【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる段ボールシートの位置調整方法は、
「
段ボールシートの製造ラインにおいて走行するシート材の幅方向の位置を、前記シート材の側辺を摺接させるガイドプレートを使用することなく調整するシート材の位置調整方法であり、
前記シート材を下方から支持する支持面、及び、該支持面の一部で上下の空間を連通させる開放部を備えるシート支持台に沿って
前記シート材を走行させ、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、回動駆動装置の駆動により前記支持面に垂直な軸周りに回動可能な駆動ホイールと、前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、前記支持面に垂直な軸周りに回転自在な自在ホイールとで、前記開放部において前記シート材を上下から挟持し、
前記シート材の幅方向の位置の検出に基づいて前記シート材の幅方向の位置ずれを算出し、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じていない場合は、前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させることなく、前記駆動ホイール及び前記自在ホイールを、前記シート材に対するそれぞれの転動方向が、上流側から流入してくる前記シート材の走行方向と一致している状態で転動させ、
前記シート材に幅方向の位置ずれが生じた場合は、算出された幅方向の位置ずれに基づき、前記回動駆動装置の駆動により前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに所定角度回動させ
、前記駆動ホイールの前記シート材に対する転動方向を上流側から流入してくる前記シート材の走行方向に対して傾けることにより、前記シート材を幅方向に移動させ、
前記シート材の幅方向の移動に従動させて、前記駆動ホイールの回動に遅れて、前記自在ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させる
ことにより、前記シート材に対する転動方向を前記駆動ホイールと前記自在ホイールとで一致させる」ものである。
【0009】
「シート材」は、表・裏ライナ、波形に成形された中芯、片面段ボールシート、両面段ボールシート、及び、二層以上が貼合された片面段ボールシートに表ライナが貼合されたシートを指している。
【0010】
シート材を下方から支持する「支持面」は、送りローラ等に駆動されて走行するシート材を載置し滑らせるプレートの上面や、シート材を搬送するコンベアの上面で構成させることができる。また、「開放部」は、支持面を上流側と下流側とに分断して間隙を設けることにより、形成することができる。或いは、支持面を左右に分断して中央部に間隙を設けることにより、開放部を形成することができる。また或いは、支持面の一部に貫通孔を設けることにより、開放部を形成することができる。
【0011】
「駆動ホイール」、及び、「自在ホイール」は、それぞれ単数であっても複数であってもよい。なお、駆動ホイールと自在ホイールとでシート材を上下から挟持するが、駆動ホイールがシート材の上方に配され自在ホイールがシート材の下方に配されるものであっても、その逆であってもよい。
【0012】
「回動駆動装置」は、駆動ホイールを支持面に垂直な軸(以下、単に「垂直軸」と称することがある)周りに、所望の角度だけ正逆方向に回動させることができる駆動装置であり、サーボモータやステッピングモータを使用可能である。
【0013】
本発明では、それぞれ支持面に平行な軸(以下、単に「平行軸」と称することがある)周りに回転自在な駆動ホイール及び自在ホイールで、シート材を上下から挟持する。以下、駆動ホイール及び自在ホイールを区別する必要がないときは、単に「ホイール」と総称する。上下のホイールを垂直軸周りに回動させていない状態、換言すれば、シート材に対する相対的なホイールの転動方向が、上流側から流入してくるシート材の走行方向と一致しているときは、ホイールの上流側と下流側とで、段ボールシートが走行する幅方向の位置は変わらない。そして、シート材を幅方向に移動させる場合、本発明では、シート材を上下から挟持するホイールの内の一方である駆動ホイールのみを、垂直軸周りに回動させる。これにより、駆動ホイールからシート材に対して、幅方向に移動させようとする力が作用する。このとき、シート材は上下からホイールで挟持されているため、駆動ホイールから力が作用する方向以外にシート材が滑りにくく、駆動ホイールから作用する力をシート材に効率よく伝え、高い応答性でシート材を幅方向に移動させることができる。また、シート材が上下からホイールで挟持されていることにより、駆動ホールでシート材を強く押圧することなく、シート材を幅方向に移動させることができるため、シート材につぶれが生じるおそれを低減することができる。
