【実施例1】
【0018】
図1ないし
図11は、本発明の実施例1による工作機械のパレット交換装置を説明するための図である。なお、本実施例において,前後左右とは、機械正面から見た場合の前後左右を意味する。
【0019】
図において、1はパレット交換装置2を備えたマシニングセンタ(工作機械)を示している。このマシニングセンタ1は、機械正面から見て、X軸方向(前後方向)に延びる固定ベッド3と、該固定ベッド3の長手方向中途部を跨ぐように立設された門形のコラム4と、該コラム4にY軸方向(左右方向)に移動可能に支持されたサドル5と、該サドル5にZ軸方向(上下方向)に移動可能に支持された主軸頭6と、該主軸頭6に軸線をX軸方向に向けて支持され、回転工具(不図示)が着脱可能に装着された主軸7とを備えている。また前記固定ベッド3上には、X軸方向に長尺状をなす加工テーブル8がX軸方向に移動可能に搭載されている。
【0020】
前記加工テーブル8は、前記固定ベッド3のX軸方向長さの概ね1/2程度の長さを有し、例えば鉄道車両,バス,航空機のボディ等の幅広で、長尺のワークが搭載可能となっている。前記加工テーブル8が固定ベッド3のコラム4の手前側と奥側との間をX軸方向に、前記主軸7がY軸,Z軸方向にそれぞれ相対移動することにより所定のワーク加工が施される。
【0021】
前記固定ベッド3の、コラム4より手前側,奥側には、それぞれ固定ベッド3の加工領域を覆う箱状の前カバー13,後カバー14が配設されている。
【0022】
前記前カバー13の左,右側部には、パレット交換開口13aが形成されており、この左,右のパレット交換開口13aには、該開口13aを開閉するシャッタ15,15が配設されている。この左,右のシャッタ15は、前記加工テーブル8と後述する第1,第2ワーク段取部9,10との間に位置するよう配設されており、以下、加工テーブル側を機内、段取部側を機外と称する。
【0023】
前記左,右のシャッタ15は、それぞれ前,後一対の支持柱16,16により昇降可能に支持されており、不図示のモータによりチェーンを介して開閉駆動される。前記シャッタ15には、機内が目視可能な複数の透視窓15aが形成されている。
【0024】
前記パレット交換装置2は、前記加工テーブル8と略同じX軸方向長さを有し、前記固定ベッド3の左,右両側に、該加工テーブル8と平行かつ隣接するように配設された第1,第2ワーク段取部9,10を備えており、前記加工テーブル8に搭載された加工側パレットP1と、前記第1,第2ワーク段取部9,10の何れか一方に搭載された待機側パレットP2とを自動的に交換するよう構成されている。
【0025】
詳細には、例えば
図2に示すように、機械加工が終了すると、加工テーブル8上の加工済みワークがセットされた加工側パレットP1は、第1ワーク段取部9上に搬出され、該第1ワーク段取部9上の待機側パレットP1′から加工済みワークが搬出される。前記機械加工中に第2ワーク段取部10にて待機側パレットP2上に次加工ワークがセットされており、前記加工側パレットP1の第1ワーク段取部9への搬出が終了すると、前記第2ワーク段取部10上の待機側パレットP2が加工テーブル8上に搬入され、セットされている次加工ワークに所定の機械加工が施される。機械加工が終了すると、加工済みワークがセットされた加工側パレットP1は、今度は第2ワーク段取部10側に搬出される。このように第1,第2ワーク段取部9,10のパレットと加工テーブル8上のパレットとが交互に搬入,搬出されることでパレット交換が行なわれる。
【0026】
前記パレット交換装置2は、前記加工側パレットP1,待機側パレットP2をY軸方向に移動可能に支持するリニアガイド機構18と、前記パレットP1,P2を加工テーブル8に位置決め固定する一対のクランプ機構19,19とを備えている。
【0027】
前記各クランプ機構19は、
図10及び
図11に示すように、前記加工テーブル8のX軸方向両端部に固定されたクランプ部20と、前記パレットP1,P2の底面に固定されたクランプブロック21とを有する。
【0028】
前記クランプ部20は、X軸方向に並列配置された第1,第2油圧シリンダ23,22と、該両シリンダ間に配置されたストッパブロック24とを有する。前記第1,第2油圧シリンダ23,22のピストンロッド23a,22aの前端部にはくさび面23c,22cを有するクランパ23b,22bが固定されている。また前記クランプブロック21には、前記ストッパブロック24の当たり面24aに当接する当接部21aと、前記クランパ22bのくさび面22cが嵌合するくさび面21bとが形成されている。
【0029】
例えば、第2ワーク段取部10の待機側パレットP2が加工テーブル8上に搬入されると、該待機側パレットP2のクランプブロック21の当接部21aがストッパブロック24の当り面24aに当接する。この状態で第2油圧シリンダ22のピストンロッド22aが前進し、クランパ22bのくさび面22cがクランプブロック21のくさび面21bを嵌合押圧し、これによりパレットP2はストッパブロック24とクランパ22bとで挟持され、前記パレットP2はY軸方向の移動が規制される。前記ピストンロッド22aが後退するとクランプが解除される。なお、第1ワーク段取部9の待機側パレットP2が搬入された場合には、第1油圧シリンダ23がパレットP2のクランプブロック(不図示)をクランプすることとなる。
【0030】
