特許第5740401号(P5740401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740401
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】X線回折方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/205 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   G01N23/205
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-526604(P2012-526604)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2011067551
(87)【国際公開番号】WO2012015053
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-172582(P2010-172582)
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 秀穂
(72)【発明者】
【氏名】宗川 繁
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−032789(JP,A)
【文献】 特開2008−249605(JP,A)
【文献】 特開2002−098656(JP,A)
【文献】 特開昭55−158544(JP,A)
【文献】 特開2002−350373(JP,A)
【文献】 特開平02−266249(JP,A)
【文献】 特開2002−039970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
G01L 1/00− 1/26
G01B 15/00−15/08
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の同一表面に異なる方向から成形した特性X線を照射する複数のX線照射手段と、
前記試料の同一表面領域内に前記複数のX線照射手段により特性X線が照射されて前記試料から発生した複数の回折X線を検出するX線検出手段と、
該X線検出手段で前記試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線とを検出して得
た信号を処理するX線回折信号処理手段とを備えたX線回折装置であって、
前記試料の同一表面に照射する前記複数のX線照射手段の入射X線進行方向に対する前記X線検出手段への回折角がそれぞれ異なる角度であり、前記X線検出手段の同一の視野内で検出される前記複数のX線照射手段のうちの一つのX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線と、前記複数のX線照射手段のうちの他のX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線とを検出し、前記回折X線パターンの曲線である楕円形状の軸情報、すなわち前記回折X線パターンの曲線のそれぞれの曲率や曲率の中心方向を求め、前記試料の結晶格子長を算出することを特徴とするX線回折装置。
【請求項2】
前記複数のX線照射手段のそれぞれのX線照射手段は、同じ波長の特性X線を前記試料に照射することを特徴とする請求項1記載のX線回折装置。
【請求項3】
前記複数の回折X線を検出するX線検出手段は、1つの2次元検出器であることを特徴と
する請求項1記載のX線回折装置。
【請求項4】
前記X線回折信号処理手段は、前記複数のX線照射手段から同時に同じ波長の特性X線が照射されて発生した複数の回折X線を検出した信号を分離する処理を行なうことを特徴とする請求項3記載のX線回折装置。
【請求項5】
前記複数のX線照射手段は、試料の表面に成形した特性X線を第1の方向から照射する第1のX線照射手段と、前記試料の表面の前記第1のX線照射手段で特性X線を照射した領域に成形した第2の特性X線を第2の方向から照射する第2のX線照射手段とを備え、
前記X線検出手段は、前記試料の前記第1のX線照射手段により特性X線が照射された領域から発生した第1の回折X線と前記試料の前記第2のX線照射手段により特性X線が照射された領域から発生した第2の回折X線とを検出し、
前記X線回折信号処理手段は、前記X線検出手段で前記試料の同じ領域から発生した第
1の回折X線と第2の回折X線とを検出して得た信号を処理し、
前記第1のX線照射手段と第2のX線照射手段とは、同じ波長の特性X線を前記試料に照射し、
前記X線検出手段の同一の視野内で検出される前記第1のX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線と、前記第2のX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した前記第1のX線照射手段に照射されることにより前記試料から発生した回折X線パターンとは異なる回折X線パターンの曲線とが、互いに凸方向の向きが反対の曲線として検出される
ことを特徴とする請求項1記載のX線回折装置。
【請求項6】
前記第1と第2のX線照射手段及び前記X線検出手段を収納する容器手段と、該容器手
段に収納された前記第1と第2のX線照射手段及び前記X線検出手段を制御する制御手段
を更に備え、
