(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のシート辺縁(8,9)をその辺縁に沿って連続的に止着するために、それぞれ連続材で形成されて所定の断面形状を有する第1部材(10,10A,10B,10C)および第2部材(20,20A,20B,20C)を備え、前記第1部材(10,10A,10B,10C)に前記第2部材(20,20A,20B,20C)を挿入するシート止着具(1,1A,1B,1C)であって、
前記第1部材(10,10A,10B,10C)は、前記シート辺縁の一方(8)が固定される第1固定部(11)と、前記第1固定部(11)と連続する保持部(12,12A,12B)と、を有し、
前記保持部(12,12A,12B)は、第1凹部(13)と、前記第1凹部(13)の開口を挟んで前記第1固定部(11)とは反対側に形成された支持部(14)と、を有し、
前記第2部材(20,20A,20B,20C)は、前記シート辺縁の他方(9)が固定される第2固定部(21,21B,21C)と、前記第2固定部(21,21B,21C)に連続する頭部(22,22A,22C)と、を有し、
前記支持部(14)は、前記第2部材(20,20A,20B,20C)の前記頭部(22,22A,22C)を前記第1部材(10,10A,10B,10C)の前記第1凹部(13)に挿入した際に、前記支持部(14)が前記第2固定部(21,21B,21C)の表面に当接する配置とされ、
前記頭部(22,22A)は、前記第2固定部(21,21B)に連続する被保持部(22,22A)と、前記被保持部(22,22A)に形成されて前記支持部(14)と係合可能な開口を有する第2凹部(23)を有し、
前記第2部材(20,20A,20B)は、前記被保持部(22,22A)の前記第2固定部(21,21B)側の開口縁に形成された当接部(24)を有し、
前記当接部(24)および前記支持部(14)は、前記支持部(14)を前記被保持部(22,22A)に挿入した際に、前記当接部(24)が前記支持部(14)の側面に当接しかつ前記支持部(14)の先端が前記被保持部(22,22A)の内面に当接する配置とされ、
前記支持部(14)は、前記第2部材(20,20A,20B)の前記被保持部(22,22A)を前記第1凹部(13)に挿入した際に、前記支持部(14)が前記第2固定部(21,21B)の表面に当接する配置とされていることを特徴とするシート止着具。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆材の辺縁を重ね合わせて止着するためにシート止着具が利用されている。
例えば、車両用の座席は、座面あるいは背面さらにヘッドレストやアームレストなどが、それぞれ合成樹脂発泡体などのクッション材を基材とし、その表面に被覆材であるシート状の表皮材を張って仕上げられる。表皮材は予めクッション材の外側形状に合わせて立体縫製され、一部残された開口からクッション材に被せられ、最後に開口を封止して仕上げられる。これにより縫製跡などが露出しにくく優れた外観が確保される。最後に封止される開口は、連続成形材を用いたシート止着具を用いることで、表皮材の辺縁を重ね合わせて止着され、これにより外観性を高めるようにしている。
【0003】
このようなシート止着具は、自動車や鉄道などの車両用の座席の他、航空機や船舶の座席、学校やオフィスビルで使用される座席、運動用器具類のクッション、住居用、医療用のソファやベッドなどの家具類にも適用される。
また、座席やクッション等の表面材に限らず、テント等の架設物のシート辺縁の止着、輸送用の梱包物カバーの辺縁の止着などにも適用される。
このようなシート止着具の具体的構成として、特許文献1および特許文献2に記載の構成が知られている。
【0004】
特許文献1のシート止着具は、押出成形等による合成樹脂製の連続材からなる第1部材と第2部材とで構成され、第2部材は断面形状にU字状の部分を有し、この部分にはU字の先端の一方にシート辺縁が固定され、他方に玉縁が設けられている。第1部材は、同様なU字状の部分が反対向きに形成されている。
