(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740224
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】書き方学習シート及び書き方学習シートセット、並びにそれらを表示し記入可能な装置
(51)【国際特許分類】
G09B 11/04 20060101AFI20150604BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
G09B11/04
B42D15/00 301Q
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-143185(P2011-143185)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2012-32802(P2012-32802A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2010-147474(P2010-147474)
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594147235
【氏名又は名称】有限会社みかづき文化会館
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌史
【審査官】
櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3112249(JP,U)
【文献】
実開平8−1031(JP,U)
【文献】
実開昭55−116362(JP,U)
【文献】
特開2004−69799(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101577061(CN,A)
【文献】
登録実用新案第3069245(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0066074(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D1/00−15/00
15/04−19/00
G09B11/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数行複数列の正方の升が記載され、
縦書きの場合には、縦方向が行、横方向が列、最も右上の升が第1行第1列目の第1の升とされ、
横書きの場合には、横方向が行、縦方向が列、最も左上の升が第1行第1列目の第1の升とされ、
前記第1の升に対する行方向の升が第2の升、第3の升と順次並べられる1枚の図形又は文字の書き方学習シートであって、
前記第1の升には、予め画数及び筆順の定まった手本とする1つの図形又は文字である第1の線画が記載され、
前記第2の升には、前記第1の線画と同じ線画であって、前記第1の線画より色の薄い第2の線画が記載され、該第2の線画を構成する要素である少なくとも1つの画に沿って、又は重ねて、筆順を示す全ての色及び番号の少なくとも一方と、該全ての色及び番号の少なくとも一方によって示される筆順のそれぞれに対応した筆運びを示す指示線及び矢印とがそれぞれ記載され、
前記第3の升から始まる前記第1の線画の前記画数に対応する升には、前記第2の線画と、該第2の線画を構成する画に沿って、又は重ねて、該画に対応する前記色及び番号の少なくとも一方並びに前記指示線が1つずつ増加し、かつ追加されるように升順に記載され、
前記第3の升から始まる前記第1の線画の前記画数に対応する升の最後の升に続く升から、該最後の升の属する行の最終列の升までの各升には、前記第2の線画がそれぞれ記載されたことを特徴とする書き方学習シート。
【請求項2】
前記正方の升が、その中心を通る縦及び横の点線によって4つの正方の領域に分けられた請求項1に記載の書き方学習シート。
【請求項3】
前記最後の升の属する行の次行以降には、前記第2の線画が記載された升と、線画が記載されていない空白の升とが所定数ずつ交互に組み合わされた行を有する請求項1又は2に記載の書き方学習シート。
【請求項4】
前記所定数ずつ交互に組み合わされた行は、前記第2の線画が記載された升と前記空白の升とが1升ずつ交互に組み合わされた行である請求項3に記載の書き方学習シート。
【請求項5】
前記所定数ずつ交互に組み合わされた行は、前記第2の線画が記載された升の1升と、前記空白の升の2升とが交互に組み合わされた行である請求項3に記載の書き方学習シート。
