特許第5740340号(P5740340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740340
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】シート材の位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/038 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   B65H23/038 Z
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-84245(P2012-84245)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-212908(P2013-212908A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】593155330
【氏名又は名称】株式会社ホニック
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】毛利 信一
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−248732(JP,A)
【文献】 特開平7−149455(JP,A)
【文献】 特開2007−84197(JP,A)
【文献】 特開2009−126622(JP,A)
【文献】 特許第3442735(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H9/00−9/20、23/02−23/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシートの製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置を、前記シート材の側辺を摺接させるガイドプレートを使用することなく調整するシート材の位置調整方法であり、
前記シート材を下方から支持する支持面、及び、該支持面の一部で上下の空間を連通させる開放部を備えるシート支持台に沿って前記シート材を走行させ、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、回動駆動装置の駆動により前記支持面に垂直な軸周りに回動可能な駆動ホイールと、前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、前記支持面に垂直な軸周りに回転自在な自在ホイールとで、前記開放部において前記シート材を上下から挟持し、
前記シート材の幅方向の位置の検出に基づいて前記シート材の幅方向の位置ずれを算出し、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じていない場合は、前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させることなく、前記駆動ホイール及び前記自在ホイールを、前記シート材に対するそれぞれの転動方向が、上流側から流入してくる前記シート材の走行方向と一致している状態で転動させ、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じた場合は、算出された幅方向の位置ずれに基づき、前記回動駆動装置の駆動により前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに所定角度回動させ、前記駆動ホイールの前記シート材に対する転動方向を上流側から流入してくる前記シート材の走行方向に対して傾けることにより、前記シート材を幅方向に移動させ、
前記シート材の幅方向の移動に従動させて、前記駆動ホイールの回動に遅れて、前記自在ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させることにより、前記シート材に対する転動方向を前記駆動ホイールと前記自在ホイールとで一致させる
ことを特徴とするシート材の位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシートの製造ラインにおいて、走行するシート材の幅方向の位置を調整するシート材の位置調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボールシートは、一般的にコルゲータと称される装置で製造される。コルゲータでは、シングルフェーサにおいて、波形に成形された中芯と裏ライナとの貼合により片面段ボールシートが製造され、ダブルフェーサにおいて、片面段ボールシートと表ライナとの貼合、または複数の片面段ボールシートと表ライナの貼合が行われ、両面段ボールシート、複両面段ボールシート等の段ボールシートが製造される。製造された段ボールシートは、スリッタスコアラにおいて走行方向と平行に罫線入れ及び溝切りが行われた後、所定の長さで流れ方向と直交する方向に裁断される。
