(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来技術では、アクセルペダルに操作反力を付加するとアクセルペダル踏力増加の勢いによってアクセルペダルが跳ね返されて押し戻される現象が起こるため、操作反力を増減させるアクセル開度閾値を変えることでアクセルペダルのばたつきを抑制させる対策が行われている。この場合、操作反力付加アクセル開度閾値と操作反力解除アクセル開度閾値とのアクセル開度差をある程度大きくすることが必要であり、燃費向上可能なアクセル開度(エコドライブポイント)を運転者へ認識させるのが難しいという問題がある。
【0005】
本発明者らは、アクセルペダルへ操作反力を付加する際のアクセルペダルの挙動に注目し、鋭意研究を重ねた結果、後述のように、アクセルペダルに操作反力を付加した際にアクセルペダルの踏み込み時及び戻り時において、同じストローク量で同じ操作反力を付加しても異なる反力感を得ることが分かった。
【0006】
図7は、反力付加制御機構によって操作反力を増加していないアクセルペダルの基本的な踏力特性(以下、基本踏力特性F0と称す)を示している。アクセルペダルを踏み込んでアクセル開度が大きくなる踏み込み方向(矢印A)とアクセルペダルを戻してアクセル開度が小さくなる戻し方向(矢印B)とで適度なヒステリシス特性(ヒステリシス量ΔF)を有し、同一のアクセル開度であっても踏み込み方向の操作反力Fの方が戻し方向の操作反力Fよりも大きくなるように設定されている。このように適度なヒステリシス特性を有することで、アクセルペダルを踏み込む力が多少変化しても、ヒステリシス量ΔFの幅があるため、一定のアクセル開度を維持することが容易になる。
【0007】
図8(a)〜(c)には、基本踏力特性F0の基本踏力特性線が点線で、基本踏力特性F0に反力付加制御機構によって操作反力とする調整力ΔFaが付加された状態の操作反力特性線(以下、増加操作反力Fiと称す)が実線で示されている。反力付加制御機構によって調整力ΔFa(操作反力)が付加されると、調整力ΔFa(操作反力)が付加される前のアクセルペダルの操作方向が踏み込み方向、戻し方向、停止時のいずれであっても、増加操作反力Fiの操作反力特性線の戻し方向(矢印B’)の操作反力特性線に移行される。運転者が操作反力に対して、更にアクセルペダルを踏み続けΔFb以上の踏力が付加される場合には、増加操作反力Fiの操作反力特性線の踏み込み方向(矢印A’)の操作反力特性線に移行される。従って、操作反力付加後に運転者がΔFb以上の踏力をアクセルペダルに付加しない限りは、アクセルペダルの操作方向が踏み込み方向(矢印A)である時に、基本踏力特性F0に反力付加制御機構によって調整力ΔFaが付加されると、
図8(a)に示すように、操作反力Fが(ΔFa−ΔF)分増加される。また、アクセルペダルの操作方向が戻し方向(矢印B)である時に、基本踏力特性F0に反力付加制御機構によって調整力ΔFaが付加されると、
図8(b)に示すように、操作反力Fが(ΔFa)分増加される。さらに、アクセルペダルの操作方向が停止時に、基本踏力特性F0に反力付加制御機構によって調整力ΔFaが付加されると、
図8(c)に示すように、アクセルペダルを踏み込む力に応じて、操作反力Fが(ΔFa−ΔF)〜(ΔFa)の範囲で増加される。このように、ヒステリシス特性の影響で、アクセルペダルの操作方向によって操作反力Fの増加量が(ΔFa−ΔF)〜(ΔFa)の範囲で変化することになる。
【0008】
前述のように、アクセルペダルに同じストローク量で同じ操作反力を加えても操作者は同じ反力感を得られない。したがって、操作者がエコドライブポイントを認識しようとすると、操作者は違和感を得ることになり、操作性が悪くなってしまう。特に、エコドライブ(燃費向上)を目的としたアクセルペダルとしては、アクセルペダルのばたつきを助長する要因となってしまい、燃費向上を阻害し、本来の目的が達成されない。
【0009】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヒステリシスを有する踏力特性をもつアクセルペダル装置において、操作者にエコドライブポイントを明確に告知できるとともに、操作反力発生に伴う操作フィーリングの悪化を防止することができるアクセルペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、請求項1記載のアクセルペダル装置は、アクセルペダルと、踏み込み方向
の踏力が戻り方向
の踏力よりも大きい
ヒステリシス特性を有する基本踏力特性を
前記アクセルペダルの操作に対して付与するヒステリシス発生機構
とを備えるアクセルペダル装置において、