このような止着具で一対のシートの辺縁を止着する場合、第2部材を引っ張って第1部材に覆い被さるように配置し、互いのU字の開口を向かい合わせて第2部材の玉縁を第1部材の内部へ挿入させることで、シートの張力がお互いのU字状の奥へ入り込むように働き、互いの係止が維持させる。
【0005】
特許文献2のシート止着具は、シート辺縁が固定される第1部材および第2部材で構成され、第2部材は両端が膨出した板状とされて中間が屈曲可能であり、基端側にシート辺縁が固定される。第1部材は断面形状にU字状の部分を有し、第2部材の先端を挿入して係合可能である。
このような止着具で一対のシートの辺縁を止着する場合、第2部材の基端にシート辺縁を固定したうえで、第
2部材を回動させてその先端を第1部材に挿入して係合させる。この際、第2部材は基端側でシート辺縁を巻き込むとともに中間部分が屈曲して第1部材のU字状の部分を覆い隠すことができる
。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の止着具では、第1部材と第2部材とを係合させる際に、一対のシートが互いに引き寄せられ、その張力が一時的に高まるが、係止状態に落ち着くと弛緩することになる。
このような弛緩が生じると、弛緩に伴ってシートに皺等が生じることがあり、例えばクッションを被覆する表面材としては好ましくない。
【0008】
特許文献2に記載の止着具では、係合の際に第2部材を第1部材に対して回動させてシートに張力を与えることで、係合後もシートに対する張力を維持することができ、シートの皺等の発生を回避することができる。
しかし、特許文献2の構成では、シートに張力を与えるべく第2部材を引っ張りながら第1部材に填り込むように回動させる操作が必要であり、かつ引っ張りと回動との複合操作をシート辺縁の全長にわたって行うことが要求され、作業が繁雑かつ効率的に行えなかった。
さらに、特許文献2の構成では、第2部材に巻き込まれるシート辺縁が第1部材から浮き上がって保持されるため、シート辺縁に張力がかかると変形して隙間が生じ、外観的に好ましいものにできなかった。
【0009】
本発明の目的は、シートの張力を確保できるとともに、作業効率を改善できるシート止着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対のシート辺縁をその辺縁に沿って連続的に止着するために、それぞれ連続材で形成されて所定の断面形状を有する第1部材および第2部材を備え、前記第1部材に前記第2部材を挿入するシート止着具であって、
前記第1部材は、前記シート辺縁の一方が固定される第1固定部と、前記第1固定部と連続する保持部と、を有し、前記保持部は、第1凹部と、前記第1凹部の開口を挟んで前記第1固定部とは反対側に形成された支持部と、を有し、前記第2部材は、前記シート辺縁の他方が固定される第2固定部と、前記第2固定部に連続する頭部と、を有し、前記支持部は、前記第2部材の前記頭部を前記第1部材の前記第1凹部に挿入した際に、前記支持部が前記第2固定部の表面に当接する配置とされていることを特徴とする。
【0011】
このような本発明では、第1部材の第1固定部にシート辺縁の一方を固定するとともに、第2部材の第2固定部にシート辺縁の一方を固定し、これらの第1部材および第2部材を互いに接続することで一対のシート辺縁どうしを止着する。
第1部材および第2部材を接続する際には、先ず第2部材をその頭部側から第1部材に近づけ、第2部材を第1部材に対して交叉した姿勢としたうえで、第2部材の頭部と第2固定部との途中部分を、第1部材の支持部で支持する。(仮保持状態)。
【0012】
次に、支持部を中心にして第2部材を回動させ、第2部材の頭部を第1凹部内へと送り込むとともに、第2固定部を回動させてシート辺縁を巻き込んでゆく。この回動の継続により、シート辺縁に張力が加えられるようになるとともに、第2部材が第1部材と平行な姿勢に近づき、第2部材の頭部が第1凹部内へ挿入される。最終的に、支持部が第2固定部の表面に当接し、かつ頭部が第1凹部の内面の何れかの部位に当接する。
これら2点での当接により、第1部材と第2部材とは、互いに係止された状態となる(本保持状態)。
