対する脅威(例えばコレラ菌(
Vibrio chlerae)、クリトスポリジウム パルブム(
Crytosporidium parvum))、発疹チフス(発疹チフスリケッチア(
Richettsia powazekki))、ならびにウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネズエラウマ脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);(それらの全部は現在カテゴリーBの剤として分類されている);ならびにニパンウイルスおよびハンタウイルス(現在カテゴリーCの剤として分類されている)を包含する。加えて、そのように分類されるか若しくは異なって分類される他の生物体が将来同定かつ/若しくはこうした目的上使用されうる。本明細書に記述されるウイルスベクターおよび他の構築物が、
これらの生物学的剤への感染症若しくはそれらとの他の有害反応を予防かつ/若しくは処置することができる、これらの生物体、ウイルス、それらのトキシン若しくは他の副生成物からの抗原を送達するのに有用であることが容易に理解されるであろう。
【0126】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するためのSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターの投与はそれらのT細胞を排除するためのCTLを包含する免疫応答を導き出すことが予期される。RAにおいて、該疾患に関与するTCRの数個の特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−3、V−14、V−17およびVα−17を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする核酸配列の送達はRAに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。MSにおいて、該疾患に関与するTCRの数個の特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−7およびVα−10を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする核酸配列の送達はMSに関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。強皮症において、該疾患に関与するTCRの数個の特定の可変領域が特徴づけられている。これらのTCRはV−6、V−8、V−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28ならびにVα−12を包含する。従って、これらのポリペプチドの最低1種をコードする組換えサルアデノウイルスの送達は強皮症に関与するT細胞を標的とすることができる免疫応答を導き出すことができる。
【0127】
C.Ad媒介性送達方法
選択された遺伝子の治療レベル若しくは免疫のレベルをモニターしてブースターの必要性(あれば)を決定し得る。CD8+ T細胞応答若しくは場合によっては血清中の抗体力価の評価後に任意のブースター免疫化が望ましいかもしれない。場合によっては、組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターを、単回投与で、あるいは多様な組合せレジメンで、例えば他の有効成分を必要とする処置のレジメン若しくはクールと組合せで、またはプライム−ブースト(prime−boost)レジメンで送達しうる。多様なこうしたレジメンが当該技術分野で記述されており、そして容易に選択されうる。
【0128】
例えば、プライム−ブーストレジメンは、タンパク質のような伝統的な抗原若しくはこうした抗原をコードする配列を保有する組換えウイルスを用いる第二のブースター投与に対し免疫系をプライミングするためのDNA(例えばプラスミド)に基づくベクターの投与を必要としうる。例えば2000年3月2日公開の第WO 00/11140号明細書(引用することにより組み込まれる)を参照されたい。あるいは、免疫化レジメンは、抗原を保有するベクター(ウイルス若しくはDNAに基づくのいずれか)またはタンパク質に対する免疫応答を増強するための組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−30、−37若しくは−38ベクターの投与を必要としうる。なお別の代替において、免疫化レジメンは、タンパク質、次いで抗原をコードするベクターを含むブースターの投与を必要とする。
【0129】
一態様において、選択された抗原を保有するプラスミドDNAベクターを送達すること、次いで組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターを用いて増強することによる、前記抗原に対する免疫応答のプライミングおよび増強方法が記述される。一態様において、プライム−ブーストレジメンはプライムおよび/若しくはブースト媒体からの多タンパク質の発現を必要とする。例えば、HIVおよびSIVに対する免疫応答を生成させるのに有用なタンパク質サブユニットの発現のための多タンパク質レジメンを記述するR.R.Amara、
Science、292:69−74(6 April 2001)を参照されたい。例えば、DNAプライムは、単一転写物からのGag、Pol、Vif、VPXおよびVprならびにEnv、Tat
およびRevを送達しうる。あるいは、SIV Gag、PolおよびHIV−1 Envを組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38アデノウイルス構築物中で送達する。なお他のレジメンは第WO 99/16884号明細書および第WO 01/54719号明細書に記述されている。
【0130】