前記容器手段と前記制御手段とは分離されてその間をケーブルで接続することにより前
記前記第1と第2のX線照射手段及び前記X線検出手段と前記制御手段との間の信号の授
受を行うように構成されたことを特徴とする請求項1記載のX線回折装置。
【請求項7】
前記試料の表面の前記複数のX線照射手段で特性X線を照射する領域を撮像する撮像手段と、該撮像手段で撮像して得た前記試料の表面の前記複数のX線照射手段でX線を照射する領域の画像を表示するモニタ手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のX線回折装置。
【請求項8】
複数のX線照射手段から成形した特性X線を試料の同一表面に異なる方向から照射し、
前記試料の同一表面領域内に前記複数のX線照射手段により特性X線が照射されて前記試料から発生した複数の回折X線をX線検出手段で検出し、
該X線検出手段で前記試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線を検出して得た
信号を処理するX線回折方法であって、
前記試料の同一表面に照射する前記複数のX線照射手段の入射X線進行方向に対する前記X線検出手段への回折角がそれぞれ異なる角度であり、
前記X線検出手段で前記複数の回折X線を検出することが、前記X線検出手段の同一の
視野内で検出される前記複数のX線照射手段のうちの一つのX線照射手段により照射され
たX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線と、前記複数のX線照射手段
のうちの他のX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線とを検出し、
前記回折X線パターンの曲線である楕円形状の軸情報、すなわち前記回折X線パターンの曲線のそれぞれの曲率や曲率の中心方向を求め、前記試料の結晶格子長を算出する
ことを特徴とするX線回折方法。
【請求項9】
前記複数のX線照射手段から、同じ波長の特性X線を前記試料に照射することを特徴とする請求項8記載のX線回折方法。
【請求項10】
前記試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線を1つの2次元検出器で検出する
ことを特徴とする請求項8記載のX線回折方法。
【請求項11】
前記1つの2次元検出器で検出した前記試料の同一表面領域から発生した複数の回折X
線の検出信号を分離して処理することを特徴とする請求項10記載のX線回折方法。
【請求項12】
複数のX線照射手段から成形した特性X線を試料の同一表面に異なる方向から照射することを、第1のX線照射手段で試料の表面に成形した特性X線を第1の方向から照射し、第2のX線照射手段で前記試料の表面の前記第1のX線照射手段で特性X線を照射した領域に成形した前記第1のX線照射手段で照射した特性X線と同じ波長の特性X線を第2の方向から照射することにより行い、
前記試料の前記第1のX線照射手段により特性X線が照射された領域から発生した第1の回折X線と前記試料の前記第2のX線照射手段により特性X線が照射された領域から発生した第2の回折X線とを検出し、
前記試料の同じ領域から発生した第1の回折X線と第2の回折X線とを検出して得た信
号を処理し、
前記X線検出手段で前記複数の回折X線を検出することが、前記X線検出手段の同一の
視野内で検出される前記複数のX線照射手段のうちの第1のX線照射手段により照射され
たX線により前記試料から発生した回折X線パターンの曲線と、前記複数のX線照射手段
のうちの第2のX線照射手段により照射されたX線により前記試料から発生した前記第1ののX線照射手段に照射されることにより前記試料から発生した回折X線パターンとは異なる回折X線パターンの曲線とが、互いに凸方向の向きが反対の曲線として検出する
することを特徴とする請求項8記載のX線回折方法。
【請求項13】
前記複数のX線照射手段により特性X線が照射されて前記試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線を検出して得た信号を、ケーブルを介して前記複数のX線照射手段から離れた場所で処理することを特徴とする請求項8記載のX線回折方法。
【請求項14】
前記試料の表面の前記複数のX線照射手段で特性X線を照射する領域を撮像し、該撮像して得た前記試料の表面の前記複数のX線照射手段で特性X線を照射する領域の画像を前記ケーブルを介して前記複数のX線照射手段から離れた場所でモニタ画面上に表示することを特徴とする請求項8記載のX線回折方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管が発生する特性X線を試料に照射して材料の分析を行うX線回折方法及びそれを用いた可搬型X線回折方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線回折法は未知結晶試料の材料同定やの大きな試料の一部分又は各種基板に搭載された試料の測定方法としてその利用方法が確立されてきた。これに伴い、従来建物の中で使われてきた分析装置が屋外でも使用できるような計測装置の要求が大きくなってきた。近年の電子技術の進展により、電源や制御回路が小型・軽量・低消費電力化されてきた。しかしながら、通常のX線回折法では、試料位置が所定の位置からずれると測定精度あるいは感度が低下するという問題点があり、それを避けるために例えば特許文献1に記載されているようなゴニオメータと呼ばれる機械式の測角器を用いて試料位置が所定の位置にあるようなX線回折測定を行っていた。