【0013】
このように、本発明では、第1部材および第2部材を接続する際に、これらを仮保持状態および本保持状態でそれぞれ保持することができる。そして、仮保持状態までにシート辺縁どうしの止着状態を整えておき、仮保持状態から本保持状態に至る過程でシート辺縁に張力を与えることで、シート止着に必要な十分な張力が得られるとともに、シートが整った状態で張力を与えることができる。
【0014】
そして、張力の付与には第2部材の回動を利用するため、作業者が手首を捻る等の動作が必要なく、作業を効率的に行うことができる。また、張力の付与までに仮保持状態とするため、シート辺縁の全長にわたってシートの状態を整える余裕が得られる。つまり、先ずシート辺縁の全長にわたって仮保持状態とし、全体のシート状態を整えたうえで、シート辺縁の全長にわたって第2部材を回動させ、本保持状態とすることができる。
これらにより、シートの張力を確保できるとともに、作業効率を改善することができるシート止着具が得られる。
【0016】
本発明において、前記頭部は、第2固定部に連続する被保持部と、前記被保持部に形成されて前記支持部と係合可能な開口を有する第2凹部と、を有す
る。
このような本発明では、前述した仮保持状態において、第2部材の第2凹部に第1部材の支持部を挿入することで、仮保持状態の姿勢を更に安定して維持することができる。
【0017】
本発明において、前記第2部材は、前記被保持部の前記第2固定部側の開口縁に形成された当接部を有し、前記当接部および前記支持部は、前記支持部を前記被保持部に挿入した際に、前記当接部が前記支持部の側面に当接しかつ前記支持部の先端が前記被保持部の内面に当接する配置とされ、前記支持部は、前記第2部材の前記被保持部を前記第1凹部に挿入した際に、前記支持部が前記第2固定部の表面に当接する配置とされ
る。
【0018】
このような本発明では、前述した仮保持状態において、第2部材の当接部が第1部材の支持部の側面に当接し、かつ支持部の先端が第2凹部の内面最奥部に当接し、これら2点での当接により第1部材と第2部材とは更に安定した状態で維持される。さらに、前述した本保持状態においては、支持部が第2固定部の表面に当接することで、本保持状態での安定した姿勢維持を行うことができる。
【0019】
本発明において、前記支持部および前記頭部は、前記頭部を前記第1凹部に挿入した際に、前記支持部が前記第2固定部の表面に当接しかつ前記頭部が前記第1凹部の内面に当接する配置とされていることが望ましい。
このような本発明では、前述した仮保持状態において第1部材と第2部材とが2点で接触するため、仮保持状態の姿勢を安定して維持することができる。
本発明において、前記第1部材は、前記支持部に向けて突出する突起部を有することが望ましい。
このような本発明では、仮保持状態から本保持状態へと移行する際に第2部材を突起部で押圧して支持部側へ寄せ、支持部を第2凹部から当接部を経て第2固定部に沿わせることができ、第2部材の回動動作を円滑にすることができる。
【0020】
本発明において、前記突起部は、前記保持部と前記第1固定部との接続部分から前記支持部に向けて突出しており、前記突起部と前記支持部との間隔は、前記第2固定部の厚み方向の前記被保持部の最小の厚さよりも小さく形成されていることが望ましい。
このような本発明では、突起部による押圧効果を確実なものとすることができる。
【0021】
さらに、突起部に摺接する第2部材の表面に段差あるいは条線を形成することで、第2部材が回動して本保持状態に至った際のクリック感を与えることもでき、操作性の向上が期待できる。
ここで、クリック感とは、第1部材および第2部材を作業者が操作した際に、突起部が前述した段差あるいは条線を乗り越えることで発生するものであって作業者の手に伝わる軽微な衝撃や振動、あるいは音響をいう。このようなクリック感が得られることで、動作の実行確認が容易かつ確実にできる。
【0022】
本発明において、前記頭部は、前記第2固定部の一端から交叉方向に延びる板状に形成され、前記第2部材は全体としてT字状またはL字状の断面形状とされ、前記第2固定部と前記頭部とが交叉する部分の入隅により、前記支持部と係合可能な開口を有する第2凹部が形成される構成としてもよい。
