【実施例】
【0027】
本発明は、鶏卵のほか、スッポン卵やウズラ卵などの各種卵の卵殻1と卵殻膜2とを分離回収する方法及び装置である。本発明回収方法は、浸漬工程100、加圧工程200、マイクロバブル発生工程300、再加圧工程400、回収工程500にて回収される(
図13参照)。
【0028】
浸漬工程100は、卵殻1内から付着した卵白及び卵黄を洗浄除去した後、該卵殻1を水に浸漬する工程である。加圧工程200は、卵殻1を浸漬した水に加圧下で炭酸ガスを充填して高濃度の炭酸水溶液Pを生成する工程である。
【0029】
マイクロバブル発生工程300は、炭酸水溶液Pの圧力を減圧して炭酸水溶液P中にマイクロバブルを発生させる工程である。この工程で、圧力下で高濃度の炭酸水溶液Pの中に溶解された炭酸ガスは、減圧されることで、過飽和状態になり、水溶液から飛び出そうとする過程で大量のマイクロバブルが発生する。このマイクロバブルは、直径が50μm以下の超微小気泡であり、水面への上昇速度が極めて遅い。しかも、マイクロバブルの炭酸ガスは、卵殻1に大量に付着するので、卵殻1の周囲に炭酸ガスを長時間接触させることが可能になる。
【0030】
再加圧工程400は、マイクロバブルが発生した炭酸水溶液Pに加圧下にて炭酸ガスを再補充する工程である。この工程で、炭酸ガスを再補充すると、卵殻1に大量に付着していたマイクロバブルの炭酸ガスと水と卵殻1の炭酸カルシウムとが反応し、卵殻1表面は炭酸水素カルシウムとなって水溶化する。
【0031】
回収工程500は、卵殻1の乳頭核が溶解した時点で卵殻1から卵殻膜2を分離し夫々を回収する工程である。このとき、卵殻1の乳頭核が溶解した時点とは、溶解が始まった時点から、全て溶解した時点までを含むものである。
【0032】
本発明装置の基本構成は、卵殻1を収納する卵殻ケース3と、冷却及び加圧された炭酸水溶液Pを貯留する耐圧タンク10とで構成されている。この耐圧タンク10は、前記炭酸水溶液Pを貯留する容器体11と、該容器体11の開口上部を密閉する蓋体12とを備え、耐圧タンク10に貯留した炭酸水溶液Pを大型冷蔵庫Qの内部で耐圧タンク10ごと冷却するように構成している。
【0033】
耐圧タンク10は、ガスノズル14と圧抜き弁18とを備えている。ガスノズル14は、耐圧タンク10内の水溶液に加圧下で炭酸ガスを吹き込み、高濃度の炭酸水溶液Pを生成する部材である。炭酸ガスの充填は、卵殻1を収納した卵殻ケース3ごと耐圧タンク10の水溶液内に浸漬した状態で行う。圧抜き弁18は、耐圧タンク10内の炭酸水溶液Pの圧力を減圧する弁で、炭酸水溶液P中にマイクロバブルを発生させる際に使用する。
【0034】
図示の耐圧タンク10は、Oリング12Aを介した蓋体12を容器体11の開口上部に開閉自在に装着したもので、この蓋体12には、さらに耐圧タンク10内の圧力を計測する圧力計17やこの圧力を調整する圧抜き弁18、耐圧タンク10の安全性を確保する安全弁19が装着されている(
図1参照)。容器体11の底部には、耐圧タンク10から炭酸水溶液Pを排出する排水口11Bが網11Aを介して設けられている。この排水口11Bには排水弁16が連結されており、この排水弁16を介して炭酸水溶液Pを排出するものである。
【0035】
さらに、耐圧タンク10の内部には、混合羽根13とガスノズル14とを備えている。ガスノズル14は、貯留した水溶液に炭酸ガスを吹き込むことで、耐圧タンク10内で炭酸水溶液Pを生成するものである。図示例では、大型冷蔵庫Q内の耐圧タンク10に炭酸ガスを供給するために、予め大型冷蔵庫Qの外部に炭酸ガスを供給する炭酸ボンベQ1を備えておき、この炭酸ボンベQ1からホースを介して耐圧タンク10のガス入口弁15に連結している(
図9参照)。そして、このガスノズル14から耐圧タンク10内の水溶液中に炭酸ガスを充填して炭酸水溶液Pを生成すると共に、生成された炭酸水溶液Pの炭酸ガス濃度を一定にするために炭酸ガスを補充する。