上位装置からの調整力指令に基づいて前記基本踏力特性に付加する調整力を発生させる反力付加制御機構と、前記アクセルペダルの動きが踏み込み方向か戻り方向かを検出する動作検出手段とを具備し、前記反力付加制御機構は、
前記上位装置からの前記調整力指令時に、前記動作検出手段によって前記アクセルペダルの動きが前記踏み込み方向であると検出されている場合には、前記ヒステリシス発生機構により発生するヒステリシス量以下の
前記調整力を前記基本踏力特性に付加して、前記基本踏力特性に前記調整力を付加した操作反力を前記アクセルペダルの操作に対して付与させ、前記上位装置からの前記調整力指令時に、前記動作検出手段によって前記アクセルペダルの動きが前記戻り方向であると検出されている場合には、前記調整力を前記基本踏力特性に付加することなく、前記基本踏力特性における操作反力を前記アクセルペダルの操作に対して付与させることを特徴とする。
さらに、請求項2記載のアクセルペダル装置は、
車体に取り付けられるハウジングと、
前記アクセルペダルを有し前記ハウジングにより揺動自在に支持されたペダルアームとを具備し、前記反力付加制御機構は、前記ペダルアームの揺動に追従する戻しレバーによって前記調整力を前記基本踏力特性に付加させることを特徴とする請求項1記載のアクセルペダル装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上位装置からの調整力指令時に、アクセルペダルの動きが戻り方向であると検出されている場合には、操作反力を発生させないように構成することにより、操作反力の発生に伴う操作フィーリングの悪化を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るアクセルペダル装置の実施の形態の構成を示す図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、側面図である。
【
図2】本発明に係るアクセルペダル装置の実施の形態の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係るアクセルペダル装置の実施の形態の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】本発明に係るアクセルペダル装置の実施の形態の動作を説明するためのデータフロー図である。
【
図5】本発明に係るアクセルペダル装置の実施の形態において調整力発生指令ecoが入力された際の調整力発生動作を説明するための操作反力特性図であり、(a)は、踏み込み時に調整力発生指令ecoが入力された際の操作反力Fの変化を説明するための図であり、(b)は、戻し時に調整力発生指令ecoが入力された際の操作反力Fの変化を説明するための図であり、(c)は、条件毎の操作反力Fの変化を説明するための図である。
【
図6】本発明に係るアクセルペダル装置の他の実施の形態において調整力発生指令ecoが入力された際の調整力発生動作を説明するための操作反力特性図である。
【
図8】基本踏力特性F0に調整力ΔFaが付加された状態の操作反力特性図であり、(a)は、踏み込み時に調整力ΔFaが付加された際の操作反力Fの変化を説明するための図であり、(b)は、戻し時に調整力ΔFaが付加された際の操作反力Fの変化を説明するための図であり、(c)は、停止時に調整力ΔFaが付加された際の操作反力Fの変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態のアクセルペダル装置10は、電子制御スロットルシステム(ドライブバイワイヤシステム)に適用されるアクセルペダル装置であり、
図1乃至
図3を参照すると、自動車等の車体に取り付けられるハウジング11と、アクセルペダル12を有しハウジング11により揺動自在に支持されたペダルアーム13と、ペダルアーム13を休止位置に戻す付勢力を及ぼす復帰バネ14と、踏力特性にヒステリシスを発生させるためのヒステリシス発生機構20と、ペダルアーム13の回動角度をアクセルペダル12の操作によるアクセル開度として検出して、検出したアクセル開度をAPS信号として上位装置であるECU(エンジンコントロールユニット)50に出力するAPS(アクセルペダルポジションセンサ)15と、操作反力を発生させてアクセルペダル12の操作に対する操作反力Fを変化させる反力付加制御機構30と、ECU50からCAN(Controller Area Network)通信線経由で入力される調整力発生指令に基づいて、反力付加制御機構30を制御して操作反力を発生させるコントロールユニット(制御基板)40とを備えている。
【0014】
