特許第5740834号(P5740834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740834液晶性ポリイミド、及びこれを含有する液晶性樹脂組成物、並びに半導体素子用樹脂膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740834
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】液晶性ポリイミド、及びこれを含有する液晶性樹脂組成物、並びに半導体素子用樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20150611BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20150611BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08L79/08 Z
   H01L23/30 D
【請求項の数】13
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2010-98032(P2010-98032)
(22)【出願日】2010年4月21日
(65)【公開番号】特開2011-122130(P2011-122130A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2013年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-115031(P2009-115031)
(32)【優先日】2009年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-260493(P2009-260493)
(32)【優先日】2009年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】荘司 優
(72)【発明者】
【氏名】水谷 文一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友英
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−207024(JP,A)
【文献】 米国特許第06468664(US,B1)
【文献】 特開昭57−123223(JP,A)
【文献】 特開2009−073875(JP,A)
【文献】 特開2006−169533(JP,A)
【文献】 特開2009−068002(JP,A)
【文献】 特開平08−302016(JP,A)
【文献】 特開平02−020523(JP,A)
【文献】 特開平01−129071(JP,A)
【文献】 シロキサン結合を有する液晶ポリイミドの合成と液晶挙動,第58回高分子討論会予稿集,2009年 9月 1日,p3986
【文献】 SHOJI,Y. et al,Synthesis of thermotropic liquid crystalline polyimides with siloxane linkages,Chemistry Letters,2009年 6月13日,Vol.38, No.7,p.716-717
【文献】 SHOJI,Y. et al,Thermotropic Liquid Crystalline Polyimides with Siloxane Linkages: Synthesis, Characterization, and,Macromolecules(Washington, DC, United States),2010年,Vol.43, No.2,p.805-810
【文献】 COSTA,G. et al,Segmented Polyimides with Poly(ethylene oxide) Blocks Exhibiting Liquid Crystallinity,Macromolecules,2008年,Vol.41, No.3,p.1034-1040
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
C09K 19/00−19/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)によって示される繰り返し単位を少なくとも一部に含み、かつ液晶性を示す
ことを特徴とする液晶性ポリイミド。
【化1】
(前記式(I)中、A及びAはそれぞれ独立に、テトラカルボン酸単位の下記式(4a)又は下記式(4b)で示される4価残基であり、
【化2】
は下記式(II)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサン単位の残基であり
【化3】
(前記式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、低級アルキル基を示し、yは0または1である。
前記式(I)においてAが、前記式(4a)で示される4価残基の場合、前記式(II)中、Zは−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、xは1〜2の整数であり、Dは炭素数4のアルキレン基を示す。
前記式(I)においてAが、前記式(4b)で示される4価残基の場合、前記式(II)中、Zは−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、xは0〜2の整数であり、Dは炭素数4以上6以下のアルキレン基を示す。
は有機ジアミンの残基である。)
【請求項2】
前記式(II)中、R〜Rが、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基である
ことを特徴とする請求項に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項3】
前記式(II)中、R〜Rが、いずれもメチル基である
ことを特徴とする請求項に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項4】
昇温時の液晶転移温度が260℃以下である
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項5】
下記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンと、
【化4】
(式(i)中、R11〜R16は、それぞれ独立に低級アルキル基を示し、y’は0または1である。
下記式(ii)においてA11が、前記式(4a)で示される4価残基の場合、前記式(i)中、Z11は、−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、x’は1〜2の整数であり、D11は炭素数4のアルキレン基を示す。
下記式(ii)においてA11が、前記式(4b)で示される4価残基の場合、前記式(i)中、Z11は、−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、x’は0〜2の整数であり、D11は炭素数4以上6以下のアルキレン基を示す。
有機ジアミンと、
下記式(ii)で示される酸二無水物と
【化5】
(式(ii)中、A11、テトラカルボン酸単位の前記式(4a)又は前記式(4b)で示される4価残基のいずれかである。)
から得られるポリアミド酸を経由して、合成された
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶性ポリイミドを含有する
ことを特徴とする液晶性樹脂組成物。
【請求項7】
熱伝導性フィラーを含有する
ことを特徴とする請求項に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項8】
260℃以下の温度で加熱することにより、液晶性が発現し、かつ冷却後は25℃においても液晶構造を示すものである
ことを特徴とする請求項またはに記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載の液晶性樹脂組成物を含む
ことを特徴とする半導体素子用樹脂膜。
【請求項10】
液晶化フィルムとしたときの熱伝導率が、0.22W/m・K以上である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項11】
相転移点が260℃以下である
ことを特徴とする、請求項10に記載の液晶性ポリイミド。
【請求項12】
請求項1〜5、10、11のいずれか一項に記載の液晶性ポリイミドを含み、液晶発現後の熱伝導率が、1.5W/m・K以上である
ことを特徴とする、3次元半導体素子用層間絶縁膜。
【請求項13】
請求項12に記載の3次元半導体素子用層間絶縁膜を含有する
ことを特徴とする、半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元及び3次元半導体素子の接着層、層間絶縁膜(パッシベーション膜)、表面保護膜(オーバーコート膜)、及び高密度実装基板用絶縁膜等に代表される半導体素子用樹脂膜、及びこれに用いられる液晶性ポリイミド及びこれを含有する液晶性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化あるいは3次元化による高性能化に伴い、半導体素子が高消費電力化する傾向にある。これにより、半導体素子中に熱が発生しやすく、発生した熱を効率よく放熱する技術の重要性が高まりつつある。
【0003】
従来、半導体素子における表面保護膜や層間絶縁膜等の半導体素子用樹脂膜として、耐熱性や機械的特性等に優れたポリイミド系樹脂が広く使用されていた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このようなポリイミド系樹脂では、熱伝導性が十分でないことが多く、半導体素子の高性能化のペースが落ちつつあるという課題が生じている。
【0004】
また、エポキシ樹脂の高次構造を制御することにより、熱伝導性を飛躍的に高めることが可能になるとの報告がある(例えば特許文献2参照)。しかしながらエポキシ樹脂は、半導体素子用樹脂膜の材料として用いるには、耐熱性が十分でない等の課題があった。
【0005】
そこで、例えば液晶性を有するポリイミド系樹脂を、半導体素子用樹脂膜に用いることによって、半導体素子用樹脂膜の熱伝導性を高くすることが試みられている(例えば特許文献3〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−231255号公報
【特許文献2】特許4118691号
【特許文献3】特開平2−147631号公報
【特許文献4】特開平5−331282号公報
【特許文献5】特開平6−16810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの文献に記載のポリイミド系樹脂は、いずれも液晶性を発現する温度が高い。したがって、耐熱性が十分でない部材が多く用いられている接着層や層間絶縁膜等に代表される半導体素子用樹脂膜の材料として、該ポリイミド系樹脂を用いた場合には、液晶性を発現させる温度まで半導体素子用樹脂膜を昇温させることが難しい、もしくは液晶性を発現させる温度まで昇温させると該半導体素子用樹脂膜以外の部材に何らかの影響を与える可能性がある等、適用が難しいという課題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、比較的低温のプロセスで高次構造を制御する、すなわち液晶性を発現させることが可能な液晶性ポリイミド、及びこれを含有する液晶性樹脂組成物、さらにはこれを含有する半導体素子用樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らが鋭意研究を行なった結果、特定の構造を有するポリイミドが、比較的低温で液晶性が発現することを見出し、本願に至った。
