特許第5740422号(P5740422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740422インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740422
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20150604BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   B41J2/015 101
   B41J2/14 611
   B41J2/14 607
   B41J2/14 303
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-44463(P2013-44463)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-172213(P2014-172213A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】乗越 隆
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−120367(JP,A)
【文献】 特開2011−037193(JP,A)
【文献】 特開2000−015802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するとともにノズルが開口する複数の駆動流路と、複数のダミー流路と、が交互に配置された圧電部材と、
前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の第1の側面と、前記ダミー流路の第1の側面と、をそれぞれ形成した複数の第1の側壁と、
前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の前記第1の側面に対向した前記駆動流路の第2の側面と、前記ダミー流路の前記第1の側面に対向した前記ダミー流路の第2の側面と、をそれぞれ形成した複数の第2の側壁と、
前記複数の駆動流路の前記第1および第2の側面に形成された複数の第1の電極と、
前記複数のダミー流路の第1の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第1の側壁を変形させる、複数の第2の電極と、
前記第2の電極から分離して前記複数のダミー流路の第2の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第2の側壁を変形させる、複数の第3の電極と、
前記駆動流路のインクが振動するように前記第1の側壁を変形させるプリカーサ信号を前記複数の第2の電極に印加し、前記駆動流路のインクが前記ノズルから吐出するように前記第2の側壁を変形させる駆動信号を前記複数の第3の電極に発する信号発生部と、
前記複数の第3の電極と前記信号発生部との間を電気的に接続または切断する複数のスイッチと、
インクを吐出させる前記駆動流路に対応する前記スイッチをオンにする制御部と、
を具備し、
前記駆動信号は、前記駆動流路の容積が拡張するように前記第2の側壁を変形させる駆動拡張パルスと、前記駆動拡張パルスの後に発せられ、前記駆動流路の容積が収縮するように前記第2の側壁を変形させる駆動収縮パルスと、を有し、
前記駆動拡張パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期の半分であり、
前記駆動収縮パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期と等しい、
ことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記ダミー流路が空気を収容することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記プリカーサ信号は、前記駆動流路の容積が収縮するように前記第1の側壁を変形させるとともに、前記駆動収縮パルスと同時に前記信号発生部から発せられるプリカーサ収縮パルスを有し、
前記プリカーサ収縮パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期と等しい、
ことを特徴とする請求項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
インクを収容するとともにノズルが開口する複数の駆動流路と、複数のダミー流路と、が交互に配置された圧電部材と、
前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の第1の側面と、前記ダミー流路の第1の側面と、をそれぞれ形成した複数の第1の側壁と、
