(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ストッパーは、ストッパー作動手段によってストッパー位置からノズル部に沿って一定量下降しノズル部からチップを離脱させることを特徴とする請求項2記載の分注装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる分注装置の要部を示す図である。同図に示す分注装置1は、市販の使い捨て用のチップ5が多数セットされたチップケース3が分注テーブル81(
図5参照)に配置され、そのチップケース3の上方には分注ヘッド11を備えたシリンダー本体31と、シリンダー本体31に設けられたピストン35と、ピストン35を上下動させる上下動駆動部7が設けられている。分注ヘッド11は、下方となる先端部がノズル部15となっており、このノズル部15の内側にはノズルスリーブ28を有する。また分注ヘッド11は、シリンダー本体31の下部に独立してそれぞれ取付けられているが、連続し合う一体形状の分注ヘッドであってもよい。
【0016】
図2は、
図1に示した分注装置1において各チップ5が各ノズル部15から下方に分離している状態を示す図であるが、分注装置1は、このように各ノズル部15が各チップ5に対して上方に分離した状態から各ノズル部15を下降させることで、各ノズル部15を各チップ5に嵌挿させて各チップ5を各ノズル部15で保持し、この嵌挿保持した状態で各チップ5をチップケース3から取り出し、所定の移動先に移動させるなどのために使用される。
【0017】
更に詳しくは、分注装置1は、分注ヘッド11の下部にあるストッパーを構成するストッパー板13を貫通して、その下方に下部が突出している複数のノズル部15を
図1に示すようにチップケース3にセットされた複数のチップ5に対して嵌挿させて、各ノズル部15で各チップ5を保持し、この嵌挿保持した状態で各チップ5を上方に持ち上げてチップケース3から上方に取り出し、この取り出した各チップ5を図示しない例えば液体のような検体などの入った容器の所に移動し、この容器から検体を各チップ5内に吸引し、この吸引した検体を検査や分析などのために別の容器に吐き出し、検体を吐き出した後、各チップ5をチップ廃棄位置に移動して廃棄するためなどに使用されるものである。
【0018】
図3は、
図2に示した分注装置1の分注ヘッド11の1個のノズル部15とチップケース3内の1個のチップ5のみを説明のために取り出して図示するものであり、上下動駆動部7は省略されている。
【0019】
図3に示すように、チップ5は、上部の直径が大きく、下部の直径が小さい円錐状のチューブであり、大径の上部に形成された下向きの段部がチップケース3の孔の周縁に当たって、チップケース3にセットされている。なお、チップ5の下端は、開口していて、この下端の開口部から上述したように検体を吸引したり、吐き出すようになっている。
【0020】
また、
図3に示すように、ノズル部15には、その下端寄りの外周部にO−リングなどからなるリング状のシール部材17が設けられているが、このシール部材17の弾性変形による拡大時、すなわち後述するように上下方向からの押圧による圧縮によって弾性変形し外側へ突出することで、ノズル部15に嵌挿されたチップ5は
図4(a)に示すようにシール部材17と弾接し合い全周のシール状態が確保される。
【0021】
前記リング状のシール部材17は、ノズル部15の下端寄りの外周部に形成された周溝19に嵌合されている。この周溝19は、ノズル部15の先端の外周部に固定的に取り付けられた先端部材21の上端面とこの先端部材21の上方に周溝19を挟んでノズル部15の外周部を囲むように設けられている固定部材23の下端面、すなわちノズル部15のノズル先端縁でもある固定部材23の下端面との間でリング状に形成され、この周溝19を構成する先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間にリング状のシール部材17が挟まれるように取り付けられている。
【0022】