【0010】
本発明の要旨は、下記式(I)によって示される繰り返し単位を少なくとも一部に含み、かつ液晶性を示すことを特徴とする液晶性ポリイミドに存する。
【化1】
(前記式(I)中、A及びAはそれぞれ独立に、テトラカルボン酸単位の下記式(4a)又は下記式(4b)で示される4価残基であり、
【化2】
は下記式(II)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサン単位の残基であり
【化3】
(前記式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、低級アルキル基を示し、yは0または1である。前記式(I)においてAが、前記式(4a)で示される4価残基の場合、前記式(II)中、Zは−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、xは1〜2の整数であり、Dは炭素数4のアルキレン基を示す。前記式(I)においてAが、前記式(4b)で示される4価残基の場合、前記式(II)中、Zは−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、xは0〜2の整数であり、Dは炭素数4以上6以下のアルキレン基を示す。)は有機ジアミンの残基である。)
【0012】
また前記式(II)中、R〜Rが、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、前記式(II)中、R〜Rが、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0013】
また上記液晶性ポリイミドは、昇温時の液晶転移温度が260℃以下であることが好ましい。
【0014】
また、上記液晶性ポリイミドは、下記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンと
【化5】
(式(i)中、R11〜R16は、それぞれ独立に低級アルキル基を示し、y’は0または1である。下記式(ii)においてA11が、前記式(4a)で示される4価残基の場合、前記式(i)中、Z11は、−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、x’は1〜2の整数であり、D11は炭素数4のアルキレン基を示す。下記式(ii)においてA11が、前記式(4b)で示される4価残基の場合、前記式(i)中、Z11は、−H、−F、または−Clで示される基のいずれかであり、x’は0〜2の整数であり、D11は炭素数4以上6以下のアルキレン基を示す。)
機ジアミンと、下記式(ii)で示される酸二無水物と
【化6】
(式(ii)中、A11、テトラカルボン酸単位の前記式(4a)又は前記式(4b)で示される4価残基のいずれかである。)
から得られるポリアミド酸を経由して、合成されたものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の別の要旨は、液晶性ポリイミドを含有することを特徴とする液晶性樹脂組成物に存する。
また、液晶性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。
【0016】
上記液晶性樹脂組成物は、260℃以下の温度で加熱することにより、液晶性が発現し、かつ冷却後は25℃においても液晶構造を示すものであることが好ましい。
【0017】
本発明のさらに別の要旨は、液晶性樹脂組成物を含むことを特徴とする半導体素子用樹脂膜に存する。
【0018】
本発明の別の要旨は、液晶化フィルムとしたときの熱伝導率が、0.22W/m・K以上であることを特徴とする、液晶性ポリイミドに存する。
上記液晶性ポリイミドは相転移点が260℃以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の要旨は、液晶性ポリイミドを含み、液晶発現後の熱伝導率が、1.5W/m・K以上であることを特徴とする、3次元半導体素子用層間絶縁膜にも存する。
さらに、上記3次元半導体素子用層間絶縁膜を含有することを特徴とする、半導体素子にも存する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液晶性ポリイミドは、特定の繰り返し単位を、その構造中の少なくとも一部に含むことから、比較的低温で液晶性を発現可能である。またこの液晶性によって熱伝導性に優れたものとすることができると想定される。したがって、この液晶性ポリイミドを、例えば半導体素子用樹脂膜等に用いた場合には、半導体素子中の他の部材に影響を与えることなく、比較的低温で液晶性を発現させることができ、熱伝導性に優れた膜とすることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例で得られた液晶性ポリイミド(6h)の偏光顕微鏡により観察した際の観察写真である。
図2】本発明の実施例で得られた液晶性ポリイミド(6f)の偏光顕微鏡により観察した際の観察写真である。
図3】本発明の実施例で得られた液晶性ポリイミド(6c)の偏光顕微鏡により観察した際の観察写真である。
図4】本発明の実施例で用いた化合物(3b)を核磁気共鳴分光法(NMR)により測定した際のチャートであり、(A)はH NMRの測定結果、(B)は13C NMRの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に記載する例示物等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
【0023】
A.液晶性ポリイミド
本発明の液晶性ポリイミドは、後述する特定の繰り返し単位を少なくとも一部に含み、かつ液晶性を示すものである。ここで、液晶性の有無の判断には示差走査熱量計(以下、「DSC」ともいう。)や偏光顕微鏡(以下、「POM」ともいう。)観察を通常用いることができる。DSCによる測定において、試料の昇温時あるいは降温時、または昇降温時にDSCチャート上にベースラインシフトないし、吸熱・発熱ピークが認められれば、それらがガラス転移点や相転移点に対応することになり、試料の液晶相に関する知見が得られうる。またPOM観察において、さまざまな模様、すなわち光学組織が認められれば、液晶相が発現している、すなわち試料が液晶性を示す証拠となる。
【0024】
特定の繰り返し単位を少なくとも一部に含む、本発明の液晶性ポリイミドが、比較的低温で液晶性を発現可能である理由としては、下記が挙げられる。
液晶性高分子は大別して溶融(サーモトロピック)液晶性ポリマーと溶液(リオトロピック)液晶性ポリマーの2種類がある。本発明に係る液晶性ポリイミドは、主鎖型の溶融(サーモトロピック)液晶性ポリマーに分類される。ここで、主鎖型液晶性ポリマーを実現させるためには、ポリマー中に剛直なメソゲン基と、屈曲性を有するスペーサー基を交互に連結させることが必要である。ここで、スペーサー基の屈曲性が高いほど、短いスペーサー長で、より低い液晶転移温度が期待される。スペーサー基としてはメチレン基やオキシメチレン基(の繰り返し構造)が用いられることが多いが、シロキサン基はこれらメチレン基やオキシメチレン基よりも、より屈曲性が高いことが知られている。このため、スペーサー基として主鎖にポリシロキサン基を導入したポリイミドはメチレン基やオキシメチレン基(の繰り返し構造)を使った場合に比べて(分子長が短くても)液晶転移点を低いものとすることができる。
また、上記主鎖型液晶性ポリマーにおいては、メソゲン基の配向性とスペーサー基の屈曲性(柔軟性)とのバランスが非常に重要である。例えば、スペーサー基の屈曲性が低すぎる(スペーサー基の分子長が短すぎる)場合には、メソゲン基が分子内で動き難いことからメソゲン基が配向し難く、液晶性が発現し難いことがある。また例えばスペーサー基の屈曲性が過剰である(スペーサー基の分子長が長すぎる)場合には、メソゲン基どうしの配向性が発揮されず、液晶性が発現し難いことがある。
【0025】
<構造>
本発明の液晶性ポリイミドは、下記式(I)で示される繰り返し単位を少なくとも一部に含んでいるものであればよく、該繰り返し単位以外に下記式(I)に相当しない繰り返し単位を構造中に含んでいてもよい。
【化9】
【0026】
また、本発明の液晶性ポリイミド中には、上記式(I)で示される繰り返し単位を1種のみ含んでいるものであってもよく、また2種以上の異なる、上記式(I)で示される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0027】
(式(I)におけるA及びAについて)
上記式(I)において、A及びAは、それぞれ独立にテトラカルボン酸単位の4価残基である。テトラカルボン酸単位の4価残基とは、式(I)のテトラカルボン酸単位において、4つのカルボニル基と結合している4価の基をいう。A及びAは、同じであってもよく、また異なるものであってもよい。
【0028】
及びAで示される基は、環構造を含むものであることが好ましく、飽和結合のみからなるものでもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0029】
具体的には、4価のベンゼン核、4価のナフタレン核、4価のペリレン核、4価のシクロブタン核、4価のシクロペンタン核、4価のシクロヘキサン核、または下記式(III)で示される4価の基のいずれかであることが好ましい。
【0030】
なお、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、該置換基の具体例としては、−CH及び−CF等の置換または無置換のメチル基;−CN基;−NO基;−F、−Cl、−Br等のハロゲン基等が挙げられる。なお、A及びAで示される基が置換基を有する場合、置換基の数は1つであってもよく、また2つ以上であってもよい。また置換基が2つ以上存在する場合には、これらは同一の基であってもよく、また異なる基であってもよい。
【0031】
【化10】
上記式(III)中、mは0または1である。
また上記式(III)中、Eは二価の連結基を示し、該連結基は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、特に、下記に示される二価基のいずれかであることが好ましい。下記式において、nは0または1である。
【0032】
【化11】
【0033】
上記の中でもより好ましいものとしては、分子の剛直性と入手の容易さから、下記のものが挙げられる。
【化12】
【0034】
また、上記Aとテトラカルボン酸残基の4つのカルボニル基との結合位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0035】
(式(I)におけるBについて)
