【実施例】
【0034】
12種の製鋼(参照記号A〜L)の製品を提供した。
【0035】
製鋼A〜FとJ〜Lは、工業的な製鋼であり、製鋼G〜Iはそれぞれ数100kgの実験用製鋼である。
【0036】
製鋼A〜DとJ〜Lは、本発明による化学成分を有し、製鋼E〜Iは本発明外の比較例である。
以下の表1は、テストした製鋼の組成(重量パーセントで表わした成分)を示す。
【表1】
【0037】
本発明の鋼での低い合計酸素(O
T)濃度は重要である。
【0038】
製鋼A〜GとJ〜Lからの鋼片は熱間ロールにより外形と肉厚で定義されるシームレス管に変形した。約15mmの厚さの製鋼が、製鋼を接合するための30mm厚さのブロック(カップリング材料)と共に、得られた。
【0039】
数字インデックスにより単一の製鋼からの異なる製品を区別した(たとえば、J1、J2、J3)。
【0040】
製鋼HとIは、本発明の範囲外であるが、27mm厚さの板に熱間ロールした。
【0041】
これらの製品(管、板)は全て、900℃と940℃の間で水焼き入れ(製鋼Aからの管は油焼き入れ)と、700℃近くの焼き戻しにより熱処理して、862MPa(125ksi)以上の降伏応力を生じた。数回の連続した焼き入れ工程(2回または3回)を用い、特に粒径を細かくした。ケースによっては、焼き戻しを2回の焼き入れ工程の間に行い、焼き入れ工程の間に割れが生ずるのを防止した。
【0042】
焼き入れ後は、以下の表2の焼き入れ状態にて行われた硬度測定の微視的試験により確認されたように、本発明の管は、実質的に全てマルテンサイト組織(恐らく微量のベイナイトもある)を有していた。
【表2】
【0043】
本発明の鋼についての純粋にマルテンサイト構造の製品は、焼き入れ性(ジョミニー)曲線でさらに確認をした。本発明の鋼では、その曲線は、試験片の焼き入れされた端部から15mmの距離までほぼ53HR
Cでフラットであった。このような焼き入れ性により、水で焼き入れした(外側と内側の焼き入れ)50mmの管につき完全なマルテンサイト構造を得ることができると考えられる。
【0044】
本発明の鋼管で得られたオーステナイト粒径は非常に細かく、製鋼からの管B1、C1、D1に対して11〜12、カップリング材料B2、C2、D2について僅かに粗大な粒で12(規格ASTM E112による測定)であった。
【0045】
表3は、製品の寸法特性を本発明の鋼の熱処理後に得られた降伏応力および破断強さと共に示す。得られた降伏応力の値は、865と959MPa(125〜139ksi)の間に分布した。
【0046】
本発明と本発明の範囲外の製鋼の平均値は、それぞれ906MPaと926MPa(131ksiと134ksi)で、顕著な差異はなかった。
【表3】
【0047】
[一軸SSC引張り試験]
表4および表5は、試験液のH
2S成分を低減(3%)した、規準NACE TM0177の方法Aを用いて、SSC抵抗を求めた試験の結果を示す。
【0048】
試験片は、表3に示す管(または板)から半分の厚みのところで長手方向に取った円筒形の引張り試験片で、規準NACE TM0177の方法Aに従って機械加工した。
【0049】
使用した試験槽はEFC(ヨーロッパ腐食協会)タイプ16であった。5%塩化ナトリウム(NaCl)と0.4%酢酸ナトリウム(CH
3COONa)からなり、24℃(±3℃)で連続的に3%のH
2S/97%のCO
2の混合ガスの泡を通し、ISO規格15156に準拠して塩酸(HCl)を用いてpH3.5に調整した。
【0050】
負荷した応力は、規格最小降伏応力(SMYS)の所定のパーセントX、すなわち、862MPaのX%に固定した。この種の試験における相対的分散を考慮して、同じ試験条件で3本の試験片を試験した。
【0051】
SSC抵抗は、720時間後に3本の試験片に破断がなければ(結果=3/3)良好と、3本の試験片のうち少なくとも1本の試験片の測定部分に720時間より前に破断が生じたならば(結果=0/3、1/3または2/3)、不十分あるいは不良と判断した。
【0052】
表4の試験では、負荷応力を、規格最小降伏応力(SMYS)の85%、すなわち、733MPa(106ksi)に固定した。
【0053】
本発明に従った鋼の参照記号(A〜DとJ、L)の全てについて得られた結果は、比較鋼Fについて得られた結果と共に、良好であった。比較鋼EおよびIについて得られた結果は、劣っていた。
