特許第5740824号(P5740824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740824
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20150611BHJP
   H02M 5/297 20060101ALI20150611BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M5/297
   H02P7/63 Z
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-67390(P2010-67390)
(22)【出願日】2010年3月24日
(65)【公開番号】特開2011-200089(P2011-200089A)
(43)【公開日】2011年10月6日
【審査請求日】2013年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077931
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100110939
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100110940
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋田 高久
(74)【代理人】
【識別番号】100113262
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 祐二
(74)【代理人】
【識別番号】100115059
【弁理士】
【氏名又は名称】今江 克実
(74)【代理人】
【識別番号】100117581
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 克也
(74)【代理人】
【識別番号】100117710
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100124671
【弁理士】
【氏名又は名称】関 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100131060
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 靖也
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】関本 守満
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
(72)【発明者】
【氏名】遠山 瑛司
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−186588(JP,A)
【文献】 特開2009−027818(JP,A)
【文献】 特開2007−318984(JP,A)
【文献】 特開2004−248395(JP,A)
【文献】 特開2000−175500(JP,A)
【文献】 特開2002−051589(JP,A)
【文献】 特開2008−113501(JP,A)
【文献】 特開平09−047085(JP,A)
【文献】 特開2001−238455(JP,A)
【文献】 特開昭58−036175(JP,A)
【文献】 特開平10−066372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を有し、入力される電力を該スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換して誘導負荷(3)へ出力するように構成された変換部(13)を備えた電力変換装置であって、
上記誘導負荷(3)への電力供給を停止する際に、該誘導負荷(3)に流れる電流が、所定値以下であるかどうかを判定する電流判定部(16)と、
上記電流判定部(16)によって上記誘導負荷(3)に流れる電流が上記所定値以下であると判定されるまで、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)にスイッチング動作を継続させるスイッチング制御部(15)と、
を備え、
入力される電力は単相の交流電力であり、
上記スイッチング制御部(15)は、上記誘導負荷(3)に流れる各相の電流(iu,iv,iw)が上記単相交流の位相に応じて脈動して、上記各相の電流(iu,iv,iw)の絶対値和が周期的に所定の最小目標値になるように、それぞれの上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を制御し、
上記電流判定部(16)は、上記単相交流の位相に基づいて、上記誘導負荷(3)に流れる電流(iu,iv,iw)が上記所定値以下であるかどうかを判定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項の電力変換装置において、
入力が単相の交流電源(2)に接続され、単相交流を全波整流して上記変換部(13)に供給する整流部(11)を備え、
上記変換部(13)の入力には、入力の両端電圧の脈動幅の最大値が最小値の2倍以上となる容量のコンデンサ(12)が接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
求項の電力変換装置において、
上記変換部(31)は、入力に交流電源(2)が接続され、上記交流電源(2)から供給される交流電力を、直接、所定の複数の相の交流電力に変換することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項からの何れか一つの電力変換装置において、
