(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(イ)(a)流路に設けた主弁と、(b)内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(c)該主弁に対する1次側流路の水を該背圧室に導入して該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(d)該背圧室の水を該主弁に対する2次側流路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット流路と、(e)該背圧室から該パイロット流路を経て流出する水の流れを制御して前記主弁の動作を制御するパイロット弁と、を備えたパイロット式給水制御弁に、
(ロ)(f)一方の面で前記背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で前記1次側流路の1次側圧力を受け、それら1次側圧力と背圧室圧力との差圧を感受する差圧感受部を備えた弁体と、(g)該弁体に対して前記背圧室の圧力の作用方向に付勢力を作用させる付勢部材と、を有し、前記主弁の開弁状態の下で、前記弁体に備えた絞り部により流路に対する絞りを変えることで前記背圧室圧力と1次側圧力との差圧を一定とする定差圧弁
を付加することで、前記主弁の開弁状態の下では前記1次側流路と2次側流路との差圧を一定に保持するようになしてあり、前記主弁の閉弁状態の下では前記差圧感受部の前記一方の面に作用する前記背圧室の圧力と、前記他方の面に作用する前記1次側流路の1次側圧力とが同じ圧力となるようになしてあることを特徴とする給水制御弁装置。
請求項1において、前記給水制御弁は、前記主弁が一方の面で前記背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で前記1次側流路の1次側圧力と前記2次側流路の2次側圧力とを受けるとともに、
前記パイロット流路が前記主弁を貫通して設けてあり、
該主弁が前記パイロット弁との間に一定の微小な追従間隙を保持しつつ該パイロット弁の移動に追従して同方向に移動し、給水流量を制御する弁であることを特徴とする給水制御弁装置。
請求項1において、前記給水制御弁は、前記主弁が全開位置と全閉位置との何れかに位置保持されて、流路を開から閉に若しくはその逆に切り替える開閉弁であることを特徴とする給水制御弁装置。
【背景技術】
【0002】
従来、(a)流路に設けた主弁と、(b)内部の圧力を主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(c)主弁に対する1次側流路の水を背圧室に導入して背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(d)背圧室の水を主弁に対する2次側流路に抜いて背圧室の圧力を減少させるパイロット流路と、(e)背圧室からパイロット流路を経て流出する水の流れを制御して主弁の動作を制御するパイロット弁と、を備えたパイロット式給水制御弁に、1次側流路の圧力と2次側流路の圧力との差圧を一定に保持する定差圧弁を付加して成る給水制御弁装置が公知である。
【0003】
この給水制御弁装置では、定差圧弁にて1次側流路の圧力と2次側流路の圧力との差圧を一定に保持することで給水流量、即ち主弁を通過して流れる水の流量を、主弁の開度に応じて一定流量とすることができ、また給水制御弁が開閉弁である場合、上記の差圧を低く設定することで、主弁の閉弁時にゆっくりと主弁を閉弁させることができ、ウォーターハンマを効果的に低減することができる。
【0004】
図7は、この種の給水制御弁装置に属する一例を比較例として示している。
図において200は給水制御弁装置202のボデーで、内部に流路204を有している。
206はパイロット式給水制御弁(以下単に給水制御弁とする)で、ダイヤフラム弁から成る主弁208と、背圧室210と、主弁208を貫通して設けられた導入小孔214と、同じく主弁208を貫通して設けられたパイロット流路218と、パイロット弁220とを有している。
【0005】
ここで背圧室210は、内部の圧力を主弁208に対し閉弁方向の押圧力として作用させる。また導入小孔214は、主弁208に対する1次側流路212の水を背圧室210に導入して、背圧室210の圧力を増大させる。
一方パイロット流路218は、背圧室210の水を主弁208に対する2次側流路216に抜いて、背圧室210の圧力を減少させる。
またパイロット弁220は、背圧室210からパイロット流路218を経て2次側流路216に流出する水の流れを制御して、主弁208の動作を制御する。
【0006】