【0003】
また、特許文献2には、位置敏感型X線検出器または蓄積性蛍光体を用いて検出器を固定したままで試料からのX線回折光を検出する構成が開示されている。
【0004】
更に、特許文献3には、線状範囲内で位置分解能を備えたCCDによるX線検出器の向きを、回折X線のデバイ環の接線方向と半径方向との間で切替えてX線強度を検出する構成が記載されている。
【0005】
一方、特定部分X線回折の計測を目的とした可搬型X線回折装置が特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−223994号公報
【特許文献2】特開平5−126765号公報
【特許文献3】特開平11−6806号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0274274号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、X線回折の測定はX線回折角度に対するX線回折強度をX線検出器により測定するため、特許文献1に記載されているように角度毎に試料や検出器の角度と位置を移動させて測定する必要があった。そのためX線源や検出器の保持や角度移動の精度確保のために、機械式の測角器は必然的に重量を必要とし、小型・軽量化することは困難であった。
【0008】
また特許文献2に記載されているX線回折装置では、位置敏感型の検出器が広い検出角度範囲に亘って配置されているが、試料に対するX線の入射角(照射角)は一定であり、結晶の方向が任意の方向であるような試料のX線回折パターンを検出するのには向いていない。
【0009】
更に、特許文献3に記載されているX線回折装置では、デバイ環の接線方向と半径方向とを検出する2種類の検出器を備えてそれらを切替えて検出する構成であるので装置の構成を小型化するのには適していない。
【0010】
また、特許文献4にはハンドヘルドタイプのX線回折装置の構成が記載されているが、2つの検出器が互いに離れた位置に配置された構成となっているために、連続した領域でのデバイ環を検出することができず、回折X線のうちの一部の情報が欠落してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上述したように、小型・軽量のX線回折装置の実現に鑑みて為されたものである。即ち、X線回折計測を行う場合、従来は入射X線と試料と回折X線の位置関係が確実に保持されるような条件で計測を行ってきた。例えば、X線管から放射される特性X線(ターゲットがCuの場合、Kα1の波長は0.154056nm)を用いて、試料からの回折X線を計測する。この計測条件はBraggの法則に基づいており、X線管と試料とX線検出器の位置関係が正確に保たれるよう、ゴニオメータと呼ばれる機械式の角度設定機を用いていた。この機械式ゴニオメータは重量が大きく、必ずしも人力で保持して測定するための装置としては不適当であり、人力で保持されるため試料位置のずれに測定が影響されず、ゴニオメータを用いないで構成されるX線回折方法及びそれを用いたX線回折装置が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、その目的は、検出器の位置を調整するためのゴニオメータを必要せず小型かつ軽量なX線回折方法及びその装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、X線回折装置を、試料の同一表面に異なる方向から成形した特性X線を照射する複数のX線照射手段と、試料の同一表面領域内に複数のX線照射手段により特性X線が照射されて試料から発生した複数の回折X線を検出するX線検出手段と、このX線検出手段で試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線とを検出して得た信号を処理するX線回折信号処理手段とを備え、試料の同一表面に照射する複数のX線照射手段の入射X線進行方向に対する前記X線検出手段への回折角がそれぞれ異なる角度であり、X線検出手段の同一の視野内で検出される複数のX線照射手段のうちの一つのX線照射手段により照射されたX線により試料から発生した回折X線パターンの曲線と、複数のX線照射手段のうちの他のX線照射手段により照射されたX線により試料から発生した回折X線パターンの曲線とを検出し、回折X線パターンの曲線である楕円形状の軸情報、すなわち回折X線パターンの曲線のそれぞれの曲率や曲率の中心方向を求め、試料の結晶格子長を算出するように構成した。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明では、複数のX線照射手段から成形した特性X線を試料の同一表面に異なる方向から照射し、試料の同一表面領域内に複数のX線照射手段により特性X線が照射されて試料から発生した複数の回折X線をX線検出手段で検出し、このX線検出手段で試料の同一表面領域から発生した複数の回折X線を検出して得た