【0003】
上記の工程は、中芯、ライナ、片面段ボールシート、両面段ボールシート等のシート材を走行させながら行われるが、シート材が走行する位置が幅方向(走行方向と直交する方向)にずれることにより、不具合が生じることがある。例えば、貼合前のシート材が幅方向にずれると、貼合されたシート材同士で幅方向の端辺が不揃いとなることがある。一般的に、段ボールシートの幅方向の寸法精度を確保するために、両端を化粧断ちするための落し代が予め設定されているが、端辺における不揃い幅が落し代を超えると、その部分の段ボールシートは廃棄対象となり大きな無駄となる。また、スリッタスコアラの上流でシート材が幅方向にずれていると、ずれた位置で罫線入れや溝切りが行われることになり、製造された段ボールブランクの寸法が不正確となる。
【0004】
そこで、従来、シート材が走行する幅方向の位置を調整する方法及び装置として、それぞれシート材に平行な軸周りに回転自在な上ホイール及び下ホイールでシート材を挟持し、上ホイール及び下ホイールをシート材に垂直な軸周りに旋回させ、且つ、上ホイールと下ホイールの旋回を共通の駆動装置によって同期させる技術が提案され、実施されている(特許文献1参照)。この技術によれば、上下のホイールをシート材の走行に従動させて自由回転させつつ、シート材に垂直な軸周りに旋回させることにより、シート材に対するホイールの相対的な進行方向をシート材の走行方向から傾け、シート材を幅方向に移動させることができる。
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、上下のホイールの旋回を共通の駆動装置によって同期させているため、装置が大掛かりになると共に制御が複雑となり、高コストとなるという問題があった。
【0006】
一方、下ホイールを設けることなく、支持プレート上を走行するシート材に上ホイールのみを押圧し、上ホイールをシート材に垂直な軸周りに旋回させることによってシート材を幅方向に移動させる装置も提案されている(特許文献2参照)。これによれば、装置の構成は簡易なものとなるが、上ホイールから加える力のみでシート材の走行方向を変えなければならない。そのため、上ホイールをシート材に強く押圧する必要があり、シート材がつぶれやすいという問題があった。段ボールシートは、波形に成形された中芯によって緩衝性を発揮するため、中芯の波がつぶれた段ボールシートは不良品として廃棄対象となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、段ボールシートの製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置を、簡易に調整することができると共に、シート材のつぶれを抑制できるシート材の位置調整方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる段ボールシートの位置調整方法は、
段ボールシートの製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置を、前記シート材の側辺を摺接させるガイドプレートを使用することなく調整するシート材の位置調整方法であり、
前記シート材を下方から支持する支持面、及び、該支持面の一部で上下の空間を連通させる開放部を備えるシート支持台に沿って前記シート材を走行させ、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、回動駆動装置の駆動により前記支持面に垂直な軸周りに回動可能な駆動ホイールと、前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、前記支持面に垂直な軸周りに回転自在な自在ホイールとで、前記開放部において前記シート材を上下から挟持し、