このような本発明では、第2部材は全体としてT字状またはL字状の断面形状とすることができ、構造の簡略化が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1において、本実施形態のシート止着具1は、クッション材6の表面に表皮材のシート7を張る際に、その継ぎ目において一対のシート辺縁8,9を連続的に止着するものであり、それぞれ一定の断面形状を有する連続材として合成樹脂材料で一体成形された第1部材10と第2部材20とを有する。
第1部材10および第2部材20は、それぞれ合成樹脂材料の押出成形や射出成形等で製造される連続材とされている。
【0025】
〔第1部材〕
図2には、本実施形態の第1部材10の断面形状が示されている。
第1部材10は、シート辺縁8が固定される第1固定部11と、第1固定部11の一端に連続する保持部12と、保持部12に形成されて第1固定部11の連続方向D1に向けて開口する第1凹部13と、保持部12の第1凹部13を囲う部分であって保持部12の第1固定部11に連続する側とは反対側の端部に形成されて第1固定部11が延びる方向に向けられた支持部14と、保持部12と第1固定部11との接続部分から支持部14に向けて突出する突起部15と、を備えている。
【0026】
保持部12は、第1凹部13を囲む3つの平坦部分121,122,123によって略U字状に形成されている。
第1の平坦部分121は、シート辺縁8が固定される第1固定部11の一端に連続する部分であり、第1固定部11の連続方向D1に沿って第1固定部11を延長するように形成されている。
第2の平坦部分122は、第1の平坦部分121の第1固定部11に連続する端部とは反対側の端部に連続し、第1の平坦部分121および第1固定部11の連続方向D1と直交する方向に延びている。
【0027】
第3の平坦部分123は、第2の平坦部分122の第1の平坦部分121に連続する端部とは反対側の端部に連続し、当該連続した端部か
ら保持部12がC字状となるように反転して延びており、その内面が第1の平坦部分121の内面に対して向かい合うように配置され、その先端が支持部14とされる。第3の平坦部分123は、第2の平坦部分122に対して鋭角をなしており、支持部14となる先端がある側が、第1の平坦部分121および第1固定部11に近づくように、傾斜して配置されている。
【0028】
第3の平坦部分123の先端の支持部14は、突起部15に向かい合う位置に配置され、これらの間には幅T1の間隔が形成され、この間隔が第1凹部13の開口となっている。
第1凹部13は、第1〜第3の平坦部分121〜123で囲まれて略C字状に形成され、その内面は、第1〜第3の平坦部分121〜123の内側の表面により形成される。このうち、第2の平坦部分122は第1凹部13の開口から最も離れており、第2の平坦部分122に沿った部位が第1凹部13の内面最奥部131とされている。
内面最奥部131は、第2の平坦部分122に沿った内面とともに、第1および第3の平坦部分121,123の内面に連続する湾曲部分を含んでもよい。
【0029】
〔第2部材〕
図3には、本実施形態の第2部材20の断面形状が示されている。
第2部材20は、シート辺縁9が固定される第2固定部21と、第2固定部21の一端に連続する頭部としての被保持部22と、被保持部22に形成されて第2固定部21の厚み方向D2に向けて開口する第2凹部23と、第2凹部23の第2固定部21側の開口縁に形成された当接部24と、を備えている。
【0030】
被保持部22は、第2凹部23を囲む3つの平坦部分221,222,223によって略C字状に形成されている。
第1の平坦部分221は、シート辺縁9が固定される第2固定部21の一端に連続する部分であり、第2固定部
21の厚み方向D2つまり第2固定部
21の連続方向と直交する方向に延びている。
第2の平坦部分222は、第1の平坦部分221の第2固定部21に連続する端部とは反対側の端部に連続し、第1の平坦部分
221とは交叉方向に延びている。
【0031】
