(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作動流体を導入する導入ポートと、作動流体を導入または導出する導入出ポートと、作動流体を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとを連通させる第1弁孔と、前記第1弁孔と同一軸線上に配置され前記導入出ポートと前記導出ポートとを連通させる第2弁孔とを有する共用のボディと、
前記第1弁孔に接離して第1弁の開度を調整する第1弁体と、
前記第2弁孔に接離して第2弁を開閉する一方、前記導入出ポートと前記導出ポートとを連通させる、前記第2弁孔よりも小径の第3弁孔が形成された第2弁体と、
前記第1弁体と一体変位可能に設けられ、前記第3弁孔に接離して第3弁の開度を調整する第3弁体と、
前記第2弁体を前記第2弁の閉弁方向であって前記第3弁の開弁方向に付勢する付勢部材と、
前記第1弁、前記第2弁および前記第3弁の開度を電気的に制御するための共用のアクチュエータと、
前記アクチュエータにより軸線方向に駆動され、前記第1弁体に各弁の開閉方向の駆動力を伝達する弁作動体と、
を備えることを特徴とする制御弁。
前記第1弁体と前記第3弁体とが一体に設けられた弁体部と、前記弁体部の前記アクチュエータの側に連設されて前記弁作動体に連結されるガイド部とを有する弁駆動体と、
前記ガイド部と前記弁作動体との連結部に設けられ、前記第1弁体または前記第3弁体が閉弁状態となる際に前記弁作動体に作用する反力を緩和する緩衝機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。この車両用冷暖房装置は、電気自動車の冷暖房装置として具体化されたものである。
【0012】
車両用冷暖房装置200は、圧縮機2、補助凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置200は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0013】
圧縮機2、室外熱交換器5およびアキュムレータ8は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクトが設けられ、そのダクトにおける空気の流れ方向上流側に蒸発器7が配設され、下流側に補助凝縮器3が配設されている。補助凝縮器3は、室内凝縮器として構成されている。
【0014】
車両用冷暖房装置200の冷凍サイクルは、補助凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。そして、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→補助凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1分岐通路221が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2分岐通路223が補助凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。補助凝縮器3の出口は第2通路22を介して第3通路23に接続されている。第1分岐通路221からバイパス通路27が分岐し、アキュムレータ8の入口に接続されている。
【0017】
第4通路24におけるバイパス通路27との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路の共用の通路である第1共用通路41となっている。また、第3通路23における第2通路22との合流点よりも下流側は、第1冷媒循環通路と第3冷媒循環通路との共用の通路である第2共用通路42となっている。そして、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通するように内部熱交換器10が配設されている。
【0018】
第1分岐通路221と第2分岐通路223との分岐点には第1制御弁204が設けられている。第2通路22と第3通路23との合流点には第2制御弁206が設けられている。第4通路24とバイパス通路27との合流点には第3制御弁9が設けられている。
【0019】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0020】
補助凝縮器3は、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助的な凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、補助凝縮器3を通過する過程で温められる。すなわち、ダクトに取り込まれて蒸発器7にて冷却および除湿された空気のうち、図示しないエアミックスドアにて振り分けられた空気が補助凝縮器3を通過することにより適度に加熱される。補助凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整される。
【0021】
室外熱交換器5は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述の比例弁52)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述の比例弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、補助凝縮器3の通過過程で加熱される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0024】
第1制御弁204は、共用のボディに比例弁34と比例弁37とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。比例弁34は大口径の弁であり、第1分岐通路221の開度を調整する。比例弁37は大口径の弁であり、第2分岐通路223の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁204として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0025】
第2制御弁206は、共用のボディに比例弁51と比例弁52を収容する複合弁として構成されている。比例弁51と比例弁52は共用のアクチュエータにて駆動される。なお、比例弁33は、本実施形態においても膨張装置として機能するが、第2制御弁206とは別体で構成されている。比例弁51は大口径の弁であり、第2通路22の開度を調整する。比例弁52は大口径の弁と小口径の弁とを有する複合弁であり、第3通路23の開度を調整する。比例弁52は膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁206として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第2制御弁206の具体的構成については後述する。なお、変形例においては、比例弁33に代えて、例えば蒸発器7の出口側の温度を感知してその出口側の過熱度が適正となるよう冷媒流量を調整する温度式膨張弁を設けてもよい。あるいは、オリフィスその他の膨張装置を設けてもよい。
【0026】
比例弁33は、第2内部通路の下流側に設けられ、室外熱交換器5から第3通路23を介して導入された冷媒、または補助凝縮器3から第2通路22を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」としても機能する。
【0027】
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35と比例弁36とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。第3制御弁9のボディには、第4通路24を構成する第1内部通路とバイパス通路27を構成する第2内部通路が設けられている。比例弁35は大口径の弁であり、第2内部通路に設けられてその開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第1内部通路に設けられてその開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。
【0028】
