【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の実施例1の構成を示す。
実施例1におけるX線回折装置100は、第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、X線検出器130、モニタ用カメラ140を備えたX線回折装置本体101と、処理制御部150と、出力部160を備えている。第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、X線検出器130は、
図1に示した同一の平面内に配置されている。
【0021】
X線回折装置本体101の第1のX線照射部110は、第1のX線源111、第1のシャッタ112、第1のシャッタ112の開閉を駆動する第1のアクチュエータ113、第1のX線源111から発射されたX線を絞る第1のスリット板114を備えている。
【0022】
X線回折装置本体101の第2のX線照射部120は、第2のX線源121、第2のシャッタ122、第2のシャッタ122の開閉を駆動する第2のシャッタ駆動部123、第2のX線源121から発射されたX線を絞る第2のスリット板124を備えている。
【0023】
X線検出器130はX線を検出するセンサ素子を2次元状に配置した2次元のセンサアレイで構成されている。
【0024】
スリット板は、X線形成手段の1つであるので、キャピラリーチューブやゾーンプレート、或いはコリメータなどのX線光学素子に置き換えられる。すなわち、第1のスリット板は、第1のX線形成手段であり、第2のスリット板は、第2のX線形成手段である。これは、後述する実施例2と実施例3においても同様である。
【0025】
第1のX線照射部110、第2のX線照射部120、X線検出器130は、容器102の内部に設置されている。
【0026】
容器102には、内部に設置した第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120から発射されたX線を容器102の外部にある試料10に照射するためのX線通過窓103が設けられている。X線通過窓103は、単なる空間穴であっても良いし、X線透過性の膜で仕切られていてもよい。X線透過性の膜で仕切られている場合は、図示していない手段により容器102の内部を真空に排気したり、不活性ガス雰囲気にしたりすることができる。
【0027】
更に、モニタ用カメラ140で試料10上のX線が照射される位置を確認できるようにするために、モニタ用カメラ140を設置する側には、モニタ用のガラス窓104が設けられている。また、第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120から発射されたX線を試料10に照射したときに、容器102の外部にX線が漏れるのを防止するために、X線漏れ防止用のX線遮蔽リング105がX線通過窓103の外側に設けられている。
【0028】
処理・制御部150は、
図2に示すように、第1のX線源111を駆動するために第1のX線源駆動部151、第1のアクチュエータ113を駆動して第1のシャッタ112を開閉する第1のシャッタ駆動部152、モニタ用カメラ140を制御するカメラ制御部153、第2のアクチュエータ123を駆動して第2のシャッタ122を開閉する第2のシャッタ駆動部154、第2のX線源121を駆動するために第2のX線源駆動部155、X線検出器130からの出力を受けるセンサ入力部156、センサ入力部156で受けたX線検出器130からの出力を用いて試料10のX線回折角を求める演算部157、X線の照射条件や試料10に関する情報を入力し演算部157で求めた試料10のX線回折角に関する情報を出力する入出力部158、全体を制御する全体制御部159を備えている。また、処理・制御部150の各部とX線回折装置本体101とは、分離されており、その間をケーブル106で接続されている。
【0029】
出力部160は表示画面161を備え、処理・制御部150の入出力部158から出力された試料10のX線回折角に関する情報を表示画面161上に表示する。
上記した構成で、試料10のX線回折を計測する方法について
図3乃至
図5を用いて説明する。
【0030】
先ず、
図3(a)に示すように、第1のX線源111から波長λのX線を第1のスリット板114を透過させて成形した後、多結晶体の試料10に対して入射角度φ1で入射させると、試料10の結晶の向きに応じて回折X線が発生する。この回折X線の入射X線の進行方向に対する回折角を2θ
1とすると、回折X線は、試料10のX線照射位置を頂点としてX線の入射方向を中心軸とし頂角の半分が2θ
1の円錐を中心軸に垂直な面で切断したときの円環状の輪郭線上に現れる(デバイ環)。
【0031】
この回折角2θ
1は、試料10の結晶面に対するX線の入射角θ
1の2倍の角度として表される。すなわち、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出して回折X線の発生位置がわかると、試料10に対するX線の入射角とこの回折X線の発生位置の情報とから試料10の結晶
格子長の情報を得ることができる。試料10の結晶面がランダムな向きになっていると、それぞれの結晶面に関する情報が得られ、試料10の内部の状態を非破壊で観察することができる。
【0032】
図3(b)に、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出している状態の一例
を示す。X線検出器130の検出面上では、試料10の結晶面の
指数に応じた回折X線のパターン111−1から111−4が検出される。
【0033】
このX線検出器130で検出された回折X線パターン111−1から111−4のX線
検出器130上の位置情報と試料10のX線照射位置とX線検出器130との位置関係、
及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折角2θ
1、θ1及び結晶
格子長を求めることができる。