上記誘導負荷(3)は、力行運転のみを行う負荷に対して動力を出力することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング動作によって電力変換を行って誘導負荷に対して電力を供給する変換部を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のスイッチング素子をスイッチング動作させることにより、入力される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換して、誘導負荷に供給するように構成されたインバータ部を備えた電力変換装置が知られている。このような電力変換装置では、一般的に、上記インバータ部の入力側に、整流回路によって整流された交流電源の交流電力を平滑化するための比較的、容量の大きい電解コンデンサが設けられている。
【0003】
一方、例えば特許文献1に開示されるように、電源周波数に起因する電圧変動を吸収可能な静電容量の大きい電解コンデンサを、インバータ部のスイッチング素子のスイッチング動作時に生じる電圧変動のうちキャリア周波数に対応する変動成分のみを吸収可能な小容量のコンデンサに変更することにより、整流部分の小型化及びコスト低減を図る構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−51589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、インバータ部によって誘導負荷に電力を供給するように構成された電力変換装置では、該インバータ部の駆動を停止しても、内部にインダクタンス成分を有する誘導負荷からインバータ部に電流が流れ続ける場合がある。そうすると、インバータ部に過大なサージ電圧がかかり、該インバータ部が破壊される可能性がある。
【0006】
また、上述のようなサージ電圧が発生すると、インバータ部の還流ダイオードを介してコンデンサに電流が流れるため、該コンデンサが充電される。この充電により、コンデンサの両端、すなわちDCリンクに過電圧が発生した場合にも、インバータ部が破壊される可能性がある。
【0007】
これに対して、DCリンクに抵抗を有するブレーキ回路を設けたり、PWMコンバータなどを用いて回生可能な構成にしたりする方法などが考えられる。しかしながら、ブレーキ回路を設けると、該ブレーキ回路の抵抗で電力が消費されてしまい、電力変換装置の効率の観点から好ましくない。また、PWMコンバータなどを設けると、回路構成や制御が複雑になり、装置全体のコストアップにつながる。
【0008】
一方、上記特許文献1の構成のような小容量のコンデンサを有する電力変換装置では、コンデンサの容量が小さいため、DCリンクの電圧が増大しやすい。そのため、上記特許文献1の構成の電力変換装置では、上述のようなブレーキ回路やPWMコンバータを設けても高速に動作させなければならず、高速な制御器が必要になるなど、さらなる回路構成及び制御の複雑化を招くことになる。また、上記特許文献1のような構成において、異常時の過電圧を防止するために過電圧防止機構を設けることが考えられるが、インバータ部が停止する毎に該過電圧防止機構が動作して、該過電圧防止機構の動作頻度が多くなるため、その分、過電圧防止機構の耐久性の向上を図る必要があり、装置全体のコストアップにつながる。
【0009】
本発明は、かかる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誘導負荷に電力を供給する、インバータ部のような変換部を備えた電力変換装置において、該変換部の駆動を停止しても構成機器が損傷を受けないような構成を低コストな構成により実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置(1)では、誘導負荷(3)への電力供給を停止する際に、該誘導負荷(3)に流れる電流が所定値以下になるまで変換部(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)にスイッチング動作を行わせるようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明は、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を有し、入力される電力を該スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作によって所定の周波数の交流電力に変換して誘導負荷(3)へ出力するように構成された変換部(13)を備えた電力変換装置を対象とする。
【0012】
そして、上記誘導負荷(3)への電力供給を停止する際に、該誘導負荷(3)に流れる電流が、所定値以下であるかどうかを判定する電流判定部(16)と、上記電流判定部(16)によって上記誘導負荷(3)に流れる電流が上記所定値以下であると判定されるまで、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)にスイッチング動作を継続させるスイッチング制御部(15)と、を備えているものとする。
【0013】
そして、入力される電力は単相の交流電力であり、上記スイッチング制御部(15)は、上記誘導負荷(3)に流れる各相の電流(iu,iv,iw)が上記単相交流の位相に応じて脈動して、上記各相の電流(iu,iv,iw)の絶対値和が周期的に所定の最小目標値になるように、それぞれの上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を制御し、上記電流判定部(16)は、上記単相交流の位相に基づいて、上記誘導負荷(3)に流れる電流(iu,iv,iw)が上記所定値以下であるかどうかを判定するものとする。
【0014】
以上の構成により、変換部(13)から誘導負荷(3)への電力供給を停止する際に、該変換部(13)内のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作が急に停止するのではなく、誘導負荷(3)に流れる電流を所定値以下まで低下させた後、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止させることができる。これにより、変換部(13)の駆動停止によって発生するサージ電圧を低く抑えることができ、該サージ電圧やコンデンサの充電による過電圧によって電力変換装置(1)内の構成部品が損傷を受けるのを防止できる
