(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5740521
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】水路の更生方法
(51)【国際特許分類】
E02B 5/02 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
E02B5/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-209781(P2014-209781)
(22)【出願日】2014年10月14日
【審査請求日】2014年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】301031392
【氏名又は名称】国立研究開発法人土木研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594157418
【氏名又は名称】株式会社ドーコン
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】藤本 光伸
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】関根 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 道雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一仁
(72)【発明者】
【氏名】石神 暁郎
(72)【発明者】
【氏名】田場 一矢
(72)【発明者】
【氏名】緒方 英彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】西尾 悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】渡部 浩二
【審査官】
▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−095428(JP,A)
【文献】
特開2002−266337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のコンクリート製の水路本体(1)の側面側に、アンカー部材(4)を用いてライニング板(3)を固定する工程と、
前記水路本体(1)と前記ライニング板(3)との間の隙間に、前記水路本体(1)に浸透した水分(W)をこの水路本体(1)に沿ってその下流側に導く、透水性を備えた流動性を有する多孔質のポーラスコンクリートである裏込材(2)を流し込む工程と、
を有する水路の更生方法。
【請求項2】
前記アンカー部材(4)が、先端が拡開可能なアンカー本体(4a)と、前記アンカー本体(4a)に同軸に挿し込まれる軸体(4b)と、前記アンカー本体(4a)にねじ込まれ、前記裏込材(2)の内面側に配置される前記ライニング板(3)を前記裏込材(2)側に押し付けて固定するナット(4d)と、を有する請求項1に記載の水路の更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば農業や発電等に用いられる水路の更生方法に関し、冬季に水の凍結及び融解が繰り返されたり、雨水の流入に伴う水量変化が生じたりする場合のように、水路に対する負荷状態に変動が生じやすい状況に特に適した更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業や発電等に用いられる水路は、例えば、特許文献1の
図1に示すように、地面を樋状に掘削した上で、上部が開放された樋状のコンクリート製の水路本体を埋設し、この水路本体の内壁面11に、この内壁面11を保護するととともに水理特性を向上するための遮水性を備えたライニング板2を固定することによって形成される。このライニング板2は、本図に示すように、例えばアンカーボルト24を内壁面11にねじ込むとともに、内壁面11とライニング板2との間に、モルタルを注入し硬化させることによって、この内壁面11に固定される。
【0003】
特許文献1に係る構成においては、
図5に縦断面図で模式的に示すように、コンクリートからなる水路本体10には、雨水や融雪水、あるいは水路本体の背面土に含まれる地下水等の水分Wが浸透しやすい。この水分Wの浸透量は、背面土Sの地下水位Lが高い時は一層顕著となる。また、この水路本体10の内面は、高い遮水性を備えたライニング板11やその下地として塗布されるプライマーで覆われていることから、一旦水路本体10に浸透した水分Wの逃げ道がなく、この水分Wは水路本体10に浸透したままの状態となりやすい。