しかしながら、該プライム−ブーストレジメンはHIVについての免疫化若しくはこれらの抗原の送達に制限されない。例えば、プライミングは、第一のSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターを用いて送達すること、次いで第二のAdベクター、若しくはタンパク質の形態の抗原それ自体を含有する組成物を用いて増強することを必要としうる。一例において、該プライム−ブーストレジメンは、抗原が由来するウイルス、細菌若しくは他の生物体に対する保護免疫応答を提供し得る。別の態様において、該プライム−ブーストレジメンは、治療が投与されている状態の存在の検出のための慣例アッセイを使用して測定し得る治療効果を提供する。
【0131】
プライミング組成物は、所望の免疫応答が標的にされている抗原に依存する用量依存性の様式で体内の多様な部位に投与しうる。量若しくは注入(1個若しくは複数)の場所または製薬学的担体は制限でない。むしろ、該レジメンは、そのそれぞれが毎時、毎日、毎週若しくは毎月または毎年投与される単一用量若しくは投与量を包含しうるプライミングおよび/若しくは増強段階を必要としうる。一例として、哺乳動物は、担体中に約10μgないし約50μgの間のプラスミドを含有する1若しくは2用量を受領しうる。DNA組成物の所望の量は約1μgないし約10,000μgの間のDNAベクターの範囲にわたる。投与量は被験体体重約1kgあたり約1μgから1000μgのDNAまで変動しうる。送達の量若しくは部位は、望ましくは哺乳動物の正体および状態に基づいて選択する。
【0132】
哺乳動物への抗原の送達に適するベクターの投与量単位を本明細書に記述する。該ベクターは、等張の塩水;こうした投与の当業者に明らかであろう等張塩溶液若しくは他の製剤のような製薬学的若しくは生理学的に許容できる担体中に懸濁若しくは溶解されることにより投与のために調製される。適切な担体は当業者に明らかであることができ、そして投与経路に大きな部分依存することができる。本明細書に記述される組成物は、生物分解性の生物適合性ポリマーを使用する徐放製剤で、若しくはミセル、ゲルおよびリポソームを使用するオンサイト(on−site)送達により、上述された経路により哺乳動物に投与しうる。場合によっては、プライミング段階は、本明細書に定義されるようなアジュバントの適する量をプライミング組成物とともに投与することもまた包含する。
【0133】
好ましくは、増強組成物は、哺乳動物被験体にプライミング組成物を投与した約2ないし約27週後に投与する。増強組成物の投与は、プライミングDNAワクチンにより投与されると同一の抗原を含有する若しくは送達することが可能な有効量の増強組成物を使用して成し遂げる。該増強組成物は、同一ウイルス供給源(例えば本発明のアデノウイルス配列)若しくは別の供給源由来の組換えウイルスベクターから構成しうる。あるいは、「増強組成物」は、プライミングDNAワクチンにコードされると同一の抗原をしかしタンパク質若しくはペプチドの形態で含有する組成物であり得、この組成物が宿主中で免疫応答を誘導する。別の態様において、増強組成物は、哺乳動物細胞中でのその発現を指図する制御配列の制御下に抗原をコードするDNA配列、例えば公知の細菌若しくはウイルスベクターのようなベクターを含有する。増強組成物の主要件は、該組成物の抗原がプライミング組成物によりコードされるものと同一の抗原若しくは交差反応性抗原であることである。
【0134】
別の態様において、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターは多様な他の免疫化および治療レジメンでの使用にもまた良好に適
する。こうしたレジメンは、異なる血清型キャプシドのAdベクターと同時若しくは連続してのSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターの送達、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターをAd以外のベクターと同時若しくは連続送達するレジメン、SAdV−39、SAdV−25.2、−30、−37若しくは−38ベクターをタンパク質、ペプチドおよび/または他の生物学的に有用な治療若しくは免疫原性化合物と同時若しくは連続送達するレジメンを必要としうる。こうした用途は当業者に容易に明らかであろう。
【0135】
なお別の態様において、本発明は、これらのウイルスのキャプシド(場合によっては無傷の若しくは組換えのウイルス粒子若しくは空のキャプシド)の使用を提供するが、アデノウイルスSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38を被験体に送達することによる、免疫調節効果応答を誘導するまたは別の有効成分に対する細胞傷害性T細胞応答を高める若しくは補助するのに使用される。SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38キャプシドは単独で、若しくはそれに対する免疫応答を高めるための有効成分を含む併用レジメンで送達し得る。有利には、所望の効果はサブグループEアデノウイルスに宿主を感染させることなく成し遂げ得る。別の局面において、被験体にSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38キャプシドを送達することを含んでなる、それの必要な被験体におけるインターフェロンα産生の誘導方法が提供される。なお別の局面において、培養物中での1種若しくはそれ以上のサイトカイン(例えばIFN−α)/ケモカインの産生方法が提供される。本方法は、とりわけαインターフェロンを包含するサイトカイン/ケモカインを産生するのに適する条件下で、樹状細胞および本明細書に記述されるSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38キャプシドを含有する培養物をインキュベートすることを必要とする。
【0136】