【0034】
ここで、X線検出器130が2次元の検出器である場合について説明したが、X線検出器130上に投影される回折X線のデバイ環の位置がわかればよいので、X線検出器130を
図3(a)に示した長手方向に素子を配列した1次元のセンサに置き換えてもよい。
【0035】
一方、
図4(a)に示すように、第2のX線源121から第1のX線源111と同じ波
長λのX線を第2のスリット板124を透過させて成形した後、多結晶体の試料10に対して入射角度φ2で第1のX線源111からのX線を照射して領域と同じ領域に入射させると、試料10の結晶
面の指数に応じて回折X線が発生するが、この回折X線の入射X線の進行方向に対する回折角を2θ
2とすると、この回折角2θ
2は、試料10の結晶面に対するX線の入射角θ
2の2倍の角度として表される。試料10の結晶面がランダムな向きになっていると、それぞれの結晶面に関する情報が得られ、試料10の内部の状態を非破壊で観察することができる。
【0036】
図4(b)に、X線検出器130で試料10からの回折X線を検出している状態の一例
を示す。X線検出器130の検出面上では、試料10の結晶面の
指数に応じた回折X線のパターンが検出される。試料10に対する第2のX線源121からのX線の入射角度φ2が第1のX線源111からのX線の入射角度φ1と異なるために、X線検出器130の検出面上の回折X線の
凹状のパターン121−1から121−4は、
図3(b)に示した回折X線の
凸状のパターン111−1から111−4と曲率の向きが反対になって検出される。
【0037】
このX線検出器130で検出された回折X線パターン121−1から121−4のX線
検出器130上の位置情報と試料10のX線照射位置とX線検出器130との位置関係、
及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折角2θ
2、θ2及び結晶
格子長を求めることができる。この場合も、X線検出器130を1次元のセンサに置き換えてもよい。
【0038】
また、試料10の同じ領域への第1のX線源111によるX線の照射と第2のX線源1
21によるX線の照射とを同時に行うと、試料10からは
図3(a)のようなX線回折と
図4(a)のようなX線回折とが同時に発生し、X線検出器130では
図5に示すような
凸状の回折パターン111−1から111−4と
凹状の回折パターン121−1から121−4とが検出される。
図5に示したX線回折パターンは、
図3(b)に示した第1のX線源111からのX線照射により発生した回折パターン111−1から111−4と、
図4(b)に示した第2のX線源121からのX線照射により発生した回折パターン121−1から121−4とを足し合わせたパターンになる。
【0039】
この場合、
図5に示したX線回折パターンを検出した2次元のX線検出器130の出力
から、各パターンの曲率の中心方向を求めて第1のX線源111からのX線照射により発
生した
凸状の回折パターン111−1から111−4と第2のX線源121からのX線照射により発生した
凹状の回折パターン121−1から121−4とに分離する。
【0040】
そして、この分離した各パターンのX線検出器130上の位置情報と試料10のX線照
射位置とX線検出器130との位置関係、及びX線照射方向の情報から、回折X線の回折
角2θ
1、θ1、2θ
2、θ2及び結晶
格子長を求めることができる。
【0041】
ここで、X線検出器130は第1のX線源111からのX線照射により発生した回折パ
ターン111−1から111−4によるデバイ環、及び、第2のX線源121からのX線
照射により発生した回折パターン121−1から121−4によるデバイ環のそれぞれに
対して傾いて設置されているので、2次元のX線検出器130で検出されるX線回折パタ
ーンは、何れも真円から変形した楕円形状として検出される。したがって、回折X線の回
折角2θ
1、θ1、2θ
2、θ2を求める場合、2次元のX線検出器130で検出された楕円形状のX線回折パターンから楕円の長軸の情報を抽出し、この情報を用いて算出すればよい。
【0042】
次に、
図1に示した装置を用いて、第1のX線源111と第2のX線源121から試料10に順次X線を照射してX線回折パターンを検出する場合の操作の手順を、
図6を用いて説明する。
【0043】
まず、X線回折装置100を測定したい試料10の上にセットした状態で、カメラ140で透過窓部104を介して通過窓103の下方にある試料10の表面を観察し、試料10の想定すべき箇所がX線を照射する位置と一致しているかを確認する(S601)。観察した結果、位置がずれていると判断した(S602でNO)場合には、X線回折装置100または試料10の位置を調整する(S603)。
【0044】
観察した結果、位置にずれがないと判断した(S602でYES)場合には、処理・制
御部150の第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆
動して、第1のX線源111の直前に配置されている第1のシャッタ112を開の状態に
し(S604)、第1のX線源111から発射されたX線を第1のスリット板114を透
過させて絞って成形した上でX線通過窓103の下方にある試料10に照射する。第1のスリット板114で絞ったX線が照射された試料10から発生した回折X線のうち、X線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S605)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理され(S606)、回折角θ
1が求められ
る。
【0045】
