特許第5740670号(P5740670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740670
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】油温検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   G01K7/22 J
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-184352(P2011-184352)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2013-44693(P2013-44693A)
(43)【公開日】2013年3月4日
【審査請求日】2014年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000231822
【氏名又は名称】日本端子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500543775
【氏名又は名称】株式会社ジーエスエレテック
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕久
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 次男
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 渉
(72)【発明者】
【氏名】金城 輝幸
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−38832(JP,A)
【文献】 特開2010−249599(JP,A)
【文献】 特開2007−285486(JP,A)
【文献】 特開2004−93253(JP,A)
【文献】 特開平11−23379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00− 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルの油温を検出する油温検出装置において、
(a)オイルの油温に対応した信号を出力する油温検出素子と、
(b)この油温検出素子から外側へ向けて延びるリード線と、
(c)外部から前記油温検出素子への電源供給、および前記油温検出素子から外部への信号伝達を行う電線と、
(d)前記リード線と前記電線を直列に電気接続するターミナルと、
(e)内部に中空部を有し、この中空部内に前記油温検出素子と前記リード線と前記ターミナルを格納する中空ケースと
を備え、
前記中空ケースは、前記ターミナルを位置決めした状態で支持固定する支持部を有し、 前記ターミナルは、前記中空部内に設置されて、前記リード線と前記電線をかしめ接合により接続する接合部、および前記支持部に圧入嵌合される圧入部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油温検出装置において、
前記支持部は、前記中空ケースの内面で開口した圧入孔を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油温検出装置において、
前記圧入部は、前記ターミナルから前記圧入孔内に嵌合可能に突き出した突出部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油温検出装置において、
前記突出部は、前記圧入孔からの抜けを防止するための抜け防止部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の油温検出装置において、
前記抜け防止部とは、前記突出部の側面から前記圧入孔への嵌合方向に対して垂直な方向の外側に向けて張り出すように設けられる鋸歯形状の圧入接触部のことであることを特徴とする油温検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記中空ケースは、前記電線を位置決めした状態で支持固定する収容部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記リード線は、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されていることを特徴とする油温検出装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記中空ケースは、少なくとも2つに分割された第1、第2分割体によって構成されていることを特徴とする油温検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の油温検出装置において、
前記電線は、前記接合部にかしめ接合により接続される接続部と前記中空ケースの外部へ取り出される取出部との間に、前記接続部から前記取出部への取出方向に対して垂直な方向に屈曲するように設けられる屈曲部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の油温検出装置において、
前記電線は、前記屈曲部と前記中空ケースの外部への取出部との間に、前記第1、第2分割体間に挟持されていることを特徴とする油温検出装置。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記第1分割体または前記第2分割体は、前記中空部に対して、オイルの流入および流出が行われる開口部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項12】
請求項8ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記第1分割体前記第2分割体のうちの一方の分割体は、絶縁性を有する樹脂材による一体成形で構成されていることを特徴とする油温検出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の油温検出装置において、
前記第1、第2分割体は、スナップフィットにより結合されていることを特徴とする油温検出装置。
【請求項14】
請求項12に記載の油温検出装置において、
前記第1分割体は、前記中空部の周囲を周方向に取り囲む筒状の周壁に係合部を有し、 前記第2分割体は、前記係合部に係合する被係合部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のうちのいずれか1つに記載の油温検出装置において、
前記接合部は、前記電線の導体部分をかしめ接合により接続する電線接合部を有していることを特徴とする油温検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の油温検出装置において、
前記電線接合部は、前記リード線の端末部分をかしめ接合により接続するリード線接合部として兼用されていることを特徴とする油温検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の作動油温度を検出する油温検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
例えば自動車等の車両に搭載される自動変速機は、油圧制御装置の油路回路から自動変速機に組み込まれる摩擦係合要素に印加(供給)される作動油(オイル)により制御される。オイルは、油温に応じて粘性等の特性変化が生じることから、安定した変速フィーリングを得るためには、オイルの油温による適合制御が必要とされる。
したがって、自動変速機には、摩擦係合要素へ供給されるオイルの油温を検出する油温センサを備えた油温検出装置が設置されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
先ず、特許文献1に記載の油温検出装置は、自動変速機のバルブボディ内の油路を流れるオイルの油温を検出する温度センサ(サーミスタ)を内蔵する本体と、サーミスタの両側に延設される一対のリード線にそれぞれ電気接続される一対のターミナルと、これらのターミナルの各外部露出部(本体から突出して露出した端子露出部)にそれぞれ電気接続される一対のワイヤハーネスと、一対のターミナルと一対のワイヤハーネスとの導通接合部を被覆するカバーとを備えている。
一対のターミナルの一端側は、モールド樹脂材製の本体の内部にインサート成形により固定されている。
【0004】
