(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光検出部がカメラであって、その撮像する範囲である視野が、前記ワークと当該ワークの周囲の背景面を含むように設定してあるとともに、その大きさが前記光照射領域の内縁よりも小さく設定してある請求項1、2又は3記載の輪郭線検出方法。
前記光検出部がカメラであって、その撮像する範囲である視野が、前記ワークと当該ワークの周囲の背景面を含むように設定してあるとともに、その大きさが前記光照射領域の内縁よりも小さく設定してある請求項5、6又は7記載の輪郭線検出装置。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体チップ等のワークの形状検査を行う場合、そのワークの外輪郭線のみを検出して形状を特定できるようにして、設計値との比較が行われている。ワークの輪郭(エッジ)を検出する際には、特許文献1で示されるような環状のローアングル照明により、載置台に置かれたワークのエッジを低いアングルの光で周囲から照明して、ワークのエッジからの光をカメラで検出しやすくしている。
【0003】
この輪郭線検出に用いられる輪郭線検出装置100Aについてより具体的に説明すると、
図14に示すように載置台の表面を背景面6Aとして、その背景面6Aの上にワークWを載置しておき、複数のLED21Aが円環状に配設され、その光射出方向が円環の略中心方向に向けてあるリング照明10Aをワークの上方に設けておき、前記リング照明10Aの中央の貫通孔4Aを介してカメラ5AでワークWを撮像している。
【0004】
ところで、ワークWの高さが低い場合には、ワークWのエッジ部分が十分に照明されるようにリング照明10Aを背景面6Aに近づけることになるので、
図15(a)の斜視図のように背景面6Aを上方から視ると貫通孔4A内にある背景面6Aが略円形状に隙間なく照明された光照射領域7Aが形成されることになる。すると、ワークWだけでなく、ワークWの周囲の背景面6Aにも照明光が照射されるので、背景面6Aが光を散乱する材質や表面形状の場合、
図15(b)に示すようにワークWのエッジからの散乱光だけでなく、カメラ5Aの視野内にあるワークWの周囲の背景面6Aからの散乱光もカメラで検出してしまう。カメラの視野内にある背景面からの散乱光の量が多くなると、
図16に示すようにワークWのエッジからの散乱光と背景面6Aからの散乱光の輝度の差が出にくくなり、ワークWのエッジが検出しにくくなってしまう。このように従来の輪郭線検出方法では、特にワークの高さが低い場合にはワークの周囲の背景面に照射される照明光の量が多くなってしまうので、ワークのエッジを検出しにくいという問題が顕著となる。また、ワークがある程度の高さを有している場合でも、リング照明の構成等によってはワークの周囲にある背景面からの散乱光によりエッジを検出しにくいことがある。逆に背景面からの散乱光の影響が小さくてもワークの全面から反射光が生じるため検出したいエッジ部分、特に外輪郭線のみを光らせにくいこともある。加えて、ワークのエッジ部分がR面等の曲面になっていると、エッジ部分からの反射光が幅を有したものとなってしまうため輪郭線として捉えることが難しい場合がある。
【0005】
また、特許文献2に示すようなチャンバー内にあるウエハの外輪郭線を検出するための輪郭線検出装置においても、リング状照明を用いたものがある。この輪郭線検出装置では、
図17に示すようにリング状照明10Aからフィルタを介して所定の向きに偏光した光を前記ウエハWの全面及びウエハWの外輪郭線の周辺にある背景面に照射するように構成されている。より具体的には、光が反射する際にその偏光に変化が生じる反射部材61Aの上に、入射した光の偏光を保ったまま光を反射するウエハWを載置してあり、前記リング状照明10Aの貫通孔4Aの中心軸が、円形状のウエハWの表面に対して、ウエハWの中心を通るように配置されている。また、リング状照明10Aから射出された光が、ウエハWの外輪郭線を全て含んでその外側まで広がるように照射されるように設定されている。そして、前記ウエハW及びウエハWの外輪郭の周囲にあり背景面6Aとなる反射部材61Aからの反射光のうち、前記貫通孔4Aを通った光を偏光フィルタ51Aに通して撮像することで、ウエハWあるいは反射部材61Aのいずれか一方からの反射光のみを撮像してウエハWと反射部材61Aとの境界である外輪郭が検出される。加えて、このウエハWの外輪郭を検出する方法では、迷光を防ぎコントラストを良くする目的で、リング状照明10Aの中央部の貫通孔4Aに筒状の遮光部材3Aを設けており、リング状照明10Aから自身の貫通孔4Aの中心軸側に所定角度以上で入射する光を遮光するようにも構成されている。