222は通電により電磁力を発生させる電磁コイルで、パイロット弁220は、この電磁コイル222により図中上方に持ち上げられて開弁する。
224はパイロット弁220を図中下向きに付勢するばねで、パイロット弁220は、このばね224によって閉弁状態に保持される。
【0007】
ここで給水制御弁206は、主弁208が全開位置と全閉位置との何れかに位置保持されて、流路を開から閉に若しくはその逆に切り替える開閉弁とされている。
この給水制御弁206は、パイロット弁220がストローク一杯まで下向きに突き出されて閉弁することで主弁208が全閉状態となり、流路を閉とする。
また一方、パイロット弁220が電磁コイル222による電磁力により開弁することで主弁208が全開状態となり、流路が閉から開に切り替えられる。
【0008】
開閉弁として構成された給水制御弁206は、パイロット弁220がストローク一杯まで後退移動することで主弁208が全開状態となり、このとき主弁208とパイロット弁220との間には大きな隙間Sが生ずる。この隙間Sは背圧室210の背圧室圧力P
4と2次側流路216の2次側圧力P
3とを実質的に同圧とする大きな隙間である。
【0009】
226は、主弁208に対する1次側流路212の1次側圧力P
2と、2次側流路216の2次側圧力P
3との差圧を一定にする定差圧弁で、228はその主体をなす弁体である。
弁体228は、一方の面(図中上面)で1次側流路212の1次側圧力P
2を受け、反対側の他方の面(図中下面)で2次側流路216の2次側圧力P
3を受け、それら1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧を感受するダイヤフラム式の差圧感受部230と、入側流路232から1次側流路212への流路を絞る絞り部234とを有している。
そしてこの弁体228に対してコイルばね(付勢部材)236の付勢力が、2次側圧力P
3の作用方向と同じ方向に作用せしめられている。
【0010】
この定差圧弁226は、絞り部234による流路に対する絞りを変化させることで、差圧感受部230に作用する互いに逆向きの力、即ち図中下向きに加わる1次側圧力P
2による力と、図中上向きに加わる2次側圧力P
3による力、及びコイルばね236による付勢力とをバランスさせるように動作し、以て1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧を一定に保持する。
このとき、主弁208を通過して流れる水の流量は以下の式(1)で与えられる。
【数1】
但し式(1)中、Qは流量で、aは主弁208を水が通過する際の流路面積、cは定数で、ΔPは1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧,ρは水の比重である。
而してこの給水制御弁装置202にあっては、差圧ΔPが一定に保たれるため、主弁208を通過して流れる水の流量は、主弁208の開度に応じた一定流量となる。
尚この種の給水制御弁装置については特許文献1に開示されている。
【0011】
ところでこの給水制御弁装置202の場合、定差圧弁226の差圧感受部230が1次側圧力P
2と2次側圧力P
3の差圧を直接感受して動作するように構成してあるため、主弁208の閉弁状態の下で差圧感受部230には入側流路232の入側圧力P
1(主弁208閉弁状態の下ではP
2=P
1となる)と2次側圧力P
3との差圧が加わることとなる。
この差圧は大きな差圧となるため、差圧感受部230の外周シール部で漏れを生じる恐れがある。
【0012】
この漏れの問題はOリング等でシールを行った場合にも生じ得るが、差圧感受部230の動作時の摺動抵抗を小さくする上でダイヤフラム膜をシール部として用いることが望ましく、而してシール部としてダイヤフラム膜を用いた場合にはシール部の耐圧不足による膜の破れ、より具体的には図中下向きに湾曲して断面U字状に膨らんだ可撓部分の破れによる上記の漏れの問題を特に生じ易い。
【0013】
このように差圧感受部230のシール部で漏れが生じると、主弁208が閉じているにも拘らず2次側流路216への水の漏れが生じてしまう。
ダイヤフラム膜をシール部として用いた場合において、その漏れを防止するためには耐圧性を持たせるために基布入りのダイヤフラム膜を用いることが必要となり、この場合ダイヤフラム膜のためのコストが高くなってしまう。
【0014】