前記シート材の幅方向の位置の検出に基づいて前記シート材の幅方向の位置ずれを算出し、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じていない場合は、前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させることなく、前記駆動ホイール及び前記自在ホイールを、前記シート材に対するそれぞれの転動方向が、上流側から流入してくる前記シート材の走行方向と一致している状態で転動させ、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じた場合は、算出された幅方向の位置ずれに基づき、前記回動駆動装置の駆動により前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに所定角度回動させ、前記駆動ホイールの前記シート材に対する転動方向を上流側から流入してくる前記シート材の走行方向に対して傾けることにより、前記シート材を幅方向に移動させ、
前記シート材の幅方向の移動に従動させて、前記駆動ホイールの回動に遅れて、前記自在ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させることにより、前記シート材に対する転動方向を前記駆動ホイールと前記自在ホイールとで一致させる」ものである。
【0009】
「シート材」は、表・裏ライナ、波形に成形された中芯、片面段ボールシート、両面段ボールシート、及び、二層以上が貼合された片面段ボールシートに表ライナが貼合されたシートを指している。
【0010】
シート材を下方から支持する「支持面」は、送りローラ等に駆動されて走行するシート材を載置し滑らせるプレートの上面や、シート材を搬送するコンベアの上面で構成させることができる。また、「開放部」は、支持面を上流側と下流側とに分断して間隙を設けることにより、形成することができる。或いは、支持面を左右に分断して中央部に間隙を設けることにより、開放部を形成することができる。また或いは、支持面の一部に貫通孔を設けることにより、開放部を形成することができる。
【0011】
「駆動ホイール」、及び、「自在ホイール」は、それぞれ単数であっても複数であってもよい。なお、駆動ホイールと自在ホイールとでシート材を上下から挟持するが、駆動ホイールがシート材の上方に配され自在ホイールがシート材の下方に配されるものであっても、その逆であってもよい。
【0012】
「回動駆動装置」は、駆動ホイールを支持面に垂直な軸(以下、単に「垂直軸」と称することがある)周りに、所望の角度だけ正逆方向に回動させることができる駆動装置であり、サーボモータやステッピングモータを使用可能である。
【0013】
本発明では、それぞれ支持面に平行な軸(以下、単に「平行軸」と称することがある)周りに回転自在な駆動ホイール及び自在ホイールで、シート材を上下から挟持する。以下、駆動ホイール及び自在ホイールを区別する必要がないときは、単に「ホイール」と総称する。上下のホイールを垂直軸周りに回動させていない状態、換言すれば、シート材に対する相対的なホイールの転動方向が、上流側から流入してくるシート材の走行方向と一致しているときは、ホイールの上流側と下流側とで、段ボールシートが走行する幅方向の位置は変わらない。そして、シート材を幅方向に移動させる場合、本発明では、シート材を上下から挟持するホイールの内の一方である駆動ホイールのみを、垂直軸周りに回動させる。これにより、駆動ホイールからシート材に対して、幅方向に移動させようとする力が作用する。このとき、シート材は上下からホイールで挟持されているため、駆動ホイールから力が作用する方向以外にシート材が滑りにくく、駆動ホイールから作用する力をシート材に効率よく伝え、高い応答性でシート材を幅方向に移動させることができる。また、シート材が上下からホイールで挟持されていることにより、駆動ホールでシート材を強く押圧することなく、シート材を幅方向に移動させることができるため、シート材につぶれが生じるおそれを低減することができる。
【0014】
そして、シート材が幅方向に移動すると、垂直軸周りに回転自在な自在ホイールは、シート材の動きに従動して垂直軸周りに回動し、自在ホイールのシート材に対する相対的な転動方向は駆動ホイールのそれと一致する。すなわち、自在ホイールは、駆動ホイールの垂直軸周りの回動に遅れて、垂直軸周りに回動する。本発明は、従来技術の考え方とは異なり、シート材を上下から挟持するホイールの垂直軸周りの回動を同期させなくても、問題なくシート材を幅方向に移動させることができることに着眼してなされたものである。従って、上下のホイールの回動を同期させるための機械的な構造や、同期させるための制御が不要であるため、簡易な構成の装置を使用した簡易な方法で、シート材の横方向の位置を調整することができる。
【0015】
本発明にかかるシート材の位置調整方法は、上記構成に加え、
「シート材が走行するラインにおいて、前記駆動ホイール及び前記自在ホイールより下流側に、シート材を走行方向に平行に切断するスリッタ装置を設け、