【請求項6】
前記所定数ずつ交互に組み合わされた行を複数行有し、
改行するにつれて、交互に組み合わされる前記第2の線画が記載された升が減少するか、
又は交互に組み合わされる前記空白の升の数が増加するかの少なくとも一方である請求項3〜5のいずれか1項に記載の書き方学習シート。
【請求項7】
前記所定数ずつ交互に組み合わされた行の最終列の升は、前記空白の升である請求項3〜6のいずれか1項に記載の書き方学習シート。
【請求項8】
前記図形は、直線、曲線、円、楕円、三角形、四角形、五角形、六角形、波形又は星形のいずれかであり、前記文字は、数字、ひらがな、カタカナ、アルファベット又は漢字のいずれかにおける全部又は一部分である請求項1〜7のいずれかに記載の書き方学習シート。
【請求項9】
前記複数行複数列の正方の升からなる領域の外側に、各行ごとに前記手本とする文字を含むもの、又は事象の名称が記載された欄とそれに対応する絵が描かれた欄とをそれぞれ備える請求項8に記載の書き方学習シート。
【請求項10】
前記複数行複数列の正方の升からなる領域の外側に、氏名及び習熟度の記載欄を備える請求項1〜9のいずれかに記載の書き方学習シート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の書き方学習シートを、前記手本とする前記第1の線画の画数の少ない順に複数枚並べたことを特徴とする書き方学習シートセット。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の書き方学習シートを、前記手本とする前記第1の線画のその交差の少ない順に並べたこと特徴とする書き方学習シートセット。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の書き方学習シートを、前記手本とする前記第1の線画における交差及び前記第1の線画によって隔離される空間の少ない順に並べたこと特徴とする書き方学習シートセット。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の書き方学習シートを、請求項12又は13に記載の順序に複数枚並べたあと、更に前記順序を変えることなく前記手本とする前記第1の線画の画数の少ない順に並べ替えたことを特徴とする書き方学習シートセット。
【請求項15】
書き方学習シートの並び順が前記書き方学習シートのそれぞれに記載されている請求項11〜14のいずれか1項に記載の書き方学習シートセット。
【請求項16】
タッチパネル式の入力手段を有する表示画面を備え、
該表示画面上に、請求項1〜10のいずれかに記載の書き方学習シートの少なくとも一部、又は、請求項11〜15のいずれかに記載の書き方学習シートセットの少なくとも1枚の書き方学習シートの少なくとも一部を表示し、
前記入力手段により、前記表示画面に表示された前記書き方学習シート上に図形又は文字を記入可能な装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書き方学習シート及び書き方学習シートセット、並びにそれらを表示し記入可能な装置の発明であって、特に、幼児及び児童の、ひらがな、カタカナ、アルファベット及び漢字等の文字の書き方の習得を容易にするためのものである。
【背景技術】
【0002】
幼児及び児童は、一般的に、非特許文献1及び2のようなテキストを使用し、文字を筆順に従って繰り返しなぞることで、又は、文字を画数に応じて、段階的になぞることで、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字及び漢字等の文字の書き方を習得する。
【0003】
近年、幼児及び児童の文字習得において、様々な方法が研究され、それらの研究に基づく様々なテキストが販売されており、また、世間の関心も高まっている。特に、文字が読めるようになることに比べて、書けるようになることは習得し難く、いかに幼児及び児童に飽きさせずに繰り返し学習させるかがポイントとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小学ドリル 1年生のひらがな・カタカナのかきかた((株)くもん出版)
【非特許文献2】徹底反復 たかしま式 ひらがなれんしゅうちょう((株)小学館)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に発売されている非特許文献1のような文字習得教材では、一文字に対しての練習箇所が非常に少なく、前記非特許文献1をひととおり行っただけでは、幼児及び児童はひらがな等の文字を習得することは非常に困難であり、保護者は、同種類の文字習得教材を複数冊購入し、複数冊学習させる必要があった。