尚本発明に関連する先行技術として、下記特許文献2には、ダイヤフラムを使用したパイロット式電磁弁では、流路内でウォーターハンマが発生すると、その圧力でダイヤフラム式の主弁が瞬間的に押し上げられ、開弁してしまう問題を生じることから、これを解決することを目的として、ダイヤフラム式主弁の1次側流路上に膜体を配置して、その膜体の一方の面に1次圧を作用させる一方、他方の面にはパイロット圧力室(背圧室)の圧力を作用させ、それによってウォーターハンマによる圧力上昇が生じた際には膜体を介してパイロット圧力室の圧力も上昇させることで、主弁が不用意に開くことを防止するようになしたものが開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものにおいて、膜体は流路に対する絞りを変化させる絞り部を有しないもので、定差圧弁としての働きを成し得るものではなく、本発明とは異なっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、主弁の閉弁状態の下で定差圧弁における差圧感受部のシール部に大きな差圧が作用せず、シール部での漏れの発生を防止でき、また仮に漏れが生じたとしても主弁の2次側流路への水の漏れを生ぜしめず、更に差圧感受部のシール部としてダイヤフラム膜を用いる場合において、基布入りの耐圧性の高価なダイヤフラム膜を用いる必要がなく、所要コストを安価に抑制できる給水制御弁装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは(イ)(a)流路に設けた主弁と、(b)内部の圧力を該主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(c)該主弁に対する1次側流路の水を該背圧室に導入して該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(d)該背圧室の水を該主弁に対する2次側流路に抜いて該背圧室の圧力を減少させるパイロット流路と、(e)該背圧室から該パイロット流路を経て流出する水の流れを制御して前記主弁の動作を制御するパイロット弁と、を備えたパイロット式給水制御弁に、(ロ)(f)一方の面で前記背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で前記1次側流路の1次側圧力を受け、それら1次側圧力と背圧室圧力との差圧を感受する差圧感受部を備えた弁体と、(g)該弁体に対して前記背圧室の圧力の作用方向に付勢力を作用させる付勢部材と、を有し、前記主弁の開弁状態の下で、前記弁体に備えた絞り部により流路に対する絞りを変えることで前記背圧室圧力と1次側圧力との差圧を一定とする定差圧弁、を付加することで
、前記主弁の開弁状態の下では前記1次側流路と2次側流路との差圧を一定に保持するようになしてあ
り、前記主弁の閉弁状態の下では前記差圧感受部の前記一方の面に作用する前記背圧室の圧力と、前記他方の面に作用する前記1次側流路の1次側圧力とが同じ圧力となるようになしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記給水制御弁は、前記主弁が一方の面で前記背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で前記1次側流路の1次側圧力と前記2次側流路の2次側圧力とを受けるとともに、前記パイロット流路が前記主弁を貫通して設けてあり、該主弁が前記パイロット弁との間に一定の微小な追従間隙を保持しつつ該パイロット弁の移動に追従して同方向に移動し、給水流量を制御する弁であることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項1において、前記給水制御弁は、前記主弁が全開位置と全閉位置との何れかに位置保持されて、流路を開から閉に若しくはその逆に切り替える開閉弁であることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記定差圧弁の前記差圧感受部のシール部がダイヤフラム膜であることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記背圧室が前記付勢部材の収容室を兼ねていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明は、一方の面で背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で主弁に対する1次側流路の1次側圧力を受け、それら1次側圧力と背圧室圧力との差圧を感受する差圧感受部を備えた弁体と、弁体に対して背圧室の圧力の作用方向に付勢力を作用させる付勢部材とを有し、弁体に備えた絞り部により流路に対する絞りを変えることで、背圧室圧力と1次側圧力との差圧を一定とする定差圧弁をパイロット式給水制御弁に付加することで、給水制御弁における主弁の1次側流路と2次側流路との差圧を一定に保持するようになしたものである。
【0023】