上記式(I)におけるBは、下記式(II)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサン単位の残基である。本発明でいう「ビス(アミノ)ポリシロキサン単位の残基」とは、式(I)におけるビス(アミノ)ポリシロキサン単位において、連結基を介して2つの窒素原子と結合しているポリシロキサン骨格を有する基をいい、下記の式(II)で示される。
【化13】
なお、連結基とは、上記式(II)における下記の式で示される基
【化14】
をいう。
【0036】
上記式(II)中、xは通常0以上であり、好ましくは1以上である。また通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。上記範囲内とすることにより、良好な合成収率と好適な液晶転移温度を両立することができる。
【0037】
また式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、低級アルキル基を示し、R〜Rは、それぞれ異なるものであってもよく、また一部のみが異なるものであってもよく、また全て同一のものであってもよい。ここで、本発明でいう低級アルキル基とは、炭素数が4以下のアルキル基をいうこととする。上記R〜Rで示される低級アルキル基は、直鎖状であってもよく、また分岐鎖状であってもよい。
【0038】
上記の中でも特に、R〜Rの炭素数は、通常1以上であり、また通常4以下、より好ましくは3以下である。特に好ましくは、R〜Rが、いずれもメチル基である場合である。
【0039】
また、式(II)中、Dはアルキレン基を示し、式(II)における左右のDは、通常同じものである。Dは直鎖状であってもよく、また分岐鎖状であってもよい。また炭素数は通常1以上、好ましくは2以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
上記アルキレン基として具体的には、エチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が好ましく、中でもブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基が好ましく、特に合成の容易性の面からブチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0040】
上記式(II)中、yは0または1である。yが0の場合には、−O−で示される基がないことを示す。なお、通常、上記式(II)における左右のyは、同じ数を示す。
また、上記式(II)中、Zは、−H、−CH、−CF、−F、−CN、または−NOで示される基のいずれかであり、通常、左右のZは、同じ基を示す。また、Zが−Hである場合には、フェニレン基が置換されていないことを示す。
の結合位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り、いずれの位置であってもよい。
【0041】
(上記式(I)におけるCについて)
式(I)におけるCは、有機ジアミンの残基である。有機ジアミンの残基とは、本発明の液晶性ポリイミドを製造する際に用いられる有機ジアミンのアミン部分を除いた有機基をいう。
【0042】
で示される有機ジアミンの残基は、式 HN−Z−NHのZで示される2価の残基である。Zの好ましい例としては、芳香族ジアミンの残基等が挙げられる。具体例としては、上述の式(II)で示される基、フェニレン基、ジフェニレン基、ナフチレン基、または下記式(IV)で示される基が挙げられる。なお、Cで示される残基が式(II)で示される基である場合には、B及びCが同一であってもよい。
【0043】
【化15】
(上記式(IV)中、R21は、炭素数が1以上20以下の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基、−S−、−O−
【化16】
または−O−G’−O−(ここで、G’はフェニレン基、または
【化17】
で示される基である。式中、mは、0または1を示し、Eは、−S−、−O−
【化18】
または炭素数1以上、8以下の直鎖または分岐鎖状のアルキレン基を示す。)のいずれかである。)
【0044】
上記アリール核は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、若しくは本発明の目的及び効果を損なわない他の基で置換可能である。
【0045】
有機ジアミンの好ましい例としては、下記のものを挙げることができる。
m−フェニレンジアミン、
p−フェニレンジアミン、
4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、
4,4’−ジアミノジフェニルメタン、
ベンジジン、
4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
1,5−ジアミノナフタレン、
3,3’−ジメチルベンジジン、
3,3’−ジメトキシベンジジン、
2,4−ビス(β―アミノ−t−ブチル)トルエン、
ビス(p−β−アミノ−t−ブチル)フェニルエーテル、
ビス(p−β−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、
1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、
1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、
m−キシレンジアミン、
p−キシレンジアミン、
ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、
デカメチレンジアミン、
3−メチルヘプタメチレンジアミン、
4,4’−ジメチルヘプタメチレンジアミン、
2,11−ドデカンジアミン、
2,2−ジメチルプロピレンジアミン、
オクタメチレンジアミン、
3−メトキシヘキサメチレンジアミン、
2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、
2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、
3−メチルヘプタメチレンジアミン、
5−メチルノナメチレンジアミン、
1,4−シクロヘキサンジアミン、
1,12−オクタデカンジアミン、
ビス(3−アミノプロピル)サルファイド、
N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、
ヘキサメチレンジアミン、
ヘプタメチレンジアミン、
ノナメチレンジアミン等が挙げられる。
【0046】
また、上記R21が、−O−G’−O−で示される有機ジアミンの具体例としては、下記のものが挙げられる。
【化19】
【0047】
また、上記式中のエーテル結合を、−S−、
【化20】
により置換したもの等も挙げられる。
【0048】
上述の有機ジアミンは、これを用いて製造した本発明の液晶性ポリイミドに溶解性を付与する。本発明の液晶性ポリイミドの製造の際、上記有機ジアミンは、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0049】
<製造方法>
上記液晶性ポリイミドの製造方法は、上述の液晶性ポリイミドを製造可能な方法であれば、本発明の目的を著しく損なわない限り、公知の方法を含め、特に制限はない。
【0050】
本発明においては特に、下記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンと
【化21】
(式(i)中、R11〜R16は、それぞれ独立に低級アルキル基を示し、x’は0〜10の整数であり、D11はアルキレン基を示し、y’は0または1である。Z11は、−H、−CH、−CF、−F、−CN、または−NOで示される基のいずれかである。)、有機ジアミンと、下記式(ii)で示される酸二無水物と
【化22】
(式(ii)中、A11は4価のベンゼン核、4価のナフタレン核、4価のペリレン核、4価のシクロブタン核、4価のシクロペンタン核、4価のシクロヘキサン核、または下記式(iii)で示される4価の基のいずれかである。
【化23】
(式(iii)中、E11は以下の下記式で示される二価基であり、m’は0または1である。また、下記式においてn’は0または1である。
【化24】
の反応により合成されるポリアミド酸を経由して、合成されたものであることが好ましい。これにより、上述の液晶性ポリイミドを高収率、かつ容易に得ることができる。
以下、この方法について説明するが、本発明の液晶性ポリイミドを得る方法は、これに限定されるものではない。
【0051】
(式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサン)
本発明の液晶性ポリイミドの製造に用いられるビス(アミノ)ポリシロキサンとしては、下記の式(i)で示されるものである。
【化25】
式(i)中、x’は通常0以上であり、好ましくは1以上である。また通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。上記範囲内とすることにより、良好な合成収率と好適な液晶転移温度を両立することができる。
【0052】
上記式(i)中、R11〜R16は、それぞれ独立に低級アルキル基を示し、R11〜R16は、それぞれ異なるものであってもよく、また一部が異なるものであってもよく、また全て同一のものであってもよい。ここで、本発明でいう低級アルキル基とは、上述したように、炭素数が4以下のアルキル基である。R11〜R16で示される低級アルキル基は、直鎖状であってもよく、また分岐鎖状であってもよい。
【0053】
上記の中でも特に、R11〜R16の炭素数は、通常1以上であり、また通常4以下、より好ましくは3以下である。特に好ましくは、R11〜R16が、いずれもメチル基の場合である。
【0054】
また、D11はアルキレン基を示し、式(i)における左右のD11は、通常同じものである。D11は直鎖状であってもよく、また分岐鎖状であってもよい。また炭素数は通常1以上、好ましくは2以上であり、通常10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。上記アルキレン基として具体的には、エチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が好ましく、中でもブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基が好ましく、特に合成の容易性の面からブチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0055】
上記式(i)中、y’は0または1であり、左右のy’は、通常同じ数を示す。
また、上記式(i)中、Z11は、−H、−CH、−CF、−F、−CN、または−NOで示される基のいずれかであり、通常、左右のZ11は、同じ基を示す。また、Z11が−Hである場合には、フェニレン基が置換されていないことを示す。
11の結合位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り、いずれの位置であってもよい。
なお、上記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンは、1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0056】