シート材を走行方向に直角に切断すべき位置としてシート材に予め付されたカットマークの位置を、前記スリッタ装置の下流側に設置された検出装置で読み取り、
読み取られたカットマークの位置を目標位置と対比し、前記回動駆動装置を制御して前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させる角度を調整する」ものとすることができる。
【0016】
従来では、スリッタ装置において正確な位置でシート材の溝切りを行わせるために、シート材の幅方向の位置を調整しようとする場合、スリッタ装置の“上流側”でシート材の幅方向の位置を検出し、この検出に基づいてシート材を幅方向に移動させる量を調整するのが一般的であった。一方、段ボールシートの製造ラインでは、シート材の幅方向へのずれを検出し、幅方向にずれたシート材に追従して幅方向に移動するスリッタ装置も、多く使用されている。この場合、スリッタ装置の幅方向への移動に伴って、更にシート材に幅方向のずれが発生するため、スリッタ装置の上流側での検出に基づいて位置調整したとしても、シート材の幅方向の位置を正確に調整することはできない。
【0017】
これに対し、本発明では、スリッタ装置の「下流側」でシート材の幅方向の位置を検出する構成を採用した。これにより、スリッタ装置を幅方向に移動させる設備を有する従来の製造ラインを使用しつつ、スリッタ装置の移動に伴って生じるシート材の幅方向の位置のずれが相殺されるように、駆動ホイール及び自在ホイールでシート材を幅方向に移動させることができるため、シート材の幅方向の位置を正確に調整することができる。
【0018】
ここで、シート材には、走行方向に平行に溝切りすべきラインを示す“スリットマーク”と、走行方向に直角に切断すべき位置を示す「カットマーク」が付されていることが多い。この内スリットマークは、スリッタ装置に流入するシート材が幅方向に外側にずれていたときは、スリットマークが付された部分のシート材が切除されてしまい、スリッタ装置の下流側では確認することができない。一方、カットマークは、シート材の幅方向にある程度の長さで付されているため、スリッタ装置に流入するシート材が幅方向にずれていたとしても、完全に切除されてしまうことはない。本発明では、検出装置による読み取り対象をカットマークとしたことにより、もともとシート材に付されている目印を指標として、スリッタ装置の下流側でシート材の幅方向の位置を検出することができる。
【0019】
次に、本発明にかかる段ボールシートの位置調整方法に使用する段ボールシートの位置調整装置は、
「走行するシート材を下方から支持する支持面、及び、該支持面の一部で上下の空間を連通させる開放部を備えるシート支持台と、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、回動駆動装置の駆動により前記支持面に垂直な軸周りに回動可能な駆動ホイールと、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、前記支持面に垂直な軸周りに回転自在な自在ホイールとを具備し、
前記駆動ホイール及び前記自在ホイールの一方は、前記開放部において前記シート支持台より上方に位置し、
前記駆動ホイール及び前記自在ホイールの他方は、前記開放部において前記シート支持台より下方に位置する」ものとすることができる
【0020】
本構成のシート材の位置調整装置により、上述のシート材の位置調整方法を使用することができる。すなわち、本構成のシート材の位置調整装置は、簡易な構成でありながら、シート材のつぶれを抑制して、シート材の幅方向の位置を正確に調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の効果として、段ボールシートの製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置を、簡易に調整することができると共に、シート材のつぶれを抑制できるシート材の位置調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態のシート材の位置調整方法に使用するシート材の位置調整装置の正面図(下流側から見た図)である。
図2図1の位置調整装置における駆動ホイール及び自在ホイールの(a)正面図、及び(b)側面図である。
図3図1の位置調整装置について、垂直軸周りに回動する前の駆動ホイール及び回動駆動装置の(a)平面図、及び(b)正面図である。
図4図1の位置調整装置について、垂直軸周りに回動した後の駆動ホイール及び回動駆動装置のa)平面図、及び(b)正面図である。
図5】駆動ホイールに遅れる自在ホイールの垂直軸周りの回動を説明する(a)平面図、及び(b)正面図である。