【0054】
管の肉厚が影響を有するということは観察されなかった(B1/B2、C1/C2およびD1/D2の比較)。
【表4】
【0055】
表5の試験では、負荷応力を、規格最小降伏応力(SMYS)の90%、すなわち、775MPa(113ksi)に固定した。
【0056】
本発明に従った鋼(A〜DとJ3〜L)の全てについて得られた結果は、比較鋼Fについて得られた結果と共に、良好であった。鋼J1について得られた結果は制限されるものであった(720時間の直前に1本が破壊した)。比較鋼GおよびHについて得られた結果は、顕著に不良であった(破断までの時間は187と370時間の間)。
【表5】
【0057】
[K1SSC試験]
試験片は、表3に示す管から半分の肉厚のところで長手方向に取ったシェブロンノッチDCB(二重片持ち梁)試験片で、規準NACE TM0177の方法Dに従って機械加工した。
【0058】
第1シリーズの試験で使用した試験槽は、50g/リットル塩化ナトリウム(NaCl)と4g/リットル酢酸ナトリウム(CH
3COONa)からなる水溶液で、試験前に大気圧で24℃(±1.7℃)にて10%H
2S/90%のCO
2の混合ガスの泡を通してH
2Sで飽和させ、塩酸(HCl)を用いてpH3.5に調整した(マイルド条件テストと称されるテスト)。
【0059】
試験片は、DCB試験片の2つのアームに0.51mm(±0.03mm)の変位を与えるくさびを用いて引張り下に置かれ、14日間試験液中にさらされた。
【0060】
試験片は、その後、引張りで破壊された。くさびの限界破壊荷重(critical lift off load)を測定し、破断面についてテスト液中に維持されていたときの平均亀裂進展長さを測定し、SSCの限界応力強さを測定し、K1SCCとした。追加の基準を用いて、測定の有効性を確認した。
【0061】
この試験における分散を考慮するため、製品ごとに3本の試験片を試験した。このような3本の測定の平均値と標準偏差を求めた。
【0062】
表6に、上記の試験片に対して得られたK1SSCの結果と、最新版のISO規格ISO11960あるいはAPI5CTに準拠したシェブロンノッチの前面の試験片の幅の半分のところでSSC試験液に導入される前に実施されたHR
C硬さ測定を示す。表6には、表3の降伏応力の値も示す。
【表6】
【0063】
K1SSCの個々の値は、本発明の鋼について34.6〜46.6MPa・m
1/2で、本発明の範囲外の鋼Fについては、かなり低めであった。
【0064】
管の型(肉厚13.84mmまたは30mm)には、特に影響は見られなかった。
【0065】
図1に降伏応力(YS)の関数としての平均K1SCC値を示し、
図2に試験片の平均硬さHR
Cの関数としてのK1SSCの個々の値を示す。
【0066】
K1SSCの値は、降伏応力または硬さと共に低下する傾向がある
【0067】
しかし、特に硬さHR
Cとの関係(
図2)を考慮すると、所与の硬さに対し、本発明の鋼でK1SSCの高い値が得られたことが分かる(試験片B、C、DとFの比較)。
【0068】
よって、鋼を862〜965MPa(125〜140ksi)の範囲の降伏応力値の範囲に処理するのが好ましく、862〜931MPa(125〜135ksi)の範囲にするのがより好ましいことが分かる。
【0069】
第2シリーズの試験では、「完全NACE」条件と称されるより厳しい条件でDCB試験片を試験した。試験片は、100%のH
2Sを含んだガスで飽和するという点(第1シリーズの10%に対して)および、pHが2.7に調整された点を除いて、先の溶液と同様の溶液に浸漬された。試験片のアームの変位は0.38mmとされた。
【0070】
結果を表7に示す。
【0071】
得られたK1SSC値は、24MPa・m
1/2のオーダーと、マイルド試験条件よりかなり低くなった。マイルド条件と同様のタイプの区分が得られた(本発明の鋼は比較グレードFよりもよい結果を生んだ)。
【0072】
本発明の鋼は、ケーシング、チュービング、ライザー管、ドリルストリング、ドリルカラー、あるいはこれらの製品のアクセサリなど、探査用の製品および炭化水素分野からの生産物用の使用に特に向いている。
【表7】