(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740305
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】高い表装面品質を有するステンレススチールのレーザ微細加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/18 20060101AFI20150604BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20150604BHJP
【FI】
B23K26/18
B23K26/00 M
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-529071(P2011-529071)
(86)(22)【出願日】2009年9月4日
(65)【公表番号】特表2012-503555(P2012-503555A)
(43)【公表日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】US2009056016
(87)【国際公開番号】WO2010036503
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年8月21日
(31)【優先権主張番号】12/238,995
(32)【優先日】2008年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/413,272
(32)【優先日】2009年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593141632
【氏名又は名称】エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ウェイシェン
(72)【発明者】
【氏名】アルペイ,メーメット,イー.
(72)【発明者】
【氏名】松本 久
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】リ,グアングユ
(72)【発明者】
【氏名】ピログフスキィ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】シメンソン,グレン
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2007/000915(JP,A1)
【文献】
特開平01−298113(JP,A)
【文献】
特開2007−118070(JP,A)
【文献】
特開平06−170822(JP,A)
【文献】
特開昭54−148145(JP,A)
【文献】
特開平03−013286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/18
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質の表装仕上げ面と該高品質の表装仕上げ面と反対側の反対面とを有する金属部品をレーザ微細加工する方法であって、
レーザで前記金属部品を微細加工する前に、少なくとも前記高品質の表装仕上げ面に金属材料を含む保護コーティング層を塗布するステップと、
前記金属部品を前記レーザで微細加工するステップと、
前記金属部品を前記レーザで微細加工した後に、前記保護コーティング層を除去するステップと、
を含み、
前記金属部品を前記レーザで微細加工するステップは、前記反対面の側から高品質の表装仕上げ面へ微細加工して前記金属部品及び前記高品質の表装仕上げ面を完全に貫通する穴を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記保護コーティング層を有する前記金属部品を加工する加工時間が、前記保護コーティング層を有していない前記金属部品を加工する加工時間にほぼ等しいように、前記保護コーティング層が十分に薄く、
前記保護コーティング層は、摩耗粉飛散が前記保護コーティング層を溶け落ちさせ、前記高品質の表装仕上げ面に埋没するのを防ぐ十分な厚さであるか、前記摩耗粉飛散が前記保護コーティング層を溶け落ちさせ、前記高品質の表装仕上げ面に埋没するのを防ぐ程度に融点が十分に高い材料から成るかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護コーティング層は、銅箔、アルミニウム箔、およびステンレススチール板の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保護コーティング層は、レーザ照射時に、前記高品質の表装仕上げ面からの空気中の酸素を遮断/消滅する犠牲層として機能する有機材料または無機材料の1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有機材料は、接着ポリマーであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザは、ナノ秒パルス幅レーザであることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記保護コーティング層は、前記高品質の表装仕上げ面に塗布される第1の保護コーティング層であり、
