特許第5740411号(P5740411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740411投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法、投影型静電容量式タッチパネルの走査のための記憶媒体及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740411
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法、投影型静電容量式タッチパネルの走査のための記憶媒体及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/044 20060101AFI20150604BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   G06F3/044 120
   G06F3/041 512
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-545073(P2012-545073)
(86)(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公表番号】特表2013-515302(P2013-515302A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】CN2010080396
(87)【国際公開番号】WO2011088726
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2012年6月22日
(31)【優先権主張番号】201010103956.6
(32)【優先日】2010年1月21日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512299015
【氏名又は名称】ティーピーケイ タッチ ソリューションズ(シアメン)インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ワン−チウ
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−098942(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0007631(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/090820(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/044
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.第1軸に沿って配置された夫々の第1軸電極、第2軸に沿って配置された夫々の第2軸電極を制御装置により走査し、自己容量が変化した第1軸電極と第2軸電極を取得し、
B.自己容量が変化した前記第1軸電極と前記第2軸電極間の夫々の交点の相互容量を検出し、相互容量が変化したか否かを判定し、相互容量が変化した領域を接触領域とし、
相互容量が変化したかを判定する処理は、
夫々の交点の現在の相互容量をプリセットされた参照相互容量と比較し、
前記現在の相互容量がプリセットされた条件を満たす領域を取得する、
前記現在の相互容量を取得する処理は、
自己容量が変化した夫々の第2軸電極を充電し、
前記第1軸電極に誘導された電荷を集め、当該電荷を電圧値に変換し、夫々の交点における前記現在の相互容量を得る、
夫々の前記交点における前記プリセットされた参照相互容量は、繰り返しの交点の初期化走査から得られる複数の初期相互容量の平均値である、
投影型静電容量式タッチパネルの走査方法。
【請求項2】
ステップAによる自己容量が変化した前記第1軸電極と前記第2軸電極を取得する処理は、
夫々の第1軸電極、第2軸電極の現在の自己容量をプリセットされた参照自己容量と比較し、
前記現在の自己容量がプリセットされた条件を満たす第1軸電極、第2軸電極を取得する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現在の自己容量を取得する処理は、
夫々の第1軸電極、第2軸電極を充電し、
夫々の第1軸電極、第2軸電極を、第1軸電極又は第2軸電極に対応して接続された参照容量に放電し、
前記放電処理が完了したときに前記第1軸電極又は第2軸電極の現在の自己容量を取得する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
夫々の前記第1軸電極、前記第2軸電極のプリセットされた前記参照自己容量は、繰り返しの前記第1軸電極又は前記第2軸電極の初期化走査から得られる複数の初期自己容量の値の平均である請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記前記第1軸電極又は前記第2軸電極の初期化走査は、
前記第1軸電極又は前記第2軸電極を充電し、
前記第1軸電極又は前記第2軸電極を、前記第1軸電極又は前記第2軸電極に対応して接続された参照容量に放電し、
