特許第5740552号(P5740552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740552真空蒸発法における蒸気流を制御するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740552
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】真空蒸発法における蒸気流を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   C23C14/24 T
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-538797(P2010-538797)
(86)(22)【出願日】2008年12月22日
(65)【公表番号】特表2011-506776(P2011-506776A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2008068202
(87)【国際公開番号】WO2009083546
(87)【国際公開日】20090709
【審査請求日】2011年12月8日
(31)【優先権主張番号】2007/0618
(32)【優先日】2007年12月21日
(33)【優先権主張国】BE
(31)【優先権主張番号】08150579.4
(32)【優先日】2008年1月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515094567
【氏名又は名称】アドヴァンスト ガルヴァニゼイション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンデン ブランデ、ピエール
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−008241(JP,A)
【文献】 特表2004−507617(JP,A)
【文献】 特開昭58−133374(JP,A)
【文献】 特開平10−152777(JP,A)
【文献】 実開平05−062568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向に移動している走行基板のコーティングのための装置であって、この装置は前記基板のための入口開口(7)及び出口開口(8)を備えた閉じ込め容器(5)を含み、前記閉じ込め容器(5)内にはコーティング材料の蒸気供給源(4)が存在し、前記閉じ込め容器(5)は、少なくとも1つの処理開口を通して前記蒸気供給源(4)と連通する処理ゾーン(6)を有しており、この蒸気供給源(4)は基板をコーティングするための蒸気流を発生させることを可能にするようになっている、走行基板のコーティングのための装置において、
前記閉じ込め容器(5)の内側と、入口開口(7)と出口開口(8)との間に延在する壁によって区切られているチューブ状の通路との間における前記処理開口を通る前記蒸気の流れを制御するための調節手段が備えられており、この通路は、前記処理ゾーン(6)を含んでおり、前記調節手段は、開放位置と閉鎖位置との間で動かすことができる閉塞部材(13)を含んでおり、前記開放位置においては、前記蒸気の流れが前記閉じ込め容器(5)から前記処理開口を通り前記通路及び前記処理ゾーン(6)に向かうことができるようになっており、前記閉鎖位置においては、前記処理ゾーン(6)が前記閉じ込め容器(5)及び前記蒸気供給源から隔離されるようになっており、前記閉じ込め容器は、前記通路の周りで前記蒸気の自由な循環と分配を可能にするようになっており、前記通路は、少なくとも1つの処理開口を備えた壁を有し、これらの壁は、少なくとも部分的に、開放位置と閉鎖位置との間で徐々に動かすことができる前記閉塞部材(13)からなり、前記開放位置においては、前記蒸気の流れが、前記蒸気供給源(4)から前記処理開口を通り通路の内部に入ることができるようになっており、前記閉鎖位置においては、前記通路の内側が前記蒸気供給源(4)から隔離されるようになっている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記閉じ込め容器(5)の壁と、前記通路との間に自由空間があり、前記閉じ込め容器(5)内の前記通路の周りにおいて、前記蒸気の自由な循環と分配が可能になっている、請求項1に記載された装置。
【請求項3】
前記通路は、前記閉じ込め容器(5)の入口開口(7)と出口開口(8)との間において前記進行方向に延在しており、前記処理ゾーン(6)がこの通路内に配置され、前記調節手段が、前記蒸気供給源(4)と前記通路の内側との間の前記蒸気の流れを制御することを可能にするようになっている、請求項1または請求項2に記載された装置。
【請求項4】
前記閉塞部材(13)は、細長い薄板(15)によって形成され、これらの細長い薄板(15)のそれぞれは、前記開放位置と前記閉鎖位置との間で傾斜可能となるように前記処理開口に連結されている、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項5】
前記細長い薄板(15)は、長方形の形状を有し、前記長方形の長手方向は、前記閉じ込め容器(5)の前記入口開口(7)と前記出口開口(8)との間における前記基板(25)の進行方向と平行になっている、請求項4に記載された装置。
【請求項6】