APS15は、ハウジング11に設けられたセンサ収容部11a内の、ペダルアーム13の揺動支軸Lの周りに配置され、ペダルアーム13の回動角度をアクセル開度として検出する位置センサである。APS15は、ペダルアーム13の回動角度を高精度に検出することが求められ、例えば、ペダルアーム13の揺動に伴って揺動支軸Lの周りの磁束密度を変化させ、この磁束密度の変化をホール素子で検出することでペダルアーム13の回動角度をアクセル開度として検出する非接触式の磁気式センサを採用することができる。
【0015】
APS15は、アクセルペダル12のアクセル開度を検出し、当該アクセル開度をECU50に出力するアクセルポジション検出手段として機能する。APS15は、アクセル操作をECU50に伝達するための主要な部品であるため、上位装置であるECU50によって直接制御されるように構成されている。すなわち、
図3に示すように、ECU50からAPS15に基準電圧とGNDとが供給され、APS15のホール素子がECU50によって定電圧駆動される。また、APS15から出力されるAPS信号は、磁束密度に応じて出力される電圧信号であり、コントロールユニット(制御基板)40を介することなくECU50に直接入力されるように構成され、コントロールユニット(制御基板)40に障害が生じた場合でも、運転に支障が生じないようになっている。
【0016】
ヒステリシス発生機構20は、
図2を参照すると、ハウジング11に収容された第1スライダ61、第2スライダ62、復帰バネ24を備え、第1スライダ61及び第2スライダ62とペダルアーム13の上端部13aに離脱可能に係合されている。第1スライダ61及び第2スライダ62は、アクセルペダル12の踏み込み踏力によりハウジング11の内壁面との間に摩擦力を発生させる。この摩擦力により踏力(ペダル荷重)にヒシテリシスを発生させる機構であり、ヒステリシス発生機構20が、
図7に示すような基本踏力特性F0をアクセルペダル12の操作に対して付与する第1の操作反力付与手段として機能する。基本踏力特性F0は、反力付加制御機構30を制御して操作反力を発生させない状態での操作反力Fであり、矢印Aで示す踏み込み方向の操作反力Fが矢印Bで示す戻り方向の操作反力Fよりも大きいヒステリシス特性を有し、踏み込み方向の操作反力Fと戻り方向の操作反力Fとの差がヒステリス量ΔFとなる。
【0017】
反力付加制御機構30は、基本踏力特性F0に加えて操作反力である調整力ΔFaをアクセルペダル12の操作に対して付与する第2の操作反力付与手段として機能し、
図2を参照すると、回動軸Rがペダルアーム13の揺動支軸Lとは異なる箇所に配置されトルクモータ31と、トルクモータ31の回動軸Rに取り付けられ、ペダルアーム13に当接して調整力ΔFaを付与する戻しレバー32と、MPS(モータポジションセンサ)33とを備え、トルクモータ31が調整力ΔFaを発生させるための駆動源として機能する。戻しレバー32は、トルクモータ31がモータトルク(駆動力)を及ぼさないときでも、トルクモータ31に備えられる図示しない磁石による磁気スプリング作用により、ペダルアーム13の揺動に追従する。従って、ペダルアーム13の揺動に伴ってトルクモータ31の回動軸が回動する。一方、トルクモータ31がモータトルク(駆動力)を及ぼすとき、戻しレバー32がペダルアーム13の上端部13aに作用して、休止位置に向けて押し戻す方向の調整力ΔFaをペダルアーム13に対して及ぼすようになっている。
【0018】
MPS(モータポジションセンサ)33は、ハウジング11に設けられたセンサ収容部11bに配置されており、トルクモータ31の回転角度をモータ角度として検出し、当該モータ角度をコントロールユニット(制御基板)40に出力するモータポジション検出手段として機能する。MPS33から出力されるモータ角度は、ペダルアーム13の揺動に伴ってトルクモータ31の回動軸が回動するため、ペダルアーム13を踏み込むと大きくなり、ペダルアーム13を戻すと小さくなる。なお、MPS33としては、接触式又は非接触式のセンサを採用することができる。
【0019】
コントロールユニット(制御基板)40は、トルクモータ31の駆動を制御して調整力ΔFaを付与する反力制御手段として機能し、
図3を参照すると、PWM信号によってトルクモータ31を駆動するための駆動回路41と、トルクモータ31を流れる実際の電流値である実モータ電流値を検出する電流検出回路42と、駆動源であるトルクモータ31を用いた調整力ΔFaの発生を制御するマイコン43と、図示しないバッテリからの電力をマイコン43に供給する電源回路44と、CAN通信線に接続されたインターフェース回路である通信I/F回路45と、MPS33から出力されるMPS信号をマイコン43に入力するMPS入力回路46とを備えている。
【0020】