第3の平坦部分223は、第2の平坦部分222の第1の平坦部分221に連続する端部とは反対側の端部に連続し、当該連続した端部から被保持部22がC字状となるように反転して延びている。第3の平坦部分223は、第1の平坦部分221と平行とされ、その内面が第1の平坦部分221の内面に対して向かい合うように配置されている。
第2の平坦部分222は、第2凹部23の内側において、第1の平坦部分221に対して90度より大きい角度で接続され、第3の平坦部分223に対して90度より小さい角度で接続されており、第2固定部21の連続方向に対しても、第1の平坦部分221に連続する側が、第2固定部21の延長軸線あるいは当接部24に近づくように、傾斜して配置されている。
【0032】
第3の平坦部分223の先端(第2の平坦部分222と連続する端部と反対側の端部)は、第2固定部21の延長線上に配置され、この先端と当接部24との間に第2凹部23の開口が形成されている。
第2凹部23は、第1〜第3の平坦部分221〜223で囲まれて略C字状に形成され、その内面は、第1〜第3の平坦部分221〜223の内側の表面により形成される。このうち、第2の平坦部分222は第2凹部23の開口から最も離れており、第2の平坦部分222に沿った部位が第2凹部23の内面最奥部231とされている。
【0033】
内面最奥部231は、第2の平坦部分122に沿った内面とともに、第1および第3の平坦部分221,223の内面に連続する湾曲部分を含んでもよい。
被保持部22の外周面は、2つの出隅部分224をはじめとしてある程度丸められ、各平坦部の外面は滑らかに連続した状態とされている。被保持部22の外周面のうち、第2の平坦部222の外側の表面は、第2の平坦部222の傾斜に応じた傾斜面225とされている。
【0034】
〔第1部材および第2部材の関係〕
図4に示すように、当接部24および支持部14は、支持部14を第2凹部23に挿入した際に、当接部24が支持部14の側面(支持部14として兼用される側の保持部12の側面)に当接しかつ支持部14の先端が第2凹部23の内面最奥部231に当接する配置とされている。
図7に示すように、支持部14および被保持部22は、被保持部22を第1凹部13に挿入した際に、支持部14が第2固定部21の表面に当接しかつ被保持部22が第1凹部13の内面最奥部131に当接する配置とされている。
【0035】
図2および
図3に示すように、第1部材10において、第1凹部13の開口である突起部15と支持部14との間隔T1は、第2部材20における第2固定部21の厚み方向D2の被保持部22の最小の厚さT2よりも小さく形成されている(T2>T1)。
これにより、第1部材10と第2部材20との本保持状態(
図7参照)では、第2部材20の被保持部22が第1部材10の第1凹部13内に収容され、被保持部22が第1凹部13の開口を通過することができないため、被保持部22は第1凹部13から抜け落ちないようになる。
また、被保持部22を第1凹部13内に押し込む動作(
図5および
図6参照)では、被保持部22が突起部15を乗り越える際の変形および形状の復元によってクリック感が得られる。
【0036】
第1凹部13に被保持部22を押し込む際、
図5に示すように、第1部材10に対して第2部材20を回動させながら近接させることで、突起部15は、被保持部22の外周面である出隅部分224ないし傾斜面225に沿って摺接する。
突起部15から傾斜面225への押し付け力を受けることによって、被保持部22は、第3の平坦部分223の先端が支持部14の側面(第3の平坦部分123の内面)に強く押し付けられ、支持部14が被保持部22の内部の第2凹部23の内面で囲われた空間内に可能な限り維持される。
【0037】
さらに、被保持部22の外周面は、その出隅部分224も含めてある程度丸められているが、第2部材20を回動させる作業者には、被保持部22の出隅部分224が突起部15を通過する際に、明瞭なクリック感が得られるようになっている。
突起部15は、第1固定部11と第1凹部13が設けられた保持部12の第1の平坦部分121との接続部分に形成されているが、保持部12と第1固定部11の接続部分は、
図5や