そのように産生されるサイトカインは多様な応用で有用である。例えば、IFNαの場合、本明細書に記述される製造は、それが細菌中で産生されるIFNαの1若しくは2サブタイプのみを含有する商業的に入手可能な組換え製造したIFNαを上回る利点を提供することができると考えられるため、とりわけ望ましい。対照的に、該方法は、より広範な作用範囲をもたらすと期待される複数のサブタイプの天然のヒトIFNαを産生することが予期される。各サブタイプが特定の一生物学的活性を使用すると考えられる。さらに、本明細書に提供される方法により製造される天然のインターフェロンが患者の天然に産生されるインターフェロンと免疫学的に識別不可能であることができ、それにより、通常組換え製造したインターフェロンに対する中和抗体の形成により引き起こされる被験体の免疫系により拒絶される薬物の危険性を低下させることが予期される。
【0137】
以下の実施例は、SAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38のクローニングおよび例示的組換えSAdV−39、SAdV−25.2、−26、−30、−37若しくは−38ベクターの構築を具体的に説明する。これらの実施例は具体的説明のみであり、そして本発明の範囲を制限しない。
【実施例1】
【0138】
サルアデノウイルスの単離。
糞便サンプルは、ルイジアナ大学ニューイベリア研究センター(University
of Louisiana New Iberia Research Center)、4401 W.Admiral Doyle Drive,New Iberia,Louisiana,USAのチンパンジーのコロニー、およびテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターマイケル・E.キーリング比較医学研究センター(Michael E.Keeling Center for Comparative Medicine and Research,University of Texas M.D
.Anderson Cancer Center)、Bastrop,Texas,USAのチンパンジーのコロニーから得た。ハンクス緩衝塩類溶液の懸濁液中のチンパンジー糞便サンプルからの上清を0.2ミクロンシリンジフィルターを通して除菌した。各濾過したサンプル100μlをヒト細胞株A549培養物に接種した。これらの細胞を、10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシンおよび50μg/mlゲンタマイシンを含むハムF12中で増殖させた。培養約1ないし2週後に数回の接種を伴う細胞培養物で視覚的細胞変性効果(CPE)が明らかであった。該アデノウイルスを、アデノウイルス精製のための標準的な公表された塩化セシウム勾配技術を使用して、A549細胞中の培養物から精製した。精製したアデノウイルスからのDNAを単離し、そしてQiagen Genomic services、独国ヒルデンにより完全に配列決定された。
【0139】
ウイルスDNA配列の系統発生分析に基づき、サルアデノウイルス25.2(SAdV−25.2)、サルアデノウイルス26(SAdV−26)、サルアデノウイルス30(SAdV−30)、サルアデノウイルス37(SAdV−37)、サルアデノウイルス38(SAdV−38)およびサルアデノウイルス39(SAdV−39)と呼称されるアデノウイルスが、ヒトサブグループEと同一のサブグループにあることを決定した。
【0140】
配列分析は、SAdV−26のヘキソンに対する最も緊密なヘキソンの一致がチンパンジーアデノウイルス6(98.4%の同一性)であり、また、最も緊密なファイバーの一致がヒトアデノウイルス4(93%の同一性)であることを示した。
【0141】
配列分析は、SAdV25.2ウイルスの最も緊密なゲノムの一致がサル(チンパンジー)アデノウイルス25(Genbank受託番号AC000011)であることを示した。SAdV25は以前C68若しくはPan9と命名されていた(米国特許第6083716号明細書)。核酸レベルで、SAdV25.2とSAdV25の間にベクターNTI−AlignXにより決定されるところの94%の同一性が存在する。ヘキソン(アミノ酸)レベルで、SAdV−25.2は2個の保存的アミノ酸変化および2個の非保存的変化を伴いサルアデノウイルス25に対する99%の同一性を有する。以下の表は、配列番号140にこれとともに提供されるSAdV25.2のヘキソンを参照してSAdV25ヘキソン配列と比較したSAdV25.2中のアミノ酸変化を示す。双方の配列の番号付けは同一である。
【0142】
【表3】
【0143】
該ベクターを創製するのに使用した方法論は、全E1欠失アデノウイルスベクターの細菌プラスミド分子クローンを最初に創製すること、次いで該ウイルスベクターをレスキューするためのE1補完細胞株HEK 293への該プラスミドDNAのトランスフェクションであった。
【0144】
E1欠失アデノウイルスベクターの分子クローンを創製するために、まれに切断する(
rare−cutting)制限酵素I−CeuIおよびPI−SceIの認識部位がE1欠失の代わりに挿入されているE1欠失アデノウイルスのプラスミド分子クローンを最初に創製した。I−CeuIおよびPI−SceIにより隣接されかつこれらの制限酵素を使用して切り出される発現カセットを、該E1欠失アデノウイルスプラスミドクローンに連結した。E1欠失の代わりに所望の発現カセットを持つプラスミドアデノウイルス分子クローンを、該組換えアデノウイルスベクターをレスキューするためにHEK 293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後のレスキューは、制限酵素消化により該プラスミドから直鎖状アデノウイルスゲノムを最初に放出することにより促進されることが見出された。
【実施例2】
【0145】
標準的分子生物学技術を使用するSAdV−39、SAdV−25.2、SAdV−26、SAdV−30、SAdV−37若しくはSAdV−38に基づくE1欠失プラスミド分子クローンの構築
【0146】
A.SAdV−39のベクター構築
SAdV−39(サブグループE)を使用するE1欠失ベクターを記述されるとおり製造した。
【0147】
1.pSR3の構築:
SwaI部位により隣接されるSmaI、HindII、EcoRV部位を含有するリンカーを、後に続くとおり、EcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化した。
オリゴマー、配列番号196:SV25 Top:AATTATTTAAATCCCGGGTATCAAGCTTGATAGATATCATTTAAATおよび配列番号197:SV25 Bot TAATTTAAATGATATCTATCAAGCTTGATACCCGGGATTTAAATを一緒にアニーリングしてリンカーを創製した。
【0148】
2.SAdV−39ウイルス左端のHindIII部位(7152)へのクローニング
ウイルスDNAをHindIIIで消化し、そして、7152bpの左端フラグメントを、SmaIおよびHindIIIで消化したpSR3にクローン化してpSR3 C39 LEを生じた。
【0149】
3.E1機能欠失ならびにI−CeuIおよびPI−SceI部位の挿入:
プラスミドpC39LEをSnaBIおよびNdeI(クレノウ充填した)の間で欠失してE1aおよびE1bコーディング領域の大部分を除去し;その場所にDNAフラグメント(I−CeuIおよびPI−SceIの部位を持つpBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメント)を連結してpC39LEIPを生じた。
【0150】
4.NheI部位(35779)からのSAdV−39ウイルス右端のクローニング。
SAdV−39ウイルスDNAをNheIで消化し、そして775bpの右端フラグメントをEcoRVとNheIの間でpC39LEIPにクローン化してpC39LE IP REを生じた。
【0151】
5.SAdV−39ウイルスNheI(3033−35779)フラグメントのクローニング
プラスミドpC37−LE−IP−REをHindIIIで消化し、そして32746bpのウイルスNheIフラグメントを連結した。正しい向きをもつクローンをpC39
IPと呼んだ。
【0152】
B.標準的分子生物学技術を使用するSAdV−25.2に基づくE1欠失プラスミド分子クローンの構築
SAdV−25.2(サブグループE)を使用するE1欠失ベクターを記述されるとおり製造した。
【0153】
1.pSR6の構築:
PacI部位により隣接されるSmaI、AscI、AvrII、EcoRV部位を含有するリンカーを、後に続くとおりEcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化する。
オリゴマー、配列番号198:pSR6 top:AATTTTAATTAACCCGGGTATCGGCGCGCCTTAACCTAGGGATAGATATCTTAATTAAおよび配列番号199:pSR6 bot:TATTAATTAAGATATCTATCCCTAGGTTAAGGCGCGCCGATACCCGGGTTAATTAAを一緒にアニーリングしてリンカーを創製した。
【0154】
2.AscI部位(7959)までのウイルス左端のクローニング
ウイルスDNAをAscIで消化し、そして7959bpの左端フラグメントをSmaIおよびAscIで消化したpSR6にクローン化してpSR5 C25.2 LEを生じた。
【0155】
3.E1機能欠失ならびにI−CeuIおよびPI−SceI部位の挿入:
プラスミドpSR5 C25.2 LEをSnaBI+NdeIで消化し;NdeI部位をクレノウで充填した。pBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメントを連結してpSR5 C25.2 LE IPを創製した。
【0156】
4.XbaI部位(30071)からのウイルス右端のクローニング:
プラスミドpSR5 C25.2 LE IPをXbaI+EcoRVで消化した。SAdV−25.2 DNAからの6559bpの右端(XbaI消化物)フラグメントを連結してpAdC12−LE−IP−REを創製した。
【0157】
5.ウイルス中央XbaIフラグメント(6037−30071)のクローニング
プラスミドpAdC12−LE−IP−REをXbaIで消化した。SAdV−25.2 DNAからの24034bpのフラグメントを連結してpAdC25.2 IPを創製した。
【0158】
C.標準的分子生物学技術を使用するSAdV−26に基づくE1欠失プラスミド分子クローンの構築
SAdV−26(サブグループE)を使用するE1欠失ベクターを記述されるとおり製造した。
【0159】
1.pSR5の構築:
SwaIにより隣接されるSmaI、ClaI、XbaI、SpeI、EcoRV部位を含有するリンカーを、EcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化する。
合成オリゴヌクレオチドSV39T、配列番号194 AATTATTTAAATCCCGGGGATCATCGATGATCTCTAGAGATCACTAGTCTAGGATATCATTTAAAおよびSV39B、配列番号195 TATTTAAATGATATCCTAGACTAGTGATCTCTAGAGATCATCGATGATCCCCGGGATTTAAATをアニーリングしてリンカーを創製した。
【0160】
2.XbaI部位(6029)までのウイルス左端のクローニング
ウイルスDNAをXbaIで消化しかつ6kbのフラグメント(左および右端)をゲル精製し、そしてSmaIおよびXbaIで消化したpSR5に連結した。
【0161】
3.E1機能欠失ならびにI−CeuIおよびPI−SceI部位の挿入:
プラスミドpSR5−C12−LEをSnaBI+NdeIで消化し;NdeI部位をクレノウで充填した。pBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメントを連結してpAdC12−LE−IPを創製した。
【0162】
4.XbaI部位(30158)からのウイルス右端のクローニング
プラスミドpAdC12−LE−IPをXbaI+EcoRVで消化した。SAdV−26 DNAからの6471bpの右端(XbaI消化物)フラグメントを連結してpAdC12−LE−IP−REを創製した。
