(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原稿色判別部における前記カラー画像の判定では、各画素の印刷時に用いるインク毎にインク量を所定の閾値と比較し、前記有彩色データを用いた当該画素の印刷時に用いる前記有彩色インク量が所定の有彩色閾値以上であり、且つ、前記無彩色データを用いた当該画素の印刷時に用いる前記無彩色インク量が所定の無彩色閾値以下のとき、当該画素をカラー画素と判定する請求項1に記載の印刷装置。
前記原稿色判別部は、印刷条件を取得し取得した印刷条件に応じて前記閾値及びその判別式を変更する判定基準変更部を有しており、前記判定基準変更部は、用紙のドットゲインの大小に関連させて閾値又は判別式をインク毎に変更し、ドットゲインの大きい用紙の場合、有彩色インク量の閾値を、ドットゲインの小さい用紙の閾値と等しくするとともに、無彩色インク量の閾値をドットゲインの小さい用紙の閾値よりも大きくすることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えばマット紙のようなドットゲインが小さい用紙では、単色のインクのみでは十分なドットゲインが確保できず、いわゆるベタ埋まりの低下が生じる場合がある。そのため2色印刷では、黒画素においても無彩色インクにさらに有彩色インクが混ざるように、予め無彩色インクに有彩色インクが重なるような画像データを生成する処理が行われることがある。
【0010】
このような場合、上述した特許文献2に開示された技術のように、分版処理された後の画像データの有彩色インク(カラーインク)量をカウントする方法では、単純に有彩色インク量を計上することから、無彩色インク(黒インク)と有彩色インクとが混ざっている画素について、それがドットゲインを確保するために、黒を表現する画素に有彩色インクが混ざっているケースを判断することができない。したがって、正確な色味判別ができず、黒画素に有彩色インクが混ざる構成時に、ACSで誤判定が出てしまう惧れがあった。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、有彩色インク及び無彩色インクのインクによって印刷媒体上に画像を記録する記録装置において、ユーザにとって違和感のない自動原稿色判別(ACS)結果を得ることができ
る印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
有彩色インク及び無彩色インクによって印刷媒体上に記録する画像を表す画像データがカラー画像であるか否かを判別するのに当たり、
前記画像を表す画像データを、有彩色データと無彩色データとに分離し、これら分離された各色データのそれぞれに含まれる各画素について、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク及び無彩色インクの量を比較し、比較結果に基づいて、前記画像データがカラー画像であるか否かを判定する、
ことを特徴とする。
【0013】
上記発明では、例えば、各画素について、有彩色データを用いた印刷時に用いる有彩色インク(カラーインク)の量よりも、無彩色データを用いた印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量の方が多い場合には、その画素が黒画素であると判断し、その反対の場合に、その画素がカラー画素であると判断するというように、各画素が黒画素かカラー画素かを判断して、原稿の画像の全体における黒画素(又はカラー画素)の数量や分布により、原稿がカラーであるか否かを判定することができる。
【0014】
このように、画像データを有彩色データと無彩色データとに分離し、それら分離した各色データについて、対応する画素毎に、印刷時に用いる有彩色インクや無彩色インクの量(例えば、マルチドロップ方式を採用したインクジェット方式の印刷装置におけるドロップ数等)をカウントして比較することで、2色印刷の原稿のように、無彩色インク(黒インク)にさらに有彩色インク(カラーインク)を混ぜる処理が行われる場合であっても、正確に原稿色の判別を行うことができる。
【0015】
また、上記発明において、前記原稿色判別部における前記カラー画像の判定では、各画素の印刷時に用いるインク毎にインク量を所定の閾値と比較し、前記有彩色データを用いた当該画素の印刷時に用いる前記有彩色インク量が所定の有彩色閾値以上であり、且つ、前記無彩色データを用いた当該画素の印刷時に用いる前記無彩色インク量が所定の無彩色閾値以下のとき、当該画素をカラー画素と判定することを特徴とする。
【0016】
上記発明では、画素毎に黒画素かカラー画素かの判断をする際に、当該画素の印刷時に用いる無彩色インクの量と、当該画素の印刷時に用いる有彩色インクの量とを、それぞれ個別の基準で判断することができ、よりきめ細かい判定が可能となる。
【0017】