【0015】
のように制御された変換部(13)では、相電流(iu,iv,iw)の絶対値和が周期的に上記最小目標値になるので、上記単相交流の位相によって、相電流(iu,iv,iw)の絶対値和が最小になるタイミングが分かることになる。そこで、この電流判定部(16)は、上記単相交流の位相に基づいて、誘導負荷(3)に流れる電流が、上記所定値以下であるかどうかを判定する。
【0016】
また、第の発明は、第の発明の電力変換装置において、入力が単相の交流電源(2)に接続され、単相交流を全波整流して上記変換部(13)に供給する整流部(11)を備え、上記変換部(13)の入力には、入力の両端電圧の脈動幅の最大値が最小値の2倍以上となる容量のコンデンサ(12)が接続されているものとする。
【0017】
この構成では、一般的な電力変換装置よりもコンデンサの静電容量が小さくなるため、変換部(13)の駆動停止によってコンデンサ(12)の電圧が上昇すると、該コンデンサ(12)も破損しやすい。しかしながら、この構成では、変換部(13)を停止させる際に、該変換部(13)に流れ続ける電流を小さくすることができ、該電力変換装置(1)内に発生するサージ電圧を低下させることができる。したがって、上述のような小容量のコンデンサ(12)を有する電力変換装置(1)において、変換部(13)の駆動停止時にサージ電圧によって構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0018】
また、第の発明は、第1の発明の電力変換装置において、上記変換部(31)は、入力に交流電源(2)が接続され、上記交流電源(2)から供給される交流電力を、直接、所定の複数の相の交流電力に変換するものとする。
【0019】
この構成では、交流を所定の特性の交流に変換する、いわゆる直接形電力変換装置において、第1の発明と同様に、サージ電圧を低く抑えることが可能になる。
【0020】
また、第の発明は、第1からの発明の何れか一つの電力変換装置において、上記誘導負荷(3)は、力行運転のみを行う負荷に対して動力を出力するものとする。
【0021】
回生運転も行う負荷に対して誘導負荷(3)から動力を出力する場合には、回生時に比較的長時間に亘って変換部(13)側に電流が流れるため、上記各発明のような構成では電力変換装置の損傷を防止することは難しい。しかしながら、上述のように力行運転のみを行う負荷に対して誘導負荷(3)から動力を出力する場合であれば、上記各発明の構成を適用することにより、変換部(13)の駆動停止時に構成部品が損傷を受けるような電圧が電力変換装置(1)の内部に印加されるのを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電力変換装置(1)によれば、誘導負荷(3)への電力供給を停止する際に、該誘導負荷(3)に流れる電流が所定値以下になるまで、該スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続させるため、変換部(13)の駆動停止時に電力変換装置(1)内に過大な電圧がかかって構成部品が損傷を受けるのを防止できる。しかも、ブレーキ回路等を設ける必要がなくなるとともに、装置停止時に過電圧防止機構が動作しないため、装置全体のコスト低減を図れる
【0023】
た、第の発明によれば、各相の電流(iu,iv,iw)を検出することなく、該電流(iu,iv,iw)が所定値以下であるかどうかを判定することができるので、電流判定部(16)における制御がより容易になる。
【0024】
さらに、第の発明によれば、変換部(13)の入力側に設けるコンデンサ(12)を小容量なものとした構成において、変換部(13)の駆動停止時に電力変換装置の構成部品がサージ電圧によって損傷を受けるのを防止することが可能になる。
【0025】
また、第の発明によれば、いわゆる直接形電力変換装置において、変換部(13)の駆動停止時に電力変換装置の構成部品がサージ電圧によって損傷を受けるのを防止することが可能になる。
【0026】
また、第の発明によれば、上記誘導負荷(3)は、力行運転のみを行う負荷に対して動力を出力するため、回生運転も行う負荷に対して動力を出力する場合に比べて回生側に電流が流れる時間が短い。そのため、上記第1から第9の発明の構成により、構成部品がサージ電圧によって損傷を受けるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の関連技術1に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図2図2は、モータへの電力供給を停止する際の制御部の動作を示す図である。
図3図3は、図2における制御部の動作を示すフローである。
図4図4は、従来の静電容量のコンデンサを備えた電力変換装置からモータへ出力される三相の電流波形を示す図である。
図5図5は、図4のような波形を有する電流を絶対値に変換した場合の波形を示す図である。
図6図6は、小容量のコンデンサを備えた電力変換装置からモータへ出力される三相の電流波形を示す図である。
図7図7は、図6のような波形を有する電流を絶対値に変換した場合の波形を示す図である。
図8図8は、関連技術1の変形例2にかかる電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図9図9は、本発明の関連技術2に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
図10図10は、実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
《発明の関連技術1》
−全体構成−
本発明の関連技術1に係る電力変換装置(1)の概略構成を図1に示す。この電力変換装置(1)は、コンバータ回路(11)と、コンデンサ(12)と、インバータ回路(13)(変換部)とを備えていて、単相交流電源(2)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、三相交流モータ(3)(誘導負荷、以下、モータともいう)に供給するように構成されたものである。なお、この三相交流モータ(3)は、例えば、空調機の冷媒回路に設けられる圧縮機(負荷)などを駆動するためのものである。すなわち、上記電力変換装置(1)は、力行運転のみを行う負荷を駆動させるための誘導負荷に電力を供給するように構成されている。