【0163】
5.ウイルス中央XbaIフラグメント(6029−30158)のクローニング
プラスミドpAdC12−LE−IP−REをXbaI+EcoRVで消化した。SAdV−26 DNAからの24129bpのフラグメントを連結してpC26 IPを創製した。
【0164】
D.SAdV−30のベクター構築
SAdV−30(サブグループE)を使用するE1欠失ベクターを記述されるとおり製造した。
【0165】
1.pSR3の構築:
SwaI部位により隣接されるSmaI、HindII、EcoRV部位を含有するリンカーを、後に続くとおりEcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化した。
オリゴマー、配列番号196:SV25 Top:AATTATTTAAATCCCGGGTATCAAGCTTGATAGATATCATTTAAATおよび配列番号197:SV25 Bot:TAATTTAAATGATATCTATCAAGCTTGATACCCGGGATTTAAATを一緒にアニーリングしてリンカーを創製した。
【0166】
2.HindIII部位(7146)までのウイルス左端のクローニング
ウイルスDNAをHindIIIで消化し、そして7146bpの左端フラグメントをSmaIおよびHindIIIで消化したpSR3にクローン化してpSR3 C30 LEを生じた。
【0167】
3.E1機能欠失ならびにI−CeuIおよびPI−SceI部位の挿入:
プラスミドpSR3C30 LEをSnaBI+NdeIで消化し;NdeI部位をクレノウで充填した。pBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメントを連結してpC30 LE IPを創製した。pC30 LE IPをEcoRIで消化すること、クレノウポリメラーゼでオーバーハングを充填すること、および再連結することにより、内部EcoRI部位(左ITRの最初から1040bpの位置)を破壊した。これはプラスミドpC30 LE IP(EcoRI del)を生じた。
【0168】
4.HindIII部位(33048)からのウイルス右端のクローニング:
プラスミドpC30 LE IP(EcoRI del)をHindIII+EcoRVで消化した。SAdV−30 DNAからの3574bpの右端(HindIII消化物)フラグメントを連結してpC30−LE−IP−REを創製した。
【0169】
5.ウイルス中央XbaI(6035)ないしEcoRI(33631)フラグメントのクローニング
プラスミドpC30−LE−IP−REをXbaI+HindIIIで消化した。SAdV−30 DNAからの27596bpのフラグメントを連結してpC30 IPを創製した。
【0170】
E.SAdV−37のベクター構築
SAdV−37(サブグループE)を使用するE1欠失ベクターを記述されるとおり製造した。
【0171】
1.pSR3の構築:
SwaI部位により隣接されるSmaI、HindII、EcoRV部位を含有するリンカーを、後に続くとおりEcoRIおよびNdeIで切断したpBR322にクローン化した。オリゴマー:配列番号196:SV25 Top:AATTATTTAAATCCCGGGTATCAAGCTTGATAGATATCATTTAAATおよび配列番号197:SV25 Bot:TAATTTAAATGATATCTATCAAGCTTGATACCCGGGATTTAAATを一緒にアニーリングしてリンカーを創製した。
【0172】
2.HindIII部位(7147)までのSAdV−37ウイルス左端のクローニング
ウイルスDNAをHindIIIで消化し、そして7147bpの左端フラグメントをSmaIおよびHindIIIで消化したpSR3にクローン化してpSR3 C37 LEを生じた。
【0173】
3.E1機能欠失ならびにI−CeuIおよびPI−SceI部位の挿入:
プラスミドpSR3 C37LEをSnaBIとNdeI(クレノウ充填した)の間で欠失させてE1aおよびE1bコーディング領域の大部分を欠失させ;その場所にDNAフラグメント(I−CeuIおよびPI−SceIの部位を持つpBleuSK I−PIからのEcoRVフラグメント)を連結してpSR3 C37 LE IPを生じた。
【0174】
4.HindIII部位(33048)からのSAdV−37ウイルス右端のクローニング
プラスミドpC37 LE IPをHindIII+EcoRVで消化した。SAdV−37 DNAからの3575bpの右端(HindIII消化物)フラグメントを連結してpC37−LE−IP−REを創製した。
【0175】
5.SAdV−37ウイルスHindIII(23522−33060)フラグメントのクローニング
プラスミドpC37−LE−IP−REをHindIIIで消化し、そして9538bpのウイルスHindIIIフラグメントを連結した。正しい向きをもつクローンをpC37 del Xba Pacと呼んだ。
【0176】
6.SAdV−37ウイルスXbaI(6036)PacI(30181)フラグメントのクローニング
プラスミドpC37 del Xba PacをXbaIおよびPacIで消化し、そして24145bpのウイルスのXbaI−PacIフラグメントを連結してpC37IPを生じた。
【0177】
F.E1欠失アデノウイルスベクターの構築
E1欠失の代わりにI−CeuIおよびPI−SceI認識部位を持つDNAセグメントを挿入するため、プラスミドpBleuSK I−PIを使用した。プラスミドpBl
euSK I−PIはpBluescript II SK(+)(Stratagene)のEcoRV部位に挿入された654bpのフラグメントを含有する。該654bpセグメントはまれに切断する制限酵素I−CeuIおよびPI−SceIの認識部位を持つ。E1欠失の代わりにI−CeuIおよびPI−SceI認識部位を持つDNAセグメントを挿入するため、pBleuSK I−PIをEcoRVで消化し、そして654bpフラグメントをアデノウイルスゲノムE1欠失の場所に連結した。EcoRV認識部位により隣接される挿入されたDNAの配列を下に示す。I−CeuIおよびPI−SceIの認識配列に下線を付ける。
