【実施例】
【0035】
以下に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1:
A成分として、麦芽比率100%、アルコール分5%のビールを、定法にしたがって、調製した。
B成分として、麦と水を原料とし、発酵に使用する麹として麦麹を用い、蒸留して得たアルコール分44.0%の麦焼酎を、定法にしたがって、調製した。
下記表1に記載するA由来のアルコール分とB由来のアルコール分の比率で上記A成分およびB成分を混合し、総アルコール分を5.0%となる麦芽発酵飲料1〜5(発明品1〜5)を調製した。
なお、混合にあたっては、目的とする麦芽発酵飲料の総アルコール分が5.0%となるよう、A成分のビールは適宜水により希釈した。
【0036】
【表1】
【0037】
なお、比較例として、下記に記載のビール(麦芽比率100%)および発泡酒(麦芽比率25%)をおいた。
比較例1:アルコール分5.0%のビール(麦芽比率100%)を、定法に従って調製した。
比較例2:アルコール分5.0%の発泡酒(麦芽比率10%)を、定法にしたがって調製した。
【0038】
味覚官能試験:
得られた各麦芽発酵飲料について味覚官能試験を行った。
評価項目は、
(1)ビールテイストとしてのコクと飲み応え、および、
(2)飲用後のキレ味、
とした。
専門パネリスト8名により評点法で行い、平均点を算出し、あわせて表中に示した。
なお、評点は、以下のとおりとした。
「十分に強い」=5点;「強い」=4点;「普通」=3点;「弱い」=2点;「無し」=1点
【0039】
上記の表に示した結果から判明するように、比較例1に対し麦芽比率の低い比較例2ではキレ味は向上したものの、飲み応えが大きく低下した。
一方、本発明が提供する麦芽発酵飲料、中でも発明品2〜4のものは、ビールテイストのコクと飲み応えがあり、その上で飲用後の後味として、さっぱりしたキレが付与されているものである。
【0040】
実施例2:
A成分として、実施例1と同様の麦芽比率100%、アルコール分5%のビールを、定法にしたがって、調製した。
なお、B成分として、米焼酎は米を原料として米麹を用いたもの(アルコール分44%)、麦焼酎は麦を原料として麦麹を用いたもの(アルコール分44%)、ブランデーとしては、ブドウを原料としたアルコール分40%の市販のブランデー(サントリーブランデーX・Oデラックス)、ウイスキーとしては、麦芽を原料としたアルコール分43%の市販ウイスキー(サントリーピュアモルトウイスキー山崎(登録商標)12年)を用いた。
A成分由来のアルコール分とB成分由来のアルコール分の率が95:5となるようにA成分とB成分を混合した。目的とする麦芽発酵飲料の総アルコール分が5.0%になるように、A成分のビールを適宜水で希釈した。
【0041】
得られた各麦芽発酵飲料について、味覚官能試験を行い、その結果を併せて表中に示した。
評価項目は、実施例1と同様に8名の専門パネリストによる、(1)ビールテイストとしてのコクと飲み応え、(2)飲用後のキレ味に加え、(3)飲み易さとした。
(1)のビールテイストとしてのコクと飲み応え、および(2)の飲用後のキレ味の評価方法は、実施例1に準じ、(3)の飲み易さの評点は、以下のとおりとした。
「かなり飲みやすい」=5点;「飲みやすい」=4点;「ふつう」=3点;「飲みにくい」=2点;「かなり飲みにくい」=1点
【0042】
【表2】
【0043】
上記の表2に示した結果から、いずれの飲料でも飲み応えは良かったものの、B成分として麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得たアルコール含有の蒸留液を添加した場合に、飲用後の後味としてさっぱりしたキレが付与され、また飲みやすいことが判明した。
【0044】
実施例3:
A成分の麦芽比率を変えて、B成分添加の効果を評価した。
A成分として、各麦芽比率を10%、20%、40%および100%として、アルコール分5%の麦芽発酵飲料を、定法にしたがって調製した。
B成分として、小麦と水を原料とし、糖化、発酵、蒸留(連続式蒸留機を使用)して得たアルコール分44.0%のスピリッツを、定法にしたがって、調製した。
A成分由来のアルコール分と、B成分由来のアルコール分の率が95:5となるようにA成分とB成分を混合し、目的とする麦芽発酵飲料の総アルコール分が5.0%になるように、A成分の麦芽発酵飲料を適宜水で希釈した。
なお、比較例として、B成分を含まない各種麦芽比率のビール(または発泡酒)を評価した。
評価項目および評価方法は実施例1に準じた。