さらに、上記発明において、前記原稿色判別部は、印刷条件を取得し取得した印刷条件に応じて前記閾値及びその判別式を変更する判定基準変更部を有しており、前記印刷条件には、用紙種
類が含まれていることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、各画素のドットゲインに影響する用紙種類
を印刷条件として考慮し、適宜基準を変更して黒画素かカラー画素かを判断することにより、さらに精度よく原稿色の判別を行うことができる。
【0019】
また、上記発明において、前記原稿色判別部は、印刷条件を取得し取得した印刷条件に応じて前記閾値及びその判別式を変更する判定基準変更部を有しており、前記判定基準変更部は、用紙のドットゲインの大小に関連させて閾値又は判別式をインク毎に変更し、ドットゲインの大きい用紙の場合、有彩色インク量の閾値を、ドットゲインの小さい用紙の閾値と等しくするとともに、無彩色インク量の閾値をドットゲインの小さい用紙の閾値よりも大きくすることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、ドットゲインに影響する用紙種類を印刷条件として考慮し、用紙のドットゲインの大小に関連させて閾値又は判別式をインク毎に変更して、黒画素かカラー画素かを判断することにより、さらに精度よく原稿色の判別を行うことができる。
【0021】
具体的には、普通紙のようにドットゲインが大きい用紙種類のときには、黒ベタを埋めるために黒を表現する画素に有彩色インク(カラーインク)が重ねられているケースが少ないことから、有彩色インク量の閾値を、ドットゲインの小さい用紙の閾値と等しくし、且つ無彩色インク量の閾値をドットゲインの小さい用紙の閾値よりも大きくすることにより、黒画素がカラー画素であると誤判定されるのを回避することができる。
【0022】
上記発明において、前記画像データにハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部をさらに有しており、前記原稿色判別部
は、前記ハーフトーン処理部から出力された画像データに対し、前記カラー画像の判定を行うことを特徴とする。
【0023】
上記発明では、網点処理や誤差拡散処理等
のハーフトーン処理を行った後の画像データに対して判定を行うことにより、ハーフトーン処理の影響を考慮した判定処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有彩色インク及び無彩色インクによって印刷媒体上に画像を記録する記録装置において、各画素の有彩色データ及び無彩色データを使用してカラー画素をカウントする際、画素毎の有彩色インク量(カラーインク量)と無彩色インク量(黒インク量)を比較して判定を行うとともに、必要に応じて用紙種類によってその比較基準を変更することで、ユーザにとって違和感のない自動原稿色判別(ACS)結果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明の印刷装
置を、インクジェット記録装置の原稿色判別に適用した場合を例に説明する。なお、本実施形態では、本発明を、インクジェット記録装置における印刷処理に適用した場合を主として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば孔版印刷装置や、感熱式記録装置、熱転写記録装置など種々の印刷方式の記録装置の他、コピー機やFAX機、これらの複合機など、原稿を読み取ったり、外部機器から入力された画像データを出力する全ての記録装置に適用することができる。
【0028】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置において、画像形成が行われる画像形成経路CR1を側方から示す説明図であり、
図2(a)は、搬送経路CR1の上方に配置されるヘッドホルダー500を下方から示す説明図であり、
図2(b)は、ヘッドホルダー500の側断面を拡大して示す説明図である。なお、本実施形態では、画像形成部であるヘッドユニット110に備えられたインクヘッド110aのノズルから、無彩色又は有彩色インク(黒又はカラーインク)を吐出してライン単位で印刷を行うインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0029】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、
図1に示すように、印刷媒体の搬送経路として画像形成経路CR1を含んでおり、この画像形成経路CR1では、プラテンベルト160によって、印刷条件により定められる速度で印刷媒体10が搬送される。この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドユニット110が、プラテンベルト160に対向配置され、ヘッドユニット110に備えられた各インクヘッド110aのノズルから、プラテンベルト160上の印刷媒体10上に対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0030】