【0006】
しかしながら、このような輪郭線検出装置100Aでは、外輪郭を検出したいワークを入射した光の偏光に変化が生じて反射される特殊な反射部材6Aの上に載置する必要があるため、製造ラインの構成や制限によっては利用が難しい場合もある。加えて、偏光フィルタ51Aを用いているとはいっても、ワークWの材質と反射部材61Aの材質が似ており、偏光の傾向が似ている場合には、前記リング照明10AからワークW及び背景面6Aの両方に照明光を直接照射していることから、従来と同様にワークWと背景面6Aとで輝度の差が生じにくいといった問題が生じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような輪郭線検出に関する種々の問題を鑑みてなされたものであり、背景面の影響やワークの特性により従来輪郭線のみを検出することが難しかったものや、特にワークの高さが低く背景面からの反射光の影響が強く出てしまう場合であっても、ワークの輪郭を明確に検出できる輪郭線検出方法及び輪郭線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の輪郭線検出方法は、ワークからの光を光検出部で検出することにより、前記ワークの輪郭線を検出する輪郭線検出方法であって、前記光検出部を設ける位置を前記ワークの上方に設定し、光射出部から射出される照明光が実質的に、前記ワークの少なくとも一部の輪郭線である検出対象輪郭線から外側へ所定距離離間した位置を内縁とする、又は前記検出対象輪郭線から内側へ所定距離離間した位置を外縁とする光照射領域にのみ照射されるように設定しており、前記光照射領域が、前記検出対象輪郭線よりも下方であるとともに照明光が散乱される面上に形成されるように設定していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の輪郭線検出装置は、ワークからの光を光検出部で検出することにより、前記ワークの輪郭線を検出するための輪郭線検出装置であって、照明光を射出する光射出部と、前記ワークの上方に設けられ、前記ワークからの光を検出する光検出部と、を備え、前記光射出部から射出される照明光が実質的に、前記ワークの少なくとも一部の輪郭線である検出対象輪郭線から外側へ所定距離離間した位置を内縁とする、又は前記検出対象輪郭線から内側へ所定距離離間した位置を外縁とする光照射領域にのみ照射されるように構成されており、前記光照射領域が、前記検出対象輪郭線よりも下方であるとともに照明光が散乱される面上に形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、照明光が散乱される面とは、面全域において光を散乱するものだけでなく、少なくとも前記光照射領域の全部又は一部が光を散乱するものを含む概念である。また、前記検出対象輪郭線とは、エッジの出ている稜線のみを含む概念ではなく、ラウンドしている角を示す線等を含む概念である。また、ワークの上方、ワークの下方とは鉛直方向のみならず、ワークの配置されている面を基準として、その配置されている面から視た上下を含む概念である。例えば、鉛直方向に延びる面上にワークが配置されている場合には、水平方向が上下に対応することになる。
【0012】
このような輪郭線検出方法及び輪郭線検出装置であれば、前記ワークの検出対象輪郭及びその近傍には直接照明光を照射していないので、前記検出対象輪郭線の背景面となる近傍にある物体からの散乱光は発生しない。一方、前記検出対象輪郭線よりも下方にある面に形成された前記光照射領域では散乱光が生じ、そのうちの一部は、その面よりも上にある検出対象輪郭線へと照射されて再び散乱光が生じるので、ワークに直接照明光が照射されていなくてもワークの検出対象輪郭線は光らせることができる。従って、検出対象輪郭線の近傍は光らせずに、ワークの検出対象輪郭線のみを光らせることができ、それぞれに大きな輝度の差が生じるので、前記光検出部で検出対象輪郭線を明確に検出することができる。さらに、前記光検出部が、前記ワークの上方に設けられているので、前記光照射領域で散乱したもののうち、前記ワークの検出対象輪郭線においてさらに散乱して進行方向が変えられた光のみを前記光検出部で検出しやすくすることができる。
【0013】
