(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る複合弁を含む車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
【0012】
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0013】
圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に温水ヒータ12が配設されている。補助凝縮器3と温水ヒータ12との間には、冷凍サイクルとは別の温水循環路14が設けられている。補助凝縮器3は、冷凍サイクルを流れる冷媒と、温水循環路14を流れる冷却水(ブラインなどでもよい)との熱交換を行う。温水循環路14には、その冷却水を循環させるためのポンプ16と、補助的に駆動されるPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ18が設けられている。
【0014】
車両用冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、暖房運転中の除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して補助凝縮器3の入口に接続され、補助凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。これら第1通路21、第2通路22、第3通路23および第4通路24により第1冷媒循環通路が形成される。
【0017】
第2通路22には、補助凝縮器3の側から第1分岐点、第2分岐点、第3分岐点が設けられている。すなわち、第2通路22は、第1分岐点にてバイパス通路25と分岐し、第2分岐点にてバイパス通路26と分岐し、第3分岐点にてバイパス通路27と分岐している。そして、バイパス通路25が第3通路23に接続されることにより、補助凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させて蒸発器7へ供給可能な第3冷媒循環通路が形成される。また、バイパス通路26が室外熱交換器5の他方の出入口に接続され、バイパス通路27がアキュムレータ8の入口に接続されることにより、第2冷媒循環通路が形成される。また、第1通路21と第2通路22とを補助凝縮器3を迂回する形で接続するバイパス通路28も設けられている。なお、変形例においては、第2分岐点にてバイパス通路25に分岐させてもよい。つまり、バイパス通路25を第2通路22とバイパス通路28との合流点の下流側に設けるようにしてもよい。
【0018】
第2通路22とバイパス通路26との分岐点(第2分岐点)には第1制御弁4が設けられている。第3通路23とバイパス通路25との合流点には第2制御弁6が設けられている。第4通路24とバイパス通路27との合流点には第3制御弁9が設けられている。さらに、第1通路21とバイパス通路28との分岐点と、第2通路22とバイパス通路28との合流点とを含むように第4制御弁10が設けられている。
【0019】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0020】
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能し、冷凍サイクルを流れる冷媒と温水循環路14を流れる冷却水との熱交換を行う。すなわち、温水循環路14を流れる冷却水は、圧縮機2から吐出された高温の冷媒により加熱され、温水ヒータ12を機能させる。ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が温水ヒータ12を通過することにより適度に加熱される。温水ヒータ12を通過した空気と迂回した空気とが温水ヒータ12の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。PTCヒータ18は、自己温度制御機能を有するヒータであり、エアミックスドアの開度、外気温などに基づき動作する。冷却水が温まるまでPTCヒータ18での暖房が可能となる。なお、このようなPTCヒータそのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0021】
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の比例弁32)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の比例弁33または34)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、温水ヒータ12の通過過程で加熱される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0024】
