(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の本実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の変速比が車両の発進時などに使用される最大変速比である。「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比である。
【0011】
図1は本発明の本実施形態に係るコーストストップ車両の概略構成図である。この車両は駆動源としてエンジン1を備え、エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ2a付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。車両はエンジン1のクランクシャフトを回転させて、エンジン1を始動させるスターター50を備える。
【0012】
変速機4には、エンジン1の回転が入力されエンジン1の動力の一部を利用して駆動されるメカオイルポンプ10mと、バッテリ13から電力供給を受けて駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられている。電動オイルポンプ10eは、オイルポンプ本体と、これを回転駆動する電気モータ及びモータドライバとで構成され、運転負荷を任意の負荷に、あるいは、多段階に制御することができる。また、変速機4には、メカオイルポンプ10mあるいは電動オイルポンプ10eからの油圧(以下、「ライン圧」という。)を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11が設けられている。
【0013】
変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。あるいは、副変速機構30はバリエータ20の前段(入力軸側)に接続されていてもよい。
【0014】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備える。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板21a、22aと、この固定円錐板21a、22aに対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板21a、22aとの間にV溝を形成する可動円錐板21b、22bと、この可動円錐板21b、22bの背面に設けられて可動円錐板21b、22bを軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bの各プーリ油圧室に供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0015】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34の各ピストン油圧室への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。
【0016】
例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速である場合に「変速機4が低速モードである」と表現し、2速である場合に「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0017】
各摩擦締結要素は、動力伝達経路上、バリエータ20の前段又は後段に設けられ、いずれも締結されると変速機4の動力伝達を可能にし、解放されると変速機4の動力伝達を不能にする。
【0018】
コントローラ12は、エンジン1及び変速機4を統合的に制御するコントローラであり、
図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0019】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(プライマリプーリ21の回転速度)を検出する回転速度センサ42の出力信号、変速機4の出力回転速度(セカンダリプーリ22の回転速度)を検出する回転速度センサ48の出力信号、車速VSPを検出する車速センサ43の出力信号、ライン圧を検出するライン圧センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、ブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサ46の出力信号、エンジン1のクランクシャフトの回転速度を検出するエンジン回転速度センサ47の出力信号、変速機4に供給される油の油温を検出する油温センサ49の出力信号等が入力される。
【0020】
記憶装置122には、エンジン1の制御プログラム、変速機4の変速制御プログラム、これらプログラムで用いられる各種マップ・テーブルが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されているプログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して、燃料噴射量信号、点火時期信号、スロットル開度信号、変速制御信号、電動オイルポンプ10eの駆動信号を生成し、生成した信号を出力インターフェース124を介してエンジン1、油圧制御回路11、電動オイルポンプ10eのモータドライバに出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0021】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにメカオイルポンプ10m又は電動オイルポンプ10eで発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0022】