前記放電処理が完了したときに前記第1軸電極又は前記第2軸電極の前記初期自己容量を取得する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プリセットされた条件は、前記自己容量と前記プリセットされた参照自己容量の差が所定の閾値よりも大きい条件である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記交点の初期化走査は、
夫々の前記第2軸電極を充電し、
前記第1軸電極に誘導される電荷を集め、前記電荷を電圧値に変換し、
夫々の前記交点の初期相互容量を得る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
プリセットされた条件は、交点における現在の相互容量と参照相互容量の差がプリセット閾値よりも大きい請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触領域の重心をさらに算出する請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1軸電極又は前記第2軸電極の自己容量が変化しない場合、ステップAを繰り返す請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
A.第1軸に沿って配置された夫々の第1軸電極、第2軸に沿って配置された夫々の第2軸電極を走査し、自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極を取得し、
B.自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極間の夫々の交点の相互容量を検出し、相互容量が変化したかを判定し、相互容量が変化した領域を接触領域とする、
相互容量が変化したかを判定する処理は、
夫々の交点の現在の相互容量をプリセットされた参照相互容量と比較し、
前記現在の相互容量がプリセットされた条件を満たす領域を取得する、
前記現在の相互容量を取得する処理は、
自己容量が変化した夫々の第2軸電極を充電し、
前記第1軸電極に誘導された電荷を集め、当該電荷を電圧値に変換し、夫々の交点における前記現在の相互容量を得る、
夫々の前記交点における前記プリセットされた参照相互容量は、繰り返しの交点の初期化走査から得られる複数の初期相互容量の平均値である、
投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法を実行する処理装置によって実行される一連の命令を格納する記憶媒体。
【請求項12】
第1軸電極、第2軸電極の自己容量を検出する走査モジュールと、
自己容量が変化したかを判定し、第1軸電極と第2軸電極の自己容量が変化したときに、第1軸電極と第2軸電極間の交点における相互容量を検出し、相互容量が変化したかを判定し、相互容量が変化した交点によって規定される接触領域を決定するために、走査モジュールを制御する制御モジュールと、を備え、
相互容量が変化したかを判定する処理は、
夫々の交点の現在の相互容量をプリセットされた参照相互容量と比較し、
前記現在の相互容量がプリセットされた条件を満たす領域を取得する、
前記現在の相互容量を取得する処理は、
自己容量が変化した夫々の第2軸電極を充電し、
前記第1軸電極に誘導された電荷を集め、当該電荷を電圧値に変換し、夫々の交点における前記現在の相互容量を得る、
夫々の前記交点における前記プリセットされた参照相互容量は、繰り返しの交点の初期化走査から得られる複数の初期相互容量の平均値である、
投影型静電容量式タッチパネルを走査するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチパネルに関し、特に、投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法、投影型静電容量式タッチパネルの走査のための記憶媒体及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式タッチパネルは、異なる構造に応じて異なる動作原理を有する投影型静電容量式タッチパネルと表面型静電容量式タッチパネルに分類される。図1は、従来の投影型静電容量式タッチスクリーンの分解図である。タッチスクリーン1は、保護層11、基板12、投影型静電容量式タッチパネル13、制御装置14を含む。保護層11は、一般に透明であり、投影型静電容量式タッチパネル13の一方の面上に配置されている。これらは、投影型静電容量式タッチパネル13の他の面が基板12に対面するように、基板12上に配置されている。制御装置14は、投影型静電容量式タッチパネル13を駆動するために、投影型静電容量式タッチパネル13に電気的に接続されている。
【0003】
図2は、従来の投影型静電容量式タッチパネルの上部平面図である。図2に示すように、投影型静電容量式タッチパネル13は、直交して配置された導電電極の2つの層を含む。導電電極の一方の層は、(x軸として定義される)第1軸に沿って平行に配置されたM(M≧1)の第1軸電極を含む。導電電極の他の層は、(y軸として定義される)第2軸に沿って平行に配置されたN(N≧1)の第2軸電極を含む。直交して配置され、互いに絶縁された2層の導電電極は、M×Nの交点を有する電極マトリックスを形成する。