次に、第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して第1のシャッタ112を閉の状態にして(S607)第1のX線源111から発射されたX線を遮光して試料10に照射されないようにし、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のX線源121の直前に配置されている第2のシャッタ122を開の状態にし(S608)、第2のX線源121から発射されたX線を第2のスリット板124を透過させて絞って成形した上でX線通過窓103を介して試料10の第1のX線源111から発射されたX線を照射した領域と同じ領域に照射する。
【0046】
第2のスリット板124で絞ったX線が照射された試料10から発生した回折X線のうちX線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S609)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理され(S610)、回折角θ
2が求められる。
【0047】
次に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して第2のシャッタ122を閉の状態にして(S611)第2のX線源121から発射されたX線を遮光して試料10に照射されないようにする。
【0048】
最後に、S606で演算して求めたθ1とS610で演算して求めたθ2と情報を入出力部158から出力部160に送られて、表示画面161に表示される(S612)。
【0049】
本実施例によれば、第1のX線源111と第2のX線源121とから順次X線を照射するので測定に多少時間がかかるが、第1のX線源111からのX線照射により発生したX線回折パターンと第2のX線源121とからのX線照射により発生したX線回折パターンとを確実に分離して検出できるので、高い検出精度を期待することができる。
【0050】
また、1次元または2次元のX線検出器130でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0051】
また、X線検出器130を1次元の検出器で構成することが可能であり、また、
X線検出器130は固定されておりシャッタ以外の可動機構を備えていないので、装置をよりコンパクトで軽量化することが可能になる。
【0052】
また、本実施例の変形として、第1のシャッタ112と第2のシャッタ122の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能をそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
【0053】
また、更なる本実施例の変形として、第1のX線源111と第2のX線源121の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる。
【実施例2】
【0054】
実施例2として、
図1に示した構成のX線解析装置100を用いて、第1のX線源111と第2のX線源121とから同時にX線を発射して試料10上の同じ領域に同時に照射する場合について説明する。この場合、試料10からは、第1のX線源111からのX線照射によるX線回折パターンと第2のX線源121からのX線照射によるX線回折パターンとが重なった状態の
図5で説明したようなパターンが検出される。
【0055】
この場合の検出の手順を
図7を用いて説明する。
まず、X線回折装置100を測定したい試料10の上にセットした状態で、カメラ140で透過窓部104を介して窓103の下方にある試料10の表面を観察し、試料10の想定すべき箇所がX線を照射する位置と一致しているかを確認する(S701)。観察した結果、位置がずれていると判断した(S702でNO)場合には、X線回折装置100または試料10の位置を調整する(S703)。
【0056】
観察した結果、位置がずれがないと判断した(S702でYES)場合には、処理・制御部150の第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して、第1のX線源111の直前に配置されている第1のシャッタ112を開の状態にすると同時に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のX線源121の直前に配置されている第2のシャッタ122を開の状態にし(S704)、第1のX線源111から発射されて第1のスリット板114で成形されたX線と第2のX線源121から発射されて第2のスリット板124で成形されたX線とをX線通過窓103を通過させ試料10の同一の領域に同時に照射する。
【0057】
X線を照射された試料10から発生した回折X線のうちX線通過窓103を通過してX線検出器130に入射した回折X線をX線検出器130で検出する(S705)。この回折X線を検出したX線検出器130からの出力は処理・制御部150のセンサ入力部156に入力し、増幅してA/D変換された後に演算部157に送られて演算処理されて第1のX線源111から発射されたX線により発生したX線回折パターンと第2のX線源121から発射されたX線により発生したX線回折パターンとが分離され(S706)、第1のX線源111から発射されたX線により発生したX線回折パターンの回折角θ
1と第2のX線源121から発射されたX線により発生したX線回折パターンの回折角θ
2とが求められる(S707)。
【0058】
次に、第1のシャッタ駆動部152からの指令で第1のアクチュエータ113を駆動して、第1のシャッタ112を開の状態にすると同時に、第2のシャッタ駆動部154からの指令で第2のアクチュエータ123を駆動して、第2のシャッタ122を開の状態にし(S708)、第1のX線源111から発射されたX線と第2のX線源121から発射されたX線とを遮光する。
【0059】
最後に、S707で演算して求めたθ
1とθ
2との情報が入出力部158から出力部160に送られて、表示画面161に表示される(S709)。
【0060】
本実施例によれば、第1のX線源111と第2のX線源121とから同時にX線を照射するので、測定の時間を短縮することが可能になる。
【0061】
また、2次元のX線検出器130でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0062】