後述する縮合反応において、上記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンの使用量としては、上記ビス(アミノ)ポリシロキサンのモル数と後述の有機ジアミンのモル数との合計が、式(ii)で示される酸二無水物に対して、通常等モルとなるように用いられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
(有機ジアミン)
本発明の液晶性ポリイミドの製造に用いられる有機ジアミンとしては、構造中にアミンを2つ含む有機化合物であれば、本発明の目的を著しく損なわない限り特に制限はない。このような有機ジアミンとしては、上記式(I)におけるCについての項で説明した、有機ジアミンが挙げられる。また、上述のビス(アミノ)ポリシロキサンを有機ジアミンとして用いることもできる。これらは1種単独、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0058】
後述する縮合反応時における有機ジアミンの使用量としては、上述したように、上記ビス(アミノ)ポリシロキサンのモル数と後述の有機ジアミンのモル数との合計が、式(ii)で示される酸二無水物に対して、通常等モルとなるように用いられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、有機ジアミン及び上述の式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンとして異なるものを用いる場合、これらの比率は、上記ビス(アミノ)ポリシロキサンのモル量が、有機ジアミンのモル量の、通常1倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは4倍以上であり、また通常10000倍以下、好ましくは1000倍以下、より好ましくは500倍以下である。上限値以下とすることにより、ポリマー物性をコントロールすることが可能となり、下限値以上とすることにより好ましいポリマー物性と相転移点の低下を両立することができる。
【0060】
(式(ii)で示される酸二無水物)
本発明の液晶性ポリイミドの製造に用いられる酸二無水物としては、下記の式(ii)で示されるものである。
【化26】
式(ii)中、A11は4価のベンゼン核、4価のナフタレン核、4価のペリレン核、4価のシクロブタン核、4価のシクロペンタン核、4価のシクロヘキサン核、または下記式(iii)で示される4価の基のいずれかである。
【0061】
【化27】
式(iii)中、E11は以下の下記式で示される二価基であり、m’は0または1であ
る。また、下記式においてn’は0または1である。
【化28】
【0062】
上記の中でもより好ましいものとしては、分子の剛直性と入手の容易さから、下記のものが挙げられる。
【化29】
【0063】
なお、A11で示される基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、該置換基の具体例としては、−CH及び−CF等の置換または無置換のメチル基;−CN基;−NO基;−F、−Cl、−Br等のハロゲン基等が挙げられる。なお、これらが置換基を有する場合、置換基の数は1つであってもよく、また2つ以上であってもよい。また置換基が2つ以上存在する場合には、これらは同一の基であってもよく、また異なる基であってもよい。
上記酸二無水物は1種単独で、また2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
(縮合反応)
本発明の液晶性ポリイミドは、上記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンと、有機ジアミンと、上記式(ii)で示される酸二無水物から得られるポリアミド酸を経由して合成されたものであることが好ましい。
【0065】
具体的には、上記式(i)で示されるビス(アミノ)ポリシロキサンと、有機ジアミンと、上記式(ii)で示される酸二無水物とを反応させることにより、ポリアミド酸を得る。該ポリアミド酸を得る際、例えば上記式(ii)で示される酸二無水物と、ビス(アミノ)ポリシロキサンとを反応させた後に、有機ジアミンを混合して反応させてもよく、また式(ii)で示される酸二無水物と有機ジアミンとを反応させた後に、ビス(アミノ)ポリシロキサンを混合して反応させてもよい。またさらに式(ii)で示される酸二無水物と、ビス(アミノ)ポリシロキサンと、有機ジアミンとを全て混合して反応させてもよい。なお、該反応には、必要に応じて有機溶媒や触媒等を用いることができる。
【0066】
上記ポリアミド酸を得る反応は、通常0℃以上で行なわれ、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上である。また通常300℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは100℃以下であり、特に30℃以下である。これにより、収率を向上させ、副反応を抑制させることができる。
【0067】
また、上記反応時の圧力は、特に制限はなく、通常0.1気圧以上、好ましくは0.5気圧以上、より好ましくは0.8気圧以上である。また通常200気圧以下、好ましくは100気圧以下、より好ましくは10気圧以下である。特に好ましくは常圧である。
【0068】
また、上記反応の時間としては、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは24時間以下である。これにより、効率よく反応を行なうことができる。
【0069】
上記反応に用いられる有機溶媒としては、特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、フェノール、フェノール−水混合物、及びジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。また、上記有機溶媒と、ベンゼン、ベンゾニトリル、ジオキサン、β−エトキシエチルアセテート、ブチロールアセトン、キシレン、トルエン、及びシクロヘキサノン等の他の不活性溶媒とを混合して用いてもよい。
【0070】
上述の反応により得られるポリアミド酸を、加熱によりイミド化、もしくはイミド化剤等を用いてイミド化することにより、本発明の液晶性ポリイミドが得られる。
加熱によるイミド化は、通常100℃以上で行なうことが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。また通常600℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。下限値以上とすることによりポリアミド酸からポリイミドへの変換効率を向上させられ、上限値以下とすることによりポリイミドの分解を抑制できる。上記加熱によるイミド化は、温度を段階的に変化させ、加熱することにより行なってもよい。
上記加熱によるイミド化は、大気圧下で行ってもよく、また窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行なってもよい。
【0071】
加熱方法としては特に制限はなく、加熱には例えばホットプレート、オーブン、ヒートブロック、ホットプレス等を用いることができる。また加熱時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは1.5時間以上であり、通常10時間以下、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下である。
【0072】
また、イミド化剤としては、通常アミン化合物が使用され、脱水のために酸無水物を併用してもよい。具体的には、ピリジンと無水酢酸との混合物等が例示される。これらは、上記ポリアミド酸に対して、通常2モル倍以上、好ましくは5モル倍以上、また通常1000モル倍以下用いられる。
【0073】
上述の方法により得られるポリイミドは、通常結晶状態で得られ、昇温することにより、液晶相へと転移することから、本発明においては、通常、該ポリイミドを液晶転移温度(以下、「相転移点」ともいう。)以上に加熱して液晶性ポリイミドを得る。本発明において、この液晶性を得るための温度は、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。また260℃以下であることが好ましく、より好ましくは255℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。
上記液晶転移温度は、DSCにより測定される。
【0074】
また、本発明の液晶性ポリイミドは、液晶相へ転移後、常温(通常25℃)まで温度を下げた場合に液晶ドメインを保つもの、すなわち冷却後は25℃においても液晶構造を有するものであることが好ましい。なお、昇温により液晶ドメインを発現させた後、徐々に冷却すると液晶ドメインが消失する組成の場合は、急速冷却を行い、液晶ドメインを固定する方法が有効である。急速冷却は、3℃/分以上の冷却速度で行なうことが好ましく、より好ましくは5℃分/以上、さらに好ましくは10℃/分以上である。
【0075】
(その他)
上記では、特定の繰り返し単位を少なくとも一部に含む液晶性ポリイミドについて説明したが、本発明の液晶性ポリイミドを用いることにより、液晶化フィルムとしたときの熱伝導率が0.22W/m・K以上であるものを得ることができる。
なお、液晶化フィルムとしたときの熱伝導率、とは、液晶性ポリイミドを加熱により等方相とし、等方相とした温度より低温で液晶性を発現させた際の熱伝導率をいうこととする。
【0076】
通常、樹脂の熱伝導率は、金属やセラミックなどに比べ一般的に非常に低い。樹脂の高熱伝導化には限界があるため、通常、高熱伝導性無機フィラーと樹脂を複合化させることで、樹脂材料を高熱伝導化することが行われている。樹脂の熱伝導率が低いと、高熱伝導化のために無機フィラーを多量に入れなければならなくなり、成型性が低下する傾向がある。そこで、樹脂の熱伝導率を向上させることで、同じ熱伝導率を達成するための無機フィラーの体積分率を低下させることができ、複合材料の成型性の向上につながる。
本発明においては、液晶性ポリイミドの熱伝導率が0.22W/m・K以上あると、無機フィラーと複合化した液晶性樹脂組成物とする際、無機フィラーの量を、液晶性樹脂組成物を用いて成形した膜等の成型性を保つ程度まで減らすことが出来、望ましい。
【0077】
上記熱伝導率はより好ましくは0.24以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。また熱伝導率は、後述する実施例で説明する方法等により測定可能である。
【0078】
熱伝導率は液晶性ポリイミド内の分子鎖の配向度と相関がある。そこで、液晶性ポリイミドが、上記熱伝導率を達成するための方法として、液晶性ポリイミド内で分子が配向した領域を増やしたり、高分子鎖の結晶領域を増やしたりする方法が挙げられる。具体的には、液晶性ポリイミドのポリマー鎖に含まれるメソゲン部位の分率を向上させたり、メソゲン部位間の相互作用を向上させる置換基をメソゲン部位に導入したり、結晶化・液晶化を誘発する核剤を導入したり、結晶化・液晶化プロセスにおいて、その熱処理条件を制御することで、メソゲン部位が配向しやすい条件を作り出す方法が挙げられる。
【0079】
また、液晶性ポリイミドにおいては、相転移点(加熱により溶融する温度(等方相へ相転移する)温度)が260℃以下ことが好ましく、より好ましくは255℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。相転移点の測定は、DSCにより測定される。