図6に示すように突起部15が第2部材20の回動により第2部材20の第2凹部23の外周面に接触できる位置や摺接できる範囲に形成されていればよい。
【0038】
〔止着手順〕
図4ないし
図7により、本実施形態におけるシート辺縁8,9の止着手順を説明する。
先ず、第1部材10の第1固定部11の突起部15がある側の表面にシート辺縁8を固定するとともに、第2部材20の第2固定部21の被保持部22が突起する側の表面にシート辺縁9を固定しておく。
【0039】
図4において、第2部材20を被保持部22側から第1部材10に近づけ、第2部材20を第1部材10に対して交叉した姿勢としたうえで、第2部材20の第2凹部23に第1部材10の支持部14を挿入する。これにより、第2部材20の当接部24が第1部材10の支持部14の側面に当接し、かつ支持部14の先端が第2凹部23の内面最奥部231に当接し、これら2点での当接により第1部材10と第2部材20とは互いに係止された状態となる(第1部材10と第2部材20との仮保持状態)。
この状態で、シート辺縁9は、第2固定部21に固定された面がシート全体に続く側と反対側となるように配置され、第2固定部21の先端で折り曲げられた状態で保持される。
【0040】
第1部材10および第2部材20の全長にわたって仮保持状態とすることができたら、この仮保持状態でシート辺縁8,9のしわ、たるみ等を修正しておく。修正ができたら、支持部14を中心にしてシート辺縁9がシート全体から離れるように第2部材20を回動させ、被保持部22を第1凹部13内へと送り込むとともに、第2固定部を回動させてシート辺縁を巻き込んでゆく。
【0041】
図5に示すように、第2部材20の回動を継続することにより、シート辺縁9に張力が加えられるとともに、第2部材20が第1部材10と平行な姿勢に近づく。
図6に示すように、第1部材10の突起部15は、第2部材20の第2凹部23の外周面に形成された傾斜面225に摺接し、被保持部22の先端(第3の平坦部分223の先端)を保持部12の内面(第3の平坦部分123の内面)に押し付け、当接部
24と第2凹部23の内面との接触を維持する。これにより、第2部材20は第1部材10から外れることなく回動する。
【0042】
第2部材20の回動の過程で、第2凹部23から支持部14が抜け出し、被保持部22が第1凹部13内へ挿入される。
図7に示すように、第2部材20の回動の結果、最終的に、支持部14が第2固定部21の表面に当接し、かつ被保持部22が第1凹部13の内面最奥部131に当接し、これら2点での当接により第1部材10と第2部材20とは互いに係止された状態となる(第1部材10と第2部材20との本保持状態)。
【0043】
この状態では、シート辺縁9の張力が被保持部22を第1凹部13の内面最奥部131に押し付けるように作用し、これら被保持部22および第1凹部13の内面最奥部131の当接により、第1部材10と第2部材20との張力方向の移動が規制される。また、張力によって第2部材20に生じるモーメントは、支持部14が第2固定部21の表面(シート辺縁9が固定された側の表面と反対側)に当接する方向に作用するため、支持部14と第2固定部21の表面との当接により第1部材10に対する第2部材20の回転が規制され、互いに安定した接続状態を維持される。
以上により、第1部材10および第2部材20が確実に接続され、シート辺縁8,9は近接した状態で止着される。
【0044】
なお、本保持状態において、被保持部22を専ら第1凹部13の内側最奥部131に当接させたが、被保持部22の出隅部分224(第2の平坦部分222と第3の平坦部分223との連続部分)を、第1凹部13の内面の第1の平坦部分121と第2の平坦部分122との連続部分の円弧状部分に当接させるようにしてもよく、シート辺縁9の張力により第2部材20に生じるモーメントが大きい場合でも十分に対抗することができる。
【0045】
〔実施形態の効果〕
本実施形態によれば、第1部材10および第2部材20を接続する際に、これらを仮保持状態および本保持状態でそれぞれ保持することができる。そして、仮保持状態までにシート辺縁8,9どうしの止着状態を整えておき、仮保持状態から本保持状態に至る過程でシート辺縁8,9に張力を与えることで、シート7の止着に必要な十分な張力が得られるとともに、シート7が整った状態で張力を与えることができる。