さらに、照明光の照射された背景面からの二次光によりエッジのみを光らせるように構成されているので、検出したい輪郭線よりも下側に照明装置を設けて直接光を前記輪郭線に照射する必要がない。例えば、二次光を用いずに直接光を検出対象輪郭線の下方から照射して輪郭線検出を行うことも考えられるが、ベルトコンベアによりワークが順番に流れている状態で検査を行う場合には、ワークの移動を妨げないように光射出部を配置する必要があるので実際には適用しにくい。より具体的に説明すると、流れているワーク検査をする場合、ワークが移動している間は前記光射出部とワークが接触しないように離れており、検査時にはワークよりも下方に前記光射出部が配置されるように、ワークを検査位置において一度停止させるとともに前記光射出部又はワークを上下に移動させる等する必要がある。すると、ワークの停止時間や、光照射部を移動させるのにかかる時間等の待ち時間が生じてしまうので、1つのワークにかかる検査時間が長くなってしまい検査効率が低下してしまう。
【0014】
一方、本発明のように二次光により検出対象輪郭線の下方から光を当てて輪郭線検出を行うように構成すれば、光射出部とワークとを離間させた状態で輪郭線検出を行うことができるので、ベルトコンベアにより流れてくるワークを停止させたり、ワーク又は光射出部を上下動させたりすることなく連続で検査することができる。従って、直接光を用いた場合のような待ち時間が発生しないようにできるので、非常に高い検査効率で流れてくるワークの輪郭線検出を連続で行うことができる。また、光射出部や光検出部をワークまたはベルトコンベアの上方に配置するだけでよいので、既存の検査ラインにも導入しやすい。
【0015】
前記光照射領域のみに照明光が照射されるようにする具体的な方法としては、前記ワークを照明光が散乱される背景面上に載置し、一方の開口端が前記ワークよりも大きい筒状の遮光部材を更に用い、他方の開口端の位置を、前記光照射部の設けられている位置以上の高さに設定し、前記一方の開口端の位置を、前記背景面を前記ワークの載置されている側から視て前記ワークを囲うように設定し、前記一方の開口端と前記背景面との間を離間させ、その離間距離を前記光射出部から射出された照明光のうち前記光照射領域の内縁よりも内側へと向かう光が前記遮光部材により遮光されるように設定すればよい。
【0016】
前記光照射領域において散乱した光が、前記ワークで再び散乱されず、迷光となって直接前記光検出部に入射し、前記ワークと前記背景面とのコントラストが悪化するのを防ぐには、前記光検出部の位置を前記他方の開口端の上方に設定し、前記遮光部材の内側周面を非反射面に設定すればよい。このようなものであれば、前記遮光部材の内側周面でワークの輪郭で散乱された光以外は、略吸収することができ、輪郭において前記光検出部の設けてある側に散乱された光のみを検出することできる。
【0017】
前記光照射領域において散乱した光が前記光検出部において直接検出されないようにするための具体的な方法としては、前記光検出部がカメラであって、その撮像する範囲である視野が、前記ワークと当該ワークの周囲の背景面を含むように設定してあるとともに、その大きさが前記光照射領域の内縁よりも小さく設定してあればよい。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の輪郭線検出方法によれば、光照射部から射出される照明光が、実質的に前記背景面において前記ワークの輪郭から所定距離離間した位置を内縁とする光照射領域にのみ照射されるようにしているので、前記ワークと当該ワークの周囲の背景面には照明光を直接照射しないようにするとともに、前記光照射領域からの散乱光で前記ワークの輪郭を照明することができることができる。従って、前記ワークの輪郭のみを強く光らせて、検出しやすくすることができ、特に前記ワークの高さが低い場合であってもその輪郭を明確に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態の輪郭線検出方法に用いる輪郭線検出装置100の構成について
図1に基づいて説明する。前記輪郭線検出装置100は、例えば半導体チップ等のワークWの形状検査を行う際に用いられるものであり、前記ワークWをカメラ5によって撮像してそのエッジ部分から輪郭を検出するために用いられるものである。本実施形態では、検出対象輪郭線は前記ワークWの外形を示す外輪郭線に設定してある。
【0022】
前記輪郭線検出装置100は、
図1(a)に示すようにワークWが載置される載置部材の表面である背景面6と、載置台の上に配置されたワークWの直上に設けてある、観測孔4を中央に有するリング状の照明装置10と、前記観測孔4を介して前記ワークWを視野に捉えるように前記ワークWの上部に設けられたカメラ5とを備えたものである。
【0023】