この油温検出装置は、温度検出部が本体を構成するモールド樹脂材により樹脂パッケージされ、本体の内部にインサートしたターミナルの端部を本体の外部へ突出させている。 さらに、ターミナルとワイヤハーネスとの導通接合部にワイヤハーネスの引っ張り力が作用しないように、ワイヤハーネスの絶縁被覆を除去した導体を直角に折り曲げて、ターミナルの端部の孔に差し込んでターミナルの端部とワイヤハーネスとが半田付けされる。また、ターミナルとワイヤハーネスとの導通接合部を覆うようにカバーが本体に嵌め込まれる。
また、本体の頭部には、一対のワイヤハーネスを互いに並行に嵌め込むワイヤ固定溝が設けられている。本体のワイヤ固定溝に嵌め込まれたワイヤハーネスは、カバーのワイヤカバー部によってワイヤ固定溝の底面側に押圧されている。
【0005】
一方、特許文献2に記載の油温検出装置は、セレクトレバーの変速位置を検出するインヒビタスイッチの端子台の側面にサーミスタが配設されている。
サーミスタは、自動変速機のミッションケース内のオイルの油温(温度)を測定するもので、一対のリード線を介して、一対の接点板と電気接続されている。
また、樹脂成形品からなる端子台には、サーミスタの側方周囲を覆って保護する保護壁が一体成形されている。そして、サーミスタの側方周囲は、保護壁によって囲まれていると共に、その上下方向に開口して貫通状態となっている。その貫通路は、オイル流通路を構成する。
したがって、サーミスタ近傍でオイルを流通させ得るので、自動変速機のミッションケース内のオイルの油温を精度良く検知できる。
【0006】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載の油温検出装置においては、インサート成形により本体の内部にターミナルを固定する必要がある。つまり本体の内部にターミナルをインサート成形する必要があるので、高コストとなるという問題がある。
また、本体に対するカバーの組み付け時に、カバーがワイヤハーネスを引っ張りながら本体に嵌め込まれるため、ターミナルとワイヤハーネスとの導通接合部に応力ストレスがかかる状態が維持されてしまう。これにより、半田材がクリープしたり、クラックが生じ易くなったりして、ターミナルとワイヤハーネスとの半田接続不良が発生するため、導通接合部における接合信頼性が低下する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の油温検出装置においては、インサート成形により端子台の内部に接点板を固定する必要がある。つまり端子台の内部に接点板をインサート成形する必要があるので、高コストとなるという問題がある。 また、サーミスタが、インヒビタスイッチの端子台に組み付けられ一体化されているので、自動変速機のミッションケース内におけるサーミスタの搭載位置の自由度が低く、必ずしも最適な位置でオイルの油温を検出できているとは言えなかった。
サーミスタの各リード線と接点板との導通接合部がオイル流通路内で露出しており、搬送時や組み付け時に衝突または接触により、サーミスタの各リード線と接点板との導通接合部が破損(機械的破損または電気的破損)する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−23379号公報
【特許文献2】特開2007−285486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、製造コストの低減化を図ることのできる油温検出装置を提供することにある。また、搬送時や組み付け時に接触または干渉による、ターミナルの接合部(電線接合部、リード線接合部)の破損を防止することのできる油温検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(オイルの油温を検出する油温検出装置)は、オイルの油温に対応した信号を出力する油温検出素子と、この油温検出素子から外側へ向けて延びるリード線と、外部から油温検出素子への電源供給、および油温検出素子から外部への信号伝達を行う電線と、リード線と電線を直列に電気接続するターミナルと、内部に中空部が形成された中空ケースとを備えている。
油温検出素子とリード線とターミナルは、中空ケースの中空部内に格納されている。
中空ケースは、ターミナルを位置決めした状態で支持固定する支持部を有している。
ターミナルは、リード線と電線をかしめ接合により接続する接合部(電線接合部、リード線接合部)、および中空ケースの支持部に圧入嵌合される圧入部を設けている。
ターミナルの接合部は、油温検出素子とリード線と一緒に、中空ケースの中空部内に設置されている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ターミナルの圧入部を中空ケースの支持部に圧入嵌合することにより、中空ケースに対するターミナルの位置決めと、中空ケースに対するターミナルの組み付けとを同時に容易に行うことができる。これにより、製造コストが増加するターミナルのインサート成形工程を廃止できるので、油温検出装置の製造コストの低減化を図ることができる。
また、中空ケースの中空部内に油温検出素子とリード線とターミナルと接合部を完全に格納しているので、搬送時や組み付け時に、油温検出素子や接合部への接触(衝突)または干渉による機械的破損(=接点破損)や電気的破損(=静電気による油温検出素子の破損)等を確実に防止することができる。
また、油温検出素子を単独で配置できるため、油温検出素子の配置の自由度が高く、最適なオイルの油温検出が可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、中空ケースの支持部に、中空ケースの内面で開口した圧入孔を設けている。
この場合、ターミナルの圧入部を中空ケースの圧入孔に圧入嵌合することにより、中空ケースに対するターミナルの位置決めと、中空ケースに対するターミナルの取り付けとを同時に容易に行うことができる。
請求項3に記載の発明によれば、ターミナルの圧入部に、ターミナルから圧入孔内に嵌合可能な突出部を設けている。
この場合、ターミナルの突出部を中空ケースの圧入孔に圧入嵌合することにより、中空ケースに対するターミナルの位置決めと、中空ケースに対するターミナルの取り付けとを容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ターミナルの突出部に、中空ケースの圧入孔からの抜けを防止するための抜け防止部を設けている。
請求項5に記載の発明によれば、抜け防止部とは、ターミナルの突出部の側面から中空ケースの圧入孔への嵌合方向に対して垂直な方向の外側に向けて張り出すように設けられる鋸歯形状の圧入接触部のことである。
このように、ターミナルの突出部に中空ケースの圧入孔に対するターミナルの抜け防止部を設けることにより、例えばターミナルの突出部に設けられる鋸歯形状の圧入接触部が中空ケースの圧入孔の周囲を囲む圧入孔壁部に食い込んだり、圧入孔壁部で係止されたりすることで、中空ケースの圧入孔からターミナルが抜け難くなる。
これにより、ターミナルの突出部が中空ケースの圧入孔に抜け止め状態に保持されるため、中空ケースの圧入孔からターミナルが抜け出して、電線接合部やリード線接合部等の接合部を有するターミナルが中空ケースの中空部内で動き回り、ターミナルの接合部が中空ケースの内面等に衝突して破損する等の不具合を防止することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、中空ケース(の内面)に、電線を位置決めした状態で支持固定する収容部を設けたことにより、電線が中空ケースの中空部内で動き回り、ターミナルの接合部(電線接合部等)に応力ストレスがかかる等の不具合を防止することができる。これにより、ターミナルの接合部(電線接合部等)における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
請求項7に記載の発明によれば、リード線が、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状を有するように形成されている。これにより、油温検出素子とリード線との導通接合部に外部からの引っ張り力が伝わり難くなるので、油温検出素子とリード線との導通接合部における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、中空部を形成する中空ケースが、少なくとも2つに分割された第1、第2分割体によって構成されている。
請求項9に記載の発明によれば、ターミナルの接合部にかしめ接合により接続される接続部と中空ケースの外部へ取り出される取出部との間の電線に屈曲部を設けている。この屈曲部は、接続部から取出部への取出方向に対して垂直な方向に屈曲するように設けられている。