【0046】
そして、張力の付与には第2部材20の回動を利用するため、作業者が手首を捻る等の動作が必要なく、作業を効率的に行うことができる。また、張力の付与までに仮保持状態とするため、シート辺縁8、9の全長にわたってシート7の状態を整える余裕が得られる。つまり、先ずシート辺縁8,9の全長にわたって仮保持状態とし、シート7の全体の状態を整えたうえで、シート辺縁8,9の全長にわたって第2部材20を回動させ、本保持状態とすることができる。
これらにより、シート7およびシート辺縁8,9に必要な張力を確保できるとともに、止着するための作業効率を改善することができる。
【0047】
なお、
図8に示すように、シート辺縁8,9を止着した状態では、第1部材10および第2部材20はクッション材6に半ば埋もれた状態となるとともに、シート辺縁8,9が固定される第1固定部11および第2固定部21がある側が起き上がる。
本実施形態では、第1部材10および第2部材20を係合させた状態で、第1固定部11が第2固定部21よりも長さLだけ突出するように形成してある。このような設定により、長くされた第1固定部11に働くシート辺縁8の張力により第1部材10および第2部材20の起き上がりが抑制され、例えばクッション材6の基準表面に対する角度Aは35度程度に抑制することができる。
【0048】
〔変形例〕
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0049】
前記実施形態において、本保持状態では、支持部14が第2固定部21の表面に当接し、かつ被保持部22が第1凹部13の内面に当接し、これら2点での複数箇所で当接させることで第1部材10と第2部材20とが互いに係止されているが、本保持状態においても第1凹部13の突起部15が第2固定部21の外面に当接するようにしてもよく、これにより一層強固な係止が行われるようにすることもできる。この際、突起部15は、第2固定部21の外面に固定されたシート辺縁9の表面に当接することで、第2固定部21の外面に当接するようにしてもよい。
【0050】
前記実施形態において、本保持状態では、支持部14と第2固定部21の表面との当接とともに、被保持部22と第1の平坦部分121の内面との当接が得られていれば、シート辺縁9の張力により第2部材20に生じるモーメントにより、これら2つの当接部分には強い押圧力が加えられる。この押圧力のもとで各当接部分の摩擦力が十分に得られれば、この摩擦力だけでシート辺縁9の張力に十分に対抗することも可能である。
シート辺縁9の張力が強い場合には、この状態では、被保持部22と第1凹部13の内面最奥部131とが当接しなくても、支持部14と第2固定部21の表面との当接だけで第1部材10と第2部材20を互いに係止することができる。
【0051】
前述のような、被保持部22と第1凹部13の内面最奥部131との当接なしに第1部材10と第2部材20とを係止する場合にも、第1凹部13の突起部15を第2固定部21の外面に当接させ、あるいは突起部15を第2固定部21の外面に固定されたシート辺縁9に当接させて、第2固定部21の外面をさらに強固に係止することもできる。
なお、表皮材にかかる張力が弱い時等には、支持部14が第2固定部21の表面に当接していれば第1部材10と第2部材20とを係止することができる場合がある。
【0052】
前記実施形態では、保持部12および被保持部22を角張ったU字状あるいはC字状としたが、これらはより丸みを帯びたものとしてもよい。また、突起部15は第1固定部11から隆起する形状に限らず、第1固定部11を湾曲させて突起部としてもよい。
【0053】
図9に示す他の実施形態において、シート止着具1Aは第1部材10Aと第2部材20Aとを有する。第1部材10Aは底部が円筒状となったU字状の保持部12Aを有し、第2部材20Aの被保持部22Aも保持部12Aの内面形状に対応したC字状とされている。第1部材10Aにおいて、突起部15Aは第1固定部11を湾曲させ、支持部14側に突出した形状とされている。
