(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つの投与スライダー(15)を有する前記投与スライダー通路(16)、および、前記保存チャンバ(13)が少なくとも該投与スライダー(15)の充填位置において環境に対し封鎖されていることを特徴とする、請求項1に記載の吸入デバイス(1)。
【背景技術】
【0002】
気管支疾患の治療分野だけでなく、気道を通じて薬剤を作用させることが可能な、他の疾患の治療分野においても、吸入可能なエアロゾルを供給するために溶液または縣濁液を噴霧化する外にも、粉末状薬剤を投与することが知られる。このような薬剤については、きわめて多様な例が文献に記載されているが、純粋に例示のために、我々は、特許文献1、2、および3を参照する。この点に関する通常の投与形態は、吸入デバイス、すなわち吸入器による補給である。
【0003】
散剤用吸入器の場合、そのような吸入器は、個別用量の投与についても公知であるし、さらに、複数の薬剤用量のための保存部を有する吸入デバイスも公知である。後者については、各個別用量のために別々の保存チャンバを設けること、または、一つの薬剤の複数用量を収容するための、個別受容チャンバを設けることが知られる。
【0004】
別々の保存チャンバの中に複数の個別用量を持つ吸入器の場合、該吸入器の個別チャンバが、それぞれ、一薬剤用量によって充填される例が知られる。このような吸入器の例が、特許文献4に記載される。一方、複数の散剤用量が、いわゆるブリスター(水泡)パックの空間またはチャンバの中にそれぞれ別々に配置されることも知られる。吸入器において用いられる、このようなブリスターパックの例が特許文献5に記載される。このようなブリスターパックで、同時にディスポーザブル吸入器の形状を取るものが、例えば、特許文献6に記載される。
【0005】
吸入デバイスであって、その中に、散剤の個別用量のためにそれぞれ別々の保存チャンバを含むブリスターパックを接合することができ、それらの個別用量は、該吸入デバイスによって順次排出することが可能な吸入デバイスが、例えば、特許文献7に記載される。
【0006】
複数の薬剤用量のための保存チャンバを備えた、吸入器の多種多様な例が、第一線の当該技術分野において記載される。交換可能な保存容器を備える例が、ドイツの特許文献8に、およびさらに別のものが、特許文献9に記載される。
【0007】
医学的有効物質の複数用量が、一つの共通保存チャンバに配置される吸入システムにおける重大な問題点は、個別吸入操作のための個別用量の割り当てである。この点に関して、多数の提案解決法が、例えば、特許文献10および特許文献11に記載されるように提示されている。さらに、複数の薬剤用量のために、保存チャンバから、個別散剤用量を投与するための、他の形の投与配置形式が、特許文献12、13、14、15、および16の外、特許文献17にも記載される。一体化した投与スライダーを有する、複数用量の散剤を収容するための相互交換可能なカートリッジは、特許文献18から知られる。
【0008】
散剤吸入における、もう一つの重大な問題点は、生薬粉末処方を粉砕して、肺に達することが可能な粒子にすることである。このようにして投与される活性物質は、該医学的活性物質の、正当な投与性を実現するために、さらに、例えば、保存性能を含んでもよい、散剤のさらに別の特性を設定するために、一般に、担体物質と共に混ぜ合わされる。
【0009】
気流に乗って肺に達することが可能な粒子の供給のために提供されることが意図される、散剤吸入器の設計構成を含む取り組みが、例えば、特許文献19、20、21、22、23、24、および25に記載される。この点に関し、気流を生み出すために補助エネルギーを用いる提案が、例えば、特許文献26から知られる。
【0010】
さらに、吸入のために粉末状薬剤を使用するに際し、活性物質を、あらかじめ準備された活性物質混合物の投与を通じて、併用されることが広く知られる。それに対応する提案が、例えば、サルメテロールとフルチカゾン、またはフォルモテロールとブデソニドの組み合わせに関して、特許文献27および28に見出される。
【0011】
特許文献29、および、20年以上に亘る、他の、多くの公刊物が、湿気に関して、特に、散剤吸入器では重大な問題が生ずることを記載する。この点で、湿気は、薬学的に活性な医用成分に不利な作用を及ぼす可能性があるだけでなく、特に、活性物質および補助物質の組み合わせにおける物理化学的パラメータの相互作用に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、その結果、塊が発生したり、または、吸入粉末がばらばらにされて、肺に達することが可能な粒子となることが阻害されたりする可能性がある。これらの状況は全て、投与性および散剤投与の有効性に関して問題を引き起こす可能性がある。
【0012】
これらの欠点を緩和するために、シールを用いて散剤吸入器に対する湿気の浸透を抑えるため、過去において既に様々な試みが為されている。さらに、吸入器に浸透した湿気の有害作用を抑えるために試みが為されているが、それは、湿気を吸収し、特に、保存チャンバにおける空気湿度レベルを低く維持するために乾燥剤を設けることによっている。複数用量散剤吸入器における密封投与穴、および、複数桁カウント機構は、特許文献30から知られる。しかしながら、投与はただ、円錐台形投与部材の回転運動と関連して記載されているにすぎないことに注意しなければならない。
【0013】
投与スライダーによる投与における吸入用粉末薬剤の湿度防止のための方策は、例えば、特許文献31、32、および33に記載される。
【0014】
最新技術
特に従来のエアロゾル吸入器では、エアロゾル容器からの用量分配のための作動、および、それを使用する患者による空気流の吸入が協調されなければならないことは欠点であると多くの場合考えられていた。このことは、肺への薬剤投与の信頼度を相当下げる。したがって、患者による作動と、吸入過程、すなわち用量投与とを切り離すために、たくさんの、様々な解決法が提案されている。吸入と、吸入器の配送部分の手動操作の同調の困難さは、例えば、特許文献34に論じられている。
【0015】
したがって、数多くの発明者たちが、既に数十年に亘って、吸入器における吸入駆動用量分配の問題に関わっている。例えば、特許文献35は、エアロゾル容器のバルブの自動作動を開示する。この点に関し、この文献に記載される発明は、センサーデバイスの外、電子コントロール、および、電気モーター手段によって駆動される動作機構に関する種々の提案を含む。その図面において、この特許明細書は、全て、電気モーターによる回転駆動運動に基づく動作機構であって、加圧下のエアロゾル容器のバルブの作動に必要な極小の転位運動への変換を実現する動作機構の、可能な設計構成に関する、一連の、ありとあらゆる提案を含む。
【0016】
一方、特許文献36からは、全ての外部駆動(トリガー)の必要性を回避するために、散剤の投与およびエアロゾル化を、吸入工程と、とにかく完全に分離するための提案が知られる。
【0017】
投与通路閉鎖部の、吸入駆動開閉運動が、特許文献37および38から知られる。これらの文献の開示によれば、投与通路のバネ負荷閉鎖部は、主要空気通路に配され、患者の吸引流によって作動するバルブフラップを介して動かされる。この閉鎖部は、バルブフラップの対応的偏向によって、投与通路の開口部から引き離され、バルブフラップが空気流によってもはや開放位置に保持されなくなると、バネ力によって開始位置に戻る。しかしながら、この配置は、まったくシール作用を持たないことが理解されよう。なぜなら、投与フラップは、単に投与通路を閉鎖することが意図されるだけで、散剤用の保存容器とは連通していないからである。実際の用量分配操作は、周知の形状の、個別の用量ブリスターを開放することによって実行される。明らかに、目的は、単に、散剤が、デバイスの中を前面から後方に向かって真っ直ぐに延びている空気通路の中に進入しないこと、おそらく、吸入器が傾斜位置にあるとき、外に漏れ出ないことを確実にするということである。
【0018】
特許文献39は、ユーザーがノブを押し下げることによって負荷されるバネである投与デバイスを開示しており、この投与デバイスは、患者が吸入ダクトにおいて吸い込みを行うと、フラップによって解放されて放出位置に移動する。
【0019】
加圧下のエアロゾル容器から用量を吸入駆動的に分配する方法は、例えば、Fujisawa Deutschland GmbHによる従来の使用から知られる。その会社によってJunik(登録商標)Autohaler(登録商標)の商標の下に販売されるエアロゾル吸入器の場合、レバーを用いて圧縮コイルバネを圧縮しバネを容器に押し当てる範囲で、エアロゾル容器は吸入操作前にユーザーによって変位させられる。エアロゾル容器は、空気フラップに接続される可動フレームによって保持される。空気フラップが、患者の吸入吸い込みによって、またはその他のやり方で機械的に偏向されると、フレームは軸回転して離れ、そのため、エアロゾル容器は、固定座席に保持される投与バルブに対して移動可能となり、そのため、投与バルブは開放して一用量を分配する。この点で、バネの変位は、投与バルブの閉鎖力に打ち克つのに十分である。エアロゾル容器は、レバーが、ユーザーによって軸回転されてその開始位置に再び戻されるまで、その最終位置に留まる。ユーザーにとってきわめて厄介なことは、投与操作の活性化時に、きわめて高度のバネ変位およびトリガー操作において移動するエアロゾル容器の比較的大きな質量のために生じる、比較的堅く騒がしいトリガー衝撃である。
【0020】
投与を目的とした、保護キャップの活性化によって活性化されるバネによるエアロゾル容器の、もう一つの、吸入駆動開放が、特許文献40から知られる(Norton Health Care Ltd., GB)。エアロゾル容器は、真空化、密閉中間チャンバによって、バネ力に対抗して待機位置に保持される。投与操作は、中間チャンバの排気、すなわち、バネの解放と、エアロゾル容器の下方移動を可能とする、空気流作動バルブを介して行われる。エアロゾル容器の投与バルブは緊密に保持されるので、容器の移動は、バルブの開放運動、すなわち、エアロゾル用量の分配をもたらす。さらに同時に、この特許出願は、各投与推進運動の度毎にステップ機構を通じて進められる表示リングによって投与回数を記載する。指定の回数の投与が服用されると、リングが覗き窓から消え、”empty”(「空」)マークを示すことができる。バネの変位は、キャップの軸回転運動によって実行され、カム円板および結合を通じてエアロゾル容器用の受容保持手段を作動し、そうすることによってバネを圧縮する。
【0021】
覗き窓の後において漸増的に動かされるリングによって形成されているディスプレイの、交換可能な散剤カートリッジ、吸入器遮断デバイスとの接続は、特許文献41から知られる。この遮断デバイスは、リング中の溝によって調節され、散剤投与のための動作機構に係合する。しかしながら、前述の特許文献と同様、このディスプレイは、保存容器に現在存在する用量を、用量的に正確に読み取るために可能な方法についてまったく提示しない。さらに、遮断デバイスの介入も、正確な投与関係において予測することはできない。
【0022】
投与要素が保護キャップを介して作動し、乾燥剤用容器も兼ねるプラグを有する、再充填可能な保存容器、および投与回数カウント機構を備えたMDPIが、原理的に、特許文献42から知られる。
【0023】
特許文献43は、保護キャップをさらに開放すると、充填された投与穴が閉鎖手段の中に進入し、該閉鎖手段によって閉鎖される吸入器を開示する。バルブプレートは、閉鎖手段を進めるために、その停止位置から解放することが可能であり、その場合、患者によって、定義された最小強度の吸入が印加された場合にのみ、調整的停止手段に対抗して、閉鎖手段の前進運動が可能とされ、かつ、投与穴は、散剤用量が吸入できるように閉鎖手段の前進運動によってのみ開放される。この配置は、きわめて特殊で、複雑で、高価であるが、吸入されない用量の損失を阻止もしないし、特に湿気に対して保護できるようにもされていない。吸入することなく患者が作動させた場合、割り当てられた薬剤用量は、保存手段の外にいつまでも留まり、その場合、周囲の大気の影響に曝される。
【0024】
特許文献44および45は、それぞれ、回転式投与ドラム、および、いずれも、バネを活性化し、空気体積を圧縮する、変位機構を有し、該変位機構が、取り外しできない保護キャップの軸回転運動によって作動する、吸入器を開示する。さらに、計量操作のための変位力が、回転式脚バネを介してのみ生成される、変異実施態様が記載されている。この脚バネは、吸入空気流によって起動され、吸入器の投与ドラムを、充填位置から投与位置へと駆動する。
【0025】
吸入器の投与スライダー上にバネを設けることは、特許文献46から知られる。この投与スライダーは、バネの力に対抗して、充填位置から投与位置へ、ユーザーが直接手で押し込むことが可能であり、そのため、この投与スライダーは解放されると、バネによって再び充填位置に押し戻される。
【0026】
しかしながら、知られる限り、分配のために待機する投与量も含めた薬剤補給が、湿気、およびその他の有害影響から、ユーザーとしての患者の操作行動とは独立に、保護されることを可能とすると考えられる配置を記載する文献はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、本発明の課題は、改善された使用特性を有する吸入デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、その課題は、散剤用吸入デバイスであって、複数の散剤用量を収容するための少なくとも一つの保存チャンバ、および、投与スライダー通路の中を少なくとも充填位置から投与位置へ向かう移動運動とほぼ一致して移動可能な少なくとも一つの投与スライダーを含む投与デバイスを含み、該吸入デバイスはさらに、投与スライダーが、その充填位置から投与位置へ、吸入駆動による自動的移動をするためのデバイス、および、投与スライダーを、充填位置に自動的に戻すための復帰デバイスを含むことを特徴とする、吸入デバイスによって解決される。