前記閉塞部材(13)は、前記開放位置と前記閉鎖位置との間の前記進行方向と平行な方向に動かすことができるように配置されている、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項7】
前記閉塞部材(13)は、前記開放位置と前記閉鎖位置との間の進行方向を横断する方向に動かすことができるように配置されている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項8】
前記閉塞部材(13)は、一連の平行な細長い薄板(15)を含み、一連の平行な前記細長い薄板(15)は、前記開放位置においては、互いから一定距離のところに延在し、前記流れがこれらの細長い薄板(15)の間を通って前記処理ゾーン(6)に向かうようにすることができ、閉鎖位置においては、互いに接触し、前記処理開口を閉じ、前記蒸気供給源(4)を前記処理ゾーン(6)から隔離するようになっている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項9】
コーティングされる前記基板(25)の断面に応じて、前記処理ゾーン(6)に向かう前記蒸気流れの分配を調節することが可能となるように、前記閉塞部材(13)は、互いに関して独立して作動させることができる、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項10】
前記通路の壁は、これらの壁に前記コーティング材料の前記蒸気が凝結することを防止するよう十分に高い温度に維持される、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項11】
前記閉じ込め容器(5)は、加熱壁を含み、これらの壁に前記コーティング材料が蒸着することを防止するようになっている、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項12】
前記閉じ込め容器(5)及び前記処理ゾーン(6)は、真空チャンバ(3)内に収容されている、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項13】
前記コーティング材料を蒸発させ、前記コーティング材料を対向電極に対して平均して負に分極させるために、前記閉じ込め容器(5)内にプラズマを発生させるための手段が備えられている、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項14】
前記蒸気供給源は、液体状態の亜鉛を収容した保持容器(4)を含む、請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項15】
前記保持容器(4)は、真空チャンバ(11)内に配置されている真空炉(12)内に維持されている亜鉛溜めに浸けられた供給チューブ(9)を介して液体亜鉛の供給を受ける、請求項14に記載された装置。
【請求項16】
処理ゾーン(6)を通り進行方向に移動している走行基板(25)のコーティングのための方法であって、コーティング材料の蒸気を閉じ込め容器(5)内に生成させ、この蒸気を処理開口を通過して前記処理ゾーン(6)に向かわせ、前記処理ゾーン(6)において、前記コーティング材料を前記基板(25)の表面に凝結させる方法において、
前記閉じ込め容器(5)内に存在する前記コーティング材料の前記蒸気を、自由に循環させ、前記処理ゾーンを含む通路の周りに分配させ、前記通路は、少なくとも1つの処理開口を備えた壁を有し、これらの壁は、少なくとも部分的に、開放位置と閉鎖位置との間で徐々に動かすことができる閉塞部材(13)からなり、前記処理開口を通ってこの通路の内側に向かう前記蒸気を、前記閉塞部材(13)を前記開放位置と前記閉鎖位置との間で調節し、前記処理開口の閉塞を調節することによって制御し、前記開放位置において、前記蒸気を前記処理開口を通り前記処理ゾーン(6)を含む前記通路に向かわせ、前記閉鎖位置において、前記蒸気が前記処理開口を通り前記通路に向かうことが妨げられるようにする、ことを特徴とする方法。
【請求項17】
コーティングされる前記基板(25)の断面に応じて、前記処理ゾーン(6)に向かう前記蒸気流れの分配を調節する、請求項16に記載された方法。
【請求項18】
前記閉塞部材(13)を、この部材(13)に前記コーティング材料の前記蒸気が凝結することを防止するよう十分に高い温度に維持する、請求項16又は請求項17に記載された方法。
【請求項19】
前記閉じ込め容器(5)の壁を、これらの壁に前記コーティング材料が蒸着することを防止するために加熱する、請求項16から請求項18までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項20】
前記閉じ込め容器(5)及び前記処理ゾーン(6)を、真空状態に維持し、又は、0.01ミリバール未満のアルゴン圧力に維持する、請求項16から請求項19までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項21】
前記コーティング材料を、前記閉じ込め容器(5)内に発生するプラズマを用いて蒸発させ、前記蒸気中の前記コーティング材料を、対向電極に対して平均して負に分極させる、請求項16から請求項20までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項22】
前記コーティング材料の前記蒸気を、蒸気供給源(4)を形成する保持容器内の前記閉じ込め容器(5)の中で液体状態に維持されている亜鉛から形成させる、請求項16から請求項20までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項23】
