特許第5740781号(P5740781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740781
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】分光装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   G01J3/36
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-18170(P2011-18170)
(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公開番号】特開2012-159353(P2012-159353A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 誠
(72)【発明者】
【氏名】村山 広大
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−207394(JP,A)
【文献】 実開昭62−155329(JP,U)
【文献】 特表2009−532708(JP,A)
【文献】 特開2003−195097(JP,A)
【文献】 特表2006−518459(JP,A)
【文献】 特開2011−017658(JP,A)
【文献】 実開平03−023326(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/115961(WO,A1)
【文献】 特開平03−102229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J3/00−3/52
G01N21/00−21/74
G02B5/18
G02B26/08
H04B10/60
H04J14/00−14/02
H04N5/222−5/257
H04N5/30−5/335
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定光を波長分散素子で波長ごとに分散させ、任意の波長幅に存在する光信号の強度をフォトダイオードアレイで測定する分光装置において、
前記分散光の集光位置に両端が回転可能に支持されるとともに列方向に沿って配列された複数のミラーよりなるミラーアレイが配置され、
前記フォトダイオードアレイには、前記ミラーアレイで反射された光信号が入射されるとともに、
前記フォトダイオードアレイのフォトダイオードの配列数PDと前記ミラーアレイを構成するミラーの配列数MRは、PD>MRに選定されていて、
前記ミラーアレイのミラーを測定したい波長領域に応じて選択的に駆動することを特徴とする分光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光装置に関し、詳しくは、光信号スペクトラム解析の波長分解能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
分光装置は、波長分散素子、波長フィルタなどを用いて被測定光を波長ごとに分離し、任意の波長幅に存在する光信号スペクトラムの強度を求め、この求めた光信号スペクトラムの強度から被測定光の特性を測定する装置である。
【0003】
このような分光装置は、測定対象物質に測定光を照射することにより得られる透過光や反射光に基づいて測定対象物質の組成分析や定量分析を行ったり、特許文献1に記載されているように、光通信におけるWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)信号の測定解析にも用いられている。
【0004】
図4は、特許文献1に記載されている分光装置の一例を示す構成説明図である。図4において、分光器10はポリクロメータ方式と呼ばれるものであり、被測定光が入力され、任意の波長幅に存在する光パワーに対応した出力を測定データとして出力する。
【0005】
分光器10は、光ファイバ11、コリメーティングレンズ12、波長分散素子として用いる回折格子13、集光光学系として用いるフォーカシングレンズ14、光検出モジュール(PDM;Photo Detection Module)として用いるフォトダイオードアレイ15、光シャッター16から構成される。図5は、図4に示す分光器10の主要部分の構成説明図である。
【0006】
光ファイバ11は、被測定光100を分光器10に入射する伝送路である。コリメーティングレンズ12は、光ファイバ11の出射口に対向して設置され、光ファイバ11から出射された被測定光100を平行光にして出射する。
【0007】
回折格子13は、コリメーティングレンズ12からの出射光を所望の角度に回折するため、コリメーティングレンズ12に対して傾けて設置してある。また、回折格子13は被測定光100を波長ごと異なる角度に分離して出射する。フォーカシングレンズ14は、回折格子13からの出射光の光路上に設置され、出射光を収束させる。
【0008】
フォトダイオードアレイ15は、短冊状または点状のフォトダイオードが配列されたものであり、被測定光100が収束する位置となるように設置される。これらフォトダイオードは、入射した被測定光100の光パワーに応じた電流(光電流)を発生し、出力信号として出力する。また、各フォトダイオードには、前もって波長が割り付けられている。波長の割り付けは、被測定光100が回折格子13によって波長ごとに分離されてフォトダイオードアレイに収束する位置と対応している。