次に、本実施の形態のアクセルペダル装置10における調整力発生動作について
図4および
図5に基づいて説明する。
【0021】
ECU50は、運転状況に関する各種情報に基づいて運転者に注意を喚起させる必要が生じた場合に、アクセルペダル装置10に対して調整力ΔFaの発生を指示する調整力発生指令をCAN通信線経由でアクセルペダル装置10に出力する。ECU50から出力される調整力発生指令は、例えば、運転状況(エンジン回転数、車速、負荷等)を判断して、これ以上アクセルペダル12を踏み込むと燃費が悪化すると判断した時に出力され、この時のアクセルペダル12のアクセル開度がエコドライブポイントとなる。
【0022】
CAN通信線経由でアクセルペダル装置10に入力された調整力発生指令は、コントロールユニット(制御基板)40の通信I/F回路45を介してマイコン43に入力される。調整力発生指令が入力されたマイコン43は、アクセルペダル12の操作方向を検出する操作方向検出処理S1と、反力付加制御機構30によって発生させる調整力ΔFaの大きさを決定する調整力決定処理S2とを実行する。
【0023】
操作方向検出処理S1は、MPS33からMPS入力回路46を経由して入力されるモータ角度の単位時間毎の変位を検出することで行われ、ペダルアーム13が踏み込まれてモータ角度の差分が正の場合には、踏み込み方向と検出され、ペダルアーム13が戻されてモータ角度の差分が負の場合には、戻し方向であると検出される。なお、モータ角度が変位することなく、ペダルアーム13が停止している場合には、戻し方向であると検出される。また、操作方向検出処理S1では、操作方向が検出できれば良いため、MPS33から出力されるモータ角度に替えてAPS15から出力されるAPS信号を採用したり、操作方向を検出可能な他のセンサを採用したりしても良い。さらに、操作方向検出処理S1は、調整力発生指令が入力されるタイミングが不定期であるため、常時行うように構成すると良い。
【0024】
調整力決定処理S2は、入力された調整力発生指令と、操作方向検出処理S1で検出された操作方向とに基づいて、調整力ΔFaの大きさを示す調整力指示値を決定する。調整力決定処理S2において、マイコン43は、操作方向検出処理S1で検出された操作方向が踏み込み方向である場合には、ヒステリシス発生機構20によって発生される基本踏力特性F0のヒステリシス量ΔFを調整力指示値として決定する。
【0025】
次に、マイコン43は、トルクモータ31を駆動する目標電流値を算出するモータ電流計算処理S3を実行する。マイコン43には、目標とする調整力ΔFaを得るためにトルクモータ31に負荷する電流値とトルクモータ31のモータ角度とを対応づけたトルク電流変換マップが予め記憶されている。マイコン43は、モータ電流計算処理S3として、決定した調整力指示値ΔFから、トルク変電流換マップを用いて、トルクモータ31に負荷する目標電流値を算出する。
【0026】
モータ電流計算処理S3で算出された目標電流値は、モータ駆動制御S4において電流検出回路42によって検出されたトルクモータの実際の実電流値と比較する。モータ駆動制御S4の実行により、目標電流値と実電流値との差分をトルクモータ31に負荷する必要電流値としてPWM信号にて算出する。さらに、モータ駆動制御S4において、現在の電源電圧であるバッテリ実電圧とバッテリ基準電圧とを比較して、バッテリ実電圧に合わせてPWM信号を補正して駆動回路41に出力する。
【0027】
マイコン43から必要電流値としてのPWM信号が駆動回路41に入力され、トルクモータ31を駆動すると共に、電流検出回路42によって検出された実モータ電流値でフィードバック制御を行うことで、トルクモータ31によって基本踏力特性F0のヒステリシス量ΔFと同一の調整力ΔFaを発生させ、基本踏力特性F0に調整力ΔFaが付加されることになる。
図5(a)には、基本踏力特性F0の操作反力特性線が点線で、基本踏力特性F0に反力付加制御機構30によって調整力ΔFaが付加された状態の操作反力特性線(以下、増加操作反力Fiと称す)が実線で示されている。
【0028】
このように、基本踏力特性F0のヒステリシス量ΔFと同一の調整力ΔFaを基本踏力特性F0に付加させた場合には、
図5(a)に示すように、基本踏力特性F0において点線矢印Aで示す踏み込み方向の踏力Fと、反力増加後の踏力Fi(増加操作反力Fi)において矢印B’で示す戻し方向の踏力Fとが一致することになる。
【0029】