また、
X線検出器130は固定されており、シャッタ以外の可動機構を備えていないので装置をよりコンパクトで軽量化することが可能になる。
【0063】
また、本実施例の変形として、第1のシャッタ112と第2のシャッタ122の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と、第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能をそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる。
【実施例3】
【0064】
本発明による第3の実施例を、
図8を用いて説明する。
図8に示した構成は、
図1で説明したX線解析装置100のモニタカメラ140を外して第3のX線照射部830を搭載したものである。
図1の構成と同じものについては、同じ番号を付している。実施例1および2の場合と同様に、本実施例においても、X線回折装置本体801は、第1のX線照射部110と第2のX線照射部120、第3のX線照射部830及びX線検出器840を備え、それらは
図8に示した容器802の内部で同一の平面内に配置されており、第1乃至第3のX線照射部110,120,830で発生させたX線をX線通過窓803を通過させて試料10に照射する構成になっている。
【0065】
処理・制御部850は、
図9に示すように、第1のX線源111を駆動するために第1のX線源駆動部151、第1のアクチュエータ113を駆動する第1のシャッタ駆動部152、第2のアクチュエータ123を駆動する第2のシャッタ駆動部154、第2のX線源121を駆動するために第2のX線源駆動部155、第3のX線源831を駆動するために第3のX線源駆動部851、第3のアクチュエータ833を駆動する第3のシャッタ駆動部852、X線検出器840からの出力を受けるセンサ入力部853、センサ入力部853で受けたX線検出器840からの出力を用いて試料10のX線回折角を求める演算部854、X線の照射条件や試料10に関する情報を入力し演算部854で求めた試料10のX線回折角に関する情報を出力する入出力部855、全体を制御する全体制御部856を備えている。また、処理・制御部850の各部とX線回折装置本体801とは、分離されており、その間をケーブル806で接続されている。
【0066】
出力部860は表示画面861を備え、処理・制御部850の入出力部855から出力された試料10のX線回折角に関する情報を表示画面861上に表示する。
第3のX線照射部830は、
図1で説明した第1のX線照射部110及び第2のX線照射部120と同様に、第3のX線源831、第3のシャッタ832、第3のシャッタ832の開閉を駆動する第3のアクチュエータ833、第3のX線源831から発射されたX線を絞る第3のスリット板834を備えている。
【0067】
上記構成を備えたX線回折装置800を用いて試料10の解説X線を検出する方法は、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法、および、実施例2で説明した各X線源から同時にX線を照射して、2次元のX線検出器130で検出したX線回折パターンから各X線源ごとのX線回折パターンに分離して回折角度を求める方法と同じである。
【0068】
本実施例では、X線照射部を3組備えた例を示したが、本発明ではこれに限られず、更に多くのX線照射部を備えてX線回折装置を構成するようにしても良い。
【0069】
本実施例によれば、X線照射角度の異なる複数のX線照射部を設けて試料にX線を照射する構成としたことにより、より広い範囲の回折X線を検出することが可能になり、X線回折の精度をより向上させることが可能になった。
【0070】
また、2次元のX線検出器840でX線回折パターンを連続する広い領域で検出することができるので、より高い検出精度を得ることができる。
【0071】
また、本実施例の変形として、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法と同様の方法のときは、第1のX線源111と第2のX線源121及び第3のX線源831の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
【0072】
また、本実施例の変形として、実施例1で説明した各X線源から順次X線を照射してX線回折パターンを検出する方法と同様の方法のときは、第1のX線源111と第2のX線源121及び第3のX線源831の駆動高圧電源部(図示せず)を共通化して、電気的スイッチ切換にすることにより、装置を更に軽量化することが可能になる。
【0073】
また、更なる本実施例に変形として、実施例2で説明した各X線源から同時にX線を照射する方法と同様な方法に場合は、第2のシャッタ122及び第3のシャッタ832の開閉の代りの動作として、第1のX線源111の駆動源151のオン・オフ機能と、第2のX線源121の駆動源155のオン・オフ機能、及び第3のX線源831の駆動源851のオン・オフ機能とをそのまま利用することができる。その場合、シャッタを装置構成から省くことが可能である。
【0074】
また、上記のスリット板は、X線の形成手段の1つであるので、キャピラリーチューブやゾーンプレート或いはコリメータなどのX線光学素子に置き換えられる。すなわち、第1のスリット板114は第1のX線形成手段であり、第2のスリット板124は第2のX線形成手段であり、第3のスリット板834は第3のX線形成手段である。
本実施例によれば、X線検出器を移動させる必要が無く、固定して計測することができるので、従来のX線回折装置で用いていたゴニオメータを必要とせず、X線回折角度2θ幅を広い範囲で測定する効果を実現でき、更に、X線回折装置を持ち運びできる程度までに軽量化することができる。またシャッタの開閉機構以外に可動部分が無いので、装置の構成を簡素化でき、小型で軽量のX線回折装置を実現することができる。