固定部材23は、ストッパー板13を貫通して、上方に延伸した上端寄りの部分の内周壁面が削り取られて、上側段部23aが形成され、この上側段部23aの上に付勢手段を構成する圧縮コイルばね25の下端が当接している。なお、固定部材23は、中程の外周部に鍔部23bが形成され、この鍔部23bの上面は、ノズル部15の上側部分を全体的に囲むように設けられているシリンダ本体部31の下端面に固定的に取り付けられ、固定部材23は、シリンダ本体部31とともに上下動し得るようになっている。なお、固定部材23の鍔部23bの上面は、固定部材23の取り付け時にシリンダ本体部31の下端面と当接し合うことで、取付け時の取付け完了位置決めストッパー手段となっている。
【0023】
なお、シリンダ本体部31は、上部の外周部にシリンダ鍔部31aが形成され、このシリンダ鍔部31aは、シリンダ本体部31および分注ヘッド11を全体的に囲んでいるシリンダ保護体でもある可動支持フレーム71の上部の内周面に穿設された溝71aに嵌合し、シリンダ本体部31は、可動支持フレーム71とともに上下動するようになっている。なお、可動支持フレーム71の上部の天板71bには、上下動駆動部7を構成するピストン駆動プーリ57、ベルト59、ピストン駆動モータ61,モータ軸プーリ63が固定的に取り付けられている。この上下動駆動部7を取り付けられた可動支持フレーム71は、図示しない昇降装置により当該可動支持フレーム71の外側の固定支持フレーム73にガイドされてシリンダ本体部31等と一緒に上下動する。これにより、例えば、ノズル部15に対するチップ5の装着が可能となっている。
【0024】
また、ノズル部15の中心には、ノズル部15のノズル下端面15aからノズル上端面15bまでの全体を貫通するようにノズル通路27が形成され、このノズル通路27の上端は、シリンダ本体部31に形成されたシリンダ開口部33に連通している。
【0025】
このシリンダ開口部33内には、昇降可能なピストン35が嵌挿し、このピストン35の下端は、ノズル部15のノズル上端面15bの間近まで下方に延伸している。そして、ピストン35が後述するように上下動駆動部7によりシリンダ開口部33内を下降して、ピストン35の下端がノズル部15のノズル上端面15bに当接し、ノズル部15を下方に押圧した場合には、ノズル部15は、ピストン35の下方への押圧動作によりピストン35の下方のシリンダ開口部33内で下方へ押動されるようになっている。
【0026】
このピストン35の下方に続くシリンダ開口部33は、ノズル部15の上端部より少し下方の部分で直径が大きくなった大径開口部47となり、この大径開口部47とシリンダ開口部33との間に段部47aが形成されている。この段部47aには、ノズル部15の上端部に取り付けられた円筒部材48の下端の鍔部48aの上端が当接している。
【0027】
そして、前記固定部材23の上側段部23aに下端が当接している前記圧縮コイルばね25は、その上端が前記鍔部48aの下端に当接し、鍔部48aを、ひいてはノズル部15を上方に押圧している。この圧縮コイルばね25によるノズル部15の上方への押圧により固定部材23の下端面と先端部材21bbbbの上端面との間にシール部材17が強く挟まれた場合、周溝19の溝幅が縮小し、この溝幅の縮小によりシール部材17は
図4(a)に示すように弾性変形による楕円形に圧縮されて、周溝19の溝幅から外へはみ出るように拡大する。この結果、このシール部材17の、周溝19からはみ出るように拡大した部分が
図1および
図4(a)に示すようにチップ5の内周面に圧接し、この圧接したシール部材17を介してチップ5がノズル部15に保持される。
【0028】
また、ノズル部15がピストン35により下方に押圧されて、ノズル部15の先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間が広がって、周溝19の溝幅が拡大した時には、周溝19内のシール部材17は、
図4(b)に示すように、圧接が解除された楕円形の状態から本来の円形状に戻って、周溝19からはみ出ることなく、周溝19内に収まるようになるため、チップ5とノズル部15との嵌挿時に挿入抵抗なく円滑に挿入が可能となる。
【0029】
また、ピストン35の上端は、シリンダ本体部31の上端部を貫通して上方に延伸し、その上のピストン駆動板37の下面に取り付けられている。
図1に示したように、ノズル部15にチップ5が嵌挿保持された状態において、ピストン35を昇降動させると、チップ5の下端部から液体を吸い上げたり、吐き出したりすることができるようになっている。なお、ピストン35が昇降動するシリンダ開口部33の上端の周縁部には、ピストンシール部材39が取り付けられている。
【0030】