内部熱交換器10は、第1共用通路41と第2共用通路42を部分的に挿通して両共用通路を流れる冷媒の熱交換をさせる。これにより、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒が、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒によって冷却される一方、アキュムレータ8から圧縮機2に向かって流れる冷媒が、補助凝縮器3または室外熱交換器5から蒸発器7に向かって流れる冷媒によって加熱され、冷凍サイクルの熱交換率が高められる。なお、図示のように、第3通路23と第2通路22との合流点は、内部熱交換器10の入口の上流側に設けられている。また、比例弁33は、内部熱交換器10の出口の下流側に設けられている。
【0029】
以上のように構成された車両用冷暖房装置200は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、補助凝縮器3の出口、室外熱交換器5の出入口、蒸発器7の入口と出口、内部熱交換器10の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0030】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。
図2および
図3は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
図2は冷房運転時の状態を示し、(A)は通常冷房運転時の状態を示し、(B)は特定冷房運転時の状態を示している。
図3は暖房運転時の状態を示し、(A)は特定暖房運転時の状態を示し、(B)は通常暖房運転時の状態を示し、(C)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、「特定冷房運転」は、冷房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。
【0031】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜iはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0032】
図2(A)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁204において比例弁34が開弁状態とされ比例弁37が閉弁状態とされる。このとき、比例弁34は全開状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁51が閉弁状態とされ比例弁52が開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路のみが開放される。このため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5および蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0033】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮され、比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。前者の場合、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度を調整するようにしてもよい。
【0034】
なお、このとき、内部熱交換器10により、アキュムレータ8から圧縮機2に送られる冷媒と室外熱交換器5から比例弁33に送られる冷媒との熱交換が行われる。その結果、蒸発器7の入口と出口とのエンタルピの差が大きくなり、冷凍サイクルの成績係数を大きくできるため、システムの効率および冷凍能力を向上させることができる。
【0035】
図2(B)に示すように、特定冷房運転時においては、第1制御弁204において比例弁34および比例弁37が共に開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれ、他方で補助凝縮器3を経て蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0036】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で補助凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、補助凝縮器3を経由した冷媒と室外熱交換器5を経由した冷媒とが合流して比例弁33にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入される。制御部は、比例弁33の入口または内部熱交換器10の入口の温度に基づいてその過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0037】
図3(A)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁204の比例弁34が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁51および比例弁52が共に開弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。このとき、比例弁52は、小口径の弁が開弁状態、大口径の弁が閉弁状態となり、膨張装置として機能する。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36が共に開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
【0038】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器3を経て凝縮される。補助凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁52にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、補助凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
【0039】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、比例弁52と比例弁33の弁開度の比率により制御される。制御部は、比例弁52の開度と比例弁33の開度との比率を調整することにより両蒸発器における蒸発量を調整する。その際、制御部は、蒸発器7が凍結することがないよう、蒸発器7の出口側の温度が適正範囲に保たれるように制御する。
【0040】
また、制御部は、比例弁35および比例弁36の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、
図3(A)の左上段のモリエル線図に示すように、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には比例弁36を全開状態にして比例弁35の開度を制御する。一方、
図3(A)の右上段のモリエル線図に示すように、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には比例弁35を全開状態にして比例弁36の開度を制御する。
【0041】
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低く、室外熱交換器5の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、比例弁35の開度を絞ることによりその過熱度が設定値(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、その比例弁35の絞り量により調整される。すなわち、比例弁36を全開状態に維持しつつ比例弁35の開度を絞ることで、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となり、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、室外熱交換器5の出口側に過熱度に応じて比例弁35の開度を制御して差圧ΔPを適正に調整することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、室外熱交換器5の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0042】