前記亜鉛を、真空炉(12)内に維持されている亜鉛溜めから、前記保持容器内の前記閉じ込め容器(5)に導入する、請求項22に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行方向に移動している、走行基板をコーティングするための方法及び装置に関するものである。この装置は、閉じ込め容器を含む。閉じ込め容器の中には、コーティング材料の蒸気供給源が存在する。閉じ込め容器は、少なくとも1つの処理開口を通して蒸気供給源と連通する処理ゾーンを有する。この蒸気供給源は、基板をコーティングするための蒸気の流れを発生させることが可能である。したがって、本発明は、真空蒸着法でコーティングされる基板に向かう蒸気の流れを制御するための装置及び方法に関するものである。本発明は、とりわけ、ストリップ(strip)、ガーダー(girder)、板、プロファイル(profile)等、あらゆる種類の横断面の形態を有する鋼基板に向けて、さらには、支持材、例えば、フック又は金属バスケット上に配置されたコーティングゾーンへ運ばれる部品に向けて、金属を蒸発させることによって得られる亜鉛蒸気の流れを制御し、調節する場合に有利である。
【0002】
本発明の主題である蒸発蒸気流の制御は、蒸発させる物質の性質及び使用される蒸発の種類の両方と全く関係ないが、亜鉛プラズマ蒸発法による亜鉛メッキ法でコーティングされる物質に向けて、亜鉛蒸気の流れを制御し、調節することにとりわけ適している。蒸気源に含まれるコーティング材料を、例えば、ジュール効果若しくは誘導によって、又はプラズマによって加熱し、この材料を蒸発させることができる。
【背景技術】
【0003】
亜鉛プラズマ蒸発法による亜鉛メッキ法は、すでに知られており、国際公開第02/16664号において記載されている。この方法では保持容器を使用して、液体状態で一定量の亜鉛を保持し、対向電極、とりわけ陽極に対して液体亜鉛を平均的に負にバイアスすることによって、亜鉛蒸気中に生成されるプラズマを使って蒸発させる。対向電極は、コーティングされる基板によって形成することができる。保持容器には、真空容器内に配置されている真空炉に保持されている亜鉛溜めに浸けられた供給チューブを介して液体亜鉛が供給される。真空容器は、亜鉛メッキ真空タンクに向かうガスの通路から隔離されている。ガス圧力を調節することによって、亜鉛メッキが行われる真空タンク中に配置されている保持容器内の液体亜鉛のレベルを調節することが可能である。亜鉛蒸気中で発生するプラズマは、一般的に、保持容器の下に配設されている磁気回路を用いたマグネトロン放電によって得られる。保持容器の上の亜鉛蒸気圧は、液体亜鉛の表面で消費される電力に依存し、単位時間に鋼基板上に蒸着することが可能な亜鉛の重量を固定する。一般的に、この蒸気圧は、数kg/分の蒸発した亜鉛の質量に対応して、数ミリバール程度とすることができる。したがって、国際公開第02/16664号に記載されているように、閉じ込め容器に加熱壁を備え、亜鉛蒸気が、基板以外のすべての冷表面上で凝結することによって、設備全体を汚染することを防ぐことが推奨される。一般的に、冷表面は周囲温度となっている。この閉じ込め容器に入口及び出口となる開口を設けて、コーティングされる基板をそれらの開口に通すことができる。したがって、閉じ込め容器を通過する基板の冷表面上において、亜鉛蒸気を直接固体状態に凝結させることによって、亜鉛コーティングを得ることができる。基板の表面温度は、典型的には、150℃未満である。
【0004】
閉じ込め容器を単位時間に通過する鋼基板の面積に応じて、電力を供給する必要があることは容易に理解されるであろう。電力は、プラズマに供給され、プラズマから出るイオンによる衝撃を介して、保持容器内の液体亜鉛の表面上で消費される。とりわけ、基板が、閉じ込め容器内に存在していないか、又は閉じ込め容器内を通過していないときに、この電力供給を削減する。また反対に、基板が、閉じ込め容器内に入るか、又は閉じ込め容器内を通り始めるときに、液体亜鉛の表面上で消費される電力を誘発し、徐々に増やす。これは、基板の表面上の亜鉛の厚みを確実に一様にするだけでなく、とりわけ、基板が閉じ込め容器を通過しないときに、閉じ込め容器の入口開口及び出口開口を通る亜鉛の損失を制限するために実行される。何故なら、経済的損失は別として、亜鉛及びエネルギーに関して、もし亜鉛汚染が管理されなければ、プラズマ蒸発法による亜鉛メッキ設備に重大な損傷を与える可能性があるからである。
【0005】
従来技術に記載されている閉じ込め容器を使用することについては、いくつかの短所がある。
【0006】
基板が存在していないか、又は基板が閉じ込め容器を通過していないときに、例えば、プラズマ加熱によって亜鉛を蒸発させることができる電力が遮断されたとしても、保持容器に収容されている液体亜鉛は、プロセスが正常に機能している間に金属に蓄積された熱によって蒸発し続ける。したがって、この亜鉛蒸気は、閉じ込め容器の入口開口及び出口開口を通って自由に抜け出すか、又は動かない基板上に凝結する傾向がある。閉じ込め容器の外側に向かう亜鉛のこのような損失を制限するために、又は動かない基板上の亜鉛の凝結を制限するために、液体亜鉛が存在している保持容器を空にし、亜鉛メッキ・タンクの下に配置されているタンク内の温度維持炉内に配置された液体亜鉛溜めに液体亜鉛を戻すという単純な方法を行うことが可能である。残念なことに、基板が閉じ込め容器に出入りする、又は基板の通過を停止させる、又は基板の通過を再開させるのに要する過渡的時間は、一般的に、フィード・チューブを通して、保持容器に液体亜鉛を充填するために要する時間、及び保持容器から液体亜鉛を排出するために要する時間に比べてかなり短い。その結果、この解決策は、実用的ではない。