信号を処理するX線回折方法において、試料の同一表面に照射する複数のX線照射手段の入射X線進行方向に対する前記X線検出手段への回折角がそれぞれ異なる角度であり、X線検出手段で複数の回折X線を検出することが、X線検出手段の同一の視野内で検出される複数のX線照射手段のうちの一つのX線照射手段により照射されたX線により試料から発生した回折X線パターンの曲線と、複数のX線照射手段のうちの他のX線照射手段により照射されたX線により試料から発生した回折X線パターンの曲線とを検出し、回折X線パターンの曲線である楕円形状の軸情報、すなわち回折X線パターンの曲線のそれぞれの曲率や曲率の中心方向を求め、試料の結晶格子長を算出するようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、X線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0016】
また、検出器の位置を調整するためのゴニオメータを必要せず、シャッタ以外の可動機構を備えていないので装置をよりコンパクトで軽量化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1の実施例と第2の実施例に係るX線回折装置の全体の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例と第2の実施例に係るX線回折装置の処理・制御部の構成を示すブロック図である。
図3図3の(a)は、第1のX線照射部から試料に角度φ1でX線を照射したときに発生する回折X線のデバイ環とX線検出器との関係を示すX線検出器の側面図、(b)はその正面図である。
図4図4の(a)は、第2のX線照射部から試料に角度φ2でX線を照射したときに発生する回折X線のデバイ環とX線検出器との関係を示すX線検出器の側面図、(b)はその正面図である。
図5図5は、第1のX線照射部から試料に角度φ1でX線を照射したときに発生する回折X線のデバイ環と第2のX線照射部から試料に角度φ2でX線を照射したときに発生する回折X線のデバイ環とをX線検出器との関係を示すX線検出器の正面図である。
図6図6は、第1のX線照射部からと第2のX線照射部から試料に順次X線を照射して回折X線を検出するときの処理の手順を説明するフロー図である。
図7図7は、第1のX線照射部からと第2のX線照射部から試料に同時にX線を照射して回折X線を検出するときの処理の手順を説明するフロー図である。
図8図8は、本発明の第3の実施例に係るX線回折装置の全体の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第3の実施例に係るX線回折装置の処理・制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、ゴニオメータを用いずに回折X線の位置を検出するようにして装置を小型化、軽量化して可搬性を向上させた。
【0019】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の実施例1の構成を示す。
実施例1におけるX線回折装置100は、第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、X線検出器130、モニタ用カメラ140を備えたX線回折装置本体101と、処理制御部150と、出力部160を備えている。第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、X線検出器130は、図1に示した同一の平面内に配置されている。
【0021】
X線回折装置本体101の第1のX線照射部110は、第1のX線源111、第1のシャッタ112、第1のシャッタ112の開閉を駆動する第1のアクチュエータ113、第1のX線源111から発射されたX線を絞る第1のスリット板114を備えている。
【0022】
X線回折装置本体101の第2のX線照射部120は、第2のX線源121、第2のシャッタ122、第2のシャッタ122の開閉を駆動する第2のシャッタ駆動部123、第2のX線源121から発射されたX線を絞る第2のスリット板124を備えている。
【0023】
X線検出器130はX線を検出するセンサ素子を2次元状に配置した2次元のセンサアレイで構成されている。
【0024】
スリット板は、X線形成手段の1つであるので、キャピラリーチューブやゾーンプレート、或いはコリメータなどのX線光学素子に置き換えられる。すなわち、第1のスリット板は、第1のX線形成手段であり、第2のスリット板は、第2のX線形成手段である。これは、後述する実施例2と実施例3においても同様である。
【0025】
第1のX線照射部110、第2のX線照射部120、X線検出器130は、容器102の内部に設置されている。
【0026】
容器102には、内部に設置した第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120から発射されたX線を容器102の外部にある試料10に照射するためのX線通過窓103が設けられている。X線通過窓103は、単なる空間穴であっても良いし、X線透過性の膜で仕切られていてもよい。X線透過性の膜で仕切られている場合は、図示していない手段により容器102の内部を真空に排気したり、不活性ガス雰囲気にしたりすることができる。
【0027】
更に、モニタ用カメラ140で試料10上のX線が照射される位置を確認できるようにするために、モニタ用カメラ140を設置する側には、モニタ用のガラス窓104が設けられている。また、第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120から発射されたX線を試料10に照射したときに、容器102の外部にX線が漏れるのを防止するために、X線漏れ防止用のX線遮蔽リング105がX線通過窓103の外側に設けられている。
【0028】