【0009】
また、フォトダイオードアレイ15にはフォトダイオードの出力信号を順次選択する図示しない選択回路が設けられていて、この選択回路の出力が分光器10の測定データとして出力される。
【0010】
光シャッター16は、光ファイバ11とコリメーティングレンズ12の間に設けられ、被測定光100を遮断できる。光シャッター16は被測定光100を遮り、その時のフォトダイオードの暗電流レベルを測定し、この値を被測定光100の測定データから減算することにより暗電流のドリフトの影響を除去でき、高精度な測定が実現できる。
【0011】
制御部20は、フォトダイオードアレイ15の選択回路の動作を制御する制御信号を選択回路に出力し、また、選択回路の動作の開始と終了を示す開始信号と終了信号を出力する。
【0012】
変換部30は、分光器10のフォトダイオードアレイ15から出力される測定データを適切な電圧レベルに変換して出力する。変換部30には、電流を電圧に変換するI/V変換回路と、必要に応じて電圧レベルを調整する増幅回路や減衰回路などが設けられる。
【0013】
演算部40には、A/D変換部41、記憶部42、検出部43、加算部44が設けられる。A/D変換部41は、制御部20から入力される開始信号にしたがって、変換部30から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し出力する。記憶部42は、A/D変換部41から出力されたデジタル信号を格納する。
【0014】
検出部43は、記憶部42に格納された測定データを読み出し、読み出した測定データからピーク条件を満たす測定データを検出して出力する。検出部43には、制御部20から終了信号が入力される。加算部44は、検出部43から出力された検出結果と記憶部42に格納された測定データに基づいて演算を行い、この演算結果を出力する。出力部50には、演算部40から出力された結果が入力され、図示しない画面に表示や、図示しない外部装置に出力を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−161655
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、このような分析装置における波長分解能は、フォトダイオードアレイにおけるフォトダイオードの配列集積度(密度)が支配的である。
【0017】
しかし、フォトダイオードアレイにおけるフォトダイオードの配列集積度を現状よりも高めることは、技術的な課題が多くて容易に実現することは困難である。
【0018】
また、フォトダイオードアレイの中に欠陥フォトダイオードが存在すると、そのフォトダイオードの位置に対応する波長が検出できないことになる。
【0019】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、フォトダイオードの配列集積度が比較的高くないフォトダイオードアレイや欠陥フォトダイオードが存在するフォトダイオードアレイであっても、所定の測定波長範囲で高い波長分解能が得られる分光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
被測定光を波長分散素子で波長ごとに分散させ、任意の波長幅に存在する光信号の強度をフォトダイオードアレイで測定する分光装置において、
前記分散光の集光位置に両端が回転可能に支持されるとともに列方向に沿って配列された複数のミラーよりなるミラーアレイが配置され、
前記フォトダイオードアレイには、前記ミラーアレイで反射された光信号が入射されるとともに、
前記フォトダイオードアレイのフォトダイオードの配列数PDと前記ミラーアレイを構成するミラーの配列数MRは、PD>MRに選定されていて、
前記ミラーアレイのミラーを測定したい波長領域に応じて選択的に駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
これらにより、所定の測定波長範囲で高い波長分解能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例の主要部分を示す構成説明図である。
図2図1のミラーアレイ17の具体例を示す構成説明図である。
図3】ミラーアレイ17の他の具体例を示す構成説明図である。
図4】従来の分光装置の一例を示す構成説明図である。
図5図4に示す分光器10の主要部分の構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例の主要部分を示す構成説明図であって、(A)はその平面図、(B)はその側面図であり、図5と共通する部分には同一の符号を付けている。図1図5の相違点は、図1では図5のフォトダイオードアレイ15に代えてミラーアレイ17を設け、ミラーアレイ17で反射された光を集光光学系18を介してフォトダイオードアレイ15上に集光していることである。
【0026】