前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の前記第1の側面に対向した前記駆動流路の第2の側面と、前記ダミー流路の前記第1の側面に対向した前記ダミー流路の第2の側面と、をそれぞれ形成した複数の第2の側壁と、
前記複数の駆動流路の前記第1および第2の側面に形成された複数の第1の電極と、
前記複数のダミー流路の第1の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第1の側壁を変形させる、複数の第2の電極と、
前記第2の電極から分離して前記複数のダミー流路の第2の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第2の側壁を変形させる、複数の第3の電極と、
前記駆動流路のインクが振動するように前記第1の側壁を変形させるプリカーサ信号を前記複数の第2の電極に印加し、前記駆動流路のインクが前記ノズルから吐出するように前記第2の側壁を変形させる駆動信号を前記複数の第3の電極に発する信号発生部と、
前記複数の第3の電極と前記信号発生部との間を電気的に接続または切断する複数のスイッチと、
インクを吐出させる前記駆動流路に対応する前記スイッチをオンにする制御部と、
を具備し、
前記駆動信号は、前記駆動流路の容積が拡張するように前記第2の側壁を変形させる駆動拡張パルスと、前記駆動拡張パルスの後に発せられ、前記駆動流路の容積が収縮するように前記第2の側壁を変形させる駆動収縮パルスと、を有し、
前記駆動拡張パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期の半分であり、
前記駆動収縮パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期と等しい、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのようなインクジェット記録装置は、インクを吐出するインクジェットヘッドを備える。例えばシェアモード型のインクジェットヘッドは、インクを加圧して吐出させる圧電部材を有する。
【0003】
圧電部材は、例えば、インクを収容する圧力室と、当該圧力室の内面を覆う電極とを有する。電極に電圧が印加されると、電位差によって圧電部材がシェアモード変形し、圧力室に充填されたインクを加圧する。圧力室にはノズルが開口しており、当該ノズルから加圧されたインクが吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−131940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドによっては、圧力室内の電極がインクに直接接触する。このようなインクジェットヘッドが水性のインクを利用する場合、電極に電圧が印加されると、電気分解が生じることがある。当該電気分解によって、インクに気泡が発生したり、電極がインクに溶け出したりする可能性がある。電気分解を防止するために電極を絶縁膜で覆った場合、インクジェットヘッドの製造コストが高くなる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水性インクを用いることができるインクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施の形態に係るインクジェットヘッドは、圧電部材と、複数の第1の側壁と、複数の第2の側壁と、複数の第1の電極と、複数の第2の電極と、複数の第3の電極と、信号発生部と、複数のスイッチと、制御部と、を備える。前記圧電部材に、インクを収容するとともにノズルが開口する複数の駆動流路と、複数のダミー流路と、が交互に配置される。前記複数の第1の側壁は、前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の第1の側面と、前記ダミー流路の第1の側面と、をそれぞれ形成する。前記複数の第2の側壁は、前記駆動流路と前記ダミー流路との間にあって、前記駆動流路の前記第1の側面に対向した前記駆動流路の第2の側面と、前記ダミー流路の前記第1の側面に対向した前記ダミー流路の第2の側面と、をそれぞれ形成する。前記複数の第1の電極は、前記複数の駆動流路の前記第1および第2の側面に形成される。前記複数の第2の電極は、前記複数のダミー流路の第1の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第1の側壁を変形させる。前記複数の第3の電極は、前記第2の電極から分離して前記複数のダミー流路の第2の側面に形成され、電圧が印加されると前記駆動流路の容積を変化させるように前記第2の側壁を変形させる。信号発生部は、前記駆動流路のインクが振動するように前記第1の側壁を変形させるプリカーサ信号を前記複数の第2の電極に印加し、前記駆動流路のインクが前記ノズルから吐出するように前記第2の側壁を変形させる駆動信号を前記複数の第3の電極に発する。複数のスイッチは、前記複数の第3の電極と前記信号発生部との間を電気的に接続または切断する。