また、近年、非特許文献2のように、反復学習を目的とし、何度も文字を書かせることで文字習得を図る教材も販売されているが、文字を書くにつれて段階的に難易度が上がる等の仕組みが無く、単調な練習の繰り返しに飽きてしまう幼児及び児童が多かった。
【0006】
本発明は、上記従来の文字習得教材の問題点を解決し、幼児及び児童に飽きることなく反復学習を行わせることで、ひらがな、カタカナ、アルファベット及び漢字等の文字の書き方を無理なく習得できる書き方学習シート及び書き方学習シートセット、並びにそれらを表示し記入可能な装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数行複数列の正方の升が記載され、縦書きの場合には、縦方向が行、横方向が列、最も右上の升が第1行第1列目の第1の升とされ、横書きの場合には、横方向が行、縦方向が列、最も左上の升が第1行第1列目の第1の升とされ、前記第1の升に対する行方向の升が第2の升、第3の升と順次並べられる1枚の図形又は文字の書き方学習シートであって、前記第1の升には、予め画数及び筆順の定まった手本とする1つの図形又は文字である第1の線画が記載され、前記第2の升には、前記第1の線画と同じ線画であって、前記第1の線画より色の薄い第2の線画が記載され、該第2の線画を構成する要素である少なくとも1つの画に沿って、又は重ねて、筆順を示す全ての色及び番号の少なくとも一方と、該全ての色及び番号の少なくとも一方によって示される筆順のそれぞれに対応した筆運びを示す指示線及び矢印とがそれぞれ記載され、前記第3の升から始まる前記第1の線画の前記画数に対応する升には、前記第2の線画と、該第2の線画を構成する画に沿って、又は重ねて、該画に対応する前記色及び番号の少なくとも一方並びに前記指示線が1つずつ増加し、かつ追加されるように升順に記載され、前記第3の升から始まる前記第1の線画の前記画数に対応する升の最後の升に続く升から、該最後の升の属する行の最終列の升までの各升には、前記第2の線画がそれぞれ記載されたことを特徴とする書き方学習シートを提供する。
【0008】
また、前記正方の升が、その中心を通る縦及び横の点線によって4つの正方の領域に分けられることが好ましい。
【0009】
さらに、前記最後の升の属する行の次行以降には、前記第2の線画が記載された升と、線画が記載されていない空白の升とが所定数ずつ交互に組み合わされた行を有することが好ましく、前記所定数ずつ交互に組み合わされた行は、前記第2の線画が記載された升と前記空白の升とが1升ずつ交互に組み合わされた行であってもよく、前記第2の線画が記載された升の1升と、前記空白の升の2升とが交互に組み合わされた行であってもよい。
【0010】
さらにまた、前記所定数ずつ交互に組み合わされた行を複数行有し、改行するにつれて、交互に組み合わされる前記第2の線画が記載された升が減少するか、又は交互に組み合わされる前記空白の升の数が増加するかの少なくとも一方であってもよい。
【0011】
なお、前記所定数ずつ交互に組み合わされた行の最終列の升は、前記空白の升であってもよい。
【0012】
また、前記図形は、直線、曲線、円、楕円、三角形、四角形、五角形、六角形、波形又は星形のいずれかであり、前記文字は、数字、ひらがな、カタカナ、アルファベット又は漢字のいずれかにおける全部又は一部分であることが好ましく、前記複数行複数列の正方の升からなる領域の外側に、各行ごとに前記手本とする文字を含むもの、又は事象の名称が記載された欄とそれに対応する絵が描かれた欄とをそれぞれ備えることが好ましい。
【0013】
なお、前記複数行複数列の正方の升からなる領域の外側に、氏名及び習熟度の記載欄を備えてもよい。
【0014】
本発明は、前述の書き方学習シートを、前記手本とする前記第1の線画の画数の少ない順に複数枚並べたことを特徴とする書き方学習シートセットを提供してもよい。
その際の並び順は、前記手本とする前記第1の線画のその交差の少ない順に並べてもよく、前記手本とする前記第1の線画における交差及び前記第1の線画によって隔離される空間の少ない順に並べてもよい。
【0015】
さらに、前述の書き方学習シートセットを、前記手本とする前記第1の線画のその交差の少ない順、又は前記手本とする前記第1の線画における交差及び前記第1の線画によって隔離される空間の少ない順に複数枚並べたあと、更に前記順序を変えることなく前記手本とする前記第1の線画の画数の少ない順に並べ替えてもよい。