詳述すると、画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルトであるプラテンベルト160、プラテンベルトの駆動機構である駆動ローラ161及び従動ローラ162等から構成され、この画像形成経路CR1の上方には、ヘッドホルダー500が設けられ、複数列のインクヘッド110aが保持されている。
【0031】
プラテンベルト160は、駆動ローラ161により周回移動され、インクヘッド110aと対向する範囲において摺動し、印刷媒体10を搬送する。具体的に、このプラテンベルト160は、搬送方向に直交させて配置された一対の駆動ローラ161及び従動ローラ162間に掛け回されて、駆動ローラ161の駆動力により、搬送方向に周回される。
【0032】
ヘッドホルダー500は、ヘッドホルダー面500aを底面に有する函体であり、インクヘッド110aを保持して固定するとともに、インクヘッド110aからインクを吐出させるための他の機能部分をユニット化して収納する。また、このヘッドホルダー500の底面であるヘッドホルダー面500aは、搬送経路に対して平行となるように対向配置されている。このヘッドホルダー面500aには、取付開口部500bが複数配列されている。各取付開口部500bは、インクヘッド110aの水平断面と同形状に形成されている。複数のインクヘッド110aは、各取付開口部500bにそれぞれ挿通されて、その吐出口をヘッドホルダー面500aから突出させている。
【0033】
インクヘッド110aは、
図2(a)及び(b)に示すように、無彩色インクであるK(ブラック)、及び有彩色インクであるC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色別にそれぞれ複数個ずつ設けられている。各色のインクヘッド110aは、搬送方向(副走査方向)に間隔をおいてそれぞれ配置されている。各色の複数のインクヘッド110aは、搬送方向と直交する方向(主走査方向)に並べて配置されている。また、主走査方向における隣接ノズルのピッチが2つのインクヘッド110aを跨ぐ部分で広がらないように、各色の複数のインクヘッド110aは、1つおきに搬送方向の位置を千鳥状にずらして配置されている。
【0034】
(画像データ判別モジュール)
そして、本実施形態における印字制御処理は、印刷装置に備えられた演算処理部300(
図3参照)によって、画像処理や、ヘッドユニット110及び各駆動手段の動作制御により行われる。
図3は、本実施形態に係る演算処理部300の画像データ判別機能に関するモジュールを示すブロック図である。
【0035】
演算処理部300は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。この演算モジュールは、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。特に、本実施形態において、演算処理部300は、画像を表す画像データがカラー画像か否かを判別する機能を有する。
【0036】
また、この演算処理部300には、操作パネル101、又はユーザが使用するパーソナルコンピュータ200が接続されており、この操作パネル101、又はパーソナルコンピュータ200を通じて、ユーザによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0037】
さらに、本実施形態において、演算処理部300は、画像データ判別に係るモジュールとして、ジョブデータ受信部301と、画像処理部302と、記憶部307と、印字制御部308と、操作信号取得部309を備えている。
【0038】
ジョブデータ受信部301は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信し、受信したジョブデータに含まれるデータを画像処理部302に受け渡すモジュールである。具体的には、画像データを取り込む装置であるスキャナ103、又は通信インターフェース102を通じて接続されたパーソナルコンピュータ200から画像データを含むジョブデータが入力され、画像データを抽出して画像処理部302に送信する。このジョブデータ受信部301に入力される画像データとは、文字や写真が表示されたデータであり、例えば、RGB8bitデータや、分版後のMK8bitデータが含まれる。
【0039】
通信インターフェース102は、データをパケットとして送受信するモジュールであり、この通信インターフェース102を介して、ユーザが使用するパーソナルコンピュータ200から画像データや操作信号が受信される。なお、ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0040】