制御部は、インクを吐出させる前記駆動流路に対応する前記スイッチをオンにする。前記駆動信号は、前記駆動流路の容積が拡張するように前記第2の側壁を変形させる駆動拡張パルスと、前記駆動拡張パルスの後に発せられ、前記駆動流路の容積が収縮するように前記第2の側壁を変形させる駆動収縮パルスと、を有する。前記駆動拡張パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期の半分であり、前記駆動収縮パルスのパルス幅は、前記駆動流路のインクの固有振動周期と等しい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一つの実施の形態に係るインクジェット記録装置を示す斜視図。
図2図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッドを示す断面図。
図3図2のF3−F3線に沿ってインクジェットヘッドを示す断面図。
図4図2のF4−F4線に沿ってインクジェットヘッドを示す断面図。
図5】信号発生部が発するプリカーサ信号および駆動信号を示すグラフ。
図6】第2の電極にプリカーサ収縮パルスが印加されたインクジェットヘッドを示す断面図。
図7】第3の電極に駆動拡張パルスが印加されたインクジェットヘッドを示す断面図。
図8】第3の電極に駆動収縮パルスが印加されたインクジェットヘッドを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一つの実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。なお、複数の表現が可能な各要素に、一つ以上の他の表現の例を付すことがある。しかし、これは、他の表現が付されていない要素について異なる表現がされることを否定するものではないし、例示されていない他の表現がされることを制限するものでもない。また、各図面は実施形態を概略的に示すものであり、図面に示される各要素の寸法は、実施形態の説明と異なることがある。
【0010】
図1は、一つの実施の形態に係るインクジェット記録装置1の一部を示す斜視図である。インクジェット記録装置1は、例えばインクジェットプリンタである。インクジェット記録装置1はこれに限らず、例えば複写機のような種々の装置であっても良い。
【0011】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、インクタンク3と、制御部4とを備える。インクジェット記録装置1はさらに、例えば、筐体、用紙を供給するフィーダ、および前記用紙を収容する用紙トレイのような他の部材を備える。
【0012】
インクジェットヘッド2は、いわゆるエンドシュータ型のシェアモード型インクジェットヘッドである。なお、インクジェットヘッド2はこれに限らない。インクジェットヘッド2は、前記筐体内に位置し、前記フィーダによって供給された記録用紙のようなメディアに、例えば文字や図形を印刷する。
【0013】
インクジェットヘッド2は、基部10と、圧電部材11と、トッププレート12と、天板13と、ノズルプレート14とを有する。インクジェットヘッド2はさらに、例えば、カバー、インクタンク3に接続されるチューブ、およびインクジェット記録装置1内でインクジェットヘッド2を移動させるキャリッジのような他の部材を有する。
【0014】
基部10は、矩形の板材である。基部10の端部に、取付部21が設けられる。取付部21は、基材10の上面10aおよび前面10bに開放された切欠きである。上面10aと前面10bとは、互いに直交する平坦な面である。
【0015】
圧電部材11は、基部10よりも小さい矩形の板材である。圧電部材11は、例えば、貼り合わされた板状の二つの圧電体である。当該圧電体は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成される。前記二つの圧電体の分極方向は、その厚さ方向に互いに逆向きとなっている。
【0016】
基部10と圧電部材11とは、複数の駆動流路(圧力室)23と、複数のダミー流路24とを有する。駆動流路23およびダミー流路24は、基部10から圧電部材11に亘って設けられる溝である。駆動流路23とダミー流路24とは、同一の形状を有し、その断面形状は、例えば長方形である。なお、駆動流路23とダミー流路24とが異なる形状を有しても良い。駆動流路23およびダミー流路24は、例えばダイサーにより形成される。
【0017】
駆動流路23およびダミー流路24は、基部10および圧電部材11の上面10a,11aと、圧電部材11の前面11bと、に開放される。なお、基部10の上面10aと圧電部材11の上面11aとは、同一平面を形成する。同様に、基部10の前面10bと圧電部材11の前面11bとは、同一平面を形成する。
【0018】
駆動流路23とダミー流路24とは、交互に配置され、圧電部材11の前面11bに沿って並ぶ。圧電部材11は、これら複数の駆動流路23と複数のダミー流路24とによって形成された、複数の第1の側壁27と、複数の第2の側壁28とを有する。