処理・制御部150は、図2に示すように、第1のX線源111を駆動するために第1のX線源駆動部151、第1のアクチュエータ113を駆動して第1のシャッタ112を開閉する第1のシャッタ駆動部152、モニタ用カメラ140を制御するカメラ制御部153、第2のアクチュエータ123を駆動して第2のシャッタ122を開閉する第2のシャッタ駆動部154、第2のX線源121を駆動するために第2のX線源駆動部155、X線検出器130からの出力を受けるセンサ入力部156、センサ入力部156で受けたX線検出器130からの出力を用いて試料10のX線回折角を求める演算部157、X線の照射条件や試料10に関する情報を入力し演算部157で求めた試料10のX線回折角に関する情報を出力する入出力部158、全体を制御する全体制御部159を備えている。また、処理・制御部150の各部とX線回折装置本体101とは、分離されており、その間をケーブル106で接続されている。
【0029】
出力部160は表示画面161を備え、処理・制御部150の入出力部158から出力された試料10のX線回折角に関する情報を表示画面161上に表示する。
上記した構成で、試料10のX線回折を計測する方法について図3乃至図5を用いて説明する。
【0030】
先ず、図3(a)に示すように、第1のX線源111から波長λのX線を第1のスリット板114を透過させて成形した後、多結晶体の試料10に対して入射角度φ1で入射させると、試料10の結晶の向きに応じて回折X線が発生する。この回折X線の入射X線の進行方向に対する回折角を2θとすると、回折X線は、試料10のX線照射位置を頂点としてX線の入射方向を中心軸とし頂角の半分が2θの円錐を中心軸に垂直な面で切断したときの円環状の輪郭線上に現れる(デバイ環)。
【0031】
この回折角2θは、試料10の結晶面に対するX線の入射角θの2倍の角度として表される。すなわち、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出して回折X線の発生位置がわかると、試料10に対するX線の入射角とこの回折X線の発生位置の情報とから試料10の結晶格子長の情報を得ることができる。試料10の結晶面がランダムな向きになっていると、それぞれの結晶面に関する情報が得られ、試料10の内部の状態を非破壊で観察することができる。
【0032】
図3(b)に、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出している状態の一例
を示す。X線検出器130の検出面上では、試料10の結晶面の指数に応じた回折X線のパターン111−1から111−4が検出される。
【0033】
このX線検出器130で検出された回折X線パターン111−1から111−4のX線
検出器130上の位置情報と試料10のX線照射位置とX線検出器130との位置関係、
及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折角2θθ及び結晶格子長を求めることができる。
【0034】
ここで、X線検出器130が2次元の検出器である場合について説明したが、X線検出器130上に投影される回折X線のデバイ環の位置がわかればよいので、X線検出器130を図3(a)に示した長手方向に素子を配列した1次元のセンサに置き換えてもよい。
【0035】
一方、図4(a)に示すように、第2のX線源121から第1のX線源111と同じ波
長λのX線を第2のスリット板124を透過させて成形した後、多結晶体の試料10に対して入射角度φ2で第1のX線源111からのX線を照射して領域と同じ領域に入射させると、試料10の結晶面の指数に応じて回折X線が発生するが、この回折X線の入射X線の進行方向に対する回折角を2θとすると、この回折角2θは、試料10の結晶面に対するX線の入射角θの2倍の角度として表される。試料10の結晶面がランダムな向きになっていると、それぞれの結晶面に関する情報が得られ、試料10の内部の状態を非破壊で観察することができる。
【0036】
図4(b)に、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出している状態の一例
を示す。X線検出器130の検出面上では、試料10の結晶面の指数に応じた回折X線のパターンが検出される。試料10に対する第2のX線源121からのX線の入射角度φ2が第1のX線源111からのX線の入射角度φ1と異なるために、X線検出器130の検出面上の回折X線の凹状のパターン121−1から121−4は、図3(b)に示した回折X線の凸状のパターン111−1から111−4と曲率の向きが反対になって検出される。
【0037】
このX線検出器130で検出された回折X線パターン121−1から121−4のX線
検出器130上の位置情報と試料10のX線照射位置とX線検出器130との位置関係、
及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折角2θθ及び結晶格子長を求めることができる。この場合も、X線検出器130を1次元のセンサに置き換えてもよい。
【0038】
また、試料10の同じ領域への第1のX線源111によるX線の照射と第2のX線源1
21によるX線の照射とを同時に行うと、試料10からは図3(a)のようなX線回折と
図4(a)のようなX線回折とが同時に発生し、X線検出器130では図5に示すような
