(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740400
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】バルブキャッチピストンを備えた空転可変バルブ作動装置
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
F01L13/00 301N
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-523980(P2012-523980)
(86)(22)【出願日】2010年8月6日
(65)【公表番号】特表2013-501870(P2013-501870A)
(43)【公表日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】US2010044739
(87)【国際公開番号】WO2011017631
(87)【国際公開日】20110210
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】61/232,296
(32)【優先日】2009年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100072822
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100123180
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 克則
(72)【発明者】
【氏名】シュウォエラー、ジョン、エイ.
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−524639(JP,A)
【文献】
特開平06−137121(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00564507(GB,A)
【文献】
特開平07−102924(JP,A)
【文献】
特表2008−536056(JP,A)
【文献】
特表2008−517202(JP,A)
【文献】
実開昭63−183405(JP,U)
【文献】
実開平04−006711(JP,U)
【文献】
米国特許第06302370(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L1/00−1/46
9/00−9/04
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のバルブを作動する油圧空転装置であって、該油圧空転装置は、
ハウジングを貫通するハウジングボアを有するハウジングと、
ハウジングを介して延伸し、ハウジングボアに接続するハウジング流体通路と、
ハウジングボアに設けられるマスターピストンであって、該マスターピストンは、マスターピストン側壁によって画定されるマスターピストン内に延びるマスターピストンボアを有しているようなマスターピストンと、
マスターピストン側壁を貫通し、マスターピストンボアに接続する1つ以上のマスターピストン流体通路であって、当該1つ以上のマスターピストン流体通路は、ハウジング流体通路と選択的に油圧連通するようになった、マスターピストン流体通路と、
マスターピストンボアの下部に設けられたスレーブピストンと、
マスターピストンボアの上部に設けられたバルブキャッチピストンであって、該バルブキャッチピストンは、バルブキャッチピストン壁によって画定される中空内部と、バルブキャッチピストン壁の下端へと中空内部から延びる下端オリフィスと、バルブキャッチピストン壁の側部を貫通する1つ以上の側部通路と、バルブキャッチピストン壁を貫通する1つ以上の着座通路とを有し、該下端オリフィスは、スレーブピストンによって選択的に閉塞されるように配置されており、前記1つ以上の側部通路は、1つ以上の側部通路と1つ以上のマスターピストン流体通路の間の油圧流体連通が、マスターピストン側壁によって選択的に閉塞され、前記1つ以上の着座通路が1つ以上のマスターピストン流体通路との油圧連通に維持するように配置されるようになった、バルブキャッチピストンと、
バルブキャッチピストンの中空内部に設けられるバルブキャッチばねとを有していることを特徴とする油圧空転装置。
【請求項2】
前記マスターピストンボアが、バルブキャッチピストンが設けられる上部マスターピストンボアと、スレーブピストンが設けられる下部マスターピストンボアとを有し、下部マスターピストンボアの直径が上部マスターピストンボアの直径よりも大きいようになった、請求項1に記載の油圧空転装置。
【請求項3】
前記ハウジングと前記スレーブピストンの間にスレーブピストンばねを更に設け、該スレーブピストンばねが、ハウジングからスレーブピストンを偏奇するようになった、請求項2に記載の油圧空転装置。