【0030】
従来技術において公知の吸入器の場合と異なり、本発明は初めて、実際の吸入が起こるまで、患者側のいずれの操作活動とも独立に、散剤用量が、特に、保存チャンバの湿気防止領域の中に保持されることを可能にする。したがって、散剤用量は、できるだけ長く周囲の湿気から保護され、対応する不利な影響を回避することが可能となる。さらに、用量分配のすぐ後に投与スライダーがその充填位置へ自動復帰するため、保存チャンバの気密な湿気防止が途絶は、確実に、できるだけ短時間のみ、すなわち、割り当てられた薬剤用量の投薬瞬間のみであるようにできる。そのため、薬剤の残留保存補給量は特に湿気から効果的に保護されるようになる。
【0031】
本発明による吸入器は、複数の散剤用量を持つ薬剤保存補給において、従来、個別用量ブリスターにおいてのみ可能であったものとほぼ同じ周囲の影響に対する保護を、初めて提供する。一方で、ブリスターパック用の既知の吸入器と比べ、より高度の経済性ばかりでなく、より優れた用量分配、および、より優れた投薬再現性を実現すること可能となった。さらに、本発明による吸入デバイスの構成は、有効な吸入を伴わずに吸入器を度々活性化することによる薬剤の過剰投与は不可能であるという、さらに別の利点を提供する。最後に、本発明による吸入デバイスでは、患者による作動によって、薬剤用量が、吸入デバイスの不注意な、または不器用な取り扱いのために、実際の吸入の前にデバイスから漏れ出したり、または、デバイスの不適切な場所に集まったりするようなことは起こり得ない。したがってさらに、本吸入器では、ユーザーによる吸入に対し思いがけず薬剤が不足投与された場合にも、それに対して特別の保護が与えられる。
【0032】
好ましくは、本発明による吸入デバイスは、少なくとも一つの投与スライダーを持つ投与スライダー通路、および、保存チャンバが、少なくとも投与スライダーの充填位置において、環境に対し密封されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の特に望ましい実施態様では、前記少なくとも一つの保存チャンバは、少なくとも一つの出口開口部であって、それを通じて散剤が、重力の影響下に放出されることが可能な出口開口部を持ち、投与スライダーは少なくとも一つの投与穴を持ち、ここで、前記投与穴は充填位置では出口開口部の下にあり、前記投与スライダーは、前記少なくとも一つの保存チャンバの出口開口部から出る散剤の流出方向に対してほぼ横方向に、その充填位置から投与位置に移動可能である。
【0034】
患者による吸入器の、実際の機械的変位とは独立して、散剤を呼吸駆動的に投与して適用するために、好ましくは、本吸入器はさらに、吸入開口部を有するマウスピース、および、空気通路であって、該マウスピースと連通し、患者が、吸入のためにそれを通じて空気流を吸い込むことが可能な空気通路を含み、投与スライダーの投与位置における投与穴は、該空気通路の中にある。
【0035】
この空気通路の中に配置されることが望ましいものとして、空気通路において、指定の最小量の空気流を超えた時に信号を発するための、トリガーデバイスがある。このように、指定の最小量の空気流を超えた時に、散剤の投与を駆動することができる。
【0036】
特に有利な特性として、本吸入デバイスは、空気通路の中に、該空気通路を実質的に閉鎖するためにバルブデバイスを有し、該バルブデバイスは、空気通路において、指定の最小空気流量が超過したことが発信されると、該空気通路の流通断面の実質的な部分を吸入駆動的に開放するためのトリガーデバイスに、動作可能的に接続され、特に、バルブデバイスは、投与スライダーの、吸入駆動自動移動用デバイスの一部となる。この配置のお蔭で、患者が吸入すると、先ず、吸い込み空気流が、投与通路断面の吸入駆動性開放で、既に待機姿勢にある、吸い込み通路の中に形成され、このようにして、確実に投与スライダーの一回分の投与穴を完全に空にすることができる。
【0037】
ある好ましい実施態様では、トリガーまたはバルブデバイスは、軸回転的に取りつけられて、空気通路に配置された、直接または間接にバネ負荷されるフラップを含み、該フラップ領域における空気通路は、弱った患者が、低い流速でしか吸入できない場合でも、確実に、信頼性の高い再現可能なトリガー駆動をするために、吸入開口に対して相対的に大きな断面積を持つ。
【0038】
特に有利なのは、フラップが、回転軸の周囲で回転可能であり、かつ、回転軸が、フラップの重心の中、または重心近くに延びていることである。このため、フラップは、回転軸の周囲でバランスされることになり、したがって、例えば、デバイスが落されて、デバイスに対して衝撃が加えられる場合でも、回転軸の周囲には、フラップの質量によって誘起されるモーメントは起こらず、したがって、投与スライダーの、吸入駆動による自動的移動の不適切なトリガー駆動は阻止される。
【0039】
本発明のもう一つの有利な実施態様では、フラップは、投与スライダーの、吸入駆動自動移動用デバイスに動作可能的に接続されている押し出しロッドと結合し、そのため、フラップがその停止位置にある場合は、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスは、押し出しロッドによって変位位置に保持され、フラップが、少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向されると、押し出しロッドは、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスを解放する。
【0040】
上記のフラップと押し出しロッドの間の結合は、例えば、フラップ上の歯車セグメントと、ラック形状を持つ、押し出しロッド上の一部によって形成することが可能である。押し出しロッドという用語は、本出願の主旨では、ロッド以外の他の形状、例えば、曲げられたフォーク形状を含むと理解されてもよい。
【0041】
さらに、フラップが軸の周囲で回転可能であり、かつ、該軸の周囲をフラップと一緒に回転することが可能で、かつ、バネ負荷固定要素を保持する爪を持ち、該爪の、該固定要素に対する接触面は、スライド性または転回性ペア構成によって形成されていると有利である可能性がある。この実施態様では、該固定要素は、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスに対し動作可能的に接続され、そのため、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスは、フラップがその停止位置にある場合は、変位位置に保持され、固定要素は、フラップが、少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向されると、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスを解放する。
【0042】
有利に短い構造を持つ別の実施態様では、トリガーデバイスは、空気通路に接続されるピストンを有し、ピストン領域における空気通路は、吸入開口に対して相対的に大きい断面を持ち、ここに、ピストンは、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスに対し動作可能的に接続され、そのため、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスは、ピストンがその停止位置にある場合は、押し出しロッドによって変位位置に保持され、そして、この吸入デバイスのユーザーによって起動される、空気通路における指定の最小量の空気流によって、ピストンが少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向される場合は、押し出しロッドは、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスを解放する。
【0043】
本発明の特に好ましい実施態様では、本発明による吸入デバイスは、その充填位置から投与位置へ移る、投与スライダーの吸入駆動自動移動用デバイスが、変位バネの力に抗して待機位置に進行させることができ、かつ少なくとも1つのスライドガイドを有する駆動要素、および、その充填位置において投与スライダーに動作可能的に接続され、トリガーデバイスによってその待機位置に解放可能的に停止される、エントレインメント部分またはカム部分を有する。ここで、前記スライドガイド、前記エントレインメント部分またはカム部分は、待機位置から停止位置への移動時に、駆動要素が、投与スライダーを、一つ以上のエントレインメント部分を介して、少なくともその投与位置に進入するように設計されていることを特徴とする。
【0044】
本発明の特に好ましい実施態様では、トリガーデバイスは、駆動要素のステップ停止要素と相互作用を持つ係合部分を有し、該ステップ停止要素は、第1ステップと第2ステップを有し、好ましくは、投与スライドが、それぞれ、駆動要素のエントレインメント部分によって投与位置に保持され、かつ、投与スライドが、駆動要素の中間位置に保持される場合、第1ステップでは、駆動要素は、トリガーデバイスの係合部分が第1ステップと相互作用を持つ時、中間位置に停止させられ、第2ステップでは、駆動要素は、トリガーデバイスの係合部分が第2ステップと相互作用を持つ時、その停止位置に保持されることを特徴とする。この実施態様は、患者に対し散剤の正確な投与を実行するのに特に好適である。なぜなら、この実施態様では、一旦、患者が、トリガー設計を活性化するのに十分な吸入気流を確定すると、保存チャンバから散剤を届けることが可能となるので、散剤が、不必要に長時間大気に暴露されることが阻止されるだけでなく、吸入気流が指定閾値を超えている限り、散剤が、吸入空気流に曝されるからである。そのため、吸入時、確実に、存在する散剤の全用量の排出ができ、ほとんどバラツキなく、可能な限りの最善の肺沈着が実現され、そのため、処方用量の正確な再現が要求される用途に対しても、吸入による薬剤投与が可能となる。
【0045】
好ましくは、本吸入デバイスはさらに、投与スライダーを、充填位置に自動的に戻すための復帰デバイスであって、復帰バネを含むデバイスを含む。この点で、投与スライダーをその充填位置に戻す復帰は、駆動要素の慣性には依存せず、かつ、吸入デバイスの位置にも実質的に依存しない。投与スライダーは、好ましくは、復帰バネによって接続され、それによって充填位置に戻されるが、その際、スライドガイド、エントレインメント部分またはカム部分は、駆動要素が停止位置にある時、投与スライダーは、復帰バネの力で充填位置に戻ることができるように設計されている。これによって、成分耐性とは独立に、保存される薬剤補給に対する、確実で、信頼度の高い、シール完全性が確保される。
【0046】
シール完全性は、その停止位置にある駆動要素が、投与スライダーとの係合から外れると、特に高信頼度で維持される。
【0047】
本発明のある有利な実施態様では、吸入デバイスは、駆動要素が、直線的に移動が可能なスライドガイドキャリヤーによって形成されていることを特徴とする。
【0048】
投与スライダーを充填位置に自動的に戻すための復帰デバイスは、さらに別のスライドガイド部分を含むことが可能である。このような配置から、前進移動の場合と同様の、積極的ガイド効果が得られる。このような配置では、例えば、デバイスが地面に落下しても、シールの一過性開放を阻止することが可能である。
【0049】
スライドガイドまたはカム部分が直線的構成を持つと、特に単純となる。スライドガイドまたはカム部分が、曲線構成、特に、離心的曲線構成を持つと、例えば、駆動バネと投与スライダーとの間で、作動移動に依存して動力伝達が順応しうる。
【0050】
好ましくは、弾性要素が、投与移動に必要なエネルギーの保存のために使用される。
【0051】
スライドガイドまたはカム部分が螺旋構成を有する場合、捩じれ式または回転式脚バネによる、特にコンパクトな配置が実現できる。
【0052】
本発明の特に好ましい実施態様では、駆動要素は、第1回転軸の周囲で軸回転することが可能な駆動ロッカーによって形成されている。この配置は、製造耐性から実質的に独立した、特に信頼性の高い操作方式の実現を可能とし、例えば、吸入デバイスを落下させた後でも、操作妨害の危険度は低下する。
【0053】
特に、本発明による吸入デバイスが単純で、安価な構成を持つようにという観点からすると、変位バネおよび/または復帰バネは、コイルバネ、螺旋バネ、捩じれバネ、弾性的に変形可能な成形体、および圧縮空気保存手段から成るバネ群から選ばれるバネであると有利である。
【0054】
スライドガイドキャリヤーの運動力学の観点から特に望ましい応用は、変位バネが非直線特徴を持つ場合に実現が可能である。
【0055】
本発明による吸入デバイスには、スライドガイドキャリヤーに動作可能的に接続され、操作ハンドルを持つ回転ノブが設けられると、ユーザーが回転ノブによって、変位バネの力に抗して、スライドガイドキャリヤーをその待機位置に移動させることができるので、不慮の作動から特に十分に保護される。通常の条件下、例えば、本発明による吸入デバイスが見出される上着のポケットの中に手を突っ込んだ時などに、回転性の作動動作が、ランダムに、思いがけず起こることはなく、デバイスの思いがけない変位は回避される。