【0019】
図2は、図1のF2−F2線に沿ってインクジェットヘッド2の一部を示す断面図である。図2に示すように、第1の側壁27は、駆動流路23とダミー流路24との間に位置する。第1の側壁27は、駆動流路23の第1の側面23aと、ダミー流路24の第1の側面24aとをそれぞれ形成する。駆動流路23の第1の側面23aは、第1の側壁27において、ダミー流路24の第1の側面24aの反対側に位置する。
【0020】
第2の側壁28は、駆動流路23とダミー流路24との間に位置する。第1の側壁27と第2の側壁28とは、交互に配置され、圧電部材11の前面11bに沿って並ぶ。このため、第1の側壁27と第2の側壁28とは対向する。
【0021】
第2の側壁28は、駆動流路23の第2の側面23bと、ダミー流路24の第2の側面24bとをそれぞれ形成する。駆動流路23の第2の側面23bは、第1の側面23aに対向する。さらに、駆動流路23の第2の側面23bは、第2の側壁27において、ダミー流路24の第2の側面24bの反対側に位置する。ダミー流路24の第2の側面24bは、第1の側面24aに対向する。
【0022】
複数の第1の電極31が、複数の駆動流路23の内面を覆う。すなわち、第1の電極31は、駆動流路23の第1および第2の側面23a,23bに形成される。駆動流路23の第1の側面23aに形成される第1の電極31と、第2の側面23bに形成される第1の電極31とは、駆動流路23の底面を通って連続する。第1の電極31は、例えばニッケルメッキによって形成される。
【0023】
複数の第2の電極32が、複数のダミー流路24の第1の側面24aに形成される。一方、複数の第3の電極33が、複数のダミー流路24の第2の側面24bに形成される。第3の電極33は、第2の電極32から分離する。言い換えると、第2の電極32と第3の電極33とは、互いに電気的に切り離される。第2および第3の電極32,33は、例えばニッケルメッキによって形成される。上記の第2および第3の電極32,33は、例えば、ダミー流路24の内面を覆うニッケルメッキの底部を、レーザによって分割することで形成される。
【0024】
図1に示すように、複数の配線34が、基部10の上面10aに設けられる。複数の配線34は、例えばニッケルメッキによって形成され、対応する第1ないし第3の電極31,32,33にそれぞれ電気的に接続する。複数の配線34は、第1の電極31、第2の電極32、および第3の電極33から基部10の後端に向かって延びる。
【0025】
図3は、図2のF3−F3線に沿ってインクジェットヘッド2を示す断面図である。図4は、図2のF4−F4線に沿ってインクジェットヘッド2を示す断面図である。図3および図4に示すように、トッププレート12は、基部10および圧電部材11の上面10a,11aに取り付けられる。トッププレート12は、複数の開口部35を有する。開口部35は、複数の駆動流路23に対応するように位置する。トッププレート12は、開口部35によって駆動流路23を開放する一方で、ダミー流路24を塞ぐ。
【0026】
天板13は、トッププレート12に取り付けられる。これにより、トッププレート12は、基部10および圧電部材11と、天板13との間に位置する。天板13は、共通液室37を有する。共通液室37は、トッププレート12に向かって開口する溝である。
【0027】
共通液室37は、トッププレート12の複数の開口部35を介して、複数の駆動流路23につながる。トッププレート12は、複数のダミー流路24を、共通液室37から隔離する。
【0028】
天板13は、接続口38をさらに有する。図3に破線で示すように、接続口38は、共通液室37に開口する。接続口38は、前記チューブを介してインクタンク3に接続される。これにより、インクタンク3に収容されたインクが、接続口38を通って共通液室37に供給される。
【0029】
ノズルプレート14は、基部10および圧電部材11の前面10b,11bに取り付けられる。ノズルプレート14は、複数のノズル41を有する。ノズル41は、オリフィスとも称され、インク滴を吐出するための孔である。なお、ノズル41は、図2において二点鎖線で示される。
【0030】
複数のノズル41は、駆動流路23に対応して位置する。ノズル41は、駆動流路23にそれぞれ開口する。このため、駆動流路23はノズル41を通じてインクジェットヘッド2の外部に通じる。一方、ダミー流路24はノズルプレート14によって塞がれる。言い換えると、ノズル41は、一つ置きに、圧電部材11に設けられた溝(駆動流路23およびダミー流路24)に開口する。
【0031】
インクタンク3から共通液室37に供給されたインクは、トッププレート12の複数の開口部35を通って、複数の駆動流路23に流入する。すなわち、駆動流路23はインクを収容する。インクは駆動流路23を満たすとともに、ノズル41にメニスカスを形成する。インクジェット記録装置1は、当該メニスカスがノズル41に留まるよう、駆動流路23のインクの圧力を制御する。