【請求項4】
前記1つ以上の着座通路が、前記バルブキャッチピストン側壁を通って前記バルブキャッチピストンの中空内部から延びるようになった、請求項2に記載の油圧空転装置。
【請求項5】
前記1つ以上の着座通路の少なくとも1つが、前記1つ以上の側部通路の少なくとも1つから前記バルブキャッチピストン壁の下端を通って延びるようになった、請求項2に記載の油圧空転装置。
【請求項6】
前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、下部マスターピストン流体通路と上部マスターピストン流体通路を有し、前記バルブキャッチピストン壁が、前記1つ以上の側部通路と前記上部マスターピストン流体通路の間の油圧流体連通を閉塞するようになったバルブキャッチピストンショルダを形成するようになった、請求項1に記載の油圧空転装置。
【請求項7】
前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、前記下部マスターピストン流体通路と前記上部マスターピストン流体通路の間のマスターピストン側壁に沿って設けられた中間マスターピストン流体通路を有するようになった、請求項6に記載の油圧空転装置。
【請求項8】
前記ハウジング流体通路を油圧連通する油圧流体制御バルブを更に有する、請求項1に記載の油圧空転装置。
【請求項9】
油圧流体バルブと油圧連通する油圧流体アキュムレータを更に有する、請求項8に記載の油圧空転装置。
【請求項10】
内燃機関のバルブを作動する油圧空転装置のバルブキャッチピストンであって、該バルブキャッチピストンは、
バルブキャッチピストン壁によって画定された中空の内部と、
該中空の内部からバルブキャッチピストン壁の下端を貫通する下端オリフィスと、
バルブキャッチピストン壁の側部を貫通する1つ以上の側部通路と、
バルブキャッチピストン壁を貫通する1つ以上の着座通路とを有し、
前記1つ以上の側部通路は、前記1つ以上の着座通路よりも前記バルブキャッチピストン壁の下端から更に離隔して配置され、
前記1つ以上の側部通路は、前記油圧空転装置が備えるマスターピストンによって選択的に閉塞され、前記1つ以上の着座通路は、前記マスターピストンによって閉塞されないことを特徴とするバルブキャッチピストン。
【請求項11】
内燃機関のバルブを作動する油圧空転装置であって、該油圧空転装置は、
ハウジングを貫通するハウジングボアを有するハウジングと、
ハウジングを介して延伸し、ハウジングボアに接続するハウジング流体通路と、
ハウジングボアに設けられるマスターピストンであって、該マスターピストンは、マスターピストン側壁によって画定されるマスターピストン内に延びるマスターピストンボアを有しているようなマスターピストンと、
マスターピストン側壁を貫通し、マスターピストンボアに接続する1つ以上のマスターピストン流体通路であって、当該1つ以上のマスターピストン流体通路は、ハウジング流体通路と選択的に油圧連通するようになった、マスターピストン流体通路と、
マスターピストンボアの下部に設けられたスレーブピストンと、
マスターピストンボアの上部に設けられたバルブキャッチピストンであって、該バルブキャッチピストンは、バルブキャッチピストン壁によって画定される中空内部と、バルブキャッチピストン壁の下端へと中空内部から延びる下端オリフィスと、バルブキャッチピストン壁の側部を貫通する1つ以上の側部通路と、バルブキャッチピストン壁を貫通する1つ以上の着座通路とを有し、前記1つ以上の側部通路は、前記1つ以上の着座通路よりも前記バルブキャッチピストン壁の下端から更に離隔して配置されており、前記1つ以上の側部通路は、1つ以上の側部通路と1つ以上のマスターピストン流体通路の間の油圧流体連通が、マスターピストン側壁によって選択的に閉塞され、前記1つ以上の着座通路が1つ以上のマスターピストン流体通路との油圧連通に維持するように配置されるようになった、バルブキャッチピストンと、
バルブキャッチピストンの中空内部に設けられるバルブキャッチばねとを有していることを特徴とする油圧空転装置。
【請求項12】
前記マスターピストンボアが、バルブキャッチピストンが設けられる上部マスターピストンボアと、スレーブピストンが設けられる下部マスターピストンボアとを有し、下部マスターピストンボアの直径が上部マスターピストンボアの直径よりも大きいようになった、請求項11に記載の油圧空転装置。
【請求項13】
前記ハウジングと前記スレーブピストンの間にスレーブピストンばねを更に設け、該スレーブピストンばねが、ハウジングからスレーブピストンを偏奇するようになった、請求項12に記載の油圧空転装置。
【請求項14】
前記1つ以上の着座通路が、前記バルブキャッチピストン側壁を通って前記バルブキャッチピストンの中空内部から延びるようになった、請求項12に記載の油圧空転装置。