図6図1の位置調整装置の下流にスリッタ装置を設ける場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態であるシート材の位置調整方法(以下、単に「位置調整方法」と称することがある)、及び、該位置調整方法に適したシート材の位置調整装置1(以下、単に「位置調整装置1」と称する)の構成について、図1乃至図6に基づいて説明する。
【0024】
位置調整装置1は、走行するシート材Sを下方から支持する支持面62、及び、支持面62の一部で上下の空間を連通させる開放部64を備えるシート支持台60と、支持面62に平行な第一軸部11周りに回転自在で、シリンダ装置55の駆動により支持面62に垂直な第三軸部13周りに回動可能な駆動ホイール20と、支持面62に平行な第五軸部15周りに回転自在で、支持面62に垂直な第六軸部16周りに回転自在な自在ホイール40とを具備し、駆動ホイール20及び自在ホイール40の一方は、開放部64においてシート支持台60より上方に位置し、駆動ホイール20及び自在ホイール40の他方は、開放部64においてシート支持台60より下方に位置するものである。なお、本実施形態では、駆動ホイール20がシート支持台60の上方に、自在ホイール40がシート支持台60の下方に位置する場合を例示する。
【0025】
より詳細に説明すると、支持面62は平板状の支持プレート61の上面であり、支持プレート61は、複数の支柱66によって設置面から所定高さに水平に支持されている。支持プレート61は上流側と下流側とに分断されており、その間隙が開放部64を形成している。
【0026】
開放部64において支持面62の高さより高い位置では、支柱66間に水平に、シート材Sの走行方向に直交する方向に、横架材67が架け渡されており、横架材67に対して昇降する厚板状の昇降部材30が設けられている。具体的には、横架材67には正逆方向に回転するモータ51が固定され、モータ51の回転軸から延設された雄ネジ軸部52が鉛直方向に下方に向かって延びており、雄ネジ軸部52と螺合する雌ネジ部(図示しない)が昇降部材30に形成されている。かかる構成により、モータ51の正逆回転によって、横架材67に対して昇降部材30が昇降する。なお、横架材67からは上流側に向けて一対のスリーブ69が突設されており、スリーブ69に上下方向に貫通する孔部内を摺動するガイド棒39が、昇降部材30から上方に延びている。これにより、横架材67に対する昇降部材30の昇降運動が、スリーブ69の貫通孔内で摺動するガイド棒39によって案内され、安定して行われる。
【0027】
駆動ホイール20は、複数が単一の平行軸周りに回転すると共に、単一の垂直軸周りに回動する構成であり、本実施形態では、かかる駆動ホイール20のセットが二つ設けられている。この二つの駆動ホイール20のセットは同一の構成であるため、一方を例にとって説明する。複数の駆動ホイール20はそれぞれ、支持面62に対して平行な、単一の第一軸部11周りに回転自在であり、第一軸部11はコ字形のホイール支持部21の両端部間に架け渡されている。この第一軸部11の軸心が、本発明において駆動ホイールに関する「支持面に平行な軸(平行軸)」に相当する。
【0028】
ホイール支持部21は、昇降部材30から上流側に向けて支持面62に平行に、固定的に突設された取付片32、及び、コ字形で開端を下方に向けた連結支持部22を介して、昇降部材30に支持されている。具体的には、コ字形の連結支持部22の中間部が、支持面62に垂直な第三軸部13によって、取付片32に対して回動自在に軸支されている。この第三軸部13の軸心が、本発明において駆動ホイールに関する「支持面に垂直な軸(垂直軸)」に相当する。連結支持部22は両端部間でホイール支持部21を両外から挟み込んでおり、連結支持部22の両端部は、支持面62に平行な第二軸部12によって、ホール支持部の両側面に対して回動自在に軸支されている。そして、連結支持部22の中間部及びホイール支持部21の中間部の間には、湾曲した板バネ23が配されている。
【0029】
連結支持部22の中間部からは、直角かつ支持面62に平行に、取付片25が固定的に突設されている。従って、二つの駆動ホイール20のセットをそれぞれを支持する二つの連結支持部22から、それぞれ取付片25が突設されていることになる。この二つの取付片25の一方は、細長い板状の連結バー31の一端に、取付片25の他方は連結バー31の他端に、それぞれ連結バー31から固定的に突設された取付片34を介して、支持面62に垂直な第四軸部14周りに回動自在に連結されている。そして、エアまたは油圧で作動するシリンダ装置55のシリンダ側の端部が、昇降部材30から上流側に向けて支持面62に平行に、固定的に突設された取付片35に対して、支持面62に垂直な軸部18によって回動自在に軸支されていると共に、シリンダ装置55のピストンロッドの先端が、連結バー31から下流側に向けて支持面62に平行に、固定的に突設された取付片39に対して、支持面62に垂直な軸部19によって回動自在に軸支されている。なお、シリンダ装置55が、本発明の「回動駆動装置」に相当する。