【0004】
例えば、冬季に水の凍結が生じやすい寒冷地においては、この水路本体10に浸透した水分Wが、日中と夜間の気温差によって融解と凍結を繰り返し、その際の体積変化によって水路本体10がひび割れたり、ライニング板11が水路本体10から剥離したりするトラブルが生じやすい。この場合、ライニング板11を一旦取り外して水路本体10を更生する必要があるが、このライニング板11は、モルタルや、取り外し不能のアンカーボルトで固定されており(特許文献1の
図1参照)、その取り外しが困難で、更生作業に要するコストが嵩む問題がある。
【0005】
この特許文献1に係る構成の問題点を解消するために、特許文献2に係る構成を採用することも考えられる。この構成においては、溝状本体1(水路本体に相当)とオーバーレイ層9(ライニング板に相当)との間にトンネル状の排出路2が形成されたトンネル部材3を沿設し、この排出路2を通して水分を排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−290849号公報
【特許文献2】実公平3−16893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に係る構成を、水路本体の内面にライニング板を設ける水路に適用した場合、水路本体とライニング板との間の水分を抜く作用をある程度は発揮できるが、トンネル部材が格子状に配置されているため、トンネル部材の近傍と、このトンネル部材から少し離れたところとでは、水分の排水作用に差が生じ、水路本体内の位置によって水分量のばらつきが生じる可能性がある。この水分量がばらついた状態(トンネル部材によって水路本体内の水分が抜けつつある途中段階)で気温が下がって凍結が生じた場合、水分の凍結に伴う体積変化量が水路本体内の各位置においてばらつき、水路本体に対する負荷状態に変動が生じて、水路本体のひび割れ等のトラブルが却って顕著に生じる恐れがある。
【0008】
水路本体内の各位置における水分量のばらつきを低減するために、水路本体とライニング板との間に設けたトンネル部材同士の間隔を狭くすることも考えられるが、トンネル部材の総延長が非常に長くなって、コスト面のデメリットが大きくなるため、現実的にはそのようにすることはできない。
【0009】
そこで、この発明は、既設の水路の更生を容易に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、既設のコンクリート製の水路本体の内面に、前記水路本体に浸透した水分をこの水路本体に沿ってその下流側に導く、透水性を備えた裏込材を設ける工程と、前記裏込材の内面に、この内面を保護するライニング板を設ける工程と、アンカー部材を用いて、前記ライニング板を前記裏込材の内面に固定する工程と、を有する水路の更生方法を構成した。
【0011】
このように、既設の水路本体に、透水性を備えた裏込材を設ける構成とすることにより、水路本体に浸透した水分をこの裏込材側に抜くとともに、この裏込材の内部を通って水路本体の下流側に導く作用を有する。このように、水路本体に浸透した水分を抜くことにより、その水分が融解及び凍結を繰り返して、水路本体が劣化する等のように、水路本体に対する負荷状態に変動が生じることに起因するトラブルを防止することができる。また、透水性を備えた裏込材は、その内部(水分の流路)に空気を保持し得るため、断熱性にも優れている。このため、水路内面側の冷気によって水路本体が冷却されにくく、水路本体内に残留する水分の凍結を防止する作用も有している。
【0012】
前記水路の更生方法の構成においては、前記アンカー部材が、先端が拡開可能なアンカー本体と、前記アンカー本体に同軸に挿し込まれる軸体と、前記アンカー本体にねじ込まれ、前記裏込材の内面側に配置される前記ライニング板を前記裏込材側に押し付けて固定するナットと、を有する構成としてもよい。
【0013】
アンカー本体を水路本体等に形成したアンカー穴に差し込み、軸体をこのアンカー本体の先端側に打ち込むと、アンカー本体の先端が拡開してアンカー穴の内壁に食い込むため、アンカー本体をアンカー穴から再度引き抜くことはできない。このように、アンカー本体をアンカー穴から引き抜くことができなくなったとしても、ナットをアンカー本体とは別部材とすることにより、一旦ライニング板を水路本体に取り付けた後に、このナットを緩めることにより、ライニング板を容易に取り外すことができる。このため、裏込材の劣化状況の定期的なモニタリングを容易に行うことができ、その劣化を速やかに発見してその更生を行うことができる。