【0036】
混合羽根13は、耐圧タンク10内の水溶液と炭酸ガスとを混合して炭酸水溶液Pの生成を促進させると共に、炭酸水溶液Pの濃度を平均化するものである(
図1参照)。図示の混合羽根13は、前記蓋体12の上端部に装着したマグネットカップリング20に回転軸13Cを連結し、該マグネットカップリング20を介して装着したエアモータ30にて回転するように構成している。このエアモータ30は、圧縮空気の力で回転せしめるモータで、特に、寒冷地などでも安定した回転力が得られるものである。図示のエアモータ30は、予め大型冷蔵庫Qの外部に備えてあるコンプレッサQ2からホースを介して連結部30に圧縮空気を供給するものである(
図9参照)。尚、
図9中、符号Q3はガスリーク、符号Q4はサイレンサを示している。なおQ3とQ4は兼用も可能である。
【0037】
図示のマグネットカップリング20は、隔壁23内の内ローター22を、磁力を用いて隔壁23外の外ローター24で回転せしめるもので、外ローター24はエアモータ30にて回転させ、内ローター22に連結した回転軸13Cを回転せしめるものである(
図2参照)。この回転軸13Cは、蓋体12の貫通口12Bを貫通しているが、隔壁23内の軸受21が密封状態で回転軸13Cを支持している。尚、軸受21は、Oリング21Aを介して蓋体12に装着されており、この軸受21にベアリング21Bを介して回転軸13Cが装着されている。
【0038】
更に、混合羽根13は、上部混合羽根13Aと下部混合羽根13Bとを1本の回転軸13Cに固定した構造を成している(
図3参照)。上部混合羽根13Aは、耐圧タンク10に貯留した水溶液の水面付近から水面上部を撹拌する部位である(
図1参照)。また、下部混合羽根13Bは、上部混合羽根13Aの下に設置され、炭酸水溶液P内に下向きの流れを形成するように撹拌する部位である。これら上部混合羽根13Aと下部混合羽根13Bとは、エアモータ30の駆動力にて回転軸13Cが回転することにより同時に回転する。炭酸ガスは、低温下で水と撹拌して混ぜるほど水に溶け込む性質を有している。そのため、水面上の炭酸ガスや充填された炭酸ガスを効率良く撹拌して炭酸水溶液Pにさらに取り込むことで、濃度の高い炭酸水溶液Pを生成することが可能になる。
【0039】
卵殻ケース3は、卵殻膜2付の卵殻1を収納した状態で卵殻ケース3ごと耐圧タンク10の炭酸水溶液P内に浸漬するものである(
図1参照)。そして、炭酸水溶液Pの作用で卵殻膜2と卵殻1とを分離すると共に、分離された卵殻ケース3上の卵殻膜2と、卵殻膜2を分離した卵殻1とをそれぞれ回収する。
【0040】
この回収手段は、卵殻1内から付着した卵白及び卵黄を洗浄除去した後、該卵殻1を炭酸水溶液Pに浸漬することで卵殻1から卵殻膜2を分離させ、夫々を回収するものである。すなわち、炭酸水溶液P内に卵殻1を浸漬すると、次のような反応が起こり、炭酸カルシウムは水と炭酸ガスと結び付き、「炭酸水素カルシウム」となる。この炭酸水素カルシウムが水溶性であるため、水は「炭酸水素カルシウム水溶液」となるので、卵殻1は水に溶解し、卵殻膜2は残ることになる。
「CaCO
3+H
2O+CO
2→Ca(HCO
3)
2」
尚、浸漬させる炭酸水溶液Pは、炭酸ガスボリューム2.0v/v以上であることが好ましく、より好ましくは炭酸ガスボリューム4.0v/v以上である。
【0041】
卵殻ケース3は、卵殻1を個別に隔離収納する網目状を成している。そして、炭酸水溶液Pの作用で卵殻1の乳頭核1Cが溶解すると、卵殻1から卵殻膜2が分離する。さらに、分離した卵殻膜2と卵殻1とは、別々になった状態で卵殻ケース3上に収容される(
図7(ロ)参照)。そこで、分離した卵殻1と卵殻膜2とを卵殻ケース3ごと回収するものである。
【0042】
このような分離手段によると、比較的短時間で回収することができる。例えば、炭酸ガスボリューム4v/v(水温4℃、圧力2.0Kg/cm