【0032】
ダミー流路24は、トッププレート12およびノズルプレート14によって塞がれる。トッププレート12がダミー流路24を共通液室37から隔離することで、ダミー流路24は、インクが供給されず、空気を収容する。すなわち、ダミー流路24は、いわゆる空気室である。なお、ダミー流路24は、空気の代わりに他の気体または液体を収容しても良く、またはインクを収容しても良い。
【0033】
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、駆動回路43をさらに有する。駆動回路43は、複数の配線34に接続する。駆動回路43は、例えば、フレキシブルプリント回路板(FPC)、プリント回路板(PCB)、信号発生部44(図2に示す)、および複数のスイッチ45(図2に示す)のような、種々の部品を有する。信号発生部44は、例えば駆動ICである。なお、駆動回路43はこれに限らず、例えばTAB(Tape Automated Bonding)であっても良い。スイッチ45は、例えばスイッチング素子である。
【0034】
前記FPCは、例えば異方性導電性フィルム(ACF)によって、配線34に熱圧着接続される。これにより、駆動回路43が、複数の配線34を介して、第1ないし第3の電極31,32,33に電気的に接続する。
【0035】
図2は、インクジェットヘッド2の断面図に加え、駆動回路43の回路について概略的に示す。図2に示すように、駆動回路43の信号発生部44は、インクジェット記録装置1の制御部4に接続する。制御部4は、インクジェット記録装置1を制御する部分であり、例えば、演算装置やメモリを含む。制御部4は、例えばユーザの操作に基づき、信号発生部44にインクジェットヘッド2の制御をさせる。
【0036】
駆動回路43は、第1の共通配線46と、第2の共通配線47と、第3の共通配線48とを有する。第1の共通配線46は、複数の配線34を介して、複数の第1の電極31にそれぞれ接続する。第2の共通配線47は、複数の配線34を介して、複数の第2の電極32に接続する。第3の共通配線48は、複数の配線34を介して、複数の第3の電極33に接続する。
【0037】
第1の共通配線46は、グラウンドGNDに接続され、接地される。このため、複数の第1の電極31は、第1の共通配線46を介してそれぞれ接地される。第1の電極31における電位は常にグラウンド電位である。なお、第1の電極31はグラウンド電位に限らず、他の電位に保たれても良い。
【0038】
第2の共通配線47は、端子47aを有する。端子47aは、信号発生部44に接続する。このため、複数の第2の電極32は、第2の共通配線47を介して、信号発生部44に接続する。
【0039】
第3の共通配線48は、端子48aを有する。端子48aは、信号発生部44に接続する。このため、複数の第3の電極33は、第3の共通配線48を介して、信号発生部44に接続する。
【0040】
複数のスイッチ45は、複数の第3の電極33と第3の共通配線48との間にそれぞれ介在する。スイッチ45は、オンにされることで、対応する第3の電極33と第3の共通配線48との間を電気的に接続する。スイッチ45は、オフにされることで、対応する第3の電極33と第3の共通配線48との間を電気的に切断する。言い換えると、スイッチ45は、複数の第3の電極33と信号発生部44との間を電気的に接続または切断する。
【0041】
図5は、信号発生部44が発するプリカーサ信号S1と駆動信号S2とを概略的に示すグラフである。図5はさらに、プリカーサ信号S1と駆動信号S2によって駆動流路23のインクに生じる圧力変化を、破線によって概略的に示す。なお、駆動流路23のインクの圧力は、プリカーサ信号S1および駆動信号S2のみならず、減衰やインク滴の吐出などによっても変動し得る。
【0042】
図5において、縦軸が電圧、横軸が時間を示す。信号発生部44は、駆動信号S2を発することで駆動流路23の容積を変化させるとともに、プリカーサ信号S1を発することで、駆動流路23のインクを微振動させることによって、駆動流路23のインクの一部を、インク滴としてノズル41から吐出させる。
【0043】
まず、プリカーサ信号S1について説明する。信号発生部44は、第2の共通配線47を介して、第2の電極32にプリカーサ信号S1を印加する。信号発生部44は、インクジェット記録装置1が、待機中または印刷中であるにかかわらず、一定の間隔でプリカーサ信号S1を発する。なお、信号発生部44は、プリカーサ信号S1の出力を止めても良い。
【0044】
プリカーサ信号S1は、プリカーサ収縮パルスP1を有する。プリカーサ収縮パルスP1は、電圧+Vaと、パルス幅(通電時間)T2と、を有する矩形パルスである。プリカーサ収縮パルスP1のパルス幅T2は、駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期に等しい。
【0045】
