特許第5740223号(P5740223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5740223-一軸偏心ねじポンプ 図000002
  • 特許5740223-一軸偏心ねじポンプ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740223
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】一軸偏心ねじポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/107 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   F04C2/107
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-142944(P2011-142944)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2013-11189(P2013-11189A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2014年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】林元 和智
(72)【発明者】
【氏名】種市 準
(72)【発明者】
【氏名】大坪 諭史
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−209732(JP,A)
【文献】 特開2005−315188(JP,A)
【文献】 特開2008−069896(JP,A)
【文献】 特開平05−087059(JP,A)
【文献】 実開平06−014479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじポンプ部と、該ねじポンプ部の吸込み側に連結されるとともに側面に吸込口を有するケーシングと、該ケーシングに対し前記ねじポンプ部とは反対の側から順に連結される水中軸受部およびマグネットカップリング部とを備える一軸偏心ねじポンプであって、
前記ねじポンプ部は、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部が駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、
前記水中軸受部は、前記駆動軸の先端側を回転自在に軸封支持する水中軸受を有し、
前記マグネットカップリング部は、前記駆動軸の基端側に連結された従動側マグネット部と、該従動側マグネット部とは隔壁部材によって仕切られるとともにモータの出力軸と一体で回転されて前記従動側マグネットを、磁力を介して回転駆動させる駆動側マグネット部とを有し、
前記水中軸受部が、前記ケーシング内に且つ前記吸込口に対向する位置まで軸方向に延出して設けられていることを特徴とする一軸偏心ねじポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネットカップリングを使用して無漏洩化した一軸偏心ねじポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の一軸偏心ねじポンプとしては、マグネットカップリングの従動側マグネットに駆動軸が接続され、この駆動軸からの回転力を、ユニバーサルジョイントを介してロータに伝達するものが使用されてきた(例えば特許文献1参照)。
このマグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプは、図2に例示する一軸偏心ねじポンプ100のように、吐出口150側にねじポンプ部140が設けられている。ねじポンプ部140は、雌ねじ状の内面を有する固定されたステータ141と、このステータ141内で回転駆動される雄ねじ状のロータ142とを備えている。
【0003】
そして、ねじポンプ部140の吸込み側にはケーシング130が連結されている。ケーシング130の上部には吸入口135が形成され、ケーシング130内に連結部131が設けられている。連結部131は、上記ロータ142の軸線方向に沿って配設されたコネクチングロッド133を有し、このコネクチングロッド133の両端が、二つのユニバーサルジョイント132,134によって、ロータ142の基端部と駆動軸108の先端部とをそれぞれ繋いでいる。そして、駆動軸108がマグネットカップリング部110を介して駆動モータ103に連絡されることで無漏洩化している。なお、連結部131と駆動軸108との間は、駆動軸108の先端部に設けられた軸受ケーシング120内の水中軸受122,123によって軸封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−315188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のマグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプにあっては、連結部にユニバーサルジョイントが用いられているため、一軸偏心ねじポンプの全長を長くしてしまうばかりでなく、ロータが駆動軸の回転軸線に対して振れ回りをすることになる。