【0004】
タッチパネルが動作すると、例えばグランドに対して測定されるM+Nの電極の自己容量が存在する。また、第1軸電極と第2軸電極の間の交点に形成されるM×Nの相互容量も存在する。例えば人間の指やデジタルペン等の導体によりタッチパネルがタッチされた場合、接触領域の自己容量と相互容量は変化する。自己容量と相互容量の変化を検出し、これに続く演算によって、タッチスクリーン上のタッチポイントの位置が決定される。
【0005】
従来のタッチポイントの位置を決定する方法は、電極マトリックスの交点の位置がタッチスクリーン上の位置を決定できるという事実に基づいて、すべてのM×Nの容量を走査するものである。タッチスクリーンのサイズが大きくなると、電極マトリックスを走査する時間は、走査精度を保証するのに応じて長くなる。42インチのタッチパネルを例にとると、Mが170、Nが100、夫々の容量の走査時間が30μsであるとすると、電極マトリックスを走査する時間は、170×100×30μs=0.51sである。すなわち、走査周波数は、1/0.51=1.96である。これは、非常に低い走査周波数であり、タッチポイントの決定に遅延を引き起こす。また、マルチポイントタッチパネルの場合、さらに悪くなり、タッチポイントの喪失につながる可能性がある。
【0006】
このため、上述した従来の方法の欠点を解決する、投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法は、A.第1軸に沿って配置された夫々の第1軸電極、第2軸に沿って配置された夫々の第2軸電極を制御装置により走査し、自己容量が変化した第1軸電極と第2軸電極を取得し、B.自己容量が変化した前記第1軸電極と前記第2軸電極間の夫々の交点の相互容量を検出し、相互容量が変化したか否かを判定し、相互容量が変化した領域を接触領域とする。上述の方法を実行する命令を格納する記憶媒体、上述の方法を実行する装置もまた提供される。
【0008】
このように、自己容量と相互容量の検出を組み合わせることによって、本発明の方法は、走査時間を大きく削減することができ、走査周波数を向上でき、大型のタッチパネルの走査精度もまた保証される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の投影型静電容量式タッチスクリーンの分解図である。
図2】従来の投影型静電容量式タッチパネルの平面図である。
図3】本発明の制御装置に接続された投影型静電容量式タッチパネルを示す図である。
図4】本発明の第1軸に沿った第1軸電極の自己容量の走査を説明する図である。
図5】本発明の第2軸に沿った第2軸電極の自己容量の走査を説明する図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るタッチパネル上のシングルタッチを示す図である。
図7】本発明の好ましい実施の形態に係るタッチパネル上のシングルタッチの平面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係るタッチパネルのダブルタッチを示す図である。
図9図8の電極の1つを示す図である。
図10図8の接触領域及びゴースト領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の詳細な説明が以下の実施の形態で説明されるが、本発明の範囲を制限することを目的とするものではなく、さらに他の応用に適用されうる。図面が詳細に説明されるが、構成要素が明示的に限定された量である場合を除き、開示された構成要素の量は開示よりも多い又は少ないことが理解される。
【0011】
本発明の方法は、図3に示される投影型静電容量式タッチパネル13、制御装置14を含むタッチスクリーンによって実行される。制御装置14は、投影型静電容量式タッチパネル13に電気的に接続されており、投影型静電容量式タッチパネル13を駆動する。投影型静電容量式タッチパネル13は、(x軸として定義される)第1軸に沿って平行に配置されたM(M≧1)の第1軸電極、(y軸として定義される)第2軸に沿って平行に配置されたN(N≧1)の第2軸電極を含む。第1軸と第2軸は互いに直行する。グランドに対して測定されるM+Nの自己容量が存在する。また、第1軸電極と第2軸電極との間の交点に形成されるM×Nの相互容量が存在する。
【0012】
投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法は、以下のステップを含む。
A.第1軸電極と第2軸電極の自己容量変化を取得するために、夫々の第1軸電極、夫々の第2軸電極を走査する。
B.自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極間の夫々の交点の相互容量を検出し、相互容量が変化したかを判定し、相互容量が変化した領域を接触領域とする。