操作信号取得部309は、操作パネル101、又は通信インターフェース102を通じて接続されたパーソナルコンピュータ200から、ユーザによる操作信号を受信するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザ操作に応じた処理を他のモジュールに実行させる。特に、本実施形態において、この操作信号取得部309は、ユーザが画像データ判別処理を実行するか否かの指示操作や設定操作、又は用紙設定を受け付ける。この操作信号取得部309で受信された画像データ判別の要否や用紙設定は、画像処理部302に入力される。
【0041】
画像処理部302は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行うとともに、画像データの原稿色を判定するモジュールである。特に、本実施形態において、画像処理部302には、画像データ判定の機能として、像域分離・変倍部303と、色変換部304と、ハーフトーン処理部305と、原稿色判別部306とを備えている。
【0042】
像域分離・変倍部303は、入力された画像データから、文字部分や画像部分である像域を分離したり、画像データの縦横の比率を変えて拡大・縮小する処理を実行するモジュールである。
【0043】
色変換部304は、取得した画像データであるRGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換し、CMYK印刷画像のデータを有彩色データと無彩色データとに分離するモジュールである。本実施形態において、色変換部304は、画像を表す画像データ(RGB8bitデータ)が入力された場合には、疑似カラー分版用のカラープロファイルテーブルを用いて、M(マゼンタ)8bit、及びK(ブラック)8bitのインク色に分版する。
【0044】
ハーフトーン処理部305は、画像データ中の各画素について、ハーフトーン処理を行うモジュールである。本実施形態においては、分版された画像データ(MK8bitデータ)を多値ハーフトーン処理して、インクヘッド110aのドロップ量に関する画像データ(3bit)に変換する。そして、この3bitの画像データは、記憶部307に送信され、蓄積される。
【0045】
原稿色判別部306は、これら分離された各色データのそれぞれに含まれる各画素について、印刷時に用いる有彩色インクや無彩色インクの量を比較し、比較結果に基づいて、画像全体がカラー画像であるか否かを判定するモジュールである。この原稿色判別部306における、画像全体がカラー画像であるか否かを判定する手法としては、各画素毎において黒画素かカラー画素かを判断された比較結果に基づいて、カラー画素(又は黒画素)の数量や分布により、原稿がカラーであるか否かを判定する手法がある。具体的には、画像データ全体の総カラー画素数を集計して、所定の閾値th3と比較して、閾値th3以上である場合には、画像データの画像をカラー画像と判断し、閾値以下である場合には、画像データの画像を白黒画像と判断する。
【0046】
この原稿色判別部306における、各画素のカラー画素か否かの判定は、種々の手法を用いることができる。例えば、対応する画素毎に、印刷時に用いる有彩色インク(カラーインク)や無彩色インク(黒インク)の量(例えばドロップ数等)をカウントして比較し、印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量が有彩色インク(カラーインク)の量よりも多い場合には、その画素が黒画素であると判断し、その反対の場合には、その画素がカラー画素であると判断する。また、他のカラー画素の判定手法では、原稿色判別部306において、各画素の印刷時に用いるインク毎にインク量を所定の閾値と比較して当該画素をカラー画素と判定する。この手法では、例えば、有彩色インク(カラーインク)量が所定の有彩色閾値以上であり、且つ無彩色インク(黒インク)量が所定の無彩色閾値以下のとき、当該画素をカラー画素と判定する。これらのカラー画素の判定手法は、いずれか一方を実装されていてもよく、ユーザの選択操作に基づき、又は印刷条件等に基づいて自動的に切り替えられるようにしてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態において原稿色判別部306には、判定基準変更部306aを備えている。この判定基準変更部306aは、印刷条件を取得し、取得された印刷条件に応じて閾値及びその判別式を変更するモジュールであ
る。
【0048】
ここで、判定基準変更部306aにおける、印刷条件に応じた閾値及びその判別式の変更について具体的に説明する。
図4及び