【0080】
液晶性ポリイミド、あるいは後述する液晶性樹脂組成物を加熱成型する際には、成型温度が低い方が有利である。本発明の液晶性ポリイミドの成型温度は、その等方相への相転移点付近であり、特に鉛フリーはんだリフロー炉の上限温度近傍(260℃以下)で成型が可能であると、生産性の観点で好ましい。
【0081】
液晶性ポリイミドの相転移点を上記値以下とする方法としては、例えば液晶性ポリイミドのポリマー鎖に含まれるメソゲン部位と屈曲部位のバランスをコントロールしたり、ポリマー鎖を構成する構造に置換基を導入し、分子鎖間の相互作用を弱める方向に制御することが挙げられる。
【0082】
B.液晶性樹脂組成物
本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の液晶性ポリイミドを含有するものであり、上記液晶性ポリイミドを1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで含有するものであってもよい。
【0083】
本発明においては、液晶性樹脂組成物中に、液晶性ポリイミドを、1重量%以上含んでいることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。また通常100重量%以下、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下である。下限値以上とすることにより、液晶性樹脂組成物が、比較的低温で液晶性を発現するものとすることができる。
【0084】
本発明の液晶性樹脂組成物は、通常、昇温によって液晶性が得られるものであるが、この液晶性を得るための温度等の条件や方法等については、前述の液晶性ポリイミドについての、液晶性の発現及び液晶ドメインの形成・維持に関するものと同様である。
【0085】
(その他の樹脂)
また、本発明の液晶性樹脂組成物は、上述の液晶性ポリイミド樹脂以外の樹脂を含有するものであってもよい。その他の樹脂としては、上述の液晶性ポリイミドと相溶する樹脂であり、本発明の効果を著しく損なわないものであれば特に制限はない。
【0086】
このような樹脂としては、上述以外のポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を任意の比率及び組合せで用いることができる。
【0087】
その他の樹脂は、液晶性ポリイミドに対して、通常0.01重量%以上用いられ、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。また通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。上限値以下とすることにより液晶性ポリイミドの特性を併せ持った樹脂系を組成でき、また下限値以上とすることにより他の樹脂の特性を併せ持った樹脂系を組成できるという効果が得られる。
【0088】
(熱伝導性フィラー)
また本発明の液晶性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含んでいることが好ましい。本発明において、熱伝導性フィラーとは、バルクの熱伝導率が1W/m・K以上であるフィラーをいうこととする。熱伝導率は各種ハンドブック等に記載されたものを用いることができる。
【0089】
熱伝導性フィラーとしては、窒化ホウ素(BN)、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素、シリカ(SiO)等が挙げられるが、これ以外のフィラーも好適に用いられる。
【0090】
熱伝導性フィラーの混合により、液晶性ポリイミドの液晶性が比較的大きくない場合であっても、液晶性ポリイミドの液晶ドメイン及び熱伝導性フィラーによる高熱伝導性パスができるので、全体として高熱伝導化が達成できる。また、熱伝導性フィラーを含有することにより、液晶性樹脂組成物に液晶性を発現させるための熱処理温度を低いものとすることも可能となる。
【0091】
液晶性樹脂組成物中における熱伝導性フィラーの含有量としては、上記液晶性ポリイミドに対して、通常1重量%以上であり、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。また通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。下限値以上とすることにより熱伝導性を良好なものとすることが可能であり、また上限値以下とすることにより成形性を維持することが出来る。
【0092】
(その他)
本発明の液晶性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、各種添加剤等を含有していてもよい。添加剤の例としては、例えば感光剤や増感剤等が挙げられる。感光剤や増感剤等を含有することにより、例えば樹脂組成物を半導体素子用樹脂膜等の用途に用いた場合に、成膜プロセスを簡便にすることが可能となる。
【0093】
(用途)
本発明の液晶性樹脂組成物は、比較的低温で液晶性を発現し、この液晶性により熱伝導性に優れたものとすることができる。したがって、例えば後述する半導体素子用樹脂膜や、熱伝導性プリント基板、放熱シート等の用途に用いることができる。
また、上記液晶性樹脂組成物は、各種成型体や、フィルム、繊維状に加工すること等もできるため、多種多様な用途に利用可能である。
【0094】
C.半導体素子用樹脂膜
本発明の半導体素子用樹脂膜は、上述の液晶性樹脂組成物を含有するものである。半導体素子用樹脂膜の用途としては、例えば2次元及び3次元半導体素子の接着層、層間絶縁膜(パッシベーション膜)、表面保護膜(オーバーコート膜)、及び高密度実装基板用絶縁膜等が挙げられる。
【0095】
半導体素子用樹脂膜の形成方法としては、上述の液晶性樹脂組成物を加熱により溶融させて塗布し、硬化させる方法や、上述の液晶性樹脂組成物を加熱・加圧することにより成型する方法等が挙げられる。また、ディスペンサー、スクリーン印刷などによる塗布やスピンコートなどを行うこともできる。
【0096】
このような半導体素子用樹脂膜の好ましい膜厚としては、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上である。また通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。上記下限値以上とすることにより、高い熱伝導性を有する膜とすることができると想定される。また上限値以下とすることにより、半導体素子の厚みを効果的に低減することができる。
【0097】
また特に、上記3次元半導体素子用層間絶縁膜は、液晶発現後の熱伝導率が1.5W/m・K以上であることが好ましい。3次元半導体素子用層間絶縁膜の熱伝導率を上記値以上とすることにより、当該3次元半導体素子用層間絶縁膜を用いた半導体素子の放熱設計が容易となる。上記熱伝導率として好ましくは1.8m・K以上、さらに好ましくは2.2m・K以上である。また液晶発現後の熱伝導率は、後述する実施例で説明する方法等により測定可能である。
【0098】
上記3次元半導体素子用層間絶縁膜の熱伝導率は液晶性ポリイミド内の分子鎖の配向領域と、無機フィラーの結晶領域との相互作用と相関がある。このため、無機フィラー結晶表面と強い相互作用を有するように液晶性ポリイミドのポリマー鎖を分子設計するか、無機フィラー表面をポリマー鎖と相互作用しやすいように表面処理することで、液晶性ポリイミドの配向領域と無機フィラーの結晶領域の界面相互作用を高めることが出来、上記値を達成することが出来る。
【実施例】
【0099】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0100】
以下の実施例において、赤外線測定、H/13C NMR測定、偏光顕微鏡観察、及び熱分析(TG−DTA及びDSC)には下記の機器を用いた。
【0101】
[測定機器]
・赤外(IR)分光光度計:堀場製作所FT−720
H/13C NMRスペクトル:Bruker DPX300S
・偏光顕微鏡/ホットステージ:OLYMPUS BX51/LINKAM LTS−350(温度コントローラ付き)
・熱分析(TG−DTA):エスアイアイ・ナノテクノロジー EXSTAR TG/DTA 6300
・熱分析(DSC):Perkin−Elmer DSC7(空冷)
【0102】
また、各実施例において、試薬は下記のものを用いた。
[試薬]
下記式で示される3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および下記式で示されるピロメリット酸二無水物(PMDA)は使用前に昇華精製を行った。N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、トルエンは蒸留によって精製した。他の試薬と溶媒は市販品を精製せずに用いた。
【0103】
【化30】
【0104】
[実施例1]
<4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(1)の合成>
4−ニトロフェノール(0.423g;3.04mmol)と炭酸カリウム(1.11g;8.02mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液に、4−ブロモ−1−ブテン(0.827g;6.13mmol)を加え、混合物を還流し17時間反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示され4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(1)(0.571g、収率97%、淡黄色状のオイル)を得た。
【0105】
【化31】
【0106】
得られた4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(1)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0107】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2942.8(Alkyl C−H),1643.1(C=C),1592.9(Ar C−C),1508.1,1334.5(−NO
【0108】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.20(d,J=9.3,ArH,2H),6.95(d,J=9.0,ArH,2H),5.96−5.82(m,vinyl proton,1H),5.23−5.12(m,vinyl proton,2H),4.11(t,J=6.6,−CH−,2H),2.62−2.55(m,−CH−,2H)
【0109】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.1,141.5,133.7,125.9,117.7,114.5,68.1,33.4
【0110】
<1,7−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2b)の合成>
