特許第5740300号(P5740300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740300
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】経皮投与製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20150604BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20150604BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20150604BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150604BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20150604BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   A61K31/343
   A61K31/573
   A61K9/70 401
   A61K47/32
   A61P25/24
   A61P17/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-501555(P2011-501555)
(86)(22)【出願日】2010年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2010052249
(87)【国際公開番号】WO2010098230
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2009-46893(P2009-46893)
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】新 健治
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−516928(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/050673(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/082888(WO,A1)
【文献】 米国特許第06512010(US,B1)
【文献】 特表2006−503905(JP,A)
【文献】 特開平02−036177(JP,A)
【文献】 特表2004−527551(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/103687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A61K 9/70
A61K 31/573
A61K 47/32
A61P 17/00
A61P 25/24
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュウ酸エスシタロプラムによる皮膚刺激を低減するための経皮投与製剤であって、シュウ酸エスシタロプラムと全質量基準で0.005〜0.5質量%のトリアムシノロンアセトニドであるステロイド剤と、を含有する経皮投与製剤。
【請求項2】
ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及び吉草酸酢酸プレドニゾロンからなる群より選ばれる少なくとも1種のステロイド剤をさらに含む、請求項1記載の経皮投与製剤。
【請求項3】
前記トリアムシノロンアセトニドの含有量は、全質量基準で0.010.1質量%である、請求項1又は2に記載の経皮投与製剤。
【請求項4】
貼付剤である、請求項1〜のいずれか一項に記載の経皮投与製剤。
【請求項5】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有する、請求項記載の経皮投与製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚を介してシタロプラムを吸収させる経皮投与製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シタロプラムは選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に分類される薬剤であり、大うつ病性障害、神経症性障害、急性ストレス障害、摂食障害等の改善のための薬物として用いられている(特許文献1〜3)。その投与方法としては、経口投与が一般的である。なお、シタロプラムには、R体及びS体の光学異性体が存在することが知られている。
【0003】
一方、SSRIは患者に経口投与した場合に、嘔気、下痢、消化管障害のような副作用が懸念されており、さらに服薬中止等のようなコンプライアンス低下も生じている。そこで近年では経口投与以外の投与方法が検討されている。例えば、特許文献3では、経皮投与によるSSRI等の抗うつ剤の投与が検討されており、抗うつ剤の一例としてシタロプラムが挙げられている。
【0004】
しかしながら、シタロプラムを経皮投与した場合には副作用として強い皮膚刺激が生じるという問題点があった。したがって、実際に治療現場で用いうる皮膚刺激が少ないシタロプラム含有経皮吸収製剤を提供するために、とりわけ、長期間投与が可能なシタロプラム含有貼付剤が求められていた。