【0016】
その際、書き方学習シートの並び順が前記書き方学習シートのそれぞれに記載されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、タッチパネル式の入力手段を有する表示画面を備え、該表示画面上に、上述の書き方学習シートの少なくとも一部、又は、上述の書き方学習シートセットの少なくとも1枚の書き方学習シートの少なくとも一部を表示し、前記入力手段により、前記表示画面に表示された前記書き方学習シート上に図形又は文字を記入可能な装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、文字の書き方の習得において一定の反復学習量を確保するとともに、その学習難易度を段階的に上げることで、幼児及び児童が飽きることなく一定量の反復学習を行い、幼児及び児童が文字の書き方を習得するができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る書き方学習シートの全体図である。
【
図2】
図1に示す学習シートの第1行第1列の升(第1の升)の拡大図である。
【
図3】
図1に示す学習シートの第1行第2列の升(第2の升)の拡大図である。
【
図4】
図1に示す学習シートの第1行第3〜5列の升(第3〜第5の升)の拡大図である。
【
図5】
図1に示す学習シートの第1行第6列以降の第2の線画のみ記載された升の拡大図である。
【
図6】
図1に示す学習シートの欄外に設けられた氏名及び学習進度等の記載欄の一例である。
【
図7】
図1に示す学習シートの一部を表示可能なタッチパネル式表示画面を備える携帯情報端末の一例である。
【
図8】
図1に示す学習シートを拡大表示した、
図7に示す携帯情報端末のタッチパネル式表示画面の一例である。
【
図9】
図7に示す携帯情報端末とサーバとからなる無線ネットワークを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の実施の形態1に係る書き方学習シートを示す。書き方学習シート10は、所定の大きさの用紙に複数行複数列の正方の升が記載されている。
図1に示す書き方学習シートは、日本語のひらがなの書き方学習シートであるため、縦の並びを行とし、横の並びを列とする。
【0021】
図1に示す実施の形態1の書き方学習シート10は、一番右の行を第1行とし、左に進むにつれて、第2、第3行と進み、一番上の列を第1列とし、下に進むにつれて、第2、第3列と進む。
【0022】
実施の形態1では、
図1及び
図2に示すとおり、最も右上の第1行第1列の升(第1の升)20に、予め画数及び筆順の定まった手本とする1つの図形又は文字である第1の線画22(実施の形態1では、ひらがなの「あ」)が記載される。
【0023】
なお、
図1及び
図2に記載のとおり、それぞれの升には、その中心を通る縦及び横の点線によって、その升を4つの正方の領域に分ける縦の点線24a及び横の点線24bが記載されていてもよい。前記縦の点線24a及び前記横の点線24bにより、学習者は、升に対する画の始点及び終点の位置が認識しやすくなり、手本を真似て、手本に近い文字を書くことが可能となる。
【0024】
次に、
図1及び
図3に示すとおり、第1行第2列の升(第2の升)30に、前述の第1の線画と同じ線画であって、第1の線画より色の薄い第2の線画32が記載され、その第2の線画32を構成する要素である少なくとも1つの画に沿って、又は重ねて、その筆順を示す全ての番号34a、34b、34cと、その全ての番号によって示される筆順のそれぞれに対応した筆運びを示す指示線36a、36b、36c及び矢印38a、38b、38c、38dとが記載される。
【0025】
なお、
図1及び
図3に示される番号34a、34b、34cの代わりに、又は前述の番号とともにそれぞれ異なる色を用いてもよい。例えば、第1画が赤、第2画が黄、第3画が緑といった形式である。特に幼児にとっては、番号よりも色の方が理解しやすい。特に、色のみの場合、赤が最初、次に黄、最後に緑などと予め記載の順序を幼児に伝えておく必要がある。また、前記色は、前記筆順に応じて、例えば、暖色から寒色へ、色相、明度、彩度が段階的に変化するよう設定しても良い。
【0026】
また、
図1及び
図3に示される指示線36a、36b、36cは点線であるが、例えば、波線、二重線、又はそれぞれ異なる色の線等であってもよい。
【0027】