図5は、各印刷用紙毎における、無彩色インクとしてのKインクの量と有彩色インクとしてのMインクの量に基づく原稿色判定に関する一覧表を示す説明図である。なお、ここでは、K(ブラック)インク、とM(マゼンタ)インクによる2色印刷を行っており、判定基準変更部306aが、用紙のドットゲインの大小に関連させて閾値又は判別式をインク毎に変更する場合を例に取って説明する。
【0049】
先ず、画像データがマット紙に印刷されるデータである場合について説明する。マット紙は、ドットゲインが小さくベタが埋まらない。そこで、マット紙に印刷する画像に黒ベタ部分が含まれている場合は、黒色を強調させるため、画像データ上にはないMインクを混ぜて黒ベタ部分の画素を印刷することがある。
【0050】
この点に注目し、本実施形態では、マット紙に印刷される画像データに対して、Mインクのドロップ量≧Mインクのドロップ量の閾値th1という条件と、Kインクのドロップ量<Kインクのドロップ量の閾値th2という条件を併せた判定基準を用いる。具体的には、Mインクのドロップ量の閾値th1を2ドロップ、及びKインクのドロップ量の閾値を4ドロップとして設定する。そして、本実施形態では、Mインクのドロップ量≧th1であって、且つ、Kインクのドロップ量<th2である場合には、カラー画素と判断し、それ以外の場合には、白黒画素であると判断するように設定する。
【0051】
このような判定基準を用いた場合、例えば、
図4(a)に示すように、マット紙において、表現したい色、すなわち、画像データで取得された色の濃さが、黒色(0%〜100%)である際を想定する。ここで、黒0%〜黒60%までは、Kインクのドロップ量<th2を全て満たすが、Mインク量は0ドロップなので、Mインクのドロップ量≧th1を満たさない。そのため、この画素は白黒画素と判断される。一方、黒80%では、Kインクのドロップ量<th2を満たさず、また、Mインクのドロップ量≧th1を満たさないので、白黒画素と判断される。さらに、黒100%の場合には、Mインクのドロップ量≧th1を満たすが、Kインクのドロップ量<th2を満たさないので、白黒画素と判断される。
【0052】
次に、
図4(b)に示すように、マット紙において、表現したい色がカラー色(0%〜100%)である場合を想定する。この場合、Kインクは使用されていないので、Kインクのドロップ量<th2を全て満たすこととなる。そこで、Mインクのドロップ量が0及び1である場合には、Mインクのドロップ量≧th1を満たさず白黒画素と判断される。一方、Mインクのドロップ量が5から2までは、Mインクのドロップ量≧th1を満たすのでカラー画素と判断される。
【0053】
また、
図4(c)に示すように、マット紙において、表現したい色が黒とカラーとが混合されている場合を想定する。この場合、黒0%/カラー0%〜黒20%/カラー20%までは、Kインクのドロップ量<th2を満たすがMインクのドロップ量≧th1を満たさないので、白黒画素と判断される。一方、黒30%/カラー30%〜黒50%/カラー50%までは、Kインクのドロップ量<th2を全て満たすとともに、Mインクのドロップ量≧th1を満たすので、カラー画素と判断される。
【0054】
次いで、画像データが普通紙に印刷されるデータである場合について説明する。ここで、普通紙は、ドットゲインが大きくベタが埋まるため、黒ベタ部分はKインクのみで形成される。そこで、本実施形態では、普通紙に印刷される画像データに対しては、Mのドロップ量≧閾値th1という判定基準を用い、Mインクのドロップ量の閾値th1を2ドロップとする。そして、Mインクのドロップ量≧閾値th1である場合は、カラー画素と判断し、それ以外は、白黒画素と判断する。
【0055】
例えば、
図5(a)に示すように、普通紙において、表現したい色が黒(0%〜100%)である場合、Mインクは全て0ドロップであるので、Mのドロップ量≧th1を満たさず、全て白黒画素と判断する。
【0056】
また、
図5(b)に示すように、普通紙において、表現したい色がカラー(0%〜100%)である場合、カラー40%〜カラー100%までは、Mのドロップ量≧th1を満たすので、カラー画素と判断する。一方、カラー0%〜カラー20%では、Mのドロップ量≧th1を満たさないので、白黒画素と判断する。
【0057】
さらに、
図5(c)に示すように、普通紙において、表現したい色が黒とカラーとが混合されている場合、黒0%/カラー0%〜黒20%/カラー20%までは、Mインクのドロップ量≧th1を満たさないので、白黒画素と判断される。一方、黒30%/カラー30%〜50%/カラー50%までは、Mインクのドロップ量≧th1を満たすので、カラー画素と判断される。
【0058】