前記方法は、
レーザで前記金属部品を微細加工する前に、前記反対面に第2の保護コーティング層を塗布するステップと、
前記金属部品を前記レーザで微細加工した後に、前記第2の保護コーティング層を除去するステップと、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザは、マイクロ秒パルス幅レーザであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属部品を前記レーザで微細加工する前に、前記反対面に第2の保護コーティング層を塗布するステップであって、前記第2の保護コーティング層は、透明な接着テープと透明な青い接着テープの少なくとも1つを有するステップと、
前記金属部品を前記レーザで微細加工した後に、前記第2の保護コーティング層を除去するステップとをさらに含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年9月26日に出願された米国特許出願第12/238,995号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、ステンレススチール製コンシューマ製品をレーザ微細加工する際に、高品質の表装面仕上げを維持する安価で効率的な方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ほとんどのコンシューマ製品について、ステンレススチールは、高レベルの引っ掻き耐性、洗浄容易性、および変色耐性を含む優れた性能特性の耐久性のある表装面仕上げが要求されている。表装面仕上げに損傷を与えることについて十分な配慮を払うことなく、開口や溝などの構造の形成に機械的手法が用いられてきた。構造の大きさが小さくになるにつれて、レーザ微細加工技術が求められている。レーザ微細加工技術を用いて、耐久性のある表装面仕上げのステンレススチール上に微細な構造を形成するときに、レーザと金属の相互作用による熱工程の性質により、表装面仕上げは、変色によって容易に損傷を受け、酸化と熱応力によって容易に剥離してしまうことがある。今日まで、レーザ微細加工は、ステンレススチールに適用されたとき、表面的な出来栄えが強調されたが、この分野ではあまり知られていない、まだ比較的新しい技術である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、高品質の表装面仕上げ(cosmetic finish)の表装面と反対面を有する金属部品をレーザ微細加工する方法または工程を提供する。一実施形態として、レーザで部品を微細加工する前に、高品質の表装面仕上げの表装面および/または反対加工面に保護コーティング層を塗布するものが挙げられる。
【0005】
高品質の表装面仕上げの表装面と反対面を有するステンレススチール部品をレーザ微細加工する工程の別の実施形態において、改良点としては、レーザで部品を微細加工し、レーザでその面を微細加工する前に、加工される面の1つに保護コーティング層を塗布するステップが挙げられる。レーザは、ナノ秒パルス幅レーザまたはマイクロ秒パルス幅レーザである。保護コーティング層は、アルミニウム、銅、およびステンレススチールの少なくとも1つを含む金属材料を含有している。
【0006】
本発明のこれらとその他の応用に関する変更例と詳細は、添付図面と一緒に以下の説明を読んだとき、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
ここでは、添付図面を参照して説明を行い、複数図面にわたり、同一参照符号は同一部位を示す。
【0008】
【
図1】高品質の表装仕上げ面を有するステンレススチールと部品を微細加工するレーザの簡略概略図である。
【0009】
【
図2】高品質の表装仕上げ面と部品の少なくとも1つの面上に保護層を有するステンレススチール、および部品を微細加工するレーザの簡略概略図である。
【0010】
【
図3】本発明の一実施形態を示す簡略プロセスフロー図である。
【0011】
【
図4】ここで教示した保護層がない直径350μmの貫通穴を穿孔した500μmの厚さのステンレススチール部品の後プロセス(post-process)部品面の拡大画像である。
【0012】
【
図5】ここで教示する保護層がない直径350μmの貫通穴を穿孔した500μmの厚さのステンレススチール部品の後プロセス部品面の拡大画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