請求項10に記載の発明によれば、屈曲部と中空ケースの外部への取出部との間の電線が、第1、第2分割体間に挟持されている。
請求項9及び10に記載の発明によれば、電線を屈曲部で接続部から取出部への取出方向に対して垂直な方向に屈曲させて、第1、第2分割体間で屈曲部と取出部との間の電線を挟持しているので、電線の外部からの引張り力がターミナルの接合部(電線接合部等)および電線の接続部に伝達されない。
また、ターミナルの接合部(電線接合部等)と電線の接続部との接合方法としてかしめ接合により接続方法を採用しているので、第1、第2分割体の組み付けによって、組み付け後に電線への引っ張り力が維持されても、ターミナルの接合部(電線接合部等)の接合強度の低下が発生することはなく、ターミナルの電線との接合部における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
【0016】
請求項11に記載の発明によれば、第1分割体または第2分割体に、中空ケースの中空部に対して、オイルの流入および流出が行われる開口部を設けている。これにより、中空ケースの中空部内、つまり第1、第2分割体(の各内面)間に形成される中空部内に格納された油温検出素子がオイルに直接触れることができるので、油温検出素子によりオイルの油温を精度良く検出することができる。これにより、油温検出素子から外部に対して出力される信号への応答性が高くなる。
請求項12に記載の発明によれば、第1分割体前記第2分割体のうちの一方の分割体が、絶縁性を有する樹脂材による一体成形で構成されている。
請求項13に記載の発明によれば、第1分割体と第2分割体とが、スナップフィットにより結合されている。これにより、第1分割体に対して第2分割体を容易に組み付けることができる。
【0017】
請求項14に記載の発明によれば、第1分割体に、中空部の周囲を周方向に取り囲む筒状の周壁を設け、この周壁に、スナップフィット結合のための係合部を設けている。
第2分割体は、第1分割体の係合部に係合する被係合部を設けている。
これによって、第1分割体と第2分割体とを組み付けると、第2分割体に設けられる被係合部が、第1分割体の周壁に設けられる係合部に係合してスナップフィット結合される。これにより、中空ケースの中空部内、つまり第1、第2分割体(の各内面)間に形成される中空部内に、油温検出素子、ターミナルおよび接合部が完全に格納される。
請求項15に記載の発明によれば、ターミナルの接合部に、電線の導体部分をかしめ接合により接続する電線接合部を設けている。
請求項16に記載の発明によれば、電線の導体部分をかしめ接合により接続する電線接合部が、リード線の端末部分をかしめ接合により接続するリード線接合部として兼用されている。これにより、ターミナルの形状が簡素化されるので、油温検出装置の製造コストの更なる低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動変速機の作動油温検出装置(油温センサ)を示した斜視図である(実施例1)。
図2】(a)はサーミスタと一対のターミナルと一対の電線(ワイヤハーネス)を示した分解図で、(b)はターミナル単品を示した斜視図である(実施例1)。
図3】第1油温センササブアッシーを示した斜視図である(実施例1)。
図4】第1油温センサアッシーとケース本体を示した分解図である(実施例1)。
図5】第2油温センサアッシーを示した斜視図である(実施例1)。
図6】第2油温センサアッシー、ケースカバーを示した分解図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、製造コストの低減化を図るという目的を、ターミナルの圧入部(突出部)を中空ケースの支持部(圧入孔)に圧入嵌合することで、ターミナルのインサート成形工程を廃止した。
また、搬送時や組み付け時に接触または干渉による、ターミナルの接合部(電線接合部またはリード線接合部)の破損を防止するという目的を、油温検出素子とリード線とターミナルとターミナルの接合部(電線接合部またはリード線接合部)を中空ケースの中空部内に格納することで実現した。
さらに、ターミナルの接合部(電線接合部)における接合信頼性を高く維持(確保)するという目的を、電線を屈曲部で接続部から取出部への取出方向に対して垂直な方向に屈曲させて、第1、第2分割体間で屈曲部と取出部との間の電線を挟持し、且つターミナルの接合部(電線接合部)と電線の接続部とをかしめ接合により接続することで実現した。
【実施例1】
【0020】
[実施例1の構成]
図1ないし図6は本発明の実施例1を示したもので、図1は自動変速機の作動油温検出装置(油温センサ)を示した図である。
【0021】
本実施例の自動車等の車両には、内燃機関(エンジン)と、自動変速機と、エンジン制御ユニット(ECU)とが搭載されている。
自動変速機は、トルクコンバータと、変速機構と、油圧制御装置とを備えている。
トルクコンバータは、ポンプ、タービンおよびステータ等により構成されている。
変速機構は、油圧制御装置から印加される油圧に応じて係合または解放される複数の摩擦係合要素(クラッチまたはブレーキ)を備えている。
そして、自動変速機は、各摩擦係合要素の係合または解放の組み合わせに従ってシフトレンジが切り替わる。これにより、自動変速機の変速制御が行われる。
ここで、本実施例の自動車には、自動変速機のシフトレンジとして、駐車(パーキング:P)レンジ、後進(リバース:R)レンジ、中立(ニュートラル:N)レンジおよび前進(ドライブ:D)レンジが用意されている。
【0022】
油圧制御装置は、複数の油路を有するバルブボディと、このバルブボディの油路と共に油圧回路を構成する複数の電磁油圧制御弁およびマニュアルバルブと、ドライバー等から要求された変速状態を実現するように複数の電磁油圧制御弁を制御するトランスミッション制御ユニット(TCU)とを備えている。
油圧制御装置は、自動変速機ケースの下部に取り付けられるオイルパンの内部に設置されている。すなわち、TCUは、自動変速機で使用する作動油(自動変速機油、ATF:以下オイルと言う)を貯留するオイルパンの内部、つまりバルブボディと共にオイル中に浸漬されている。
【0023】
バルブボディは、アッパーボディとメインボディとロアボディとにより構成されて、アッパーボディの下面とロアボディの上面との間に複数の電磁油圧制御弁を保持するバルブ保持部材であって、複数の電磁油圧制御弁およびマニュアルバルブを挿入する複数のバルブ挿入溝、およびこれらのバルブ挿入溝にそれぞれ連通する油路を有している。
複数の電磁油圧制御弁のうちの少なくとも1つの電磁油圧制御弁は、エンジンにより駆動されるオイルポンプ(図示せず)によって発生した油圧(ライン油圧)を調圧して自動変速機の変速機構に組み込まれる摩擦係合要素へ送るソレノイドバルブである。
電磁油圧制御弁は、ライン油圧を入力すると共に、入力したライン油圧を調圧して摩擦係合要素に出力するスプールバルブと、このスプールバルブを駆動する電磁アクチュエータであるリニアソレノイドとを備えている。
【0024】
ここで、自動変速機における変速動作を、摩擦係合要素に印加されるオイルの油圧を予め決められた制御特性に従って変化させる場合、オイルの温度(油温)が低い時には、油温が高い時に比べてオイルの粘度(粘性)が高くなり、応答性が悪化したり、変速フィーリングが低下したりする。
そこで、本実施例の自動変速機には、ドライバーやECUからの変速指令に対する応答性の向上、および安定した変速フィーリングを得るという目的で、自動変速機の作動油温検出装置が設置されている。
【0025】
本実施例の自動変速機の作動油温検出装置は、オイルパンに貯留されるオイルの油温に対応した油温信号(サーミスタ出力信号)を外部に対して出力する油温センサと、この油温センサから出力されたサーミスタ出力信号を電圧変換して外部に対して出力する信号処理回路と、この信号処理回路から出力された電圧信号に基づいてオイルの油温を演算し、このオイルの油温に基づいて電磁油圧制御弁のスプールバルブのストローク量を制御するTCUとを備えている。これにより、摩擦係合要素に対するオイルの油圧が調圧される。 本実施例の油温センサは、内部に中空部が形成された中空ケース(ケース本体1、ケースカバー2)と、サーミスタ収納空間内に収納されるサーミスタ素子(温度検出素子)3、およびこのサーミスタ素子(温度検出素子)3の両端にそれぞれ電気接続される一対のリード線4、5を有するサーミスタと、一対のリード線4、5をそれぞれ電気接続するための一対のターミナル6、7と、サーミスタのサーミスタ素子3からのサーミスタ出力信号を外部機器に取り出すための一対の被覆電線(ワイヤハーネス)8、9と、サーミスタと外部機器(TCU、バッテリ)との接続を行うコネクタとを備えている。
