(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740197
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】無菌微細米粉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 1/10 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
A23L1/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-93929(P2011-93929)
(22)【出願日】2011年4月20日
(65)【公開番号】特開2012-223135(P2012-223135A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2013年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194295
【氏名又は名称】菅原 則行
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】菅原 則行
【審査官】
田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−148472(JP,A)
【文献】
特開2008−154576(JP,A)
【文献】
特開平09−187235(JP,A)
【文献】
特開2004−248538(JP,A)
【文献】
日本食品科学工学会創立50周年記念北海道支部設立10周年記念シンポジウム講演要旨,2003年11月11日,14頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗した原料米である玄米を、米粒の細胞膜を加水分解し又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ及びペクチンエステラーゼを含む酵素含有水溶液に原料米を適宜時間浸漬した後、オゾン水又は二酸化塩素水溶液からなる殺菌用水溶液に適宜時間浸漬して洗浄する液体殺菌処理を行い、水切り乾燥並びに微細粉化し、更に米粉温度を50℃以下に抑えながら乾燥処理を行うと共に、所定濃度のオゾン雰囲気又は二酸化塩素ガス雰囲気の殺菌用雰囲気内で気中攪拌して気体殺菌処理を行ってなる無菌微細米粉の製造方法
【請求項2】
液体殺菌処理の殺菌用水溶液として、濃度5ppm以下の二酸化塩素水溶液を使用し、気体殺菌処理として、濃度10ppm以下の二酸化塩素ガス雰囲気を使用してなる請求項1記載の無菌微細米粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無菌微細米粉及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より剰余米の有効活用の一例として、粒米を微粉化して、小麦粉を使用して製造されていたパンや麺の一部或いは全部を米粉とすることが提案され、実施されている。
【0003】
前記の米粉を製造する手段として、製粉装置を使用するものであるが、製粉対象として生米を使用する場合と、加熱処理した(α化した)米を使用する場合があるが、本発明の対象は、生米を粉砕するものであり、生米の粉砕に際しては、通常の水洗を行い、適宜な処理を行った後に粉砕して製粉するもので、製粉終了時に一定以下の水分を含有している状態とするものである。
【0004】
例えば特許文献1(特開平9−182569号公報)には、乳酸発酵させた後加熱乾燥処理(50℃で乾燥処理して水分12%)した米粒を粉砕してなる手段が開示されており、特許文献2(特開2005−333955号公報)には、原料米を20〜34%の水分状態としてから粉砕し、粉砕後に乾燥させる手段が開示されている。
【0005】
また特許文献3(本件出願人に係る特開2010−148472号公報)には、酵素処理した原料米を粉砕し、粉砕した米粉を殺菌処理する手段が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−182569号公報。
【特許文献2】特開2005−333955号公報。
【特許文献3】特開2010−148472号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米粉は、製パンや製麺材料として使用されるものであり、原料米の洗浄時、乾燥粉砕時に自然に殺菌除菌がなされるがそれでは不十分といえる。たとえば原料米が倒伏米であるが、新米或いは古米の相違、米の品種によって相違はあるが、原料米となる玄米では、1g中10〜100万個の一般細菌を確認することがで、白米でも1万個/g以上の一般細菌が確認することができる。そしてこれらの原料米を通常の洗浄処理を施しても3千〜1万個/gが残存する。
【0008】
前記の一般的な洗浄処理を施した原料米を使用して米粉を製造した場合には、製出した米粉に残留細菌が存在し、生粉(乾燥処理を施さない米粉)では、1日でカビが発生してしまう。また乾燥処理して、水分含有量を12%以下としても、残存細菌は300〜1000個/gが認められ、保存期間にもよるが、残存細菌を原因とする問題(例えばカビの発生)が生じてしまう虞がある。