【0030】
上記コンバータ回路(11)は、上記交流電源(2)に接続され、交流の電圧を全波整流するように構成されている。このコンバータ回路(11)は、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線されてなるダイオードブリッジ回路であり、上記交流電源(2)に対して接続されている。すなわち、コンバータ回路(11)は、本発明の整流部の一例である。
【0031】
上記コンデンサ(12)は、上記コンバータ回路(11)と後述するインバータ回路(13)との間に設けられている。このコンデンサ(12)は、例えばフィルムコンデンサによって構成されていて、インバータ回路(13)の後述するスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がスイッチング動作する際に生じるリプル電圧(キャリア周波数に対応する電圧変動)のみを吸収可能な静電容量を有するように構成されている。すなわち、上記コンデンサ(12)は、上記コンバータ回路(11)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。
【0032】
これにより、上記コンデンサ(12)の両端電圧の波形は、周波数f(Hz)の単相電圧の場合には2f(Hz)で脈動し、周波数f(Hz)の三相電圧の場合には6f(Hz)で脈動する。また、周波数f(Hz)の単相電圧の場合には、上記コンデンサ(12)は、両端電圧の脈動の最大値が最小値の2倍以上になるように構成されている。
【0033】
上記インバータ回路(13)は、上記コンバータ回路(11)の出力側に、上記コンデンサ(12)に対して並列に接続されている。このインバータ回路(13)は、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)(例えば三相交流であれば6個)がブリッジ結線されてなる。すなわち、上記インバータ回路(13)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備えていて、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点がそれぞれ上記三相交流モータ(3)のコイル(3a,3b,3c)に接続されている。
【0034】
上記インバータ回路(13)は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、上記コンバータ回路(11)の出力電圧を所定の周波数の三相交流電圧に変換して、上記三相交流モータ(3)へ供給するように構成されている。なお、本実施形態では、上記各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して、それぞれ、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。
【0035】
また、上記電力変換装置(1)は、上記インバータ回路(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を駆動制御するための制御部(14)を備えている。この制御部(14)は、運転や停止を指示する運転指令が入力されると、上記インバータ回路(13)から検出される電流値をその指令に対応する電流値に近づけるように、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して駆動信号を出力するように構成されている。すなわち、上記制御部(14)では、インバータ回路(13)内を流れる電流に対してフィードバック制御が行われる。
【0036】
上記制御部(14)は、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)をスイッチング動作させるための駆動信号を出力するスイッチング制御部(15)と、上記インバータ回路(13)からモータ(3)への電力供給を停止する際に、該モータ(3)に流れる電流が所定値(電流を絶対値に変換した場合の値。本実施形態のような交流の場合には、図2に示す所定範囲Xに相当する。以下同じ。)以下であるかどうかを判定する電流判定部(16)とを備えている。
【0037】
上記電流判定部(16)は、モータ(3)に流れる電流が、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作停止時に生じるサージ電圧が電力変換装置(1)の構成部品の耐圧よりも小さくなるような所定値以下であるかどうかを判定するように構成されている。また、上記電流判定部(16)は、モータ(3)に流れる電流が上記所定値以下の場合には、上記スイッチング制御部(15)に対してスイッチング動作の停止を指示する停止信号を出力するように構成されている。ここで、上記構成部品とは、インバータ回路(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)やダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)、コンデンサ(12)、コンバータ回路(11)のダイオード(D1〜D4)などを意味する。
【0038】
上記スイッチング制御部(15)は、上記制御部(14)内の図示しない指令生成部で生成される電流指令に応じてスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)をスイッチング動作させるように構成されている。また、上記スイッチング制御部(15)は、上記電流判定部(16)からスイッチング動作を停止するための停止信号が出力されるまで、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続するように構成されている。さらに、上記スイッチング制御部(15)は、停止の運転指令が制御部(14)に入力された場合には、モータ(3)に流れる電流を上記所定値以下になるまで低下させるように、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続するように構成されている。すなわち、上記スイッチング制御部(15)は、停止の運転指令が入力されると、上記電流判定部(16)から停止信号が出力されるまで、モータ(3)に流れる電流を低下させるように上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)にスイッチング動作を継続させる。