【0026】
中空ケースは、矩形状(または多角形状)のケース本体1と矩形状(または多角形状)のケースカバー2とに2分割されている。つまり中空ケースは、2つに分割されたケース本体1とケースカバー2とによって構成されている。
ケース本体1およびケースカバー2は、絶縁性を有する合成樹脂であるモールド樹脂材(例えばポリフェニレンサルファイド:PPS、ポリアセタール:POM、ナイロン(ポリアミド):PA)により一体的に形成されている。なお、ケース本体1とケースカバー2とを異なる合成樹脂で一体成形しても良い。
【0027】
ケース本体1は、有底角筒形状(容器形状)の第1分割体である。このケース本体1は、ケースカバー2の結合端面にスナップフィットにより結合される角環状の結合端面を有している。このケース本体1は、結合端面で開口し、この開口側から奥側まで延びる3つの凹部11〜13、凹部11、12間に形成される段差14、および凹部12、13間に形成される段差15を有している。
3つの凹部11〜13の奥側には、底面(内面)がそれぞれ設けられている。
凹部12の底面は、凹部11、13の底面よりも高い位置に設けられている。つまり凹部12の底面は、凹部11、13の底面よりも隆起している。
【0028】
ケースカバー2は、ケース本体1の開口部を閉塞する蓋体形状の第2分割体である。このケースカバー2は、ケース本体1の凹部11、12の底面との間に中空部を隔てて対向する内面(対向面)を有している。
中空ケースの中空部内には、サーミスタ、一対のリード線4、5、一対のターミナル6、7および一対の被覆電線8、9の一部が格納されている。中空部は、サーミスタのリード線4、ターミナル6および被覆電線8を収納する第1収納空間、およびサーミスタのリード線5、ターミナル7および被覆電線9を収納する第2収納空間を備えている。
ケース本体1の凹部11の底面は、サーミスタを位置決めした状態で支持固定するサーミスタ支持部を構成している。
ケース本体1の凹部12の底面は、一対のターミナル6、7を位置決めした状態で支持固定するターミナル支持部を構成している。
ケース本体1の凹部13は、凹部12、13の底面よりケースカバー2の対向壁の内面側に向けて隆起(突出)した一対の隆起リブ(突条リブ、仕切り壁、コの字状の隔壁)16により第1収納空間側の凹部13と第2収納空間側の凹部13とに仕切られている。
【0029】
ケース本体1には、ケースカバー2の対向壁の内面との間に中空部を隔てて対向する対向壁、およびこの対向壁の周囲よりケースカバー2側に突出すると共に、中空部の周囲を周方向に取り囲む角筒状の外周壁(角筒壁)17が設けられている。
ケース本体1の凹部11、12の底面からは、第1収納空間と第2収納空間とを絶縁可能となるように区画する突条リブ(仕切り壁、隔壁)18がケースカバー2側へ向けて突出するように設けられている。この突条リブ18は、2箇所で屈曲した屈曲形状を有するように形成されている。また、突条リブ18は、ケース本体1の外周壁17の内面との間に第1収納空間と第2収納空間とを連通する連通口19を有している。
なお、ケース本体1の凹部11、12の第1収納空間とケース本体1の凹部11、12の第2収納空間とは、突条リブ18によって仕切られている。
【0030】
ケース本体1の外周壁17の上側部の外面には、外部に向けて突出する一対のガイドリブ20が一体的に形成されている。これらのガイドリブ20は、所定距離を隔てて対向するように並列配置されている。
ケース本体1の外周壁17の上側部の中央部分、特に一対のガイドリブ20間に形成される凹部21の底面には、ケースカバー2とのスナップフィット結合のための係合突起(係合部)22が一体的に形成されている。
ケース本体1の外周壁17の左右側部の外面には、外部に向けて突出する一対のガイドリブ23が一体的に形成されている。これらのガイドリブ23は、所定距離を隔てて対向するように並列配置されている。
ケース本体1の外周壁17の左右側部の中央部分、特に一対のガイドリブ23間に形成される凹部24の底面には、スナップフィット結合のための係合突起(係合部)25が一体的に形成されている。
【0031】
ケース本体1の外周壁17の下側部には、バルブボディのアッパーボディの下面に支持固定されたプレートの係合孔(図示せず)に圧入されて抜け止め状態に保持される2つの圧入部26、27が一体的に形成されている。これらの圧入部26、27は、ケース本体1の長手方向に所定距離を隔てて設置されている。
ケースカバー2の下側部には、プレートの係合孔に圧入されて抜け止め状態に保持される2つの圧入部28、29が一体的に形成されている。これらの圧入部28、29は、ケースカバー2の長手方向に所定距離を隔てて設置されている。また、2つの圧入部28、29は、ケース本体1とケースカバー2とをスナップフィットにより結合した際に、対応した圧入部26、27と背中合わせに結合される。
2組の圧入部26〜29は、プレートに形成される2つの係合孔内に差し込んだ後に、中空ケース(ケース本体1、ケースカバー2)を図示右側にスライドさせることで圧入嵌合する。なお、2組の圧入部26〜29の表面には、プレートの各係合孔からの抜けを防止するための抜け防止部(セレーションや突起)が設けられている。
【0032】
また、ケース本体1およびケースカバー2の下部には、フランジ31がそれぞれ設けられている。これらのフランジ31に形成される長方形状の長孔32には、2組の圧入部26〜29との間にプレートを挟み込む弾性接触片、あるいはプレートのランスホール(図示せず)に係合するランス33が設けられている。このランス33は、長孔32の長手方向の一端から他端に向けて突出する片持ち状に形成され、ランス33の板厚方向に弾性変形が可能となっている。
プレートには、圧入部26〜29を圧入固定する2つの係合孔が、プレートの板厚方向に貫通するように開口している。また、2つの係合孔の間には、ランス33を係止するランスホール(係合孔)が、プレートの板厚方向に貫通するように開口している。
【0033】
そして、プレートに組み付ける際に、中空ケース(ケース本体1、ケースカバー2)を図示右側にスライドさせて2組の圧入部26〜29がプレートの各係合孔に圧入嵌合される位置に至ると、ランス33がランスホール内に入り込んでランスホールの開口端縁を係止する。これにより、中空ケース(ケース本体1、ケースカバー2)が、バルブボディのアッパーボディの下面に支持固定されたプレートに抜け止め状態で保持される。
なお、長孔32の図示上方側から治具を差し込んで、ランス33の自由端側を持ち上げることで、ランスホールに対する係合状態を解除することができる。これにより、プレートから中空ケース(ケース本体1、ケースカバー2)を容易に脱着することができる。
【0034】
ケースカバー2は、ケース本体1の対向壁の内面(凹部11、12の底面)との間に中空部を隔てて対向する対向壁34を有している。
ケースカバー2の対向壁34には、被覆電線8、9以外のワイヤハーネスを引っ掛ける(あるいは複数のワイヤハーネスを束ねる)ためのL字状のワイヤフック35が一体的に形成されている。2つのワイヤフック35は、ケースカバー2の対向壁34に形成される縦孔36の長手方向の一端(上端側)から他端(下端側)に向けて突出する片持ち状に形成され、ケースカバー2の対向壁34の板厚方向に弾性変形が可能となっている。
また、ケースカバー2の外側壁には、被覆電線8、9以外のワイヤハーネスを2つのワイヤフック35に導くためのL字状のガイドリブ(肉厚部)37が一体的に形成されている。
【0035】
ケースカバー2の上側部の中央部分には、ケースカバー2の上側部から突出する断面L字状の弾性係合爪片(ロックアーム)41が設けられている。このロックアーム41には、ケース本体1の外周壁17の上側部に設けられた係合突起22に係合する係合孔(被係合部)42が一体的に形成されている。
ロックアーム41は、ケース本体1の外周壁17の上側部の外面、特に一対のガイドリブ20間の平面(凹部21の底面)に嵌合する嵌合部分で、ケースカバー2の上側部の中央部分から一対のガイドリブ20間の平面を覆うようにL字状に突出する片持ち状に形成され、ロックアーム41の板厚方向に弾性変形が可能となっている。
なお、係合孔42の代わりに、係合突起22に係合する係合爪(被係合部)を設けても良い。
【0036】
ここで、一対のガイドリブ20は、ロックアーム41を係合突起22を乗り越える位置まで誘導(ガイド)する突条(ガイドレール)である。