【0005】
これに対し、特許文献5では、刺激性を有する薬物を水酸基を有するラクトン化合物と共に投与することにより、皮膚刺激を低減することが開示されているが、シタロプラム含有製剤の皮膚刺激については改善の余地がある。
【0006】
さらに、特許文献6には、SSRIとしてフルボキサミン又はマレイン酸フルボキサミンを含有する貼付剤に、皮膚刺激低減成分(ハイドロキノン配糖体、パンテチン、トラネキサム酸、レシチンなど)が配合しうることが開示されているが、実際にシタロプラムを含有する経皮製剤の記載はない。
【0007】
一方、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎に対しては、外用ステロイド剤が抗炎症剤としてよく用いられている。また、特許文献4にはSSRIの一例である、フルオキセチンを含有する製剤に皮膚刺激を低減するため、ヒドロコルチゾンを添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004−527551号公報
【特許文献2】特開平2−36177号公報
【特許文献3】米国特許2002−0192302号公報
【特許文献4】米国特許6512010号公報
【特許文献5】特開2006−335714号公報
【特許文献6】特開2007−284378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、シタロプラムの皮膚吸収性に優れると共に、シタロプラムによる皮膚刺激を低減し安全性に優れる経皮投与製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、シタロプラム又はその塩を含有する皮膚一次刺激性(Primary Skin Irritation)を示す傾向の認められる製剤に、種々の皮膚刺激低減成分や抗炎症剤を配合して皮膚刺激に対する効果を検討した結果、特定の抗炎症ステロイド剤が効果的にシタロプラムの皮膚刺激を低減することを見出した。
【0011】
通常、外用抗炎症ステロイド剤においては、その抗炎症作用の強さにより、5段階(I類(最強)、II(非常に強い)、III(強い)、IV(ミディアム)、V類(弱い))に分類される。本発明者らは、シタロプラム(特に、エスシタロプラム)による皮膚刺激の抑制には、上記の分類における抗炎症作用の強さには全く相関せず、IV類(ミディアム)のステロイド剤に皮膚刺激抑制効果があることを見出した。特に、トリアムシノロンアセトニドを配合することで、著しく皮膚刺激が低減されること、さらに、トリアムシノロンアセトニドを配合してもシタロプラム又はその塩の経皮吸収性が低下しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、シタロプラムによる皮膚刺激を低減するための経皮投与製剤であって、シタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬物と、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及び吉草酸酢酸プレドニゾロンからなる群より選ばれる少なくとも1種のステロイド剤と、を含有する経皮投与製剤を提供するものである。
【0013】
上記薬物との相乗効果に優れることから、ステロイド剤はトリアムシノロンアセトニドが好ましい。この場合において、トリアムシノロンアセトニドの含有量は、全質量基準(経皮投与製剤の全量基準)で0.005〜0.5質量%とすることができる。
【0014】
薬効の点から、シタロプラムについては光学異性体のうち、S体、すなわち、エスシタロプラムが好ましい。
【0015】
エスシタロプラムの薬学的に許容される塩としては、シュウ酸塩が優れており、経皮投与製剤の剤型としては、貼付剤が適用できる。この場合において、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含有することが好ましい。
【0016】
本発明は、さらに、シタロプラムの投与方法、特に、シタロプラムによる副作用を低減するための投与方法を提供する。本発明の方法は、シタロプラム及びその薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬物と、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及び吉草酸酢酸プレドニゾロンからなる群より選ばれる少なくとも1種のステロイド剤と、を含有する経皮投与製剤を患者に投与する工程を備えるものである。本発明の方法によれば、シタロプラムの経口投与による嘔気、下痢、消化管障害のような副作用を回避できるとともに、シタロプラムの経皮投与による皮膚刺激を低減できるため、安全性に優れるシタロプラムの投与方法を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の経皮投与製剤は、シタロプラムの皮膚吸収性に優れると共に、シタロプラムによる皮膚刺激を低減し安全性に優れる。よって、本発明の経皮投与製剤によれば、全身性の薬理効果を期待して長時間製剤を適用した場合にも、シタロプラムによる皮膚刺激が顕著に低減され、かつシタロプラムの吸収性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明に用いられる薬物は、シタロプラム(Citalopram;1−(4−フルオロフェニル)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル)又はその薬学的に許容される塩である。シタロプラムは、R体とS体との2つの光学異性体があるが、本明細書における「シタロプラム」は特に明記しない限り、R体とS体との混合物、R体、又はS体のいずれかを意味する。シタロプラムの薬学的に許容できる塩としては、臭化水素酸シタロプラム、塩酸シタロプラム、シュウ酸シタロプラム等が挙げられ、そのうち臭化水素酸シタロプラムが特に好ましい。