すでに上述したように、基本踏力特性F0に反力付加制御機構30によって操作反力とする調整力ΔFaが付加される場合、踏力は操作反力特性線の戻し方向(矢印B’)の操作反力特性線に移行される。したがって、基本踏力特性F0において点線矢印Aで示す踏み込み方向の踏力Fと、反力増加後の踏力Fi(増加操作反力Fi)において矢印B’で示す戻し方向の踏力Fとが重なるように調整力ΔFaを付加する場合、調整力ΔFaを発生させても、アクセルペダル12が跳ね返されたり、戻されたりする感覚がない。操作者がアクセルペダル12をさらに踏み込もうとした場合には、操作反力特性線の踏み込み方向の矢印A’で示す操作反力Fがアクセルペダル12に作用し、アクセルペダル12を踏み込むには調整力ΔFa以上の踏力が必要となる。したがって、アクセルペダル12を踏み込むのに必要な踏力が大きくなるため、操作者はアクセルペダル12を踏み込もうとするとアクセルペダル12はこれまでの踏力では踏み込むことができず、アクセルペダル12に壁感(抵抗感)を感じるが、それでもアクセルペダル12を踏み続けて調整力ΔFa以上の踏力でアクセルペダル12を踏み込むと、踏力特性は操作反力特性線の踏み込み方向の矢印A’に移行する。したがって、アクセルペダル12の跳ね返しがないため、操作フィーリングが損なわれることがなく、操作者に対して自然に注意を喚起させることができ、エコドライブポイントを操作者に明確に伝えることができる。また、アクセルペダル12に壁感を作用させつつ、更に踏み込むことも可能である。
【0030】
なお、本実施の形態では、操作方向検出処理S1で検出された操作方向が踏み込み方向である場合には、調整力ΔFa=ヒステリシス量ΔFとしたが、調整力ΔFaは、
図6に示すように、ヒステリシス量ΔFの1/2以上、ヒステリシス量ΔF以下が好ましい。すなわち、調整力ΔFaがヒステリシス量ΔFよりも小さければ、
図6に示すように、基本踏力特性F0における踏み込み方向の踏力Fよりも、増加操作反力Fiにおける戻し方向の操作反力Fが下回ることになり、アクセルペダル12が跳ね返されたり、戻されたりする感覚がなく、操作フィーリングが損なわれることがない。しかしながら、調整力ΔFaがヒステリシス量ΔFに比べて極端に小さく設定すると、アクセルペダル12をさらに踏み込もうとした場合の壁感がなくなってしまう。
【0031】
調整力決定処理S2において、マイコン43は、操作方向検出処理S1で検出された操作方向が戻し方向である場合には、調整力指示値を決定することなく、反力付加制御機構30による調整力ΔFaを発生させない。これにより、
図5(b)に示すように、調整力発生指令が入力されても、基本踏力特性F0における矢印Bで示す戻し方向の操作反力Fが変化することがない。従って、アクセルペダル12が跳ね返されたり、戻されたりする感覚がなく、操作フィーリングを損なうことない。
【0032】
なお、マイコン43では、調整力発生指令が入力されると、調整力ΔFaの解除を指示する調整力解除指令が入力されるまで、調整力発生指令が維持される。従って、調整力決定処理S2によって調整力指示値を決定することなく、反力付加制御機構30による調整力ΔFaを発生させない場合であって、調整力発生指令が維持されている間に、操作方向検出処理S1で踏み込み方向が検出されると、上述の調整力決定処理S2が改めで実行され、基本踏力特性F0のヒステリシス量ΔFと同一の調整力ΔFaが基本踏力特性F0に付加されることになる。すなわち、一旦、操作方向検出処理S1で操作方向が戻し方向であると検出され、調整力指示値を決定することなく、反力付加制御機構30による調整力ΔFaを発生させない場合であっても、
図5(c)に示すように、アクセルペダル12が踏み込まれてアクセル開度がエコドライブポイントに到達すると、操作方向検出処理S1で操作方向が踏み込み方向であると検出され、基本踏力特性F0に反力付加制御機構30によって調整力ΔFaが付加される。また、反力付加制御機構30によって調整力ΔFaが発生されている場合であって、操作方向検出処理S1で戻し方向が検出されると、
図5(c)に示すように、反力付加制御機構30による調整力ΔFaの付加が解除される。これにより、エコドライブポイント以上のアクセル開度でアクセルペダル12が再度踏み込まれた場合には、操作方向検出処理S1で操作方向が踏み込み方向である検出され、基本踏力特性F0に反力付加制御機構30によって調整力ΔFaが付加されることになる。
【0033】
なお、本実施の形態では、操作方向検出処理S1および調整力決定処理S2をアクセルペダル装置10のマイコン43で実行するように構成したが、操作方向検出処理S1と調整力決定処理S2とのいずれか一方もしくは両方を上位装置であるECU50で行うようにしても良く、この場合には、ECU50において操作方向検出処理S1および調整力決定処理S2を実行する機能を含めて本発明のアクセルペダル装置と考えることができる。
【0034】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。