ここで、筆順を示す色及び番号の少なくとも一方とその全ての色及び番号の少なくとも一方によって示される筆順のそれぞれに対応した筆運びを示す指示線とは、画と一対一の対応をするが、矢印については、「とめ、はね、はらい」など、一見しただけでは筆運びが難しい箇所に設けられるため、画と一対一の対応はしていない。さらに、矢印は、本発明の実施例では、第2の線画32と重なることなくその外側に設けられているが、指示線等の上に複数重ねて設けられてもよい。
【0028】
なお、一般的に「画」といった場合、その予め画数及び筆順の定まった手本とする1つの図形又は文字を構成する要素の1つをいう。
【0029】
また、画数といった場合、には、「総画数」をいう場合と、第1画、第2画などのように序数的に用いられる場合とがあるが、本発明においては、「画数」はその文字の総画数を表す語として用い、序数を表すには「筆順」という語を用いる。
筆順を示す番号34a、34b、34cは、筆を運ぶ際の始点付近に記載され、学習者がその番号に従って第2の線画32におけるその画を書き始め易いように工夫されている。
【0030】
また、筆運びを示す指示線36a、36b、36cは、それらの画の中心付近に第2の線画32より濃く記載され、前述の番号34a、34b、34cに従って指示線36a、36b、36c上を鉛筆又はペン等の筆記具でなぞることで文字を筆順どおり正しく書くことができる。
【0031】
なお、一般的に画数及び筆順が定められていない図形等については、幼児及び児童が書きやすいように予め画数及び筆順を定めておく。
【0032】
図1及び
図4に示すとおり、第1行第3列の升(第3の升)40には、第2の線画32(実施例では、ひらがなの「あ」)が記載され、その第2の線画32上であってその文字の第1画に相当する部分に、前述の筆順を示す番号34a及び筆運びを示す指示線36aが、第1画分だけ記載されている。
【0033】
次の、第1行第4列の升(第4の升)42には、前述の第3の升と同様に、第2の線画32が記載され、その第2の線画32上であって、その文字の第1画に相当する部分の番号34a及び指示線36aに加えて、第2画に相当する部分の筆順を示す番号34b及び筆運びを示す指示線36bがそれぞれ記載されている。
【0034】
以下、手本となる文字の画数分まで、1升ごとに次の画の番号及び指示線が加えられていく。本実施例の場合は、ひらがなの「あ」であるので、3画分、つまり、第3の升から第1行第5列の升44(第5の升)まで、つまり第3画に相当する部分の筆順を示す番号34c及び筆運びを示す指示線36cまで、同様に前述の第2の線画32上に筆順を示す番号及び筆運びを示す指示線が追加されてゆく。
【0035】
ここで、総画数分の筆順を示す番号及び筆運びを示す指示線が追加された升を「最後の升」とする。本実施例の場合では、前述の第5の升44が最後の升となる。
実施例のように、ひらがなの場合は、画数が少ないため問題とならないが、漢字など手本となる文字の画数が多く、前記最後の升が、次行に及ぶ場合ももちろん想定される。
【0036】
図1及び
図5に示すとおり、前述の最後の升44に続く升から、最後の升44の属する行の最終列の升まで、前述の第2の線画32のみが記載された升50が続く。ここで行の最終列の升とは、手本とする文字を含むもの、又は事象の名称が記載された欄60とそれに対応する絵が描かれた欄70とのいずれかがある場合においても、それらの欄は含まず、幼児及び児童が実際に文字を記載する最終列の升のこと、つまり、
図1において、前述の名称が記載された欄60の上の升のことをいう。
【0037】
また、
図1に示すとおり、最後の升44の属する行の次行以降では、前述の第2の線画32は、第2行目14のように全ての升に記載されていても良いが、第4行目16のように1升おき、又は、第5行目18のように2升おきなど、所定の升おきに記載されていてもよい。
図1の第3行目〜第5行目のように、行が進むにつれて第2の線画の記載された升50に対して空白の升80の数を増やし間隔を開けることで、難易度を上げ、幼児及び児童が飽きることなく記憶の定着を図れるように工夫してもよい。
【0038】
一般的に、幼児及び児童が、連続して空白の升に文字を記載すると、その大きさや形状が徐々に崩れ、正確な文字習得の遅れの原因となる。
【0039】
一方、全ての升に見本となる文字が薄く記載されていたとすると、幼児及び児童は、文字を習得することなく文字を構成する画の上をなぞることだけに集中し、又は、画の上をなぞることに飽きてしまう。
【0040】