【0013】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るタッチパネル上のシングルタッチ(single touch)を示す。シングルタッチは、接触領域133を通過する第1軸電極、第2軸電極に影響を及ぼす。いくつかの実施の形態では、第1軸電極と第2軸電極の幅は接触領域133よりも広く、シングルタッチが1つの第1軸電極と1つの第2軸電極のみに含まれることがある。シングルタッチの場合に、上述したステップAに従って第1軸電極と第2軸電極の自己容量の変化が検出されると、タッチポイントの位置は、第1軸電極のx座標(Xi、1≦i≦M)、第2軸電極のy座標(Yj、1≦j≦N)を取得することによって決定される。第1軸電極と第2軸電極間の交点の相互容量は、さらに1つのタッチポイントのみを有する接触領域の位置を確認するために検出される。
【0014】
他の実施の形態では、接触領域は電極の幅よりも通常広い。図7は、本発明の好ましい実施の形態に係るタッチパネル上のシングルタッチの平面図である。電極の幅は接触領域134の半分であり、シングルタッチの接触領域134は、接触領域134を通過する2つの第1軸電極、2つの第2軸電極に影響を及ぼす。接触領域内に位置する異なる座標を有する4つの交点が存在し、4つの交点の座標に応じて重心を算出することができる。接触に関連する第1軸電極のx座標をXi、Xi+1(1≦i≦M−1)とし、接触された第1軸電極の電圧差を夫々Ui、Ui+1(1≦i≦M−1)とし、接触に関連する第2軸電極のy座標をYj、Yj+1(1≦j≦N−1)とし、接触された第2軸電極の電圧差を夫々Uj、Uj+1(1≦j≦N−1)とする。重心のx座標は、X=(Xi×Ui+Xi+1×Ui+1)/(Ui+Ui+1)となり、重心のy座標は、Y=(Yj×Uj+Yj+1×Uj+1)/(Uj+Uj+1)となる。そして、タッチポイントの位置が重心(X、Y)によって決定される。他の実施の形態において、シングルタッチは、2つのより多い第1軸電極又は2つより多い第2軸電極上に含まれ、重心の算出方法は上述の方法と同様である。
【0015】
より複雑な状況では、1より多い接触領域が存在する。1の接触領域より多い接触は、実際にはタッチされておらず、単に理論的な算出結果であるゴースト領域の形成につながる。ゴースト領域が除かれていない場合、これらはこれに続く処理において実際の接触領域とみなされ、最終的に偽の位置となる。図8は、本発明の好ましい実施の形態に係るタッチパネルのダブルタッチ(double touch)を示す図である。接触に関連する第1軸電極と第2軸電極は、(図9に示される)135a、135b、135c、135dの4つの領域にグループ化された交点を形成する。領域135a、135bは接触領域であり、領域135c、135dはゴースト領域である(図10に示される)。ゴースト領域は、第1軸電極と第2軸電極の自己容量の変化を決定することによってのみでは見分けられないので、ステップBに従って、接触領域135a、135bを決定するために領域135a、135b、135c、135dの交点の相互容量がさらに検出される。そして、タッチポイントは、接触領域の重心を算出することによって容易に決定される。
【0016】
上述の実施の形態によれば、走査期間において接触領域を得るため、従来のM×N回と比較して、M+N+(p1×p2)回の走査が必要である。ここで、M、Nは夫々第1軸電極と第2軸電極の数であり、p1、p2は接触に関連する第1軸電極、第2軸電極の数である。M、Nが2よりも非常に大きく、p1、p2が非常に小さい場合、M×NはM+NL(p1+p2)よりも非常に大きい。2つの第1軸電極と2つの第2軸電極が含まれる接触の場合において、M、Nがいずれも4よりも大きい場合、M×NはM+N+2×2よりも大きい。さらに、接触が10の第1軸電極と10の第2軸電極を含む場合(この数は、一般にマルチタッチシステムがサポートしうる最大数である)、M、Nは大抵のタッチパネルアプリケーションにおいて、いずれも11よりも非常に大きく、M×Nは、M+N+10×10よりも非常に大きい。
【0017】
170の第1軸電極と100の第2軸電極を有する42インチのタッチスクリーンを例にとると、演算が以下に詳細に説明される。図6を参照すると、シングルタッチの場合、1つの第1軸電極と1つの第2軸電極のみがタッチされ、170の第1軸電極、100の第2軸電極の走査により、自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極が即座に得られ、タッチポイントとなる1つの交点133が得られる。
夫々の走査が30μsかかる条件では、走査期間における合計の走査時間は(170+100)×30μs+1×1×30μs=8.13msであり、走査周波数は従来の1.96フレーム/秒よりも非常に大きい123フレーム/秒である。図8を参照すると、ダブルタッチの場合において、夫々の接触が1つの第1軸電極、1つの第2軸電極のみが接触される場合、2つの第1軸電極(131a、131b)、2つの第2軸電極(132a、132b)が検出される。ステップBに従って4つの交点の相互容量が検出される。走査期間における合計の走査時間は、(170+100)×30μs+2×2×30μs=8.22msであり、走査周波数は従来の1.96フレーム/秒よりも非常に大きい121フレーム/秒である。
【0018】
本発明の投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法では、走査時間を大幅に削減することができ、走査周波数を増加させることができ、さらに大型のタッチパネルにおける走査精度もまた保証される。