【0056】
本発明による吸入デバイスは、両手の変性疾患、例えば、重大なリューマチ、通風、または関節症に罹っている患者でも、スライドガイドキャリヤーに動作可能的に接続される作動ボタンがあるならば、該スライドガイドキャリヤーは、ユーザーによる作動ボタンによって、変位バネの力に抗してその待機位置に移動させることが可能となるので、高い信頼度で操作することができる。
【0057】
特に好ましく、操作的に信頼性が高く、不正な操作においても安全な、本発明による吸入デバイスの実施態様は、閉鎖部、すなわち、マウスピースの保護キャップによって特徴づけられる。ここで、閉鎖キャップは、該吸入デバイスに紛失しないように接続され、マウスピースを蔽う閉鎖位置から、マウスピースが患者にとって使用可能となる操作位置へ移動が可能である。このように、吸入デバイスは、あらかじめそれを活性化することなしに使用することはできない。
【0058】
閉鎖キャップを開閉することによる、スライドガイドキャリヤーの変位デバイスの活性化は、閉鎖キャップまたはスライドガイドキャリヤーが、一つ以上のエントレインメント部分を持ち、かつ、閉鎖キャップが、閉鎖位置から操作位置へ、実質的に直線的に、または回転的に、または組み合わせ運動によって移動が可能である場合、実行することができる。
【0059】
ある実施態様では、閉鎖キャップまたはスライドガイドキャリヤーは、エントレインメント部分(単数または複数)に対して相補的なスライドガイドを持ち、そのため、該スライドガイドキャリヤーは、閉鎖キャップが閉鎖位置から抜け出して操作位置へ進入する運動によって、変位バネの力に抗して、その停止位置から待機位置へ移動可能である。
【0060】
本発明による吸入デバイスは、閉鎖キャップがスライドガイドの待機位置において閉鎖位置にも移動可能であるように相補的スライドガイドが、エントレインメント部分(単数または複数)に対し軌道を持っていると、実際の使用には特に好適である。これによって、たとえ、何かの理由で、デバイスが、無事に吸入されることなく再び閉鎖され、閉鎖キャップが後で再び開放された場合でも、問題ない機能性が確保される。
【0061】
本発明による吸入デバイスの、特に落下時における機能不全に対する、特に高レベルの安全策は、閉鎖キャップがその閉鎖位置にある時、スライドガイドキャリヤーが、トリガーデバイスとは独立して閉鎖キャップのエントレインメント部分によってその待機位置に固定されるように軌道がある場合に、実現される。
【0062】
その点において、相補的スライドガイドが、ガイドに対し、自己ロックが起こらない角度α、特に15°から45°の角度で傾くこと、特に、相補的スライドガイドが、非直線に延長することが特に望ましい。
【0063】
スライドガイドキャリヤーの変位バネを変位させるため軸回転運動を利用する場合、閉鎖キャップが、少なくとも一つのエントレインメント部分を有し、閉鎖キャップが、ガイドにそって、閉鎖位置から、実質的に直線的に中間位置に移動可能であり、かつ、該中間位置から操作位置に軸回転可能であると有利である。その場合、吸入デバイスは、スライドガイドキャリヤーに動作可能的に接続される離心円板を有し、そのため、離心円板は、閉鎖キャップの直線運動時、該閉鎖キャップのエントレインメント部分によって、固定軸の周囲で回転して、そのため、離心円板を介した変位スプリングの力に抗する閉鎖位置から中間位置への閉鎖キャップの移動により、スライドガイドキャリヤーは、その停止位置からその待機位置へ移動可能になる。
【0064】
それとは別に、閉鎖キャップが加圧レバーを有し、閉鎖キャップが、閉鎖位置から操作位置へ軸回転可能であっても有利となる場合がある。この場合、閉鎖キャップの加圧レバーは、軸の周囲で回転可能であり、そのため、スライドガイドキャリヤーは、変位バネの力に対抗する加圧レバーによって、閉鎖位置から操作位置への閉鎖キャップの動きによって、その停止位置からその待機位置へ移動することが可能となる。
【0065】
ユーザーにとって操作が特に簡単な、ある実施態様では、投与機構の変位は、保護キャップの純粋な回転的運動によって実現する。
【0066】
本発明の、別の、特に好ましく、有利な実施態様では、閉鎖キャップは、少なくとも一つのエントレインメント部分と、駆動ロッカーに動作可能的に接続され、第2回転軸の周囲で回転することが可能な、動力伝達ロッカーとを持ち、閉鎖キャップは、第3軸の周囲で、閉鎖位置から操作位置へ軸回転可能とされて、その際、閉鎖キャップの少なくとも一つのエントレインメント部分は、動力伝達ロッカーの少なくとも一つの操作末端と協調し、そのため、変位バネの力に抗する動力伝達ロッカーによる、閉鎖キャップの、第3軸周囲の閉鎖位置から操作位置への移動によって、駆動ロッカーは、その停止位置からその待機位置へ移動可能となる。
【0067】
これによって、ひどいストレス下にある患者でも、特別な取り扱い操作の導入を要することなく、高信頼度の、確実な吸入が可能となる。そのため、本発明による吸入デバイスは、重篤な急性喘息発作に悩む患者、および、例外的な心理的、物理的条件下においても高い信頼度で薬剤を吸入しなければならない患者にとって特に適している。
【0068】
駆動ロッカーおよび動力伝達ロッカーは、それらの回転が、第1および第2回転軸の周囲に対向関係として起こるように互いに係合することが特に望ましい。この配置によって、薬剤分配の起動に関与するモーメント同士は事実上相殺されるので、患者は、衝撃および対応ノイズと感受される復帰力によっては、ごく僅の悪影響しか受けない。そのため、吸入デバイスによる薬剤の受容は顕著に改善される。これは、第1回転軸周囲における駆動ロッカーの慣性モーメント、および、第2回転軸周囲における動力伝達ロッカーの慣性モーメントがほぼ等しい場合、特にそうである。
【0069】
特に有利な構成では、本発明による吸入デバイスは、動力伝達ロッカーの少なくとも一つの操作末端が、閉鎖キャップが第3軸の周囲で閉鎖位置から操作位置へ移る際閉鎖キャップの少なくとも一つのエントレインメント部分とポジティブにロックする関係に接続されるように、この少なくとも一つのエントレインメント部分によって印加されるモーメントを動力伝達ロッカーに伝えるように、かつ、閉鎖キャップが操作位置から閉鎖位置へ移る際エントレインメント部分を弾性的に回避するように構成されることを特徴とする。このために、たとえ薬剤用量が摂取されない場合でも、閉鎖キャップは、再び、マウスピースの上を移動して保護的位置を取ることが可能である。
【0070】
操作的に特に信頼度の高い構成では、本発明による吸入デバイスは、動力伝達ロッカーが、吸入デバイスの両長軸側に、第2回転軸の周囲で回転可能に配置され、少なくとも一つのヨークによって互いに接続される二つのロッカー要素を有することを特徴とする。この場合、押し出しロッドは、フラップが停止位置にある時は、ヨークと係合することによって、動力伝達ロッカーを、駆動ロッカーの変位位置に保持し、フラップが、少なくとも指定量だけその停止位置から偏向され、そのため、動力伝達ロッカーと駆動ロッカーとが、変位バネによって、それぞれの待機位置から停止位置へと移動可能になると、押し出しロッドは、ヨークの移動運動を可能とする。
【0071】
特に不慮の不足投与から保護する、本発明による吸入デバイスの実施態様では、さらに、分配済み薬剤用量数を検出するためのカウントデバイスが供給される。この場合、カウントデバイスは、各投与操作を個別に検出し、カウントデバイスは、指定の数の分配用量が達成されると、吸入デバイスを遮断するロックデバイスに接続され、そのため、これ以上の服用ができなくなる、特に、閉鎖キャップがもはや閉鎖位置に移動することができなくなる。これにより、患者が、もはや薬剤の十分な保存補給を持たない吸入デバイスから、誤って吸入しようとすることを阻止できる。このようにして、場合によって生命を脅かす危険性のある不適切な投与を、きわめて実質的に回避することが可能となる。本発明の別の実施態様として、カウントデバイスが、トリガーデバイスの係合部分に接続されて駆動要素のステップ停止要素が開口または陥凹を持ち、該係合部分が該開口または陥凹に係合するとき、駆動要素が、変位バネによって駆動されて遮断位置に移動すると、同じ利点が得られる。より好ましくは、駆動要素は、その遮断位置において、閉鎖キャップの通路に遮断的に係合し、そのため、閉鎖キャップは、もはや閉鎖位置に移動することが不可能とされる。カウントデバイスは、用量を正確に表わすディスプレイを含むと有利である。
【0072】
その点で、本発明による吸入デバイスは、ロックデバイスがバネ負荷ロック要素を持つと、特に高い信頼性をもって動作する。すなわち、該ロック要素は、ある指定の用量数において開放される溝に係合し、その場合、作動要素の機構に遮断的に係合するので、吸入器のこれ以上の使用が阻止され、特に、閉鎖キャップがもはや閉鎖位置に移動できなくなる。
【0073】
ロックデバイスが、作動要素の前記機構に遮断的に係合すると表示される信号プレートに結合すると、あるいは、作動要素が視覚的に明瞭に遮断されると、視覚的に障害を持つ患者に対しても、薬剤の保存補給の完全消費に関する特に明瞭な信号発信が得られる。
【0074】
特に好ましくは、ロックデバイスは、バネ負荷遮断ロッドを有し、該遮断ロッドは、指定の数の分配用量が達成されると停止位置から遮断位置に移動可能となり、その遮断位置において、閉鎖キャップの通路に遮断的に係合し、そのため、閉鎖キャップは、もはや閉鎖位置に移動できなくなる。この係合によって、特に明瞭な信号発信動作を達成でき、さらに、吸入デバイスのこれ以上の(不毛な)使用、すなわち、望ましくない、不足用量の投与が阻止される。
【0075】
本発明による吸入デバイスの保存チャンバに配される散剤に対する効率的な湿気保護を実現するには、少なくとも一つの保存チャンバは、散剤を重力の影響下に放出できる出口開口、および、出口開口と実質的に対向関係に配置される充填開口を有し、充填開口が密封されていると有利である。
【0076】
この点で、成分耐性と独立した、最適な密封動作は、充填開口が、アルミニウムブリスター・フィルムによって閉鎖され、かつ、LDPE層によって密封されていると実現される。
【0077】
例えば、特に、特別調製生薬調剤の場合における、保存チャンバ充填のための、一連の短い操作、または個別操作では、手動充填に関連して、充填開口が、充填開口を取り巻く壁にねじ込まれるカバーによって、かつ、カバーと壁の間に填めこまれるシールによって、保存チャンバの壁に対して密封されると望ましい。
【0078】
自動化にも好適であり、その後の操作からもより十分に保護される、本発明による吸入デバイスの実施態様は、充填開口が、該充填開口を取り巻く、保存チャンバの壁に対し注入接続によって接続されるカバーによって閉鎖されることを特徴とする。この場合、カバーおよび/または壁の上の、弾性シールまたは降伏性シールリブが、カバーと壁の間に密封的に固定される。
【0079】
湿気に対する、散剤の特に優れた保護は、保存チャンバが高レベルの水蒸気拡散耐性を持つ材料を含む壁によって少なくとも部分的に包囲されていると実現される。
【0080】
薬剤に対し特に優れた長期的湿気保護を与える、特に有利な実施態様では、投与スライダー通路は、その環境に向かう一端に、開口を有し、該開口は、その中に投与スライダーの一部が通過することが可能であり、シールのための接触面が、その周囲に設けられ、ここに、投与スライダーは、充填位置から投与位置へ移る移動方向に対し、ほぼ横断関係にある平面にシール表面を有する。
【0081】
この点で、投与スライダーおよび/または接触面に弾性シールが設けられていることが特に望ましい。この点で、弾性シールが、投与スライダー通路および/または投与スライダーの上に注入によって形成されていると、組み立て間違いを軽減することができる。
【0082】
それとは別に、密封完全性は、投与スライダー通路および/または投与スライダー上のシールリブで、投与スライダーを投与スライダー通路の中に保持する変位力によって密封性に変形可能なリブによって形成できる。
【0083】
薬剤の乾燥維持は、もしもカプセル封入乾燥剤を保存チャンバに配置したならば、吸入デバイスを振って、散剤に機械的に負荷をかけたり、または圧縮したりすることなく、乾燥剤本体、または乾燥剤カプセルを、カートリッジ本体に固定的に押しつけるか、または引っかけることで改善される。
【0084】
本発明による吸入デバイスは、該吸入デバイスがさらに、吸入可および/または薬剤の正常分配を知らせるためのディスプレイを有すると、特によく支持される。
【0085】
肺に達することが可能な粒子の投与(このような投与は、たとえごくたまにしかユーザーによって使用されず、洗浄されない場合でも、吸入デバイスの、意図される全使用期間を通じて、信頼性が高く、十分な衛生状態を達成する)は、マウスピースおよび投与通路と流入的に連通する、散剤中の凝集物などを破砕するための破砕デバイスによって実現することできる。この場合、マウスピースおよび破砕デバイスは、ユーザーによる洗浄のために取り外し可能であり、かつ、マウスピースと破砕デバイスは、一緒にのみ取り外しまたは接合できるように適合されるか、または、一体性を持つようにされる。
【0086】
本発明の吸入デバイスは、前記少なくとも一つの保存チャンバに、カートリッジ把持デバイスおよび蓋が設けられると、いくつかの医学的応用において特に有用となる。この場合、蓋は、吸入デバイスの倒置位置において、保存チャンバの散剤内容物を受容することが可能な形状を持つ。これによって、試験を含めた、吸入デバイスの製造時において、カートリッジホールダーおよび投与スライダーの使用前取り付けが可能となる。蓋は、上蓋開放カートリッジとして使用され、薬剤製造ラインにおいて適切量の散剤によって充填され、逆様に把持されたまま吸入デバイスに直接挿入されてもよい。好ましくは、蓋は、スナップ接続器によってカートリッジホールダーに密封的に固定される。