【0014】
なお、この水路の更生方法に係る、水路本体、裏込材、及びライニング板を有する水路の構成は、既設水路の更生の際だけではなく、水路を新設する際にも採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明では、既設のコンクリート製の水路本体の内面に、前記水路本体に浸透した水分をこの水路本体に沿ってその下流側に導く、透水性を備えた裏込材を設ける工程と、前記裏込材の内面に、この内面を保護するライニング板を設ける工程と、アンカー部材を用いて、前記ライニング板を前記裏込材の内面に固定する工程と、を有する水路の更生方法を構成した。このように、既設の水路本体に、透水性を備えた裏込材を設ける構成とすることにより、水路本体に浸透した水分をこの裏込材側に抜くとともに、この裏込材の内部を通って水路本体の下流側に導く作用を有する。このように、水路本体に浸透した水分を抜くことにより、その水分が融解及び凍結を繰り返して、水路本体が劣化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願発明に係る水路の実施形態を示す縦断面図
【
図3】
図1に示す水路に用いるアンカーボルトを示し、(a)は側面図、(b)は分解斜視図、(c)は先端を拡開させた状態の側面図
【
図4】裏込材の透水性を示す図であって、(a)は水路高が150cmの場合、(b)は水路高が200cmの場合
【
図5】従来技術に係る水路の水路本体への水分の浸透を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明の水路の更生方法に係る水路の実施形態について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は水路の縦断面図、
図2はその一部を拡大した縦断面図である。この水路は、例えば農業の灌漑のために用いられ、水路本体1と、裏込材2と、ライニング板3とを有している。
【0018】
水路本体1はコンクリートからなり、地面Sを掘削して形成した樋状の掘削溝の内側に敷設されている。この水路本体1は、前記掘削溝にちょうど嵌り込む、上部が開口した樋状をしている。
【0019】
裏込材2は透水性を備えた板状の部材からなり、水路本体1の内面に設けられる。この実施形態では、数mm程度の粒径のコンクリートを集合させて固めた、多孔質のポーラスコンクリートが採用されている。裏込材2を構成するコンクリート粒の間には連通間隙が形成されており、水分Wはこの連通間隙を通って裏込材2の内部を自在に流れ得るようになっている。内部に水分Wを自在に流し得る連通間隙を有する素材であれば、ポーラスコンクリート以外の素材も適宜採用することができる。
【0020】
ライニング板3は、裏込材2の内面に設けられる。この実施形態では、繊維強化プラスチック樹脂モルタル複合板(FRPM板)が採用されている。このFRPM板は、遮水性があるため、裏込材2の内面を確実に保護することができる。しかも、FRPM板の表面は滑らかなので、水路の水理特性を向上する作用も有している。遮水性と所定の水理特性を有する部材であれば、FRPM板以外の素材も適宜採用することができる。
【0021】
ライニング板3は、アンカー部材4を用いて水路本体1及び裏込材2に固定される。このアンカー部材4は、
図3(a)〜(c)に示すように、先端が拡開可能なアンカー本体4aと、このアンカー本体4aに同軸に挿し込まれる軸体4bと、アンカー本体4aに同軸に取り付けられるワッシャー4cと、アンカー本体4aのねじ部にねじ込まれ、裏込材2とワッシャー4cとの間に配置されるライニング板3を裏込材2側に押し付けて固定するナット4dと、を有している。すなわち、ワッシャー4cとナット4dは、アンカー本体4aから取り外し自在となっている(
図3(b)参照)。
【0022】
アンカー本体4aを水路本体1等に予め形成したアンカー穴に挿し込み、軸体4bをアンカー本体4aの先端側に向けて打ち込むと、この軸体4bの先端がアンカー本体4aの先端を拡開し(