本発明において、定差圧弁の差圧感受部に加わる圧力は、主弁に対する1次側流路の1次側圧力と背圧室圧力とであり、これらの圧力は主弁閉弁状態の下で同じ圧力となり、従って差圧感受部のシール部に対し、主弁閉弁状態の下で差圧による大きな力は加わらない。
【0024】
これにより、主弁閉弁状態の下で差圧感受部のシール部に加わる大きな差圧によってシール部に漏れが発生するのを防止することができ、そのシール部の漏れによって、主弁が閉弁状態であるにも拘らず、この主弁の下流側に上流側の水が漏出するといったことを防止することができる。
【0025】
従って差圧感受部の動作時の摺動抵抗を小さくするために、定差圧弁における差圧感受部のシール部としてダイヤフラム膜を用いた場合(請求項4)であっても、ダイヤフラム膜を耐圧確保のために基布入りのものとしなくてもよく、ダイヤフラム膜に要するコストを低く抑えることができる。
【0026】
また主弁開弁状態の下で差圧感受部に差圧が加わることによって、たとえシール部で微小な漏れが生じたとしても、その漏れは1次側流路から背圧室への漏れであり、1次側流路から背圧室への水の流れは、もともと導入小孔を通じて生じているものであるから、上記の漏れによる給水制御弁装置の性能への悪影響は殆んど生じない。
【0027】
本発明では、上記パイロット式給水制御弁を、主弁が一方の面で背圧室の圧力を受け、反対側の他方の面で1次側流路の1次側圧力と2次側流路の2次側圧力とを受け、その主弁がパイロット弁との間に一定の微小な追従間隙を保持しつつパイロット弁の移動に追従して同方向に移動し、給水流量を制御する弁となしておくことができる(請求項2)。
【0028】
又は給水制御弁を、主弁が全開位置と全閉位置との何れかに位置保持されて、流路を開から閉に若しくはその逆に切り替える開閉弁となしておくことができる(請求項3)。
【0029】
次に請求項5は、背圧室が付勢部材の収容室を兼ねるようにしたもので、この請求項5によれば、弁装置の構成を簡素な構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び
図2において、10は本実施形態の給水制御弁装置で、12はそのボデーであり、内部に流路14を有している。
この実施形態において、給水制御弁装置10は、パイロット式給水制御弁(以下単に給水制御弁とする)16と、定差圧弁18とを有している。
【0032】
20は給水制御弁16における主弁で、ダイヤフラム弁から成っており、ゴム製のダイヤフラム膜22と、これを保持する硬質の保持部材24とを備えている。
ダイヤフラム膜22は、外周部がボデー12に全周に亘り固定されており、後述の背圧室34と1次側流路30との間を水密にシールするシール部としての働きも有している。
【0033】
主弁20は、ボデー12に設けた円筒部26の先端部の主弁座28に着座して閉弁し、主弁20に対する1次側流路30と2次側流路32とを遮断する。
また主弁座28から図中上向きに離間して開弁し、1次側流路30と2次側流路32とを連通状態として、主弁20を通過する水の流れを生ぜしめる。
またその開度を変化させることで、1次側流路30から2次側流路32へと流れる水の流量、即ち給水の流量をその開度に応じて変化させる。
【0034】
主弁20の図中上側の背後には背圧室34が設けられている。
この背圧室34は、内部の圧力を主弁20に対し図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁20には、その中心から偏心した位置においてこれを貫通する導入小孔36が設けられている。
この導入小孔36は、1次側流路30の水を背圧室34に導入して、背圧室34の圧力を増大させる。
主弁20にはまた、その中心部においてこれを貫通する水抜路としてのパイロット流路38が設けられている。
パイロット流路38は、背圧室34の水を2次側流路32に抜いて背圧室34の圧力を減少させる。
【0035】
40はボデー12の外部に突き出した操作軸で、その先端部(図中下端部)にパイロット弁42が一体に構成されている。
パイロット弁42は、シール部44を主弁20に設けられたパイロット弁座46に着座させて閉弁し、背圧室34からパイロット流路38を経て2次側流路32に到る水の流れを遮断する。
またパイロット弁座46から図中上向きに離間し開弁することで、背圧室34からパイロット流路38を経て2次側流路32に到る水の流れを生ぜしめる。
【0036】
操作軸40の外周面には雄ねじ部48が設けられており、この雄ねじ部48が、ボデー12に設けられた雌ねじ孔の雌ねじ部50に螺合されている。
従って操作軸40を回転させると、それら雄ねじ部48及び雌ねじ部50から成るねじ機構52によって、パイロット弁42が図中上下方向に進退移動せしめられる。
【0037】