【0009】
確かに従前の製粉手段においては、原料米の加熱乾燥や、製粉後の加熱乾燥で、滅菌処理されるが、必ずしも確実な滅菌処理とは云い難く、更により殺菌を確実にするために加熱乾燥を高温で行うと、デンプン質の変性が生じてしまう。
【0010】
更に特許文献3で開示している通り粉砕後に気中攪拌による殺菌を行っても、殺菌を確実にするためには、長時間の気中攪拌殺菌処理を必要として、生産効率上好ましくは無い。
【0011】
そこで本発明は、効率的で且つ確実な殺菌処理を行ってなる無菌微細米粉の製造手段を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る無菌微細米粉の製造方法は、水洗した原料米である玄米を、米粒の細胞膜を加水分解し又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ
及びペクチンエステラーゼを含む酵素含有水溶液に原料米を適宜時間浸漬した後、オゾン水又は二酸化塩素水溶液からなる殺菌用水溶液に適宜時間浸漬して洗浄する液体殺菌処理を行い、水切り乾燥並びに微細粉化し、更に米粉温度を50℃以下に抑えながら乾燥処理を行うと共に、所定濃度のオゾン雰囲気又は二酸化塩素ガス雰囲気の殺菌用雰囲気内で気中攪拌して気体殺菌処理を行ってなることを特徴とするものである。
【0013】
而して原料米の水洗時や酵素処理時における酵素含有水溶液等に含まれる雑菌等が原料米の表面に付着したり、或いは内部に侵入していたとしても、微細粉化の前に殺菌用水溶液に適宜時間浸漬するのみで、その原料米に付着している大部分の雑菌は死滅させることができるものであり、更に粉砕後の気体殺菌処理によって、残存している雑菌も効率的に全て死滅させることができ、無菌の米粉を提供できるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成は上記の通りで、デンプン質が変性する虞が無く、粉砕前に殺菌用水溶液に浸漬し、粉砕後に気中殺菌処理することで、効率的に無菌米粉を得ることができ、無菌米粉の使用によって、特に非加熱処理製品における日持ちを長くし、且つ安心して米粉製品を製造できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態について説明する。原料米は玄米でも白米でも良く、前記の原料米は、通常の水洗を行った後、米粒の細胞膜を加水分解したり又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等の酵素含有水溶液に適宜時間を浸漬して水洗・酵素処理を行う。
【0017】
前記の酵素処理は、原料米が白米の場合には一晩でよいが、玄米の場合には、少なくとも一昼夜中酵素含有水溶液に浸漬しておく。
【0018】
前記の酵素処理を終了すると、殺菌用水溶液に浸けこむもので、殺菌用水溶液としてはオゾン水や二酸化塩素水溶液を使用する。
【0019】
浸漬時間は、オゾン水(通常の飽和オゾン濃度)では5分程度、二酸化塩素水溶液では、濃度5ppm以下(0.6〜5ppm)で10分以内とする。
【0020】
次に殺菌用水溶液の水切り行うもので、残存オゾンは水切り後放置するのみで自然に放出されが、二酸化塩素水溶液を使用した場合には、粒体の表面はある程度乾燥状態とすることで残存する二酸化塩素は減少するので特に問題は生じない
【0021】
微細粉化処理は、適宜な粉砕装置を使用することができるが、粉ロール粉砕やハンマー粉砕機に比較して、米粉としての使用(例えば米麺の生地として使用)を考慮すると気流粉砕が好ましい。なお粉砕前に米の水分を33%以下としておく。
【0022】
また粉砕粒が30〜50ミクロンの大きさとなるのが好ましい。これより細かくなると粉にベトツキ感が生じ、荒くなるとザラザラな感触となる。
【0023】
粉砕処理して微細粉となった米粉は、更に気体殺菌処理を施すもので、気体殺菌処理は前記米粉を殺菌用雰囲気内で攪拌して、殺菌と同時に所定の乾燥も実施することもできるが、予め乾燥処理を施したのち殺菌処理を行うことで、所望の水分の米粉を得やすい。
【0024】
乾燥処理は、前記の気流粉砕の後、米粉を30〜40秒間熱風による圧送を行って乾燥するもので、その間に米粉温度が50℃以上とならないようにする。
【0025】
また気体殺菌処理は、オゾン殺菌処理の場合には、オゾン濃度が10ppm以下(0.2〜10ppm)の殺菌用雰囲気を採用して5〜10分の気中攪拌を行い、二酸化塩素ガスによる殺菌処理の場合には、濃度10ppm以下(0.1〜10ppm)の気体を使用して10分以内の気中攪拌処理を行う。
【0026】
而して前記処理を経て製出された米粉は、無菌米粉であり、種々の加工品の材料として使用されるもので、例えば活性グルテンを添加してパン生地材料や麺生地材料として使用されるもので、特に無菌であるので、例えば生麺のような非加熱加工品においては、カビの発生が抑えられ長期保存が可能であり、生加工品として充分に市場に流通させることができるものである。