図3は記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。コントローラ12は、この変速マップに基づき、車両の運転状態(この実施形態では車速VSP、プライマリ回転速度Npri、セカンダリ回転速度Nsec、アクセル開度APO)に応じて、バリエータ20、副変速機構30を制御する。
【0023】
この変速マップでは、変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとにより定義される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比に副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比」という。)に対応する。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、
図3には簡単のため、全負荷線(アクセル開度APO=8/8の場合の変速線)、パーシャル線(アクセル開度APO=4/8の場合の変速線)、コースト線(アクセル開度APO=0/8の場合の変速線)のみが示されている。
【0024】
変速機4が低速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0025】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「低速モードレシオ範囲」)と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「高速モードレシオ範囲」)とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にある場合は、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0026】
また、この変速マップ上には副変速機構30の変速を行うモード切換変速線が低速モード最High線上に重なるように設定されている。モード切換変速線に対応するスルー変速比(以下、「モード切換変速比mRatio」という。)は低速モード最High変速比と等しい値に設定される。モード切換変速線をこのように設定するのは、バリエータ20の変速比が小さいほど副変速機構30への入力トルクが小さくなり、副変速機構30を変速させる際の変速ショックを抑えられるからである。
【0027】
そして、変速機4の動作点がモード切換変速線を横切った場合、すなわち、スルー変速比の実際値(以下、「実スルー変速比Ratio」という。)がモード切換変速比mRatioを跨いで変化した場合は、コントローラ12は以下に説明する協調変速を行い、高速モード−低速モード間の切り換えを行う。
【0028】
協調変速では、コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する。この時、副変速機構30の変速比が実際に変化するイナーシャフェーズとバリエータ20の変速比が変化する期間を同期させる。バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比変化と逆の方向に変化させるのは、実スルー変速比Ratioに段差が生じることによる入力回転の変化が運転者に違和感を与えないようにするためである。
【0029】
具体的には、変速機4の実スルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioをLow側からHigh側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(1−2変速)するとともに、バリエータ20の変速比をLow側に変更する。
【0030】
逆に、変速機4の実スルー変速比Ratioがモード切換変速比mRatioをHigh側からLow側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(2−1変速)するとともに、バリエータ20の変速比をHigh側に変更する。
【0031】
コントローラ12は、燃料消費量を抑制するために、以下に説明するコーストストップ制御を行う。
【0032】
コーストストップ制御は、低車速域で車両が走行している間、エンジン1を自動的に停止(コーストストップ)させて燃料消費量を抑制する制御である。アクセルオフ時に実行される燃料カット制御とは、エンジン1への燃料供給が停止される点で共通するが、ロックアップクラッチ2aを解放してエンジン1と駆動輪7との間の動力伝達経路を絶ち、エンジン1の回転を完全に停止させる点において相違する。
【0033】
コーストストップ制御を実行するにあたっては、コントローラ12は、まず、例えば以下に示す条件a〜cなどを判断する。これらの条件は、言い換えれば、運転者に停車意図があるかを判断するための条件である。
【0034】
a:アクセルペダルから足が離されている(アクセル開度APO=0)。
【0035】
b:ブレーキペダルが踏み込まれている(ブレーキ液圧が所定値以上)。
【0036】
c:車速が所定の低車速(例えば、9km/h)以下である。
【0037】
これらのコーストストップ条件(所定の条件)が全て満たされる場合には、コントローラ12は、エンジン1を自動停止するための信号を出力し、エンジン1への燃料噴射を停止し、コーストストップ制御を実行する。一方、上記コーストストップ条件のいずれかが満たされなくなった場合には、コントローラ12は、エンジン1を再始動するための信号を出力し、エンジン1への燃料噴射を再開し、コーストストップ制御を終了する。
【0038】