【0087】
本発明による吸入デバイスの特に有用な実施態様は、カードリッジホールダーが、それぞれが蓋によって覆われている二つの保存チャンバを含むことを特徴とする。この場合、カートリッジホールダーデバイスは、ツイン投与スライダーを含む。これによって、二つの異なる薬剤貯留槽からの、例えば、変性を避けるために一緒に保存してはならない薬剤同士の組み合わせのための、簡単で正確な投与が可能となる。
【0088】
[図面の簡単な説明]
本発明、その局面、利点、および使用が、下記に、図面に描かれる例を借りて実施態様に基づいてさらに詳細に説明される。下記に、図面に描かれ、説明される実施態様は、よりよき理解のために役立てることだけを意図するものであり、限定的に解釈してはならない。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、全体として参照番号1によって表示される、本発明による吸入デバイスの実施態様の斜視図を示す。このような吸入デバイス1はまた、吸入器とも呼ばれる。本発明による吸入デバイス1は、粉末状薬剤の、多数の個別用量の分配のために提供される。したがって、この種の特殊な吸入デバイスはまた、散剤吸入器とも呼ばれ、しばしばMDPI(multi−dose powder inhaler、多数用量散剤吸入器)と省略される。この吸入器1は、ハウジング2を含む。ハウジング2は、望ましくは、吸入器1の中心軸にそって分割線を持つ、二つの部分を含む。これは、ハウジング部分が、プラスチック射出成型によって簡単に製造することができることを意味し、かつ、このような配置であると、散剤吸入器1は簡単に組み立てることができることが見出されている。さらに、ハウジング2は、別体のハウジングカバーを含み、そのため、その後、別体の散剤カートリッジ3を、組み立てられた吸入器に挿入することできる。次に、ハウジングカバーは、例えば、スナップを利かして、もはや外部から解除できなくさせる、スナップ接続によってハウジング2を閉鎖することができる。さらに、ハウジングカバーは、散剤カートリッジ3の交換が望まれる場合には、取り外し可能とされてもよい。吸入器1はさらに、本発明にしたがってハウジング2に脱落不能的に接続される閉鎖キャップ4を含む。この閉鎖キャップ4は、適切なユーザーの関与によって、軸7の周囲で軸回転して、その閉鎖位置から動作位置へ移動することができる。別の実施態様では(
図12および13)、閉鎖キャップ4は、その下に配置されるマウスピース5を露出するために、好ましくは下方に軸回転することによって、吸入器の長軸方向に、ある距離、ハウジング2から引き離すことが可能である。吸入開口6は、マウスピース5において見出される。
【0091】
患者は、その両唇でマウスピース5を包み、吸入開口6を通じて息を吸い込むことによって、粉末状の薬剤を吸入することが可能である。吸入後、望ましくは、閉鎖キャップは軸回転して、操作位置(
図2)から閉鎖位置(
図1)に再び戻り、場合によっては、押し込まれて再びマウスピース5全体をカバーする。このように、吸入器1の内部は十分に保護され、好ましくは密封閉鎖されるので、塵は、吸入器の内部に浸透することができない。呼吸気は、通常、患者によって吸入器から吸い出され、したがって、吸入器の内部に可動状態で配される粒子は、気道に進入するので、吸入器1の内部を清潔に保つことはきわめて重要である。さらに、吸入器1の内部への水滴の進入は、例えば、患者が、雨天の際、戸外で吸入器を操作している場合でも、密封閉鎖キャップ4によって実質的に阻止することができる。気道疾患の薬剤治療の必要性が頻繁であるのは、正にこのような天候状態の下においてである。
【0092】
さらに、吸入器1のハウジング2には、マウスピース5および閉鎖キャップ4がその閉鎖位置に配置される側に−これを、以後、吸入器1の前側8と呼ぶことにする−カウントデバイス11のディスプレイ10用の透明窓9が配置される。このおかげで、吸入器1を使用する患者は、簡単に読み取りが可能となるように表示されている、吸入器に保存される薬剤補給の中から既に分配された薬剤用量の正確な投与数、または、好ましくは、薬剤補給からまだ利用が可能な薬剤用量の正確な投与数を、簡単に読み取ることができる。このようにして、患者は、例えば、残余の用量数が、休暇旅行の期間のためにはもはや十分ではない場合、よい時期に交換するようにする態勢となる。経験から示されるのは、このような散剤吸入器1は、気道の慢性疾患、または、薬剤を気道を介して投与することが可能で、薬剤の、高頻度の、規則的吸入が患者にとって必須である、その他の慢性疾患に関連して、特に使用されることである。したがって、吸入器1を介して与えられる、薬剤用量に関する高信頼性は、このような患者にとっては絶対必要条件である。
【0093】
さらに、吸入器1の前側8に表示されるのは、これも透明窓9を通じて見ることができる使用可ディスプレイ12である。これは、吸入器1が、薬剤用量分配の準備が整っていることを示し、かつ、薬剤用量が、吸入器1から成功裡に投薬されたことを表示するためのものである。薬剤投与の実行可または成功投与は、色彩変化によって発信されることが好ましく、その場合、緑表示は、投与操作可を表示するのに好適であることが実証済みであり、赤表示への色彩変化は、成功投与を表示するのに好適であることが実証されている。同時に、赤表示は、吸入器1を、先ず、次回の吸入に備えて準備しなければならないことを発信する。本発明による吸入器1の場合、それは特に好ましくは、閉鎖キャップ4を閉鎖位置から操作位置へと作動することによって実行される。
【0094】
通常の開口ではなく、透明窓9を設けることによって、汚染物および不純物および湿気の進入に対する特定保護が得られる。ディスプレイ10および使用可ディスプレイ12のための窓9ばかりでなく、操作位置に対し、好ましくは下方に軸回転される閉鎖キャップ4の配置も、患者が、吸入時、吸入器1を適正に保持することを促すので、そのため、散剤の、信頼性の高い投与および分配が確保される。この点で、好ましくは、寸法設計は、吸入器が逆さまに保持され、患者が、マウスピース5の周囲で両唇を閉じようとした場合、操作位置の閉鎖キャップ4が、患者の鼻に衝突するように選ばれる。
【0095】
それとは別に、ディスプレイ10および/または使用可ディスプレイ12は、閉鎖位置における閉鎖キャップ4によってそれら全体がカバーされるように配置されていることもできる。こうすることによって、透明な窓要素を追加しなくても、汚染物および水滴の侵入に対ししっかりした保護を実現することが可能である。
【0096】
その内部に、吸入器1は、散剤の、複数の用量を収容するための保存チャンバ13を含む。望ましくは、この保存チャンバ13は、カートリッジ3の中に形成されていてもよい。保存チャンバ13を、別体カートリッジ3中に置く配置は、本発明による吸入器1を、それを散剤で充填することとは独立に、製造し、組み立てることができること、したがって、製造および組み立て工程は、製薬的清潔条件下に実行する必要がないという利点を有する。別体カートリッジ3は、適切な清潔条件下に充填し、その後、吸入器1に接合することができる。さらに、この概念は、カートリッジ3を除く、吸入器の製造および組み立てを、製造現場、または対応薬剤の充填現場で実行しなければならないということを意味することなく、種々の異なる散剤を有する吸入器1を、提供することを可能とする。さらに、この概念は、例えば、吸入器1を、カートリッジ3無しに保存すること、場合によってはさらに、カートリッジ3を個別に、それぞれの生薬調剤で満たしておいて、保存補給の中から取り出した吸入器1に接合させ、患者が利用できるようにすることを可能とする。
【0097】
図3に示す、保存チャンバ13を備える散剤カートリッジ3は、散剤が、それを通じて重力の影響下に放出されることが可能な、出口開口14を含む。さらに、投与スライダー15を含む投与デバイスが、望ましくは、カートリッジ3の中に一体的に組み込まれる。この投与スライダー15は、投与スライダー通路16において、充填位置(例えば、
図17において見て取れるように)を占めることができ、該充填位置では、投与穴17が出口開口14の下になるので、保存チャンバ13中の散剤18は、重量の影響下に投与穴17の中に進入することができる。さらに、投与スライダー15は、投与スライダー通路16の中を、投与位置(
図3に示す)に移動可能であり、該投与位置では、出口開口14は、投与スライダー15によって閉鎖され、投与穴17は、投与スライダー通路16から、散剤を、該散剤が投与穴17から気流によって捕捉されることができる程度に放出する。投与スライダー15の、充填位置から投与位置へ、投与位置から充填位置への移動は、投与スライダー通路16に沿う移動運動によって実行される。投与スライダー通路16は、閉鎖底部を有し、これは、同時に、投与スライダー15の充填位置において投与穴17を充填する操作の際、投与穴17の底部を形成する。
【0098】
さらに、カートリッジ3の保存チャンバ13は、望ましくは、出口開口14とは対向関係に配置される、充填開口19を有する。この開口19は、保存チャンバ13の中に、必要用量数の散剤を導入する役目を果たす。充填開口19は、散剤の純度を確保し、外来物質の侵入を防ぐために、充填操作後は密封される。望ましくは、充填開口19は、アルミニウムブリスター層20によって閉鎖され、後者は、低密度ポリエチレンを含むLDPE層21によって密封される(
図4)。開口の、この閉鎖方式は、特に十分に自動的に実行することができ、さらに、この方式からは、充填開口19の閉鎖が、水蒸気を実質的に通さないという大きな利点が得られる。
【0099】
実際には、保存チャンバ13における薬剤補給は、湿気の進入からできるだけ保護することが特に重要であることが見出されている。それにはいくつかの理由がある。一方では、薬剤は、水分との相互作用によって変化する可能性があり、特に、その医学的効力が損なわれる可能性があり、他方では、散剤における水分の吸収は容易に塊形成をもたらし、そのため、服用薬剤の、信頼性の高い、再現可能な投与量を実現することが困難になる。さらに、このような吸入器1は、絶えず薬剤の投与を要求するわけではないけれども投与時には適切な薬剤がすぐに準備されなければならない疾患のために使用されることがよくある。特に、気道のアレルギー疾患は、この点に関して考慮しなければならない。このことは、保存補給の中の薬剤18は、安定でなければならないこと、たとえ、患者が、吸入器1を、毎日、自分の上着のポケットに携帯していても、長期に亘って高い信頼度の下に投与可能でなければならないことを意味する。本発明による、充填開口19のための閉鎖は、湿気の進入に対して、薬剤の保存補給を長期に保護する。
【0100】
既述したように、特に、薬剤の個別的調製、および適切なカートリッジ3への充填のために、充填開口19はさらに、充填操作後、ネジ込みカバー22によって閉鎖すること、したがって、充填開口19を取り巻くカートリッジ3の壁23には、対応するネジ溝(
図5)が設けられることが望ましい。望ましくは、カバー22と壁23の間には、例えば、適切なTPEから製造できるシール24がはめこまれる。しかしながら、弾性シール24の代わりに、カバー22または壁23の上にシール用リブ25(
図6参照)を設けることも可能である。該リブは、カバー22がはめこまれると、カバー22と壁23の間に密封的に締めつけられ、その際、弾性的または可塑的に変形される。ネジ込みカバー22によるこの配置のおかげで、短い一連のカートリッジ3を、ある任意の薬剤によって、手で充填し、閉鎖することも可能である。
【0101】
しかしながら、自動充填のためには、ネジ込みカバー22の代わりにカバー26を設けて、それを、例えば、超音波溶接によって壁23に接合するか、または所定の場所に糊付けすることが望ましい場合もある(
図6)。
【0102】
しかしながら、技術的に大規模に実行される充填過程では、カバーは、スナップカバー27の形状を取ること、および、それぞれ、壁23およびスナップカバー27に、ホック配置28および溝29を設け、そうすることによって、拡大的噛み合わせ係合またはスナップ接続を形成することが望ましい場合がある(
図7)。好ましくは、溝29およびホック配置28は、スナップカバー27の接合後、できるだけ、道具をもってしても接触することができないように配置され、そのため、接合後、スナップカバー27は、カートリッジを破壊しないでは取り外すことができないようになっている。このようなラッチ接続の場合にも、接合時に密封的に締めつけられる弾性シール24または密封リブ25を、スナップカバー27と壁23の間に設けることが望ましい。
【0103】
既述のように、目標は、周囲の雰囲気からの湿気の進入に対し、カートリッジ3の、高レベルの、密封完全性を実現することであるので、壁23が、特に高レベルの水蒸気拡散耐性を与える材料を含むことが望ましい。しかしながら、好ましくは、その材料は、適切で安価な生産加工法、例えば、射出成形による加工に対してもやはり適切でなければならない。いくつかの適切な材料が、例えば、US 2003 013 64 05Aに記載されている。なお、この文献に対し本明細書において参照が向けられる。
【0104】
さらに、カートリッジ3の保存チャンバ13における薬剤18の包括的湿気保護のために、本発明によれば、投与スライダー通路16は、その開放端に、それを通じて投与スライダー15が投与穴17から放出することができる対応開口30を有し、その際、該開口30の周囲には、シール32のための接触表面31が設けられ、投与スライダー15はさらに、充填位置から投与位置への移動方向に対しほぼ横断関係にある平面に配置される密封表面33を有する(