【0039】
−制御部の動作−
以下で、上記制御部(14)の動作を図2及び図3に基づいて説明する。なお、以下の説明では、説明簡略化のために、三相交流モータ(3)の一相分について説明する。
【0040】
図2に示すように、制御部(14)に対して、停止という運転指令が入力された場合、従来であればスイッチング動作も停止させるが、本発明では、誘導負荷であるモータに流れる電流が所定範囲X内(所定値以下)になるまで、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続させる。具体的には、制御部(14)へ運転停止の指令信号が入力されても、電流判定部(16)によってモータに流れる電流が所定範囲内(所定値以下)ではないと判定されている間は、スイッチング制御部(15)によってスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対する駆動信号の変調度を徐々に下げていく。これにより、インバータ回路(13)からモータへ供給される電流が徐々に低下する。そして、上記電流判定部(16)によってモータに流れる電流が上記所定範囲内(所定値以下)であると判定されると、上記スイッチング制御部(15)によって上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止する。
【0041】
図3に上記制御部(14)の動作フローを示す。この図3のフローがスタートすると、まず、ステップS1で、モータに流れる電流の絶対値(電流値)が所定値以下であるかどうかが判定される。このステップS1で該モータに流れる電流の絶対値が所定値以下であると判定された場合(YESの場合)には、ステップS2に進んで、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止し、このフローを終了する(エンド)。
【0042】
一方、上記ステップS1において、モータに流れる電流の絶対値が所定値以下ではないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS3に進んで、スイッチング制御部(15)へ出力する電流指令を下げて、モータに流れる電流を低下させる。その後、上記ステップS1に戻ってモータ(3)に流れる電流の絶対値が所定値以下であるかどうかの判定を再度行い、該電流の絶対値が所定値以下になるまで上記ステップS1、S3を繰り返す。
【0043】
上述のような構成により、停止の運転指令が制御部(14)に入力されても、モータに流れる電流が所定範囲内になるまでインバータ回路(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作が停止しないため、該スイッチング動作の停止によってモータ側からインバータ回路(13)内へ電流が流れ込んで電力変換装置(1)内の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。すなわち、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)は、モータに流れる電流が、スイッチング動作を停止したときに生じるサージ電圧が構成部品の耐圧以下の電圧となる所定値以下になるように、スイッチング動作が継続され、徐々に電流が下げられる。これにより、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作が停止したときでも、モータ側から電力変換装置(1)内に過大な電流が流れ込んで該電力変換装置(1)の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0044】
ここで、上記モータ(3)に流れる電流が所定範囲内かどうかの判定は、交流電源(2)の電源周期に基づいて決められる期間(例えば電源周期の1/4周期以上の期間)内で電流の最大値を求めて行うものとする。上記図2は、説明簡略化のために、電流がほとんど脈動していない場合、すなわちコンデンサの容量が大きい従来の場合の電流波形を用いているが、本実施形態のように、コンデンサの容量が小さく、交流電源(2)の電源周波数に応じてモータ(3)に流れる電流が大きく脈動する場合でも、上記期間内で電流の最大値を求めるようにすればよい。この場合、上記電流判定部(16)は、上記期間内で電流の最大値を検出可能に構成されている。
【0045】
また、上記図2では、説明簡略化のために三相交流モータ(3)の一相分の電流波形を示しているが、図4及び図6に示すような三相分の電流波形には、以下のようにしてモータ(3)に流れる電流が所定値以下かどうかを判定することもできる。図4に示すように、正弦波状の三相交流の場合(コンデンサの容量が比較的、大きい一般的な電力変換装置の場合)には、図5に示すような電流の絶対値に変換して電流の最大値を求めるか、三相の電流の二乗和を算出して最大値を求める。
【0046】
より詳しくは、上記図5によって電流の最大値を直接、求める場合、電流の絶対値は、図5に太線で示すように、ピーク値Imaxと√3/2Imaxとの間で変動するため、この変動範囲内の電流を検出する。なお、この変動範囲内であれば、正確な電流のピーク値を求められなくても、ほぼピーク値に近い値を求めることができるため、本発明では特に問題にならない。この場合、上記電流判定部(16)は、電源周期に対応して所定期間の電流を検出可能に構成されていてもよいし、単にモータ(3)に流れる電流を検出するように構成されていてもよい。
【0047】
