【課題を解決するための手段】
【0014】
本目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載の、MIG/MAG溶接のための溶接パラメータを自動的に設定する方法によって達成される。
【0015】
本発明によれば、MIG/MAG溶接のための溶接パラメータを自動的に設定する方法は、パラメータ設定のための溶接動作を開始するステップで始まる。パラメータ設定のための溶接動作では、データは、連続する溶接作動で引き続き使用するために収集される。パラメータ設定のための溶接動作は、たとえば金属くずの試験片上に実行されてもよい。パラメータ設定のための溶接動作は、不明でもよい線寸法の線で、選択された線速度で実行される。パラメータ設定のための溶接動作中、操作者は、溶接工程を開始し、数秒〜通常1分未満に延長した時間続ける。この時間中、溶接工程の制御電圧は、現在の線材料、ガスおよび線送りの組合せに適合される。制御電圧の適合は、複数の溶接サイクルを介して短絡状態の良好な繰り返しが可能な、制御電圧を提供する安定した溶接状態を選択するために実行される。選択は、制御電圧を変化させ、溶接工程の安定性の測定を記録することによって実行されてもよく、その後良好な安定性の制御電圧が選択される。パラメータ設定用の基準電圧は、操作者によって選択されてもよく、または本発明の実施形態におけるように、パラメータ設定のための溶接動作において自動的に決定されてもよい。適切な制御電圧の自動的な決定は、国際公開第2007/032734号に説明されたような方式で、基準電圧に対する所定の設定値を達成するために、短絡のパーセンテージを制御することによって実行されてもよい。制御電圧が選択される開始安定時間の後、データはパラメータ設定のための溶接動作で収集されてもよい。開始安定時間は、通常数秒間に及ぶ。
【0016】
本発明によれば、現在の線送り速度での応答する溶接電流は、該パラメータ設定のための溶接動作中に検出される。応答する溶接電流は、溶接制御装置から提供されてもよく、溶接制御装置は、溶接電流を検知するためのセンサとともに提供される。応答する溶接電流は、多くの溶接サイクルにわたる平均を形成することによって検出されてもよい。平均は、溶接期間のセグメントの上に形成されてもよく、別法として溶接期間全体を網羅してもよい。セグメントは、基本電流を伴う期間または最大電流の期間で形成されてもよく、別法として基本期間および最大期間の両方の一部で形成されてもよい。本発明の目的のために、検出された電流は、溶接工程の代表であることで十分である。
【0017】
線送り速度は、そこで線送り速度が操作者によって、もしくは適切な線送り速度を決定する制御装置によって設定された溶接制御装置から、または線送り速度を検知するセンサから獲得されてもよい。
【0018】
検知された応答する溶接電流および現在の線送り速度は、データ対として、またはデータ対の組として収集されてもよい。
【0019】
第1の関数Ψは、検出された応答する溶接電流および現在の線送り速度から、第1の関数同定制御ブロック内の溶接制御装置によって同定される。データ対は、溶接電流/線送り速度の空間内の作動点を画定する。データ対の組は、溶接電流/線送り速度の空間内の作動点の組を画定する。異なる寸法の線の間の溶接電流と線送り速度との間の関係を画定する関数は、該第1の関数同定制御ブロックにより、アクセス可能な記憶装置内に記憶されてもよい。溶接電流/線送り速度の空間内の作動点の同定により、または作動点の組の線形回帰により、電流溶接作動を最良に表す関数が選択されてもよい。各関数は、溶接線の材料および厚さに対して、具体的な溶接状況を表す。関数の組は、実験によって決定されて、異なる材料および異なる線の厚さに対する溶接電流と線送り速度との間の関係を説明するデータを収集する。結果は、第1の関数の組として制御装置の記憶装置内に記憶されてもよい。
【0020】
第1の関数の決定は、溶接状況の組に対する溶接電流と線送り速度との間の関係を画定する、ルックアップテーブルを補完することによって、溶接状況の組に対する溶接電流と線送り速度との間の関係を画定する関数を使用することであって、第1の関数は、記憶された関数に対して適切なパラメータ値を選択することによって選択される、使用することによって、または異なる作動状況に対する溶接電流と線送り速度との関係を記憶した組から溶接電流と線送り速度との選択された関係を同定するあらゆる手段によって実行されてもよい。
【0021】