前記リニアガイド機構18は、加工テーブル8上に配設された5本の加工側リニアガイドレール25と、第1,第2ワーク段取部9,10に配設された5本の第1,第2段取側リニアガイドレール26,27と、各パレットP1,P2に配設され、各加工側,段取側リニアガイドレール25,26、27に摺動自在に係合する第1,第2リニアガイド28とを有し、詳細には以下の構造となっている。
【0031】
前記各加工側リニアガイドレール25は、X軸方向と直交するY軸方向に延び、かつX軸方向に所定間隔をあけて配設されており、加工テーブル8にボルト締め固定されている。
【0032】
前記第1,第2段取側リニアガイドレール26,27は、X軸方向と直交するY軸方向に延び、かつX軸方向に所定間隔をあけて配設されている。この第1,第2段取側リニアガイドレール26,27は、加工テーブル8がパレット交換時位置に位置決めされたとき加工側リニアガイドレール25と同軸をなすよう配置されている。
【0033】
前記各リニアガイド28は、パレットP1,P2の底面にボルト締め固定されており、前記加工側,段取側リニアガイドレール25〜27に多数のボール(不図示)を介在させて摺動自在に係合可能となっている。
【0034】
前記第1,第2段取側リニアガイドレール26,27は、その軸方向機内側端面26a,27aが加工側リニアガイドレール25の機外側端面25a,25aに当接,又は僅かな隙間(0.5mm程度)設けて近接するパレット交換時位置Aと、加工側リニアガイドレール25から離反して前記シャッタ15の機外側に退避する待機時位置Bとの間で進退可能となっている(
図5,
図6参照)。
【0035】
前記第1,第2段取側リニアガイドレール26,27は、それぞれ独立した駆動機構30により前記パレット交換時位置Aと待機時位置Bとの間で進退駆動される。前記各駆動機構30は、何れも同じ構造であるので、以下、
図7〜
図9に示す第2段取側リニアガイドレール27に配設された駆動機構30についてのみ詳細に説明する。
【0036】
前記駆動機構30は、第2ワーク段取部10にベースプレート31aを介してボルト締め固定されたレールガイド用のリニアガイドレール31と、前記第2段取側リニアガイドレール27が固定されたベースプレート32の底面に所定間隔をあけて複数配設され、前記リニアガイドレール31に摺動自在に係合するレールガイド用のリニアガイド33と、前記第2段取側リニアガイドレール27を進退駆動する油圧シリンダ34とを有する。
【0037】
前記第2段取側リニアガイドレール27は、これと同じ長さの前記ベースプレート32の上面にボルト締め固定されており、該ベースプレート32の下面に前記リニアガイド33がボルト締め固定されている。
【0038】
前記油圧シリンダ34は、リニアガイドレール31と平行にかつ隣接するよう配置され、そのピストンロッド34aは連結部材34bを介して前記ベースプレート32に接続されている
。なお、35は、パレットP2の待機時位置Bを規制するストッパである。
【0039】
本実施例によれば、X軸方向に長尺状をなす加工テーブル8と、第1,第2ワーク段取部9,10とを並列に、かつ隣接させて配置し、加工側パレットP1と待機側パレットP2とをX軸方向と直交するY軸方向に移動させて交換するようにしたので、従来の加工テーブルと段取部とを直列に配置する場合に比べて機械全体の設置スペースを縮小できる。
【0040】
本実施例では、前記加工テーブル8にX軸方向と直交するY軸方向に延びる加工側リニアガイドレール25を配設し、第1,第2ワーク段取部9,10に加工側リニアガイドレール25と同軸をなすように第1,第2段取側リニアガイドレール26,27を配設し、該リニアガイドレール25〜27にリニアガイド28を摺動させることによりパレット交換を行なうようにしたので、従来のパレット受け座,位置決めピン,エアブロー並びにパレット持ち上げ油圧シリンダを不要にでき、長尺状の大型パレットを交換する場合の構造を簡略化できる。
【0041】
また、本実施例では、加工テーブル8をパレット交換時位置Aに位置決めした状態で、第1,第2段取側リニアガイドレール26,27をその前進端に移動させるだけで、該第1,第2リニアガイドレール26,27と加工側リニアガイドレール25とを容易確実にかつ精度よく同軸をなすように位置決めすることができる。
【0042】
本実施例では、前記加工テーブル8と第1,第2ワーク段取部9,10との間にシャッタ15を開閉可能に配置し、第1,第2段取側リニアガイドレール26,27を加工側リニアガイドレール25に当接又は近接するパレット交換時位置Aと、該加工側リニアガイドレール25から離反する待機時位置Bとの間で進退可能としたので、段取側リニアガイドレール26,27は、ワーク加工中においては、シャッタ15より機外側に退避していることから、飛散した切り粉が段取側リニアガイドレール26,27に堆積することはなく、リニアガイド28が堆積物に乗り上げることによる損傷を防止できる。
【0043】
なお、前記実施例1では、長尺状の加工テーブル8の左,右両側に、同様に長尺状をなす第1,第2段取部9,10を並列配置した場合に、第1,第2段取側リニアガイドレール26,27を軸方向に進退可能に構成した場合を説明したが、このリニアガイドレールの進退構造の適用範囲は前記実施例1に限定されない。例えば、上述の、加工テーブルと段取部とを直列に配置する場合にも適用可能であり、この場合も前記実施例と同様の効果が得られる。