本実施形態においては、内面最奥部131Aは第1凹部13の開口部から最も奥(図中上側)の曲面となり、内面最奥部231Aは第2凹部23の開口部から最も奥(図中左側)の曲面となる。
このような
図9の実施形態によっても、前述した
図1〜
図8の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0054】
前記実施形態では、第1部材10の保持部12が略U字形とされて第1固定部11の側にのみ延びていたが、反対方向に突出する部分等があってもよい。第2部材において、被保持部22と第2固定部21とは第2凹部23の開口側の側面に連続されていたが、他の部分であってもよい。
【0055】
図10に示す他の実施形態において、シート止着具1Bは第1部材10Bと第2部材20Bとを有する。第1部材10Bはh字状の保持部12Bを有し、第1固定部11が連続する側と反対側にも一連の平坦部分121が形成されている。第2部材20Bは、被保持部22が前述した
図1〜
図8の実施形態と同形状であるが、第2固定部21Bは一部が屈曲され、被保持部22と連続する部分が第2凹部23の底部側となっている。
本実施形態においては、内面最奥部131Bは第1凹部13の開口部から最も奥(図中上側)の平坦面および両側の隣接する側面に連続する曲面を併せた面となり、内面最奥部231Aは第2凹部23の開口部から最も奥(図中左側)の平坦面および両側の隣接する側面に連続する曲面を併せた面となる。
このような
図10の実施形態によっても、前述した
図1〜
図8の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0056】
前記実施形態では、袋状の第2凹部23が形成された被保持部22,22Aを頭部とする第2部材20,20A,20Bを採用した。これに対し、扁平な頭部を有し、全体としてT字状あるいはL字状の第2部材20Cとしてもよい。
【0057】
図11および
図12は本発明の更に他の実施形態が示されている。
図11において、第1部材10Cは、前述した第1実施形態の第1部材10と同様に第1固定部11、保持部12、第1凹部13、支持部14を有し、第1固定部11にはシート辺縁8が固定される。但し、第1部材10Cには、第1実施形態のような突起部15は形成されていない。
第2部材20Cは、シート辺縁9が固定される第1固定部21Cと、その先端に直角に接続された頭部としての被保持部22Cとを有し、全体としてT字状に形成されている。また、第1固定部21Cと被保持部22Cとの接続部分の入り隅によって、第2部材20Cには第2凹部23Cが形成されている。
なお、被保持部22Cは、第2凹部23Cとなる入り隅ができる側にのみ形成されていればよく、このような場合、第2部材20Cは全体としてL字状に形成されることになる。
【0058】
このような形態においては、
図12に実線で示すように、第1部材10の支持部14に第2部材20Cの第2凹部23Cを係合させることで、仮保持状態とすることができる。
そして、
図12の一点鎖線で示すように、第2部材20Cを回動させ、被保持部
22Cを第1凹部13内へと導入し、被保持部
22Cが内面最奥部131に当接することで、本保持状態とすることができる。
このような
図10の実施形態によっても、前述した
図1〜
図8の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0059】
前述した各実施形態では、それぞれ車両の座席のバックレストのシート辺縁の止着の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、座席の他の部分のシートにも適用できる。さらに、本発明は、自動車や鉄道などの車両用の座席の他、航空機や船舶の座席、運動用器具類のクッション、住居用のソファやベッドなどの家具類にも適用することができる。また、座席やクッション等の表面材に限らず、テント等の架設物のシート辺縁の止着、輸送用の梱包物カバーの辺縁の止着などにも適用することができる。