上記4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(1)の溶液(4.27g;22.1mmol)に、20mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2.97g;9.98mmol)と、カルステッド触媒(0.25mL;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で21時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質をカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2b)(5g、収率75%)を得た。
得られた1,7−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2b)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0111】
【化32】
【0112】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958.3(Alkyl C−H),1592.9(Ar C−C),1515.8,1342.2(−NO),1261.2(Si−C)
【0113】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.3,ArH,4H),6.93(d,J=9.3,ArH,4H),4.05(t,J=6.3,−CH−,4H),1.89−1.80(m,−CH−,4H),1.57−1.47(m,−CH−,4H),0.63−0.57(m,−CH−,4H),0.09(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0114】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.4,141.4,126.0,114.5,68.6,32.5,19.8,18.0,1.34,0.314
【0115】
<1,7−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3c)の合成>
2.26gの上記2b(3.38mmol)と15mLの10重量%Pd/C酢酸エチル溶液(0.0209g)とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,7−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3c)(2.05g、収率99%)を得た。得られた1,7−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3c)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0116】
【化33】
【0117】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3359.4(N−H),2958.3(Alkyl C−H),1623.8(N−H),1511.9(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0118】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.74 (d,J=9.0,ArH,4H),6.63(d,J=9.0,ArH,4H),3.88(t,J=6.3,−CH−,4H),3.39(s,NH,2H),1.81−1.72(m,−CH−,4H),1.54−1.43(m,−CH−,4H),0.62−0.56(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0119】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.8,68.4,33.1,19.9,18.1,1.35,0.334
【0120】
<液晶性ポリイミド(6h)の合成>
0.306g(0.502mmol)の上記ジアミン(3c)を2.5mLのNMPに溶かし、ここに0.148g(0.503mmol)のBPDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の下記式で示される液晶性ポリイミド(6h)のフィルムを得た。得られた液晶性ポリイミド(6h)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0121】
【化34】
【0122】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):1770(C=O),1712(C=O),1389(C−N)
【0123】
<液晶性ポリイミド(6h)の熱分析および偏光顕微鏡観察>
昇温/降温速度10℃/分としたDSCの二回目のスキャンから、以下の吸熱ピーク(T)および発熱ピーク(T)を得た。
1(結晶→液晶相転移):222℃;T2(液晶相→等方相転移):268℃/T1:254℃;T2:216℃;T3:203℃
また、240℃における液晶性ポリイミド(6h)の偏光顕微鏡観察より、液晶相に由来する光学組織が観察された。該偏光顕微鏡観察写真を図1に示す。なお、該写真の倍率は400倍である。
【0124】
[実施例2]
<1,3−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(2a)の合成>
実施例1における2bと同様の合成手順により、4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(1)と1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサンとの反応により、下記式で示される1,3−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(2a)(黄色油状液体(収率65%))を得た。
1,3−ビス(4−ニトロフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(2a)について測定を行なった結果は以下の通りである。
【0125】
【化35】
【0126】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2950.6(Alkyl C−H),1592.9(Ar C−C),1515.8,1338.4(−NO),1265.1(Si−C)
【0127】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.0,ArH,4H),6.93(d,J=9.3,ArH,4H),4.04(t,J=6.3,−CH−,4H),1.88−1.79(m,−CH−,4H),1.54−1.45(m,−CH−,4H),0.61−0.55(m,−CH−,4H),0.06(s,Si−CH,12H)
【0128】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.3,141.4,126.0,114.5,68.6,32.5,19.9,18.1,0.503
【0129】
<1,3−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(3a)の合成>
実施例1における(3c)と同様の合成手順により、上記(2a)を還元して、下記式で示される1,3−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(3a)(薄茶色油状液体(収率98%)を得た。得られた1,3−ビス(4−アミノフェノキシブチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン(3a)について測定を行なった結果は以下の通りである。
【0130】
【化36】
【0131】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3355.5(N−H),2950.6(Alkyl C−H),1623.8(N−H),1511.9(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0132】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.74(d,J=9.0,ArH,4H),6.63(d,J=9.0,ArH,4H),3.87(t,J=6.3,−CH−,4H),3.40(s,NH,2H),1.80−1.71(m,−CH−,4H),1.54−1.42(m,−CH−,4H),0.61−0.53(m,−CH−,4H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0133】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.8,68.4,33.1,20.0,18.3,0.510
【0134】
<液晶性ポリイミド(6f)の合成>
実施例1における(6h)と同様にして、上記(3a)とBPDAより、ポリアミド酸を合成し、これをガラス上にキャストした後に熱イミド化することで濁った黄色の下記式で示される液晶性ポリイミド(6f)のフィルムを得た。得られた液晶性ポリイミド(6f)について、測定を行なった結果は下記の通りである。
【0135】
【化37】
【0136】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):1770(C=O),1712(C=O),1389(C−N)
【0137】
<液晶性ポリイミド(6f)の熱分析および偏光顕微鏡観察>
昇温/降温速度10℃/分としたDSCの二回目のスキャンから、以下の吸熱ピーク(T)および発熱ピーク(T)を得た。
1(結晶→液晶相転移):253℃;T2(液晶相→液晶相転移):264℃;T3(液晶相→等方相転移):335℃/T1:325℃;T2:236℃
320℃における液晶性ポリイミド(6f)の偏光顕微鏡観察より、液晶相に由来する光学組織が観察された。該偏光顕微鏡観察写真を図2に示す。なお、該写真の倍率は400倍である。
【0138】
[実施例3]
<液晶性ポリイミド(6c)の合成>
実施例2における6fと同様にして、(3c)とPMDAより、ポリアミド酸を合成し、これをガラス上にキャストした後に熱イミド化することで濁った黄色の下記式で示される液晶性ポリイミド(6c)のフィルムを得た。
【0139】
【化38】
【0140】
<液晶性ポリイミド(6c)の熱分析および偏光顕微鏡観察>
昇温/降温速度10℃/分としたDSCの二回目のスキャンから、以下の吸熱ピーク(T)および発熱ピーク(T)を得た。
1(結晶→液晶相転移):236.8℃;T2(液晶相→等方相転移):249.6℃/T1:231.0℃;T2:213.6℃
250℃における液晶性ポリイミド(6c)の偏光顕微鏡観察より、液晶相に由来する光学組織が観察された。該偏光顕微鏡観察写真を図3に示す。なお、該写真の倍率は400倍である。
【0141】
[参考例1]
<4−(5−ヘキセニロキシ)ニトロベンゼン(1b)の合成>
4−ニトロフェノール(2.79g;20.0mmol)と炭酸カリウム(4.15g;30.1mmol)のアセトニトリル(40mL)溶液に、6−ブロモ−1−ヘキセン(4.01g;24.6mmol)を加え、混合物を還流し12時間反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示される4−(5−ヘキセニロキシ)ニトロベンゼン(1b)(4.11g、収率93%、淡黄色状のオイル)を得た。