一般に第1の関数Ψは、応答する溶接電流から現在の線送り速度への線形マッピングを形成する。適切には、溶接電流と線送り速度との間の関係は、v=k
*I
pと表されてもよく、より大きいまたはより小さい複合関数であっても企図されてよい。式中で、vは線送り速度であり、Iは溶接電流であり、pは1〜2の数である。この関係は、異なる寸法および異なる材料の溶接線の組のために保持してもよい。具体的な材料および寸法に対する適切な関数は、kおよびpの値によって特徴付けられる。検出された応答する溶接電流および電流線送り速度を使用して、第1のパラメータ値kおよびpは、溶接制御装置内の直接的な作動によって決定されてもよい。
【0022】
さらに所定の線送り速度は、溶接制御装置により、第1の関数および所定の溶接電流から決定されてもよい。これは、第1の関数および所定の溶接電流から線送り速度を決定する、線送り速度制御ブロック内の溶接制御装置によって実行される。所定の線送り速度の決定は、所定の溶接電流を入力データとして取り、第1の関数を画定するルックアップテーブルを補完することによって、第1の関数を画定する関数を使用することによって、または所定の溶接電流をインデータとして使用して、第1の関数を画定するためのあらゆる他の手段によって実行されてもよい。所定の溶接電流は、操作者により選択されてもよく、制御装置により決定されてもよい。
【0023】
選択的に、所定の溶接電流は、以下のように決定されてもよい。操作者は、溶接されるワークピースの実際の厚さを入力データとして、溶接制御装置に設定してもよい。溶接制御装置は、所定の溶接電流のマッピング関数を含み、所定の溶接電流のマッピング関数は、ワークピースの厚さを所定の溶接電流にマッピングする。所定の溶接電流のマッピング関数は、ワークピースの厚さと所定の溶接電流との間の関係を画定するルックアップテーブルの形で、ワークピースの厚さと所定の溶接電流との間の関係を画定する関数を使用することによって、またはワークピースの厚さと所定の溶接電流との間の関係を画定するあらゆる他の手段によって提供されてもよい。ルックアップテーブルおよび/または関数は、従来の方式で溶接データの収集によって生成されてもよい。所定の溶接電流は、所定の溶接電流のマッピング関数の使用により、溶接制御装置によって決定される。概して、所定の溶接電流のマッピング関数は、線形マッピングをワークピースの厚さから所定の溶接電流に形成する。所定の溶接電流は、ワークピースの材料にさらに依存してもよい。溶接ピースの材料は、操作者によって制御装置の中に入力されてもよく、別法として以下に開示される方式で制御装置により自動的に決定されてもよい。適切には、ワークピースの厚さと所定の溶接電流との間の関係は、I=k
1*T+k
2*T
2と表されてもよく、より大きい複合関数であっても企図されてよい。式中で、Iは溶接電流であり、Tはワークピースの厚さである。パラメータk
1およびk
2は、ワークピースの材料に依存してもよい。溶接ピースの厚さを表すデータを入力することにより、所定の溶接電流が決定されてもよい。
【0024】
本発明に従って、MIG/MAG溶接のための溶接パラメータを自動的に設定する方法の使用により、手動で、または溶接状況全体に影響を与える複雑なシナジーラインの使用により、線送り速度を設定する必要性は、取り除かれ、所定の溶接電流から決定される線送り速度の自動設定によって置換される。選択的には、所定の溶接電流は、ワークピースの厚さを選択する操作者からの入力から自動的に決定される。溶接状況の設定の複雑さは、それにより低減される。
【0025】
安定パラメータ設定のための溶接動作は、パラメータ設定のための溶接動作中、短絡アーク金属移行モードにおいてMIG/MAG溶接機器を作動することによって、画定されてもよい。
【0026】
短絡アーク金属移行モードでは、電極での状態は、溶接線端部(電極端部)とワークピースとの間の短絡とアークとを繰り返す。溶接電流源の動的特性は、短絡の時間を決定する。正常な溶接中は、各短絡は0,5〜40ミリ秒であるべきである。適切な動的特性は、溶接変圧器内の内部抵抗、誘電子および電子回路、ならびに誘電子のインダクタンスを、当業者には公知の方式で、適切に寸法決定することによって生成される。現代の機械では、誘電子は、電子の一種、すなわちハードウェアおよびソフトウェアを含む工程調整装置であることが多い。特に動的特性は、継続中に溶接に関して開始工程で変化してもよい。溶接機の動的特性は、溶接電流をどのくらいの速さで制御でき、溶接工程中に調節できるかを決定する。したがって、工程調整装置は、工程調整装置内で、短絡中に電流を増加する割合を画定することにより、個々の短絡工程に影響を及ぼす特性を与える。機械の静的特徴は、該内部抵抗または工程調整装置内のその等価物によって主に画定される。