【0030】
自在ホイール40は、複数が単一の平行軸周りに回転する構成であり、本実施形態では、かかる自在ホイール40のセットが二つ設けられ、それぞれが二つの駆動ホイール20のセットの真下に位置している。二つの自在ホイール40のセットは同一の構成であるため、一方を例にとって説明する。複数の自在ホイール40はそれぞれ、支持面62に平行な単一の第五軸部15周りに回転自在であり、第五軸部15はコ字形の自在ホイール支持部41の両端部間に架け渡されている。この第五軸部15の軸心が、本発明において自在ホイールに関する「支持面に平行な軸(平行軸)」に相当する。
【0031】
開放部64において、支持面62の高さより低い位置では、支柱66間に水平に、且つ、シート材Sの走行方向に直交する方向に、横架材68が架け渡されている。そして、自在ホイール支持部41は、その中間部から突設された取付部42を介して、支持面62に垂直な第六軸部16によって、横架材68に対して回転自在に軸支されている。この第六軸部16の軸心が、本発明において自在ホイールに関する「支持面に垂直な軸(垂直軸)」に相当する。また、自在ホイール40は、上端が支持面62と同一の高さとなるように、横架材68に支持されている。
【0032】
なお、位置調整装置1は、主記憶装置と、主記憶装置に記憶されたプログラムに従って処理を行う中央処理装置(CPU)と、ハードディスク等の補助記憶装置とを具備するコンピュータ(図示しない)を備えており、主記憶装置には、シート材Sの幅方向の位置を検出するカメラ等の検出装置の検出に基づき、シート材Sの幅方向のずれを算出し、算出されたずれの距離に応じて、駆動ホイール20を第三軸部13周りに回動させる位置制御プログラムが記憶されている。
【0033】
上記構成の位置調整装置1を使用して行う位置調整方法は、シート材Sを下方から支持する支持面62、及び、支持面62の一部で上下の空間を連通させる開放部64を備えるシート支持台60に沿ってシート材Sを走行させ、支持面62に平行な第一軸部11周りに回転自在で、シリンダ装置55の駆動により支持面62に垂直な第三軸部13周りに回動可能な駆動ホイール20と、支持面62に平行な第五軸部15周りに回転自在で、支持面62に垂直な第六軸部16周りに回転自在な自在ホイール40とで、開放部64においてシート材Sを上下から挟持し、シリンダ装置55の駆動により駆動ホイール20を第三軸部13周りに所定角度回動させることにより、シート材Sを幅方向に移動させ、シート材Sの幅方向の移動に従動させて、駆動ホイール20の回動に遅れて、自在ホイール40を第六軸部16周りに回動させるものである。
【0034】
より詳細に説明すると、まず、位置調整装置1の動作開始に先立ち、或いは、製造する段ボールシートの種類の切り替えに際して、シート材Sの厚さに応じて、モータ51を回転させて昇降部材30を降下させ、駆動ホイール20をシート材Sの上面に当接させる。例えば、位置調整装置1のコンピュータを、段ボールシートの製造ラインの生産管理装置または事業者の事務所コンピュータと、有線通信または無線通信可能に接続することにより、シート材Sの種類や厚さに関する情報を、生産管理装置や事務所コンピュータから随時取得することができる。或いは、シート材Sの種類や厚さに関する情報を、生産管理装置や事務所コンピュータから予め取得して補助記憶装置に記憶させておき、これを読み出して使用する構成とすることができる。更に、コンピュータの主記憶装置には、シート材Sの厚さに関する情報に基づいてモータ51を駆動し、昇降部材30を介して駆動ホイール20の高さを調整する、ホイール高さ調整プログラムを記憶させておくことができる。
【0035】
連結支持部22とホイール支持部21との間には湾曲した板バネ23が配されているため、昇降部材30の降下により駆動ホイール20がシート材Sの上面に当接する際には、ホイール支持部21を連結支持部22に対して第二軸部12周りに上方向に回動させつつ、板バネ23がたわむ。これにより、シート材Sを過度に押圧することなく、且つ、しっかりと、駆動ホイール20によってシート材Sを押圧することができる。
【0036】