シリンダ本体部31の下面には、
図1および
図2に示すように、2本のストッパーガイドピン41の上端部が固定的に取り付けられ、このストッパーガイドピン41の下端部は、ストッパー板13に当接している。また、このストッパーガイドピン41を囲むようにその周囲には引張コイルばね43が取り付けられ、この引張コイルばね43は、上端がシリンダ本体部31の下面に取り付けられ、下端がストッパー板13に取り付けられている。そして、この引張コイルばね43の引張力によりストッパー板13は、常時シリンダ本体部31に向かう上方に引っ張られているが、ストッパー板13は、ストッパーガイドピン41の下端部に当接し、その位置で留まっている。
【0031】
また、ピストン駆動板37の周辺部寄りの下面には、チップ外しピン45の上端が固定的に取り付けられ、このチップ外しピン45の下端は、ストッパー板13の間近まで下方に延伸している。このチップ外しピン45は、前記ピストン35がピストン駆動板37によって下方に押されて下降すると、その下端部、すなわちチップ外しピン45の下端部がストッパー板13に当接し、ストッパー板13を下方に押し下げるようになっている。
【0032】
前記ピストン駆動板37の上方に設けられた上下動駆動部7においては、
図1および
図2に示すように、ピストン駆動板37の上面にボールねじ51の下部が螺合するねじ板53が支持部材55で支持されて取り付けられている。このボールねじ51の上端部には、ピストン駆動プーリ57が取り付けられている。このピストン駆動プーリ57に掛けられたベルト59は、ピストン駆動モータ61の駆動軸に取り付けられたモータ軸プーリ63に掛けられている。なお、ボールねじ51の上端部は、可動支持フレーム71の天板71bを貫通してピストン駆動プーリ57に取り付けられ、ピストン駆動プーリ57は、可動支持フレーム71の天板71bに一体的に取り付けられている。前記ピストン駆動モータ61は正転・逆転可能となっていて、例えば正転することでボールねじ51、ピストン駆動板37を介してピストン35及び後述するチップ外しピン45を下降させる。また、逆転させることでピストン35及びチップ外しピン45を上昇させることが可能となる。ピストン駆動モータ61の正転・逆転及び作動時間は図外の制御盤に設けられた各操作スイッチのスイッチ信号によって制御される。この場合、ピストン35については、吸引・分注(吐出)する標準のストロークの外に、ノズル部15を介して先端部材21を下降(周溝19の溝幅を拡大)させる二段階制御となっている。具体的には例えば、一例として前記ピストン駆動モータ61に図外の分注スイッチからの信号が入力されることで作動し、ピストン35は標準のストローク内において吸引(ピストン上昇)・分注(ピストン下降)が行われる。この時の吸引量はチップ5内に収まるよう設定され、シリンダ開口部33内に悪影響が起きないようになっている。また、例えば、図外のチップ装着スイッチからの信号がピストン駆動モータ61に入力されることで作動し、ピストン35は標準のストロークを超えて最下降し、円筒部材48、ノズル部15を介して先端部材21を押し下げ周溝19の溝幅を拡大する。この時、チップ外しピン45も一緒に下降するがストッパー板13に何等影響を与えることがないように設定されている。なお、最下降の「最」とは標準のストロークを超える、という意味である。
【0033】
一方、例えば、図外のチップ外しピンからの信号がピストン駆動モータ61に入力されることで作動し、チップ外しピン45を介してストッパー板13を押し下げ、チップ5の取り外しが可能となる。この時、チップ外しピン45と一緒にピストン35も下降するが、チップ5を取り外す最終作業のため何等影響はない。
【0034】
このような上下動駆動部7の構成により、ピストン駆動モータ61の回転は、モータ軸プーリ63、ベルト59、ピストン駆動プーリ57を介してボールねじ51に伝達され、ピストン駆動モータ61の回転に応じてボールねじ51が回転し、このボールねじ51の回転によりねじ板53、支持部材55を介してピストン駆動板37が上下動するようになっている。このピストン駆動板37の上下動は、ピストン35に伝達される。そして、ピストン駆動板37が下降すると、その下端部でノズル部15が下方に押動される。
【0035】