第1制御弁4は、共用のボディに比例弁31と比例弁32とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第1制御弁4のボディには、第2通路22における第2分岐点と第3分岐点とをつなぐ第1内部通路と、バイパス通路26を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁31は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁32は小口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁32は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0025】
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁33と比例弁34とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第2制御弁6のボディには、第3通路23を構成する第1冷媒通路とバイパス通路25を構成する第2冷媒通路が設けられている。比例弁33は小口径の弁であり、第1冷媒通路に設けられてその開度を調整する。比例弁34も小口径の弁であり、第2冷媒通路に設けられてその開度を調整する。比例弁33,34は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0026】
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35と比例弁36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第4通路24を構成する第1内部通路とバイパス通路27を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁35は大口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0027】
第4制御弁10は、共用のボディにバイパス弁41、開閉弁42、開閉弁43を収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第4制御弁10のボディには、第1通路21および第2通路22の一部を構成する主通路と、バイパス通路28が設けられている。バイパス弁41はバイパス通路28に設けられ、外部から電気的に開閉駆動される開閉弁(オン/オフ弁)として構成されている。開閉弁42は、主通路の上流部(つまり第1通路21)に設けられ、その前後差圧に応じて自律的に開閉する機械式の弁として構成されている。同様に、開閉弁43は、主通路の下流部(つまり第2通路22)に設けられ、開閉弁42に連動して自律的に開閉する機械式の弁として構成されている。
【0028】
開閉弁42,43は、バイパス弁41の閉弁により前後差圧が大きくなると連動して開弁し、バイパス弁41の開弁により前後差圧が小さくなると連動して閉弁する。冷房運転時においてはバイパス弁41が適宜開弁されることにより、圧縮機2から吐出された冷媒の一部が補助凝縮器3を経ることなく室外熱交換器5に供給される。それにより圧縮機2の出口と第2分岐点との間の圧力損失を少なくし、圧縮機2の仕事効率を高めることができる。本実施形態では、第4制御弁10として、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁が用られるが、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁を用いるようにしてもよい。この第4制御弁10の具体的構成については後に詳述する。
【0029】
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。制御部は、アクチュエータとしてステッピングモータを用いる制御弁に対し、その制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。また、制御部は、アクチュエータとしてソレノイドを用いる制御弁に対し、その制御量が実現されるようソレノイドに電流を供給する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0030】
次に、本実施形態の複合弁の具体的構成について説明する。
図2および
図3は、実施形態に係る複合弁の構成および動作を表す断面図である。
図2に示すように、第4制御弁10は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、段付円筒状のボディ104にバイパス弁41、開閉弁42、開閉弁43を収容して構成されている。バイパス弁41は、主弁106とパイロット弁108とを含んで構成される。ソレノイド102は、ボディ104の上端開口部を封止するように取り付けられ、バイパス弁41のアクチュエータとして機能する。
【0031】
ボディ104の一方の側部には第1導入ポート110が設けられ、底部には第1導出ポート112が設けられている。また、ボディ104の他方の側部には第2導入ポート114および第2導出ポート116が設けられている。第1導入ポート110は第1通路21の上流側に連通し、第1導出ポート112は第1通路21の下流側に連通する。また、第2導入ポート114は第2通路22の上流側に連通し、第2導出ポート116は第2通路22の下流側に連通する。
【0032】
