特許第5740601号(P5740601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740601
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】凍結防止方法及び凍結防止装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/12 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   E03B7/12 G
   E03B7/12 L
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-19108(P2013-19108)
(22)【出願日】2013年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-148863(P2014-148863A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】593079944
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 勉
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−192353(JP,A)
【文献】 特開2002−146858(JP,A)
【文献】 実開平02−119387(JP,U)
【文献】 特開2003−262425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 7/12−7/14
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱源として複数個のLEDチップを並べたチップ列を軟質プラスチック又は合成ゴムから成る被覆材で被覆して構成した帯状の発熱体を用い、凍結対象物に帯状の発熱体を密着させて凍結対象物の凍結を防止することを特徴とする凍結防止方法。
【請求項2】
前記被覆材が透光性を有することを特徴とする請求項1に記載の凍結防止方法。
【請求項3】
前記複数個のLEDチップをフレキシブルプリント配線基板に実装して前記チップ列を形成したことを特徴とする請求項1に記載の凍結防止方法。
【請求項4】
前記複数個のLEDチップをリード線で接続して前記チップ列を形成したことを特徴とする請求項1に記載の凍結防止方法。
【請求項5】
発熱体と、各LEDチップを点灯制御する電源回路と発熱体を接続するコードと、発熱体とコードとの接続部分それぞれ防水性能を付与したことを特徴とする請求項1に記載の凍結防止方法。
【請求項6】
透光性発泡プラスチックで成形した円筒体と、発熱源として複数個のLEDチップを並べたチップ列を軟質プラスチック又は合成ゴムから成る透光性材料で被覆して構成した帯状の発熱体を備え、
円筒体の内周壁面に発熱体を円筒体の軸心方向に沿って延びるように、かつLEDチップが円筒体の内壁面に対向するように装着し、
円筒体の外周壁面から内周壁面に達するスリットを円筒体の軸心方向に沿って形成し、
円筒体をスリットから拡開して凍結防止対象物であるパイプ材に被せることができるようにしたことを特徴とする凍結防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凍結防止方法及び凍結防止装置に関し、より詳しくは水道管、水栓、バルブ等の凍結防止方法及び凍結防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の凍結防止装置の一形式として、特開2003−068430号公報には発泡プラスチック製の円筒体の内周壁面にヒーターマットを貼り付けた凍結防止装置が開示されている。この円筒体には外周壁面から内周壁面に達するスリットが円筒体の軸心方向に沿って形成されている。
この凍結防止装置によれば、円筒体をスリットから拡開して水道管に被せ、ヒーターマットに通電して水道管を加熱し、水道管の凍結を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−068430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の凍結防止装置におけるヒーターマットには、ニッケル−クロム合金、ニッケル−銅合金、ニッケル−鉄合金等から成る電熱線材が発熱源として内蔵されている。この種の電熱線材を発熱源とする凍結防止装置は消費電力が大きいので、凍結防止のコストが高くなる。
【0005】
また、この種の凍結防止装置の使用方法としては、外気温が低下する夜間にだけ作動させ、外気温が上がる昼間は節電のため作動させないのが普通である。そのため、うっかり夜間に凍結防止装置を作動させることを失念したり、昼間に作動停止させることを失念することがあり、使い勝手が悪い。