このような上下動駆動部7の構成により、ピストン駆動モータ61の回転は、モータ軸プーリ63、ベルト59、ピストン駆動プーリ57を介してボールねじ51に伝達され、ピストン駆動モータ61の回転に応じてボールねじ51が回転し、このボールねじ51の回転によりねじ板53、支持部材55を介してピストン駆動板37が上下動するようになっている。このピストン駆動板37の上下動は、ピストン35に伝達される。そして、ピストン駆動板37が下降すると、その下端部でノズル部15が下方に押動される。
【0036】
図5は、
図1および
図2に示した分注装置1の全体構成を示す斜視図である。
図5において、
図1および
図2に示した複数のチップ5をセットされたチップケース3は、分注テーブル81の上に載置され、このチップケース3の上方には、矩形の枠体である本体支持フレーム83が設けられ、この本体支持フレーム83の上にはボックス状のケース85が取り付けられているが、このケース85および本体支持フレーム83の内部に
図1に示した分注ヘッド11および上下動駆動部7が配設されている。
【0037】
このようにケース85および本体支持フレーム83内に配設された分注ヘッド11および上下動駆動部7は、本体支持フレーム83に沿って矢印200で示すように前後方向に移動し得るとともに、また矢印201で示すように上下方向に移動し得るようになっている。
【0038】
更に、分注ヘッド11および上下動駆動部7を内蔵したケース85および本体支持フレーム83の後方には、横長の箱体87が設けられ、この横長の箱体87の前面には、ガイドレール89が取り付けられているが、本体支持フレーム83は、このガイドレール89に沿って矢印202で示すように左右の横方向に移動し得るようになっている。
【0039】
上述したように、ケース85および本体支持フレーム83内に設けられた分注ヘッド11および上下動駆動部7は、
図5の矢印200、201、202で示す前後方向、上下方向、左右の横方向に自在に移動し得るように構成されているものであるため、複数のチップ5をセットされて分注テーブル81の上に載置された複数のチップケース3のうちのいずれのチップケース3の真上の対向位置にも分注ヘッド11および上下動駆動部7は移動することができ、この対向位置において当該チップケース3にセットされた複数のチップ5を分注ヘッド11の複数のノズル部15で嵌挿保持することができる。そして、このように複数のノズル部15で嵌挿保持した複数のチップ5を矢印200、201、202で示す前後方向、上下方向、左右の横方向の任意の位置に移動させることができる。
【0040】
図6は、
図1に示した分注ヘッド11および上下動駆動部7の具体的構成を示す斜視図である。
図6において、
図1に示したピストン駆動プーリ57およびピストン駆動モータ61が最上部の前記可動支持フレーム71の天板71bの上に設けられ、このピストン駆動プーリ57とピストン駆動モータ61の下側のモータ軸プーリ63との間に前記ベルト59が架け渡されている。なお、
図6では、ピストン駆動プーリ57は、具体的構成として複数段に構成されているが、基本的構成は
図1に示す構成である。
【0041】
また、
図6において、最下部の前部には、ノズル部15に装着されたチップ5の先端が分注ヘッド11の下側に図示されているが、この分注ヘッド11の下側に
図1で示したように複数のノズル部15が設けられているものである。この分注ヘッド11の上には、シリンダ本体部31の前面側が図示され、このシリンダ本体部31の上にピストン駆動板37が設けられている。
【0042】
次に、以上のように構成される分注装置1の作用、すなわち分注ヘッド11の各ノズル部15に各チップ5を装着させるチップ装着動作について説明する。なお、この説明では、
図3、
図7〜
図10を参照して、1個のノズル部15を1個のチップ5に嵌挿する動作について説明するが、
図1および
図2に示すように複数のノズル部15を複数のチップ5に対して同時に嵌挿する場合の動作も同じである。なお、
図7〜
図10では、上下動駆動部7は省略されている。
【0043】
まず、
図2に示すように、チップケース3にセットされた複数のチップ5に対して分注ヘッド11の下部の複数のノズル部15がそれぞれ対向する真上の位置になるように当該チップケース3の真上に分注ヘッド11を対向配置して、待機位置に設定する。この対向配置では、
図5において矢印200、201、202で示したように分注ヘッド11および上下動駆動部7を内蔵した本体支持フレーム83およびケース85を前後方向、上下方向、左右の横方向に移動して、複数のノズル部15の各々がそれぞれ複数のチップ5の各々に対向する真上の対向位置になるように行う。