すなわち、ボディ104には、第1導入ポート110と第1導出ポート112とをつなぐ第1内部通路と、第2導入ポート114と第2導出ポート116とをつなぐ第2内部通路と、第1導入ポート110と第2導出ポート116とをつなぐ第3内部通路が形成されている。第1内部通路および第2内部通路は、室内凝縮器3を経由する主通路の上流部、下流部をそれぞれ構成する。第3内部通路は室内凝縮器3を迂回するバイパス通路28を構成する。バイパス弁41は第3内部通路を開閉し、開閉弁42は第1内部通路を開閉し、開閉弁42は第2内部通路を開閉する。
【0033】
ボディ104は、その上端開口部が内部機構の挿入口となっている。ボディ104には、その内部通路を区画形成するための樹脂製の通路形成部材118,120が設けられている。通路形成部材118は、段付円筒状をなし、ボディ104の下半部に同軸状に配置されている。通路形成部材118における第1導入ポート110との対向部および第2導入ポート114との対向部には、それぞれ内外を連通する連通孔117,119が設けられている。
【0034】
通路形成部材120は、段付円筒状をなし、ボディ104の上半部に同軸状に配置されている。通路形成部材120は、その下端部が通路形成部材118の上端部とOリングを介して同軸状に連結されている。通路形成部材120における第2導出ポート116の対向部には内外を連通する連通孔121が設けられている。通路形成部材118,120の外周面とボディ104の内周面との間にバイパス通路28が形成されている。通路形成部材120の上部にはバイパス通路28と内部とを連通させる連通孔122が形成されている。
【0035】
通路形成部材120における連通孔122のやや下方の内周部により主弁孔128が形成され、その上端開口部に主弁座130が形成されている。通路形成部材120の内方の圧力室124には主弁体132が配設されている。主弁体132は、その段付円板状の本体にリング状の弾性体(本実施形態ではゴム)が嵌着され、その弾性体が主弁座130に着脱して主弁106を開閉する。
【0036】
主弁体132の上端部は半径方向外向きに延出し、通路形成部材120の上半部内周面に摺動可能に支持されている。主弁体132の外周面にはシール用のOリングが嵌着されている。また、主弁体132の下面から下方に複数の脚部が延設され、その脚部が主弁孔128に摺動可能に内挿されている。このような構成により、主弁体132の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。主弁体132は、圧力室124を高圧室136と背圧室138とに区画する。また、主弁体132には、高圧室136と背圧室138とを連通するオリフィス140が設けられている。
【0037】
主弁体132の中央には背圧室138側に突出するボス部が設けられ、そのボス部の上端面によりパイロット弁座142が形成されている。また、そのボス部を軸線方向に貫通するようにパイロット弁孔144が形成されている。主弁体132と通路形成部材120との間には、主弁体132を主弁106の開弁方向に付勢するスプリング137(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0038】
背圧室138には、ソレノイド102により駆動されるパイロット弁体146が配設されている。パイロット弁体146は、パイロット弁座142に着脱してパイロット弁108を開閉する。パイロット弁体146は、ソレノイド102のプランジャ156に一体に固定された弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。
【0039】
一方、ソレノイド102は、ボディ104の上端開口部を封止するように設けられた有底円筒状のスリーブ152と、スリーブ152の上部に外挿されるように固定された有底円筒状のコア154と、スリーブ152内でコア154と同軸状に配置された円柱状のプランジャ156と、コア154に外挿嵌合されたボビン158と、ボビン158に巻回された電磁コイル160と、電磁コイル160を外部から覆うようにコア154とスリーブ152に組み付けられたケース162とを含む。
【0040】
パイロット弁体146は、プランジャ156の下端中央部に固定され、プランジャ156と一体的に動作する。スリーブ152とプランジャ156との間には、プランジャ156を介してパイロット弁体146を閉弁方向に付勢するスプリング164(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スリーブ152とボディ104との間には、シール用のOリングが介装されている。電磁コイル160からは通電用のハーネス166が引き出されている。
【0041】
このような構成において、第1導入ポート110から導入された冷媒圧力Pdは、バイパス通路28を介して圧力室124に導入され、オリフィス140を通過することで背圧室138にて中間圧力Ppとなる一方、主弁106を経て減圧されて圧力Phとなる。中間圧力Ppは、パイロット弁108の開閉状態によって変化する。
【0042】