そのため、ロータや、ユニバーサルジョイントおよびコネクチングロッドに作用する遠心力によって水中軸受への負荷が大きくなるという問題がある。さらに、ユニバーサルジョイント自体が吸入口からの吸い込み通路を塞ぐことから、吸入口よりも駆動側に奥まった軸受ケーシング内に水中軸受のスラスト軸受摺動部を設定しなければならず、エア溜まり等によって水中軸受のドライ摺動が発生し易いという、水中軸受にとっては条件の悪い構造であった。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、マグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプにおいて、ポンプの全長を短くし得て、駆動軸に不要な遠心荷重が作用しない一軸偏心ねじポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ねじポンプ部と、該ねじポンプ部の吸込み側に連結されるとともに側面に吸込口を有するケーシングと、該ケーシングに対し前記ねじポンプ部とは反対の側から順に連結される水中軸受部およびマグネットカップリング部とを備える一軸偏心ねじポンプであって、前記ねじポンプ部は、雌ねじ状の内面を有する回転可能に支承されたステータと、該ステータに雄ねじ状の螺旋部が内挿されるとともに直線状の基端部が駆動軸に直結されたロータとを備え、前記ロータの回転軸線が前記ステータの回転軸線に対して所定距離だけ偏心して配置されるとともに、前記ロータの回転力で前記ステータを前記ロータの二分の一の回転数で追従回転させるように構成されており、前記水中軸受部は、前記駆動軸の先端側を回転自在に軸封支持する水中軸受を有し、前記マグネットカップリング部は、前記駆動軸の基端側に連結された従動側マグネットと、該従動側マグネットとは隔壁部材によって仕切られるとともにモータの出力軸と一体で回転されて前記従動側マグネットを、磁力を介して回転駆動させる駆動側マグネットとを有し、前記水中軸受部が、前記ケーシング内に且つ前記吸込口に対向する位置まで軸方向に延出して設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る一軸偏心ねじポンプによれば、ねじポンプ部のステータを回転可能に支承し、このステータの軸線から所定距離だけ偏心するようにロータの軸線を配置するとともに、ロータと駆動軸とを一体化し、この駆動軸に従動側マグネットを装着したので、ユニバーサルジョイントを不要とし得るため、ポンプの全長を短くすることができるとともに、駆動軸に不要な遠心荷重が作用しない。よって、水中軸受への負荷を軽減することができる。
【0008】
そして、本発明に係る一軸偏心ねじポンプによれば、前記水中軸受部が、前記ケーシング内に且つ前記吸込口に対向する位置まで軸方向に延出して設けられているので、エア溜まり等による水中軸受のドライ運転によるトラブル等を防止または抑制する上で好適である。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明によれば、ポンプの全長を短くし得て、駆動軸に不要な遠心荷重が作用しないマグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るマグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプの一実施形態を説明する図である。
図2】従来のマグネットカップリング方式の一軸偏心ねじポンプの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この一軸偏心ねじポンプ1は、ねじポンプ部40を有する。そして、このねじポンプ部40の吸込み側14にケーシング30が設けられている。ケーシング30は、自身側面(この例では回転軸線L2よりも上部)に吸込口35を有する。ねじポンプ部40のハウジング46とケーシング30の吐出側14(ねじポンプ部40の吸込み側でもある)とは、へルールクランプ43によって着脱可能に連結されている。また、ハウジング46の吐出側46tには吐出部50が締めねじ50aによって装着されている。
【0012】
そして、上記ケーシング30に対し、ねじポンプ部40とは反対の側から、不図示の締めねじによって水中軸受部20およびマグネットカップリング部10がこの順に連結されている。さらに、マグネットカップリング部10の基端側(同図の右側)には、モータブラケット2がボルト10aによって連結され、このモータブラケット2に駆動モータ3のフランジ3bがボルト3aによって固定されている。
【0013】
上記ねじポンプ部40は、円筒状のハウジング46内に、雄ねじ状のロータ42と、雌ねじ状の内面をもつステータ41とを備えている。ロータ42は、先端側の螺旋部42aと、直線状の基端部42bとから構成されている。基端部42bは、ユニバーサルジョイントを用いることなく、水平に配置された駆動軸8の先端に一体形成されることで直結している。そして、螺旋部42aは、自身の回転軸線L2に対して偏心した長円形断面を有しており、この螺旋部42aが、雌ねじ状の内面を形成したステータ41に内挿されている。そして、このステータ41の回転軸線L1に対して、上記ロータ42の回転軸線L2は、所定の偏心量Eだけ偏心して配置されている。なお、直線状の基端部42bの外径は、駆動軸8の外径よりも大きく、これにより、段部42dが形成されている。