【0178】
配列番号200:
GATATCATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACG
TAACTATAACGGTCCTAAGGTAGCGAAAGCTCAGATCTCCCGATCCCCTATGGTGCACTCTCAGTACAATCTGCTCTGATGCCGCATAGTTAAGCCAGTATCTGCTCCCTGCTTGTGTGTTGGAGGTCGCTGAGTAGTGCGCGAGCAAAATTTAAGCTACAACAAGGCAAGGCTTGACCGACAATTGCATGAAGAATCTGCTTAGGGTTAGGCGTTTTGCGCTGCTTCGCGATGTACGGGCCAGATATACGCGGTACGAAACCGCTGATCAGCCTCGACTGTGCCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTTGTTTGCCCCTCCCCCGTGCCTTCCTTGACCCTGGAAGGTGCCACTCCCACTGTCCTTTCCTAATAAAATGAGGAAATTGCATCGCATTGTCTGAGTAGGTGTCATTCTATTCTGGGGGGTGGGGTGGGGCAGGACAGCAAGGGGGAGGATTGGGAAGACAATAGCAGGCATGCTGGGGATGCGGTGGGCTCTATGGCTTCTGAGGCGGAAAGAACCAGCAGATCTGCAGATCTGAATTC
ATCTATGTCGGGTGCGGAGAAAGAGGTAATGAAATGGCATTATGGGTATTATGGGTCTGCATTAATGAATCGGCCAGATATC
【0179】
インフルエンザウイルス核タンパク質を発現するE1欠失アデノウイルスベクターを構築するため、H1N1 A型インフルエンザウイルスNP(A/Puerto Rico/8/34/Mount Sinai、GenBank受託番号AF389119.1)をコードするヌクレオチド配列を、コドン最適化しかつ完全合成した(Celtek Genes、テネシー州ナッシュビル)。ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーター、合成イントロン(プラスミドpCI(Promega、ウィスコンシン州マディソン)、コドン最適化したA型インフルエンザNPコーディング配列およびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルから構成される発現カセットを構築した。該プラスミドpShuttle CMV PI FluA NPは、それがそれぞれまれに切断する制限酵素I−CeuIおよびPI−SceI(New England Biolabs)の認識部位により隣接されている上述された発現カセットを持つ。E1欠失アデノウイルスベクターの分子クローンを創製するため、まれに切断する制限酵素I−CeuIおよびPI−SceIの認識部位がE1欠失の代わりに挿入されたE1欠失アデノウイルスのプラスミド分子クローンを、本実施例の先行する部分に記述されるとおり創製した。該E1欠失アデノウイルスプラスミドをその後I−CeuIおよびPI−SceIで消化し、そして発現カセット(同一酵素により消化した)を連結した。生じるアデノウイルスプラスミド分子クローンを、組換えアデノウイルスベクターをレスキューするためHEK 293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション後のレスキューは、制限酵素消化により該プラスミドから直鎖状アデノウイルスゲノムを最初に放出することにより促進されることが見出された。
【実施例3】
【0180】
交差中和抗体の評価
野生型SAdV−39、SAdV−25.2、SAdV−26、SAdV−30、SAdV−37およびSAdV−38を、直接免疫蛍光によりモニターされる感染阻害中和抗体アッセイを使用して、ヒトアデノウイルス5(亜種C)およびチンパンジーアデノウイルス7(SAdV−24)ならびにヒトプールIgGと比較して交差中和活性について評価した。ヒトプールIgG(Hu Pooled IgG)は商業的に購入され、そして一般ヒト集団が曝露される多数の抗原に対する抗体をそれが含有するために、免疫無防備状態の患者での投与に承認されている。ヒトプールIgGについてのサルアデノウイルスに対する中和抗体の存在若しくは非存在は、一般集団におけるこれらのアデノウイルスに対する抗体の頻度の反映である。
【0181】
該アッセイは後に続くとおり実施した。HAdV−5若しくはSAdV−24を事前に注入したウサギから得た血清サンプルを56℃で35分間熱不活性化した。野生型アデノウイルス(10
8粒子/ウェル)を無血清ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で希釈し、そしてDMEM中の熱不活性化血清サンプルの2倍連続希釈と37℃で1時間インキュベートした。その後、血清とアデノウイルスの混合物を105単層A549細胞を含むウェル中でスライドガラスに添加した。1時間後に各ウェル中の細胞に100μlの20%ウシ胎児血清(FBS)−DMEMを補充しかつ5%CO
2中37℃で22時間培養した。次に、細胞をPBSで2回すすぎ、そしてパラホルムアルデヒド中の固定(4%、30分)および0.2%Triton中の透過処理(4℃、20分)後に、DAPI、およびHAdV−5に対し生じさせたヤギのFITC標識した広範に交差反応性の抗体(Virostat)で染色した。感染のレベルはFITC陽性細胞の数を顕微鏡下に計数することにより決定した。NAB力価はアデノウイルス感染をナイーブ血清対照と比較して50%若しくはそれ以上阻害する最高血清希釈として報告する。<1/20という力価値が示される場合、中和抗体濃度は検出限界すなわち1/20より下であった。
【0182】
【表4】
【0183】