また、ケース本体1の外周壁17の上側部の外面から上方に向けて突出する係合突起22は、外周壁17の上側部の外面との間に係止部(段差、垂直面)を有している。この係合突起22は、ロックアーム41を抜け止め状態に保持する抜け止め部である。これにより、ケース本体1の外周壁17の結合端面にケースカバー2を組み付ける際に、ロックアーム41が凹部21の底面に沿って進む。そして、ロックアーム41の先端部分が係合突起22を乗り越えると、ロックアーム41の係合孔42が係合突起22に係止される。よって、ケース本体1とケースカバー2との結合部(嵌合部)において、安定した結合状態(機械的な嵌合状態)が得られる。
【0037】
ケースカバー2の左右側部の中央部分には、ケースカバー2の左右側部からそれぞれ突出する断面L字状の弾性係合爪片(ロックアーム)43が設けられている。このロックアーム43には、ケース本体1の外周壁17の左右側部に設けられた係合突起25に係合する係合孔(被係合部)44が一体的に形成されている。
ロックアーム43は、ケース本体1の外周壁17の左右側部の外面、特に一対のガイドリブ23間の平面(凹部24の底面)に嵌合する嵌合部分で、ケースカバー2の左右側部の中央部分から一対のガイドリブ23間の平面を覆うようにL字状に突出する片持ち状に形成され、ロックアーム43の板厚方向に弾性変形が可能となっている。
なお、係合孔44の代わりに、係合突起25に係合する係合爪(被係合部)を設けても良い。
【0038】
ここで、一対のガイドリブ23は、ロックアーム43を係合突起25を乗り越える位置まで誘導(ガイド)する突条(ガイドレール)である。
また、ケース本体1の外周壁17の左右側部の外面から側方に向けて突出する係合突起25は、外周壁17の上側部の外面との間に係止部(段差、垂直面)を有している。この係合突起22は、ロックアーム43を抜け止め状態に保持する抜け止め部である。これにより、ケース本体1の外周壁17の結合端面にケースカバー2を組み付ける際に、ロックアーム43が凹部24の底面に沿って進む。そして、ロックアーム43の先端部分が係合突起25を乗り越えると、ロックアーム43の係合孔44が係合突起25に係止される。よって、ケース本体1とケースカバー2との結合部(嵌合部)において、安定した結合状態(機械的な嵌合状態)が得られる。
以上のように、ケース本体1とケースカバー2とがスナップフィットにより結合されている。これにより、ケース本体1に対してケースカバー2を容易に組み付けることができる。
【0039】
ここで、ケース本体1の凹部12には、圧入孔45、46が設けられている。圧入孔45、46には、一対のターミナル6、7にそれぞれ設けられる突出片47、48が圧入される。
一対の圧入孔45は、ケース本体1の凹部12の第1収納空間側の底面でそれぞれ開口し、ターミナル6の圧入部(突出片47)を圧入嵌合する長方形状の第1圧入孔である。これらの圧入孔45は、ケース本体1の凹部12の第1収納空間側の底面において所定距離を隔てて並列して形成されている。また、一対の圧入孔45は、ターミナル6を位置決めした状態で支持固定する第1支持部である。
なお、一対の圧入孔45のうちの少なくとも一方の圧入孔45を、ケース本体1の対向壁の内面と外面とを連通するように貫通する第1貫通孔としても良い。
【0040】
一対の圧入孔46は、ケース本体1の凹部12の第2収納空間側の底面でそれぞれ開口し、ターミナル7の圧入部(突出片48)を圧入嵌合する長方形状の第2圧入孔である。これらの圧入孔46は、ケース本体1の凹部12の第2収納空間側の底面において所定距離を隔てて並列して形成されている。また、一対の圧入孔46は、ターミナル7を位置決めした状態で支持固定する第2支持部である。
なお、一対の圧入孔46のうちの少なくとも一方の圧入孔46を、ケース本体1の対向壁の内面と外面とを連通するように貫通する第2貫通孔としても良い。
【0041】
ケース本体1の凹部12には、被覆電線8を位置決めした状態で支持固定する一対の突条リブ51、および被覆電線9を位置決めした状態で支持固定する一対の突条リブ52が一体的に形成されている。
一対の突条リブ51は、一対の圧入孔45より所定距離だけ離れた位置で、被覆電線8の被収容部分を収容する収容凹部53を隔てて対向して設置されている。この収容凹部53は、被覆電線8の配線方向に真っ直ぐに延びている。また、一対の突条リブ51は、ケース本体1の凹部12の底面からケースカバー2側に突き出すように設けられている。
なお、ケース本体1の外周壁17側の突条リブ51は、ケース本体1の外周壁17の内面に一体的に形成されている。つまりケース本体1の外周壁17側の突条リブ51は、ケース本体1の外周壁17の内面から他方の突条リブ51側に突出するように設けられている。
【0042】
一対の突条リブ52は、一対の圧入孔46より所定距離だけ離れた位置で、被覆電線9の被収容部分を収容する収容凹部54を隔てて対向して設置されている。この収容凹部54は、被覆電線9の配線方向に真っ直ぐに延びている。また、一対の突条リブ52は、ケース本体1の凹部12の底面からケースカバー2側に突き出すように設けられている。
なお、ケース本体1の外周壁17側の突条リブ52は、ケース本体1の外周壁17の内面に一体的に形成されている。つまりケース本体1の外周壁17側の突条リブ52は、ケース本体1の外周壁17の内面から他方の突条リブ52側に突出するように設けられている。
【0043】
ケース本体1の外周壁17の左側部および右側部には、断面コの字状の嵌合部55、56がそれぞれ形成されている。嵌合部55、56で囲まれた部位には、ケース本体1の外周壁17の結合端面で開口し、この開口側から奥側まで延びる嵌合凹部57、58がそれぞれ形成されている。
ケースカバー2の左側部および右側部の各ロックアーム43の上下には、嵌合凹部57、58に嵌合する嵌合凸部61、62が一体的に形成されている。
ここで、ケース本体1の外周壁17の左側部の嵌合凸部61、62は、ケースカバー2の左側部の嵌合凹部57、58の底面との間に、中空ケースの中空部から外部機器へ向けて一対の被覆電線8、9を導出させる断面矩形状の電線取出口を形成する。
ケース本体1の外周壁17の左側部の嵌合部55、56およびケースカバー2の左側部の嵌合凸部61、62は、ケース本体1とケースカバー2とをスナップフィットにより結合した際に、被覆電線8、9をそれぞれ挟持する電線挟持部を構成している。
【0044】
ケース本体1の対向壁、突条リブ18およびケースカバー2の対向壁34には、中空部のうちでサーミスタのサーミスタ素子3を収納する第1収納空間(内部空間)に対して、オイルの流入および流出が行われる開口部(ポート)63〜65が形成されている。
開口部63は、ケース本体1の対向壁の内面(凹部11の底面)と外面とを連通する第1連通路(オイル出入り口)である。開口部64は、ケース本体1の突条リブ18の第1収納空間側面と第2収納空間側面とを連通する第2連通路(オイル流通路)である。開口部65は、ケースカバー2の対向壁34の内面と外面とを連通する第3連通路(オイル出入り口)である。
【0045】
以上のように、本実施例の油温センサにおいては、ケース本体1の対向壁、突条リブ18およびケースカバー2の対向壁34に開口部63〜65を設けている。これにより、中空ケースの中空部内、つまり第1収納空間内に格納されたサーミスタ素子3がオイルに直接触れることができるので、サーミスタ素子3によりオイルの油温を精度良く検出することができる。これにより、サーミスタ素子3から外部機器に対して出力されるサーミスタ出力信号への応答性が高くなる。
【0046】
次に、本実施例のサーミスタの詳細を図2ないし図6に基づいて簡単に説明する。
サーミスタは、ケース本体1の凹部11の第1収納空間側に設置されたサーミスタ素子3と、サーミスタ素子3の両端にそれぞれ電気接続される一対のリード線4、5とを備えている。
サーミスタ素子3は、例えば温度(油温)が高くなると抵抗値が小さくなる温度−抵抗特性を有する温度抵抗素子(温度検出素子)である。このサーミスタ素子3は、電気絶縁性を有するボビンと、リード線4、5に電気接続される感温抵抗体と、この感温抵抗体および一対のリード線4、5を保護する保護膜とを備えている。
【0047】
サーミスタ素子3は、リード線4との第1導通接合部、およびリード線5との第2導通接合部を有している。
ボビンは、例えばアルミナ等の絶縁材料によって円筒形状に形成されている。
感温抵抗体は、例えば白金線よりなる抵抗線をボビンの外周に螺旋状に巻き付けて形成されている。
保護膜は、抵抗線および一対のリード線4、5を保護する膜で、例えば酸化鉛を含有したガラスの塗布膜を所定の焼結温度(例えば800℃前後の温度)で焼結して形成されている。なお、ボビンの外周面および感温抵抗体の表面上を、例えば窒化シリコン層よりなる保護膜によって被覆しても良い。また、ボビンおよび感温抵抗体をガラス封止しても良い。
【0048】