【0044】
図2に示すように、チップケース3にセットされた複数のチップ5に対して分注ヘッド11の下部の複数のノズル部15がそれぞれ対向する真上の位置に配置された待機位置の状態において1個のノズル部15と1個のチップ5のみを取り出した図が
図3である。
【0045】
この
図3に示す待機位置においては、ノズル部15の先端の周溝19に嵌合されているリング状のシール部材17は、
図4(a)に示すように、先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間で押圧されて、周溝19からはみ出るように横方向に楕円形に拡大されているが、この状態では、ノズル部15は、まだチップ5に嵌挿されていないので、楕円形に拡大したシール部材17は、チップ5の内周面に圧接されていないことは勿論である。なお、この待機状態のように、シール部材17が上述したように周溝19からはみ出るように横方向に楕円形に拡大されている状態では、この拡大した部分が邪魔となって、そのままではノズル部15をチップ5に嵌挿させることはできない。
【0046】
図3に示されている待機状態において、ピストン駆動モータ61を駆動し、このピストン駆動モータ61の回転をモータ軸プーリ63、ベルト59、ピストン駆動プーリ57を介してボールねじ51に伝達し、このボールねじ51の回転によりピストン駆動板37を
図7の矢印701で示すように下方に押動する。このピストン駆動板37の下方への押動によりピストン35も
図7の矢印702で示すように下方へ押動される。
【0047】
このピストン35の下方への押動によりピストン35の下端面が
図7に示すようにノズル部15のノズル上端面15bに当接し、ノズル部15を矢印702で示すように下方に押動する。この結果、ノズル部15のノズル下端部15aは、先端部材21とともに
図7の矢印703で示すように下方に移動する。従って、この先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間の周溝19は、
図7に示すように上下方向において拡大し、この周溝19内のシール部材17は、楕円形の状態から
図4(b)に示すように本来の円形状に戻って、周溝19からはみ出ることなく、周溝19内に収まる。
【0048】
このようにシール部材17が円形に戻り、周溝19内に収まって、はみ出ていない状態においては、ノズル部15をチップ5にスムーズに抵抗もなく嵌挿することができるので、ここで
図8に示すように、上述したピストン駆動モータ61の回転によりボールねじ51を介してピストン駆動板37を下方に押動するとともに、分注ヘッド11全体を
図8の矢印801で示すように下方に押動し、すなわち分注ヘッド11を全体的に囲んでいる可動支持フレーム71を固定支持フレーム73でガイドしながら図示しない昇降装置によりシリンダ本体部31等と一緒に下方に押動し、これにより分注ヘッド11全体をシリンダ本体部31等とともに
図8の矢印801で示すように下方に押動する。
【0049】
図8の矢印801で示すように、分注ヘッド11全体およびシリンダ本体部31などが下方に押動されると、分注ヘッド11の最下部にあるノズル部15が先端からチップ5内に挿入され始め、十分挿入されると、ストッパー板13の下面がチップ5の上端に当接し、この当接した位置で分注ヘッド11全体の下方への押動、すなわち移動は停止する。この状態では、チップ外しピン45の下端部およびストッパーガイドピン41の下端部はストッパー板13の上面に当接している。
【0050】
このようにチップ5の上端にストッパー板13の下面が当接した状態において、次にピストン駆動モータ61の回転によりボールねじ51を介してピストン駆動板37を
図9の矢印901で示すように上方に移動させる。このピストン駆動板37の上方への移動により、ピストン35も上方へ移動し、これによりノズル部15のノズル上端面15bに対するピストン35の下端面への当接は、解除され、ピストン35の下端は、ノズル部15のノズル上端面15bから離れ、ノズル部15のノズル上端面15bの上方に空間ができ、ノズル上端面15b、ひいてはノズル部15は上方へ移動可能となる。
【0051】