よって、前述の第2の線画32が全ての升に記載されているよりも、所定の升おきに記載されていた方が、再現の難しい分、学習効果が高まることが期待される。
【0041】
また、前述の空白の升80と同様に、升の中心を通る前記縦の点線24a及び前記横の点線24bについても、行が進むにつれて、段階的に記載されなくなってもよい。
【0042】
これらの前記縦の点線24a及び前記横の点線24bが記載されなくなることによって、記載する文字のそれぞれの画の始点位置及び終点位置の把握が難しくなり、再現が難しくなることで同様に学習効果が高まることが期待される。
【0043】
また、
図1に示すとおり、複数行複数列の正方の升からなる領域の外側に各行ごとに、手本とする文字を含むもの、又は事象の名称が記載された欄60とそれに対応する絵が描かれた欄70とを備える。例えば、第1行目の下にある名称が記載された欄60には「“あ”ひる」と記載されており、その下の絵が描かれた欄70にはあひるの絵が描かれている。同様にして、第2行目の下には、「“あ”め」の名称及び絵が、第3行目の下には、「“あ”くしゅ」の名称及び絵が、第4行目の下には、「こ“あ”ら」の名称及び絵が、第5行目の下には、「かなり“あ”」の名称及び絵が、それぞれ記載されている。
【0044】
幼児及び児童は、文字をなぞりつつ、その文字の使用例を絵で確認することで、その文字についての記憶の定着をより確かなものとすることができる。
【0045】
さらに、
図1及び
図6に示すとおり、欄外に氏名及び学習進度等の記載欄90を設けても良い。
図6に示す例には、学習日記載欄92、学習進度記載欄94及び氏名記載欄96が設けられている。シートに前述の氏名及び学習進度等の記載欄90を設けることで、教師等の学習指導者が、一文字ごとにその習得度を評価し、各幼児及び児童の学習状況を把握することで、苦手な文字については一定期間繰り返し練習させる等の措置を取ることが可能となる。
【0046】
図1に示す実施例は、手本となる文字が、日本語(ひらがな)であったため、縦書きであり、縦を行、横を列とし、一番右上を第1行第1列として、左に移動する度、第2行、第3行と、下に移動するたび、第2列、第3列と進む。これは手本となる文字がカタカナ及び漢字の場合も同様である。
【0047】
また、手本となる文字が、アルファベット又はアラビア数字である場合には、横書きのシートをであってもよい。この場合、横を行、縦を列とし、一番左上を第1行第1列として下に移動する度、第2行、第3行と、右に移動する度、第2列、第3列と進む。
【0048】
さらに、手本が簡単な図形である場合(直線、曲線、円、楕円、三角形、四角形、五角形、六角形、波型又は星型のいずれか)どちらの形式のシートでもよい。
前述のとおり、図形の場合には、予め画数及び筆順の定めておく必要がある。決まった画数及び筆順が無いためである。
【0049】
手本となる1つの文字に関する1枚のシート単体について説明したが、これらのシートは文字のカテゴリごとに組み合わされ、シートセットとして利用されても良い。
その場合、シートセットの並び順、つまり文字の学習順は、ひらがな・カタカナの場合は、あいうえお順、アルファベットの場合はABC順でも良いが、学習の難易度を徐々に上げていくため、画数順に並び変えても良い。
【0050】
例えば、ひらがなの場合は、「く、し、つ、て、へ、ろ、そ、の、ひ、ん、る」(第1画)、「い、う、こ、ら、り、と、え、ち、よ、す、ゆ、わ、れ、ね、み、め、ぬ」(第2画)「に、か、け、さ、も、せ、や、を、は、ま、む、お、あ」(第3画)、「ふ、た、き、な、ほ」(第4画)のように画数の多い順に並べてもよい。カタカナ、アルファベット、漢字などについても同様に、画数順に並べてもよい。
【0051】
また、画数に対して更に交点の数に応じて分類を設けてもよい。ひらがなの場合は、「く、し、つ、て、へ、ろ、そ、ひ、ん(交点:0)、の、る(交点:1)」(第1画)、「い、う、こ、ら、り、え(交点:0)、と、ち(交点:1)、よ、す、ゆ、み(交点:2)、わ、れ、め(交点:3)、ね、ぬ(交点:4)」(第2画)、「に(交点:0)、か、け、さ(交点:1)、も、せ、や、を、は、お、む(交点:2)、ま(交点:3)、あ(交点:4)」(第3画)、「ふ(交点:0)、た(交点:1)、き、な(交点:2)、ほ(交点:3)」(第4画)となる。
【0052】