一方、ボディ104の下端部が縮径されて弁孔170が形成され、その上端開口部に弁座172が形成されている。通路形成部材118の下端部には弁体174が支持されている。弁体174は、弁孔170の上方に対向配置されている。弁体174は、通路形成部材118の下端部に固定された可撓性を有するダイヤフラム176に支持されている。すなわち、通路形成部材118の下端開口部は、弁体174およびダイヤフラム176により封止されている。弁体174の下面から下方に複数の脚部が延設されている。その脚部が弁孔170に摺動可能に内挿されることで、弁体174の軸線方向への安定した開閉動作が担保されている。
【0043】
ダイヤフラム176は、その薄膜状の本体が通路形成部材118の下端開口部と弁体174とを架橋するように配設されている。ダイヤフラム176は、その内周端部と外周端部にそれぞれ圧肉部分を有し、その内周端部が弁体174に嵌着されてその一部を構成し、弁座172に着脱して開閉弁42を開閉する。ダイヤフラム176の外周端部は通路形成部材118の下端開口部に固定されている。弁体174と通路形成部材118との間には、弁体174を閉弁方向に付勢するスプリング178(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体174の上面中央から上方に向けて長尺状の連結部180が延設されている。
【0044】
さらに、通路形成部材118の上端内周部により弁孔182が形成され、その上端開口部に弁座184が形成されている。通路形成部材120の下半部の圧力室186には弁体188が配設されている。弁体188は、その円板状の本体にリング状の弾性体(本実施形態ではゴム)が嵌着され、その弾性体が弁座184に着脱して開閉弁43を開閉する。
【0045】
弁体188の下面中央には、軸線に沿って円溝状の嵌合部189が設けられ、連結部180の上端部がこれに嵌合している。すなわち、弁体188は、連結部180と係合して下方から支持される態様で弁体174と連結されている。弁体188の下面から下方に複数の脚部が延設され、その脚部が弁孔182に摺動可能に内挿されているため、弁体188の軸線方向への安定した開閉動作が担保される。
【0046】
弁体188と通路形成部材120との間には、弁体188を閉弁方向に付勢するスプリング190(「付勢部材」として機能する)が介装されている。弁体188は、スプリング190の付勢力により弁体174と軸線方向に一体変位可能に作動連結される。ただし、弁体188は、連結部180に固定されてはおらず係合状態にて連結されるため、過大な前後差圧が作用した場合にはその作動連結を解除し、弁体174と相対変位して開閉弁43を開弁させることも可能となっている。
【0047】
なお、本実施形態においては、弁孔170の有効径Aと弁孔182の有効径Bとが等しく設定されている。また、ダイヤフラム176の有効受圧径Cが弁孔170の有効径Aの2倍となるように設定されている。
【0048】
以上のように構成された第4制御弁10は、ソレノイド102がオフにされた状態(非通電状態)では、
図2に示すように、バイパス弁41が閉弁状態となる。すなわち、ソレノイド力が作用しないため、スプリング164によってパイロット弁体146が閉弁方向に付勢され、パイロット弁108が閉弁状態となる。このとき、背圧室138の中間圧力Ppが高圧の冷媒圧力Pdに等しくなり、主弁体132に閉弁方向の差圧(Pd−Ph)が作用する。すなわち、室内凝縮器3における圧力損失により差圧(Pd−Ph)が発生する。その結果、主弁体132が押し下げられて主弁座130に着座し、バイパス弁41が閉弁状態となる。このとき、差圧(Pd−Ph)による開弁方向の力がスプリング178,190の合力よりも大きくなるため、開閉弁42,43が共に開弁し、その開弁状態が安定に維持される。
【0049】
一方、冷房運転時などにソレノイド102がオンにされると(通電状態)、
図3に示すように、コア154とプランジャ156との間に吸引力が作用してパイロット弁体146が開弁方向に動作する。その結果、パイロット弁108が開弁状態となる。このとき、背圧室138の中間圧力Ppと冷媒圧力Phとが等しくなるため、スプリング137の付勢力により主弁体132が全開位置に押し上げられ、その全開状態が維持される。なお、主弁体132の上端部がソレノイド102に係止されることによりその主弁体132の上死点が規制されるため、パイロット弁108は開弁状態に維持される。
【0050】
このとき、差圧(Pd−Ph)による開弁方向の力がスプリング178,190の合力よりも小さくなるため、スプリング178,190の付勢力により開閉弁42,43が連動するように閉弁する。この閉弁状態においては、第1導出ポート112の冷媒圧力Pc1と第2導入ポート114の冷媒圧力Pc2とが等しくなるため、弁体174、ダイヤフラム176および弁体188の結合体に作用する冷媒圧力がキャンセルされる。このため、スプリング178,190の付勢力によりその閉弁状態が安定に維持される。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0052】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。
【0053】
上記実施形態では、第4制御弁10のアクチュエータとしてソレノイドを採用する例を示したが、ステッピングモータ等により構成してもよい。