図8)。この点で、密封機能の観点からは、弾性シール32は、接触面31に配されようが、または、
図9に示すように、投与スライダー15の密封表面33に配されようが、等価である。望ましくは、弾性シール32は、複数成分射出成形法において、直接、投与スライダー15、または投与スライダー通路16上に、好ましくは射出成形される、熱可塑性エラストマーを含む。しかしながら、別体シールを設けることも可能であることが了解されよう。シール32を備える投与スライダー通路16における投与スライダー15の配置は、
図3から見て取ることができる。望ましくは、投与スライダー15はさらに、その充填位置において、バネ要素34によって固定され、そのため、シール32は、投与スライダー15がその充填位置にある場合、常に、僅かにストレス負荷される。これは、カートリッジ3は保存されるか、吸入器1の外に輸送されるので、常に最適の密封動作を実現するためには特に有利である。
【0105】
弾性シール32に代わるものとして、シール用リブ35を、
図10に示すように、投与スライダー通路16、または投与スライダー15上に形成することができる。この場合、シール用リブ35は、投与スライダー通路16の充填位置に投与スライダー15を保持する変位力によって密封的に変形される(
図10)
【0106】
湿気が、カートリッジ3の保存チャンバ13の中に浸透することをきわめて実質的に阻止する、前述の、数多くの、効果的方策にも拘わらず、少しでも残留湿気があるならばそれを吸収可能とするように、または、薬剤18の特定性質によって要求される湿度レベルの設定が可能となるように、乾燥剤本体、またはカプセル入り乾燥剤36を、カートリッジ3の保存チャンバ13に配してもよい。望ましくは、乾燥剤本体、または乾燥剤カプセルは、カートリッジ3の保存チャンバ13に押しつけられるか、または引っ掛けられる。この方策では、乾燥剤36は散剤18から離して保持され、特に、散剤18は、振動、搖動、または衝撃の際にも、乾燥剤36による機械的負荷から免れ、特に、散剤18は、圧縮固化から免れる。これは、特に、散剤18の再現性投与が可能になること、さらに、出口開口14にまたがる散剤18の架橋形成が阻止されること、したがって、本発明による吸入器1の全体的高信頼性が改善されることを意味する。
【0107】
保存チャンバ13の中への乾燥剤36の、前述の好ましい配置の代わりに、固体の乾燥剤本体、例えば、乾燥剤が埋め込まれる、プラスチック材料から成る射出成形体を、保存チャンバ13の中にスリーブの形で固定的にはめこんでもよい。さらに、乾燥剤本体は、カバー22、26、または27の中に固定的に一体化してもよい。最後に、乾燥剤36はさらに、保存チャンバ13の壁23製造のための、複数成分射出形成工程の中に一成分として組み込まれてもよい。
【0108】
本発明による吸入器1の実施態様の、さらに詳細な構造は、
図12において見て取ることができる。説明のために、ハウジング2、およびいくつかの他の部品も、図示の視野から省略した。
図13は、
図12の吸入器1の断面図を示す。例として挙げるので、必ずしもそうでなくともよいが、複数の散剤用量を収容するための保存チャンバ13を備えるカートリッジ3は、上に詳述したように、吸入ハウジング2の後方領域に配される。さらに、吸入器1は、投与スライダー15の充填位置から投与位置への吸入駆動自動移動用デバイス、および、投与スライダー通路16内部の充填位置へ投与スライダー15を自動的に戻すための復帰デバイスを含む。
【0109】
これらのデバイスはさらに詳細に後述される。吸入器の前端には、前述したように、閉鎖キャップ4によってその全体を覆うことが可能なマウスピース5が設けられる。マウスピース5には、吸入開口6が設けられる。この、吸入開口6を有するマウスピース5は、投与通路38と流入的に連通する。患者は、吸入時、投与通路38を通じて空気流を吸い込み、投与通路を通じて、投与スライダー15の投与穴17によって割り当てられる散剤の、投与量を受けとることができる。さらに、マウスピース5は、空気通路39と流入的に連通する。マウスピース5の内部には、例えば、サイクロン型配置の形状を取る破砕デバイス40が設けられる(
図13参照)。この破砕デバイス40は、投与通路38に接続され、そのため、散剤を負荷された空気流は、投与通路38からこの破砕デバイス40の中に進入する。この空気流は、散剤の凝集物または同様の集合物を破砕させ、患者が、マウスピース5を通じて、均一な肺定着性粒径を持つ薬剤粒子だけを実質的に受容できるように、好ましくは、破砕デバイス40において複数回強く偏向される。
図13に示す実施態様では、投与通路38および空気通路39中の空気について平行な気流供給が行われ、それらの気流は、マウスピース5において突き合わされる。特に、
図11、17、および18に示す実施態様では、この平行な空気流通路は省略され、投与通路38は、空気通路39の一部を形成する。
【0110】
長期的使用では、患者が、マウスピース5および破砕デバイス40を取り外し、道具無しで簡単に、例えば、水道水下に洗濯することができると有利である。これは、例えば、マウスピースおよび破砕デバイス40から、散剤と共に、湿った呼気によって形成される残留物、唾液などを取り除くために望ましい。さらに、細菌なども、患者によって、口からマウスピースの中に導入される可能性があり、これらも、上記のようにして除去できる。この点において、患者に、例えば、適切な洗浄液を供給することは望ましいかもしれない。
【0111】
マウスピース5および破砕デバイス40の洗浄、および場合によっては乾燥後、患者は、吸入器1を再び完全に動作可能とするために、これらの部品を吸入器1に改めてはめこむ。この点で、破砕デバイス40が、実際に改めてはめこまれること、破砕デバイス40無しに、例えば、マウスピース5がはめこまれることがないことは、薬剤吸収の有効性という観点からきわめて重要である。破砕デバイス40が欠けると、散剤が肺内に進入することが可能な粒子となるよう十分に破砕されず、したがって、薬剤投与の効果は予想外に低下する危険性がある。不器用、または未熟な患者による操作エラーを防止するために、本発明者らは、マウスピース5および破砕デバイス40は、それらが一緒に合わされて始めて、取り外しおよび再接合できるように設計することが望ましいことを見出した。これは、例えば、吸入器1の組み立て時、マウスピース5および破砕デバイス40を、例えばスナップ活性接続を形成して一緒に接合させるようにし、患者が、これらを破壊することなしに、これらの部品を分解できないように設計することによって実現できる。これは、マウスピース5および/または破砕デバイス40が、生産工学の観点から複雑な構成を持つ場合、特に好適である。なぜなら、この配置から、これら二つの部品が別々に製造可能であるという利点が得られるからである。特に、組み立てコストを抑え、かつ、適切に洗浄し、次いで乾燥させることができにくい隙間および接合部を避けるためには、マウスピース5および破砕デバイス40は、例えば、適切な成形プロセスによって一体として生産されることが望ましい。
【0112】
患者が、マウスピースを通じて空気流を吸入し始めると、投与通路38は、最初、バルブデバイス41によって閉鎖される。この点で、バルブデバイスは、スライダー的に投与通路38の流通路の中に押し込まれる、吸入器の別部品によって形成されてもよいし、あるいは、全体を覆う対応開口によって形成されてもよい。ここで患者が吸入を始めると、対応的な陰圧または空気流が、先ず、空気通路39の中に形成される。
【0113】
空気通路39の中に配置されるのは、後に詳述するトリガーデバイスである。このトリガーデバイスは、空気通路39において指定の最小空気流が超えられた時点を発信する役を果たし、その場合、該最小空気流は、空気通路39における指定の陰圧の発生によって形成することもできる。好ましくは、空気通路39は、トリガーデバイス領域において顕著に拡大した流通断面を有する。このようにすると、比較的低い陰圧で、分散が低度の場合でも、流通断面を大部分閉鎖する要素によって、比較的高い、均一な調節力を生成することが可能である。好ましい実施態様では、トリガーデバイスは、空気通路39の中に軸回転的に取りつけられるフラップ42を含む。既述のように、フラップ42の領域では、空気通路39は、投与通路38に対し、特に大きな断面を持つ。フラップ42は、バネ負荷によって、好ましくは直接に、または間接に開始位置に保持される。ある特に有利な特性においては、フラップ42は、回転軸80の周囲で回転可能であり、この回転軸80は、フラップ42の重心の中に、またはその近傍に延びている。これによって、フラップ42は、回転軸80の周囲においてバランスされ、したがって、吸入器1に対し打撃が加えられても、例えば、吸入器1を落とした場合でも、フラップ42の質量によって誘起されるモーメントは、回転軸80の周囲に発生しない。
【0114】
図13の模式図から見て取れるように、フラップ42は、押し出しロッド43に結合する。この押し出しロッド43は、投与スライダー15の、吸入駆動自動移動用デバイスに動作可能的に接続される。その際、投与スライダー15の、吸入駆動自動移動用デバイスは、フラップ42がその停止位置にある時、押し出しロッド43によって、変位位置に直接または間接に保持される。フラップ42が患者による空気通路39における吸入気流によって動かされると、押し出しロッド43はフラップ42によって作動する。後に詳述するように、押し出しロッド43は、フラップ42が、少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向されると、投与スライダー15の、吸入駆動自動移動用デバイスを解放する。これによって、ある最小量の空気流または最小気圧が、患者によって空気通路39の中に形成されると、投与スライダー15の吸入駆動自動移動用デバイスの活性化が実現される。この場合、空気通路39において必要な最小気流量または最小陰圧は、フラップ42の実効断面、および、克服しなければならない閉鎖力によって設定することができる。その点で、閉鎖力は、望ましくは、フラップ42または押し出しロッド43に接続され、フラップ42をその停止位置に保持し、かつ、フラップ42とともに押し出しロッド43を、押し出しロッド43により投与スライダー15の吸入駆動自動移動用デバイスを変位位置に保持する位置に保持する、バネ99によって印加されてもよい。その場合、押し出しロッド43は、投与スライダー15の吸入駆動自動移動用デバイスに直接・間接に接続され、投与スライダー15の吸入駆動自動移動用デバイスがそれぞれどのように構造的に設計されるか、押し出しロッド43がフラップ42によってどの方向に変位されるかに応じて、例えば、ある角度を帯びてもよいし、または、曲がったフォークの形状を取ってもよい。
【0115】
後に詳述するように、これによって、吸入される散剤の最大部分が確実に肺内へ進入できるよう、患者が十分に大きな吸入気流を形成した時点で、患者に対し、適切用量の薬剤の投与が可能となる。このようにして、散剤の用量投与の動きは、患者の側の、操作行動および協調能とは完全に無関係に、最適化することができ、吸入時に関わるプロセスに対する患者の側の能力または理解とは無関係に、患者に対する薬剤送達の観点から、きわめて高レベルの信頼性および効率性が実現される。これによって、本発明による吸入器1は、特に広範囲の人々に関連して使用可能となるばかりでなく、本発明による吸入器1はさらに、ショック状態が起こる場合、または、他のパニック状態下において、例えば、自発性発作の場合に、薬剤投与を高信頼度で実行しなければならない患者に対しても特に好適である。本発明による吸入器によれば、患者は、最適な肺定着性能のために適応された、散剤の投与を受けるために、マウスピース5を吸入する以外に何もする必要がない。
【0116】
その点で、フラップ42と押し出しロッド43の間の結合が、フラップ42と押し出しロッド43上の一部45との上の、歯車ラックの形状を持つ歯車セグメント44によって形成されていると、特にコンパクトな配置および単純な組み立ての実現が可能となる。この配置、および、投与通路38および空気通路39の配置は、
図13からはっきりと見て取ることができる。
【0117】
さらに、フラップ42と押し出しロッド43間の接続は、別の適切な方式で、例えば、それぞれ他部品の、エントレインメント部分が係合する溝または開口によって実現することが可能である(
図14)。
図15に模式的に示される別の実施態様では、フラップ42は、軸46の周囲で回転可能であり、該軸は、フラップ42の端よりも若干距離離れて配置される。フラップ42は、軸46の周囲でフラップ42と一緒に軸回転可能で、バネ負荷固定要素47を保持する爪を持ち、該爪の、固定要素47に対する接触面は、スライド的または転回的ペア構成、例えば、ローラー48によって形成されている。次に、固定要素47は、既述したように、投与スライダー15の、吸入駆動自動移動用デバイスに動作可能的に接続され、そのため、フラップ42が、患者の側の吸入気流によって、少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向されると、投与スライダー15の、吸入駆動自動移動用デバイスは解放される。
【0118】