一対のリード線4、5は、サーミスタ素子3の軸線方向の両端から外側(互いに異なる方向、正反対)へ向けて延出されている。
これらのリード線4、5は、外部機器からサーミスタ素子3への電源供給を行うサーミスタ電源線、およびサーミスタ素子3から外部機器への信号伝達を行うサーミスタ出力信号線である。
一対のリード線4、5は、例えば白金により棒状に形成されて、一端側(ボビン側)がボビンの内周に挿入されて接着剤(例えば高融点ガラス)によって機械的に固定される。また、一対のリード線4、5の他端側(ターミナル側)は、それぞれ一対のターミナル6、7に電気接続および機械接続されている。
なお、一対のリード線4、5は、螺旋状の抵抗線を介して電気接続される必要があることから、一対のリード線4、5同士が直接接触して短絡しないようにボビンの内周に支持固定される。
【0049】
リード線4は、サーミスタ素子3の軸線方向の一端から一方側へ延長された第1リード線(端子)であって、サーミスタ素子3およびターミナル6と共に、ケース本体1の凹部11、12の第1収納空間内に設置されている。
リード線5は、サーミスタ素子3の軸線方向の他端から他方側へ延長された第2リード線(端子)であって、サーミスタ素子3およびターミナル7と共に、ケース本体1の凹部11、12の第2収納空間内に設置されている。
また、一対のリード線4、5のうちの少なくとも一方のリード線5は、少なくとも1箇所以上で屈曲した屈曲形状の応力吸収部66、67を有するように形成されている。
このリード線5の応力吸収部66は、ケース本体1の凹部11の第1収納空間から連通口19を通ってケース本体1の凹部11の第2収納空間(L字状に形成されている)を斜めにリード線5が配線されるようにU字状に屈曲するように形成されている。
リード線5の応力吸収部67は、ケース本体1の凹部11の第2収納空間と凹部12の第2収納空間との間に形成される段差14付近でへの字状に屈曲するように形成されている。
【0050】
一対のターミナル6、7は、例えば銅または銅合金またはアルミニウム合金等の金属導体板を折り曲げ加工等して形成されている。これらのターミナル6、7は、導電性を有する金属板をプレス成形機で打ち抜き成形を行い、この打ち抜き成形と同時または打ち抜き成形後に所定の部位で折り曲げ成形を行うことで製造される。
一対のターミナル6、7は、サーミスタのリード線4、5と被覆電線8、9とを直列に電気接続する中継端子金具である。これらのターミナル6、7は、ケース本体1の凹部12の底面(ターミナル支持部)に対向して配置される平板状の第1、第2ボトムプレート(底板)71、72をそれぞれ備えている。
【0051】
第1ボトムプレート71を有するターミナル6は、ケース本体1の第1ターミナル支持部である凹部12の底面(第1収納空間側の底面)上に設置されて、サーミスタのリード線4と被覆電線8の導電芯線(第1導体部分)とを共かしめする第1ターミナル(端子金具)である。
第2ボトムプレート72を有するターミナル7は、ケース本体1の第2ターミナル支持部である凹部12の底面(第2収納空間側の底面)上に設置されて、サーミスタのリード線5と被覆電線9の導電芯線(第2導体部分)とを共かしめする第2ターミナル(端子金具)である。
【0052】
第1、第2ボトムプレート71、72の一端側(ワイヤ側)には、被覆電線8、9の導体部分である導電芯線をかしめ接合により電気接続するワイヤバレル(電線接合部)73、74が一体的に形成されている。これらのワイヤバレル73、74は、サーミスタの各リード線4、5の端末部分をかしめ接合により接続するリード線接合部として兼用されている。
第1ボトムプレート71のワイヤバレル73は、中空ケースの中空部内、特にケース本体1の凹部12の底面とケースカバー2の対向壁34の内面との間に形成される第1収納空間内に設置されている。
第2ボトムプレート72のワイヤバレル74は、中空ケースの中空部内、特にケース本体1の凹部12の底面とケースカバー2の対向壁34の内面との間に形成される第2収納空間内に設置されている。
【0053】
ターミナル6のワイヤバレル73は、被覆電線8の導電芯線と共に、サーミスタのリード線4の端末部分を圧着する第1圧着部(第1電線接合部、第1リード線接合部)を構成している。
このワイヤバレル73は、被覆電線8の導電芯線と共にリード線4の端末部分を載置する平板状の第1ベースプレート(底板)、およびこの第1ベースプレートの形成方向に対して垂直な幅方向の両側から外側へ向けて延出(延長)されて、オープンバレル状をなす一対の第1カシメ片等により構成されて、被覆電線8の導電芯線と共に、リード線4の端末部分をかしめ接合により接続する。これにより、ターミナル6のワイヤバレル73とリード線4の端末部分および被覆電線8の導電芯線との結線部(第1接合部)において、安定した結線状態(電気的な接続および機械的な接続)が得られる。
【0054】
ターミナル7のワイヤバレル74は、被覆電線9の導電芯線と共に、サーミスタのリード線5の端末部分を圧着する第2圧着部(第2電線接合部、第2リード線接合部)を構成している。
このワイヤバレル74は、被覆電線9の導電芯線と共にリード線5の端末部分を載置する平板状の第2ベースプレート(底板)、およびこの第2ベースプレートの形成方向に対して垂直な幅方向の両側から外側へ向けて延出(延長)されて、オープンバレル状をなす一対の第2カシメ片等により構成されて、被覆電線9の導電芯線と共に、リード線5の端末部分をかしめ接合により接続する。これにより、ターミナル7のワイヤバレル74とリード線5の端末部分および被覆電線9の導電芯線との結線部(第2接合部)において、安定した結線状態(電気的な接続および機械的な接続)が得られる。
【0055】
第1、第2ボトムプレート71、72の他端側(サーミスタ側)には、サーミスタの各リード線4、5の端末部分を載置する平板状の第1、第2テーブル75、76がそれぞれ一体的に形成されている。
第1テーブル75の形成方向に対して垂直な幅方向の両側には、一対の圧入孔45にそれぞれ圧入固定される一対の突出片47により構成される第1圧入部が一体的に形成されている。この第1圧入部とは、第1テーブル75の幅方向の両側から直角に折り曲げられて、第1テーブル75からケース本体1の各圧入孔45内に嵌合可能に突き出した一対の突出片47のことである。
第2テーブル76の形成方向に対して垂直な幅方向の両側には、一対の圧入孔46にそれぞれ圧入固定される一対の突出片48により構成される第2圧入部が一体的に形成されている。この第2圧入部とは、第2テーブル76の幅方向の両側から直角に折り曲げられて、第2テーブル76からケース本体1の各圧入孔46内に嵌合可能に突き出した一対の突出片48のことである。
【0056】
一対のターミナル6、7の各突出片47、48には、ケース本体1の各圧入孔45、46からの抜け(脱落)を防止するための抜け防止部が設けられている。
抜け防止部とは、第1、第2ターミナル6、7の各突出片47、48の長手方向の両側面から各圧入孔45、46への嵌合方向(圧入方向)に対して垂直な方向の外側に向けて張り出すように設けられる鋸歯形状の圧入接触部77、78のことである。
圧入接触部77は、突出片47の長手方向の両側面から外側に向けて突出した台形状(または三角形状)の突起、および突起の頂面と突出片47の側面との間に形成される段差(係止部)等により構成される。
圧入接触部78は、突出片48の長手方向の両側面から外側に向けて突出した台形状(または三角形状)の突起、および突起の頂面と突出片48の側面との間に形成される段差(係止部)等により構成される。
【0057】
一対の被覆電線8、9は、外部機器からサーミスタへの電源供給を行うサーミスタ電源線、およびサーミスタから外部機器への信号伝達を行うサーミスタ出力信号線である。
被覆電線8は、導体である導電芯線の周囲が絶縁被覆体(絶縁被膜)で被覆された構造からなる第1ワイヤハーネス(絶縁電線)である。
被覆電線9は、導体である導電芯線の周囲が絶縁被覆体(絶縁被膜)で被覆された構造からなる第2ワイヤハーネス(絶縁電線)である。
【0058】
一対の被覆電線8、9は、電線接続部81、82、電線取出部83、84、電線屈曲部85、86、および電線嵌合部87、88を有している。
電線接続部81は、被覆電線8の導電芯線が、ターミナル6のワイヤバレル73にかしめ接合により電気接続される第1接続部である。
電線接続部82は、被覆電線9の導電芯線が、ターミナル7のワイヤバレル74にかしめ接合により電気接続される第2接続部である。
電線取出部83は、被覆電線8のうち中空ケースの中空部(内部)から中空ケースの外部へ取り出される第1取出部である。
電線取出部84は、被覆電線9のうち中空ケースの中空部(内部)から中空ケースの外部へ取り出される第2取出部である。