【0020】
また、シタロプラムとしては光学異性体であるS体、すなわち、エスシタロプラム(Escitalopram;(S)−1−(4−フルオロフェニル)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボニトリル)が好ましく使用され、その薬学的に許容される塩としては、シュウ酸エスシタロプラムが挙げられる。
【0021】
上記薬物の製剤への配合量はシタロプラムとして、経皮投与製剤の全質量基準で、0.01〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。この範囲であれば、治療に十分な量の薬物を経皮吸収させることができると共に皮膚刺激が少ない製剤を得ることができる。なお、本明細書における「経皮投与製剤の全質量基準」とは、経皮投与製剤が軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤等である場合、その全質量基準を意味し、経皮投与製剤が貼付剤である場合、その粘着剤層の全質量基準を意味する。
【0022】
本発明に用いられるステロイド剤(ステロイド外用剤)としては、外用ステロイド剤の強さを示す分類(I〜V類)上において、ミディアム(IV類)に分類される薬剤を用いる。すなわち、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及び吉草酸酢酸プレドニゾロンからなる群より選ばれる少なくとも1種のステロイド剤が用いられる。このようなステロイド剤は強いステロイド剤(I〜III類)に比べて、ステロイドに由来する副作用も低減される。
【0023】
本発明に用いられるステロイド剤の経皮投与製剤への配合量は、それぞれのステロイド剤によって異なるが、経皮投与製剤の全質量基準で、0.001質量%〜3質量%の範囲で配合することができ、好ましくは0.01質量%〜0.5質量%である。さらに、一般的に外用剤における配合量であることが好ましい。例えば、トリアムシノロンアセトニドが0.01質量%〜0.2質量%、ピバル酸フルメタゾンが0.01質量%〜0.05質量%、プロピオン酸アルクロメタゾンが0.05質量%〜0.2質量%、酪酸クロベタゾンが0.01質量%〜0.1質量%、酪酸ヒドロコルチゾンが0.01質量%〜0.2質量%、デキサメタゾンが0.01質量%〜0.2質量%、また、吉草酸酢酸プレドニゾロンが0.05質量%〜0.5質量%の配合量であることが好ましい。
【0024】
なお、ステロイド剤の抗炎症作用の強さの分類は、日本皮膚科学会誌、110(7)、1099−1104、2000に記載の方法(特に軟膏)に準拠して決定できる。
【0025】
低濃度においても皮膚刺激抑制効果が高いため、本発明に用いられるステロイド剤としては、トリアムシノロンアセトニドが特に好ましい。
【0026】
トリアムシノロンアセトニドの配合量については、経皮投与製剤の全質量基準で、0.005質量%〜0.5質量%であると十分な効果が得られる。ステロイド由来の副作用を抑える観点から、トリアムシノロンアセトニドの配合量は、0.01質量%〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の経皮投与製剤は、必要に応じてさらに塩基性化合物、可塑剤、吸収促進剤、有機酸等の添加物を配合することが可能である。
【0028】
シタロプラムの薬学的に許容される塩として酸付加塩を用いる場合には、塩基性化合物を配合することが好ましい。塩基性化合物としては、塩基性窒素を含有する低分子化合物(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、等)、塩基性窒素を含有する高分子化合物(アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピリジン、等)、塩基性アルカリ金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)が挙げられる。この中で、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0029】