また、交点の数に更に文字の線によって隔離された空間の数(例えば、“の”や“る”では1つ)も加えて、「く、し、つ、て、へ、ろ、そ、ひ、ん(交点+空間:0)、の、る(交点+空間:2)」(第1画)、「い、う、こ、ら、り、え(交点+空間:0)、と、ち(交点+空間:1)、わ、れ、よ、す、ゆ、み(交点+空間:3)、め、ね、(交点+空間:5)、ぬ(交点+空間:7)」(第2画)、「に(交点+空間:0)、か、け、さ(交点+空間:1)、も、せ、や、を(交点+空間:2)、は、お、む(交点+空間:3)、ま(交点+空間:4)、あ(交点+空間:6)」(第3画)、「ふ(交点+空間:0)、た(交点+空間:1)、き(交点+空間:2)、な(交点+空間:3)、ほ(交点+空間:4)」(第4画)としてもよい。
【0053】
さらに、交点+空間の数順に並べた上で、その中で画数順に並べてもよい。ひらがなの場合は、「く、し、つ、て、へ、ろ、そ、ひ、ん(第1画)、い、う、こ、ら、り、え(第2画)、に(第3画)、ふ(第4画)」(交点+空間:0)、「と、ち(第2画)、か、け、さ(第3画)、た(第4画)」(交点+空間:1)、「の、る(第1画)、も、せ、や、を(第3画)、き(第4画)」(交点+空間:2)、「わ、れ、よ、す、ゆ、み(第2画)、は、お、む(第3画)、な(第4画)」(交点+空間:3)、「ま(第3画)、ほ(第4画)」(交点+空間:4)、「め、ね、(第2画)」(交点+空間:5)、「あ(第3画)」(交点+空間:6)、「ぬ(第2画)」(交点+空間:7)となる。
【0054】
本発明の書き方学習シート10を上述の順番で並べ、書き方学習シートセットとすることで、習得すべき文字が、学習が進むにつれて複雑になり、幼児・児童は、途中で飽きることなく、進度に応じた学習を行うことができる。
【0055】
なお、これらの順番は、一般的な「あいうえお」順又は「いろは」順と異なるので、その順番が分かるようにシート下側に並び番号100を設けることが望ましい。
図1においては、交点+空間の数順に並べた上で、更にその中で画数順に並べた場合の“あ”の並び番号「45」が記載されている。
【0056】
次に、本願発明の書き方学習シート10の使用方法について説明する。
本願発明の書き方学習シート10(又は、書き方学習シートセット)の「“あ”の書き方学習シート」が配布された幼児及び児童は、学習指導者の指示に従い、第1の升20に示された手本の文字である第1の線画22を確認し、第2の升30の筆順を示す番号34a、34b及び34cと、それに対応した筆運びを示す指示線36a、36b及び36c並びに矢印38a、38b、38c及び38dとを確認しつつ、第3の升40の第1画、筆順を示す番号34aとそれに対応した筆運びを示す指示線36aとに従って、その指示線上を鉛筆、サインペン等の筆記用具でなぞる。
【0057】
次に、第4の升42において、前述の第1画に加えて第2画、筆順を示す番号34bとそれに対応した筆運びを示す指示線36bとに従って、その指示線上を前述の筆記用具でなぞる。
【0058】
さらに、第5の升(最後の升)44において、前述の第1画及び第2画に加えて第3画、筆順を示す番号34cとそれに対応した筆運びを示す指示線36cとに従って、その指示線上を前述の筆記用具でなぞる。これにより、最後の升44において、「ひらがな“あ”」の全ての画を、筆順どおりになぞったこととなる。
【0059】
そして、最後の升44に続く升から、第1の線画の記載された第1の升20、第2の線画と筆順及び筆運びとが記載された第2の升30、自らが筆順及び筆運びを確認した第3の升40〜第5の升(最後の升)44を踏まえて、第2の線画32のみ記載された升50を、その筆順及び筆運びのとおりになぞる。
【0060】
第2の線画32のみ記載された升50を次行(第2行目)14以降も複数回繰り返しなぞることで、その文字(ひらがな“あ”)の書き方を習得する。
【0061】
また、第4行目16のように第2の線画32のみ記載された升50の間に空白の升80を設け、第5行目18のように、第4行目16よりも空白の升80の間隔を大きくしたことで、前述の空白の升80では、前述の第2の線画32を確認することなくその文字を書き、また、前述の第2の線画32を確認することなく文字を書くことに段階的に慣れることで、幼児及び児童は、飽きることなくその文字を繰り返し学習し、その記憶の定着を確かなものにできる。
【0062】
なお、前述の書き方学習シート10を前述の所定の順に複数枚並べた、書き方学習シートセットの使用方法については、前述のシートセットを構成する書き方学習シート10に変わりは無いため、基本的には前述の書き方学習シート10の使用方法と同様である。
【0063】
前述の書き方学習シートセットについては、幼児及び児童が学習後、学習指導者がその学習状況をチェックし、学習状況に応じて、その並び順を変え、又は、その書き方学習シートセットから所定範囲の並び部分を抜き出して、再度、幼児及び児童に学習をさせてもよい。