この結果、固定部材23の上側段部23aと円筒部48の鍔部48aの下端との間の圧縮コイルばね25により、鍔部48a、ひいてはノズル部15は、上方に押動される。ノズル部15の先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間の周溝19は、上下方向に狭められるように縮小し、この周溝19内のシール部材17は、水平方向に楕円形に圧縮され、その横幅が周溝19からはみ出るように拡大する。この結果、このシール部材17の、周溝19からはみ出るように拡大した部分が
図4(a)に示すようにチップ5の内周面に圧接し、この圧接したシール部材17を介してチップ5がノズル部15に保持される。
【0052】
このようにチップ5がシール部材17の拡大によりノズル部15に嵌挿保持されている状態において、次に分注ヘッド11全体を
図10の矢印1001で示すように上方に移動させ、チップ5をチップケース3から抜き出す。なお、この分注ヘッド11全体の上方への移動は、シリンダ本体部31、可動支持フレーム71を含んで、
図5で矢印201で示したように図示しない昇降装置により固定支持フレーム73でガイドされながら全体的に行われる。
【0053】
このようにチップケース3から取り出されたチップ5は、ノズル部15に嵌挿保持した状態で、図示しない例えば液体のような検体などの入った容器の所に移動させられ、この容器から検体をチップ5内に吸引し、この吸引した検体を検査や分析などのために別の容器に吐き出し、検体を吐き出した後、各チップ5をチップ廃棄位置に移動して廃棄される。
【0054】
図16は、上述したように、チップケース3から取り出したチップ5をノズル部15で嵌挿保持した状態でチップ5の先端を容器91内に近接させ、容器91から検体をチップ5内に吸引したり、またはチップ5から容器91内に検体を吐き出す状態を説明するための図である。本実施形態では、上述したように、複数のチップ5に対して複数のノズル部15を分注ヘッド11で適確に保持しながら同時に正しく揃えた状態で移動させることができる。そのため、チップ5の先端を容器91内に近接させた場合の両者の距離は、正規のアクセス距離、すなわちチップ5の先端と容器91の底面との距離を予め設定された規定の距離に保持することができる。すなわち、チップ5の先端位置の不揃いがなく、またチップ5の先端が容器91の底に接触することもなく、容器91から検体をチップ5内に適確に吸引したり、チップ5から容器91内に検体を適確に吐き出すことができる。
【0055】
次に、
図11〜
図15を参照して、ノズル部15に嵌挿保持されたチップ5をノズル部15から取り外す動作について説明する。なお、
図11〜
図15では、上下動駆動部7は省略されている。
【0056】
図11に示すように、ノズル部15の下端寄りのシール部材17の周溝19による圧縮によりシール部材17がチップ5の内周面に圧接して、チップ5がノズル部15に保持されている状態において、
図11の矢印1101で示すようにシリンダ本体部31を下方に移動させ、それからピストン駆動板37を
図12の矢印1201で示すように下方に移動させると、ピストン35の下端がノズル部15のノズル上端面15bに当接し、ノズル部15は、ピストン35により下方に押動される。
【0057】
ノズル部15が下方に押動されると、ノズル部15の先端部材21も下方に押動され、この先端部材21の上端面と固定部材23の下端面との間の周溝19は、上下方向の溝幅が拡大し、周溝19内のシール部材17は、
図12に示すように、または
図4(b)に示すように、本来の円形状に戻って、周溝19内に収まり、シール部材17のチップ5の内周面への圧接は解除され、ノズル部15のシール部材17によりチップ5の保持も解除される。
【0058】
このようにチップ5の保持が解除された状態において、
図13の矢印1301で示すように、ピストン駆動板37を下方に押動すると、すなわちピストン駆動モータ61の回転をボールねじ51を介してピストン駆動板37に伝達して、ピストン駆動板37を下方に押動すると、ピストン駆動板37の下面に取り付けられているチップ外しピン45の下端がストッパー板13に当接し、ストッパー板13を下方に押動する。ストッパー板13が下方に押動されると、このストッパー板13に上端が当接しているチップ5は、下方に押動され、
図13に示すように、ノズル部15から外れ、
図13の矢印1302で示すように下方に落下し、