凸状の回折パターン111−1から111−4と凹状の回折パターン121−1から121−4とが検出される。図5に示したX線回折パターンは、図3(b)に示した第1のX線源111からのX線照射により発生した回折パターン111−1から111−4と、図4(b)に示した第2のX線源121からのX線照射により発生した回折パターン121−1から121−4とを足し合わせたパターンになる。
【0039】
この場合、図5に示したX線回折パターンを検出した2次元のX線検出器130の出力
から、各パターンの曲率の中心方向を求めて第1のX線源111からのX線照射により発
生した凸状の回折パターン111−1から111−4と第2のX線源121からのX線照射により発生した凹状の回折パターン121−1から121−4とに分離する。
【0040】
そして、この分離した各パターンのX線検出器130上の位置情報と試料10のX線照
射位置とX線検出器130との位置関係、及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折
角2θ、θ、2θθ及び結晶格子長を求めることができる。
【0041】
ここで、X線検出器130は第1のX線源111からのX線照射により発生した回折パ
ターン111−1から111−4によるデバイ環、及び、第2のX線源121からのX線
照射により発生した回折パターン121−1から121−4によるデバイ環のそれぞれに
対して傾いて設置されているので、2次元のX線検出器130で検出されるX線回折パタ
ーンは、何れも真円から変形した楕円形状として検出される。したがって、回折X線の回
折角2θθ、2θθを求める場合、2次元のX線検出器130で検出された楕円形状のX線回折パターンから楕円の長軸の情報を抽出し、この情報を用いて算出すればよい。
【0042】
次に、図1に示した装置を用いて、第1のX線源111と第2のX線源121から試料10に順次X線を照射してX線回折パターンを検出する場合の操作の手順を、図6を用いて説明する。
【0043】
まず、X線回折装置100を測定したい試料10の上にセットした状態で、カメラ140で透過窓部104を介して通過窓103の下方にある試料10の表面を観察し、試料10の想定すべき箇所がX線を照射する位置と一致しているかを確認する(S601)。観察した結果、位置がずれていると判断した(S602でNO)場合には、X線回折装置100または試料10の位置を調整する(S603)。
【0044】
観察した結果、位置にずれがないと判断した(S602でYES)場合には、処理・制
御部150の第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆
動して、第1のX線源111の直前に配置されている第1のシャッタ112を開の状態に
し(S604)、第1のX線源111から発射されたX線を第1のスリット板114を透
過させて絞って成形した上でX線通過窓103の下方にある試料10に照射する。第1のスリット板114で絞ったX線が照射された試料10から発生した回折X線のうち、X線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S605)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理され(S606)、回折角θが求められる。
【0045】
次に、第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して第1のシャッタ112を閉の状態にして(S607)第1のX線源111から発射されたX線を遮光して試料10に照射されないようにし、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のX線源121の直前に配置されている第2のシャッタ122を開の状態にし(S608)、第2のX線源121から発射されたX線を第2のスリット板124を透過させて絞って成形した上でX線通過窓103を介して試料10の第1のX線源111から発射されたX線を照射した領域と同じ領域に照射する。
【0046】
第2のスリット板124で絞ったX線が照射された試料10から発生した回折X線のうちX線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S609)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理され(S610)、回折角θが求められる。
【0047】
次に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して第2のシャッタ122を閉の状態にして(S611)第2のX線源121から発射されたX線を遮光して試料10に照射されないようにする。
【0048】
最後に、S606で演算して求めたθ1とS610で演算して求めたθ2と情報を入出力部158から出力部160に送られて、表示画面161に表示される(S612)。
【0049】
本実施例によれば、第1のX線源111と第2のX線源121とから順次X線を照射するので測定に多少時間がかかるが、第1のX線源111からのX線照射により発生したX線回折パターンと第2のX線源121とからのX線照射により発生したX線回折パターンとを確実に分離して検出できるので、高い検出精度を期待することができる。
【0050】
また、1次元または2次元のX線検出器130でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0051】