前記ワークWが置かれている背景面6は、その表面が不透明なものであり、入射した光が略全方位拡散されて、散乱光が生じる表面形状及び材質からなるものである。より具体的には、前記背景面6は、例えば不透明樹脂面、梨地金属面、背景部材がメッシュ状のものの表面等であり、二次反射が生じる表面である。また、前記ワークWは高さ寸法が縦横の寸法に比べて小さく、平らな形状をしたものである。なお、このワークWはあくまで一例であり、その他の形状のワークWであっても外輪郭を検出する場合に本実施形態の輪郭線検出装置100を用いても構わない。
【0024】
前記照明装置10は、形状に着目して説明すると
図1(b)の斜視図に示すように、概略平円筒状との光射出部2と、その平円筒の中央部から突出する細円筒状の遮光部材3からなるものである。つまり、この照明装置10は、前記観測孔4の中心軸に対して回転対称となるように構成してあり、前記ワークWの中心に対して鉛直方向の軸と、前記観測孔4の中心軸とが一致するように設けてある。より具体的に説明すると前記照明装置10は、照明光を射出する複数の発光体21を環状に配設した光射出部2と、前記光射出部2の内側に沿って設けられた筒状の遮光部材3とから構成してあり、背景面6上において前記ワークWの輪郭から所定距離離間した位置を内縁とする光照射領域7にのみ照明光が照射されるようにしてある。ここでワークWの輪郭と前記光照射領域7との間の離間している距離は、後述する光照射領域7からの散乱光によりワークWのエッジのみを光らせ、十分な光量が得られる程度に設定してある。より具体的には、検出対象輪郭線と、前記光照射領域7の内縁との間にわずかでも隙間が生じていればよく、前記遮光部材3と背景面6との間の垂直方向の離間距離と、ワークの背の高さに基づいて決めることができる。例えば、前記遮光部材3と背景面6との間の垂直方向の離間距離よりもワークWの背が高い場合には、光照射領域7で散乱した光がワークWのエッジに到達するようにするために検出対象輪郭線と前記光照射領域7の水平方向の離間距離は小さい方が好ましい。逆の場合には、水平方向の離間距離が大きくても輪郭線検出を行うことができる。
【0025】
前記発光体21は砲弾型のLED21であり、その光射出端から配向特性に従って広がりを持った光を射出するものである。各LED21は、異なる直径の仮想円上に並べて2列分設けてあり、各LED21の光軸が前記観測孔4の軸方向、すなわち設置された状態で鉛直方向下向きとなるように揃えて設けてある。
【0026】
前記遮光部材3は、開口端が前記ワークWよりも大きく構成された円筒状のものであり、前記背景面6を前記ワークWが配置されている側から視て、その一方の開口端32が、前記ワークWを囲うように設けてあるとともに、水平方向から視て前記一方の開口端32と、前記背景面6との間を離間させて設けてある。ここで、前記開口端が前記ワークWよりも大きく構成するために、具体的には、上方から背景面6を視て前記開口端の内輪郭で決まる面積の方が前記ワークWの外輪郭で決まる面積よりも大きくなるようにしてある。また、前記開口端と前記背景面6との離間距離は、前記開口端の先端から前記背景面6へ垂線を下ろした時の長さとしている。前記離間距離は、前記光照射領域7の内縁よりも内側へと向かう光を遮光するように設定してある。従って、
図2の斜視図において白色で示すように、前記照明装置10から前記背景面6に照射される照明光は、前記光照射領域7が円環状に形成されるように照射されることになる。さらに、前記離間距離は、前記遮光部材3内に入射する散乱光の量が、前記ワークWの輪郭を光らせるのに十分な量となるとともに、余計な光が外部から入射しないように設定してある。また、この離間距離は検査対象が次々と流れてくるライン上において連続で検査を行う場合等では、リング照明の位置を固定するならばワークの背の高さをよりも大きくする等、その他の条件を考慮して決定されてもよい。
【0027】
また、他方の開口端33は、前記光射出部2よりも上側となるようにしてあり、上部からは筒内に前記照明光が直接入ることがないようにしてある。さらに、前記遮光部材3の内側周面31は、例えば黒塗りにして非反射面にしてあり、内側周面31に入射した光は吸収されるようにしてある。
【0028】
前記カメラ5は、請求項での光検出部に相当するものであり、前記他方の開口端33の上方に設けてあり、前記観測孔4を通してワークWとその周囲の背景面6を撮像するようにしてある。また、その視野は、前記ワークWの中心からその半径が前記光照射領域7の内縁に到達しないようにしてある。つまり、
図2の斜視図において示される背景面6の中央部でハッチングがなされている領域よりも狭い範囲を撮像するように設定してある。
【0029】
このように構成された輪郭線検出装置100により、どのように照明光及びその散乱光が作用してワークWが検出されるのかについて