【0007】
さらに、任意の基板が閉じ込め容器を通過しているときに、従来技術に記載されているような閉じ込め容器では、コーティングされる基板のさまざまな面に応じて亜鉛の流れを適応させることが可能でない。このことは、コーティングされる基板の表面の面積が蒸気流の向きによって異なる場合には、基板全体に確実に一様な蒸着をするという目的に対して重大な影響を及ぼす。例えば、I字型又はU字型の断面を有するガーダーの場合である。また、異なる面において異なる厚みとなるように基板をコーティングすることも可能ではない。例えば、鋼薄板の面のうちの1つに、この鋼薄板の他の面に施されているコーティングの厚みと異なる特定の厚みのコーティングを施したい場合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/16664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主題の方法及び装置の目的は、本質的に、以下のことを可能にすることによって、とりわけ、これら2つの短所を解消することである。
−コーティングされる基板が通る処理ゾーンから閉じ込め容器の内側を隔離すること。この機能は、基板が処理ゾーンを横断しない、又はこの処理ゾーンを通って進行しない場合に作動する。
−少なくとも1つの蒸気閉塞部材を調節することによって、基板の進行方向を横断する方向に応じて、又は処理ゾーンに対する閉じ込め容器内の蒸気供給源の位置に応じて、蒸気流を調節すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このことに従って、蒸気供給源と処理ゾーンとの間において、前記処理開口を通る前記蒸気の流れを制御するための調節手段が構成される。これらの調節手段は、前記蒸気の流れが処理ゾーンに向かう処理開口を通過することができる開放位置と処理ゾーンが蒸気供給源から隔離されている閉鎖位置との間で動かすことができる閉塞部材を含む。
【0011】
本発明の特に有利な構成において、閉じ込め容器の入口開口と出口開口との間において基板の進行方向に通路が延在しており、前記処理ゾーンはこの通路内に配置され、調節手段が、蒸気供給源と通路の内側との間の前記蒸気の流れを制御することを可能にするようになっている。
【0012】
したがって、閉じ込め容器の入口開口及び出口開口は、通路によって結合される。この通路は、チューブの形態をしており、閉じ込め容器を完全に貫通しており、開閉装置を有している。開閉装置は、閉じ込め容器の内側から基板が通る処理ゾーンに向けて蒸気を通すことができる。基板が処理ゾーンを通って横断し進行していない場合、閉じ込め容器を完全に貫通するこのチューブのすべての開口は閉鎖される。基板が処理ゾーンを通過するときに、それぞれの開口において、基板に向かう望ましい蒸気の流れに応じて、通路内の開口は、開き具合が加減される。
【0013】
例えばジュール効果によって、閉じ込め容器の壁を加熱するための装置が備えられる。この装置は、前記壁への金属蒸気の固体又は液体凝結を防ぐのに十分な壁温度をもたらすサイズである。また、閉じ込め容器を加熱するためのこのシステムは、閉じ込め容器を通過する蒸気の流れを調節するための通路を構成する壁を、輻射によって同じ温度に維持し、亜鉛蒸気の凝結を防止することも有利に行える。これにより、蒸気流調節装置の設計を簡素化することが可能になる。このため、開放位置と閉鎖位置との間で動かすことができ、一般的に任意の形状を有する閉塞部材からなる単純な機械的構造を簡単に使用できる。開放位置においては、前記蒸気流が処理ゾーンに向かう処理開口を通過することができる。閉鎖位置においては、処理ゾーンが一般的に任意の幾何学的形状を持つ蒸気供給源から隔離されている。
【0014】
本発明は、プラズマ亜鉛メッキ・装置、及び、チューブの形態の通路が完全に貫通している、調整可能な閉塞部材を備えた、閉じ込め容器に限定されないことは明らかである。これは、一般的に、任意の蒸気供給源を用いて任意の加熱手段によって真空蒸発を行うことが可能であるからである。材料は、亜鉛に限定されない。例えばマグネシウムなどの他の金属、又はポリマー分子の蒸着を目的とする有機分子も可能である。調整可能な閉塞部材のシステムは、閉じ込め容器を完全に貫通するチューブ状の構造によって必ずしも形成されず、平坦な幾何学的形状を有し、閉じ込め容器の壁内に形成された処理開口を閉鎖し、コーティングされる基板の領域に面することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の詳細及び特徴は、付属の図面を参照して、本発明装置及び方法の特定の実施形態の限定的でない実施例を用いて、以下に述べる説明から明らかになる。
図1】従来技術において記載されている、プラズマ亜鉛メッキ・装置を示す斜視図である。
図2】本発明による閉じ込め容器を示す概略斜視図であり、閉じ込め容器の処理ゾーンは、連結された細長い薄板によって形成された閉塞部材を備え、容器の入口開口と出口開口との間に延在していることを示す図である。
図3】本発明による、連結された一連の平行な細長い薄板によって形成された、処理ゾーンの壁を示す概略斜視図である。
図4】本発明による、壁がスライドの形態の閉塞部材によって形成されている、処理ゾーンを備える閉じ込め容器を示す概略斜視図である。