本発明はかかる問題点に鑑み、消費電力が少なく、使い勝手の良い凍結防止方法及び凍結防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る凍結防止方法は、発熱源として複数個のLEDチップを並べたチップ列を軟質プラスチック又は合成ゴムから成る被覆材で被覆して構成した帯状の発熱体を用い、凍結対象物に帯状の発熱体を密着させて凍結対象物の凍結を防止することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の凍結防止方法において、前記被覆材が透光性を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の凍結防止方法において、前記複数個のLEDチップをフレキシブルプリント配線基板に実装して前記チップ列を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の凍結防止方法において、前記複数個のLEDチップをリード線で接続して前記チップ列を形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の凍結防止方法において、発熱体と、各LEDチップを点灯制御する電源回路と発熱体を接続するコードと、発熱体とコードとの接続部分それぞれ防水性能を付与したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明に係る凍結防止装置は、透光性発泡プラスチックで成形した円筒体と、発熱源として複数個のLEDチップを並べたチップ列を軟質プラスチック又は合成ゴムから成る透光性材料で被覆して構成した帯状の発熱体を備え、
円筒体の内周壁面に発熱体を円筒体の軸心方向に沿って延びるように、かつLEDチップが円筒体の内壁面に対向するように装着し、
円筒体の外周壁面から内周壁面に達するスリットを円筒体の軸心方向に沿って形成し、
円筒体をスリットから拡開して凍結防止対象物であるパイプ材に被せることができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の凍結防止方法によれば、発熱原として、消費電力の大きい電熱線に代えて、消費電力の少ないLEDを用いるので、低コストで水道管等の凍結防止対象物の凍結を防止できる。
また、チップ列を軟質プラスチック又は合成ゴムで被覆して発熱体を構成したので、発熱体が可撓性と柔軟性を有する。そのため発熱体を水道管等の凍結防止対象物に巻き付けたり、張り付けることができるとともに、巻き付けたり、張り付けたとき発熱体を隙間無く凍結防止対象物に当接できるので、LEDチップの発熱が効率的に凍結防止対象物に伝導される。
【0013】
請求項2に記載の凍結防止方法によれば、LEDチップ列を被覆した被覆材が透光性を有するので、発熱体に通電されていることをLEDチップの発光によって容易に視認できる。そのため、通電操作を失念することを防止できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、複数個のLEDチップをフレキシブルプリント配線基板に実装して形成したチップ列は一般に照明手段として市場に供されているので、これを利用することにより発熱体の製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、LEDチップをリード線で接続してチップ列を形成するので、構成が簡単であり、そのため発熱体の製造コストを低減できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、水中にある凍結防止対象物や、昼間に外気温が上昇したとき水滴が発生し易い凍結防止対象物の凍結防止が可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明に係る凍結防止装置によれば、発泡プラスチック製の円筒体の保温効果によって、より少ない消費電力でパイプ材の凍結を防止できる。
円筒体を透光性発泡プラスチックで成形するとともに、LEDチップが円筒体の内周壁面に対向するように配置したので、円筒体の外部からもLEDチップの発光を視認でき、凍結防止装置の作動の確認が容易になる。
また、円筒体をスリットから拡開できるので、円筒体をパイプ材に被せる作業が容易になるとともに、径の異なる複数種類のパイプ材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体を示す部分平面図である。
図2図1の2−2線から切断した断面図である。
図3】同帯状発熱体の使用方法を示す説明図である。
図4】本発明の第2実施例に係る凍結防止方法に用いられる凍結防止装置を示す斜視図である。
図5図4の5−5線から切断した断面図である。
図6】同凍結防止装置の使用方法を示す断面図である。
図7】本発明の第3実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体を示す部分平面図である。
図8図7の8−8線から切断した断面図である。
【実施例1】
【0019】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1乃至図3には本発明の第1実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体10が示されている。当該帯状発熱体10は複数個のLEDチップ11を実装したフレキシブルプリント配線基板12を備えている。複数個のLEDチップ11はフレキシブルプリント配線基板12の長手方向に沿って配置され、一列のチップ列を形成している。各LEDチップ11に電力を供給し、LEDチップ11の点灯を制御する電源回路13が電源コード14を介してフレキシブルプリント配線基板12に接続されている。
【0020】
フレキシブルプリント配線基板12の表裏両面は同基板12に実装されたLEDチップ11を含めて熱可塑性の透明な軟質ポリ塩化ビニルから成る被覆材15で被覆されている。この被覆材15は、電源コード14とフレキシブルプリント配線基板12との接続部分、すなわち、電源コード14の先端部分のビニル絶縁体から露出した電線14aがフレキシブルプリント配線基板12のプリント配線12aに半田付けされている部分12bも被覆している。
【0021】