これらのデータは、一般集団にこれらのアデノウイルスに対する最低限度の免疫反応性が存在することを示す。これらのデータは、さらに、HAdV−5およびSAdV−24と交差反応しない先行する表中のサルアデノウイルスを、アデノウイルスの連続送達を必要とするレジメン、例えばプライム−ブースト若しくは癌治療で使用しうることを示す。
【実施例4】
【0184】
サイトカイン誘導
形質細胞様樹状細胞をヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、そして96ウェルプレート中の培地中で培養しそしてアデノウイルスに感染させた。48時間後に細胞を遠心沈殿しかつ上清を収集し、そしてインターフェロンαの存在について分析した。
【0185】
より具体的には、PBMCをペンシルベニア大学のAIDS研究センター(Center For AIDS Research:CFAR)免疫学コア(immunology core)から得た。これらの細胞三百万をその後、Miltenyi Biotecからの「ヒト形質細胞様樹状細胞単離キット」を、該キットと一緒に提供される説明書に従って使用して形質細胞様樹状細胞(pDC)を単離するのに使用した。このキットを使用する単離は、PBMCからpDCを除く全部の他の細胞型を除去することに基づいた。
【0186】
最終細胞数は通常ドナーごとに変動するがしかし0.4〜0.7百万細胞からの範囲にある。従って、生成されたデータ(下で論考する)は複数ドナーからの細胞の分析に由来する。とは言え、驚くべきことに、インターフェロン若しくは他のサイトカイン放出に基づくサブグループの分離は、複数ドナーからの細胞を分析する場合でさえ維持される。
【0187】
細胞を、L−グルタミン、10%ウシ胎児血清(Mediatech)、10mM Hepes緩衝溶液(Invitrogen)、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびゲンタマイシン−Mediatechから)ならびにヒトインターロイキン3(20ng/mL−R&D)を補充したRPMI−1640培地(Mediatech)中で培養した。野生型アデノウイルスを10,000の感染多重度(MOI)(10
6細胞/mlの濃度で細胞あたり10,000ウイルス粒子)で細胞に直接添加した。48時間後に細胞を遠心沈殿しそして上清をインターフェロンの存在についてアッセイした。PBL Biomedical Laboratoriesからの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)キットを使用して、製造元からの推奨されるプロトコルを使用してサイトカインを測定した。
【0188】
該研究は、サブグループCアデノウイルスが検出可能な量のIFNαを産生しなかったことを示した(該アッセイは1250pg/mLの検出限界を有する)。対照的に、サブグループEアデノウイルスの全部の試験したメンバーはIFNαを産生し、そして、全般としてサブグループBアデノウイルスに比較して有意により多いIFNαを産生した。
【0189】
多様な他のサイトカインもまたアデノウイルスのスクリーニングで検出された。しかしながら、一般に、サブグループEアデノウイルスは、サブグループCアデノウイルスより有意により高レベルのIL−6、RANTES、MIP−1α、TNF−α、IL−8およびIP−10を産生した。サブグループBアデノウイルスもまたIFNα、IL−6、RANTESおよびMIP1αの誘導においてサブグループCアデノウイルスを凌いだ。
【0190】
本研究で有意の細胞溶解が観察されなかったため、これは、感染に関係なく、また、いずれかの有意の量のウイルス複製の非存在下で細胞をサブグループEアデノウイルスと接触させることにより、該サイトカインが産生されることを示唆する。
【0191】
別の研究(示されない)において、細胞を空のC7キャプシドタンパク質(AdサブグループE)若しくはUV不活性化アデノウイルスC7ウイルスベクター(UV不活性化は架橋を引き起こしてアデノウイルス遺伝子発現を排除する)いずれかと上述されたとおりインキュベートした。これらの研究で、無傷のC7と比較して同一若しくはより高レベルのIFNαが空のキャプシドおよび不活性化ウイルスベクター双方について観察された。
【0192】
発明者は、PBMC、PBLおよび樹状細胞のようなサイトカイン産生細胞若しくはケ
モカイン産生細胞をサブグループEのアデノウイルスのメンバーからのキャプシドに曝露することが、サイトカイン、およびとりわけIFNα、若しくはケモカインを、他のアデノウイルスサブグループにより誘導されるよりも有意に多い量で誘導することを見出した。従って、このサブグループのメンバーは、αインターフェロンおよびより少量で多数の他のサイトカイン/ケモカインを培養物中で誘導するのに有用である。
【0193】
IFNαの場合、該製造方法は、それが組換え製造したIFNαを上回って有利であると考えられるため、とりわけ望ましい。対照的に、本明細書に提供される方法は、より広範な作用範囲をもたらすと期待される複数のサブタイプの天然のヒトIFNαを産生することが予期される。各サブタイプが特異的生物学的活性を使用すると考えられる。さらに、本明細書に提供される方法により製造される天然のインターフェロンが患者の天然に産生されるインターフェロンと免疫学的に識別不可能であることができ、それにより、通常組換え製造したインターフェロンに対する中和抗体の形成により引き起こされる患者の免疫系により拒絶される薬物の危険性を低下させることが予期される。
【0194】
サブグループEアデノウイルスにより産生される他のサイトカインは、インターロイキン(IL)−6、IL−8、IP−10、マクロファージ炎症性タンパク質−1α(MIP−1α)、RANTESおよび腫瘍壊死因子αを包含する。これらのサイトカイン/ケモカインの培養物からの精製方法およびこれらのサイトカイン/ケモカインの治療的若しくは補助的用途は文献に記述されている。さらに、商業的に入手可能なカラム若しくはキットを、本発明により製造されるサイトカイン/ケモカインの精製に使用しうる。本発明を使用して製造されるサイトカイン/ケモカインは多様な適応症での使用のため処方しうる。