なお、本実施形態において、判定基準変更部306aは、用紙種別に応じて、判別式を変更したが、本発明はこれに限定されるものではなく、用紙種別に応じて、各インク量の閾値(th1及びth2)のみを変更させる構成であってもよい。具体的に、判定基準変更部306aは、ドットゲインの大きい用紙の場合、有彩色インク量の閾値を、ドットゲインの小さい用紙の閾値と等しくするとともに、無彩色インク量の閾値をドットゲインの小さい用紙の閾値よりも大きくする判定基準を用いるなど、各閾値のみを変更するようにしてもよい。
【0059】
図3に示した前記印字制御部308は、画像処理部からの信号に基づいて、各色のインクヘッドの駆動を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールである。本実施形態においては、画像処理部302で原稿色判別(ACS)した結果を受信して、印刷処理する画像データ(3bit)に対して、インクヘッド110aを駆動させてカラー印刷、又は白黒印刷を実行させる。
【0060】
記憶部307は、各種のデータや、プログラムを記憶保持するメモリ装置等であり、本実施形態においては、用紙種類、分版手段、インク色又はインク吐出順等の印刷条件に対応する、閾値(th1及びth2)及びその判別式、画像処理部302において変換されたMKインクの画像データ(MK3bitデータ)、及び原稿カラー判定する閾値(th3)等が蓄積されている。
【0061】
(画像データ判別方法)
以上の構成を有する画像データ判別機能を動作させることによって、本発明の画像データ判別方法を実施することができる。
図6(a)は、本実施形態に係る画像データ判別の概要を示すフローチャート図である。
【0062】
先ず、ジョブデータ受信部301から画像処理部302に画像データがに入力されると(ステップS101)、像域分離・変倍部303において、文字部分や画像部分である像域を分離したり、画像データの縦横の比率を変えて拡大・縮小する処理が実行され、その処理後、色変換部304において、画像を構成する画素のうち、所定濃度以上の黒画素を有彩色インク及び無彩色インクを重ねて形成するように、画像データが変換される(ステップS102)。具体的には、入力された画像データ(RGB8bitデータ)に対して、疑似カラー分版用のカラープロファイルテーブルを用いて、M(マゼンタ)8bit、及びK(ブラック)8bitのインク色に分版する。そして、その画像データをハーフトーン処理部305に入力する。
【0063】
さらに、ハーフトーン処理部305では、画像データ中の各画素について、ハーフトーン処理の一例としての誤差拡散処理を行う(ステップS103)。具体的には、分版された画像データ(MK8bitデータ)を多値ハーフトーン処理して、Mインク及びKインクのドロップ量に関する画像データ(3bit)に変換する。そして、変換された画像データを、記憶部307に蓄積するとともに(ステップS104)、原稿色判別部306に入力する。
【0064】
原稿色判別部306では、変換された画像データを、有彩色データと無彩色データとに分離し、これら分離された各色データのそれぞれに含まれる各画素について、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク及び無彩色インクの量を比較し、比較結果に基づいて、画像全体がカラー画像であるか否かを判定し(ステップS105)、その判定結果を通知する(ステップS106)。この通知は、例えば、操作パネル101に送信され、操作パネル101上でメッセージ出力してもよく、また、この通知を印字制御部308に入力し、判定された原稿色に応じた印字制御に自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0065】
印字制御部308は、原稿色判別部306による判定結果が通知された画像データを記憶部307から読み出し、原稿色判別部306の判定結果に基づくユーザ操作又は自動切り替え機能によって、原稿色に応じた、各印刷駆動部やインクヘッドの駆動制御を実行し、画像を印刷させる(ステップS107)。
【0066】
(原稿色判別方法)
次いで、ステップ105において処理される原稿色判別方法について詳細に説明する。
図6(b)は、
図6(a)におけるステップS105における原稿色判別処理を示すフローチャート図である。
【0067】
先ず、原稿色判別部306は、色変換された各色の画像データを用いて、これら分離された各色データのそれぞれに含まれる各画素の、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク及び無彩色インクの量(例えばドロップ数等)をカウントし、各画素がカラー画素か否かを判定する。この際、原稿色判別部306は、例えば、対応する画素毎に印刷時に用いる有彩色インク及び無彩色インクの量(例えばドロップ数等)をカウントして比較して、印刷時に用いる有彩色インク(カラーインク)の量よりも、印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量の方が多い場合には、その画素が黒画素であると判断し、その反対の場合に、その画素がカラー画素であると判断する。