一方、三相の電流の二乗和を算出して最大値を求める場合には、三相の電流iu、iv、iwの二乗和iu^2+iv^2+iw^2=3/2Imax^2を用いて、電流のピーク値Imaxを算出することができる。すなわち、この二乗和を用いることで、電流のピーク値を正確に求めることができる。なお、このように二乗和を用いて電流のピーク値を求める方法では、ピーク値Imaxを求めて上記所定値と比較してもよいし、ピーク値Imax^2を上記所定値の二乗と比較してもよい。この場合、上記電流判定部(16)は、三相の電流の二乗和を算出して、その計算結果に基づいてモータ(3)に流れる電流が上記所定範囲内かどうかを判定可能に構成されている。
【0048】
同様に、本実施形態のようにコンデンサの容量が小さくて、図6に示すように、交流電源(2)の電源周波数に応じてモータ(3)に流れる三相の電流が大きく脈動する場合でも、図7に示すような電流の絶対値に変換して電源周期の1/4周期以上の期間で電流の最大値を求めるか、該期間で三相の電流の二乗和を算出して最大値を求める。また、三相の電流の二乗和iu^2+iv^2+iw^2をsin^2(2πft)で除して、電流の最大値を求める方法も考えられる。ここで、fは電源周波数を意味する。図6のようにモータ(3)に流れる三相の電流が大きく脈動する場合、各相の電流(絶対値)の包絡線は、図7に示すように、Im×sin(2πft)の絶対値(ただし、Imは所定の定数)と表せ、各相電流は、電源周期に応じて、この包絡線の振幅で変動している。そこで、三相の電流の二乗和をsin^2(2πft)で除すことにより、電源周期に関係なく電流の最大値(一定値)を求めることができる。なお、この方法の場合、sin^2(2πft)が0に近い値の場合には計算結果が発散するため、この方法による電流の最大値の検出は行わない。
【0049】
上述のように三相の電流の二乗和をsin^2(2πft)で除して最大値を求める場合、上記電流判定部(16)は、三相の電流の二乗和をsin^2(2πft)で除して、その結果に基づいてモータ(3)に流れる電流が上記所定範囲内かどうかを判定するように構成されている。すなわち、上記電流判定部(16)は、上記モータ(3)に流れる電流の二乗和を算出した後、その計算結果と上記交流電源の電源電圧の変動成分とに基づいて該電源電圧の電圧変動によって変動しない一定値を算出し、その一定値を用いて、上記モータ(3)に流れる電流が上記所定範囲内であるかどうかを判定するように構成されていてもよい。
【0050】
−実施形態の効果−
以上より、インバータ回路(13)のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止する際、モータ(3)に流れる電流が、インバータ回路(13)の駆動停止時に発生するサージ電圧が電力変換装置(1)内の構成部品の耐圧よりも小さい所定値以下となるまで、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続するため、インバータ回路(13)の駆動を停止したときに誘導負荷であるモータ(3)から該インバータ回路(13)に過大な電流が流れるのを防止できる。したがって、上述の構成により、上記インバータ回路(13)の駆動停止時に、電力変換装置(1)に過大なサージ電圧がかかるのを防止でき、これにより、該電力変換装置(1)内の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0051】
よって、上述のような構成にすることで、電力変換装置内にブレーキ回路等を設ける必要がなくなるとともに、装置停止時に過電圧にならないため、変換部の駆動停止時に過電圧防止機構が動作するのを防止できる。これにより、装置全体としてコスト低減を図れる。
【0052】
しかも、モータ(3)に流れる電流が徐々に小さくなるように、上記インバータ回路(13)内のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対する駆動信号の変調度を小さくすることで、上記モータ(3)に流れる電流をより確実に上記所定値以下にすることができる。
【0053】
また、モータ(3)に流れる三相の電流の二乗和によって最大値を求めることにより、精度良く電流の最大値を求めることができる。特に、コンデンサの容量が小さいため、モータ(3)に流れる電流が大きく脈動する場合には、その計算期間を電源周期に応じて設定することで、より正確に電流の最大値を求めることができる。しかも、三相の電流の二乗和を、sin^2(2πft)で除すことにより、電流の脈動の影響を受けることなく電流の最大値を求めることが可能となり、該最大値を容易に算出することができる。
【0054】
関連技術1の変形例1》
上記関連技術1については、以下のような構成としてもよい。
【0055】
上記実施形態では、交流電源として単相交流電源(2)を用いているが、この限りではなく、三相の交流電源を用いてもよい。当然のことながら、この場合には、6個のダイオードによってコンバータ回路を構成する必要がある。
【0056】
また、電流判定部(16)では、ある瞬間における三相交流からの検出値(以下、電流瞬時値という)に基づいて、モータ(3)に流れる電流が、上記所定値以下であるかどうかを判定するようにしてもよい。電流瞬時値としては、ある瞬間の相電流の二乗和や相電流の絶対値の最大値などが一例として考えられる。
【0057】
また、上記関連技術1では、電力変換装置(1)のコンデンサ(12)を、交流電源(2)の電圧変動は吸収できないが、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作時に生じる電圧変動のうちキャリア周波数に対応する成分は吸収可能な静電容量を有するものとしているが、この限りではなく、一般的な電解コンデンサであってもよい。この場合には、モータ(3)に流れる電流が脈動しない(図4参照)ため、電流の最大値を求める際は、既述のとおり、図5に示すような電流の絶対値に変換して電流の最大値を求めるか、三相の電流の二乗和を算出して最大値を求めればよい。
【0058】
関連技術1の変形例2》