トリガーデバイスはさらに、空気通路39に接続されるピストン49を持ってもよく、このようにして、ピストンの面は、患者によって印加される陰圧の作用を受ける。この配置においては、押し出しロッドは、望ましくは、ピストンロッド50によって形成されている。望ましくは、次いで、ピストンも、該ピストンが空気通路39において患者によって起動される指定の最小量の空気流によって、少なくとも指定量だけその停止位置から偏向されると、投与スライダー15の吸入駆動自動移動用デバイスを、高い信頼度をもって解放するように、比較的大きな断面積を有する。このような配置を、
図16に模式的に示す。
【0119】
その充填位置から投与位置へ、投与スライダー15を、吸入駆動自動移動させるためのデバイスは、
図12および13に示される、本発明による吸入器1の実施態様を参照しながら後に詳述される。望ましくは、投与スライダー15は、該投与スライダー15の移動方向に対して横方向に、好ましくは両側にエントレインメント突起51を含む。投与スライダー15の、これらのエントレインメント突起51は、吸入器において、投与スライダーに対する作動デバイスの対応陥凹部と協調する。ある有利な実施態様では、これらの陥凹部は、駆動要素としてのスライドガイドキャリヤー53中の二つのスライドガイド52によって形成されている。スライドガイドキャリヤー53は、望ましくは、カートリッジ3の下方領域を両側で抱き込む一種のフレームによって形成されている(
図12)。
【0120】
スライドガイドキャリヤー53は停止位置を取ることが可能で、図示の実施態様では、これは、上方位置を含む。スライドガイドキャリヤー53は、変位バネ54によってその停止位置に保持され、その際、変位バネ54は、スライドガイドキャリヤー53が停止位置にある時は、ほとんど、または完全にストレスから解放される。スライドガイドキャリヤー53は、変位バネ54の力に抗して、待機位置へ、図示の例では下方位置へ、移動することができる。この配置において、スライドガイド52は、吸入器の使用位置に対して垂直なスライドガイド部分55を、投与スライダー15をその充填位置から移動させることなく、スライドガイドキャリヤー53と投与スライダー15のエントレインメント突起51の間の相対的運動を可能とするように含む。
【0121】
望ましくは、垂直スライドガイド部分55を含む、スライドガイドキャリヤー53の領域は、スライドガイドキャリヤー53の移動方向に対し横方向に弾性的に変形可能である。垂直スライドガイド部分55の深度は、上方に向かって減少し、垂直スライドガイド部分の上方領域56においてステップを形成し、該ステップの上では、スライドガイドは再び初期の深度を持つ。ここで、スライドガイドキャリヤー53が、その停止位置から下方の待機位置に移動されると、該スライドガイドキャリヤーの対応領域の垂直スライドガイド部分55の、上方に減少する深度の楔効果によって、垂直スライドガイド部分55の中を走る、投与スライダー15のエントレインメント突起51が弾性的に広げられ、該エントレインメント突起51が、垂直スライドガイド部分55の上方領域56に達し、前記ステップを通過するや否や、再び元の位置にスナップ状に戻される。
【0122】
この配置は、スライドガイドキャリヤー53の、その待機位置から停止位置への戻り移動、すなわち、選ばれた例では上方移動において、投与スライダー15のエントレインメント突起51が、垂直スライドガイド部分55に戻ることが確実にできないようにすることが意図される。
【0123】
スライドガイド52の上方領域56は、垂直スライドガイド部分55に対して傾斜する、斜行スライドガイド部分57に接続される。ここでスライドガイドキャリヤー53が、下方の待機位置から抜け出て上方の停止位置に、すなわち、上方に移動すると、投与スライダー15のエントレインメント突起51は、斜行スライドガイド部分57の中をガイドされ、そのため、スライドガイドキャリヤー53の移動方向に対する斜行スライドガイド部分57の傾きによって定められる動力伝達関係によって、投与スライダー15は、ポジティブガイド関係において、その充填位置からその投与位置へと引き込まれる。斜行スライドガイド部分57の下端と、垂直スライドガイド部分55の下端の間に配されるのは、該斜行スライドガイド部分57の下端を、該垂直スライドガイド部分55の下端に接続する、水平スライドガイド部分58である。スライドガイドキャリヤー53が、上方の、その停止位置に達すると、投与スライダー15は、水平スライドガイド部分58における、そのエントレインメント突起51によって、その投与位置とその充填位置の間を移動することが可能となる。望ましくは、投与スライダー15は、スライドガイドキャリヤー53が上方の停止位置に達した時、該投与スライダー15をその充填位置に引き戻す復帰バネ59に接続される。
【0124】
待機位置では、スライドガイドキャリヤー53の一部41は、投与スライダー15が、投与通路38に僅かに進入した地点の上で、該投与通路38の全体を覆う。したがって、スライドガイドキャリヤーは、該スライドガイドキャリヤー53がその待機位置にある限り、実質的に投与通路38を閉鎖するために、バルブデバイス41の役割を果たす。フラップ42および押し出しロッド43の形状を取るトリガーデバイスが、スライドガイドキャリヤー53、それと共にバルブデバイス41を解放し、スライドガイドキャリヤー53が、その停止位置に向かう方向に移動するや否や、投与通路38の流通断面の実質部分が開放される。その結果、この吸入デバイスのユーザーによって吸入が開始されると同時に、先ず、吸入気流が空気通路に形成され、そのため、投与通路断面の吸入駆動開放時には、既に吸入気流があり、最初に空気を加速したり、陰圧を形成したりする必要はない。空気通路39は、偏向フラップ42によって実質的に閉鎖されるので、空気通路38を通過する、特に、投与スライダー15の投与穴17を通過する気流の実質的な部分は、投与スライダー15が、スライドガイドキャリヤー53によって投与位置に移動させられる間に起こる。その結果、短時間の内に、投与穴17の完全な内容排出(emptying)を確実に行うことが可能となり、患者の肺に対する粉末状薬剤の効率的導入が実現できる。
【0125】
ハウジング2の中に直線的にガイドされるスライドガイドキャリヤー53を有する、望ましい実施態様が記載される。例えば、製造によって、または、薬剤特性によって引き起こされる、不適切な材料の取り合わせによる摩擦、混雑を避けるために、駆動要素はさらに、駆動ロッカー82の形状を取ってもよい。できるだけ曲線的でない移動を実現するために、ロッカーの長さはできるだけ大きくなるように選ばれることが望ましい。しかしながら、可能なロッカー長は、吸入器1の構造的な長さに大きく制限される。ロッカーの有効長は、自動車産業においてパラレバー(Paralever)という用語によって知られるように、実際の利用可能な構造長に対し、多数連結配置によって顕著に増加させることができる。しかしながら、これは、該連結が、一体的フィルムヒンジによって具体化されない限り、個々の部品および組み立てという観点から、対応的な、出費の増加を必然的に招く。
【0126】
投与スライダー15を、直接フラップ42に接続し、フラップ42の動きが、直接、投与スライダー15に伝達されるようにすることも基本的に考慮の対象とできる。しかしながら、これは、複雑な組み立て工程を必要とすること、かつ、カートリッジ3を、その後に、事前に完全に組み立てられた吸入器1に接合させることはそれほど容易ではないことに注意しなければならない。
【0127】
上記のスライドガイド構成、および、復帰バネ59による、投与スライダー15の、その戻り位置への復帰の代わりに、スライドガイドキャリヤー53のスライドガイド52は、斜行スライドガイド部分57ではなく、V型スライドガイド部分60を持つこともできる。この場合、該V型スライドガイド部分は、投与スライダー15のエントレインメント突起51のために、その充填位置からその投与位置への移動およびスライドガイドキャリヤーが待機位置から取り出されて停止位置に納められる際充填位置に戻す移動のためのポジティブガイド手段を形成する(
図22)。しかしながら、その場合も、投与スライダー15をその充填位置から出すことなくスライドガイドキャリヤー53を変位バネ54の力に抗してその待機位置に移動できるように、垂直スライドガイド部分55は必要とされる。
【0128】
スライドガイドはさらに、特に、復帰バネ59によって負荷される、投与スライダー15と組み合わされる、カム部分の形状を取ることも可能である。このスライドガイド部分が直線的構成を持つと特に望ましい。しかしながら、所望の動力伝達比を実現するためには、例えば、スライドガイドキャリヤー53を、その待機位置から停止位置に移動させる際、移動依存性作動力を考慮するためには、スライドガイドはさらに、曲線構成、特に離心的曲線構成を取ることが望ましい場合がある。さらに、回転運動と組み合わせた場合、スライドガイドまたはカム部分は、螺旋構成を取ることが望ましい場合がある。
【0129】
投与スライダー15はさらに、サイクル調節カム、またはスライドガイドホイールによって、その充填位置から投与位置に移動されてもよく、望ましくは復帰バネ59によって引き戻されてもよい。回転配置の場合、スライドガイドキャリヤー53はさらに、離心的に閉鎖されるスライドガイドを持つこともでき、エントレインメント突起51を介して、充填位置および投与位置間で投与スライダー15をポジティブにガイドすることも可能である。回転式スライドガイドキャリヤー53の場合、さらに、カム配置を設け、それによって、投与スライダーを、充填位置から取り出して投与位置に移し、望ましくは、復帰バネ59によって引き戻すことも可能である。さらに、離心的カム円板を持つ対応配置を設けることも可能である。対応的配置を、
図23から27に模式的に示す。
【0130】
好ましくは、復帰バネ59と組み合わせた、投与スライダーを、充填位置から出して投与位置へと移すための、投与スライダー15と、フラップ42またはピストン59との直接結合も考えることが可能である。
【0131】
その待機位置から出て停止位置へ向かう、スライドガイドキャリヤー53の移動のための作動エネルギーは、望ましくは、変位バネ54を介して供給される。適切な作動デバイスによって、吸入器1のユーザーは、スライドガイドキャリヤー53が、変位バネ54の力に抗して、その停止位置からその待機位置へと移される限りにおいて、デバイス中に必要な作動エネルギーを保存することができる。これは後に詳述される。
【0132】
投与スライダー15をその充填位置から投与位置へと動かす、吸入駆動自動移動用デバイスの一部としてのスライドガイドキャリヤー53は、既に上に詳述したトリガーデバイスによってその待機位置に停止させられる。望ましくは、この目的のために、既に詳述した押し出しロッド43は、スライドガイドキャリヤー53がその待機位置に達するや否や、スライドガイドキャリヤー53の、対応する陥凹または突起に係合する。スライドガイドキャリヤー53は、十分に高レベルの吸入吸い込み気流によって、フラップ42が偏向され、押し出しロッド43が十分遠くに動かされ、該ロッドと、スライドガイドキャリヤー53との係合が外れた時に始めて、その停止位置に戻ることができ、スライドガイドキャリヤー53は、変位スプリング54の力によって、その待機位置から停止位置へと移動することができる。
【0133】
望ましくは、変位バネ54は、板バネ(
図56参照)、または成形バネの形状を取る。このようなバネは簡単に生産することができ、吸入器における空間状況に適応した輪郭を持つことができ、場合によっては、さらに線維強化された適切なプラスチック材料から形成することができ、吸入器の他の成分と共に、例えば、射出成形によって一体型とすることもできる。スライドガイドキャリヤー53と、または、ハウジング2の一部と一緒になった、一部品構成が望ましいと考えられる。同様に、投与スライダー15の復帰バネ59も、板バネまたは成形バネの形状を取ることができる。
【0134】
側方空間状況が窄まっている場合は、変位バネ54および/または復帰バネ59は、コイルバネの形状を取ると望ましい場合がある。特に、この構造形態は、復帰バネ59には適切である。これはさらに、変位バネ54および/または復帰バネ59が、螺旋バネまたは捩じりコイルバネである場合、特に、回転的に作動される駆動ロッカー82と組み合わせると望ましい場合がある。特に、復帰バネ59だけでなく変位バネ54についても、それが、弾性的に変形可能な成形体であると望ましい場合がある。この目的のために、例えば、復帰バネ59に関連して言えば、投与スライダー15の上に、このような成形体を、例えば、引っ張りバネとして使用できる、適切な熱可塑性エラストマーの形で射出成形することが適切である。さらに、変位バネ54については、それが、例えば、スライドガイドキャリヤー53の上か、または、ハウジング2の底部に、弾性的に変形可能な成形体の形で射出成形されることが望ましい場合がある。
【0135】
特に、変位バネ54についてはさらに、該バネが、圧縮空気保存手段によって形成されていることが適切である。この場合、例えば、スライドガイドキャリヤー53の一部は、気密に閉鎖されたシリンダーに係合するピストンの形状を取り、そのため、スライドガイドキャリヤー53が、その停止位置から待機位置へと移されるとき、シリンダー内の空気体積が圧縮されるようになっていてもよい。スライドガイドキャリヤー53がトリガーデバイスによって解放されるや否や、シリンダー内の空気体積は膨張して、スライドガイドキャリヤー53をその停止位置に駆動することができる。
【0136】
投与スライダー15のために均一な作動力を実現するために、変位バネ54は、非直線性バネ特徴を持つことが望ましい可能性がある。
【0137】