図2は、ミラーアレイ17の具体例を示す構成説明図である。ミラーアレイ17は、複数のミラー(たとえばマイクロミラーMM)が、支持部材17aに形成された矩形の取付窓17bの列方向に沿って等間隔に配列されるとともにそれぞれの両端が回転軸17cを介して水平面に対して回転可能に取り付けられたものである。これらマイクロミラーMMは、図示しない静電駆動手段や電磁駆動手段により、水平面に対して所望の角度回転するように選択的に駆動される。
【0027】
ここで、フォトダイオードアレイ15を構成するフォトダイオードの配列数PDとミラーアレイ17を構成するミラーの配列数MRは、
PD>MR
になるように選定されている。
【0028】
たとえば、250個のフォトダイオードが配列されたフォトダイオードアレイ15を用いて測定波長範囲1000nmのポリクロ型分光器を実現する場合、図5に示す従来の構成ではその波長分解能はフォトダイオードアレイ15の分解能と等しく、4nmになる。
【0029】
これに対し、本発明では、たとえば250個のフォトダイオードが配列されたフォトダイオードアレイ15と、10分割されたミラーアレイ17を用いる。これにより、ミラーアレイ17上における波長の分解能は2nmになる。
【0030】
測定動作を説明する。
はじめに、測定波長範囲1000nmのうちの前半500nm分を、10分割されたミラーアレイ17の5個のマイクロミラーMMによりフォトダイオードアレイ15の250個のフォトダイオードに向けて反射させ、フォトダイオードアレイ15上にフォーカスさせて測定する。このとき、測定波長範囲1000nmのうちの後半500nmを受けるマイクロミラーMMについては、反射光がフォトダイオードアレイ15に入らない方向に向ける。
【0031】
次に、測定波長範囲1000nmのうちの後半500nm分を受けるマイクロミラーMMを動かし、同様にフォトダイオードアレイ15により受光して測定を行う。
【0032】
全波長域での測定が不要である場合には、測定したい特定波長に対応するマイクロミラーMMのみを選択的にフォトダイオードアレイ15に向けて調整し、測定を行う。たとえば前述と同様、測定波長範囲1000nmにおけるはじめの50nmの部分と550nmの部分を測定したい場合には、測定対象光を10分割されたミラーアレイ17の1番目と6番目のマイクロミラーMMによりフォトダイオードアレイ15の250個のフォトダイオードに向けて反射させ、フォトダイオードアレイ15上にフォーカスさせて測定する。
【0033】
フォトダイオードアレイ15として、欠陥フォトダイオードを含むものを用いることもできる。この場合、1回目の測定でミラーアレイ17の反射光を測定することにより欠陥フォトダイオードに該当する波長部分を識別し、2回目以降の測定ではフォトダイオードアレイ15の正常なフォトダイオードで検出するようにミラーアレイ17を構成するマイクロミラーMMの反射角度を調整する。
【0034】
このようにフォトダイオードアレイ15とミラーアレイ17を組み合わせて複数回の測定を行うことにより、従来のようにフォトダイオードアレイ15単体で構成された場合に比べて、より高い波長分解能が得られる。
【0035】
そして、フォトダイオードアレイ15による同時読み取りにより、測定の高速化も達成できる。
【0036】
さらに、一部のフォトダイオードが欠陥を有するようなフォトダイオードアレイ15であっても、それらの欠陥フォトダイオードに反射光が入射されないようにミラーアレイ17のマイクロミラーMMの反射角度を調整することにより、欠陥フォトダイオードの影響を受けることなく測定できる。
【0037】
なお、ミラーアレイ17のマイクロミラーMMの反射角度は、各波長が測定できるようにあらかじめフォトダイオードアレイ15に向けて調整しておき、マイクロミラーMMのそれぞれに個別にたとえばシャッターを設けて選択的に遮光するようにしてもよい。
【0038】
また、ミラーアレイ17の各マイクロミラーMMの反射角度があらかじめ分かっている場合でも、動作時にその都度スキャンして駆動条件を求めて保持することにより、高精度の制御が行える。
【0039】
図3は、ミラーアレイ17の他の具体例を示す構成説明図である。図3において、支持部材は、2重構造として形成されている。すなわち、マイクロミラーMMの両端が回転軸17cを介して水平面に対して回転可能に取り付けられた矩形の取付窓17dを有する第1の支持部材17eの長手方向の両端は、回転軸17fを介して第2の支持部材17gに形成された矩形の取付窓17hに回転可能に取り付けられている。
【0040】
図3の構成によれば、第1の支持部材17e全体の角度を第2の支持部材17gの水平面に対して任意の角度で回転させることができることから、光学系の調整条件を緩和できるとともに、温度変化や経年変化によるマイクロミラーMMの位置ずれなどを適切に補正できる。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、フォトダイオードの配列集積度が比較的高くないフォトダイオードアレイや欠陥フォトダイオードが存在するフォトダイオードアレイであっても、所定の測定波長範囲で高い波長分解能が得られる分光装置が実現でき、各種の分光分析装置の分光装置として好適である。
【符号の説明】
【0042】
13 回折格子
14、18 集光光学系(フォーカシングレンズ)
15 フォトダイオードアレイ
17 ミラーアレイ
17a 支持部材
17b、17d、17h 取付窓
17c、17f 回転軸
17e 第1の支持部材
17g 第2の支持部材
図2
図3
図4
図1
図5