次に本実施形態のコーストストップ制御について
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
ステップS100では、コントローラ12は、上記したコーストストップ条件を全て満たすかどうか判定する。コントローラ12は、コーストストップ条件を全て満たす場合にはステップ101に進み、コーストストップ条件のいずれかが満たされていない場合には本制御を終了する。コーストストップ条件が全て満たされると、コントローラ12はエンジン1を自動停止するための信号である自動停止指令を出力する。
【0040】
ステップS101では、コントローラ12は、エンジン1を自動停止してコーストストップ制御を開始する。
【0041】
ステップS102では、コントローラ12は、ドライバに発進意図がないかどうか判定する。コントローラ12は、ドライバに発進意図がない場合にはステップS103へ進み、ドライバに発進意図がある場合にはステップS108へ進む。コントローラ12は、アクセルペダルが踏み込まれた場合、ブレーキペダルが踏み込まれていない場合などに発進意図があると判定する。
【0042】
ステップS103では、コントローラ12は、エンジン1が停止しているかどうか判定する。コントローラ12は、エンジン1が停止している場合にはステップS104へ進み、エンジン1が停止していない場合にはステップS101へ戻り上記制御を繰り返す。コントローラ12は、エンジン回転速度センサ47からの信号に基づいてエンジン回転速度がゼロとなっている、または停止していると判断できる所定速度以下となっている場合にエンジン1が完全に停止していると判定する。
【0043】
ステップS104では、コントローラ12は、電動オイルポンプ10eに異常が発生しているかどうか判定する。コントローラ12は、電動オイルポンプ10eに異常が発生している場合にはステップS105へ進み、電動オイルポンプ10eに異常が発生していない場合にはステップS101へ戻り、上記制御を繰り返す。コントローラ12は、電動オイルポンプ10eが電気的に断線している場合、電動オイルポンプ10eから吐出される油圧が正常時の油圧よりも低い場合などに電動オイルポンプ10eに異常が発生していると判定する。
【0044】
ステップS105では、コントローラ12は、タイマによるカウントを開始する。
【0045】
ステップS106では、コントローラ12は、タイマのカウントが所定時間(第1所定時間)となったかどうか判定する。コントローラ12は、タイマのカウントが所定時間となっていない場合にはステップS107へ進み、タイマのカウントが所定時間となった場合にはステップS108へ進む。所定時間は、エンジン1が停止した後に、変速機4に供給されている油量が車両の発進性が低下する所定油量以下となり、再発進時にスムーズに発進できなくなるまでの時間である。所定時間は、予め実験などによって設定される。変速機4の油量とは、バリエータ20のプーリ油圧室、副変速機構30のピストン油圧室、プーリ油圧室とメカオイルポンプ10mまたは電動オイルポンプ10eとを連通する油路、およびピストン油圧室とメカオイルポンプ10mまたは電動オイルポンプ10eとを連通する油路における油の量である。
【0046】
エンジン1が自動停止してメカオイルポンプ10mから油が吐出されなくなり、かつ電動オイルポンプ10eに異常が発生し、電動オイルポンプ10eからも油が吐出されない場合には、バリエータ20のプーリ油圧室、副変速機構30のピストン油圧室、油圧室に連通する油路からは油がリークし、油圧室、油路の油量は次第に少なくなる。再発進時には、Vベルト23でベルト滑りが発生せずに駆動力の伝達が可能となるように、また例えばLowブレーキ32が素早く締結するように所望の油圧を発生させる必要がある。しかし、油圧室、油路に油量が少ない場合には、まず油圧室、油路に油を充填し、さらに油を油圧室、油路に供給しなければ、所望の油圧を発生させることができない。すなわち、油圧室、油路の油量が少なくなると、所望の油圧を発生させるまでの時間が長くなる。所望の油圧を発生させるまでの時間が長くなると、バリエータ20では、再発進時のVベルト23の挟持力が小さくなり、再発進時に駆動輪7へ伝達される駆動力が小さくなる。また、ベルト滑りにより、Vベルト23などが劣化するおそれがある。また、所望の油圧を発生させるまでの時間が長くなると、副変速機構30では、例えばLowブレーキ32を締結するまでの時間が長くなり、駆動輪7へ駆動力が伝達されるまでの時間が長くなる。このように変速機4に油を供給する間、車両の発進性が低下する。そのため、本実施形態では、電動オイルポンプ10eに異常が発生した場合には、エンジン1の停止後の時間をカウントし、再発進時の発進性が低下する前にステップS108へ進む。
【0047】
ステップS107では、コントローラ12は、車両が停車したかどうか判定する。コントローラ12は、車両が停車した場合には次回の発進に備えてステップS108に進み、車両が停車していない場合にはステップS101へ戻り上記制御を繰り返す。コントローラ12は、車速センサ43からの出力信号に基づいて車速を検出し、車速がゼロ、または停車していると判断できる所定車速以下となると、車両が停車していると判定する。
【0048】
ステップS102でドライバに発進意図があるとコントローラ12が判定した場合、ステップS106で変速機4の油量が低下し、再発進時の車両の発進性が低下するとコントローラ12が判定した場合、およびステップS107で車両が停車しているとコントローラ12が判定した場合にステップS108へ進む。つまり、エンジン1の停止以外であって運転者からの駆動力要求に対する駆動力応答性の低下を判断可能なパラメータに基づいてエンジン1を再始動するとコントローラ12が判定した場合に、コントローラ12はステップS108に進む。エンジン1の停止以外であって運転者からの駆動力要求に対する駆動力応答性の低下を判断可能なパラメータに基づいてエンジン1を再始動するとは、ドライバの操作によってエンジン1を再始動すること、または車両の停止しエンジン1を再始動すること、または変速機4の油量が所定油量以下となりエンジン1を再始動することである。