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低く、蒸発器7の出口側に過熱度が発生している場合、比例弁36の開度を絞ることによりその過熱度が設定過熱度(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。すなわち、比例弁35を全開状態に維持しつつ比例弁36の開度を絞ることで、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となり、特定暖房運転時における除湿機能を確保することができる。なお、蒸発器7の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、蒸発器7の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0043】
図3(B)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁204の比例弁34が閉弁状態とされ比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁51,52が開弁状態とされる。比例弁33は閉弁状態とされる。このとき、比例弁52が膨張装置として機能する。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。それにより第2冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第3通路23を介して室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁52の開度を制御する。
【0044】
図3(C)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁204の比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁206において比例弁51が開弁状態とされ、比例弁52が閉弁状態とされる。比例弁33は開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第3冷媒循環通路のみが開放される。このため、補助凝縮器3から導出された冷媒は第2通路22を介して蒸発器7に導かれる。室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。制御部は、補助凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御するか、または圧縮機2の入口側の温度に基づき、その入口側の過熱度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。
【0045】
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図4〜
図7は、第2制御弁206の構成および動作を表す断面図である。
図4に示すように、第2制御弁206は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体501とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体501は、有底筒状のボディ504に比例弁51と比例弁52とを同軸状に収容して構成される。比例弁52は、大口径の弁571と小口径の弁572とを含む。比例弁51は「第1弁」として機能し、弁571は「第2弁」として機能し、弁572は「第3弁」として機能する。比例弁51および比例弁52(弁571,弁572)は、1つのモータユニット102により開閉駆動される。
【0046】
ボディ504の一方の側部には導入出ポート210および導入ポート212が設けられ、他方の側部には導出ポート216が設けられている。導入出ポート210は第3通路23の上流側に連通し、導入ポート212は第2通路22に連通し、導出ポート216は内部熱交換器10の一方の入口に連通する。
【0047】
ボディ504の上半部には、円筒状の区画部材516が配設されている。区画部材516は、シール部材を介してボディ504に同心状に組み付けられている。区画部材516の下端部は弁孔520を形成している。また、弁孔520の下端開口端縁により弁座522が形成されている。区画部材516における導入ポート212との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
【0048】
ボディ504の上端部には、円板状の区画部材124が配設されている。区画部材124は、弁本体501の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材124の中央部には、円ボス状の軸受部126が設けられている。軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。
【0049】
区画部材124と区画部材516との間に挟まれるように円筒状のガイド部材517が設けられている。ガイド部材517と区画部材516との間には、シール用のOリング519が設けられている。一方、ボディ504の下部には弁孔524が弁孔520と同軸状に設けられ、その弁孔524の上端開口端縁により弁座526が形成されている。
【0050】
ボディ504の内方には、弁駆動体532、弁体533、弁作動体134、伝達部材536が同軸状に配設されている。弁駆動体532は段付円筒状をなし、その下半部に弁体部538が設けられ、上半部にガイド部540が設けられている。弁体部538とガイド部540は、縮径部を介して一体に設けられている。弁体部538は、弁孔520と弁孔524との間の圧力室に配置されている。一方、ガイド部540は、導入ポート212に連通する圧力室に配置され、Oリング519に摺動可能に支持されている。
【0051】
弁体部538は、その上端部に大径の弁体541が設けられ、下端部に小径の弁体542が設けられている。弁体541は、弁座522に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有し、弁孔520に接離して比例弁51の開度を調整する。弁体542は、いわゆるニードル弁体として構成されている。一方、弁体533は、その大径の本体に弁座526に着脱可能な環状の弾性体(本実施形態ではゴム)を有する。弁体533の下端部には弁孔524に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図には1つのみ表示)が延設されている。弁体533は、弁孔524に接離して弁571の開度を調整する。
【0052】
弁体533の内方には、小径の弁孔528が設けられ、その上端開口端縁により弁座529が形成されている。弁体542の尖った先端部は弁孔528に挿抜される。つまり、弁体542は、弁座529に接離して弁572の開度を調整する。弁体533と弁体541との間には、弁体533を閉弁方向に付勢するスプリング544(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング544の荷重は比較的小さく、弁体533は逆止弁としても機能する。
【0053】
ガイド部540と区画部材124との間には背圧室548が形成される。また、弁駆動体532を軸線方向に貫通する連通路550が形成されている。連通路550は、弁体部538の側部にて導出ポート216に連通している。このため、背圧室548には常に、導出ポート216から導出される下流側圧力Poutが満たされる。
【0054】
本実施形態においては、弁孔520の有効径Aと、ガイド部540の摺動部の有効径B(Oリング519の内径)とが等しく設定されている。このため、弁駆動体532に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。特にOリング519を設けたことにより、ガイド部540の摺動部のシール性が確保されるとともに、その摺動部にゴミなどが挟み込まれることが防止されている。
【0055】
弁駆動体532のガイド部540の内方には、ばね受け552、伝達部材536、ばね受け553が同軸状に挿通されている。ばね受け552は円板状をなし、その中央部を伝達部材536が貫通している。ガイド部540の上端開口部とばね受け552との間には、スプリング554(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、ガイド部540の下端部とばね受け553との間には、スプリング558(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0056】