一方、自在ホイール40は、開放部64において、上端が支持面62と同一の高さとなるように支持されているため、シート材Sに下方から当接する。これにより、駆動ホイール20と自在ホイール40とによって、シート材Sが上下から挟持された状態となる。駆動ホイール20は支持面62に平行な第一軸部11周りに回転自在であり、自在ホイール40も支持面62に平行な第五軸部15周りに回転自在であるため、シート材Sを上下で挟持している駆動ホイール20及び自在ホイール40によって、シート材Sの走行が妨げられることはない。
【0037】
そして、図3に示すように、駆動ホイール20を第三軸部13周りに回動させていない状態では、駆動ホイール20及び自在ホイール40のシート材Sに対する相対的な進行方向は、図5(a),(b)それぞれの右図に示すように、シート材Sの走行方向と一致している。従って、この状態では、駆動ホイール20及び自在ホイール40の上流側と下流側とで、走行するシート材Sの幅方向の位置は変化しない。ここで、図3図1におけるA範囲を図示している。また、図5(a)は、駆動ホイール20及び自在ホイール40を上方から見下ろした平面図を示しており、シート材Sは紙面において上から下に走行する。また、図5(b)は駆動ホイール20及び自在ホイール40を下流側から見た正面図である。なお、図5では、シート材Sの図示を省略している。
【0038】
シート材Sの走行位置を幅方向に移動させる場合は、コンピュータの制御により、図4に示すように、所望の角度だけ駆動ホイール20を第三軸部13周りに回動させる。これは、シリンダ装置55のピストンロッドを前進または後退させることにより行う。図4では、ピストンロッドを前進させる場合を図示している。これにより、シリンダ装置55は軸部18,19周りに回動しつつ、ピストンロッドの先端に連結された連結バー31を幅方向に移動させる。これにより、第四軸部14によって連結バー31に軸支された取付片25が、第四軸部14周りに回動する。これに伴って、取付片25が固定されており、且つ、昇降部材30に固定された取付片32に対して第三軸部13によって回動自在に軸支された連結支持部22が、第三軸部13周りに回動する。同時に、連結支持部22によって挟み込まれるように支持されたホイール支持部21が第三軸部13周りに回動し、ホイール支持部21に支持された駆動ホイール20が第三軸部13周りに回動する。その結果、図5(a),(b)それぞれの中央図に示すように、駆動ホイール20のシート材Sに対する相対的な進行方向が、シート材Sの走行方向に対して傾く。
【0039】
これにより、駆動ホイール20からシート材Sに対して幅方向に移動させる力が作用し、シート材Sが幅方向に移動する。このとき、シート材Sは駆動ホイール20と自在ホイール40とによって挟持されているため、駆動ホイール20からの力が効率良くシート材Sに作用する。そして、シート材Sの走行位置が幅方向に移動するのに伴い、シート材Sとの間に働く摩擦力によって、シート材Sに従動して自在ホイール40が回動する。すなわち、図5(a),(b)それぞれの左図に示すように、自在ホイール40が第六軸部16周りに回動し、シート材Sに対する相対的な進行方向は最終的に駆動ホイール20と一致する。このように、自在ホイール40は、駆動ホイール20に遅れて、支持面62に垂直な軸周りに回動する。
【0040】
上記のように、本実施形態の位置調整装置1、及び、位置調整装置1によって行われる位置調整方法によれば、駆動ホイール20及び自在ホイール40のうち、駆動ホイール20のみをシート材Sに垂直な第三軸部13周りに回動させる簡易な装置及び方法で、シート材Sの幅方向の位置を調整することができる。また、駆動ホイール20と自在ホイール40とでシート材Sを上下から挟持しているため、シート材Sを強く押圧することなく、駆動ホイール20からの力をシート材Sに効率良く伝えることができ、シート材Sにつぶれが生じるおそれを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態では、それぞれ第三軸部13周りに回動する駆動ホイール20のセットの二つが、それぞれ取付片25を介して連結バー31で連結されている。これにより、単一のシリンダ装置55によって、駆動ホイール20のセットの二つを、同時に同角度、第三軸部13周りに回動させることができる。
【0042】
上記の位置調整装置1は、例えば、表ライナと貼合される前の片面段ボールシートの幅方向の位置のずれを調整する位置調整方法に使用することができる。そのほか、位置調整装置1は、次のような位置調整方法に使用することもできる。すなわち、シート材Sが走行するラインにおいて、駆動ホイール20及び自在ホイール40より下流側に、シート材Sを走行方向に平行に切断するスリッタ装置71を設け、シート材Sを走行方向に直角に切断すべき位置としてシート材Sに付されたカットマークの位置を、スリッタ装置71の下流側に設置された検出装置としてのカメラ75で読み取り、読み取られたカットマークの位置を目標位置と対比し、回動駆動装置としてのシリンダ装置55を制御して駆動ホイール20を支持面62に垂直な軸周りに回動させる角度を調整する位置調整方法である。