また、X線検出器130を1次元の検出器で構成することが可能であり、また、X線検出器130は固定されておりシャッタ以外の可動機構を備えていないので、装置をよりコンパクトで軽量化することが可能になる。
【0052】
また、本実施例の変形として、第1のシャッタ112と第2のシャッタ122の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能をそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
【0053】
また、更なる本実施例の変形として、第1のX線源111と第2のX線源121の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる。
【実施例2】
【0054】
実施例2として、図1に示した構成のX線解析装置100を用いて、第1のX線源111と第2のX線源121とから同時にX線を発射して試料10上の同じ領域に同時に照射する場合について説明する。この場合、試料10からは、第1のX線源111からのX線照射によるX線回折パターンと第2のX線源121からのX線照射によるX線回折パターンとが重なった状態の図5で説明したようなパターンが検出される。
【0055】
この場合の検出の手順を図7を用いて説明する。
まず、X線回折装置100を測定したい試料10の上にセットした状態で、カメラ140で透過窓部104を介して窓103の下方にある試料10の表面を観察し、試料10の想定すべき箇所がX線を照射する位置と一致しているかを確認する(S701)。観察した結果、位置がずれていると判断した(S702でNO)場合には、X線回折装置100または試料10の位置を調整する(S703)。
【0056】
観察した結果、位置がずれがないと判断した(S702でYES)場合には、処理・制御部150の第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して、第1のX線源111の直前に配置されている第1のシャッタ112を開の状態にすると同時に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のX線源121の直前に配置されている第2のシャッタ122を開の状態にし(S704)、第1のX線源111から発射されて第1のスリット板114で成形されたX線と第2のX線源121から発射されて第2のスリット板124で成形されたX線とをX線通過窓103を通過させ試料10の同一の領域に同時に照射する。
【0057】
X線を照射された試料10から発生した回折X線のうちX線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S705)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理されて第1のX線源111から発射されたX線により発生したX線回折パターンと第2のX線源121から発射されたX線により発生したX線回折パターンとが分離され(S706)、第1のX線源111から発射されたX線により発生したX線回折パターンの回折角θと第2のX線源121から発射されたX線により発生したX線回折パターンの回折角θとが求められる(S707)。
【0058】
次に、第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して、第1のシャッタ112を開の状態にすると同時に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のシャッタ122を開の状態にし(S708)、第1のX線源111から発射されたX線と第2のX線源121から発射されたX線とを遮光する。
【0059】
最後に、S707で演算して求めたθとθとの情報が入出力部158から出力部160に送られて、表示画面161に表示される(S709)。
【0060】
本実施例によれば、第1のX線源111と第2のX線源121とから同時にX線を照射するので、測定の時間を短縮することが可能になる。
【0061】
また、2次元のX線検出器130でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0062】
また、X線検出器130は固定されており、シャッタ以外の可動機構を備えていないので装置をよりコンパクトで軽量化することが可能になる。
【0063】
また、本実施例の変形として、第1のシャッタ112と第2のシャッタ122の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と、第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能をそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる。
【実施例3】
【0064】
本発明による第3の実施例を、図8を用いて説明する。
図8に示した構成は、図1で説明したX線解析装置100のモニタカメラ140を外して第3のX線照射部830を搭載したものである。図1の構成と同じものについては、同じ番号を付している。実施例1および2の場合と同様に、本実施例においても、X線回折装置本体801は、第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、第3のX線照射部830及びX線検出器840を備え、それらは図8に示した容器802の内部で同一の平面内に配置されており、第1乃至第3のX線照射部110,120,830で発生させたX線をX線通過窓803を通過させて試料10に照射する構成になっている。