【0068】
なお、このとき、原稿色判別部306は、各画素の印刷時に用いるインク毎にインク量を所定の閾値と比較して、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク量が所定の有彩色閾値以上であり、且つ、当該画素の印刷時に用いる無彩色インク量が所定の無彩色閾値以下のとき、当該画素をカラー画素と判定する手法を用いることもでき、その際、判定基準変更部306aによって、用紙種類、分版手段、インク色又はインク吐出順の印刷条件を取得し、取得された印刷条件に応じて閾値及びその判別式を変更する処理を行うようにしてもよい。
【0069】
そして、カラー画素と判断した画素の数をカウントし(ステップS201)、全ての画素について判断が終了したか否かを判断する(ステップS202)。終了していない場合には(ステップS202でNO)、全ての画素に対して、ステップ201を繰り返し行う。
【0070】
一方、全画素について、黒画素かカラー画素かを判断した場合には(ステップS202でYES)、1ページ分のカラー画素(又は黒画素)の総画素数量や分布を算出し、所定の閾値th3と比較して(ステップS203)、カラー画素の総画素数量が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS204)。
【0071】
カラー画素の総画素数量が閾値th3以上である場合には(ステップS204でNO)、原稿の画像全体がカラー画像であると判断し(ステップS205)、閾値th3以下である場合には白黒画像と判断する(ステップS206)。
【0072】
(作用効果)
このような本実施形態によれば、画像データを有彩色データと無彩色データとに分離し、それら分離した各色データのそれぞれに含まれる各画素について、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク及び無彩色インクの量(例えばドロップ数等)をカウントして比較して、その比較結果に基づいて、原稿の画像全体がカラー画像であるか否かを判定する。
【0073】
例えば、印刷時に用いる有彩色インク(カラーインク)の量よりも、印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量の方が多い場合には、その画素が黒画素であると判断し、その反対の場合に、その画素がカラー画素であると判断して、黒画素(又はカラー画素)の数量や分布により、原稿の画像全体がカラー画像であるか否かを判定する。
【0074】
このため、ACS処理に際し、印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量と有彩色インク(カラーインク)の量とを比較することで、2色印刷の原稿のように、無彩色インク(黒インク)にさらに有彩色インク(カラーインク)を混ぜる処理が黒ベタの画素部分に施されている場合であっても、正確に原稿の画像全体の色判別(白黒/カラー)を行うことができる。
【0075】
また、本実施形態では、原稿色判別部306におけるカラー画像の判定に際し、各画素の印刷時に用いるインク毎にインク量を所定の閾値と比較し、当該画素の印刷時に用いる有彩色インク量が所定の有彩色閾値th1以上であり、且つ、当該画素の印刷時に用いる無彩色インク量が所定の無彩色閾値th2以下のとき、当該画素をカラー画素と判定する機能も有している。このため、画素毎に黒画素かカラー画素かの判断をする際に、当該画素の印刷時に用いる有彩色インクと、当該画素の印刷時に用いる有彩色インクの量とを、それぞれ個別の基準で判断することができ、よりきめ細かい判定が可能となる。
【0076】
さらに、本実施形態では、判定基準変更部306aは、用紙種類、分版手段、インク色又はインク吐出順などの印刷条件を取得し、取得された印刷条件に応じて閾値及びその判別式を変更する。このため、各画素のドットゲインに影響する印刷条件を少なくとも一つ考慮して、適宜基準を変更して黒画素かカラー画素かを判断することとなり、さらに精度よく原稿色の判別を行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、判定基準変更部306aが、用紙のドットゲインの大小に関連させて閾値又は判別式をインク毎に変更し、ドットゲインの大きい用紙の場合、有彩インク量の閾値を、ドットゲインの小さい用紙の閾値と等しくするとともに、無彩色インク量の閾値をドットゲインの小さい用紙の閾値よりも大きくするので、黒画素がカラー画素であると誤判定されるのを回避することができる。
【0078】
(変更例)