図8は、関連技術1の変形例2にかかる電力変換装置(20)の概略構成を示す回路図である。この例では、関連技術1の電力変換装置(1)における、コンバータ回路(11)の代わりにコンバータ回路(21)を設け、コンデンサ(12)の代わりにクランプ回路(22)を設けたものである。このクランプ回路(22)は、インバータ回路(13)を介してモータ(3)(誘導負荷)からコンバータ回路(11)側に流れる誘導電流を蓄積し、一定の電圧に保持する回路である。
【0059】
また、コンバータ回路(21)は、交流電源(2)として三相交流電源が接続され、その三相交流を整流して出力する。すなわち、コンバータ回路(21)は、本発明の整流部の一例である。本変形例のコンバータ回路(21)は、6個のトランジスタ(Q1,Q2,…,Q6)と6個のダイオード(D5,D6,…,D10)を備えている。6個のトランジスタ(Q1,Q2,…,Q6)は、ブリッジ接続されている。また、これらのトランジスタのうち、トランジスタ(Q1,Q2,Q3)は、エミッタにダイオード(D5,D6,D7)のアノードがそれぞれ接続されている。また、ダイオード(D5,D6,D7)のそれぞれカソードは、正側の直流リンク(L1)に接続されている。一方、トランジスタ(Q4,Q4,Q6)は、コレクタにダイオード(D8,D9,D10)のカソードがそれぞれ接続されている。また、ダイオード(D8,D9,D10)は、アノードが負側の直流リンク(L2)にそれぞれ接続されている。この構成でも、関連技術1のコンバータ回路(11)と同様に、交流電源(2)にインバータ回路(13)からの電流の回生はできない。
【0060】
本変形例においても関連技術1と同様に、電流判定部(16)によって誘導負荷(3)に流れる電流が上記所定値以下であると判定されるまでスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を継続することで、インバータ回路(13)の駆動を停止したときに誘導負荷であるモータ(3)からインバータ回路(13)に過大な電流が流れるのを防止できる。したがって、本変形例でも、上記インバータ回路(13)の駆動停止時に、電力変換装置(20)内の構成部品に過大なサージ電圧がかかるのを防止でき、これにより、電力変換装置(20)内の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0061】
《発明の実施形態
本発明の実施形態では、モータ(3)に流れる電流が上記所定値以下かどうかの判定が、上記関連技術1よりも、より簡単な制御で実現可能になる例を説明する。実施形態の電力変換装置は、関連技術1の制御部(14)の構成を変更したものである。具体的には、本実施形態でも制御部(14)は、スイッチング制御部(15)と電流判定部(16)とを備え、スイッチング制御部(15)の構成は、関連技術1のものと同じ構成であるが、電流判定部(16)の構成が関連技術1のものとは異なる構成を有している。
【0062】
この実施形態でも、インバータ回路(13)の負荷は、三相交流モータ(3)(誘導負荷)であり、図6に示したように、交流電源(2)の電源周波数に応じてモータ(3)に流れる三相の電流が脈動(すなわちモータ(3)のトルクが変動)するように、スイッチング制御部(15)がインバータ回路(13)を制御している。詳しくは、スイッチング制御部(15)は、上記モータ(3)に流れる各相の電流(iu,iv,iw)(以下、モータ電流ともいう)が単相交流電源(2)の出力(単相交流)の周波数に応じた周波数で脈動して、各相の電流(iu,iv,iw)の絶対値和が周期的に所定の最小目標値になるように、インバータ回路(13)のそれぞれのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を制御しているのである。図6の例では、上記単相交流の位相0°、180°、…(電圧の正負が入れ替わる、いわゆるゼロクロスのタイミング)付近で各相の電流(iu,iv,iw)が最小(概ねゼロ)になるように制御している(図6におけるT1、T2、T3のタイミングを参照)。すなわち、このインバータ回路(13)では、上記最小目標値は概ねゼロであり、相電流(iu,iv,iw)の絶対値和が周期的に最小値になる。
【0063】
一方、本実施形態の電流判定部(16)は、上記単相交流の位相に基づいて、モータ電流(iu,iv,iw)が上記所定値以下であるかどうかを判定するようになっている。既述の通り、モータ電流(iu,iv,iw)の絶対値和は、周期的に最小値をとる(図6を参照)。すなわち、上記単相交流の位相によって、相電流(iu,iv,iw)の絶対値和が一定値よりも小さくなるタイミング(この例では最小値となるタイミング)が分かるのである。そこで、本実施形態の電流判定部(16)は、上記単相交流の位相に基づいて、上記停止信号を出力するようになっている。具体的には、電流判定部(16)は、上記ゼロクロスのタイミングで上記停止信号をスイッチング制御部(15)に出力するようになっている。なお、ゼロクロスの検出は、上記関連技術1のように電流値を検出するよりも、より容易な制御で実現できる。
【0064】
−実施形態の制御部(14)の動作−
本実施形態においても、制御部(14)に対して、停止という運転指令が入力された場合には、モータ(3)に流れる電流が所定範囲内(所定値以下)ではないと電流判定部(16)によって判定されている間は、スイッチング制御部(15)はスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して駆動信号を出力する。これにより、停止という運転指令が入力された後も、インバータ回路(13)では、図6に示したように脈動したモータ電流(iu,iv,iw)が流れる。一方、電流判定部(16)は、停止の運転指令を受けた後は、上記単相交流のゼロクロスのタイミングで上記停止信号を出力する。このように停止信号が出力されると、スイッチング制御部(15)は、インバータ回路(13)の各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作を停止させる。スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作が停止したタイミングには、モータ電流(iu,iv,iw)が最小に制御されているので、モータ(3)側から電力変換装置(1)内に過大な電流が流れ込むことがない。したがって、この実施形態においても、電力変換装置(1)の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0065】