図1(a)の模式図及び
図2の斜視図を参照しながら説明する。
【0030】
まず、前記光射出部2から照射された照明光は、鉛直下向きに所定角度に広がりながら進行する。このとき、前記光射出部2の内側にある遮光部材5により、前記ワークW及び前記ワークWの周囲にある背景部材へと進む照明光は遮られることになる。従って、
図2の斜視図等に示されるように、前記光射出部2及び前記遮光部材3によって、ワークWの輪郭から所定距離離間した位置を内縁とする円環状の光照射領域7が前記背景面6に形成される。一方、前記ワークW及び前記ワークWの周囲の背景面6には照明光が直接は照射されないので、
図2のハッチングで示すように暗い領域となっている。
【0031】
次に、
図1(a)に示すように前記光照射領域7に照明光が照射されると、前記背景面6は散乱面であるので全方位拡散が生じ、前記光照射領域7は二次光源として機能することになる。ここで、照明光が前記光照射領域7において散乱した光のことを二次光と呼ぶこととする。
【0032】
前記光照射領域7では、全方位拡散が生じることから二次光のうちの一部は、前記遮光部材3の先端と前記背景面6との間を通っていくものがある。背景面6よりも前記ワークWの方が上側にあることから、隙間を通過した二次光のうち一部は、
図1(a)の二点鎖線に示すように前記ワークWの側面または輪郭を形成するエッジに下側から到達する。一方、前記ワークWに到達しなかった二次光は
図1(a)の一点鎖線に示すように前記遮光部材3の内側周面31に入射して吸収されるので、カメラ5では検出されない。
【0033】
エッジ部分に到達した二点鎖線で示される二次光に注目すると、このエッジにおいても二次光が再び散乱する。ここで、二次光がワークWのエッジ部分で散乱した光のことを三次光と呼ぶこととする。三次光のうち太実線で示されるようなカメラ5のある上方へと散乱されたものは、前記カメラ5により検出することができ、その他の方向に散乱されたもの(図示しない)は前記遮光部材3の内側周面31に吸収される。
【0034】
以上のようにこの輪郭線検出方法では、前記ワークW及びその周囲にある背景面6に対して直接照明光を照射するのではなく、前記ワークWの輪郭からは離間した位置にある前記光照射領域7にのみ照明光を照射して二次光源とし、そこからローアングルで上向きに進む二点鎖線で示されるような二次光により前記ワークWの輪郭を照明している。そして、前記二次光が前記ワークWの輪郭において散乱されて生じる太実線で示されるような三次光をカメラ5で検出するようにしているので、
図3に示すようにワークWの周囲の背景面6は光らせることなく、前記ワークWの輪郭だけを光らせて撮像することができる。
【0035】
従って、特に前記ワークWの高さが低い場合であっても、前記ワークWの輪郭と前記背景面6とのコントラストを大きくすることができ、輪郭の検出精度を向上させることができる。
【0036】
また、前記光照射領域7からの二次光のうち、前記ワークWに反射されなかった光は前記遮光部材3の内側周面31において吸収されるので、迷光となってカメラ5に入射し、撮像した像の全体が明るくなって輪郭部分とのコントラストが悪くなってしまうのを防ぐことができる。
【0037】
加えて、前記ワークWの検出対象輪郭線であるエッジよりも下側にある背景面6に照明を照射して光照射領域7を形成することにより、二次光によってエッジに対して下方から照明する効果を得ることができ、輪郭線検出ができるので、例えば、既存の検査ラインの上方にリング照明及びカメラを設置するだけでよく導入がしやすい。言い換えると、既存のベルトコンベア等のラインにおいてワークに対して下方から直接光を照射するためにリング照明等を設置することはスペース等の問題で非常に難しいといった問題を避けることができる。また、背景面6となる部材の材質は光を散乱するものであればよく、背景部材の制限が少ないため様々な用途に用いやすい。加えて、前記背景面の色が例えば黒色であったとしても、光沢がある黒色等の散乱が生じるものであれば、ワークWのエッジのみを光らせて輪郭線を検出する事ができる。
【0038】
次に、第1実施形態の輪郭線検出装置100を用いた輪郭線検出の実験結果について
図10に示す従来の輪郭線検出装置を用いた場合の検出結果と比較しながら説明する。この例では、ワークWは前述した例よりもある程度高さを有するものである。
【0039】
まず、前記ワークWが円筒形状で表面が黒色の磁石の輪郭線検出を行った場合について説明する。この磁石は、表面がざらついており、輪郭部分であるエッジ(上面と側面の交差部分)からの光の反射率が小さいものである。背景面は、格子部分が白色のメッシュ地の場合と、白紙の場合において撮像した。