【0195】
例えば、本明細書に記述されるサイトカインは、インターフェロンα(IFNα)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IP−10(インターフェロンγ誘導タンパク質)、インターロイキン−6(IL−6)およびIL−8を包含する。IFNαは、インフルエンザ、肝炎(例えばBおよびC型肝炎を包含する)ならびに多様な新生物、例えば腎(腎細胞癌)、黒色腫、悪性腫瘍、多発性骨髄腫、カルチノイド腫瘍、リンパ腫および白血病(例えば慢性骨髄性白血病およびヘアリーセル白血病)の処置に有用であるとして記述されている。本明細書に記述されるとおり製造されるIFNαサブタイプの混合物は既知技術を使用して精製し得る。例えばモノクローナル抗体およびカラム精製の使用を記述する第WO
2006/085092号明細書を参照されたい。他の技術は文献に記述されている。
【0196】
本明細書に記述されるとおり製造されるIFNαは既知の方法を使用して精製し得る。例えば、米国特許第4,680,260号明細書、米国特許第4,732,683号明細書およびG.Allen、Biochem J.、207:397−408(1982)を参照されたい。TNFαは、例えば乾癬および関節リウマチを包含する自己免疫障害での処置に有用であるとして記述されている。IP−10すなわちインターフェロンγ誘導タンパク質は、血管新生の強力な阻害剤としておよび強力な胸腺依存性抗腫瘍効果を有するために使用し得る。
【0197】
従って、なお別の局面において、サイトカインを産生するのに適する条件下で樹状細胞を含有する培養物およびサブグループEアデノウイルスキャプシドをインキュベートすることによるIFNαの製造方法が提供される。
【0198】
一態様において、血液を健康ドナー(好ましくはヒト)から取り出し、そして末梢血白血球(PBL)若しくは末梢血単核細胞(PBMC)を既知技術を使用して調製する。一態様において、PBLを本発明の方法に従ってサイトカイン産生細胞として使用する。別の態様において、PBMCをサイトカイン産生細胞として使用する。別の態様において、
形質細胞様樹状細胞を、既知技術を使用して、例えば商業的に入手可能なキットすなわちMiltenyi Biotec GmbH(独国)による「ヒト形質細胞様樹状細胞単離キット」を使用してPBL若しくはPBMCから単離する。選択された細胞を適切な培地およびアデノウイルスサブグループEキャプシドタンパク質とともに懸濁液中で培養する。適切な培地は当業者により容易に決定され得る。しかしながら、一態様において培地はRPMI−1640培地である。あるいは他の培地を容易に選択しうる。
【0199】
細胞を適する容器、例えばマイクロタイターウェル、フラスコ若しくはより大きな容器中で培養しうる。一態様において、細胞の濃度は培地1mLあたり約100万細胞である。しかしながら、他の適する細胞濃度が当業者により容易に決定されうる。
【0200】
有利には、本発明はプライマーとしてのインターフェロンの使用を必要としない。しかしながら、所望の場合は、培地は細胞増殖を刺激するために適するサイトカインIL−3を包含しうる。適する一濃度は約20ng/mLである。しかしながら他の濃度を使用しうる。
【0201】
一態様において、アデノウイルスキャプシドタンパク質を細胞を含有する培地に導入する。該アデノウイルスキャプシドタンパク質は本明細書に記述される形態(例えば、空のキャプシド粒子を包含するウイルス粒子、AdサブグループEキャプシドを有するウイルスベクターなど)のいずれかで培養物に送達し得る。典型的には、キャプシドタンパク質は適する担体、例えば培地、生理的食塩水などに懸濁することができる。
【0202】
適しては、アデノウイルスサブグループEのキャプシドを細胞あたり約100ないし100,000アデノウイルスサブグループE粒子の量で培養物に添加する。該混合物をその後、例えば約28℃ないし約40℃の範囲で、約35℃から約37℃までの範囲で、若しくは約37℃でインキュベートする。
【0203】
典型的には、およそ12ないし96時間若しくは約48時間後に細胞を遠心沈殿しそして上清を収集する。適しては、細胞溶解を回避する条件下でこれを実施して、それにより上清中の細胞破片の存在を低下若しくは排除する。遠心分離は細胞からのサイトカインの分離を可能にしてそれにより粗に単離されたサイトカインを提供する。サイジングカラム(sizing column)ならびに他の既知のカラムおよび方法が、アデノウイルスおよびアデノウイルスキャプシドなどからのサイトカインのさらなる精製に利用可能である。
【0204】
そのように精製されるこれらのサイトカインは製剤および多様な応用での使用に利用可能である。
【0205】
本明細書に記述されるとおり、および理論により拘束されることなく、アデノウイルスサブグループEの免疫増強および/若しくはサイトカイン産生能力は、アデノウイルス粒子の感染性若しくは複製能力に関係なく、細胞とアデノウイルスキャプシドの間の接触に基づくようである。従って、一態様において、空のアデノウイルスサブグループE粒子(すなわち、いずれかのアデノウイルス若しくは導入遺伝子産物を発現するその中にパッケージングされたDNAを有しないアデノウイルスキャプシド)を細胞に送達する。別の態様において、非感染性の野生型サブグループE粒子若しくはアデノウイルスサブグループEキャプシド(粒子)中にパッケージングされた組換えアデノウイルスベクターを使用する。こうしたウイルス粒子の適する不活性化技術は当該技術分野で既知であり、そして例えばUV照射(ゲノムDNAを効果的に架橋して発現を予防する)を制限なしに包含しうる。
【0206】
上で列挙される全部の文書は引用することにより本明細書に組み込まれる。多数の改変および変形が上で同定された明細の範囲に包含され、そして当業者に明らかであることが期待される。多様なミニ遺伝子の選択またはベクター若しくは免疫調節物質の選択若しくは投与量のような、組成物および方法に対するこうした改変および変化は、これに付随される請求の範囲の範囲内にあると考えられる。