図5は、複数の時点(1)ないし(4)を一点鎖線で示す。当該(1)ないし(4)の時点に沿って、プリカーサ信号S1を印加されたインクジェットヘッド2の動作について説明する。信号発生部44がプリカーサ収縮パルスP1を発する前の(1)から(2)の間、図2に示すように、第1および第2の側壁27,28は変形していない状態にある。
【0046】
図6は、第2の電極32にプリカーサ収縮パルスP1が印加されたインクジェットヘッド2を示す断面図である。(2)の時点が過ぎてプリカーサ収縮パルスP1が第2の電極32に印加されると、第1の側壁27が変形する。言い換えると、プリカーサ収縮パルスP1が第1の側壁27を変形させる。
【0047】
詳しく述べると、第2の電極32にプリカーサ収縮パルスP1が印加されることで、第2の電極32と、接地された第1の電極31との間に電位差が生じる。当該電位差によって、第1の側壁27に、分極方向と直角の方向に電界がかかる。これにより、図6の矢印に示すように、第1の側壁27を形成する圧電体がせん断変形する。
【0048】
第2の電極32に+Va、すなわち正の電圧が印加されることで、第1の側壁27は、駆動流路23の容積が収縮するように変形する。言い換えると、第2の電極32に電圧が印加されると、駆動流路23の容積を変化させるように第1の側壁27が変形する。これにより、図5の破線で示すように、駆動流路23に収容されたインクに正の圧力がかかる。インクに正の圧力がかかることで、ノズル41に生じたメニスカスが振動または移動する。しかし、インクはノズル41から吐出されず、ノズル41内に留まる。このように、プリカーサ信号S1は、駆動流路23のインクが振動するように、第1の側壁27を変形させる。
【0049】
(3)の時点が過ぎてプリカーサ収縮パルスP1の印加が終わると、第1の側壁27が元の形状に戻る。これにより、駆動流路23の容積が戻り、駆動流路23のインクに負の圧力がかかる。
【0050】
パルス幅T2が駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期に等しいため、第1の側壁27が元の形状に戻る際、駆動流路23のインクには正の圧力がかかっている。この時点で上記のように、第1の側壁27が元の形状に戻り、駆動流路23のインクに負の圧力がかかる。このため、駆動流路23のインクに生じている圧力振動と、第1の側壁27が戻ることによる発生する圧力振動とが打ち消し合い、駆動流路23のインクの圧力が通常の値に戻る。
【0051】
次に、駆動信号S2について説明する。信号発生部44は、第3の共通配線48を介して、第3の電極33に向かって駆動信号S2を発する。信号発生部44は、インクジェット記録装置1が印刷動作を行っている間、一定の間隔で駆動信号S2を発する。なお、信号発生部44は、駆動信号S2の出力を一時的に止めても良い。
【0052】
図5に示すように、駆動信号S2は、駆動拡張パルスP2と、駆動収縮パルスP3を有する。駆動拡張パルスP2は、電圧−Vb1と、パルス幅T1を有する矩形パルスである。駆動収縮パルスP3は、電圧+Vb2と、パルス幅T2と、を有する矩形パルスである。駆動拡張パルスP2のパルス幅T1は、駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期の半分である。駆動収縮パルスP3のパルス幅T2は、プリカーサ収縮パルスP1のパルス幅T2、すなわち駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期と等しい。
【0053】
信号発生部44が駆動拡張パルスP2を発する前である(1)までの間、図2に示すように、第1および第2の側壁27,28は変形していない状態にある。
【0054】
図7は、第3の電極33に駆動拡張パルスP2が印加されたインクジェットヘッド2を示す断面図である。図8は、第3の電極33に駆動収縮パルスP3が印加されたインクジェットヘッド2を示す断面図である。
【0055】
図7に示すように、制御部4は、インク滴を吐出させる駆動流路23に対応するスイッチ45を予め設定されたタイミングでオンにする。図7においては、一番左のスイッチ45がオンになる。これにより、信号発生部44は、当該オンにされたスイッチ45に接続された第3の電極33に、電気的に接続される。
【0056】
(1)の時点が過ぎると、信号発生部44は、駆動拡張パルスP2を発する。駆動拡張パルスP2は、オンにされたスイッチ45に接続された第3の電極33に、印加される。言い換えると、インクジェット記録装置1は、駆動信号S2を複数の第3の電極33に選択的に印加する。当該第3の電極33に駆動拡張パルスP2が印加されると、第2の側壁28が変形する。言い換えると、駆動拡張パルスP2が第2の側壁28を変形させる。
【0057】
詳しく述べると、第3の電極33に駆動拡張パルスP2が印加されることで、第3の電極33と、接地された第1の電極31との間に電位差が生じる。当該電位差によって、第2の側壁28に、分極方向と直角の方向に電界がかかる。これにより、図7の矢印に示すように、第2の側壁28を形成する圧電体がせん断変形する。