【0142】
【化39】
【0143】
得られた4−(5−ヘキセニロキシ)ニトロベンゼン(1b)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0144】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2942.8(Alkyl C−H),1639.2(C=C),1592.9(Ar C−C),1511.9,1342.2(−NO
【0145】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.3,ArH,2H),6.94(d,J=9.3,ArH,2H),5.89−5.76(m,vinyl proton,1H),5.08−4.97(m,vinyl proton,2H),4.06(t,J=6.5,−CH−,2H),2.14(q,J=7.1,−CH−,2H),1.89−1.80(m,−CH−,2H),1.63−1.49(m,−CH−,2H)
【0146】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.3,141.4,138.3,126.0,115.1,114.5,68.8,33.4,28.5,25.3
【0147】
<1,7−ビス(4−ニトロフェノキシヘキシル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2d)の合成>
10mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(1.53g;5.42mmol)に、上記4−(5−ヘキセニロキシ)ニトロベンゼン(1b)(3.32g;15.0mmol)と、カルステッド触媒(30滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス(4−ニトロフェノキシヘキシル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2d)(3.79g、収率97%)を得た。
得られた(2d)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0148】
【化40】
【0149】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2923.6(Alkyl C−H),1592.9(Ar C−C),1515.8,1342.2(−NO),1261.2(Si−C)
【0150】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.3,ArH,4H),6.93(d,J=9.3,ArH,4H),4.04(t,J=6.5,−CH−,4H),1.89−1.77(m,−CH−,4H),1.53−1.33(m,−CH−,12H),0.57−0.50(m,−CH−,4H),0.07(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0151】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.6,141.9,126.2,114.8,69.3,33.4,29.3,26.0,23.5,18.6,1.56,0.57
【0152】
<1,7−ビス(4−アミノフェノキシヘキシル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3d)の合成>
2.71gの上記(2d)(3.73mmol)と15mLの10重量%Pd/C酢酸エチル溶液(0.0150g)とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,7−ビス(4−アミノフェノキシヘキシル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3d)(2.47g、収率99%)を得た。得られた(3d)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0153】
【化41】
【0154】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3359.4(N−H),2923.6(Alkyl C−H),1623.8(N−H),1511.9(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0155】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.74(d,J=9.3,ArH,4H),6.63(d,J=8.7,ArH,4H),3.87(t,J=6.6,−CH−,4H),3.40(s,NH,2H),1.78−1.68(m,−CH−,4H),1.54−1.32(m,−CH−,12H),0.57−0.51(m,−CH−,4H),0.06(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0156】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.8,68.8,33.3,29.5,25.9,23.3,18.4,1.36,0.347
【0157】
<ポリイミド(6d)の合成>
【化42】
1.09g(1.64mmol)の1,7−ビス(4−アミノフェノキシヘキシル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3d)を8.20gのNMPに溶かし、ここに0.357g(1.64mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って、上記式であらわされるポリイミド(6d)のフィルムを得た。
得られたポリイミド(6d)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0158】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1782(C=O),1724(C=O),1400(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C4258:C,59.54;H,6.90;N,3.31.Found:C,59.37;H,6.80;N,3.05
【0159】
[参考例2]
<4−(3−ブテロニキシ)−2−メチルニトロベンゼン(1c)の合成>
3−メチル−4−ニトロフェノール(3.05g;19.9mmol)と炭酸カリウム(4.27g;30.9mmol)のアセトニトリル(50mL)溶液に、4−ブロモ−1−ブテン(4.02g;29.8mmol)を加え、混合物を還流し12時間反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示される4−(3−ブテロニキシ)−2−メチルニトロベンゼン(1c)(2.61g、収率63%、淡黄色状のオイル)を得た。
【0160】
【化43】
【0161】
得られた4−(3−ブテロニキシ)−2−メチルニトロベンゼン(1c)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0162】
IR測定結果:IR(NaCl),ν(cm−1):2935(Alkyl C−H),1643(C=C),1581(Ar C−C),1512,1338(−NO
【0163】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.08(d,J=9.9,ArH,1H), 6.81−6.78(m,ArH,2H),5.95−5.82(m,vinyl proton,1H),5.22−5.11(m,vinyl proton,2H),4.08(t,J=6.9,−CH−,2H),2.62(s,−CH,3H),2.61−2.53(m,−CH−,2H)
【0164】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):162.5,142.2,137.2,133.8,127.7,118.1,117.7,112.3,67.9,33.5,21.8
【0165】
<1,7−ビス[4−(3−メチル−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2e)の合成>
12mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(1.44g;5.09mmol)に、上記4−(3−ブテロニキシ)−2−メチルニトロベンゼン(1c)(2.37g;11.4mmol)と、カルステッド触媒(20滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス[4−(3−メチル−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2e)(3.05g、収率86%)を得た。
得られた(2e)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0166】
【化44】
【0167】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958.3(Alkyl C−H),1581.3(Ar C−C),1511.9,1338.4(−NO),1257.36(Si−C)
【0168】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.07(d,J=9.3,ArH,2H),6.79−6.76(m,ArH,4H),4.02(t,J=6.5,−CH−,4H),2.62(s,−CH,6H),1.87−1.78(m,−CH−,4H),1.57−1.46(m,−CH−,4H),0.63−0.57(m,−CH−,4H),0.09(s,Si−CH,12H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0169】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):162.9,142.1,137.2,127.7,118.0,112.3,68.4,32.6,21.9,19.8,18.0,1.36,0.329
【0170】
元素分析測定結果:Anal.Calcd.For C3052:C,51.69;H,7.52;N,4.02.Found:C,51.52;H,7.28;N,3.83
【0171】
<1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)ブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3e)の合成>
2.62gの上記2e(3.76mmol)と10mLの10重量%Pd/C酢酸エチル溶液(0.0230g)とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)ブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3e)(2.38g、収率99%)を得た。得られた(3e)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0172】