そして、弁作動体134と弁駆動体532とが伝達部材536を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、伝達部材536の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて弁作動体134に連結されている。伝達部材536の側部には半径方向外向きに突出した係止部560が設けられ、その係止部560がばね受け552に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体532とが上方に一体動作可能となるように構成されている。また、伝達部材536の下端がばね受け553に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体532とが下方に一体動作可能となるように構成されている。
【0057】
弁駆動体532と弁作動体134とは、比例弁51と比例弁52がともに開弁状態であるときはスプリング554,558の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる。弁作動体134が上方に動作して比例弁51が閉弁する際、弁体541が弁座522に着座すると、弁駆動体532の上方への変位は規制される。このため、弁作動体134にはその閉弁時の反力が作用することになるが、スプリング554が縮むことによりその反力が緩和される。
【0058】
また、弁571の閉弁状態において弁作動体134が下方に動作して弁572が閉弁する際、弁体542が弁座529に着座すると、弁駆動体532の下方への変位は規制される。このため、弁作動体134にはその閉弁時の反力が作用することになるが、スプリング558が縮むことによりその反力が緩和される。すなわち、ばね受け552、伝達部材536、ばね受け553、スプリング554およびスプリング558は、閉弁時の反力を緩和する「緩衝機構」を構成する。
【0059】
なお、スプリング554,558は、いずれもその荷重が弁駆動体532とOリング519との間の摺動抵抗(弁駆動体532の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体532とが一体動作しているときにスプリング554,558が縮むことなく、比例弁51および比例弁52の弁開度を正確に制御できるようになっている。
【0060】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部126の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部152が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。
【0061】
弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、各弁体を開閉方向に駆動する。
【0062】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ504に組み付けられており、ボディ504とともに第2制御弁206のボディを構成する。
【0063】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0064】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部152が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ各弁体の開閉方向に駆動される。
【0065】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0066】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0067】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が中間位置にある状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。回転ストッパ188が下方へ変位すると、その下死点にて係止される。
【0068】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部126に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられている。そして、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分が、スリーブ170の底部に突設された円ボス部に支持されている。すなわち、軸受部126が一端側の軸受部となり、スリーブ170における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0069】
以上のように構成された第2制御弁206は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体134が回転駆動されて比例弁51および比例弁52の開閉状態および開度が調整される。
【0070】
図4は比例弁51が閉弁状態となり、比例弁52が全開状態となる場合を示している。第2制御弁206は、例えば
図2(A)に示した通常冷房運転時にこのような状態をとる。このとき、導入出ポート210から導入される高い冷媒圧力Ppにより、弁体533がスプリング544の付勢力に抗して開弁方向に動作し、弁571が開弁状態となる。弁572は、弁座529が可動弁座として変位する結果、弁体542が弁座529に着座することで閉弁状態となる。
【0071】
図5は、比例弁51,52が共に開弁状態となり、比例弁52において弁571が開弁する場合を示している。第2制御弁206は、例えば
図2(B)の特定暖房運転時においてこのような状態をとる。すなわち、
図4の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されると、弁駆動体532が比例弁51の開弁方向に変位し、比例弁51と比例弁52がともに開弁した状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、伝達部材536がばね受け553に係止された状態で、弁作動体134が弁体部538を押し下げるようにして変位させる。比例弁51の開度は、弁作動体134ひいては弁体部538の駆動量により調整される。
【0072】
図6は、比例弁51,52が共に開弁状態となり、比例弁52において弁572が開弁する場合を示している。第2制御弁206は、例えば
図3(A)の特定暖房運転時または(B)の通常暖房運転時においてこのような状態をとる。すなわち、弁駆動体532が
図5と同様の駆動状態であっても冷媒の流れ方向が異なる場合、つまり導入出ポート210の冷媒が低圧となる場合には、弁体533が弁座526に着座して弁571が閉弁状態となる。一方、弁体542が弁作動体134により吊持されているため、弁座529から離間して弁572が開弁状態となる。弁571の開度は、弁作動体134ひいては弁体部538の駆動量により調整される。弁571は、膨張装置として機能する。
【0073】
図7は、比例弁51が全開状態となり、比例弁52が閉弁状態となる場合を示している。第2制御弁206は、例えば
図3(C)に示した特殊暖房運転時にこのような状態をとる。このとき、弁571が閉弁した状態で弁体部538が下死点まで駆動されることで弁体542が弁座529に着座し、弁571が閉弁状態となる。なお、このようにして弁体部538が係止された際、弁作動体134と弁駆動体532との間には、スプリング558等による緩衝機構(遊び)が機能するため、弁孔528と弁座529との間に過剰な圧力が作用することはない。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0075】
上記実施形態では、本発明の制御弁を電気自動車の車両用冷暖房装置に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車の車両用冷暖房装置に提供することが可能であることは言うまでもない。さらに、車両以外の冷暖房装置に適用することも可能である。
【0076】
上記実施形態では、複合弁のアクチュエータとしてステッピングモータを採用する例を示したが、ソレノイド等により構成してもよい。