微細加工ステンレススチールの表装面仕上げにレーザを用いる場合、1つの課題が、形成された構造の周囲の変色である。これはコンシューマ製品の外観を許容できないものにする。変色はレーザ微細加工時の酸化によるものと考えられており、空気中の酸素や窒素による金属面の酸化や窒化を増すのに十分な程に金属面を加熱する。真空または不活性ガスで満たされたチェンバーに加工部品を置いて、酸素や窒素から部品を分離するか、あるいはpsまたはfsレーザ光源などの非常に短いパルス幅のレーザを用いて、熱過程をかなり制限することができるが、非常に高価である。これらの解決策も加工を非常に不便なものにする。
【0014】
別の課題が摩耗粉飛散(debris splash)である。すなわち、
図1に示すように、金属基板または部品10が、この場合はステンレススチールが、高出力レーザ22でレーザ加工されたとき、かなりの量の溶解材料10aが、加工領域から噴出され、基板面16のすぐ近くに堆積する。溶解材料10aは、摩耗粉飛散であり、非常に高速で、および/または部品10の溶解温度またはそれ以上の温度で移動する小さな粒子を含んでいる。加工面の表装面品質が一般的には維持されるべきであるので、この摩耗粉飛散が存在することも、結果として得られたコンシューマ製品の外観を許容できないものにするかもしれない。材料除去工程が、多くは昇華によるものであり、溶解によるものではない場合に、短いパルス幅のレーザもこの問題に対処するのに用いることができる。上述した真空またはアシストガスを用いて、加工領域に摩耗粉が落下(falling back)しないようにすることもできる。上述したように、これらの解決策は、コストを増大させ、利便性を低下させる。表装面に堆積したままになっている摩耗粉を除去する部品の後プロセス洗浄はオプションである。しかしながら、これはコストを増大させ、利便性を低下させ、変色問題に対処していない。
【0015】
本発明の一実施形態は、金属部品の表装面側に保護コーティング層を塗布して、レーザ微細加工時に、空気から部品を物理的に分離することを提案する。部品の反対側にも保護コーティング層を塗布して、摩耗粉を低減し、変色を防ぐこともできる。有機保護コーティング層を塗布する場合において、保護コーティング層が低強度のレーザビームに対し比較的透過性があったとしても、強いレーザ照射による窒化と酸化により、空気中の酸素を遮断(block)/消滅(consume)する犠牲層として機能する。
【0016】
保護コーティング層は、接着ポリマーなどの有機材料またはセラミックなどの無機材料であってもよい。保護コーティング層は、固形形状(限定的でない一例として、ドライフィルム接着テープなど)、または液体形状(限定的でない一例として、接着剤、ワックス、または厚いレジスト)のいずれかで塗布できる。部品形状に応じて、保護コーティング層は、回転塗布(spin coating)または吹付け(spray)によって塗布できる。スコッチテープは、好適な保護コーティング層の良い例である。半導体業界において、ウェハを保持するのに透明なブルーテープを用いているが、これは適切な保護コーティング層の別の良い例である。一実施形態において、保護コーティング層は、適用されるレーザビームに対して非常に透過性があり、部品に対し十分な接着強度を有し、約5ミル(mils)から約10ミルの間を含む厚さでなければならない。本発明の一実施形態によるこの加工は、レーザの要件を著しく軽減するため、通常のナノ秒パルス幅レーザ(nano-second pulse width laser)またはマイクロ秒パルス幅レーザ(micro-second pulse width laser)が、高品質の表装仕上げ面を有する金属部品を微細加工する要件を満たす。実験室で、表装面仕上げにより、ステンレススチール部品の穿孔および切断にこの加工が用いられており、好結果を収めたことが分かった。この加工は、高価な短いパルス幅レーザを必要としない、簡単で、低コストな方法を提供する。
【0017】
図2について説明する。限定的でない一例として、第1または正面側14の高品質の表装仕上げ面12と、第2の背面または裏面18の別の面16とを有するステンレススチール部品などの、金属部品10の簡略概略図を示す。保護コーティング層20が、部品10の少なくとも1つの面12,16に施されている。保護コーティング層20を有する微細加工部品10の加工に、レーザ22が用いられる。レーザ22が第2の面16を穿孔しているよう示されているが、ある実施形態においては、レーザ22は第1の面を穿孔する。部品10の高品質の表装仕上げ面12に保護コーティング層20を塗布して、レーザ22で部品10を微細加工する前に、空気から面12を物理的に分離させることができる。
【0018】
保護コーティング層20は、レーザ22からの低強度のレーザビームに対し比較的透過性が高い。強いレーザ照射による窒化や酸化により、空気中の酸素を遮断/消滅する犠牲層(sacrificing layer)として機能する有機材料または無機材料であってもよい。限定的でない一例として、有機材料保護コーティング層20は、接着ポリマーである。限定的でない一例として、無機材料保護コーティング層20は、セラミック材料である。