図14に示すようにチップケース3にセットされる。本実施形態では、このようにチップ5をノズル部15から取り外すのに、チップ外しピン45を利用できるため、従来のようにチップ取り外し手段を別途設ける必要がなく、経済的である。
【0059】
図13に示すように、チップ5がノズル部15から外されて落下すると、次にピストン駆動モータ61の回転をボールねじ51を介してピストン駆動板37に伝達し、
図14の矢印1401で示すように、ピストン駆動板37を上昇させる。
【0060】
このようにピストン駆動板37が上昇すると、ピストン駆動板37の下面に取り付けられているピストン35も上昇するため、ピストン35の下端によるノズル上端面15bへの当接は解除されるとともに、ピストン駆動板37の下面に取り付けられているチップ外しピン45が上昇し、その下端はストッパー板13の上面から離れるため、ストッパー板13も上昇するが、このストッパー板13の上昇はストッパーガイドピン41の下端がストッパー板13に当接することで停止する。
【0061】
そして、この状態において、ノズル部15の外周部に取り付けられている固定部材23が圧縮コイルばね25の圧縮力により下方に押動され、この固定部材23の下端面と先端部材21の上端面との間の周溝19は、上下方向の溝幅が縮小される。この周溝19の溝幅の縮小により周溝19内のシール部材17は
図14に示すように楕円形に圧縮されて、周溝19からはみ出るように拡大する。
【0062】
このようにピストン駆動板37が上昇し、ストッパーガイドピン41の下端がストッパー板13に当接し、かつシール部材17が周溝19内に挟まれて楕円形に圧縮された状態において、シリンダ本体部31を含む分注ヘッド11全体は、
図15の矢印1501で示すように上昇し、分注装置1の所定の位置に設定され、次の動作に備えられる。
【0063】
[第2の実施形態]
図17は、本発明の第2の実施形態に係わる分注装置の要部を示す図である。同図に示す分注装置10は、
図1に示した分注装置1における複数のノズル部15および複数のチップ5をそれぞれ1個ずつとし、1個のチップ5に対して1個のノズル部15を嵌挿させるように変更した点が大きく異なるものである。
【0064】
このようにノズル部15およびチップ5をそれぞれ1個とすることにより、この1個のノズル部15の両側に近接して、2個のストッパーガイドピン41および引張コイルばね43が設けられるとともに、また2個のチップ外しピン45も1個のノズル部15を挟んでシリンダ本体部31の両側に近接して設けられることになるが、その他の構成は、
図1に示した第1の実施形態の分注装置1と同じであり、同じ構成要素には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図18は、
図17に示した分注装置10の全体構成を示す斜視図である。同図に示す分注装置10は、1個のチップ5を1個のノズル部15で嵌挿保持し、この嵌挿保持した1個のチップ5およびノズル部15を第1の実施形態の分注装置1と同様に前後方向、上下方向、左右の横方向に移動し、任意の位置に設定し得るようにしたものであり、その基本的動作は第1の実施形態の分注装置1と同じである。
【0066】
[第3の実施形態]
図19は、本発明の第3の実施形態に係わる分注装置の要部を示す図である。同図に示す分注装置100は、
図17に示した第2の実施形態の分注装置10においてチップケース3の下側に架台93を設け、この架台93の上にチップケース3を載置するとともに、この架台93をボールねじ95とモータ97で上下動し得るように構成した点が
図17に示した第2の実施形態の分注装置10と異なるものであり、その他の構成は同じであり、同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
図19に示すように構成される分注装置100では、ピストン駆動板37の上方の上下動駆動部7による分注ヘッド11の上下動に加えて、チップケース3の下側に設けたボールねじ95とモータ97とで架台93を介して下方からチップケース3を上下動することができ、これによりチップケース3に配置セットされたチップ5を下方から上方に押動して、分注ヘッド11のノズル部15に近接させ、このノズル部15をチップ5に対して下方から嵌挿させることができる。
【0068】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。