−実施形態における効果−
以上のように、本実施形態では、関連技術1のように電流を検出することなく、モータ電流が所定値以下であるかどうかを判定することができるので、制御部(14)(詳しくは電流判定部(16))における制御がより簡単になる。
【0066】
なお、電流判定部(16)が上記停止信号を出力する位相は、必ずしも上記単相交流におけるゼロクロスの位相である必要はなく、上記モータ電流の大きさが各構成部品が損傷を受けないような大きさに制御されていることが明らかな位相であればよい。例えば、ゼロクロスの位相位置から多少前後していてもよい。
【0067】
《発明の関連技術2
図9は、本発明の関連技術2に係る電力変換装置(30)の概略構成を示す回路図である。この電力変換装置(30)は、三相の交流を入力として、入力された三相交流(三相入力交流)を所定の電圧、周波数を有した三相交流(三相出力交流)に変換してモータ(3)に供給する。具体的には、マトリックスコンバータ部(31)と制御部(14)を備えている。このマトリックスコンバータ部(31)は、本発明の変換部の一例である。
【0068】
マトリックスコンバータ部(31)は、具体的には図9に示すように、9個の双方向スイッチ(32)を備えている。図9では、各双方向スイッチ(32)を識別するため、符号の後ろに枝番を付してある(32-1,2,…,9)。図9に示すように、このマトリックスコンバータ部(31)では、三相入力交流の相(R,S,T)毎に3個の双方向スイッチ(32)が接続されている。また、これらの3個の双方向スイッチ(32)は、1つが三相入力交流の相(U)、1つが相(V)、そして残りの1つが相(W)にそれぞれ接続されている。例えば、三相交流電源(2)のR相には、3つの双方向スイッチ(32-1,2,3)が接続され、これらの3つの双方向スイッチ(32-1,2,3)のうち、双方向スイッチ(32-1)が三相出力交流の相(U)、双方向スイッチ(32-2)が相(V)、そして双方向スイッチ(32-3)が相(W)にそれぞれ接続されている。
【0069】
上記のマトリックスコンバータ部(31)では、スイッチング動作によってモータ(3)(誘導負荷)からの電流を交流電源(2)側に回生することが可能である。そして、この電力変換装置(30)でも、大容量コンデンサを有しておらず、またマトリックスコンバータ部(31)が停止していると回生は行われないため、電流が流れている状態でマトリックスコンバータ部(31)を停止させると、サージ電圧が発生し過電圧になりやすい。
【0070】
しかしながら、本実施形態においても、制御部(14)は、電流判定部(16)によってモータ(3)(誘導負荷)に流れる電流が上記所定値以下であると判定されるまで各双方向スイッチ(32-1,2,3)のスイッチング動作を継続する。これにより、マトリックスコンバータ部(31)の駆動を停止したときに、モータ(3)から該マトリックスコンバータ部(31)に過大な電流が流れるのを防止できる。したがって、本実施形態でも、マトリックスコンバータ部(31)の駆動停止時に、電力変換装置(30)内の構成部品に過大なサージ電圧がかかるのを防止でき、これにより、電力変換装置(30)内の構成部品が損傷を受けるのを防止できる。
【0071】
《実施形態
図10は、実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示す回路図である。 この例のマトリックスコンバータ部(31)は、単相の交流を入力として、入力された単相交流を所定の電圧、周波数を有した三相出力交流に変換するように構成してある。
【0072】
詳しくは、本実施形態のマトリックスコンバータ部(31)は、図10に示すように、6個の双方向スイッチ(32-1,2,…,6)を備えている。このマトリックスコンバータ部(31)では、単相の入力交流の相(A,B)毎に3個の双方向スイッチ(32)が接続されている。それぞれの相(A,B)に繋がった3個の双方向スイッチ(32)は、三相出力交流の相(U,V,W)にそれぞれ接続されている。例えば、単相交流電源(2)のA相は、3つの双方向スイッチ(32-1,2,3)に接続され、これらの3つの双方向スイッチ(32-1,2,3)のうち、双方向スイッチ(32-1)が三相出力交流の相(U)、双方向スイッチ(32-2)が相(V)、そして双方向スイッチ(32-3)が相(W)にそれぞれ接続されている。
【0073】
なお、実施形態においても、制御部(14)は、電流判定部(16)によってモータ(3)(誘導負荷)に流れる電流が上記所定値以下であると判定されるまで各双方向スイッチ(32-1,2,…,6)のスイッチング動作を継続する。したがって、本実施形態においても上記関連技術2の電力変換装置(30)と同様の効果を得ることが可能になる。
【0074】
そして、本実施形態のマトリックスコンバータ部(31)に対して実施形態で説明した制御方法を適用して、単相交流の位相に基づいて、モータ電流(iu,iv,iw)が上記所定値以下であるかどうかを判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、スイッチング動作によって電力変換を行って誘導負荷に対して電力を供給する変換部を備えた電力変換装置に有用である。
【符号の説明】
【0076】
1 電力変換装置
2 交流電源
3 三相交流モータ(誘導負荷)
11 コンバータ回路
12 コンデンサ(構成部品)
13 インバータ回路(変換部)
14 制御部
15 スイッチング制御部
16 電流判定部
31 マトリックスコンバータ部(変換部)
Su、Sv、Sw、Sx、Sy、Sz スイッチング素子(構成部品)
Du、Dv、Dw、Dx、Dy、Dz 還流ダイオード(構成部品)
D1〜D4 ダイオード(構成部品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10