本発明によれば、吸入器1のユーザーが、変位バネ54の力に抗して、スライドガイドキャリヤー53を、その停止位置からその待機位置へと移動させることを可能とするデバイスを操作するために可能な選択肢がいくつかある。一つの可能な選択肢は、エントレインメント部分62に結合される回転ノブ61によって印加される変位力に関する。すなわち、スライドガイドキャリヤー53は、回転ノブ61が回転されると、該エントレインメント部分を介して、その停止位置から待機位置へと移動する。変位バネ54の変位力はそのまま変えずにおいて、ノブ61の回転軸から、エントレインメント部分62を遠ざけることによって、作動力を変えることができる。しかしながら、構造的空間から見た限界を考慮しなければならないことは了解されるであろう。このような配置を
図32の模式図に示す。
【0138】
スライドガイドキャリヤーの作動はさらに、該スライドガイドキャリヤー53の移動運動に直接作用することができるか、または、回転ピボットポイントを介して該スライドガイドキャリヤー53に作用することができる、作動ボタン63を介して実行することもできる。後の方の変異実施態様では、変位バネ54の任意の変位力によって要求される作動力は、レバー長の調節によって設定することができる。このような配置も、吸入器1のハウジング2における構造空間による制限を含むことが了解されるであろう。この図は、原理的に、
図33に示される。
【0139】
しかしながら、本発明によれば、スライドガイドキャリヤー53の、その停止位置から待機位置への作動は、閉鎖キャップ4の、閉鎖位置から待機位置への移動と結合されることが特に好ましい。既述したように、保護または閉鎖キャップ4は、吸入デバイスに紛失しないように接続される。望ましくは、閉鎖キャップ4は、閉鎖キャップ4の後方部分65に配置される、2対のエントレインメント部分64を含む。
図12および13に示す、本発明による吸入器1の実施態様では、これらエントレインメント部分64の内の一対が、ハウジング2のスライドガイド66の中を走る。これによって、先ず、閉鎖キャップを、吸入器1の前側8から長軸方向にガイドすることができ、最終的に、閉鎖キャップ4は、マウスピース5を過ぎて下方に軸回転できる。この場合、ハウジング2に対する、閉鎖キャップ4の長軸方向の移動性は、好ましくは直線的スライドガイド66によって実現される。さらにもう一対のエントレインメント部分64は、スライドガイドキャリヤー53において、それに対して相補的な作動スライドガイド67と協調する。この配置では、作動スライドガイド67は、傾斜スライドガイド部分を含み、該ガイド部分は、吸入器の前側8から見ると、後方に落下し、下向きに開放するように傾斜する。スライドガイドキャリヤーがその停止位置にあり、閉鎖キャップが閉鎖位置にある場合、エントレインメント部分64は、この傾斜スライドガイド部分の後方下端に係合する。ここで、マウスピース5を通過して軸回転可能となるように、閉鎖キャップ4が前方に引っ張られると、スライドガイドキャリヤー53は、閉鎖キャップの長軸運動によって作動し、それと共に、前記一対のエントレインメント部分64が、傾斜スライドガイド部分68を介して、変位バネ54の力に抗して、下方に、その停止位置から待機位置へと移動する。ここで、閉鎖キャップ4は、軸回転して、その操作位置に移動でき、マウスピース5は、患者が、吸入プロセスを実行するために利用可能となる。吸入が成功裡に実行されると、スライドガイドキャリヤー53はその停止位置に戻る。この時、閉鎖キャップは上方に軸回転可能となり、吸入器に向けて後方に押しこむことができるようになる。その場合、エントレインメント部分64は、再び、スライドガイドキャリヤー53の、傾斜スライドガイド部分68の後方下端に係合する。これは、
図34の模式図から見て取ることができる。
【0140】
スライドガイドキャリヤー53の活性的スライドガイド67はさらに、望ましくは、実質的に水平に、特に、ハウジング2のスライドガイド66に対して平行に延びている第2スライドガイド部分69を有する。この第2スライドガイド部分69は、直接機能は持たないが、ただ、無事に吸入が行われなくても閉鎖キャップ4を再び閉鎖位置に移動できるようにする可能な選択肢を患者に与えるのに役立つ。この構成では、スライドガイドキャリヤー53は、依然として下方の待機位置にあるが、もしもこの第2スライドガイド部分69が無いとすると、閉鎖キャップ4は、エントレインメント部分64のあるために後方に押しやることができないと考えられる。このような機能的拡張は、例えば、薬剤師が、用量の直接服用を要することなく、吸入デバイスの取り扱い方を実地教示することを可能とする点で特に望ましい。用量は、十分な吸入気流によってのみ吸入可能となるが、これは、もしそうしなければ、患者が、ともすると医師によって処方されていない時点で、薬剤用量を吸入しなければならない結果を招くと考えられる。望ましくは、第2スライドガイド部分69は、その末端において閉鎖され、そのため、スライドガイドキャリヤー53がその待機位置にあり、閉鎖キャップ4が閉鎖位置にある場合、スライドガイドキャリヤー53は、トリガーデバイスの押し出しロッド43によってその待機位置にしっかりと保持される外、さらに、閉鎖キャップ4のエントレインメント部分64によってもその待機位置に固定されるので、例えば、吸入器1が、ストレス負荷条件下に落下した場合でも、閉鎖キャップ4のエントレインメント部分64は、第2の、すなわち、相補的スライドガイド部分69を介して、薬剤用量が、投与通路へ運ばれるのを高い信頼度で阻止する。望ましくは、作動、または相補的スライドガイド67は、ハウジング2においてガイド手段の形状を持つスライドガイド66に対し、15°から45°の角度α傾く。変位バネ54の移動依存性変位力に対し作動力を適応させるために、さらに、相補的、または作動的スライドガイド67は、非直線形態として延長することが望ましい場合がある。エントレインメント部分64、および作動的または相補的スライドガイド67を含む配置に対する別態様として、閉鎖キャップ4はさらに、直接または間接に、スライドガイドキャリヤー53をその待機位置に移動させることができる、加圧レバーを有していてもよい。これは、好ましいものとして前述した配置に比べ、スライドガイドキャリヤー53の待機位置が、停止位置の上に配される場合、特に適切である。このような配置は、
図35に模式的に示される。
【0141】
しかしながらさらに、閉鎖キャップ4上のエントレインメント部分64を介して離心円板が作動されると望ましい可能性がある。この場合、閉鎖キャップの直線的作動は、離心円板70の固定軸周囲の回転運動に変換され、スライドガイドキャリヤー53は、変位バネ54の力に抗して、離心円板を介してその待機位置に移動される。これは、特に、コイルバネまたは捩じりコイルバネの形状を取る変位バネ54と組み合わされると好適である。このような配置は、
図36に模式的に示される。
【0142】
本発明による吸入器1の、別の特に好ましい実施態様では、投与機構の変位は、保護キャップ4の純粋に回転性の運動によって実現される。この実施態様は、特にはっきりと、
図1、2、11、17、および18において見て取ることができる。この点で、
図1および
図17は、閉鎖キャップ4をその閉鎖位置に置く吸入器1を示す。明瞭のために、
図17の画像は、ハウジング2、および吸入器1のいくつかのさらに別部品を省略する。
図2および18は、その閉鎖キャップ4を操作位置に置く、すなわち、保護キャップ4を開放させた吸入器1を示す。図面の単純化のために、
図18においても、ハウジング2、および吸入器1のいくつかの別部品を省略する。
図17は、投与機構を解放条件に置く、すなわち、変位バネ54(この図には示していない)がストレスから解放され、駆動ロッカー82の形状を取る駆動要素が停止位置にある、吸入器1の個別部品の配置を示す。
図18は、投与機構が、閉鎖キャップ4の開放によってストレス負荷され、駆動ロッカー82の形状を取る駆動要素が待機位置にある吸入器1の個別部品の配置を示す。吸入器1のこの操作条件では、患者が、マウスピースを通じて空気を吸い込こむことによっていつでも吸入を実行することができ、それは、前述のように、トリガー空気流を超えたときに、投与操作を起動する。
【0143】
閉鎖キャップ4は、少なくとも一つのエントレインメント部分64、および、第1回転軸83の周囲で回転が可能な駆動ロッカー82に動作可能的に接続される動力伝達ロッカー85を有し、この伝達ロッカー85は、第2回転軸84の周囲で回転可能であり、一方、閉鎖キャップは、(第3)軸7の周囲を、閉鎖位置から操作位置へと回転可能である。閉鎖キャップ4の、この少なくとも一つのエントレインメント部分64は、閉鎖キャップ4の開放時、動力伝達ロッカー85の、少なくとも一つの操作末端86の後ろに係合し、このため、駆動ロッカー82は、閉鎖キャップ4の、第3軸7の周囲における運動による、閉鎖位置から操作位置へ移動によって、動力伝達ロッカー85を介して、変位バネ54の力に抗して、その停止位置からその待機位置へ移動可能になる。
【0144】
駆動ロッカー82および動力伝達ロッカー85は、第1および第2回転軸83および84の周囲におけるそれらの回転が、反対向きに起こるように互いに係合する。その結果、薬剤分配起動時における慣性モーメントは実質的に相殺されるので、患者は、衝撃および対応ノイズと感受される復帰力によっては、ごく僅の悪影響しか受けない。この点で有利なことに、駆動ロッカー82および動力伝達ロッカー85は、第1回転軸83の周囲における駆動ロッカー82の慣性モーメント、および、第2回転軸84の周囲における動力伝達ロッカー85の慣性モーメントがほぼ等しい大きさとなるような、設計構成および大きさを有する。
【0145】
有利なことに、動力伝達ロッカー85の、少なくとも一つの操作末端86は、第3軸7の周囲において閉鎖キャップ4が閉鎖位置から操作位置へと作動されるのと同時に、該操作末端86が、閉鎖キャップ4の少なくとも一つのエントレインメント部分64とポジティブロック関係において係合し、この少なくとも一つのエントレインメント部分64によって印加されるモーメントは、投与機構がまだストレス負荷されていない場合は、動力伝達ロッカー85に伝えられるように設計されている。閉鎖キャップ4が、操作位置から閉鎖位置に復帰し、投与操作の起動によって停止位置に復帰する動力伝達ロッカー85の復帰と同時に、操作末端86は、エントレインメント部分64を弾性的に回避する。このために、操作末端86は、マウスピース5からより離れた末端に配置されるフィルムヒンジ87を介して、動力伝達ロッカー85の残余部分に接続される。このようにして、閉鎖キャップは、薬剤用量がまだ取り込まれていない場合でも、マウスピースの上に移動して保護条件の中に納まることが可能である。
【0146】
望ましくは、動力伝達ロッカー85は、吸入器1の長軸中心面に対して対称的構成を持ち、二つのロッカー要素を含み、これらのロッカー要素は、吸入デバイスの両長軸側面において、第2回転軸84の周囲で回転可能に配置され、少なくとも一つのヨーク86によって互いに接続され、その際、押し出しロッド43は、フラップ42がその停止位置にある時は、ヨーク88と係合することによって、動力伝達ロッカー85を駆動ロッカー82のストレス負荷位置に保持し、押し出しロッド43は、フラップ43が、少なくとも指定の量だけその停止位置から偏向されると、ヨーク88の移動を、それと共に、動力伝達ロッカー85の移動をも解除し、動力伝達ロッカー85および駆動ロッカー82が、変位バネ54によってその待機位置からその停止位置へ移動可能となるようにする。
【0147】
既述のように、本発明による吸入器1は、ディスプレイ10を通じて、好ましくは、保存薬剤補給から依然として取り分けることができる用量数の、正確な用量表示のためのカウントデバイス11を含む。この目的のために、カウントデバイス11は、公知の、二桁、または三桁数字のドラムカウンターによって形成されていると有利でありうる。このようなドラムカウンターは、プラスチック材料から安価に製造することが可能であり、したがって、その作業寿命の終了後は吸入器1とともに簡単に廃棄することができる。このような目的のために従来から提案されている電子カウンターと比べると、これは、その使用寿命の終了後に、電子部品を、処方の手順にしたがって、指定の工程および処分のために別々に配送可能とするように、高価で複雑な手順として吸入器1を分解する必要がないという点で有利である。通常の方式では、ドラムカウンターは、スライドガイドキャリヤーによってステップスイッチ機構37を介して駆動され、スライドガイドキャリヤー53によって実行される各投薬移動の度毎に1ずつ進められる。
図55を参照されたい。この点で有利なことに、カウントデバイスは、現在残っている用量を表すように下向きに数えるように配置される。したがって、充満量の変動または散剤に起こりうる詰め込み圧縮効果を考慮して、ディスプレイ10の開始値は、カートリッジ3の保存チャンバ13中に充満する薬剤の用量数から安全値をひいたものに相当する数値に設定されなければならない。指定の用量数を数え切ると、例えば、消費薬剤補給を示すカラーで強調した形の示数が表示される。このような吸入器の、一連の、最後の3回の作動を、
図21のステップA、B、およびCに示す。
【0148】
さらに、本発明による好ましい吸入器1には、指定の数の分配用量に達すると、閉鎖キャップ4を、もはや閉鎖位置に移動できないように阻止するロックデバイスが設けられる。このロックデバイスは、ヨーク73によって接続される2本の肢72を含むロックあぶみ71を含む。ロックあぶみ71のヨーク73は、好ましくは、板バネまたは成形バネである、バネ74によってドラムカウンターに押しつけられる。
図12参照。
【0149】