図5】本発明による、処理ゾーンを備える閉じ込め容器を示す概略斜視図であり、処理ゾーンの壁がその平面に対して平行に、又は垂直に移動することができる平坦な閉塞部材を形成していることを示す図である。
図6】プラズマ亜鉛メッキ設備内における本発明装置の特に有利な形態を示す概略図であり、基板が処理ゾーンを通過し、閉塞部材がその開放位置にある場合を示す図である。
図7】基板が存在せず、閉塞部材が閉鎖位置にあるときの、図6の本発明装置を示す図である。 さまざまな図において、同じ参照記号は、類似の、又は同一の要素を指す。
【実施例】
【0016】
図1に示されている通り、従来技術による亜鉛メッキ・装置は、コーティングされる基板が通過する上部機器1と、液体亜鉛溜めを備える底部機器2とからなる。
【0017】
上部機器1は、真空チャンバ3を含む。真空チャンバ3の中には、保持容器4によって形成される蒸気供給源が配置されている。保持容器4の上には、閉じ込め容器5が載っている。閉じ込め容器は、壁に蒸気が蒸着するのを防止するために加熱壁を有している。閉じ込め容器は、チューブ状の形状をしており、コーティングされる基板の移動方向に対し横断する方向に蒸気の漏れを生じることなく、蒸気を自由に循環させ、コーティングされる製品の全面に蒸気を分配させることができる。
【0018】
保持容器4内に存在している液体亜鉛は、閉じ込め容器5内に発生させられたプラズマによって蒸発させられ、処理ゾーン6に向かう亜鉛蒸気の流れが作られる。処理ゾーン6を、コーティングされる基板が通過する。この処理ゾーン6は、閉じ込め容器5の入口開口7と出口開口8との間に延在し、閉じ込め容器5の開口7及び8を接続する通路に対応する。処理ゾーン6は、保持容器4の上に位置付けられている。処理ゾーン6は、この通路の開いている壁を通して閉じ込め容器5の内側と連通している。このように、開いている壁は処理開口を形成する。
【0019】
保持容器4は、供給チューブ9を用いて供給を受ける。供給チューブ9は、上部機器1の真空タンク3と底部機器2の第2の真空タンク11との間に配置されている気密接続部10を通過する。この供給チューブ9は、保持容器4の底部に出てきており、第2の真空タンク11内の温度維持炉12内に保管された液体亜鉛溜め中に浸けられる。
【0020】
この図1から明らかな通り、従来技術による閉じ込め容器5は、処理ゾーン6内に存在する基板のさまざまな面に向かう亜鉛蒸気の流れを調節するための装置を備えていない。又は、処理ゾーン6内に基板が存在しない場合にこの蒸気の通路を塞ぐための装置を備えていない。
【0021】
図2は、本発明の有利な実施形態による閉じ込め容器5を示す。閉じ込め容器5は、図1の処理ゾーン6を備える。閉じ込め容器5は、蒸気供給源4と処理ゾーン6との間のコーティング材料から処理開口14を通って入ってくる蒸気の流れを制御するための調節手段を備えている。
【0022】
閉じ込め容器5の内側の空間によって、コーティング材料からの蒸気をコーティングされる製品の全面に、及び/又は通路の周りに分配することが可能になる。したがって、閉じ込め容器の壁と通路の壁との間に自由空間が存在し、閉じ込め容器内の蒸気の循環と分配が自由に行われるようにすることが好ましい。
【0023】
通路は、処理ゾーン6を含む。通路は、チューブ状構造を有し、入口開口7と出口開口8との間に延在する壁によって区切られていることが好ましい。したがって、通路の壁は、処理ゾーン6を囲む。これらの壁は、処理開口14を有する。これらの壁は、調節手段を含む。この調節手段は、処理開口14を開閉し、基板の移動方向に対して横断する方向の蒸気の流れを調節する。
【0024】
調節手段は、閉塞部材13を含む。閉塞部材13は、開放位置と閉鎖位置との間を移動できる。開放位置では、前記蒸気の流れが処理ゾーン6に向かう処理開口を通過することができる。閉鎖位置では、処理ゾーン6が蒸気供給源4から隔離されている。
【0025】
通路の壁は、閉じ込め容器5の入口開口7と出口開口8との間において、基板の進行方向に延在し、前記処理ゾーン6を含む。通路の壁は、開放位置と閉鎖位置との間で動かすことが可能な閉塞部材14によって形成される。開放位置では、処理開口は、少なくとも部分的に開いており、前記蒸気の流れは、この処理開口を通じて蒸気供給源4から通路の内部に入ることができる。閉鎖位置では、通路の内側、すなわち、処理ゾーンは、蒸気供給源4から閉塞部材13によって隔離されている。このように、通路の壁は、閉鎖位置と開放位置との間を動かすことができる。
【0026】
閉塞部材13は、開放位置と閉鎖位置との間で傾斜できるように処理開口に連結(articulated)された細長い薄板15によって形成される。細長い薄板15は、長方形の形状を有しており、その長手方向は、閉じ込め容器5の入口開口7と出口開口8との間の基板の移動方向と平行になるように延在している。
【0027】
図3には、通路の壁が示されている。これらの壁は、細長い薄板15によって形成された前記閉塞部材13を含み、一種のベネチアン・ブラインドを構成する。ベネチアン・ブラインドは、閉じ込め容器5において処理ゾーンを隔離絶縁するために、処理開口を閉鎖することができる。
【0028】