【0027】
選択的には、パラメータ設定のための溶接動作は、短絡時間およびアーク時間によって画定される、短絡アーク溶接工程の確立を含む。溶接制御装置は、溶融効率が、合計期間(ここでは、期間とは短絡時間とアーク時間の合計である)の測定された短絡時間が、画定された調節可能な設定値を超える場合は増加され、該短絡のパーセンテージが該設定値より下回る場合は低減される方法で、電極の溶融効率を制御するように設定されてもよい。
【0028】
この期間に対する短絡時間のパーセンテージを所定の設定値において一定に維持することにより、接触チップとワークピースとの間の距離の変動などの、異なる外部影響要因に対する溶接の耐性に良好な効果が獲得される。期間は、溶接サイクル中の短絡時間とアーク時間との合計である。
【0029】
選択的には、電圧基準値Urefは、該短絡のパーセンテージ値から決定される。電圧基準値Urefは、プリセット短絡のパーセンテージが獲得されるように適合される。それ故、パラメータ設定のための溶接動作中における、短絡のパーセンテージ値の決定の使用により、溶接作動を制御するための適切な電圧基準値の自動設定が可能になる。さらに、異なるシールドガス組成に対する耐性が達成される。
【0030】
選択的には、溶接電圧および線送り速度を表すパラメータは、パラメータ設定のための溶接動作中に測定される。溶接電圧は、多くの溶接サイクルにわたる平均を形成することによって検出されてもよい。平均は、溶接期間のセグメントの上に形成されてもよく、別法として溶接期間全体を網羅してもよい。セグメントは、基本電流を伴う期間または最大電流の期間で形成されてもよく、別法として基本電流期間および最大電流期間の両方の一部で形成されてもよい。本発明の目的のために、検出された電圧は、溶接工程の代表であることで十分である。
【0031】
線送り速度を表すパラメータは、実際の線送り速度であってもよく、別法として溶接電流であってもよい。溶接制御装置は、該線送り速度を表すパラメータを該溶接電圧にマッピングする第2の関数を同定するために、測定された溶接電圧および溶接電流を使用する。
【0032】
第2の関数は、溶接電圧および線送り速度を表すパラメータから、第2の同定制御ブロック内の溶接制御装置によって同定される。第2のデータ対は、溶接電圧/線送り速度の空間内の作動点を画定する。第2のデータ対の組は、溶接電圧/線送り速度の空間内の作動点の組を画定する。異なる材料の線間の、溶接電圧と該線送り速度を表すパラメータとの間の関係を画定する関数は、該第2の関数同定制御ブロックによりアクセス可能な記憶装置内に記憶されてもよい。溶接電圧/線送り速度の空間内の作動点の同定により、または作動点の組の線形回帰により、最良に電流溶接作動を表す関数が選択されてもよい。一実施形態では、溶接線に使用される材料は、ゼロの線送り速度で溶接電圧を表すデータから決定される。異なる材料および溶接線の材料の異なる厚さは、溶接電圧/線送り速度の空間内の異なる関数で説明され、これらの関数は、ゼロまたはほぼゼロの線送り速度で容易に分離可能であることが示された。第2の関数は、溶接電圧/線送り速度の空間内の作動点の組を同定するデータ対を収集することによって導いてもよいことに留意されたい。データ対は、実際の溶接作動点で収集される。溶接電圧と線送り速度との間の関係を説明する第2の関数が、同定されてもよい。この関数は、ゼロの線送り速度での溶接などの、実際の溶接作動点の外側で画定される。それ故、溶接はゼロの線送り速度で実行されない場合であっても、第2の関数の値は、ゼロの線送り速度で、材料の分類を互いに分離するために使用されてもよい。第2の関数は、たとえば、データ対の組への関数の最小二乗適応であってもよい。
【0033】
したがって、溶接制御装置は、溶接線の決定制御ブロック内の同定された第2の関数から、どの溶接線の材料の分類が現在使用されるかを、自動的に決定してもよい。溶接線の材料の分類の例は、低合金鋼、高合金鋼およびアルミニウム合金である。溶接線の材料の分類の決定は、溶接電圧値をゼロの線送り速度で第2の関数から導くことにより、第2の関数値に依存する材料もしくは溶接材料の種類を画定する、ルックアップテーブルの使用により、またはそれ自体が具体的な材料の代表である、1つまたは複数の第2のデータ対を第2の関数に整合することにより、上に提案したように実行されてもよい。