【0019】
特定の部品形状に対する加工コストに応じて、さまざまな方法で、保護コーティング層20を部品10に塗布することができる。限定的でない一例として、保護コーティング層20は、ドライフィルム接着テープなどの堅いドライ形状で、または液体形状で保護コーティング20を塗布することができる。ドライフィルム接着テープ保護コーティング層20は、透明な(clear)接着テープ、透明な(transparent)ブルー接着テープ、およびそれらの任意の組み合わせから成るグループから選択できる。限定的でない一例として、液体形状保護コーティング層20は、接着剤、ワックス、厚いレジスト、およびそれらの任意の組み合わせから成るグループから選択できる。保護コーティング層20は、回転塗布、吹付け、およびそれらの任意の組み合わせから選択される塗布工程により塗布できる。保護コーティング層20は、レーザ22から照射されたレーザビームに対して非常に透過性が高い。保護コーティング層20は、例えば、約5ミルから約10ミルの間を含む厚さである。保護コーティング層20が固有の接着特性を有することができるか、あるいは追加接着境界面24を十分な接着強度で用いることにより、加工時に層が剥離することなく、部品10に接着することができる。また、いずれかの面12,16に保護コーティング層20を塗布して、摩耗粉および/または変色を低減させることができる。部品10を微細加工するレーザ22は、ナノ秒パルス幅レーザまたはマイクロ秒パルス幅レーザから成るグループから選択できる。
【0020】
図3について説明する。簡略化されたプロセス図を示す。本発明の一実施形態によるプロセス図は、図示した1つ以上の工程ステップを含むことができる。限定的でない一例として、この工程は、ステップ30で、ステンレススチール部品10の少なくとも1つの面12,16に保護コーティング層20を塗布し、レーザ22で部品10を微細加工する前に、空気から面12,16を物理的に分離するステップを含む。ステップ32に示すように、保護コーティング層20を犠牲にして、強力なレーザ照射による窒化や酸化により、空気中の酸素を遮断および/または消滅することができる。ステップ34で、ナノ秒パルス幅レーザおよびマイクロ秒パルス幅レーザから成るグループから選択したレーザ22で部品10を加工する。ある実施形態によれば、このレーザ加工時に、従来の不活性ガスアシストを含むことが望ましい。保護コーティング層20の残りの部分は、保護コーティング層の材料と部品10の材料に応じて、公知の方法によりステップ36で除去することができる。
【0021】
レーザ22として、ナノ秒レーザを用いた場合、部品10のいずれかの面、すなわち、表装面 (cosmetic surface)12またはその反対側の背面16を穿孔する。上記の説明は、レーザ22からレーザ照射を受ける面12,16の1つを含む、部品10の面12,16の一方または両方に保護コーティング層20を塗布することを示している。しかしながら、穿孔面が、表装面12または背面16であろうとなかろうと、保護コーティング層20を穿孔面に塗布するのが最も望ましい。よって、この目的のために、保護コーティング層20の材料は、基本的にレーザビームに対して透過性のあるものを選択した。例としては、接着ポリマー、ある種の透明なテープなどが挙げられる。上記の保護コーティング層20を設け、不活性アシストガスを用いることで、上述した変色問題が低減された。ところが、試験時に穿孔された穿孔面であった面16上の保護コーティング20用のこれらの材料を用いても、溶解粒子10aから面を十分に保護しなかった。これらの粒子10aは、結果的に薄い保護コーティング層20を溶解することになる。面16に対し保護層20をより厚くするのは、1つの可能な解決策である。
【0022】
別の解決策は、保護コーティング層20に、代わりに別の材料、ここでは、金属材料を用いることである。上述した方法とは対照的に、金属材料は、レーザビームに対して透過性がない。そうであるから、保護コーティング層20を通過する代わりに、金属保護コーティング層20を穿孔面に塗布するときに、レーザ22は、保護コーティング層20を実際に突き刺さ(cut through)なければならない。そのため、保護コーティング層20の金属材料は、全加工時間をほとんど増加させずに、保護コーティング層を通過して、加工部品10に到達するような十分な薄さでなければならない。また、レーザ22が保護コーティング層20を通過して、その真下の部品10に到達できるように、金属材料は、かなり良くレーザ22と相性が良く(couples well enough with)なければならない。最後に、この材料は十分に厚いおよび/または摩耗粉飛散に耐える高い融点を有している。すなわち、この材料は、摩耗粉飛散を含む非常に高温の粒子10aにそれらの進路を溶け落ち(burn through)させず、かつ保護コーティング層20の真下の部品20上に摩耗粉を埋没(embed)させない。
【0023】