上述した実施形態では、K(ブラック)インクとM(マゼンタ)インクによる2色印刷の場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有彩色インクとしてC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のうち2色又は全色(3色)を用いる場合にも、本発明を適用することができる。
【0079】
この場合、原稿色判別部306は、C、M、Y(のうち2色又は全色)のインク量(例えばドロップ数)の合計を有彩色インク(カラーインク)の量としてカウントし、印刷時に用いる有彩色インク(カラーインク)の量よりも無彩色インク(黒インク)の量の方が多い場合には、その画素が黒画素であると判断し、その反対、つまり、印刷時に用いる無彩色インク(黒インク)の量よりも有彩色インク(カラーインク)の量の方が多い場合には、その画素がカラー画素であると判断する。また、他のカラー画素の判定手法では、原稿色判別部306において、C、M、Y(のうち2色又は全色)のインク量(例えばドロップ数)の合計量が所定の有彩色閾値以上であり、且つ無彩色インク量が所定の無彩色閾値以下のとき、当該画素をカラー画素と判定する。
【0080】
また、上述した実施形態では、ハーフトーン処理部305から出力された画像データ(MK3bitデータ)に対し、カラー画像の判定を行った
が、ハーフトーン処理を行う前後において、カラー画像の判定を行うかを選択してもよい。以下に本変更例に係るカラー画像の判定について説明する。
図7は、本変更例に係るカラー画像の判定方法を示すフローチャート図である。
【0081】
先ず、ジョブデータ受信部301から画像処理部302に画像データが入力されると(ステップS301)、像域分離・変倍部303において、文字部分や画像部分である像域を分離したり、画像データの縦横の比率を変えて拡大・縮小する処理が実行され、その処理後、色変換部304において、画像を構成する画素のうち、所定濃度以上の黒画素を有彩色インク及び無彩色インクを重ねて形成するように、画像データが変換される(ステップS302)。具体的には、入力された画像データ(RGB8bitデータ)に対して、疑似カラー分版用のカラープロファイルテーブルを用いて、M(マゼンタ)8bit、及びK(ブラック)8bitのインク色に分版する。
【0082】
そして、色変換部304は、この画像データに対して、ハーフトーン処理(ステップS304)に先行させてカラー画像の判定をするか否かを判断する(ステップS303)。この判断は、例えば、用紙種類、分版手段、インク色又はインク吐出順の印刷条件に応じて自動的に切り替えるようにしてもよく、ユーザ操作によってユーザの任意に切り替えるようにしてもよい。ステップS303においてカラー画像の判定を実行すると判定された場合は(ステップS303でYES)、この画像データを原稿色判別部306に入力する。
【0083】
一方、判断されなかった場合は(ステップS303でNO)、ステップS302で分版された画像データ(MK8bitデータ)をハーフトーン処理部305に入力し、画像データ中の各画素について、ハーフトーン処理の一例としての誤差拡散処理(ステップS304)を行う。さらに、この画像データを、記憶部307に蓄積すると共に(ステップS305)、原稿色判別部306に入力する。
【0084】
原稿色判別部306では、ハーフトーン処理等の誤差拡散処理を行う前の画像データ(ステップS303でYESの場合)、又は誤差拡散処理(ハーフトーン処理)を行った後の画像データ(ステップS303でNOの場合)に対して、画像全体がカラー画像であるか否かの判定を行い(ステップS306)、その判定結果を通知する(ステップS307)。
【0085】
次に、ステップS308では、ステップS303においてカラー画像の判定をハーフトーン処理に先行させて実行すると判断した(原稿色判別済みである)か否かを確認し、先行させて実行すると判断した(原稿色判別済みである)場合は(ステップS308でYES)、後述するステップS311に移行する。
【0086】
一方、先行させて実行すると判断しなかった(原稿色判別済みでない)場合は(ステップS308でNO)、ステップS302で分版された画像データ(MK8bitデータ)をハーフトーン処理部305に入力し、画像データ中の各画素について、ハーフトーン処理の一例としての誤差拡散処理(ステップS309)を行う。さらに、この画像データを、記憶部307に蓄積し(ステップS310)、後述するステップS311に移行する。
【0087】
ステップS311では、印字制御部308が、ステップS305又はステップS310で記憶部307に蓄積した画像データを抽出して、判定結果に基づいて原稿色に応じた画像出力(印字処理)を実行する。
【0088】
このような変更例によれば、網点処理や誤差拡散処理等のハーフトーン処理を行う前の画像データ、又はハーフトーン処理を行った後の画像データのいずれかに対して判定を行うことができるので、ハーフトーン処理の影響を考慮した判定処理を行うことができる。