【0058】
第3の電極33に−Vb1、すなわち負の電圧が印加されることで、第2の側壁28は、駆動流路23の容積が拡張するように変形する。言い換えると、第3の電極33に電圧が印加されると、駆動流路23の容積を変化させるように第2の側壁28が変形する。これにより、図5の破線で示すように、駆動流路23に収容されたインクに負の圧力がかかる。インクに負の圧力がかかることで、ノズル41のインクメニスカスが後退するとともに、共通液室37から駆動流路23にインクが流入する。
【0059】
パルス幅T1が駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期の半分であるため、パルス幅T1が経過した際、駆動流路23のインクには正の圧力がかかっている。この時点で、信号発生部44が駆動収縮パルスP3を発する。すなわち、駆動収縮パルスP3は、駆動拡張パルスP2の後に発せられる。駆動収縮パルスP3は、オンにされたスイッチ45に接続された第3の電極33に、印加される。
【0060】
図8に示すように、駆動収縮パルスP3が第3の電極33に印加されると、当該第3の電極33が設けられた第2の側壁28が変形する。言い換えると、駆動収縮パルスP3が第2の側壁28を変形させる。
【0061】
詳しく述べると、第3の電極33に駆動収縮パルスP3が印加されることで、第3の電極33と、接地された第1の電極31との間に電位差が生じる。当該電位差によって、第2の側壁28に、分極方向と直角の方向に電界がかかる。これにより、図8の矢印に示すように、第2の側壁28を形成する圧電体がせん断変形する。
【0062】
第3の電極33に+Vb2、すなわち正の電圧が印加されることで、第2の側壁28は、駆動流路23の容積が収縮するように変形する。これにより、図5の破線で示すように、駆動流路23に収容されたインクに正の圧力がかかる。上述のように、駆動収縮パルスP3が印加される時点で、駆動流路23のインクには正の圧力がかかっている。このため、インクにさらに正の圧力がかかり、当該インクにかかる圧力が大きく上昇する。
【0063】
駆動収縮パルスP3と同時に、信号発生部44から、プリカーサ収縮パルスP1が発せられる。このため、図8に示すように、第2の側壁28が変形すると同時に、第1の側壁27は、駆動流路23の容積が収縮するように変形する。このため、第1および第2の側壁27,28によって駆動流路23のインクが加圧され、インクメニスカスが急速に前進し、ノズル41からインク滴が吐出する。このように、駆動信号S2は、駆動流路23のインク滴がノズル41から吐出するように、第2の側壁28を変形させる。加圧されたインクの一部は、開口部35を通って共通液室37に排出される。また、インク滴の吐出がされると、ノズル41の毛管力により、インクが再度ノズル41に供給される。
【0064】
(3)の時点が過ぎて駆動収縮パルスP3の印加が終わると、第2の側壁28が元の形状に戻る。これにより、駆動流路23の容積が戻り、駆動流路23のインクに負の圧力がかかる。
【0065】
パルス幅T2が駆動流路23に収容されるインクの固有振動周期に等しいため、第2の側壁28が元の形状に戻る際、駆動流路23のインクには正の圧力がかかっている。この時点で上記のように、第2の側壁28が元の形状に戻り、駆動流路23のインクに負の圧力がかかる。このため、駆動流路23のインクに生じている圧力振動と、第2の側壁28が戻ることによる発生する圧力振動とが打消し合い、駆動流路23のインクの圧力が通常の値に戻る。
【0066】
上述の実施形態のインクジェット記録装置1によれば、ダミー流路24に形成された第2および第3の電極32,33に電圧を印加することで、駆動流路23の容積が変化する。これにより、駆動流路23に収容されるインクが振動したり、ノズル41からインク滴として吐出されたりする。インクが収容される駆動流路23に設けられた第1の電極31には電界がかからない。このため、インクジェットヘッド2が水性インクを利用したとしても、電気分解によって駆動流路23のインクに気泡が生じて吐出不良を生じたり、第1の電極31が溶解して耐久品質が低下したりすることを防止できる。したがって、インクジェットヘッド2は水性インクを用いることができる。また、第1の電極31を、例えば絶縁膜で保護する必要が無くなり、インクジェットヘッド2の製造コストの増加を抑制できる。
【0067】
加えて、駆動流路23とダミー流路24とを交互に配置することにより、駆動流路23に隣接する流路からインク滴が吐出されるおそれがなくなり、印字スピード(駆動周波数)を早めることができる。
【0068】
ダミー流路24がインクを収容せず空気を収容するため、ダミー流路24から駆動流路23に圧力が伝搬する、いわゆるクロストークが発生することを抑制できる。さらに、第2および第3の電極32,33に電圧が印加されたときに、ダミー流路24で電気分解が生じることを防止できる。
【0069】