本発明の経皮投与製剤は、必要に応じてさらに経皮吸収促進剤を配合することが可能である。経皮吸収促進剤としては、治療に必要な量を皮膚から吸収させることが可能であれば特に限定されるものではないが、製剤全体に対し0.5〜20質量%が配合される。かかる吸収促進剤としては、従来皮膚への吸収促進効果が認められている化合物のいずれでもよく、例えば炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、又はエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル、又はエーテル(以上は飽和不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状、分枝状のいずれでもよい)、さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン誘導体、グリセロール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、糖脂肪酸エステル類、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。
【0030】
これらの化合物中、吸収促進剤自身の皮膚に対する刺激性が少ないという観点から、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、プロピレングリコールモノラウレート、N−メチル−2−ピロリドン、ピロチオデカン、l−メントール、d−リモネンが挙げられる。このような吸収促進剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
可塑剤としては可塑性を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば石油系オイル(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、等)、液状ゴム(ポリブテン、液状イソプレンゴム)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンが挙げられる。このような可塑剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
さらに本発明には、必要に応じて、抗酸化剤、紫外線吸収剤、結晶防止剤を用いることができ、抗酸化剤としてはトコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等が好ましい。紫外線吸収剤としては紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体などが望ましい。結晶化防止剤としてはポリビニルピロリドン等が望ましい。
【0033】
さらに本発明の経皮投与製剤は、治療に必要とされる期間薬物を供給できる剤型であれば特に制限はなく、貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤等が利用できる。これらのうち特に、長時間にわたり、薬物の有効量を供給可能な剤型として、貼付剤が本発明に適した剤形として挙げられる。
【0034】
また、薬物の製剤中における安定性に優れるという点から、実質的に水を含有しない貼付剤であることが特に好ましい。実質的に水を含有しないとは、製剤が非水系材料で構成されることを意味する。但し、製剤中に原料又は製造環境に由来する1質量%以下の微量の水分を含有することは許容される。一般に、非水系の粘着剤層を有する貼付剤は、粘着力が比較的強いため皮膚への密着性がよく、また水系の粘着剤層を有する貼付剤と比較して、薬物の皮膚吸収性を高めることができる。
【0035】
一方、薬物の皮膚吸収性が上昇すると、薬物自体に由来する皮膚刺激も増大することがあるが、本発明の非水系の粘着剤層を用いた貼付剤は、皮膚刺激が少なく、優れた治療効果を奏する。
【0036】
剤型が貼付剤である場合、貼付剤は、支持体上に粘着層を備える構成を有することが好ましく、粘着層上には剥離ライナーを有していてもよい。粘着層に使用される基剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリレート共重合体(2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、メタクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸の少なくとも2種の共重合体)等の共重合体が挙げられ、使用する薬物の粘着剤への溶解性を考慮して、適宜選択することができる。また、これらの粘着剤を混合して使用することも可能である。なお、SIS、イソプレンゴム、PIB、SBS、SBRが用いられる場合、ロジン系、テルペン系、石油樹脂系等の粘着付与剤を併用してもよい。
【0037】
貼付剤に用いられる支持体は、特に限定されるものではないが、高分子フィルムや織布・不織布等の非伸縮性又は伸縮性の材質のものを使用することができ、支持体上に設けられた粘着剤層に含まれる薬物の吸着や浸透の生じない素材であることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、綿、アルミニウムシートが挙げられ、それらを積層して使用してもよい。
【0038】
貼付剤に用いられる剥離ライナーとしては、貼付剤を使用するまでの期間、粘着剤表面を保護するものであれば、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、紙等が挙げられる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に使用できる。これらは、剥離を容易にするためにシリコーン又はフッ素で表面を離型処理したり、背割れ、ハーフカット、ミシン目等の切れ目を設けたものであってもよい。
【0039】