【請求項15】
前記1つ以上の着座通路の少なくとも1つが、前記1つ以上の側部通路の少なくとも1つから前記バルブキャッチピストン壁の下端を通って延びるようになった、請求項12に記載の油圧空転装置。
【請求項16】
前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、下部マスターピストン流体通路と上部マスターピストン流体通路を有し、前記バルブキャッチピストン壁が、前記1つ以上の側部通路と前記上部マスターピストン流体通路の間の油圧流体連通を閉塞するようになったバルブキャッチピストンショルダを形成するようになった、請求項11に記載の油圧空転装置。
【請求項17】
前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、前記下部マスターピストン流体通路と前記上部マスターピストン流体通路の間のマスターピストン側壁に沿って設けられた中間マスターピストン流体通路を有するようになった、請求項16に記載の油圧空転装置。
【請求項18】
前記ハウジング流体通路を油圧連通する油圧流体制御バルブを更に有する、請求項11に記載の油圧空転装置。
【請求項19】
油圧流体バルブと油圧連通する油圧流体アキュムレータを更に有する、請求項18に記載の油圧空転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、「バルブキャッチピストンを備えた空転可変バルブ作動装置」という名称の、2009年8月7日に出願された米国特許仮出願一連番号61/232,296号に関連し、その優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、内燃機関の1つ以上のエンジンバルブを作動する装置に関する。特に、本発明は、バルブ着座速度を制御する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、通常、エンジンバルブを作動するために、機械的、電気的或いは油圧機械的バルブ作動装置を用いる。これらの装置は、エンジンのクランクシャフトの回転によって駆動される、カムシャフトと、ロッカーアームと、プッシュロッドの組合せを有している。カムシャフトが、エンジンバルブを作動するために使われると、バルブ作動のタイミングが、カムシャフト上のローブの大きさと位置によって決められる。
【0004】
油圧式空転バルブ作動装置は、カム、特に、内燃機関用に使われるもので駆動されうる。そのような空転装置におけるエンジンの油圧容積は、通常作動中のカムによる変位に直接比例する。しかし、使用目的によっては、エンジンバルブは、カムプロファイルによるよりも早くに閉鎖されねばならないこともある。この早い閉鎖は、空転装置におけるアキュムレータやオイルサンプに急速に油圧流体を開放することによって成し遂げられる。そういった場合には、バルブを閉鎖する率が固定カムプロファイルの代わりにアキュムレータ或いはサンプへの油圧流によって決定されるので、エンジンバルブ着座制御が必要である。エンジンバルブ着座制御は、エンジンバルブ着座が、カムの高速領域で生じるような用途(例えば、集中リフト)で要求される。更に、エンジンバルブ着座制御は、可変バルブ作動(VVA)設計において必要とされ、あらゆる着座事象は、油圧流体の、おそらくはアキュムレータへの開放の結果として生じる。
【0005】
バルブ着座速度を制御する公知の装置および方法の例が、シュウォーラー(Schwoerer)等の米国特許第6,302,370号に開示されており、参照としてここに加入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,302,370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流体作動要素を用いたエンジンバルブを着座する方法および装置を提供することは、本発明の実施例の利点の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
バルブ着座速度を制御する装置および方法の必要に応えて、出願人は、内燃機関のバルブを作動する画期的な油圧空転装置を開発した、これは、ハウジングを貫通するハウジングボアを有するハウジングと、ハウジングを貫通し、ハウジングボアを接続するハウジング流体通路と、ハウジングボアに設けられるマスターピストンであって、該マスターピストンは、マスターピストン側壁によって画定されるマスターピストン内に延びるマスターピストンボアを有しているようなマスターピストンと、マスターピストン側壁を貫通し、マスターピストンボアに接続する1つ以上のマスターピストン流体通路であって、当該1つ以上のマスターピストン流体通路は、ハウジング流体通路を選択的に登録するようになった、マスターピストン流体通路と、マスターピストンボアの下