【0064】
幼児及び児童の学習が不十分な範囲を再度学習させることで、その範囲の文字及び図形の書き方を確実に習得させることができる。
【0065】
また、上述の書き方学習シート及び書き方学習シートセットは、その媒体として紙を想定しているが、これに限らず、例えば、タブレットPC等、
図7に示すタッチパネル式表示画面を備える携帯情報端末などの装置において利用されてもよい。
【0066】
タッチパネル式表示画面を備える携帯情報端末110は、入力手段(記入手段)及び表示手段であるタッチパネル式表示画面112と、図示しないCPU(中央処理装置)、RAM(主記憶装置)、及び、ハードディスク又はフラッシュメモリ等で構成されるコンピュータとによって構成される。
また、タッチパネル式表示画面112には、静電式タッチパネル及び感圧式タッチパネル等、種々の公知のタッチパネルを利用することができる。
【0067】
また、書き方学習シート及び書き方学習シートセットの情報は、携帯情報端末のハードディスク又はフラッシュメモリ等において記録され、必要に応じて読み出され、RAMに記憶されて、タッチパネル式表示画面112上に表示される。
【0068】
携帯情報端末110の表示画面112に表示された書き方学習シートは、図示しない操作入力部又はタッチパネル式表示画面を操作することにより表示倍率の拡大及び縮小が可能であり、
図8に示すように、学習者が文字及び図形を記入し易い大きさに調整することができる。
また、調整後に限らず、書き方学習シートにおいて、学習者は、指又はタッチパネル専用のペン等によって、表示画面112上の書き方学習シートに文字及び図形を記入することができる。
【0069】
また、前述の携帯情報端末110は、図示しない判定手段を備え、書き方学習シートに記載された文字及び図形の筆順及び筆運び(を示す指示線)と、学習者が記入した文字及び図形との一致・不一致又は一致率を判定し、記入後にそれらを表示してもよく、また、上述の筆順及び筆運びが不一致の文字及び図形、一致率の低い文字及び図形はもちろん、記入された全ての文字及び図形について、上述のハードディスク又はフラッシュメモリ等にそれらのデータを記憶してもよい。
なお、前述の図示しない判定手段は、前述のCPU及びRAMによって構成され、前述の一致・不一致又は一致率の判定には、図形のパターンマッチングの手法等の種々の公知の手法を用いることができる。
【0070】
また、前述の図示しない判定手段は、1つの文字又は図形が1つの升に記入されたことを判定し、学習者が次の升に入力(記入)し易いように、学習シートを表示画面上で自動で移動させてもよい。
【0071】
また、前述の携帯情報端末110は、
図9に示すように、無線ネットワーク116によってサーバ114に接続され、上述のハードディスク又はフラッシュメモリ等に保存された各学習者の学習の進捗状況等のデータが収集されてもよい。
各学習者の学習の進捗状況等のデータが、収集されることで、指導者は、各学習者の進捗状況を簡単に、リアルタイムで把握でき、学習シートの採点はもちろん、学習者ごとに進捗状況に応じた学習指導をすることができる。
【0072】
本発明は、基本的に以上のようなものである。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良及び変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
10 書き方学習シート
20 第1の線画が記載された升(第1の升)
22 第1の線画
24a 縦の点線
24b 横の点線
30 第2の線画と、筆順を示す番号と、筆運びを示す指示線及び矢印とが記載された升(第2の升)
32 第2の線画
34a、34b、34c 筆順を示す番号
36a、36b、36c 筆運びを示す指示線
38a、38b、38c、38d 筆運びを示す矢印
40 第2の線画に、第1画の番号及び指示線が記載された升(第3の升)
42 第2の線画に、第2画までの番号及び指示線が記載された升(第4の升)
44 第2の線画に、最終画までの番号及び指示線が記載された升(第5の升:最後の升)
50 第2の線画のみ記載された升
60 名称が記載された欄
70 絵が描かれた欄
80 空白の升
90 氏名及び学習進度等の記載欄
92 学習日記載欄
94 学習進度記載欄
96 氏名記載欄
100 並び番号
110 携帯情報端末
112 タッチパネル式表示画面
114 サーバ
116 無線ネットワーク