【0065】
処理・制御部850は、図9に示すように、第1のX線源111を駆動するために第1のX線源駆動部151、第1のアクチュエータ113を駆動する第1のシャッタ駆動部152、第2のアクチュエータ123を駆動する第2のシャッタ駆動部154、第2のX線源121を駆動するために第2のX線源駆動部155、第3のX線源831を駆動するために第3のX線源駆動部851、第3のアクチュエータ833を駆動する第3のシャッタ駆動部852、X線検出器840からの出力を受けるセンサ入力部853、センサ入力部853で受けたX線検出器840からの出力を用いて試料10のX線回折角を求める演算部854、X線の照射条件や試料10に関する情報を入力し演算部854で求めた試料10のX線回折角に関する情報を出力する入出力部855、全体を制御する全体制御部856を備えている。また、処理・制御部850の各部とX線回折装置本体801とは、分離されており、その間をケーブル806で接続されている。
【0066】
出力部860は表示画面861を備え、処理・制御部850の入出力部855から出力された試料10のX線回折角に関する情報を表示画面861上に表示する。
第3のX線照射部830は、図1で説明した第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120と同様に、第3のX線源831、第3のシャッタ832、第3のシャッタ832の開閉を駆動する第3のアクチュエータ833、第3のX線源831から発射されたX線を絞る第3のスリット板834を備えている。
【0067】
上記構成を備えたX線回折装置800を用いて試料10の解説X線を検出する方法は、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法、および、実施例2で説明した各X線源から同時にX線を照射して、2次元のX線検出器130で検出したX線回折パターンから各X線源ごとのX線回折パターンに分離して回折角度を求める方法と同じである。
【0068】
本実施例では、X線照射部を3組備えた例を示したが、本発明ではこれに限られず、更に多くのX線照射部を備えてX線回折装置を構成するようにしても良い。
【0069】
本実施例によれば、X線照射角度の異なる複数のX線照射部を設けて試料にX線を照射する構成としたことにより、より広い範囲の回折X線を検出することが可能になり、X線回折の精度をより向上させることが可能になった。
【0070】
また、2次元のX線検出器840でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0071】
また、本実施例の変形として、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法と同様の方法のときは、第1のX線源111と第2のX線源121及び第3のX線源831の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
【0072】
また、本実施例の変形として、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法と同様の方法のときは、第1のX線源111と第2のX線源121及び第3のX線源831の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
【0073】
また、更なる本実施例に変形として、実施例2で説明した各X線源から同時にX線を照射する方法と同様な方法に場合は、第2のシャッタ122及び第3のシャッタ832の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と、第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能、及び第3のX線源831の駆動源851のオン・オフ機能とをそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
【0074】
また、上記のスリット板は、X線の形成手段の1つであるので、キャピラリーチューブやゾーンプレート或いはコリメータなどのX線光学素子に置き換えられる。すなわち、第1のスリット板114は第1のX線形成手段であり、第2のスリット板124は第2のX線形成手段であり、第3のスリット板834は第3のX線形成手段である。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、X線管が発生する特性X線を試料に照射して材料の分析を行うX線回折方法を用いた可搬型X線回折装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…試料 100…X線回折装置 101…X線回折装置本体 102…容器 103…X線通過窓 104…モニタ用ガラス窓 105…X線遮蔽リング
110…第1のX線照射部 111…第1のX線源 112…第1のシャッタ
114…第1のスリット板 120…第2のX線照射部 121…第2のX線源 122…第2のシャッタ 124…第2のスリット板 130…X線検出器
140…モニタ用カメラ 150…処理・制御部 160…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9