【0043】
より具体的には、図6に示すように、スリッタ装置71は走行方向に沿って二つ設けられており、それぞれの下流には、シート材Sの下面を撮像する検出装置としてのカメラ75が設けられている。そして、二つ目のスリッタ装置71の更に下流には、シート材Sを走行方向に直角に切断して段ボールブランクS’とするカット装置72が設けられている。
【0044】
かかる構成により、シート材Sの下面に予め付されたカットマークがカメラ75で撮像され、撮像データがコンピュータに送出される。コンピュータは、画像処理によってカットマークの幅方向における内側の端辺を検出し、その位置を目標位置と対比することにより、シート材Sの幅方向の位置のずれを算出する。そして、コンピュータは、その算出結果に基づいて、駆動ホイール20を第三軸部13周りに回動させてシート材Sを幅方向に移動させ、カットマークの幅方向における内側の端辺の位置が目標位置と一致するように調整する。自在ホイール40は、駆動ホイール20と共にシート材Sを挟持し、駆動ホイール20からシート材Sに作用する力を効率良くシート材Sに伝える。そして、自在ホイール40は、シート材Sとの摩擦によりシート材Sの幅方向の移動に従動して、駆動ホイール20に遅れて第六軸部16周りに回動する。これにより、シート材Sに対する相対的な進行方向は、駆動ホイール20と自在ホイール40とで一致し、シート材Sの走行が安定的に案内される。
【0045】
上記のように、スリッタ装置71の下流側にカメラ75を配することにより、シート材Sの走行位置の幅方向のずれに従動して、スリッタ装置71を幅方向に移動させる設備を有する従来の製造ラインを使用しつつ、スリッタ装置71の移動に伴って生じるシート材Sの幅方向の位置のずれが相殺されるように、駆動ホイール20及び自在ホイール40でシート材Sを幅方向に移動させることができる。これにより、走行するシート材Sの幅方向の位置を、正確に調整することができる。
【0046】
そして、本実施形態では、カメラ75による撮像の対象として、シート材Sに予め付されたカットマークを使用している。カットマークは、スリッタ装置71に流入するシート材Sが幅方向にずれていたとしても、完全に切除されてしまうことはない。これにより、シート材Sの幅方向の位置のずれを確実に検出し、その検出に基づいて、シート材Sの幅方向の位置を正確に調整することができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、単一の第三軸部13周りに回動する四つの駆動ホイール20からなるセットと、単一の第六軸部16周りに回動する四つの自在ホイール40からなるセットが設けられる場合を、図示により例示した。一つのセットを構成する駆動ホイール20または自在ホイール40の数は四つに限定されず、それ以外の数の駆動ホイール20または自在ホイール40で、一つのセットを構成するものであってもよい。
【0049】
また、上記では、駆動ホイール20がシート材Sの上面に当接し、自在ホイール40がシート材Sの下面に当接する場合を例示した。これに限定されず、自在ホイール40がシート材Sの上面に当接し、駆動ホイール20がシート材Sの下面に当接する構成とすることもできる。
【0050】
更に、上記では、駆動ホイール20を昇降させる機構として、横架材67に固定されたモータ51と、モータ51の回転軸から延設された雄ネジ軸部52、及び、駆動ホイール20が取り付けられた昇降部材30に設けられた雌ネジ部を例示した。これに限定されず、横架材67に固定されたシリンダ装置55によって、昇降部材30を昇降させる構成とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 位置調整装置(「段ボールシートの位置調整装置」)
11 第一軸部(軸心は、「支持面に平行な軸」)
13 第三軸部(軸心は、「支持面に垂直な軸」)
15 第五軸部(軸心は、「支持面に平行な軸」)
16 第六軸部(軸心は、「支持面に垂直な軸」)
20 駆動ホイール
40 自在ホイール
55 シリンダ装置(「回動駆動装置」)
60 シート支持台
62 支持面
64 開放部
71 スリッタ装置
75 カメラ(「検出装置」)
S シート材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特許第3442735号公報
【特許文献2】特開2007−30178号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6