この例において給水制御弁16は、給水の流量を連続的に調節することのできる弁であって、その流量の調節は操作軸40を回転操作することによって行われる。
図2は、操作軸40を一方向に回転させてパイロット弁42をストローク一杯まで下向きに突き出し、閉弁させた状態を示している。
このとき主弁20もまた、主弁座28に着座して閉弁した状態にあり、1次側流路30から2次側流路32への水の流れは生じていない。
【0038】
この状態から操作軸40を上記とは逆方向に回転させてパイロット弁42を図中上向きに移動させると、パイロット弁42とパイロット弁座46、即ち主弁20との間に隙間が生じ、背圧室34の水がその隙間からパイロット流路38を経て2次側流路32へと流出し、背圧室34の圧力が減少する。
これにより、主弁20が1次側流路30の1次側圧力P
2により図中上向きに押し上げられて開弁する。
【0039】
そして主弁20に対して下向きに加わる背圧室圧力P
4による力と、上向きに加わる1次側流路30の1次側圧力P
2及び2次側流路32の2次側圧力P
3による力とがバランスした位置で主弁20が移動停止する。
【0040】
この状態から更にパイロット弁42を図中上向きに後退移動させると、パイロット弁42と主弁20との間の隙間が再び大きくなり、背圧室圧力P
4が再び一時的に低下することで主弁20が図中上向きに移動する。
【0041】
そして背圧室圧力P
4による下向きの力と、1次側圧力P
2及び2次側圧力P
3による図中上向きの力とがバランスした位置で再びそこに停止する。
そして主弁20の図中上向きの移動によって主弁20の開度が増大し、そして主弁20の開度の増大に伴って1次側流路30から2次側流路32へと流れる水の流量が増大変化する。
【0042】
主弁20は、パイロット弁42の更なる図中上向きの後退移動とともに同方向即ち図中上方向に移動し、弁開度を更に大きくして流路を流れる水の流量を更に増大させる。
但し実際の動きとしては、主弁20がパイロット弁42、詳しくはシール部44との間に一定の微小な追従隙間d(この隙間は0.03mm程度の微小な隙間)を維持しながら、パイロット弁42の後退移動に連続的に追従して同方向に移動し、流路14の開度を変化させる。
【0043】
同様にパイロット弁42が図中下向きに前進移動したときにも、主弁20はパイロット弁42との間に一定の微小隙間dを維持しつつ、パイロット弁42の移動に追従して図中下向きに移動し、流路14を流れる水の流量を連続的に減少変化させる。
そしてパイロット弁42がストローク一杯まで図中下向きに前進移動し、パイロット弁42が閉弁状態となることで、主弁20もまた主弁座28に着座して閉弁状態となり、流路14内の水の流れを停止させる。
【0044】
上記定差圧弁18は、背圧室34の背圧室圧力P
4と1次側流路の1次側圧力P
2との差圧を一定にすることで、1次側圧力P
2と2次側流路32の2次側圧力P
3との差圧を一定にする働きを有する弁で、図中54はその主体をなす弁体である。
この弁体54は、背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2との差圧を感受する差圧感受部56と、入側流路58から1次側流路30への流路を絞り且つその絞りを変化させる絞り部60とを有しており、それらが軸部62にて連結されている。
【0045】
差圧感受部56はダイヤフラム式のもので、ゴム製のダイヤフラム膜64と、これを保持する硬質の保持部66とを有している。
ダイヤフラム膜64は外周部がボデー12に水密に固定されており、ダイヤフラム膜64は、背圧室34と1次側流路30との間を水密にシールするシール部としての働きも有している。
ここで差圧感受部56は、一方の面(図中上面)で背圧室圧力P
4を下向きに受け、また反対側の他方の面(図中下面)で1次側圧力P
2を上向きに受け、それら背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2との差圧を感受する。
【0046】
一方上記の絞り部60は、ボデー12に形成された嵌合孔72内に摺動可能に嵌合されている。
この絞り部60には、嵌合孔72の底部側の空間に連通した連通孔74が設けられている。
尚、この絞り部60の外周面と嵌合孔72の内周面との間はOリングにて水密にシールされている。
【0047】
定差圧弁18は、弁体54に加えて、差圧感受部56に対してその付勢力を背圧室圧力P
4の作用方向に及ぼすコイルばね(付勢部材)68を備えている。
ここでコイルばね68は、背圧室34の一部をなす収容室70に収容されており、その一端(図中上端)をボデー12に当接させ、また反対側の一端を差圧感受部56に当接させてその付勢力を下向きに及ぼしている。
【0048】