部に設けられたスレーブピストンと、マスターピストンボアの上部に設けられたバルブキャッチピストンであって、該バルブキャッチピストンは、バルブキャッチピストン壁によって画定される中空内部と、バルブキャッチピストン壁の下端へと中空内部から延びる下端オリフィスと、バルブキャッチピストン壁の側部を貫通する1つ以上の側部通路と、バルブキャッチピストン壁を貫通する1つ以上の着座通路とを有し、該下端オリフィスは、スレーブピストンによって選択的に閉塞されるように配置されており、前記1つ以上の側部通路は、1つ以上の側部通路と1つ以上のマスターピストン流体通路の間の油圧流体連通が、マスターピストン側壁によって選択的に閉塞され、前記1つ以上の着座通路が1つ以上のマスターピストン流体通路との油圧連通に維持するように配置されるようになった、バルブキャッチピストンと、バルブキャッチピストンの中空内部に設けられるバルブキャッチばねとを有している。
【0009】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記マスターピストンボアが、バルブキャッチピストンが設けられる上部マスターピストンボアと、スレーブピストンが設けられる下部マスターピストンボアとを有し、下部マスターピストンボアの直径が上部マスターピストンボアの直径よりも大きいようになった、油圧空転装置を開発した。
【0010】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記ハウジングと前記スレーブピストンの間にスレーブピストンばねを更に設け、該スレーブピストンばねが、ハウジングからスレーブピストンを偏奇するようになった、油圧空転装置を開発した。
【0011】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記1つ以上の着座通路が、前記バルブキャッチピストン側壁を通って前記バルブキャッチピストンの中空内部から延びるようになった、油圧空転装置を開発した。
【0012】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記1つ以上の着座通路の少なくとも1つが、前記1つ以上の側部通路の少なくとも1つから前記バルブキャッチピストン壁の下端を通って延びるようになった、油圧空転装置を開発した。
【0013】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、下部マスターピストン流体通路と上部マスターピストン流体通路を有し、前記バルブキャッチピストン壁が、前記1つ以上の側部通路と前記上部マスターピストン流体通路の間の油圧流体連通を閉塞するようになったバルブキャッチピストンショルダを形成するようになった、油圧空転装置を開発した。
【0014】
出願人は、更に、段落0013に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記1つ以上のマスターピストン流体通路が、前記下部マスターピストン流体通路と前記上部マスターピストン流体通路の間のマスターピストン側壁に沿って設けられた中間マスターピストン流体通路を有するようになった、油圧空転装置を開発した。
【0015】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記ハウジング流体通路を油圧連通する油圧流体制御バルブを更に有するようになった、油圧空転装置を開発した。
【0016】
出願人は、更に、段落0008に記載した内燃機関バルブを作動するための革新的な油圧空転装置において、前記油圧流体バルブと油圧連通する油圧流体アキュムレータを更に有するようになった、油圧空転装置を開発した。
【0017】
上記した記載と、下記の詳細な記載は、例示のためのものであって、本発明を限定するものではない。明細書の一部をなし、参照として取り込まれる添付の図面は、本発明の実施例を示すものであって、その詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するものである。
【0018】
本発明の理解を助けるために、添付の図面を参照する。図面において、同様の参照番号は同様の要素を示す。図面は、例示のためのみであって、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例が用いられる第1バルブ作動装置を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施例が用いられる第2バルブ作動装置を示す概略図である。
【
図3】本発明の第1実施例による油圧空転装置の断面における側面図である。
【
図4】本発明の第2実施例による油圧空転装置の断面における側面図である。
【