通路は、チューブ状構造を有する。チューブ状構造は、互いに平行な長方形の細長い薄板15を有する壁で構成され、移動可能な中央スピンドルによって支持フレーム16内に固定されている。支持フレーム16は、開口17を有する。開口17は、閉じ込め容器5の入口開口7及び出口開口8にそれぞれ隣接しており、コーティングされる基板を通すことができる。細長い薄板15の中央軸線周りに細長い薄板15を回転させることによって、細長い薄板15をブラインドのように開閉できる。図を分かりやすくするために、細長い薄板を回転させるための装置は示されていない。それぞれの細長い薄板15は、一般的に独立した方法で回転させることができる。これにより、コーティング方法の自由度が最大にまで高められる。細長い薄板15を駆動するための装置は、例えば、モーター又はジャッキを含むことができる。細長い薄板15を駆動するための装置は、蒸気供給源4によって発生する蒸気による汚染を受けないように、閉じ込め容器5の外側に配置されることが有利である。
【0029】
図4は、処理ゾーン6を備えた閉じ込め容器5を示している。この閉じ込め容器5は、処理ゾーンを収容する通路の壁がスライド18、19、20、及び21によって形成されているという点で図2に示されているものと異なる。
【0030】
本発明装置のこの特定の構成において、スライド18、19、20、及び21は、通路の中心軸線に平行に、又は、言い換えると、処理ゾーン6を通る基板の進行方向に平行に移動することができる。これらのスライド18、19、20、及び21を閉じ込め容器5の外側に引き出すことによって、開口が、スライド18、19、20、又は21が閉じ込め容器5の外側に引っ張られた領域に比例して開かれる。開口は、処理ゾーンに向けて、引っ張られたスライドと垂直方向に蒸気を通過させることができる。基板がこの処理ゾーン6を通過していないときに、処理開口全体を閉鎖し、蒸気が処理ゾーン6に向かって進むことを妨げるために、スライド18、19、20、及び21が、閉じ込め容器5内に動かされる。したがって、外側に向かう蒸気の損失が最小限度に抑えられる。
【0031】
通路の壁又はスライドを、互いに平行に並んで延在する1つ又は複数の細長い薄板で構成し、基板の周りの蒸気流をより正確に調節することもできる。そのような場合、それぞれの細長い薄板は、基板の進行方向に個別に平行に移動することができる。
【0032】
スライド18、19、20、及び21は、例えば、図示されていないジャッキによって作動される板によって形成され、閉じ込め容器5の外壁に固定される。
【0033】
図5は、通路内に備えられた処理ゾーン6を示している。その壁は、平坦な閉塞部材13を形成する。閉塞部材13は、その平面に対して平行に、又は垂直に移動することができる。
【0034】
本発明装置のこの特定の構成は、閉塞部材が一般的にいかなる方法でも動かすことができるという事実を示している。例えば、上部の閉塞部材及び2つの側面の閉塞部材の場合と同様に、閉じ込め容器5内部でそれらの平面に対して垂直に動かしてもよい。底壁は、例えば、2つの閉塞部材13を含む。その2つの閉塞部材13は、自己の平面内を、図示されていない基板の移動方向と垂直な方向に移動することができる。基板は、処理ゾーン6のそれぞれの側面の支持フレーム16に存在する開口17を通り抜けることができる。
【0035】
図6及び図7は、プラズマ亜鉛メッキ設備内の本発明装置を示している。とりわけ、この設備は、本発明装置の下流及び上流にある真空タンク22及び23内に装着された電動式ローラー24の列によって基板を輸送するためのシステムを含む。本発明は、処理ゾーン6を有する閉じ込め容器5が上に載っている保持容器4を含む。基板を吊り下げて、設備のさまざまなゾーンを通って基板を輸送するためのモノレール輸送システムなどの他の輸送システムも当然適用できる。
【0036】
基板は、図示されていないが、真空エアーロックによって設備内に導入される。真空エアーロックによって、処理ゾーン6及び閉じ込め容器5を真空状態又は必要なアルゴン圧力下に連続的に維持することが可能になり、したがって、空気の導入を通じて処理ゾーンが汚染されることが回避される。必要なアルゴン圧力は、典型的には、0.05〜5Paである。
【0037】
基板は、また、図示されていない出口真空エアーロックによって設備から出る。
【0038】
図6及び図7に示されている本発明装置では、細長い薄板15の形態の閉塞部材13を有する蒸気流を調節するためのシステムを使用する。コーティング材料の蒸気の流れを調節するためのこのシステムは、図2及び図3に示されている。亜鉛メッキされる基板25が、上部機器1の処理ゾーン6を通過するとき、図6に示されているように、細長い薄板15が開いており、亜鉛蒸気を基板25に向けて送ることができる。
【0039】
処理ゾーン6を通過する基板25がない場合、図7に示されているように、処理ゾーン6に向かう亜鉛蒸気の流れを調節するための細長い薄板15は完全に閉じられ、真空チャンバ3内の亜鉛蒸気損失が最大限制限される。したがって、通路の壁は閉鎖位置にあり、処理ゾーン6が、コーティング材料の蒸気が存在する閉じ込め容器5の内側から隔離される。
【0040】
4.プラズマ亜鉛メッキ設備内の本発明の運用条件及び特定の構成
4.1.プラズマ蒸発亜鉛メッキ・ユニットを始動すること
プラズマ蒸発亜鉛メッキ設備が、保守後に真空状態にされると、蒸気調節装置のバッフルのフラップ13によって形成された閉塞部材の位置が、この装置の調整可能な開口が最大限開いた位置にされ、空気を排出し、閉じ込め容器内部のアルゴンを必要なまでに加圧することが可能となる。設備のアルゴン圧力が0.001〜0.01ミリバールに到達すると、閉じ込め容器の壁が、電気素子によって400〜500℃の範囲の温度に加熱される。図2及び図3による亜鉛蒸気流調節装置のバッフルのフラップ13が回転によって作動し、開口を閉じて、閉じ込め容器の内側から処理ゾーン6を光学的に隔離する。蒸気調節装置のバッフルのフラップ13は、閉じ込め容器5の内壁によって放射される赤外線によって加熱される。少数のフラップ13に、その温度を監視するために熱電対が設けられることが有利である。フラップ13が作業温度に達すると(典型的には、400〜500℃の範囲)、液体亜鉛が設定レベルまで導入される。設定レベルは、保持容器4内において、一般的に電気的、光学的、又は機械的な手段によって測定される。