その結果を下記表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
表中の結果からも判明するように、発明品にあっては、麦芽比率を10%、20%、40%および100%と変更した飲料の場合であっても、B成分を添加することによって、飲み応えを損なうことがなく、キレ味の評価が増加した。特に、麦芽比率が20%〜100%、なかでも40%以上の場合にキレ味の付与効果が顕著であった。
以上より、麦芽発酵飲料において、各種麦芽使用比率のA成分に、B成分を組み合わせることにより、飲み応えがありながら、かつ、喉越しの爽快感、キリッとした味わいのある麦芽発酵飲料が提供されることが判明した。
【0047】
実施例4:
A成分の原料の麦芽比率と、B成分の種類の組合せを検討した。
A成分として、麦芽の使用比率を49%または100%として、アルコール分5%の麦芽発酵飲料を定法にしたがって調製した。
B成分として、麦焼酎(乙種)または小麦スピリッツを用いた。
麦焼酎(乙種)は大麦を原料として麦麹を用い、蒸留を単式蒸留機にておこなったものを用いた(アルコール分44%)。
小麦スピリッツは、小麦を原料とし、アルコール含有物を連続蒸留機で蒸留したものを用いた(アルコール分44%)。
A成分由来のアルコール分とB成分由来のアルコール分の率が95:5となるようにA成分とB成分を混合した。目的とする麦芽発酵飲料の総アルコール分が5.0%になるように、A成分の麦芽発酵飲料を適宜水で希釈した。
なお、比較例として、B成分を含まない麦芽発酵飲料(麦芽比率:49%または100%)を評価した。
評価項目および評価方法は実施例1に準じた。
その結果を下記表4に示した。
【0048】
【表4】
【0049】
本発明品にあっては、いずれの麦芽比率を有する飲料の場合でも、B成分として麦焼酎(乙類)または小麦スピリッツを添加することによって、飲み応えを損なうことなく、キレ味の評価が増加した。
このうち、A成分として麦芽比率が49%の麦芽発酵飲料を用いた場合には、B成分として小麦スピリッツを用いるほうが、麦焼酎(乙類)を用いるよりキレ味の評価が優れていた。
【0050】
一方、A成分として麦芽比率が100%の麦芽発酵飲料を用いた場合には、B成分として麦焼酎(乙類)を用いるほうが、小麦スピリッツを用いるよりキレ味の評価が優れていた。
【0051】
これは、原料における麦由来の香味の強さによると考えられた。すなわち、単式蒸留機を用いるB成分は、原料由来の香味がある程度含まれていることから、A成分として麦芽比率の高い場合により有効にキレが付与できる。一方、連続蒸留機を用いたB成分は原料由来の香味成分は少ないことから、A成分として麦芽比率の高すぎない場合(例えば、麦芽比率:49%)に好適に用いることができると考えられた。
【0052】
実施例5:
A成分として麦芽比率が60%の麦芽飲料を製造した。
麦芽60%および糖液50%の組成の原料を用い、定法どおりに麦汁を製造した。糖液は、市販の糖液を用いた。糖化した麦芽に糖液を加え、エキス分12%の麦汁を得た。これに市販のビール酵母(Weihenstephan-34)を添加して定法により発酵させ、アルコール分が5.5%のA成分を得た。
B成分として、小麦スピリッツを用いた。小麦スピリッツは、小麦を原料とし、アルコール含有物を連続蒸留機で蒸留したものを用いた(アルコール分44%)。
A成分1500LにB成分9.7Lを添加した。A成分の製造工程中、酵母除去のための濾過工程の直前で培養槽中にB成分を添加混合した。得られた発酵飲料を無菌的に濾過し缶に充填して、本発明の麦芽飲料を製造した。
得られた発酵飲料は、飲み応えとキレのいずれをも有するものであった。
【0053】
実施例6:
A成分として麦芽比率が40%麦芽飲料を製造した。
麦芽40%、麦10%および糖液50%の組成の原料を用い、定法どおりに麦汁を製造した。糖液は、市販の糖液を用いた。麦芽と麦を糖化し、それに糖液を加え、エキス分12%の麦汁を得た。これに市販のビール酵母(Weihenstephan-34)を添加して定法により発酵させ、アルコール分が5.5%のA成分を得た。
B成分として、小麦スピリッツを用いた。小麦スピリッツは、小麦を原料とし、アルコール含有物を連続蒸留機で蒸留したものを用いた(アルコール分44%)。
A成分1500LにB成分9.7Lを添加した。B成分は、A成分の製造工程中、酵母除去のための濾過工程の直前で培養槽中に添加、混合した。得られた発酵飲料を無菌的に濾過し缶に充填して、本発明の麦芽飲料を製造した。
得られた発酵飲料は、飲み応えとキレのいずれをも有するものであった。