図3(c)参照)、アンカー穴の内壁にアンカー本体4aの先端が食い込んだ状態となる。このため、軸体4bの打ち込み後に、このアンカー本体4aを再度引き抜くことはできない。しかしながら、ワッシャー4cとナット4dは、アンカー本体4aから取り外し自在となっているため、これらを取り外すことにより、一旦取り付けたライニング板3をアンカー本体4aの頭部側から取り外すことができる。このように、ライニング板3を取り外し自在としたことにより、定期的に劣化状況のモニタリングを行い、必要に応じて、劣化した裏込材2及びライニング板3を速やかに交換することができる。
【0023】
水路本体1の内面への裏込材2(ポーラスコンクリート)の施工に際しては、通常、裏込材2が流動性を有する状態で行う。すなわち、水路本体1の側面側への施工においては、まず、この側面側に、裏込材2の厚みに相当する隙間を設けつつ、アンカー部材4を用いてライニング板3を側面側に固定する。そして、水路本体1とライニング板3との間の隙間に、流動性を有する裏込材2を流し込む。この一方で、水路本体1の底面側への施工においては、まず、この底面側に流動性を有する裏込材2を流し込む。そして、この裏込材2が硬化した後に、アンカー部材4を用いてライニング板3を底面側に固定する。
【0024】
水路本体1、裏込材2、及びライニング板3には、これらを貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔内には、筒状の水抜き部材5が設けられている。水抜き部材5は、水路本体1、裏込材2、ライニング板3に形成した貫通孔の内面からこの貫通孔内に浸み出た水分Wをこの水抜き部材5を通して、水路内に排出する作用を有している。この水抜き部材5の水路内に臨む端部には逆止弁5aが設けられており、水路を流れる水が、水抜き部材5側に逆流しないようになっている。
【0025】
水路本体1、裏込材2、及びライニング板3の上端部には、断面L字形の止水部材6が設けられている。この止水部材6を設けることにより、雨水、融雪水等の水分Wが、水路本体1等の上端部から水路本体1等の内部に直接浸透するのを防止している。
【0026】
上記のように、水路本体1とライニング板3の間に透水性を備えた裏込材2を設けることにより、水路本体1内の水分Wが裏込材2側に排出される。このため、水路本体1に浸透した水分Wが、寒冷地の冬季の温度差によって融解及び凍結を繰り返すのを防止することができる。しかも、内部に空気が保持された裏込材2の断熱性により、水路本体1が冷却されにくく、この水路本体1内に残留する水分Wの凍結を確実に防止することができる。水路の側面側に設けた裏込材2(2a)に浸透した水分Wは、水路の底部側に設けた裏込材2(2b)に到達し、この裏込材2(2b)を通って水路本体1に沿って下流側に流れる。このように、水分Wは、裏込材2(2a、2b)内で滞留せず常に流動状態にあるため、この水分Wが裏込材2(2a、2b)内で凍結する問題も生じにくい。
【0027】
また、上記のように、水抜き部材5を設けることにより、水路本体1に浸透した水分Wを一層速やかに水路に排出することができる。しかも、裏込材2内の水分Wを水路に排出することにより、裏込材2内の水分Wの量を減らすことができ、その結果、この裏込材2による水路本体1の高い水抜き作用を維持することができる。この水抜き部材5は、水路の流路に沿って適宜の間隔(例えば、数メートル間隔)で設けることができる。
【0028】
水路本体1内の水分Wの排出しやすさは、この水路本体1の内面に設けた裏込材2の透水性と関係する。そこで、水路高さH(水路内面の底面から水路本体1の上端までの高さ。
図1参照)、及び裏込材2の透水係数と、裏込材2内における水分Wの排出しやすさとの関係をダルシーの法則に基づく計算によって評価した。この計算では、水路高さHを150cm又は200cmとし、裏込材2の透水係数を0.001cm/sec〜0.1cm/secの範囲で変化させた。また、排水孔(
図1における水抜き部材5)の水路内面の底面からの高さ(排水孔高さh。
図1参照)を20cmとした。この計算においては、計算開始時点において、水分Wは、裏込材2の水路高さHの上端まで満たされた状態(飽和状態)であると仮定した。
【0029】
その計算結果を
図4に示す。本図(a)は水路高さHが150cm、(b)は水路高さHが200cmのときの結果である。裏込材2の透水係数が0.05cm/sec以上であれば、水路高さHが200cmの場合でも、3時間程度で排水孔高さh(20cm)まで水位が低下することが確認できた。その一方で、透水係数が0.01cm/sec以下の場合には、透水係数が0.05cm/sec以上の場合と比較すると、水位の低下が大幅に緩慢になることが明らかとなった。実際には、裏込材2への水分Wの流入と、裏込材2からの水分Wの排出が同時に生じるため、裏込材2内で水分Wが飽和状態となることは極めて稀であるが、水分Wの速やかな排出のためには、透水係数が0.05cm/sec程度を上回っているのが好ましい。