【0040】
図4(a)、
図4(b)に従来の輪郭線検出装置100Aにより磁石の輪郭線検出結果を示す。
図4(a)に示すように、メッシュ地の穴の部分(背景面において黒色の部分)では、磁石のエッジ部分から線状の光をうっすらと撮像できているものの、メッシュ地の格子部分(背景面において白色の部分)の上にある磁石の輪郭は輝度の差がほとんどないため、輪郭線のみを検出することが困難であることが分かる。また、
図4(b)に示すように背景面を白紙とした場合、背景面の反射率が高いため、白紙と磁石全体の違いはわかるものの、白紙と、磁石の輪郭線の内側も光ってしまっているため、磁石のエッジ部分を線状にして撮像することができていないことが分かる。従って、どちらの例においても背景面からの反射光が強い場合には、うまくワークWの輪郭のみを検出する事ができていないことが分かる。
【0041】
一方、
図4(c)、
図4(d)に示すように第1実施形態の輪郭線検出装置100を用いてそれぞれ同じ条件で撮像した場合、磁石のエッジ部分だけを光らすことができ、輪郭線として検出できていることが分かる。これは、前述したように、ワークWとその周囲には光が直接照射されておらず、光照射領域7からの二次光がエッジに当たり、更に散乱して三次光となったもののみが検出されているからだと考えられる。
【0042】
さらに、背景面を同じ条件として、ワークWを金属製のナットにした場合の実験結果について従来例と比較しながら説明する。このナットは、金属のためエッジ部分からの反射率が高く、エッジ部分がR面となっており、中央部にねじを螺合するためのねじ穴が形成されている。
【0043】
図5(a)、
図5(b)に示すように、従来の輪郭線検出装置100Aでこのナットを撮像した場合、背景面がメッシュ地、白紙のいずれであっても、エッジ部分からの光を撮像できているものの、エッジに丸みがあるため輪郭線が太くなってしまうとともに場所によってその太さも異なってしまっている。従って、画像処理等により輪郭を検出する場合、輪郭線が太いためある程度の誤差が生じてしまう可能性がある。また、ねじ穴部分からの反射光があるため内側にも輪郭線が表れてしまっている。このようにねじ穴部分も撮像されてしまうと、最も外側の輪郭である外輪郭のみを検出した場合には不具合が生じる可能性がある。
【0044】
一方、
図5(c)、
図5(d)に示すように本実施形態の輪郭線検出装置100によれば、いずれの背景面においても、外輪郭のみを細い線状に撮像する事ができていることが分かる。しかも光照射領域での散乱により生じた二次光は、
図1等から明らかなように内側にあるねじ山部分には当たらないので、ねじ山部分はほとんど撮像されていないことも分かる。つまり、本実施形態の輪郭線検出装置100によれば、複数の輪郭線がある場合において特にいちばん外側の外輪郭のみを検出したい場合にも好適に用いることができる。
【0045】
次に第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0046】
前記第1実施形態では、光射出部2から射出された照明光の一部を前記遮光部材3により遮ることにより、背景面6における円環状の光照射領域7にのみ照明光が照射されるように構成していたが、例えば、前記遮光部材3を用いずに直接光射出部2から前記光照射領域7にのみ照明光が到達するように構成しても構わない。
【0047】
より具体的には、
図6に示すように前記光射出部2を構成する複数のLED21の光射出端が観測孔4の中心軸に対して外向きにとなるように設けておき、前記ワークW及びワークWの周囲にある背景面6に照明光が照射されないようにしても構わない。このものは、例えば、円環状のフレキシブル基板にLED21を並べて設けておき、前記LED21の光射出端が外側となるように前記フレキシブル基板の両端を当接させて切頭円錐に丸めて形成すればよい。
【0048】
また、カメラ5の視野の設定は、例えば前記光照射領域7の一部を含むようにして撮像しても構わない。第2実施形態においてこのような視野で撮像した場合でも、
図7に示すようにワークWのエッジを検出することはできる。コントラストをより向上させたい場合等には、視野をもっと狭く設定し、外側の光照射領域7からの散乱光の影響を受けにくくすればよい。
【0049】
次に第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0050】
第3実施形態の輪郭線検出装置100は、光射出部2を構成する発光体21が観測孔4側へと傾けて設けてあり、前記遮光部材3の先端側開口端32の近傍にのみ光照射領域7が形成されるようにしている点、前記遮光部材3の外側面34が鏡面となっている点が遮光部材第1実施形態と異なっている。