望ましくは、ドラムカウンターは、各ドラムが溝75を有し、表示カウンター状態000に達すると、ドラムの該溝75が整列するように設計されている。ロックあぶみ71は、ヨーク73が、バネ74によってドラムの整列溝75の中に係合すると、ロックあぶみ71全体がある距離動かされるように配置される。この場合、ヨーク73によって接続されていない肢72の端は、閉鎖キャップ4のエントレインメント部分64の移動通路の中、および/または、ハウジング2のスライドガイドの中に係合し、そのため、エントレインメント部分64は、スライドガイド66に沿って、もはや移動ができなくなり、したがって、閉鎖キャップ4はもはや閉鎖位置に移動することができない。望ましくは、ロックあぶみ71の肢72による係合は、閉鎖キャップ4の閉鎖位置から十分に遠ざかっており、閉鎖キャップ4は、ハウジング2からはっきりと目立つほどに突出(
図11、54)するので、比較的無知な患者でもはっきりとそれを感じ、吸入器1内の、薬剤の保存補給が消費されたことを知る。
【0150】
最後に、ロックデバイス71のヨーク73には、信号プレート76を、該プレートが、ロックデバイス71の遮断的係合、または、ヨーク73の溝75に対する係合の際、ディスプレイ10の前に軸回転されるように取りつけることも可能である。この信号プレート76は、信号色を担持してもよいし、および/または、”EMPTY”(「空」)という文章項目、または、その吸入器1の中の保存薬剤補給は使い切ってしまったこと、これ以上の用量はこの吸入器1からは得られないことを、間違いなく患者に表示する、同様の情報項目によって標識してもよい。ドラムカウンターの代わりに、ディスプレイ10としてストリップ走行機構を使用することも可能である。溝75の代わりに、ストリップの適切な位置に孔を設け、ヨーク73上のピンなどが、ストリップの該孔に係合して、ロックデバイス71および信号プレート76を作動するようにしてもよい。
【0151】
図11および17に示す、吸入器1の特に好ましい実施態様では、ロックデバイスは、バネレバー停止ロッド81を有する。このロッドは、指定の数の分配用量に達すると、停止位置(
図17、18)から、遮断位置へと移動可能となり、その遮断位置において、閉鎖キャップ4の通路と遮断関係に係合し、そのため、閉鎖キャップ4はもはや、閉鎖位置に向かって移動することができなくなる(
図11)。この配置によって、特に明瞭な信号発信が与えられ、かつ、吸入デバイス1の、これ以上の(不毛な)使用が、したがって、不要な、不足投与が阻止される。この配置では、遮断ロッド81は、前述のように、カウントデバイス11に対しバネ負荷関係に結合することができ、例えば、ロック突起(図示せず)または係合歯によって、その遮断位置に停止させられ、遮断ロッド81はその作動バネの力に抗してその停止位置に押し戻されることができない。これによって、吸入器1の成分部品を破壊することなくしてこの遮断条件を無効にすることができないことを確実にする。その場合、停止ロッド81は、この遮断状態がよりはっきりと認識可能となるように、信号色を持つように設計することもできる。
【0152】
本発明による吸入器1が緊急医療に使用される特定状況のために、ロックあぶみ71の形状を持つロック要素、または遮断ロッド81は、対応規制に合致するよう省略することもできる。より具体的には、この特別の使用状況では、たとえ、正規の数の用量が既に服用された後でも、要すれば、保存チャンバ13から残留量を依然として吸入することができるという選択肢が、薬剤の保存補給が不十分な場合に取られる不足投与に対する保護、すなわち、遮断行動によって確保されるそのような保護よりも優先するべきであるとする見解が採用される場合もある。
【0153】
本発明による吸入器1の好ましい実施態様を使用する通常の使用法に関わる手順を、
図37から47に示す。図示の実施態様、および表示の画像は、
図1、2、11、17、および18の実施態様に一致する。したがって、成分の種々の位置をよりよく見て取ることができるように、
図11、17、および18の参照番号は、これらの図では繰り返さない。
【0154】
図37は、閉鎖キャップ4を有する吸入器1で、投与機構が解放位置にあり、すなわち、変位バネ54(この図には示していない)がストレスから解除され、駆動ロッカー82の形状を取る駆動要素が停止位置にある吸入器を示す。
【0155】
図38は、閉鎖キャップ4を軸回転して開放する、第1相における吸入器1を示す。(第3)回転軸7の周囲における閉鎖キャップ4の軸回転運動において、閉鎖キャップ4のエントレインメント部分64は、動力伝達ロッカー85の操作末端85の裏側に係合し、動力伝達ロッカー85を、第2回転軸84の周囲で軸回転させる。動力伝達ロッカー85は、エントレインメント部分89によって、駆動ロッカー82の開口90の中に係合し、それを、動力伝達ロッカー85の軸回転運動の中に引き込み、そのため、駆動ロッカー82は、変位バネ54の力に抗して、第1回転軸83の周囲で軸回転される(
図56)。駆動ロッカー82のアーム79は、投与スライダー15の移動方向に斜面形状を持つ、投与スライダー15のエントレインメント突起51に対して相対的に、アーム79が該斜面によって広げられるように、動く。アーム79が、投与スライダー15のエントレインメント突起51の斜面を通り過ぎるや否や、それらは、パチンと再び一緒になり(
図39)、その後、投与スライダー15を、反対方向の動きにおいて引き込む。
【0156】
閉鎖キャップ4の操作位置に達すると(
図18参照)、投与機構はストレス負荷され、動力伝達ロッカー85および駆動ロッカー82は、押し出しロッド43によって、変位待機位置に固定される。
【0157】
ここで患者が、吸入器1を通じて空気流を吸い込むと、フラップ42が、その停止位置から偏向される(
図40)。この操作条件では、投与スライダー15は、依然としてその充填位置にあり、カートリッジ3は、周辺雰囲気から密封隔絶される。
【0158】
患者の吸気が、空気通路39において指定の最小空気流を超え、
図41に示すように、フラップ42が起動閾値を超えて偏向されると、押し出しロッド43が、起動閾値を超えたフラップ42の動きによって前方に引っ張られ、そのため、該ロッドは、動力伝達ロッカー85のヨーク88との係合から外れ、このようにして、投与機構の自動運動が可能とされる。変位した変位バネ54の力によって駆動され、駆動ロッカー82および動力伝達ロッカー85は、軸回転して、停止位置の方向に戻る。その場合、駆動ロッカー82のアーム79は、投与スライダー15を、投与スライダー15のエントレインメント突起51を介して、その充填位置からその投与位置へと押しやるので、散剤が、患者によって生み出された空気流によって、投与スライダー15の投与穴17から放出され、最終的には、マウスピース5の吸入開口6を通じて放出される。
【0159】
投与スライダー15が投与位置に達した後、駆動ロッカー82および動力伝達ロッカー85はさらに軸回転され、これによって、駆動ロッカー82のアーム79が、投与スライダー15のエントレインメント突起51との係合から外され、投与スライダー15は、復帰バネ59の力によってその充填位置に押し戻され、このようにして、カートリッジ3の密封完全性は再び確保される(
図42および43)。したがって、カートリッジ3の、特に、保存チャンバ13の気密な密封完全性は、ほんの数分の1秒、すなわち、投与スライダー15が充填位置から投与位置に運ばれ、再び元に戻るのに必要な時間間隔、途切れるだけである。この時間間隔は、このデバイスの構成によってのみ決められるもので、ユーザーによって影響されない。
【0160】
ここで患者は、再び、閉鎖キャップ4を閉鎖位置に戻すことが可能となる(
図44)。この場合、閉鎖キャップ4のエントレインメント部分64が、動力伝達ロッカー85の操作末端86に突き当たる(
図45)。その場合、操作末端86は、フィルムヒンジ87による軸回転によってエントレインメント部分64から遠ざかり(
図46)、軸回転され、エントレインメント部分64を通過し(
図47)、閉鎖キャップ4が閉鎖され、再び次回の活性化のためにエントレインメント部分64によって係合されるや否や、その開始位置に戻る。この配置によってさらに、投与機構がストレス負荷条件にあり、動力伝達ロッカー85および駆動ロッカー82が待機位置にある場合でも、閉鎖キャップ4を開放し、再び閉鎖することができることが確実となる。
【0161】
図19−21、28−31、および48から55に示す、本発明による吸入デバイスの実施態様は、前記少なくとも一つの保存チャンバ13に、カートリッジ把持デバイス100および蓋101が設けられると、いくつかの医学的応用において特に有用となる。この場合、蓋101は、吸入デバイス1の倒置位置において、保存チャンバ13の散剤内容物を受容することが可能な形状を持つ。これによって、試験を含めた、吸入デバイスの製造時において、カートリッジホールダー100および投与スライダー13の使用前取り付けが可能となる。蓋101は、上蓋開放カートリッジとして使用され、薬剤製造ラインにおいて適切量の散剤によって充填され、逆様に把持されたまま吸入デバイス1に直接挿入されてもよい。このようにすると、吸入デバイスは、すぐ使用できる状態で、製薬メーカーから配送することができる。蓋101は、スナップ接続器102によってカートリッジホールダーに密封的に固定される。
【0162】
図19−21、28−31、および48から55から見て取ることができるように、カートリッジ把持デバイス100は、それぞれ蓋101によって覆われている、二つの保存チャンバを含む。すなわち、カートリッジ把持デバイス100は、ツイン投与スライダー15を含む。これによって、二つの異なる薬剤貯留槽13からの、例えば、変性を避けるために一緒に保存してはならない薬剤同士の組み合わせのための、簡単で正確な投与が可能となる。さらに、
図19−21、28−31、および48から55に示す実施態様では、カートリッジ把持デバイス100は、それぞれ蓋101によって覆われている、二つの保存チャンバ13を含む。ここで、カートリッジ把持デバイス100は、ツイン投与スライダー15を含む。
【0163】
本吸入デバイス1では、トリガーデバイス43は、駆動要素53、82のステップ停止要素91と相互作用を持つ係合部分90を有し、該ステップ停止要素91は第1ステップ97を有し、駆動要素は、トリガーデバイス43の係合部分90が、第1ステップ97と相互作用を持つと、中間位置において停止させられる。この状態で、薬剤の投与が起こる。ステップ停止要素91は第2ステップ98を有し、駆動要素53、82は、トリガーデバイス43の係合部分90が第2ステップ98と相互作用を持つ時、その停止位置に保持される。この状態では、
図19および20に示すように、閉鎖キャップ4は閉鎖され、駆動要素53、82は停止位置にあり、フラップ42は閉鎖される。
【0164】
駆動要素53、82の停止位置からスタートし、閉鎖キャップ4が開放されると、キャップ4が軸84の周囲を回転する。
図28および29に示すように、キャップ4のエントレインメント部分94は、駆動要素53、82の基底縁に形成されているスライドガイド93と係合し、変位バネ54の力に抗して駆動要素53、82を上方に移動させる。
【0165】
図30および31に示すように、閉鎖キャップ4が操作位置に達すると、投与機構が引っ張られ、駆動要素53は、駆動要素53の突起96と相互作用を持つトリガーデバイス43の係合部分90によって固定される。フラップ42は閉鎖される。この位置において、有害な作用をもたらすことなく、閉鎖キャップ4を閉鎖し、再開することが可能である。ここで吸入デバイスは吸入に対する準備が整ったことになる。
【0166】
患者が、マウスピース5を通じて吸入を始めると、フラップ42は、バネ99の力に抗して、回転軸80の周囲で回転を始め、駆動要素53の突起96と相互作用を持つトリガーデバイス43の係合部分90を引き戻す。
図48および49を参照されたい。
【0167】
突起96と相互作用を持つトリガーデバイス43の係合部分90から、駆動要素53が解放されるのと同時に、駆動要素53は下方に移動を始め、投与スライダー15のエントレインメント突起51と係合し、投与スライダー15の移動を起動する。投与スライダー15の、このエントレインメント突起51は、吸入器の投与スライダーのための作動デバイス53の対応陥凹と協調する。
図50を参照されたい。そのため、投与スライダー15は、投与スライダー通路16から引き戻され、最終的に、該スライダー15は、その投与位置に達する、
図51。同時に、トリガーデバイス43の係合部分90は、第1ステップ97と係合する。フラップ42が吸入によって完全開放を続ける限り、駆動要素53は、トリガーデバイス43の係合部分90が、第1ステップ97と相互作用を持ち、投与スライダー15を投与位置に保持する間、中間位置に留められる、
図52を参照されたい。
【0168】
一旦吸入過程が完了し、フラップ42が、最初の位置に戻ったならば、トリガーデバイス43の係合部分90が、第2ステップ98と相互作用を持つ間は、第2ステップ98および駆動要素53、82は、その停止位置に保持される。開始時の
図19および20と比較した場合の
図53に示すように、この状態で、閉鎖キャップ4を閉鎖し、サイクルを完了させてもよい。
【0169】
カウントデバイス11は、トリガーデバイス43の係合部分90に接続され、駆動要素53、82のステップ停止要素91は、開口または陥凹92を有し、係合部分90が開口または陥凹92と係合している間、ある指定数の用量が吸入デバイス1から取り出され、したがって保存チャンバ13は空っぽと見なされ、このデバイスをもはや使用すべきではないと判断された場合、駆動要素53、82は、
図54に示すように、変位バネ54によって遮蔽位置に移るように強いられる。