図5】本発明の第3実施例による油圧空転装置の断面における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施例を参照すると、その例が添付図面において示されている。
図1を参照すると、第1エンジンバルブ作動装置10が示され、本発明の実施例による油圧空転装置210が用いられている。エンジンバルブ作動装置10は、排気、吸気あるいは予備エンジンバルブのようなエンジンバルブ100を有しており、これは、エンジンバルブヘッド110に摺動可能に設けられている。エンジンバルブ100は、図示のように、閉鎖位置に向けて1つ以上のバルブばね120によって偏奇されている。
【0021】
ロッカーアーム130は、エンジンバルブ100に隣接するロッカーシャフト140に枢動自在に取り付けられる。ロッカーアーム130は、エンジンバルブ100の上端またはステムと接触する第1端と、象足状組立体150を有する第2端を有している。象足状組立体150は、象足状組立体の位置がロッカーアーム130に対して調節されるようにするナット152を有する。象足状組立体150は、ロッカーアーム130が、ロッカーアームを枢動するのに使われる油圧空転装置210からの直線運動を受けることができるようにする。
【0022】
油圧空転装置210は、空転装置ハウジング200に摺動可能に設けられ、象足状組立体150と接触する端部を有する。象足状組立体150と接触する端部(すなわち、
図1の下端)から反対側の空転装置210の端部は、プッシュチューブ160に接触し、これは、カム170に接触する。カム170は、プッシュチューブ160と空転装置210に動作を与える1つ以上の隆起172を含む。隆起172は、エンジンブレーキや排気ガス循環のような1つ以上の吸気作動または1つ以上の排気バルブ作動を提供する。
【0023】
空転装置210は、ハウジング流体通路202を介して、高速トリガーバルブのような油圧流体バルブ260と油圧流体連通している。油圧流体バルブ260が、高速トリガーバルブであると、エンジンサイクルあたり少なくとも1回は開放され閉鎖されうる。油圧流体は、油圧流体バルブ260の制御のもと、空転装置210へ供給され、空転装置から解放される。流体通路202は、本発明の他の実施例では、油圧流体アキュムレータ262と、直接或いは間接に油圧流体連通している。アキュムレータ262は、油圧流体バルブ260によって空転装置210から送られる油圧流体を急速に受容するとともに、油圧流体バルブ260の制御のもと油圧流体を空転装置210に急速に補給するために用いられる。
【0024】
図2を参照すると、第2エンジンバルブ作動装置12が示され、ここでは、本発明の実施例による油圧空転装置210が用いられている。エンジンバルブ作動装置12は、排気、吸気あるいは予備エンジンバルブのようなエンジンバルブ100を有しており、これは、エンジンバルブヘッド110に摺動可能に設けられている。エンジンバルブ100は、図示のように、閉鎖位置に向けて1つ以上のバルブばね120によって偏奇されている。
【0025】
空転装置210は、エンジンバルブ100の上端またはステムと隣接し接触する空転装置ハウジング200に摺動自在に設けられている。空転装置210は、象足状組立体150と接触する端部(すなわち、
図2の上端)を有している。象足状組立体150は、ロッカーアーム130の第1端に調節可能に取り付けられ、ナット152によって位置決めされている。
【0026】
ロッカーアーム130は、直線動を空転装置210に与えることができるように、空転装置210に隣接したロッカーシャフト140に枢動自在に取り付けられている。ロッカーアーム130は、ロッカーアームの第2端に取り付けられカム170に接触するカムローラ132を有している。カム170は、動作をロッカーアーム130と空転装置210に与える1つ以上の隆起172を有している。隆起172は、エンジンブレーキや排気ガス循環のような1つ以上の吸気作動または1つ以上の排気バルブ作動を提供する。
【0027】
空転装置210は、ハウジング流体通路202を介して、高速トリガーバルブのような油圧流体バルブ260と油圧流体連通している。油圧流体バルブ260が、高速トリガーバルブであると、エンジンサイクルあたり少なくとも1回は開放され閉鎖されうる。油圧流体は、油圧流体バルブ260の制御のもと、空転装置210へ供給され、空転装置から解放される。ハウジング流体通路202は、本発明の他の実施例では、油圧流体アキュムレータ262と、直接或いは間接に油圧流体連通している。アキュムレータ262は、油圧流体バルブ260によって空転装置210から送られる油圧流体を急速に受容するとともに、油圧流体バルブ260の制御のもと油圧流体を空転装置210に急速に補給するために用いられる。
【0028】
図1および
図2を参照して、装置10および12の変形が、本発明の意図する範囲を逸脱することなくなされる。例えば、本発明の代替例においては、ロッカーアーム130または空転装置210は、バルブブリッジ(図示せず)または他の介在するバルブトレイン要素を介してエンジンバルブ100を接触する。更に、カム170は、