【0030】
ここで、
図1に示す水路を例に挙げて、その更生方法について説明する。この水路は、上述したように、地面Sを掘削して形成した掘削溝内に敷設されたコンクリート製の水路本体1と、水路本体1の内面に設けられ、水路本体1に浸透した水分Wをこの水路本体1に沿ってその下流側に導く、透水性を備えた裏込材2と、裏込材2の内面に設けられ、その内面を保護するライニング板3と、を有する。
【0031】
このライニング板3は、上述したように、アンカー部材4を用いて水路本体1及び裏込材2に固定されている。このアンカー部材4は、先端が拡開可能なアンカー本体4aと、このアンカー本体4aに同軸に挿し込まれる軸体4bと、アンカー本体4aに同軸に取り付けられるワッシャー4cと、アンカー本体4aのねじ部にねじ込まれ、裏込材2とワッシャー4cとの間に配置されるライニング板3を裏込材2側に押し付けて固定するナット4dと、を有している。
【0032】
この更生方法においては、まず、アンカー部材4のアンカー本体4aから、ワッシャー4c及びナット4dを取り外し、このワッシャー4c及びナット4dで固定されているライニング板3を取り外す。このとき、アンカー本体4aは水路本体1に設けられたままの状態となっている。次に、ライニング板3に覆われていた裏込材2及び水路本体1の内面の劣化状況をモニタリングする。このモニタリングの結果、裏込材2の劣化が確認された場合は、その劣化した裏込材2を取り外し、新品の裏込材2とライニング板3を水路本体1の内面に設け、アンカー本体4aにワッシャー4cを設けるとともにナット4dを締め付けて、裏込材2及びライニング板3を固定する。これらの劣化状況に応じて、裏込材2又はライニング板3の一方のみ新品に交換することもできる。
【0033】
上記においては、
図1に示す本願発明に係る水路の更生方法について説明したが、水路本体1の内面に直接、あるいは、モルタル層を介してライニング板3を設けた、従来式の水路の更生にも適用することができる。すなわち、ライニング板3を取り外した上で、水路本体1又はモルタル層の内面の劣化状況をモニタリングした後に、この水路本体1の内面に裏込材2を新たに設け、さらにこの裏込材2の内面にライニング板3を設け、このライニング板3を水路本体1の内面に、上述したワッシャー4cとナット4dをアンカー本体4aとは別部材としたアンカー部材4で固定する。
【0034】
このように、従来式の水路を更生すれば、次回の更生の際には、ワッシャー4cとナット4dを取り外すことにより、ライニング板3等を取り外すことができ、劣化状況のモニタリングや水路の更生を容易に行うことができる。また、新設状態のコンクリート製水路(その内面でコンクリートがむき出しの状態)と比較して、その内面にライニング板3(FRPM板)を設けた水路は、耐力の面においても優れている。このため、水路の一層の長寿命化を図り、メンテナンス等に要するコストの削減を図ることができる。
【0035】
この水路の更生方法では、既設の水路を更生して、耐久性を一層向上することができるため、既設の水路を有効活用して、更生作業に要するコストを大幅に削減することができる。
【0036】
上記の実施形態において説明した水路の更生方法はあくまでも一例であって、既設の水路の更生を容易に行う、という本願発明の課題を解決し得る限りにおいて、更生方法の工程中に別の工程をさらに追加する等の変更が許容される。
【符号の説明】
【0037】
1 水路本体
2(2a、2b) 裏込材
3 ライニング板
4 アンカー部材
4a アンカー本体
4b 軸体
4c ワッシャー
4d ナット
5 水抜き部材
5a 逆止弁
6 止水部材
S 地面
W 水分
【要約】 (修正有)
【課題】既設の水路の更生を容易に行うことができる更正方法を提供する。
【解決手段】まず、アンカー部材4のアンカー本体から、ワッシャー及びナットを取り外し、アンカー本体が水路本体1に設けられたままの状態としつつ、ワッシャー4及びナットで固定されているライニング板3を取り外す。次に、ライニング板3に覆われていた裏込材2及び水路本体1の内面の劣化状況をモニタリングする。このモニタリングの結果、裏込材2の劣化が確認された場合は、その劣化した裏込材2を取り外し、新品の裏込材2とライニング板3を水路本体1の内面に設け、アンカー本体にワッシャーを設けるとともにナットを締め付けて、裏込材2及びライニング板3を固定する。
【選択図】
図1