【0014】
ステータ41は、その雌ねじ状のピッチがロータ42の螺旋部42aの2倍である。ステータ41は、その両端が、すべり軸受としての、円環状の自己潤滑軸受47、48を介して上記ハウジング46内に回転自在に支承されている。
この例では、ステータ41は、ステータ内筒41aと、このステータ内筒41aを軸方向の両側から挟み込むように形成された段付き形成のステータ外筒41bとを有して構成されている。また、ステータ内筒41aは、内側に焼き嵌めされたゴム製の内周部を有し、上記雌ねじ状の内面がこの内周部によって形成されている。ステータ外筒41bとステータ内筒41aとは、不図示の押しねじによって固定されることで全体として一体で回転するようになっている。そして、ケーシング30とハウジング46とには、相互が対向する側の内面に、凹の段部がそれぞれ形成されている。さらに、ステータ41の外周面には、ステータ外筒41bによって凸の段部が形成されており、ステータ外筒41bに、その凸の段部の両端部に自己潤滑軸受47、48が当接させつつ外嵌され、ケーシング30とハウジング46とをへルールクランプ43によって組み付けることでケーシング30とハウジング46相互の内面に形成された凹の段部の内側面が自己潤滑軸受47、48の軸方向への移動を拘束しつつ、ステータ41を回転自在に支持するように構成されている。
【0015】
上記水中軸受部20は、上記駆動軸8の先端側(同図の左側)を、鍔付きのブッシュ24を介して軸方向に離間した二つの水中軸受22,23によって回転自在に支承している。また、駆動軸8の先端側であって、ロータ42側の段部42d端面にはスラスト軸受25が装着されており、上記ねじポンプ部40のロータ42から受けるスラスト荷重を支持している。ここで、この水中軸受部20は、ケーシング30内に且つ吸込口35に対向する位置まで延出して設けられている。この例では、吸込口35の下部、つまり、吸込口35の中心軸L3の延長線M上の位置にスラスト軸受25の軸方向の中央の位置が一致する位置まで延出して配置されている。これにより、エア溜まり等による水中軸受20のドライ運転によるトラブル等を防止または抑制する効果を奏する。
【0016】
そして、マグネットカップリング部10は、モータ3の出力軸4とともに一体で回転する駆動側マグネット部5と、この駆動側マグネット部5から磁力を介して隔壁部材であるキャン6によって仕切られた、キャン6内部の従動側マグネット7を有する。駆動側マグネット部5の内周面には、周方向に沿って複数のアウタマグネット5aが配置される一方、従動側マグネット7の外周面には、周方向に沿って複数のインナマグネット7aがアウタマグネット5aに対向配置されている。これにより、モータ3が駆動されると駆動側マグネット部5が出力軸4とともに一体で回転し、駆動側マグネット部5のアウタマグネット5aから従動側マグネット7のインナマグネット7aに伝達された回転力によって従動側マグネット部7が回転駆動され、従動側マグネット部7とともに駆動軸8が一体で回転すると、この駆動軸8に直接接続されたロータ42が回転する。そして、ねじポンプ部10は、ロータ42がその回転軸線L2を中心として回転し、ロータ12の螺旋部12aの動きに伴ってステータ41もその回転軸線L1を中心としてロータ42の回転と同期してロータ42の二分の一の回転数で従動回転することにより、圧送流体を吸込口14から吐出口16に向けて圧送するようになっている。
【0017】
次に、この圧送装置の作用・効果について説明する。
この一軸偏心ねじポンプ1によれば、ステータ41を回転可能に支承するとともに、ステータ41の回転軸線L1から所定距離Eだけ偏心するようにロータ42の回転軸線L2を配置するとともに、駆動軸8とロータ42とを一体化しており、この駆動軸8に、マグネットカップリング部10の従動側マグネット部7を装着したので、一軸偏心ねじポンプ1の全長(軸方向長さ)を短くすることができるとともに、駆動軸8に不要な遠心荷重が作用しない。
【0018】
また、この一軸偏心ねじポンプ1によれば、ロータ42にかかるスラスト荷重を受けるスラスト軸受25の摺動部が、当該一軸偏心ねじポンプ1の吸込口35の下部、つまり、ケーシング30内に且つ吸込口35に対向する位置まで延出して配置されているので、エア溜まり等による水中軸受22,24のドライ運転によるトラブル等を防止または抑制することができる。
なお、本発明に係る一軸偏心ねじポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0019】
1 一軸偏心ねじポンプ
2 モータブラケット
3 モータ
4 出力軸
5 駆動側マグネット部
6 キャン(隔壁部材)
7 従動側マグネット部
8 駆動軸
10 マグネットカップリング部
14 吸込み側
20 水中軸受部
30 ケーシング
35 吸込口
40 ねじポンプ部
41 ステータ
42 ロータ
E 偏心の所定距離
L1 ステータの回転軸線
L2 ロータの回転軸線
図1
図2