図1に関しては、介在するプッシュチューブ160および・またはロッカーアーム130を介する代わりに、直接、空転装置210に作用し、
図2に関しては、カム170は、プッシュチューブを介してロッカーアーム130に作用してもよい。
【0029】
図3に示す、空転装置210の第1実施例を参照すると、これは、バルブ作動装置10および12とともに使われ、
図1、2に示すものの変更例である。
図3を参照すると、空転装置210は、空転装置ハウジング200に設けられたハウジングボア206に摺動自在に設けられたマスターピストン220を有している。マスターピストン220は、マスターピストンの上端で象足組立体150に接触して示されている。代替実施例では、マスターピストン220は、カム170またはロッカーアーム130に直接接触してもよいことは理解されるべきである。マスターピストン220は、上部マスターピストンボア223と下部マスターピストンボア221からなる中空内部を有している。上部マスターピストンボア223は、好ましい実施例では、上部マスターピストンボア223と下部マスターピストンボア221の交差部がマスターピストンショルダ228を形成するように、下部マスターピストンボア221よりも小さい直径を有している。上部マスターピストンボア223は、ここでは、バルブキャッチ空間として記載され、下部マスターピストンボア221は、ここでは、タペット空間として記載される。
【0030】
マスターピストン220は、タペット空間221からマスターピストンの外部に延びる1つ以上のマスターピストン流体通路を有している。マスターピストン流体通路222は、ハウジング流体通路202の一部としてハウジング200に設けられる環状凹部204に登録するために、マスターピストン220の側壁に沿って配置される。環状凹部204は、マスターピストン220のストロークの間中、油圧流体バルブ260と1つ以上のマスターピストン流体通路222と油圧連通を維持するような大きさとされる。
【0031】
スレーブピストン230は、タペット空間221に摺動自在に設けられる。スレーブピストン221は、プッシュチューブ160に接触するように(
図1に示されている)或いは、エンジンバルブ100に接触するように(
図2に示されている)、1つ以上のばね232によって偏奇されている。代替実施例においては、スレーブピストン230は、バルブブリッジ(図示せず)に向けて或いは、接触して偏奇されてもよい。スレーブピストン230は、バルブ100ステムまたはプッシュチューブ160を受容するためのスレーブピストン凹部234を有している。スレーブピストン230は、バルブキャッチピストン240に設けられた下端オリフィス246を密封するようになった上面を有している。
【0032】
図3を参照すると、空転装置210は、更に、バルブキャッチ空間223に摺動自在に設けられたバルブキャッチピストン240を有している。バルブキャッチピストン240は、バルブキャッチばね242が設けられた中空内部241を有している。バルブキャッチばね242は、バルブキャッチピストン240をスレーブピストン230に向けて偏奇する。バルブキャッチピストン240は、わずかに凸形状の下端と、中空内部241からバルブキャッチピストン壁を貫通する下端オリフィス246を有している。下端オリフィス246は、好ましくは、スレーブピストンとバルブキャッチピストン240が互いに接触するとスレーブピストン230によって選択的に塞がれるか閉塞されるような大きさとされる。バルブキャッチピストンは、1つ以上の側部通路248と1つ以上の着座通路250を更に有している。側部通路248と着座通路250は、共に、バルブキャッチピストン240の側壁を貫通する。1つ以上の側部通路248は、1つ以上の着座通路250よりも
バルブキャッチピストンの下側の壁の下端からもっと遠くに設けられる。すなわち、1つ以上の着座通路250は、1つ以上の側部通路248よりも低く、バルブキャッチピストン240の側壁に沿って設けられる。側部通路248は、バルブキャッチ空間223をバルブキャッチピストン240が摺動する結果として、マスターピストンショルダ228によって選択的に閉塞されるように配置される。1つ以上の着座空間250は、マスターピストン220、より詳細には、バルブキャッチピストン240がバルブキャッチ空間223を摺動する結果として、マスターピストンショルダ228によって閉塞されないままになるように配置される。1つ以上の着座通路250は、1つ以上の側部通路248と下端オリフィス246が閉鎖された後、選択的な量の油圧流体がエンジンバルブ100を着座するように通ることができるような大きさにされている。
【0033】
図3に示す空転装置210は、