この材料は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレススチールの薄板などの金属箔またはテープであってもよい。金属保護コーティング層20は、加工して十分な薄さにできるとともに、粒子10aに耐える高い融点でなければならない。例えば、アルミニウムの融点は660℃であり、銅の融点は1084℃であり、スチールの融点は1370℃である。高品質の表装面12か背面16であろうとなかろうと、保護コーティング層20は、最も好適には穿孔面に塗布される。あるいは、面12,16の1つに保護コーティング層20を塗布しないか、または、保護コーティング層20として、双方の層12,16を金属材料で覆ってもよい。
【0024】
レーザ11として、ナノ秒レーザを用いるとき、ポリマー型保護コーティング層20に関して述べたように、金属保護コーティング層20を含む部品10のいずれかの層12,16を穿孔する。一方、マイクロ秒レーザを用いるときは、ポリマー型保護コーティング層20と対照的に、金属保護コーティング層20を穿孔面に塗布し、穿孔面が表装面 (cosmetic surface)12であることは、好ましいが、必須ではない。
【0025】
一実施(one implementation)において、同軸窒素ガスアシストを用いたIPG700W IRレーザを用いて、500μmの厚さのステンレススチール部品に穿穴した。ステンレススチールの面が高品質の表装面、つまり高度に磨かれた面を有するように、ステンレススチールに塗装した。
図4は、ここで教示した保護コーティング層を用いない、摩耗粉飛散による面損傷を示す。これに対して、保護コーティング層を用いて、同様の加工を行うとき、
図5に示すように、面損傷は著しく低減された。つまり、変色と摩耗粉飛散との双方が最小限に抑えられた。
図5に示す保護コーティング層は、穿孔面に対して引き伸ばした厚さ50μmのアルミニウム箔であった。このテストにより、保護コーティング層を塗布、または保護コーティング層を塗布しないで、同じ加工パラメータを用いて、全く同じ穴を穿穴することができることを示している。従って、金属材料は、レーザとかなり相性が良く、全加工時間をほとんど増加させることなく、保護コーティング層を加工する。また、保護コーティング層を用いることで、部品面からの摩耗粉飛散を事実上なくすことができた。
【0026】
このテストにおいて、部品がステンレススチールであったので、摩耗粉飛散を含む非常に高温の粒子は、少なくとも1370℃であった。また、融点が660℃であるアルミニウム箔は、これらの粒子を「止める」ことができた。理論に縛られることなく、摩耗粉飛散が熱くとも、これを含む粒子は、かなり小さいと考えられる。これらの粒子は、直径が500μm以下で、さらに小さいかもしれない。従って、保護コーティング層20に衝突したとき、これらの粒子の熱は急速に失われ、保護コーティング層に潜り込み(burrowing through)始める。保護層内部で粒子が「動かなく(stuck)」なり、保護コーティング層を通過して部品面に到達しない限り、金属材料は十分に厚く、融点が十分に高いと言うことができる。再度、かなりの穿孔/切断努力を重ねるであろうから、金属材料層が余りに厚いことも望ましくない。0.001"銅テープと0.0001"ステンレススチール箔を用いたテストは、変色と摩耗粉飛散の望ましい低減結果を示した。
【0027】
面外観を改善する他の方法と比較して、本発明の実施形態は著しい利益を提供する。例えば、摩耗粉飛散をなくすまたは実質的に低減させるために、短いパルス幅を用いることは、2つの主たる理由により、常に実用性が高いというわけではない。第1に、上記のレーザは、金属部品の高速加工に必要な出力レベルに達していない。第2に、長いパルス幅のレーザよりもかなり高価になる傾向がある。他の可能性としては、空気/ガス噴射、および/または真空を用いて、部品面に摩耗粉飛散が落下するのを防ぐことである。摩耗粉飛散を含む粒子の運動量が大きく、これにより空気/ガス流のみを用いてそれらの軌道を実質的に変えることがほとんど不可能である場合において、これは全く実行不能である。最後に、部品製造に余分なステップを追加し、全体的なスループットを低下させるので、部品の後プロセス洗浄は、多くの場合において望ましくない。問題の部品が、高度に磨かれた面を有し、これにより激しい「研磨」(hard scrubbing)の可能性をなくし、最も小さな面不完全性(imperfections)も目立たせやすい場合には、この方法も実用性が低いかもしれない。本発明の実施形態は、比較的安価で、小さいが、より効率的である。部品の表装面を保護しつつ、高品質の切断を行える。
【0028】
ある実施形態に関して本発明を説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されず、むしろ、添付したクレームの範囲内に包含される各種変更例および等価な構成を網羅することを意図している。このクレームの範囲は、法により許容された上記の変更例と等価な構成を含むように最も広い解釈に一致する。