この定差圧弁18は、次のように動作して背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2との差圧を一定に保持する。
即ち、主弁20の開弁状態の下で、背圧室圧力P
4が増大すると、弁体54がその増大した背圧室圧力P
4によって図中下向きに押し下げられる。
すると絞り部60による流路の絞りが小となって、1次側圧力P
2が増大する。そして弁体54はその移動により上昇した1次側圧力P
2と背圧室圧力P
4とが釣合う位置で移動停止する。
また逆に背圧室圧力P
4が低下すると、相対的に増大した1次側圧力P
2にて弁体54が図中上向きに押し上げられて絞り部60による絞りを大とし、1次側圧力P
2を低下させる。
そして背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2とが釣合う位置で弁体54が移動停止する。
そのようにして弁体54は背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2との差圧ΔPを常に一定に保つように動作する。
【0049】
この例において、主弁20開弁状態の下で(即ち給水状態の下で)背圧室圧力P
4を受ける主弁20の受圧面積をS
1,2次側圧力P
3を受ける主弁20の受圧面積をS
2,1次側圧力P
2を受ける主弁20の受圧面積を(S
1−S
2)としたとき、以下の式(2)が成り立つ。
式(2)・・・P
4S
1=P
2(S
1−S
2)+P
3S
2
この式(2)を変換すると以下の式(3)となる。
式(3)・・・(P
2−P
3)S
2=(P
2−P
4)S
1
【0050】
式(3)において、1次側圧力P
2と背圧室圧力P
4との差圧は定差圧弁18によって一定に保持されるから、1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧もまた一定に保持される。
即ち定差圧弁18によって、1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧が一定に保持される。
従って流路14を流れる水の流量即ち給水の流量は、主弁20の開度に応じた一定の流量となる。
【0051】
一方止水状態、即ち
図2に示す主弁20の閉弁状態の下では、流路14に水の流れが生じていないため、背圧室圧力P
4=
1次側圧力P
2=入側流路の入側圧力P
1となる。
即ち止水状態の下では、定差圧弁18の差圧感受部56におけるダイヤフラム膜64には差圧による力は働かず、従ってシール部としての働きを有するダイヤフラム膜64が差圧による力によって漏れを発生するといったことは生じない。
【0052】
また仮に漏れが発生したとしても、そのことが主弁20閉弁状態の下で2次側流路32への水の漏出をもたらすこともない。
差圧感受部56のダイヤフラム膜64は、2次側流路32の2次側圧力P
3を直接受けていないからである。即ちダイヤフラム膜64に接する流路と2次側流路32とは、主弁20にて遮断されているからである。
【0053】
一方主弁20が開いた状態、即ち給水状態の下では、差圧感受部56のダイヤフラム膜64に対して背圧室圧力P
4と1次側圧力P
2との差圧が作用する。
但しその差圧は、
図7における1次側圧力P
2=P
1と2次側圧力P
2との差圧ほど大きな差圧ではないので、ダイヤフラム膜64が漏れを発生するといったことは生じ難く、また仮にその状態で漏れを発生させたとしても、1次側流路30の水はその漏れを生じたダイヤフラム膜64の個所から背圧室34に流入するだけであり、しかも1次側流路30から背圧室34への水の流入は、もともと導入小孔36を通じて生じているものである。
従ってその微小な漏れによる給水制御弁装置10の性能への影響は殆んど生じない。
【0054】
本実施形態では、差圧感受部56の動作時の摺動抵抗を小さくするために、シール部としてダイヤフラム膜64を用いた場合であっても、ダイヤフラム膜64を耐圧確保のために基布入りのものとしなくてもよく、ダイヤフラム膜64に要するコストを低く抑えることができる。
【0055】
次に
図3及び
図4は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態は、給水制御弁16が開閉弁である場合の例で、ここではプランジャ式のパイロット弁76を、通電により電磁力を発生させる電磁コイル78にて駆動するようにしている。
この例の給水制御弁装置10では、パイロット弁76が前進端即ち全閉位置と、後退端即ち全開位置との何れかの位置に位置保持される。
【0056】
詳しくは、電磁コイル78に通電されると、電磁コイル78が電磁力でパイロット弁76をストローク一杯まで図中上向きに引き上げて全開位置にこれを保持する。