図1および2に示すように、エンジンバルブを作動および着座するために、以下のように使われる。
図1から3を参照すると、装置10または12を油圧流体で満たすために、カム170が基礎円上にある時(すなわち、カム170がプッシュチューブ160やロッカーアーム130のようなバルブトレイン要素に接触する隆起172を有していない時)、油圧流体バルブ260は、開放される。カム170が基礎円上にある結果として、油圧流体供給源(図示せず)およびアキュムレータ262からの低圧(例えば、100psi)の油圧流体が油圧流体バルブ260から空転装置210へ流れる、特に、ハウジング流体通路202、環状凹部204、マスターピストン流体通路222を通って、タペット空間221に流れる。油圧流体は、1つ以上の着座および側部通路248と250と、下端オリフィス246を通って、バルブキャッチ空間223を満たす。バルブキャッチばね242は、バルブキャッチピストン240をタペット空間221へと下方に摺動させる。スレーブピストン230は、油圧流体バルブ260による空転装置210への油圧流体の導入の結果として、タペット空間221内で下方に摺動する。
【0034】
一旦、油圧空転装置210が油圧流体で充填されると、油圧流体バルブ260は、閉鎖されて、スレーブピストン230からのマスターピストン220の分離がタペット空間221が油圧密封されることにより維持される。カム170から空転装置へ与えられるその後の動作は、マスターピストン220からスレーブピストン230に移され、次にエンジンバルブ100に移される。カム170上の1つ以上の隆起172によって規定される前に、エンジンバルブ100の作動を終了させるために、油圧流体バルブ260は、選択的に開放される。油圧流体バルブ260が開放されると、油圧流体が、空転装置210から油圧流体バルブ260を通って、低圧流体源(図示せず)および・またはアキュムレータ262に逃げる。
【0035】
油圧流体バルブ260が開放されると、エンジンバルブばね110は、エンジンバルブ100を押し上げ、次に、スレーブピストン230がタペット空間221の流体内に押されるのである。タペット空間221の流体は、変位され、1つ以上のマスターピストン流体通路222とハウジング流体通路202を通って空転装置210から流出する。流体はハウジング流体通路202を通るので、スレーブピストン230は、スレーブピストン上面が下端オリフィス246を閉塞する、バルブキャッチピストン240への接触時まで、比較的急速に、タペット空間221内に摺動する。流体は、ハウジング流体通路202を通り続けるので、バルブキャッチピストン240は、バルブキャッチばね242の偏奇力に対抗してバルブキャッチ空間223内に押し上げられる。バルブキャッチピストン240が押し上げられるので、バルブキャッチピストン空間223の流体は、1つ以上の側部通路248と1つ以上の着座通路250を通らねばならない。バルブキャッチ空間223は、バルブキャッチピストン240が上昇するように、1つ以上の側部通路248と1つ以上の着座通路250を通らねばならないので、エンジンバルブ100と、スレーブピストン230と、バルブピストン240が上昇する割合(すなわち、エンジンバルブ着座速度)は、初期エンジンバルブ着座速度に比べて減少する。バルブキャッチピストンは、上昇し続けるので、1つ以上の側部通路248がマスターピストンショルダ228によって閉塞されて、エンジンバルブ着座速度は、減じられる。1つ以上の側部通路248の閉塞は、流体がバルブキャッチ空間223から側部通路を通って逃げることを防止し、バルブキャッチピストン240のストロークの間中、マスターピストンショルダ228によって閉鎖されることなくまたは閉塞されることなく維持される1つ以上の着座通路250を通って、バルブキャッチ空間223からの流体の追加的な通過を強いる。着座通路250は、期待される油圧流体作動条件の範囲でエンジンバルブ100のための許容できるバルブ着座速度となるように、バルブキャッチ空間223からの正しい量の流体の通過を許容できるように選択的に大きさを決められる。その後、バルブキャッチ空間223とタペット空間221を油圧流体で補充することによって工程が繰り返される。
【0036】
図4を参照すると、ここに示す空転装置210は、以下を除いて、
図3に示した空転装置と同様の要素を有している。