【0041】
4.2.基板の移動方向を横断する亜鉛蒸気流を調節するために、開放位置と閉鎖位置との間でスイングさせることができる一連の細長い薄板からなる閉塞部材を駆動するための特定の装置
本発明の特に有利な形態において、図2及び図3に示されているような、細長い薄板15によって形成された閉塞部材13は、支持材16に固定されているスピンドルによって支持される。一群の細長い薄板15の回転は、例えば、チェーン、ケーブル、又はランナーと連携するレバーなど、一般的に任意の手段によって一体で行われる。これは、基板の進行方向に対して平行に延在する通路の4つの壁に対して行われる。このようにして、装置は、調節された方法で開くことができる。とりわけ、処理ゾーンを含む通路の壁のそれぞれに対する処理開口は、独立して開閉することができる。これらの壁は、基板の処理ゾーン6に関して上、下、及び横にそれぞれ配置され、入口開口7と出口開口8との間に延在する。閉塞部材13は、閉じ込め容器5の外壁に固定された4つの独立した装置を使って機械的に駆動されることが有利である。閉じ込め容器5は、閉じ込め容器5の壁を通る4つの移送を介して周囲温度(約300K)に維持される。機械的駆動装置は、ジャッキ又は回転装置であってもよく、一般的には、電気機械式、空気圧式、又は油圧式とすることができる。
【0042】
本発明装置のこの特定の構成の利点は、問題となっている所定の幾何学的形状の基板について、コーティングされる基板の横断方向の領域に応じて、亜鉛蒸気流を、方向によって調節することができるという点である。とりわけ、コーティングされる基板の横断面に応じて処理ゾーンに向かって通る蒸気の分配を調節することが可能である。
【0043】
したがって、例えば、開口が上方を向き、断面の主要寸法が等しいU字型横断面を有する鋼基板の場合、基板の厚みを無視すると、U字の内面が側面及び底面のそれぞれより3倍広いので、基板の上方に配置されている通路の壁を通る亜鉛蒸気流を、基板の下方及び側面に配置されている壁を通過する亜鉛蒸気流に比べて、3倍大きくする必要がある。U字の内面は、本質的に、上部壁を通る亜鉛でコーティングされる。したがって、この上部壁は完全に開くが、側壁と底壁とは部分的に閉じられる。
【0044】
一般に、それぞれの壁を閉じる程度は、基板の幾何学的形状だけに依存するのではなく、処理ゾーンを構成する通路断面の横断寸法に対する基板のサイズ、並びに複数の基板を同時に処理するときの処理ゾーン内の基板の数及び分配、並びにそれぞれの壁についての蒸気供給源からの近さに依存する。
【0045】
例えば、上述のようなU字型横断面を持つ3枚の基板が、同時に処理され、処理ゾーン内に等距離で分配される場合、基板のすべての面にわたって一様なコーティングをもたらす壁の開口の程度は、典型的には、上面に対しては100%の開度、底面に対しては60%の開度、及び2つの側面に対しては20%の開度となる。
【0046】
鋼薄板又は鋼板の亜鉛メッキの場合、保持容器4の上の処理ゾーン6内で水平方向に移動する薄板又はプレートの2つの面の蒸着物の厚みを一様にするためには、薄板又はプレートの上に配置されている閉塞部材13を完全に開き、保持容器と薄板又はプレートとの間に配置されている閉塞部材を部分的に閉じ、閉じ込め容器内の亜鉛蒸気の流れを調節し、薄板又はプレートの2つの面上で同じ亜鉛蒸気流を形成する必要がある。一般に、本発明装置を鋼薄板又はプレートの亜鉛メッキに使用するに際して、薄板又はプレートの外側縁の反対側に配置される閉塞部材は必要であるわけではない。固定された左右の側壁を使用して、これらの壁に垂直な方向の蒸気の通過を遮断することが有利である。
【0047】
4.3.動作モードでの本発明装置を備えるプラズマ蒸発亜鉛メッキ・ユニットの管理
基板が、通路の内側の処理ゾーン6内に配置されていない場合、閉塞部材13は、すべての壁又は処理開口が閉じられた位置に保持される。
【0048】
入口開口7と出口開口8の近くに配置されている検出器のうちの一方又は他方又は両方によって、基板が、処理ゾーンの内側に、部分的に、又は完全に入っていると検出された場合、閉塞部材13が作動して壁を開き、要求される亜鉛蒸気流に応じて、及び/又は基板の進行方向に対する閉塞部材の位置に応じて、必要な程度の亜鉛蒸気を基板に向けて通すことができる。一般的に、閉塞部材の開度は、処理される基板の特性に応じて、例えば、同時に処理される基板の幾何学的形状及び数に応じて事前に調節される。
【0049】
閉塞部材13が開いた場合、保持容器4及び陽極に接続された電源が電力を供給する。陽極は、図示されてはいないが、閉じ込め容器5内において、保持容器4と処理ゾーンを含む通路との間に配置され、保持タンク内に導入される液体亜鉛を蒸発させるために必要なプラズマを亜鉛蒸気内で得ることを可能にする。この電源によってプラズマに供給される電力は、2つの入口検出器及び出口検出器が基板によって作動させられたときに、所定のプログラムにより公称電力値まで高められる。最後に、閉じ込め容器5の出口開口8の近くに配置されている検出器のみが、基板によって作動させられた場合、この電源によって供給される電力は、所定のプログラムにより低減され、遮断される。基板が、処理ゾーンを完全に出て、閉じ込め容器5の入口開口7及び出口開口8の近くに配置されている検出器によってもはや検出されない場合、閉塞部材13は、通路の壁内の処理開口を完全に閉鎖し、それによって、閉じ込め容器5の外側への亜鉛蒸気損失を最小限に抑えるように作動させられる。