【0049】
ステップS108では、コントローラ12は、コーストストップ制御を終了し、エンジン1を再始動させる。これにより、メカオイルポンプ10mが駆動し、メカオイルポンプ10mから油が吐出され、変速機4に油を供給する。なお、タイマのカウントはコーストストップ制御が終了するとリセットされる。
【0050】
次にコーストストップ制御を実行した場合のタイムチャートについて説明する。
【0051】
図5は車速がゼロとなってコーストストップ制御を終了する場合のタイムチャートである。なお、以下においては電動オイルポンプ10eには異常が発生しているものとする。また、変速機4の油量として副変速機構30の油量を例として説明する。
【0052】
時間t0において、車速が所定の低車速となり、コーストストップ条件が全て満たされるとコーストストップ制御を開始する。これにより、エンジン1が自動停止し、エンジン回転速度が徐々に低下する。また、エンジン1が自動停止することで、メカオイルポンプ10mから供給される油が低下し、電動オイルポンプ10eに異常が発生し、電動オイルポンプ10eからも油が供給されないので、副変速機構30の油量が低下する。
【0053】
時間t1において、エンジン1が停止する。エンジン1が停止するとタイマのカウントを開始する。
【0054】
時間t2において、車速がゼロとなり、車両が停車するとコーストストップ制御を終了し、エンジン1を再始動する。エンジン1が再始動するとメカオイルポンプ10mから油が吐出され、副変速機構30に油が供給される。また、タイマのカウントは所定時間となる前にリセットされる。
【0055】
図6はタイマのカウントが所定時間となってコーストストップ制御を終了する場合のタイムチャートである。
【0056】
時間t0において、車速が所定の低車速となり、コーストストップ条件が全て満たされるとコーストストップ制御を開始する。これにより、エンジン1が自動停止し、エンジン回転速度が徐々に低下する。また、エンジン1が自動停止することで、メカオイルポンプ10mから供給される油が低下し、電動オイルポンプ10eに異常が発生し、電動オイルポンプ10eからも油が供給されないので、副変速機構30の油量が低下する。
【0057】
時間t1において、エンジン1が停止する。エンジン1が停止するとタイマのカウントを開始する。
【0058】
時間t2において、タイマのカウントが所定時間となるとコーストストップ制御を終了し、エンジン1を再始動する。これにより、メカオイルポンプ10mによって吐出される油が副変速機構30に供給され、副変速機構30における油量の低下が抑制される。
【0059】
時間t3において、車両は停車する。この場合には、車両が停車する前にコーストストップ制御が終了し、エンジン1が再始動する。
【0060】
図7はドライバによる発進意図によってコーストストップ制御を終了する場合のタイムチャートである。
【0061】
時間t0において、車速が所定の低車速となり、コーストストップ条件が全て満たされるとコーストストップ制御を開始する。これにより、エンジン1が自動停止し、エンジン回転速度が徐々に低下する。また、エンジン1が自動停止することで、メカオイルポンプ10mから供給される油が低下し、電動オイルポンプ10eに異常が発生し、電動オイルポンプ10eからも油が供給されないので、副変速機構30の油量が低下する。
【0062】
時間t1において、エンジン1が停止する。エンジン1が停止するとタイマのカウントを開始する。
【0063】
時間t2において、ドライバによるブレーキペダルの踏み込みがなくなると、コーストストップ制御を終了し、エンジン1を再始動する。この場合、車両が停車する前、およびタイマのカウントが所定時間となる前にコーストストップ制御が終了し、エンジン1は再始動する。
【0065】
コーストストップ制御を実行し、電動オイルポンプに異常が発生すると、メカオイルポンプおよび電動オイルポンプから油が吐出されなくなり、バリエータの油圧室、副変速機構の油圧室、および油圧室に連通する油路の油量が少なくなる。そのため、再始動時にバリエータ、副変速機構で所望する油圧を発生させるには、まず油圧室、油路に油を充填し、その後さらに油を油路、油圧室に供給する必要がある。油圧室、油路の油量が少なくなると、再始動時にバリエータ、副変速機構で所望する油圧を発生させるまでの時間が長くなり、再始動時にエンジンから駆動輪への駆動力伝達が遅くなり、車両の発進性が低下するおそれがある。また、バリエータでベルト滑りが発生するおそれがある。
【0066】
本実施形態では、コーストストップ制御を実行し、電動オイルポンプ10eに異常が発生している場合であっても、駆動源が自動停止する以外のパラメータに基づいてコーストストップ制御を終了すると判定されるまでの間、コーストストップ制御を継続する。これによって、エンジン1の再始動時に駆動力を素早く駆動輪7に伝達することができ、車両の発進性が低下することを抑制することができ、ベルト滑りを抑制することができる。また、電動オイルポンプ10eに異常が発生している場合でも、すぐにエンジン1を再始動しないので、コーストストップ制御が行われる時間を長くすることができる。そのため、エンジン1で消費される燃料を少なくし、燃費を向上することができる(請求項1に対応する効果)。
【0067】