貼付剤を使用する場合、所望の治療効果に応じて、製剤の貼付面積を5〜140cm、好ましくは10〜60cmとすることができる。
【0040】
本発明の経皮投与製剤は、貼付剤以外の剤型においても、その剤型に応じて慣用の基剤を含むことができ、液剤の場合は、低級アルコール、多価アルコール、水等を含むことができる。クリーム剤の場合は、油性基剤、高級アルコール、脂肪酸エステル、多価アルコール及びその誘導体、界面活性剤、ゲル化剤、水等を含むことができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」は質量部を意味する。
【0042】
<製剤の製造>
混合機を用いて調製したSIS65部、PIB35部、粘着付与剤180部、流動パラフィン40部及びトルエン(溶剤)の混合溶液に、薬物を加えて粘着剤溶液を得た。これを離型処理されたフィルム上に展延し溶剤を乾燥除去させて粘着剤層を形成した後、その上に支持体を載せて、粘着剤層を圧着転写させることにより経皮吸収型貼付剤を得た。
【0043】
なお、下記の試験例に用いた各々の製剤は、上記の一般法に従い薬物としてシュウ酸エスシタロプラムを8.0%と各実施例及び比較例に記載された添加剤を所定量配合して、その他の成分(SIS、PIB、粘着付与剤、流動パラフィンを上記の製造法に記載の組成比で含んでいる)を製剤全体として100%になるように配合した。
【0044】
試験例1 シュウ酸エスシタロプラムを含有した製剤の皮膚一次刺激性に対する添加剤の効果
<試験方法>
ウサギの背部を除毛し、表1に示した添加剤を含有する各種被験製剤を24時間貼付した。投与25時間後の皮膚赤色度を色彩色差計を用いて測定した。試験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の結果から明らかなように、ステロイド剤、アミノ酸誘導体、ビタミン誘導体、NSAID(non-steroidal anti-inflammatory drug、非ステロイド系抗炎症剤)、抗アレルギー薬等を含有した製剤を24時間投与した結果、ステロイド剤を配合した製剤では皮膚赤色度が他の配合剤と比較して低く、より皮膚刺激が低減された。また、ステロイド剤のうち、IV類に属する吉草酸酢酸プレドニゾロンの皮膚赤色度が特に低かった。
【0047】
試験例2 シュウ酸エスシタロプラムを含有した製剤の皮膚一次刺激性に対するステロイド剤の効果
<試験方法>
ラットの背部を除毛し、表2に記載したステロイド剤を含有した各種被験製剤を貼付した。投与25、48、72時間後の皮膚反応をDraize法に従い評価し、一次刺激性評点(Primary Irritation Index、PII) を算出した。試験結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示した結果から、外用ステロイドの薬効の強さにより分類されるI〜V類のカテゴリーの中から、それぞれ選択したステロイド剤を含有した製剤を24時間貼付したところ、薬効が高いとされるI〜III類に属するステロイド剤ではPIIが高いままであり、皮膚刺激低減効果は認められないか、非常に弱かったのに対し、IV類に属するトリアムシノロンアセトニドは低い添加濃度でPIIを顕著に低下させることが示された。また、トリアムシノロンアセトニドより薬効の弱いV類に属するステロイド剤であるヒドロコルチゾンでは製剤に2.5%の高濃度を添加したにもかかわらず皮膚刺激低減効果は弱かった。
【0050】
試験例3 トリアムシノロンアセトニドを配合したシュウ酸エスシタロプラム含有製剤の皮膚透過性
<試験方法>
へアレスマウスの背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター側として、32℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。次に皮膚の角質層側に各種被験製剤を貼付し、レセプター層としてリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて5mL/hrで2時間毎に24時間までレセプター溶液をサンプリングし、その流量を測定すると共に、高速液体クロマトグラフィーを用いて薬物濃度を測定した。得られた測定値から1時間当たりの薬物の皮膚透過速度の最大値及び24時間までの薬物透過量の合計を算出した。試験結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3に示したように、トリアムシノロンアセトニドを0.025%及び0.075%を含有する製剤(実施例10及び11)を用いたヘアレスマウスの皮膚透過試験の結果、これらの製剤は、トリアムシノロンアセトニドを含有しない製剤と同程度の皮膚透過性を示した。
【0053】
以上のことから、トリアムシノロンアセトニドはシュウ酸エスシタロプラムの皮膚透過性を阻害しないことが示され、試験例1〜3の結果より、本発明の経皮吸収製剤は、トリアムシノロンアセトニドの添加により、エスシタロプラムの皮膚透過性は妨げられることなく、エスシタロプラムによる皮膚刺激が非常に低いレベルまで顕著に低減された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の経皮吸収製剤は、特定のステロイド剤を添加することにより、シタロプラムによる皮膚刺激が顕著に低減され、十分な治療効果が期待できる量のシタロプラムを経皮投与させることができるため有用である。