また閉弁時には、
図4に示しているようにコイルばね80がパイロット弁76をストローク一杯まで図中下向きに突き出して、これを閉弁位置に位置保持する。
またこれに伴って主弁20がストローク一杯まで図中上向きに後退した全開位置と、ストローク一杯まで図中下向きに移動した全閉位置に位置保持される。
【0057】
而してパイロット弁76及び主弁20がストローク一杯まで後退方向に移動して全開位置となったとき、
図3に示しているようにパイロット弁76、詳しくはシール部44と主弁20との間には十分に大きな隙間Sが生じる。
このため、パイロット弁76及び主弁20の開弁状態の下では、背圧室圧力P
4と2次側流路の2次側圧力P
3とは実質等しい圧力(P
4=P
3)となる(パイロット流路38は導入小孔36に対して十分に拡い)。
【0058】
一方1次側圧力P
2と背圧室圧力P
4との差圧(P
2−P
4)は定差圧弁18によって一定に保持されるため、1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧もまた一定に保持される。
他方止水時、即ち主弁20が閉弁した状態の下では、流路14に水の流れは生じていないため、背圧室圧力P
4=1次側圧力P
2=入側圧力P
1となる。
尚
図3及び
図4の実施形態において、他の構成については基本的に上記実施形態と同様である。
この実施形態においても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
次に
図5及び
図6は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例もまた、給水制御弁16が開閉弁であって且つ主弁20がピストン弁から成っており、その主弁20がシリンダ室84の内面に沿って図中上下に摺動するようになっている。
尚ピストン弁から成る主弁20の外周面にはOリングが保持されており、このOリングによって、主弁20とシリンダ室84内面との間が水密にシールされている。
【0060】
この例では、1次側流路30と背圧室34とを連通させる導入小孔36がボデー12を貫通して設けられており、またパイロット流路38が主弁20を貫通せずに、ボデー12を貫通して設けられている。
そしてこのパイロット流路38上に、パイロット弁86が配置され、このパイロット弁86がパイロット弁座88に着座し、又はこれから離間するようになっている。
【0061】
パイロット弁86は、操作軸40の先端部にて構成されており、また操作軸42は雄ねじ部48が設けられていて、この雄ねじ部48が、ボデー12の雌ねじ孔の雌ねじ部50に螺合され、それら雄ねじ部48と雌ねじ部50とでねじ機構52が構成されている。
また操作軸40のボデー12から外部に露出した端部には、回転操作部90が設けられている。
【0062】
本実施形態において、定差圧弁18における差圧感受部56は、ピストン部92とシール部としてのOリング94とで構成されており、かかる差圧感受部56が、シリンダ室96の内面に沿って図中上下に摺動可能とされている。
尚、他の構成については
図3及び
図4に示す実施形態と同様である。
【0063】
この例では、
図6に示すようにパイロット弁40を閉弁させると主弁20が閉弁位置に保持され、また
図5に示すようにパイロット弁40を図中右方向に大きく後退させ開弁させると、主弁20が全開位置に位置保持される。
そして主弁20の全閉位置と全開位置との位置移動によって、流路が閉から開に、またその逆に切り換えられる。
【0064】
主弁20が全開位置にある
図5において、2次側流路32はパイロット流路38を介して背圧室34と連通した状態にあり、またパイロット弁40は大きく開いた状態にあって、パイロット弁86とパイロット弁座88との間には大きな隙間Sが生じているため、背圧室圧力P
4=2次側圧力P
3となる。
【0065】
また2次側圧力P
2と背圧室圧力P
4との差圧(P
2−P
4)は定差圧弁18にて一定に保持されているため、1次側圧力P
2と2次側圧力P
3との差圧(P
2−P
3)もまた一定の差圧に保持される。
従ってこの例においても、主弁20を通過して流れる水の流量は一定流量となる。
【0066】
尚この例のピストン弁から成る主弁20は、
図6に示す閉弁状態から、1次側流路30から2次側流路32に向う水の流れの勢いで開弁する。
一方パイロット弁86を閉じると、増大した背圧室圧力P
4の圧力で主弁20が閉弁し、そして主弁20が閉弁した状態の下では、背圧室圧力P
4は1次側圧力P
2=入側圧力P
1と等しい圧力となる。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。