【0014】
そして、シート材が幅方向に移動すると、垂直軸周りに回転自在な自在ホイールは、シート材の動きに従動して垂直軸周りに回動し、自在ホイールのシート材に対する相対的な転動方向は駆動ホイールのそれと一致する。すなわち、自在ホイールは、駆動ホイールの垂直軸周りの回動に遅れて、垂直軸周りに回動する。本発明は、従来技術の考え方とは異なり、シート材を上下から挟持するホイールの垂直軸周りの回動を同期させなくても、問題なくシート材を幅方向に移動させることができることに着眼してなされたものである。従って、上下のホイールの回動を同期させるための機械的な構造や、同期させるための制御が不要であるため、簡易な構成の装置を使用した簡易な方法で、シート材の横方向の位置を調整することができる。
【0015】
本発明にかかるシート材の位置調整方法は、上記構成に加え、
「シート材が走行するラインにおいて、前記駆動ホイール及び前記自在ホイールより下流側に、シート材を走行方向に平行に切断するスリッタ装置を設け、
シート材を走行方向に直角に切断すべき位置としてシート材に予め付されたカットマークの位置を、前記スリッタ装置の下流側に設置された検出装置で読み取り、
読み取られたカットマークの位置を目標位置と対比し、前記回動駆動装置を制御して前記駆動ホイールを前記支持面に垂直な軸周りに回動させる角度を調整する」ものとすることができる。
【0016】
従来では、スリッタ装置において正確な位置でシート材の溝切りを行わせるために、シート材の幅方向の位置を調整しようとする場合、スリッタ装置の“上流側”でシート材の幅方向の位置を検出し、この検出に基づいてシート材を幅方向に移動させる量を調整するのが一般的であった。一方、段ボールシートの製造ラインでは、シート材の幅方向へのずれを検出し、幅方向にずれたシート材に追従して幅方向に移動するスリッタ装置も、多く使用されている。この場合、スリッタ装置の幅方向への移動に伴って、更にシート材に幅方向のずれが発生するため、スリッタ装置の上流側での検出に基づいて位置調整したとしても、シート材の幅方向の位置を正確に調整することはできない。
【0017】
これに対し、本発明では、スリッタ装置の「下流側」でシート材の幅方向の位置を検出する構成を採用した。これにより、スリッタ装置を幅方向に移動させる設備を有する従来の製造ラインを使用しつつ、スリッタ装置の移動に伴って生じるシート材の幅方向の位置のずれが相殺されるように、駆動ホイール及び自在ホイールでシート材を幅方向に移動させることができるため、シート材の幅方向の位置を正確に調整することができる。
【0018】
ここで、シート材には、走行方向に平行に溝切りすべきラインを示す“スリットマーク”と、走行方向に直角に切断すべき位置を示す「カットマーク」が付されていることが多い。この内スリットマークは、スリッタ装置に流入するシート材が幅方向に外側にずれていたときは、スリットマークが付された部分のシート材が切除されてしまい、スリッタ装置の下流側では確認することができない。一方、カットマークは、シート材の幅方向にある程度の長さで付されているため、スリッタ装置に流入するシート材が幅方向にずれていたとしても、完全に切除されてしまうことはない。本発明では、検出装置による読み取り対象をカットマークとしたことにより、もともとシート材に付されている目印を指標として、スリッタ装置の下流側でシート材の幅方向の位置を検出することができる。
【0019】
次に、本発明にかかる
段ボールシートの位置調整方法に使用する段ボールシートの位置調整装置は、
「走行するシート材を下方から支持する支持面、及び、該支持面の一部で上下の空間を連通させる開放部を備えるシート支持台と、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、回動駆動装置の駆動により前記支持面に垂直な軸周りに回動可能な駆動ホイールと、
前記支持面に平行な軸周りに回転自在で、前記支持面に垂直な軸周りに回転自在な自在ホイールとを具備し、
前記駆動ホイール及び前記自在ホイールの一方は、前記開放部において前記シート支持台より上方に位置し、
前記駆動ホイール及び前記自在ホイールの他方は、前記開放部において前記シート支持台より下方に位置する」もの
とすることができる。
【0020】
本構成のシート材の位置調整装置により、上述のシート材の位置調整方法を使用することができる。すなわち、本構成のシート材の位置調整装置は、簡易な構成でありながら、シート材のつぶれを抑制して、シート材の幅方向の位置を正確に調整することができる。