【0050】
本発明方法においては、基板が処理ゾーンを通過又は進行しない場合、亜鉛蒸気が入っている閉じ込め容器から処理ゾーンが閉鎖される。本発明方法の重要な利点は、基板の処理ゾーンへの亜鉛の蒸発による損失を防ぐことによって、プラズマ中で電力を維持することなく、システムを、閉じ込め容器の壁の温度において、熱力学的平衡状態に維持し、その一方で、保持容器内の液体亜鉛が固化するリスクを防止するという点である。
【0051】
4.4.蒸気流を調節するための装置を備えるプラズマ蒸発亜鉛メッキ・ユニットの停止
プラズマ蒸発亜鉛メッキ・ユニットが停止した場合、基板は処理ゾーン内でもはや検出されず、閉塞部材は閉鎖位置にある。次いで、供給チューブ9を介して保持容器4の中身を温度維持炉12に空ける。容器4からすべての液体亜鉛が排出されると、閉塞部材が完全に開き、閉じ込め容器5の内側と外側との間にガスを通せるようになる。次いで、閉じ込め容器の加熱素子を遮断し、閉じ込め容器の内壁を冷ましてから保守のため設備を大気中において開放する。
【0052】
5.実用的用途の実例
5.1.鋼プロファイルのプラズマ蒸発亜鉛メッキ用の設備
プラズマ蒸発法による鋼プロファイルの亜鉛メッキのための設備は、図2及び図3に示されている通り、連結された細長い薄板15を用いて亜鉛蒸気流を調節するための装置を備えた閉じ込め室を装備している。蒸気流調節器は、処理ゾーンを通過する投入物の上、下、及び側面において、それぞれ亜鉛蒸気流の独立制御を行えるようにする4つの独立した壁を備える。亜鉛メッキされる投入物の進行方向の4つの主要横断方向に対応する4つの壁の閉塞部材は、閉じ込め容器5の外壁に固定されたジャッキ(図示されていない)を使って、対応する細長い薄板15を回転させることによって作動させられる。支持フレーム16における基板を通すための開口17の断面のサイズは、典型的には、700mm×200mmである。通路、又は基板の進行方向に平行な処理ゾーンの寸法は、600mmである。処理ゾーンを通過している基板が検出された場合、4つの独立した壁それぞれの細長い薄板15は、基板のすべての面上において一様なコーティングが行われる開度に従って開かれる。典型的には、基板の上に配置されている壁は100%開いており、基板の下に配置されている壁は80%開いており、側壁は50%開いている。投入物が処理ゾーンから完全に出てしまったときに、独立の閉塞部材は、完全に閉じられ、閉じ込め容器の外側に向かう亜鉛の損失をできる限り最小にするために、保持容器とそれに面する陽極(図示されていない)との間に接続されている電源が遮断される。亜鉛蒸気流を調節するためのこの装置では、投入物の周りを横断する毎分約3.5kgの公称流量の亜鉛蒸気を調節できる。
【0053】
5.2.走行鋼薄板のプラズマ蒸発亜鉛メッキ用の設備
プラズマ蒸発法による走行鋼薄板の亜鉛メッキ用の設備は、厚み1mm、幅1mの鋼薄板が100m/分の速度で水平方向に移動して通る閉じ込め室を備える。薄板の片面は、保持容器4に面している。それぞれの閉じ込め容器は、図4に示されているような、薄板の上に配置されている上部スライド・バッフル及び薄板の下に配置されている底部スライド・バッフルを備えており、閉じ込め容器の外壁上の固定ジャッキ(図示されていない)によって独立作動する亜鉛蒸気流調節装置を有する。薄板の幾何学的形状が平坦であれば、亜鉛蒸気調節装置の側壁は固定される。蒸気流調節装置の内寸法は、支持フレーム16の開口17については1100×50mmであり、薄板の移動の方向の縦方向の寸法については600mmである。動作時に、薄板の表面全体にわたる蒸着物の厚みを一様にするために、上部スライドは100%開いているが、底部スライドは、その全開状態の70%しか開いていない。
【0054】
連続コーティング・プロセスで一般的に必要なアキュムレータを鋼鉄リールの交換時に全く使用することなく済ませることができるので、この装置は、薄板の亜鉛メッキにとりわけ有利である。これは、投資の大幅な節減につながる。ベルトの進行が停止したときに、プラズマ亜鉛蒸発を可能にする電源の遮断に加えて、蒸気流調節装置の上部スライド及び底部スライドを完全に閉鎖し、ベルトの停止時間中に亜鉛が薄板に蒸着するのを完全に防ぐことができる。したがって、プラズマの存在下のみで蒸着が実行されるため、基板全面に一様な厚みの亜鉛が形成されるだけでなく、蒸着の品質も確保される。基板上に金属を真空凝結させるプロセスにおいてイオンが存在することによって、コーティングの品質が改善されることがよく知られている。
【0055】
亜鉛蒸気流を調節するためのこの装置では、薄板の2つの面に対して、毎分約3.5kgの公称流量の亜鉛蒸気の調節が可能である。
【0056】
本発明が上述の蒸気流調節装置の幾何学的形状及び機構だけに限定されることはなく、一般的にいかなる幾何学的形状及び機構をも適用されることは言うまでもない。例えば、閉塞部材13は、基板の進行方向軸線に平行な方向だけでなく、一般的に任意の方向でその回転軸線を固定することが可能である。細長い薄板15又はスライド18〜21以外の手段を使用することができ、例えば、回転式絞り又は虹彩絞りをそれが備えられている壁の平面内で作動させることなどが考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7