【0051】
より具体的には、前記光射出部2を構成するLEDは、切頭円錐状に丸められたフレキシブル基板の内側に配列されており、
図8のように観測孔4側へと光軸が向くようにしてある。さらに、LEDは2列が円環状に並べられており、内側のLEDよりも外側のLEDの方が水平面に対する傾斜角度が大きくなるようにしてある。このようにして、光照射領域7が前記第1実施形態に比べて狭い領域に集中するように構成してある。
【0052】
また、前記遮光部材3の外側面34を鏡面とすることにより、第1実施形態では、無駄になっていた光が反射されて光照射領域7に到達することになる。より具体的には、発光体21から射出された光が遮光部材3に吸収されずに反射されるので、光量ロスを最小限に抑えた状態で発光体21から光照射領域7に光を照射することができる。従って、光照射領域7で散乱される光の量も多くなるので、ワークWのエッジ部分に到達する二次光の量も多くすることができ、よりエッジ部分を三次光により光らせることができ、輝度を大きくして輪郭を検出しやすくすることができる。
【0054】
前記各実施形態では、リング照明10は、円筒形状であり、光照射領域7の形状も円環状であったがその他の形状であっても構わない。すなわち、
図9(a)に示すようにカメラ側を底面側、ワークW側を先端側とする概略円錐台形状にしても構わない。このような形状であっても、ワークの輪郭から所定距離離間した位置を内縁とする光照射領域7を形成することができる。また、
図9(b)に示すように、リング照明10が角型のものであっても構わない。より具体的には、正方形状のリング照明10とし正方形状の観測孔4を有したものであって、光照射領域7が概略ロの字状に形成されるように構成してある。この場合、ワークWの形状は正方形状であれば、ワークWの各辺から光照射領域7までの距離を等しくでき、各辺の輝度を均一にすることができる。また、
図9(b)のリング照明10であっても、円形状のワークWの外輪郭のみを検出することはできる。
【0055】
前記ワークは、外輪郭の内側が概略平坦なものであったが、例えば
図8に示すように中央部が更に突出して多段形状になったものであっても構わない。この場合、最も外側にあるエッジを検出するには、前記光照射領域の位置と、前記遮光部材の先端側開口端及び背景面との間の距離を調節して、外輪郭のエッジにのみ二次光が到達し、前記遮光部材により内側のエッジ部分へ向かう光を遮るようにすればよい。加えて、多段形状となっているワークのうち内側の輪郭線を検出対象輪郭線としたい場合等は、
図10に示すように突出部分のみを遮光部材で覆うようにして、前記ワークWの表面にリング照明から光を照射してワークWの表面上に光照射領域7を形成して輪郭線検出を行っても構わない。すなわち、前記光照射領域7は、ワーク以外の部材である載置部材の表面に形成されるものだけなく、ワーク自体や載置部材以外のその他の物体に形成されるものであっても構わない。要するに、検出した検出対象輪郭線よりも光照射領域が下方に形成されており、その形成されている面が光を散乱する面でさえあればよい。
【0056】
また、
図11に示すようにワークWが例えば、平板円環状のもの場合であって、その内側の輪郭線を検出したい場合等には、検出対象輪郭線である内側の輪郭線からさらに内側へ所定距離離間した位置を外縁とするように光照射領域を形成して輪郭線の検出を行っても構わない。なお、
図11に付した符号は、前記第1実施形態に付したものと対応するものには同じ番号を付している。このような輪郭線検出装置であれば、円環状の部材、例えばナット等の内側の輪郭線のみ光らせて撮像したい場合等に好適に用いることができる。
【0057】
加えて、遮光部材により前記ワークの周囲には光が照射されないようにして、二次光によりエッジ部分だけを光らせるようにするだけでなく、前記ワークの近傍のみ黒色等の光を吸収し、散乱が生じない材質のものにしておき、前記ワークの近傍以外の背景面は光を散乱するようにしてもよい。このようにすれば、遮光部材により厳密に光照射領域を設定できなかったとしても、ワーク近傍から散乱光が生じることがないので、エッジ検出の精度を容易に向上させることができる。より具体的には、
図12の平面図及び上面図に示すような検査ラインにおいて、散乱面を有するベルトコンベアCNの表面に、一定間隔ごとに所定半径の黒色プリントBを施しておき、その黒色円の中央にワークを配置しておくようして検査精度をよくしてもよい。また、
図1、
図6、
図8、
図10、