【0034】
一般に第2の関数Φは、線送り速度を表すパラメータから溶接電圧への線形マッピング、U=Φ(v)を形成する。適切には、溶接電流と溶接電圧との間の関係は、U=φ
*vと表されてもよく、より大きい複合関数であっても企図されてよい。式中で、Uは溶接電圧であり、vは線送り速度を表すパラメータである。線送り速度を表すパラメータ値および溶接電圧を使用して、第2の関数Φは、溶接制御装置内の直接的な作動によって決定され得る、パラメータ値φによって表されてもよい。第2の関数は、したがって溶接電流を材料の具体的な分類に対して溶接電圧にマッピングする。マッピングは、異なる溶接電圧および線送り速度に対する様々な溶接状況における、様々な溶接線の材料ならびに溶接線の厚さの試験で収集されたデータを記録することによって確立できる。試験は、適切な溶接電圧が具体的な溶接電流に適用されることに依存するので、どの溶接線の材料が現在使用されるかという決定は、短絡アークのパーセンテージ値に関して基準電圧を調節することにより、溶接電圧の自動設定と一緒になされてもよい。組み合わされた方法により、溶接機が溶接電極の多種多様な寸法および材料に対して作動可能になる。
【0035】
異なる電極材料、電極寸法およびシールドガスタイプに対して試験されたシナジーラインの必要性は、もはや大幅に必要がなくなり、したがって異なる供給業者から、および異なる製造バッチからの線およびガスで溶接中に、適切な反復精度の安全が増加する。
【0036】
一旦溶接線の材料および溶接線の寸法が、適切な線送り速度および所定の溶接電流の設定によって構成されると、球状領域の遷移電流が、溶接線に対して決定されてもよい。球状領域の遷移電流は、球状領域の代表である電流である。球状領域は、金属移行モードが短絡からスプレーに移動する、またはその逆である場所である。選択されたが画定されていない溶接線の材料および寸法に対する、適切な線送り速度および溶接電流は、第1および第2の関数から上に説明されたことに従って、自動的に決定されてもよい。
【0037】
短絡アークのパーセンテージ値に依存する基準電圧を制御することにより、溶接工程を制御する可能性により、スプレー領域の少なくとも一部へ安定した溶接が可能になる。スプレー領域のより低温部には、短絡液滴遷移のわずかなパーセンテージが依然として存在する。短絡のパーセンテージを2〜5%に設定して、ラッピッドアークの概念の下で述べられることがある、スプレー領域のこの部分の安定制御も獲得される。しかし、純粋な短絡アークの溶接中、適切な短絡アークのパーセンテージは、17〜25%であり、21%は適切であると示された。より低温の溶接が望ましい場合は、パーセンテージが増加され、また逆も同様である。短絡のパーセンテージに対する設定値を調節するために、この関数を有する入力デバイスは、電流源、電極繰出装置または調節ボックス上に存在するべきである。
【0038】
溶接線の材料および溶接線の寸法の自動検出により、球状領域の遷移電流の自動的な決定が可能になる。したがって、提案された実施形態により、該所定の溶接電流が球状領域の遷移電流以上の値に増加する際は、短絡のパーセンテージを第1のより大きい値から第2のより小さい値に調節可能になり、所定の溶接電流が球状領域の遷移電流以下の値に低減する際は、短絡のパーセンテージを第2のより小さい値から第1のより大きい値に調節可能になる。
【0039】
さらに本発明は、パラメータ設定のための溶接動作中に、上に定義されたように、MIG/MAG溶接のための溶接パラメータを自動的に設定するステップを含む、溶接の方法であって、パラメータ設定のための溶接動作中に設定される1つまたは複数の溶接パラメータによって制御される溶接工程がパラメータ設定のための溶接動作に後続する、溶接の方法に関する。
【0040】
選択的には、本発明は、操作者がワークピースの厚さを選択する溶接の方法、ならびに所定の溶接電流、所定の線送り速度、電圧基準値Urefを、パラメータ設定のための溶接動作中に自動的に決定する溶接制御装置であって、その後、操作者が、所定の溶接電流、所定の線送り速度、および電圧基準値Urefを制御パラメータとして、連続する溶接作動を実行する、溶接制御装置に関する。線溶接の材料は、溶接制御装置によって収集されたデータから自動的に検出されてもよい。
【0041】
本発明の実施形態を添付図面を参照して以下にさらに詳述する。