車両が停車した場合に、エンジン1を再始動することで、再始動時に駆動輪7に素早く駆動力を伝達することができ、車両の発進性が低下することを抑制することができる。また、車両が停止した場合に、エンジン1を再始動することで、再発進に備えて変速機4には油が供給されるので、ドライバの発進意図に応じて素早く発進することができる(請求項2に対応する効果)。
【0068】
コーストストップ制御を実行しており、電動オイルポンプに異常が発生している場合には、メカオイルポンプおよび電動オイルポンプから油が吐出されていないので、バリエータの油圧室、副変速機構の油圧室、および油路の油量が低下する。そのため、再始動時には、油圧室、および油路に油を充填し、さらに油を油圧室、および油路に供給しなければバリエータ、および副変速機構で所望の油圧を発生させることができず、所望の油圧を発生させるまでの時間が長くなる。本実施形態を用いずに、車両が登坂路を走行中にコーストストップ制御を実行しており、電動オイルポンプに異常が発生した場合には、車両が停車した後にブレーキペダルの踏み込みがなくなり、アクセルペダルが踏み込まれると、油圧室、および油路に油が供給され、所望する油圧を発生させることができるまでの間、駆動輪7に駆動力が伝達されず、ブレーキペダルによる制動力もなくなるので、車両が後退するおそれがある。
【0069】
本実施形態では、車両が停車するとエンジン1を再始動させ、バリエータ20の油圧室、副変速機構30の油圧室、および油路に油を充填し、バリエータ20および副変速機構30で所望の油圧を発生させるので、アクセルペダルが踏み込まれると駆動輪7に駆動力を伝達させることができ、上記のようなブレーキペダルの踏み込みがなくなり、アクセルペダルが踏み込まれた場合でも、車両が後退することを抑制することができる(請求項2に対応する効果)。
【0070】
また、本実施形態を用いずに、エンジンが停止した直後にエンジンを再始動すると、エンジンが停止してから車両が停止するまでの時間が長い場合、例えば車両が下り勾配を走行中している場合でもエンジンが停止した直後にエンジンが再始動する。
【0071】
本実施形態では、エンジン1が停止してから車両が停車するまでの間は、コーストストップ制御が実行されるので、本実施形態を用いない場合と比較すると、この間の燃費を向上することができる(請求項2に対応する効果)。
【0072】
コーストストップ制御を実行しており、電動オイルポンプに異常が発生している場合には、メカオイルポンプおよび電動オイルポンプから油が吐出されていないので、バリエータの油圧室、副変速機構の油圧室、および油路の油量が低下する。油量が低下すると、再始動時にバリエータの油圧室、副変速機構の油圧室、および油路に油を供給して、バリエータ、副変速機構で所望する油圧を発生させるまでの時間が長くなり、車両の発進性が低下するおそれがある。
【0073】
本実施形態では、バリエータ20、副変速機構30などの油量が少なくなり、再発進性が低下する場合に、エンジン1を再始動することで、コーストストップ制御を長く実行し、燃費を向上しつつ、再発進時に駆動力を駆動輪7に素早く伝達し、発進性が低下することを抑制することができる(請求項3に対応する効果)。
【0074】
エンジン1が停止してからのタイマのカウントが所定時間となると油量が不足すると判定する。電動オイルポンプ10eに異常が発生している場合でも、エンジン1が停止する前は、メカオイルポンプ10mから油圧がバリエータ20などに供給される。本実施形態では、エンジン1が停止し、メカオイルポンプ10mから油が吐出されなくなってからの経過時間に基づいて変速機4における油量低下を判定することで、油量低下を正確に判定することができる(請求項4に対応する効果)。
【0075】
エンジン1が自動停止した後に、電動オイルポンプ10eで異常が発生しているかどうか判定することで、故障判断機能が付いていない電動オイルポンプ10eであっても、油圧を検出することにより電動オイルポンプ10eの異常判定を行うことができる。故障判断機能とは、電動オイルポンプ10eのモータ回転速度や、電流値などに基づいて、電動オイルポンプ10eの故障を判断することができる機能である。すなわち、故障判断機能が付いた電動オイルポンプ10eは、故障判断のための他のセンサを必要としない。故障判断機能が付いていない電動オイルポンプ10eは、電動オイルポンプ10eの吐出圧を油圧センサにより検知して指示通りの吐出圧が出ているか確認することで故障を判断するなど、電動オイルポンプ10e以外に他のセンサが必要となる。本実施形態では、エンジン1が自動停止し、メカオイルポンプ10mから油が吐出されなくなった後に、電動オイルポンプ10eで異常が発生しているかどうか判定することで、新たに他のセンサを設けずに異常判定を行うことができ、コストを抑制することができる(請求項7に対応する効果)。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【0077】
本実施形態では、エンジン1が停止してからタイマによってカウントを開始したが、エンジン1の自動停止が指示されてからタイマによってカウントを開始してもよい。これによっても同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、油温センサ49によって検出する油温が低い程、所定時間を長くしてもよい。油温が低い場合には油の粘性が高くなり、バリエータ20などからリークする油量が少なくなる。そのため、油温が低くなるにつれて所定時間を長くすることで、バリエータ20などで油不足を抑制しつつ、コーストストップ制御が実行される時間を長くすることができ、燃費を向上することができる。
【0079】
また、エンジンの代わりに駆動用モータと、駆動用モータによって駆動するオイルポンプを備えた電動車両などに用いてもよい。
【0080】
また、前後進切替機構を有する車両、有段変速機を有する車両などに用いてもよい。