図11に示すような各輪郭線検出装置100であれば、遮光部材の先端とワークWとの間を離間させてあるので、ワークWと接触して移動を妨げないように装置全体あるいは遮光部材3やカメラ5といった各構成機器のみを上下動させることなく輪郭線検出を行うことができる。このため、ベルトコンベアCNによりワークWをスムーズに流しながら、ワークWが検査位置に到達したらリング照明10をフラッシュのように光らせて各ワークの外輪郭線全周を連続で検出できる。
【0058】
本実施形態の比較例として
図13に示すようにベルトコンベアCNを用いた検査ラインにおいて二次光を用いずに、ワークWの外輪郭線にリング照明10Aからの直接光を下方から照射して外輪郭線の全周を検出する場合を考えてみる。このような直接光を用いた輪郭線検出装置100Aによる検査の動作について説明すると、まず、
図13(a)に示すように輪郭線検出装置100A内の検査位置であるカメラ5A直下までワークWが移動する。次に、
図13(b)に示すようにベルトコンベアCNを停止させ、
図13(c)のようにリング照明10AをワークWの検出対象輪郭線よりも下方へと移動させ、ワークWのエッジに直接光を照射する。輪郭線が検出されると、
図13(d)のようにリング照明10Aを上方へと移動させた後に、
図13(e)のように再びベルトコンベアCNを移動させて、
図13の動作を繰り返すことになる。このように、検査ラインにおいてワークWの検出対象輪郭線に下方から直接光を当てて輪郭線検出を行うように構成しようとすると、ワークWと輪郭線検出の接触を防ぎ、ワークWの移動を妨げないようにする機構が必要となる。しかも
図13(b)〜(d)に示すように、ワークWを停止させている時間や、リング照明を上下動させるのにかかる時間は待ち時間となってしまうので、1個のワークを検査するのにかかる時間が長くなってしまっている。つまり、ワークを停止させずに常に動かしながら検査をすることができないので、検査効率が悪くなってしまう。例えば、ワークの一部の輪郭線のみを検出する場合には、ベルトコンベアの側方に照明装置を固定しておいて、連続で検査を行うことができる場合もあるが、下方からの直接光により外輪郭線の全周を検出しようとすると、ワークの進行方向側にも照明装置を置く必要があるので、どうしても移動を妨げないようにワーク又は照明装置を上下動させなくてはならない。すると、上述した待ち時間が発生するので、検査効率が低下してしまう。
【0059】
一方、各実施形態の輪郭線検出装置100によれば、ワークWと輪郭線検出装置100、特にワークWと遮光部材3とが上下方向に離間しているので、ベルトコンベアCN等によりワークWが移動している場合でも何もしなくても接触が生じず、移動が妨げられない。しかも、背景面からの二次光により検出対象輪郭線の下方から外輪郭線に光を照射するようにしているので、ワークWを停止させたり、検査時にワークW又は照明装置10を上下動させたりする必要がない。従って、検査のためにベルトコンベアを止めることなく、連続でワークの輪郭線検出を行うことができるので、上述したような待ち時間が発生せず、検査効率を格段によいものにすることができる。
【0060】
前記光照射領域にのみ光を照射する方法としては、特に前記各実施形態に限られるものではなく、例えば指向性の強い照明光により円環状に背景面を照射しておき、中央部の光の照射されていない部分にワークを載置するようにしても構わない。
【0061】
前記背景面は、光を散乱するものであればよく、全方位に均一に拡散するものに限られない。例えば、光照射領域から前記ワーク側へ偏った散乱をするものであっても構わない。
【0062】
また、前記背景面は平面に限られるものではなく、例えば前記ワークが載置されている点が最も高い曲面であっても構わない。要するに、前記光照射領域から散乱された光が、前記ワークの周囲にある背景面に入射しないものであればよく、このような背景面であればエッジ部分のみを光らせてコントラストを大きくすることができる。言い換えると、少なくとも光照射領域が形成される背景面が、前記ワークよりも低い位置にあればよく、散乱光によりワークのエッジのみを照明することできる。加えて、背景面は例えば載置台の表面や基板等だけに限られるものではなく、輪郭を検出したい対象であるワークの後ろ側にあるものの面を指す。
【0063】
前記各実施形態では、形状検査のために輪郭線検出を行っていたが、所定の位置に部品が配置されているかどうか等を検査するために用いてもよいし、その他の用途に用いても構わない。また、光検出部としてカメラを用いていたが、例えばCCDやCMOS等と言った受光素子を用いても構わない。
【0064】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。