図4に示した空転装置におけるバルブキャッチピストン240は、下端オリフィス246が中空内部241からバルブキャッチピストン240壁の下端を通って延びる、比較的平坦な下端を有している。下端オリフィス246は、好ましくは、スレーブピストンとバルブキャッチピストン240が互いに接触している時に、スレーブピストン230によって選択的に閉鎖されまたは閉塞されるような大きさとなっている。バルブキャッチピストン240は、更に、1つ以上の側部通路248と1つ以上の着座通路250を有している。1つ以上の側部通路248は、バルブキャッチピストン240の側壁を貫通している。1つ以上の着座通路250は、1つ以上の側部通路248からバルブキャッチピストン壁の下端を貫通している。1つ以上の側部通路248は、バルブキャッチピストン240がバルブキャッチ空間223を摺動する結果、マスターピストンショルダ228によって選択的に閉塞されるように配置されている。1つ以上の着座通路250は、バルブキャッチピストン240がバルブキャッチ空間223を摺動する結果として、マスターピストン220によって、特に、マスターピストンショルダ228によって、閉鎖されないよう維持されるよう配置される。1つ以上の着座通路250は、1つ以上の側部通路248と下端オリフィス246が閉鎖されまたは閉塞された後、選択的な量の油圧流体が通ってエンジンバルブ100を着座するような大きさにされている。
【0037】
図4に示した空転装置210は、
図1および2に示したようなエンジンバルブを、上記した
図3に示した空転装置と同様にして、作動し着座するために使われる。
【0038】
図5を参照すると、ここに示す空転装置210は、以下を除いて、
図3および4に示した空転装置と同様の要素を有している。
図5を参照すると、空転装置210は、均一な直径を有し、マスターピストンショルダを形成しない、上部マスターピストンボア223と下部マスターピストンボア221からなる中空の内部を有するマスターピストン220を有している。
【0039】
マスターピストン220は、1つ以上の上部流体通路224と、1つ以上の中間流体通路225と、タペットおよびバルブキャッチ空間221と223からマスターピストンの外部に延びる1つ以上の下部流体通路226とを有する。上部、中間および下部流体通路224、225、226は、ハウジング200に設けられた環状凹部204をハウジング流体通路202の一部として登録するために、マスターピストン220の側壁に沿って配置されている。環状凹部204は、マスターピストン220のストロークの間中、油圧流体バルブ260と1つ以上の上部、中間および下部流体通路224、225,226との油圧連通を維持するような大きさになっている。少なくとも、下部流体通路226は、環状凹部204との油圧流体連通を維持するように配置される。
【0040】
図5の空転装置のバルブキャッチピストン240は、下端オリフィス246が中空内部241からバルブキャッチピストン240壁の下端を通って延びる、比較的平坦な下端を有している。下端オリフィス246は、好ましくは、スレーブピストンとバルブキャッチピストン240が互いに接触している時に、スレーブピストン230によって選択的に閉鎖されまたは閉塞されるような大きさとなっている。バルブキャッチピストン240は、バルブキャッチピストンショルダ252とバルブキャッチピストン凹部253を形成する段形状を有している。バルブキャッチピストン240は、バルブキャッチピストンショルダ252の上部に配置される1つ以上の側部通路248と、バルブキャッチピストン凹部253に沿って配置される1つ以上の着座通路250を有している。1つ以上の側部通路248と1つ以上の着座通路は、バルブキャッチピストン240の側壁を貫通している。1つ以上の側部通路248は、バルブキャッチピストン240がバルブキャッチ空間223を摺動する結果、バルブキャッチピストンショルダ252によって選択的に閉塞されるように配置され、まず、中間流体通路225を通過しその後上部流体通路224を通過する。1つ以上の着座通路250は、バルブキャッチピストン240がバルブキャッチ空間223を摺動する結果として、マスターピストン220によって、閉鎖されないよう維持されるよう配置される。1つ以上の着座通路250は、1つ以上の側部通路248と下端オリフィス246が閉鎖されまたは閉塞された後、選択的な量の油圧流体が通ってエンジンバルブ100を着座するような大きさにされている。
【0041】
図5に示した空転装置210は、
図1および2に示したようなエンジンバルブを、以下を除いて、
図3と4に示した空転装置と同様にして、作動し着座するために使われる。
図5に示すバルブキャッチピストン240は、まず、1つ以上の中間流体通路225を、その後1つ以上の上部流体通路224を次第に閉塞または閉鎖することによって、バルブキャッチ空間223からの油圧流体の流れを絞る。バルブキャッチ空間223からの流体のこの段階的な絞りは、バルブキャッチピストン240の上昇ストロークの過程でエンジンバルブ着座速度を次第に減じるために使われる。
【0042】
本発明の変形および改良が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者によってなされることは明らかである。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価なものの範囲内で提供されるあらゆる変形および改良に及ぶものである。