2)の条件では、スッポン卵1〜2日間、ウズラ卵2〜3日間、鶏卵3〜5日間炭酸水溶液Pに浸漬する。また、炭酸ガスボリューム8v/v(水温4℃、圧力5.0Kg/cm
2)の条件下での浸漬日数は、スッポン卵約1日間、ウズラ卵1〜2日間、鶏卵2〜3日間となる。浸漬後、
図7(イ)のように、耐圧タンク10から卵殻ケース3と卵殻1を取り出して乾燥させると、同図(ロ)の如く、卵殻膜2が卵殻1から自然に剥離して分離するので、夫々回収する。
【0043】
また、乳頭核1Cの溶解のみでなく卵殻1を全溶解させることができる。この場合は、卵殻1全てが溶解した時点で残った卵殻膜2を卵殻ケース3ごと回収し、卵殻1が溶解した炭酸水溶液Pを加熱して卵殻1の成分を析出回収する手段となる。
【0044】
すなわち、卵殻1全てが溶解した時点で回収する手段では、卵殻ケース3から卵殻膜2を回収した後、卵殻1が溶解している水を加熱する。そうすると、炭酸水素カルシウムの溶解度が低下し、炭酸水素カルシウムは、次のように、水と炭酸ガスと炭酸カルシウムに分離する。
「Ca(HCO
3)
2→CaCO
3+H
2O+CO
2」
水に溶けない炭酸カルシウムは沈殿するので、この沈殿物を回収する(
図8参照)。この回収方法では浸漬させる炭酸水溶液の圧力・温度・炭酸ガスボリュームによって溶解できる卵殻量が決まる(
図12参照)。そのため、予め計算した上で溶解可能量の卵殻を浸漬させることになる。例えば、水温10℃で炭酸ガス圧1×10
5 Paの炭酸水溶液に浸漬させる場合には、炭酸カルシウムの溶解度は 1.11g / 水 1dm
3なので、炭酸水溶液1Lに対して1gの卵殻という割合を目安に浸漬させると良い(表1参照)。なお所要日数は、卵の厚みやサイズ、種類によって異なるが、炭酸ガスボリューム4v/v(水温4℃、圧力2.0Kg/cm
2)の条件では、スッポン卵なら約4日、鶏卵なら約10日で卵殻は完全に溶解する。
【表1】
【0045】
卵殻ケース3は、洗浄した卵殻1を設置するケースである。好ましくは、この卵殻ケース3の中に、卵の内面側を下に向けて卵殻1を設置する(
図7、8参照)。逆に内面側を上に向けて卵殻1を設置すると、溶解及び剥離した卵殻が水の攪拌に伴い卵殻内に入って卵殻膜に付着したり溜まったりしてしまう。内面側を下にして卵殻1を設置すればこのような不都合が解消され、卵殻膜2が卵殻1から分離するので卵殻膜2の回収に都合がよくなる。また内面側を下にすることでマイクロバブルの付着率も向上する。このとき、卵殻1同士が重なり合っていると、接触面は炭酸水溶液Pに触れることができずに分離効率が低下する。そのため、卵殻ケース3は、網目状に形成され、卵殻1を個別に収納できるように仕切3Aが設けられている(
図4参照)。図示例では、卵殻ケース3の開口上部に蓋4を施蓋すると共に、卵殻ケース3の下端部に脚3Bを設けてある(
図5参照)。そして、網を重ねる際には脚3Bと開口上部3Cが相互に組み合うため安定し、かつ網同士が重なって網目が密になることなく積み重ねることができる(
図6参照)。なお、実験によると、卵殻ケース3や蓋4の網目は28メッシュ程度が好ましい。
【0046】
卵殻1を浸漬する炭酸水溶液Pは、冷却及び加圧下にて炭酸ガスを補充すると、炭酸ガスの溶解度が高くなる(
図11参照)。しかも、カルシウムと反応することで減少する炭酸ガスを順次補うことによって、炭酸水溶液Pの炭酸ガスボリュームを常に高い状態に保ち反応を促進することができる。但し、水温0℃以下では氷結するので炭酸水溶液Pを作れない。一方、圧力は高い方が炭酸ガスの溶解度が高くなるが、この圧力に耐え得る圧力タンクが必要になるので、圧力が高くなるほどタンクが大型化することになる。そのため、これまでの実験による最適条件として、水温4℃以下、圧力5.0Kg/cm
2程度の条件下で、炭酸ガスボリューム8.55v/vを目安に調整するのが好ましい。