【0019】
ステップAに従って自己容量が変化した第1軸電極と第2軸電極を得る処理は、以下のような詳細なステップを含む。夫々の第1軸電極、第2軸電極の現在の自己容量をプリセットされた参照自己容量と比較する。現在の自己容量がプリセットされた条件を満たす第1軸電極、第2軸電極を得る。
【0020】
電極(第1軸電極又は第2軸電極)をプリセットされた容量まで充電し、参照容量を当該参照容量を充電するために電極に接続することによって、電極は放電され、その電圧が減少する。電圧がプリセットされた電圧値まで減少する時間が測定され、電極の自己容量を示すのに用いられる。
【0021】
図4は、本発明の第1軸に沿った第1軸電極の自己容量の走査を説明する。制御装置14は、第1軸(x軸)に沿って配置された夫々の第1軸電極を充電し、その後、夫々の第1軸電極を、夫々の第1軸電極に夫々接続された参照容量に放電する。第1軸電極の放電処理が完了したとき、第1軸電極の現在の自己容量を算出することができる。図5は、本発明の第2軸に沿った第2軸電極の自己容量の走査を説明する。第2軸電極の現在の自己容量は、同様の方法で得ることができる。
【0022】
夫々の第1軸電極、第2軸電極のプリセットされた参照自己容量の設定には2つの方法がある。1つ目の方法は、制御装置14に実験値を直接書き込む方法である。2つ目の方法は、繰り返しの第1軸電極又は第2軸電極の初期化走査から得られる複数の初期の自己容量の平均値を得るものである。夫々の電極は、プリセットされた参照自己容量を有しているため、M+Nの参照自己容量が存在する。
【0023】
初期化走査は、以下を含む。第1軸電極又は第2軸電極を充電し、第1軸電極又は第2軸電極に接続された参照容量を放電し、放電処理が完了したときの放電時間に応じて第1軸電極又は第2軸電極の初期の自己容量を得る。
【0024】
相互容量が変化したかを決定する処理は以下を含む。夫々の交点の現在の相互容量を当該交点におけるプリセットされた参照相互容量と比較し、プリセットされた条件を満たす現在の相互容量を得る。
【0025】
交点における参照相互容量を設定する2つの方法が存在する。1つ目の方法は、制御装置14に実験値を直接書き込む方法である。2つ目の方法は、繰り返しの交点の初期化走査から得られる複数の初期の相互容量の平均値を得るものである。夫々の交点に参照相互容量が存在するため、全体としてM×Nのプリセットされた参照相互容量が存在する。

【0026】
初期化走査は、以下を含む。夫々の第2軸電極を充電する。第1軸電極に誘導される電荷を収集する。電荷を電圧値に変換する。それにより、夫々の交点における初期の相互容量を得る。他の実施の形態では、第1軸電極がまず充電される。
【0027】
自己容量又は相互容量は、タッチによってのみ引き起こされるものではなく、例えば、電極の不十分な充電等、多くの状況で変化する。実際の接触又は他の事象によって引き起こされる容量変化を識別するために、現在の自己容量又は現在の相互容量の変化がプリセットされた条件を満たさなくてはならない。一般的に、プリセットされた条件は、プリセット閾値により規定される。自己容量を検出するために、自己容量とプリセットされた参照自己容量の差は、対応するプリセット閾値よりも大きくなければならない。この条件が満たされたとき、電極への接触を確認することができる。同様に、相互容量変化を検出するために、交点における現在の相互容量と参照相互容量の差が、他の対応するプリセット閾値よりも大きくなければならない。この条件が満たされたとき、交点への接触を確認することができる。
【0028】
記憶容量も同様に提供される。記憶容量は、一連の命令を記憶するのに用いられる。一連の命令は、投影型静電容量式タッチパネルを走査する方法を実行する処理装置によって実行されうる。その方法は、以下からなる。
A.第1軸に沿って配置された夫々の第1軸電極、第2軸に沿って配置された夫々の第2軸電極を走査し、自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極を取得する。
B.自己容量が変化した第1軸電極、第2軸電極間の夫々の交点の相互容量を検出し、相互容量が変化したかを判定し、相互容量が変化した領域を接触領域とする。
【0029】
投影型静電容量式タッチパネルを走査するシステムもまた提供される。このシステムは、走査モジュール、制御モジュールを含む。走査モジュールは、第1軸電極、第2軸電極の自己容量を検出するのに用いられる。制御モジュールは、自己容量が変化したかを判定し、第1軸電極と第2軸電極の自己容量が変化したときに、第1軸電極と第2軸電極間の交点における相互容量を検出し、相互容量が変化した交点によって規定される接触領域を決定するために、走査モジュールを制御するのに用いられる。
【0030】
本発明は、構造的特徴及び/又は方法的動作に特有の言語で説明されたが、添付の特許請求の範囲で規定される発明が説明した特定の特徴又は動作に限定されるわけではないことが理解される。正確に言うと、特定の特徴及び動作は、クレームされた発明を実現する実施例の形態として開示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10