【0059】
電線屈曲部85は、被覆電線8の電線接続部81から電線取出部83への取出方向に対して垂直な方向(直角)に屈曲するように設けられる第1屈曲部である。この電線屈曲部85は、ケース本体1の第1収納空間側の凹部12の底面、第1収納空間側の凹部12の底面と第1収納空間側の段差15の垂直面との間に形成される面取り形状の傾斜面(テーパ面)91、第1収納空間側の段差15の垂直面、第1収納空間側の凹部13の底面に沿うように、少なくとも2箇所で直角に折り曲げられて第1収納空間側の凹部13内に収容されている。
電線屈曲部86は、被覆電線9の電線接続部82から電線取出部84への取出方向に対して垂直な方向(直角)に屈曲するように設けられる第2屈曲部である。この電線屈曲部86は、ケース本体1の第2収納空間側の凹部12の底面、第2収納空間側の凹部12の底面と第2収納空間側の段差15の垂直面との間に形成される面取り形状の傾斜面(テーパ面)92、第2収納空間側の段差15の垂直面、第2収納空間側の凹部13の底面に沿うように、少なくとも2箇所で直角に折り曲げられて第2収納空間側の凹部13内に収容されている。
【0060】
電線嵌合部87は、被覆電線8の電線取出部83と電線屈曲部85との間に設けられて、ケース本体1の嵌合部55の嵌合凹部57の底面とケースカバー2の嵌合凸部61の先端面との間(第1電線挟持部)に、例えば被覆電線8の絶縁被膜に食い込むように挟持されている。
電線嵌合部88は、被覆電線9の電線取出部84と電線屈曲部86との間に設けられて、ケース本体1の嵌合部56の嵌合凹部58の底面とケースカバー2の嵌合凸部62の先端面との間(第2電線挟持部)に、例えば被覆電線9の絶縁被膜に食い込むように挟持されている。
【0061】
[実施例1の組付方法]
次に、本実施例の自動変速機の作動油温検出装置(油温センサ)の組付方法を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0062】
先ず一対の被覆電線8、9の絶縁被膜の端部を剥いで導電芯線を露出させ、この露出された導電芯線をサーミスタの各リード線4、5と一緒に、一対のターミナル6、7のワイヤバレル73、74の各底板(第1、第2ベースプレート)上に載置する。
次に、ターミナル6のワイヤバレル73の一対の第1カシメ片を、カシメ工具を用いて、サーミスタのリード線4の端末部分および被覆電線8の導電芯線の外周に巻き付けるように内側にかしめる。また、ターミナル7のワイヤバレル74の一対の第2カシメ片を、サーミスタのリード線5の端末部分および被覆電線9の導電芯線の外周に巻き付けるように内側にかしめることで、一対の被覆電線8、9の各導電芯線が、サーミスタの各リード線4、5の端末部分と共に、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74の各第1、第2カシメ片にかしめ接合される。
【0063】
これにより、被覆電線8の導電芯線およびサーミスタのリード線4の端末部分は、かしめ接合によりターミナル6のワイヤバレル73に電気接続および機械接続される。また、被覆電線9の導電芯線およびサーミスタのリード線5の端末部分は、かしめ接合によりターミナル7のワイヤバレル74に電気接続および機械接続される。
よって、サーミスタ素子3および一対のリード線4、5を有するサーミスタ、一対のターミナル6、7および一対の被覆電線8、9がサブアッシー化(一体化)される(図3参照)。つまりサーミスタ、一対のターミナル6、7および一対の被覆電線8、9を一体化(サブアッシー化)した第1油温センササブアッシーが構成される。
【0064】
次に、一対のターミナル6、7の各突出片47、48をケース本体1の凹部12に設けられる圧入孔45、46に圧入嵌合する。これにより、ケース本体1の凹部12内で、一対のターミナル6、7が位置決めされた状態で支持固定される。
このとき、サーミスタ素子3および一対のリード線4、5を有するサーミスタは、ケース本体1の凹部11に位置決めされた状態で設置される。
次に、一対の被覆電線8、9を絶縁被膜を付けたまま、ケース本体1の凹部12に設けられる収容凹部53、54に嵌め込む。これにより、ケース本体1の凹部12内で、一対の被覆電線8、9が位置決めされた状態で支持固定される。
【0065】
ここで、一対のターミナル6、7の各突出片47、48には、抜け防止部として鋸歯形状の圧入接触部77、78が設けられている。これによって、圧入接触部77、78がケース本体1の圧入孔45、46の周囲を囲む圧入孔壁部に食い込んだり、圧入孔壁部で係止されたりすることで、圧入孔45、46からターミナル6、7が抜け難くなる。これにより、一対のターミナル6、7の各突出片47、48がケース本体1の圧入孔45、46の圧入孔壁部に抜け止め状態に保持されるため、圧入孔45、46からターミナル6、7が抜け出して、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74を有するターミナル6、7が中空ケースの中空部内で動き回り、各ワイヤバレル73、74が中空ケースの内面、つまりケース本体1の凹部11〜13の底面またはケースカバー2の対向壁34の内面等に衝突して破損する等の不具合を防止することができる。
【0066】
次に、被覆電線8の電線屈曲部85を凹部13に嵌め込み、電線取出部83をケース本体1の第1挿通口から引き出しておく。また、被覆電線9の電線屈曲部86を凹部13に嵌め込み、電線取出部84をケース本体1の第2挿通口から引き出しておく。
これにより、ケース本体1に対して、サーミスタ素子3および一対のリード線4、5を有するサーミスタ、一対のターミナル6、7および一対の被覆電線8、9よりなる第1油温センササブアッシーが組み付けられる。よって、ケース本体1に第1油温センササブアッシーを一体化(サブアッシー化)した第2油温センササブアッシーが構成される。
【0067】
次に、ケース本体1の外周壁17の結合端面にケースカバー2を嵌合する。
このとき、ケースカバー2の上側部の中央部分に設けられたロックアーム41の係合孔42が、ケース本体1の外周壁17に設けられたスロープ状(直角三角形状)の係合突起22を乗り越えて、係合突起22の係止部(段差)に係止される。
また、ケースカバー2の左右側部の中央部分に設けられたロックアーム43の係合孔44が、ケース本体1の外周壁17に設けられたスロープ状(直角三角形状)の係合突起25を乗り越えて、係合突起25の係止部(段差)に係止される。
このとき、ケース本体1の嵌合部55の嵌合凹部57の底面とケースカバー2の嵌合凸部61の先端面との間(第1電線挟持部)に被覆電線8の電線嵌合部87が挟持される。また、ケース本体1の嵌合部56の嵌合凹部58の底面とケースカバー2の嵌合凸部62の先端面との間(第2電線挟持部)に被覆電線9の電線嵌合部88が挟持される。
【0068】
これによって、ケース本体1の外周壁17の外面にケースカバー2の嵌合部分であるロックアーム41、43が嵌合するようにケース本体1とケースカバー2とを組み付けると、ケースカバー2のロックアーム41、43に設けられる係合孔42、44が、ケース本体1の外周壁17の外面に設けられる係合突起22、25に係合してスナップフィット結合される。これにより、中空ケースの中空部内、つまりケース本体1の凹部11〜13の底面とケースカバー2の対向壁34の内面との間に形成される中空部(第1、第2収納空間)内に、サーミスタ、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74や一対の被覆電線8、9の各電線接続部81、82が完全に格納される。
これにより、ケース本体1に対してケースカバー2が離脱を規制された状態でロックされる。よって、中空ケースの中空部内にサーミスタ、一対のターミナル6、7および一対の被覆電線8、9よりなる第1油温センササブアッシーが設置される。
【0069】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の自動変速機の作動油温検出装置(油温センサ)においては、ケース本体1の凹部12の底面で開口した圧入孔45、46に、ターミナル6、7の各第1、第2ボトムプレートの幅方向の両端縁から圧入孔45、46の奥側へ向けて突出する突出片47、48を圧入嵌合することにより、ケース本体1の凹部12の底面に対するターミナル6、7の位置決めと、ケース本体1の凹部12の底面に対するターミナル6、7の組み付けとを同時に容易に行うことができる。これにより、製造コストが増加するターミナルのインサート成形工程を廃止できるので、油温センサの製造コストの低減化を図ることができる。
【0070】