信号発生部44は、複数の第2および第3の電極32,33に向かって、一律にプリカーサ信号S1および駆動信号S2を発する。このため、第2および第3の電極32,33に個別にプリカーサ信号S1および駆動信号S2を印加する必要がなく、信号発生部44の発熱および電力消費を抑制できる。
【0070】
プリカーサ信号S1によって、駆動流路23のインクが振動するように第1の側壁が変形する。これにより、インクが撹拌され、ノズル41におけるインクのメニスカスが乾燥して増粘することを抑制できる。また、インク粒子の凝集や沈降も抑制される。
【0071】
制御部4がスイッチ45を個別にオン/オフすることで、インク滴を吐出する駆動流路23に対応する第2の側壁28のみが変形する。したがって、信号発生部44の発熱等を抑制しながら、複数のノズル41から選択的にインク滴を吐出する個別制御を行うことができる。
【0072】
駆動拡張パルスP2のパルス幅T1が駆動流路23のインクの固有振動周期の半分である。このため、駆動拡張パルスP2の入力が終了する時点での駆動流路23のインクには正の圧力が生じている。これにより、駆動拡張パルスP2の後に駆動収縮パルスP3が第2の電極32に印加されると、駆動流路23のインクに大きな正の圧力が生じる。したがって、インク滴を効率良く吐出することができる。
【0073】
一方、駆動収縮パルスP3のパルス幅T2が駆動流路23のインクの固有振動周期と等しいため、駆動収縮パルスP3の入力が終了する時点での駆動流路23のインクには正の圧力が生じている。このため、駆動収縮パルスP3の入力が終了して第2の側壁28が急峻に変形したとき、当該変形によって生じる圧力振動が、正の圧力を生じているインクの圧力振動と相殺される。したがって、駆動流路23のインクの圧力が下がる際に、当該インクの圧力が下がり過ぎるなどして駆動流路23のインクに残留振動が発生することを抑制できる。残留振動が抑制されることで、インクジェットヘッド2は、インク滴の安定した吐出を行うことができる。
【0074】
駆動流路23におけるインクの圧力振動は、例えば、インクの種類、温度、および粘度によって減衰し得る。これらの条件に応じて圧力振動の相殺を最適化するため、例えば、電圧−Vb1,+Vb2の値を調節しても良い。または、電圧−Vb1,+Vb2の値を等しくする一方、電圧+Vaの値を調節しても良い。
【0075】
プリカーサ収縮パルスP1は、駆動収縮パルスP3と同時に信号発生部44から発せられる。このため、駆動流路23のインクが第1および第2の側壁27,28の両方から加圧され、インク滴を効率良く吐出することができる。
【0076】
さらに、プリカーサ収縮パルスP1のパルス幅T2が駆動流路23のインクの固有振動周期と等しい。このため、プリカーサ収縮パルスP1の入力が終了する時点での駆動流路23のインクには正の圧力が生じている。これにより、プリカーサ収縮パルスP1の入力が終了して第1の側壁27が急峻に変形したとき、当該変形によって生じる圧力振動が、正の圧力を生じているインクの圧力振動と相殺される。したがって、駆動流路23のインクの圧力が下がる際に、当該インクの圧力が下がり過ぎるなどして駆動流路23のインクに残留振動が発生することを抑制できる。
【0077】
以上述べた少なくとも一つのインクジェット記録装置によれば、ダミー流路に形成された第2および第3の電極に電圧が印加されることで、駆動流路の容積が変化する。これにより、駆動流路に収容されるインクが振動したり、駆動流路に開口するノズルから吐出したりする。インクが収容される駆動流路に設けられた第1の電極には電圧が印加されない。このため、インクジェットヘッドが水性インクを利用したとしても、電気分解によって駆動流路のインクに気泡が生じて吐出不良を生じたり、第1の電極が溶解して耐久品質が低下したりすることを防止できる。したがって、インクジェットヘッドが水性インクを用いることができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記実施形態において、信号発生部44はインクジェットヘッド2の駆動回路43に設けられる。しかし、信号発生部44は、インクジェットヘッド2以外に設けられても良い。例えば、インクジェット記録装置1を制御する制御部4が、信号発生部として機能しても良い。
【符号の説明】
【0080】
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、4…制御部、11…圧電部材、23…駆動流路、23a…第1の側面、23b…第2の側面、24…ダミー流路、24a…第1の側面、24b…第2の側面、27…第1の側壁、28…第2の側壁、31…第1の電極、32…第2の電極、33…第3の電極、41…ノズル、44…信号発生部、45…スイッチ、S1…プリカーサ信号、S2…駆動信号、P1…プリカーサ収縮パルス、P2…駆動拡張パルス、P3…駆動収縮パルス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8