帯状発熱体10の構成は以上の通りであって、第1実施例に係る凍結防止方法では、図3に示すように、凍結防止対象物である水道管16に帯状発熱体10を螺旋状に巻回し、帯状発熱体10の先端部と基端部を粘着テープ17で水道管16に固着する。電源回路13から電力をLEDチップ11に供給すると、LEDチップ11が発光する。LEDチップ11が発光に伴って発熱し、水道管16が加熱され、水道管16の凍結が防止される。
【0022】
第1実施例に係る凍結防止方法によれば、発熱原として、消費電力の大きい電熱線に代えて、消費電力の少ないLEDチップ11を用いるので、低コストで水道管16等の凍結防止対象物の凍結を防止できる。
【0023】
チップ列を軟質塩化ビニル15で被覆して帯状発熱体10を構成したので、帯状発熱体10が可撓性と柔軟性を有する。そのため帯状発熱体10を水道管16等の凍結防止対象物に巻き付けたとき、帯状発熱体10が隙間無く水道管16等に接触するので、LEDチップ11の発熱が効率的に水道管16等に伝わる。
【0024】
フレキシブルプリント配線基板12とLEDチップ11のチップ列を透明な塩化ビニル15で被覆したので、帯状発熱体10に通電されていることをLEDチップ11の発光によって容易に視認できる。そのため、通電操作を失念することを防止できる。
【0025】
複数個のLEDチップ11をフレキシブルプリント配線基板12に実装して形成したチップ列は一般に照明手段として市場に供されているので、これを利用することにより帯状発熱体10の製造コストの低減を図ることができる。
【0026】
電源コード14は元来防水性を有するので、またフレキシブルプリント配線基板12とLEDチップ11のチップ列が、同基板12と電源コード14との接続部分を含めて塩化ビニルで被覆されているので、帯状発熱体10が防水性を有する。そのため昼間に外気温が上昇して水滴が水道管16に発生しても、帯状発熱体10が漏電して作動不良を来たすことはない。
【実施例2】
【0027】
本発明の第2実施例に係る凍結防止方法に用いられる凍結防止装置20を図4乃至図6に示す。当該凍結防止装置20は透光性を有する白色発泡ポリウレタン製の円筒体21と第1実施例の凍結防止方法に用いた帯状発熱体10を備えている。
【0028】
円筒体21の内周壁面に円筒体21の軸心方向に沿って延びる溝21aが形成され、この溝21aに帯状発熱体10が嵌め込まれている。帯状発熱体10はLEDチップ11が円筒体21の内壁面に対向するように嵌め込まれている。円筒体21には、その外周壁面から内周壁面に達するスリット21bが円筒体21の軸心方向に沿って形成されている。
【0029】
凍結防止装置20の構造は以上の通りであって、円筒体21をスリット21bから拡開して水道管16に被せ、スリット21の部分にテープ22を貼着して、円筒体21を水道管16に装着し、電源回路13からLEDチップ11に通電して水道管16を加熱する。
【0030】
第2実施例に係る凍結防止方法によれば、発泡プラスチック製の円筒体21の保温効果によって、より少ない消費電力で水道管16の凍結を防止できる。
【0031】
LEDチップ11が円筒体21の内周壁面に対向するように配置したので、円筒体21の外部からもLEDチップ11の発光を視認でき、凍結防止装置20の作動の確認が容易になる。
【0032】
円筒体21をスリット21bから拡開できるので、円筒体21を水道管16に被せる作業が容易になるとともに、径の異なる複数種類の水道管16に適用できる。
【実施例3】
【0033】
本発明の第3実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体30を図7及び図8に示す。当該帯状発熱体30は、複数個のLEDチップ31をリード線32で接続してチップ列を形成し、このチップ列を熱可塑性の透明な軟質塩化ビニル製の被覆材33で被覆して構成されている。この被覆材33はリード線32に接続されている電源コード14の電線14aも被覆している。
なお、第3実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体30の他の構成は第1実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体10と同じであるので、同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
第3実施例に係る凍結防止方法に用いられる帯状発熱体30は、LEDチップ31をリード線32で接続してチップ列を形成するので、構成が簡単であり、そのため帯状発熱体30の製造コストを低減できる。
【0035】
上述した帯状発熱体10,30においては、被覆材15,33としてチップ列を熱可塑性の透明な軟質塩化ビニルを用いたが、被覆材15,33としては、ポリエチレン、ポリスチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性の軟質プラスチック材や、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の合成ゴムを用いることができる。
【0036】
上述した帯状発熱体10,30においては、一本のチップ列を被覆材15,33で被覆したが、多数のチップ列を形成して被覆材15,33で被覆することによりマッド状の発熱体を形成することもできる。マット状の発熱体を用いることにより表面積の大きい凍結防止対象物の凍結防止も可能となる。
【符号の説明】
【0037】
10,30…帯状発熱体
20…凍結防止装置
11,31…LEDチップ
12…フレキシブルプリント配線基板
13…電源回路
14…電源コード
15,33…被覆材
16…水道管
21…円筒体
21b…スリット
32…リード線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8