また、ケース本体1の凹部11〜13の底面とケースカバー2の対向壁34の内面との間に形成される中空部(第1、第2収納空間)内にサーミスタとターミナル6、7と一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74、一対の被覆電線8、9の各電線接続部81、82を完全に格納しているので、搬送時や組み付け時に、サーミスタ、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74や電線接続部81、82への接触(衝突)または干渉による機械的破損(=接点破損)や電気的破損(=静電気による油温検出素子の破損)等を確実に防止することができる。
また、インヒビタスイッチの端子台ではなく、油温センサを単独で配置できるため、油温センサの配置の自由度が高く、最適なオイルの油温検出が可能となる。
【0071】
また、サーミスタの一対のリード線4、5に応力吸収部66、67を設けたことにより、サーミスタ素子3とリード線4との第1導通接合部、およびサーミスタ素子3とリード線5との第2導通接合部に外部からの引っ張り力が伝わり難くなるので、サーミスタの第1、第2導通接合部における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
また、ケース本体1の凹部12の底面に、一対の被覆電線8、9の被収容部分を位置決めした状態で支持固定する収容凹部53、54を設けたことにより、被覆電線8、9が中空ケースの中空部内で動き回り、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74に応力ストレスがかかる等の不具合を防止することができる。これにより、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
【0072】
そして、被覆電線8をその電線屈曲部85において電線接続部81から電線取出部83への取出方向に対して垂直な方向に屈曲させ、更に、ケース本体1の嵌合部55の嵌合凹部57の底面とケースカバー2の嵌合凸部61の先端面との間(第1電線挟持部)で電線屈曲部85と電線取出部83との間の電線嵌合部87に、例えば被覆電線8の絶縁被膜に食い込むように挟み込んでいる。
また、被覆電線9をその電線屈曲部86において電線接続部82から電線取出部84への取出方向に対して垂直な方向に屈曲させ、更に、ケース本体1の嵌合部56の嵌合凹部58の底面とケースカバー2の嵌合凸部62の先端面との間(第2電線挟持部)で電線屈曲部86と電線取出部84との間の電線嵌合部88に、例えば被覆電線9の絶縁被膜に食い込むように挟み込んでいる。
【0073】
これによって、被覆電線8、9の外部からの引張り力が一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74および一対の被覆電線8、9の各電線接続部81、82に伝達されないばかりでなく、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74と一対の被覆電線8、9の各電線接続部81、82との接合方法としてかしめ接合により接続方法を採用しているので、ケース本体1とケースカバー2との組み付けによって、組み付け後に一対の被覆電線8、9への引っ張り力が維持されても、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74の接合強度の低下が発生することはなく、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74における接合信頼性を高く維持(確保)することができる。
【0074】
また、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74の第1、第2ベースプレート上に、リード線4、5の端末部分と共に被覆電線8、9の導電芯線(導体部分)を載置し、更に、リード線4、5の端末部分と共に被覆電線8、9の導電芯線の周囲を取り囲むように(外周に巻き付けるように)、一対の第1、第2カシメ片を円筒状に折り曲げ(かしめ)ることにより、被覆電線8、9の導電芯線およびリード線4、5の端末部分とターミナル6、7との電気接続および機械接続が成される。
ここで、一対のターミナル6、7の各ワイヤバレル73、74には、被覆電線8、9の導電芯線をかしめ接合により接続する電線接合部が設けられている。この電線接合部は、一対のリード線4、5の端末部分をかしめ接合により接続するリード線接合部として兼用されている。これにより、一対のターミナル6、7の形状が簡素化されるので、油温センサの製造コストの更なる低減化を図ることができる。
【0075】
[変形例]
本実施例では、本発明の油温検出装置を、自動変速機の作動油温検出装置(油温センサ)に適用しているが、本発明の油温検出装置を、内燃機関や自動変速機等の潤滑油温検出装置(油温センサ)に適用しても良い。
本実施例では、本発明の油温検出装置を、オイルの油温に対応した油温信号(サーミスタ出力信号)を外部に対して出力する油温センサと、この油温センサから出力されたサーミスタ出力信号を電圧変換して外部に対して出力する信号処理回路と、この信号処理回路から出力された電圧信号に基づいてオイルの油温を演算するTCU(またはECU)とを備えた作動油温検出装置に適用しているが、本発明の油温検出装置を、オイルの油温に対応した油温信号(サーミスタ出力信号)を外部に対して出力する油温センサと、この油温センサから出力されたサーミスタ出力信号に基づいてオイルの油温を演算するTCU(またはECU)とを備えた作動油温検出装置に適用しても良い。
なお、信号処理回路に、油温センサから出力されたサーミスタ出力信号を電圧変換した電圧信号を増幅する演算増幅器を備えても良い。
【0076】
本実施例では、オイルの油温に対応した信号を外部回路(TCU等)に対して出力するサーミスタを、ボビン、このボビンの両端に挿入される一対のリード線4、5、ボビンの外周に螺旋状に巻き付けられて一対のリード線4、5に電気接続される抵抗線(油温検出素子、感温抵抗体)、この抵抗線および抵抗線とリード線4、5との導通接合部を保護する保護膜等によって構成したが、サーミスタを、シリコン基板(回路基板)の表面に所定のパターンで薄膜形成される薄膜サーミスタ(油温検出素子)によって構成しても良い。 また、絶縁部材であるボビンの形状を円柱状に形成しても良い。
なお、油温検出素子として、金属側温抵抗体や熱電対等の他の温度検出素子を用いても良い。
【0077】
本実施例では、一対のリード線4、5の端末部分と一対の絶縁電線8、9の導体部分(導電芯線)を直列に電気接続する一対のターミナル6、7として、一対のリード線4、5の端末部分と共に一対の絶縁電線8、9の導体部分をかしめ接合により電気接続するワイヤバレル73、74を有する一対のターミナル6、7に適用しているが、一対のリード線4、5の端末部分と一対の絶縁電線8、9の導体部分(導電芯線)を直列に電気接続する一対のターミナル6、7として、一対のリード線4、5の端末部分をかしめ接合により電気接続するリード線接合部と、一対の絶縁電線8、9の導体部分をかしめ接合により電気接続する電線接合部とが所定距離を隔てた位置に別々に設けられる一対のターミナル6、7に適用しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 ケース本体(中空ケース、第1分割体)
2 ケースカバー(中空ケース、第2分割体)
3 サーミスタ素子(温度検出素子)
4 サーミスタのリード線
5 サーミスタのリード線
6 ターミナル
7 ターミナル
8 被覆電線(ワイヤハーネス)
9 被覆電線(ワイヤハーネス)
11 凹部(サーミスタ支持部)
12 凹部(ターミナル支持部)
13 凹部
14 段差
15 段差
45 圧入孔(支持部)
46 圧入孔(支持部)
47 突出片(圧入部、突出部)
48 突出片(圧入部、突出部)
53 収容凹部(収容部)
54 収容凹部(収容部)
63 開口部(ポート)
64 開口部(ポート)
65 開口部(ポート)
71 ターミナルのボトムプレート(底板)
72 ターミナルのボトムプレート(底板)
73 ターミナルのワイヤバレル(接合部、電線接合部)
74 ターミナルのワイヤバレル(接合部、電線接合部)
77 圧入接触部(抜け防止部)
78 圧入接触部(抜け防止部)
81 電線接続部
82 電線接続部
83 電線取出部
84 電線取出部
85 電線屈曲部
86 電線屈曲部
87 電線嵌合部
88 電線嵌合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6