【化45】
【0173】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3363.3(N−H),2935.1(Alkyl C−H),1608.3(N−H),1504.2(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0174】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.67−6.60(m,ArH,6H),3.87(t,J=6.5,−CH−,4H),3.33(s,NH,4H),2.15(s,−CH,6H),1.81−1.71(m,−CH−,4H),1.53−1.43(m,−CH−,4H),0.62−0.56(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0175】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.4,138.1,124.1,117.4,116.1,113,1,68.4,33.2,20.0,18.1,17.8,1.36,0.334
【0176】
<ポリイミド(6e)の合成>
【化46】
1.23g(1.93mmol)の1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)ブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3e)を9.34gのNMPに溶かし、ここに0.420g(1.93mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行っての上記式で示されるポリイミド(6e)のフィルムを得た。得られた(6e)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0177】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1774(C=O),1720(C=O),1381(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C4054:C,58.65;H,6.64;N,3.42.Found:C,58.38;H,6.65;N,3.06
【0178】
[参考例3]
<ポリイミド(6j)の合成>
【化47】
0.896g(1.41mmol)の1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)ブチル)−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3e)を7.41gのNMPに溶かし、ここに0.414g(1.41mmol)のBPDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行ってのポリイミド(6j)のフィルムを得た。得られた(6j)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0179】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1774(C=O),1720(C=O),1381(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C4658:C,61.71;H,6.53;N,3.13.Found:C,61.56;H,6.49;N,2.83
【0180】
[参考例4]
<1,3−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(2a)の合成>
3mLのトルエンに溶かした1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(0.125g;0.934mmol)に、4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(0.519g;2.69mmol)と、カルステッド触媒(3滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質1,3−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(2a)(0.312g、収率65%)を得た。
【0181】
【化48】
【0182】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2950.6(Alkyl C−H),1592.9(Ar C−C),1515.8,1338.4(−NO),1265.1(Si−C)
【0183】
H NMR測定結果:(300 MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.0,ArH,4H),6.93(d,J=9.3,ArH,4H),4.04(t,J=6.3,−CH−,4H),1.88−1.79(m,−CH−,4H),1.54−1.45(m,−CH−,4H),0.61−0.55(m,−CH−,4H),0.06(s,Si−CH,12H)
【0184】
13C NMR測定結果:(75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.3,141.4,126.0,114.5,68.6,32.5,19.9,18.1,0.503.Anal.Calcd.For C2436:C,55.36;H,6.97;N,5.38.Found:C,55.10;H,6.91;N,5.23
【0185】
<1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(3a)の合成>
1,3−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(2a)(1.35g;3.38mmol)と10mLの10重量%Pd/C(0.0393g)酢酸エチル溶液を混合物し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、無色油状物質(1.18g、収率98%)を得た。
【0186】
【化49】
【0187】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3355.5(N−H),2950.6(Alkyl C−H),1623.8(N−H),1511.9(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0188】
H NMR測定結果:(300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.74(d,J=9.0,ArH,4H),6.63(d,J=9.0,ArH,4H),3.87(t,J=6.3,−CH−,4H),3.40(s,NH,4H),1.80−1.71(m,−CH−,4H),1.54−1.42(m,−CH−,4H),0.61−0.53(m,−CH−,4H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0189】
13C NMR測定結果:(75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.8,68.4,33.1,20.0,18.3,0.510
【0190】
<ポリイミド(6a)の合成>
【化50】
0.258g(0.561mmol)の1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを2.15gのNMPに溶かし、ここに0.122g(0.559mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色のポリイミド(6a)のフィルムを得た。
【0191】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2954(Alkyl C−H),1782(C=O),1724(C=O),1400(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C3438:C,63.52;H,5.96;N,4.36.Found:C,63.13;H,6.00;N,4.16
【0192】
[実施例4]
<1,5−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(2c)の合成>
20mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(2.10g;10.1mmol)に、4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(5.11g;26.4mmol)と、カルステッド触媒(30滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質(5.68g、収率95%)を得た。
【化51】
【0193】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2954.4(Alkyl C−H),1592.9(Ar C−C),1515.8,1338.4(−NO),1261.2(Si−C)
【0194】
H NMR測定結果:(300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.19(d,J=9.3,ArH,4H),6.93(d,J=9.0,ArH,4H),4.04(t,J=6.3,−CH−,4H),1.89−1.80(m,−CH−,4H),1.57−1.46(m,−CH−,4H),0.62−0.57(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.03(s,Si−CH,6H)
【0195】
13C NMR測定結果:(75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.4,141.4,126.0,114.5,68.6,32.5,19.8,18.0,1.42,0.315.Anal.Calcd.For C2642:C,52.49;H,7.12;N,4.71.Found:C,52.88;H,6.95;N,4.71
【0196】
<1,5−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(3b)の合成>
1,5−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(2.79g;4.69mmol)(2c)と15mLの10重量%Pd/C(0.0262g)酢酸エチル溶液を混合物し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、無色油状物質の、下記式で表わされる1,5−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(3b)(2.48g、収率99%)を得た。
【化52】
【0197】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3359.4(N−H),2954.4(Alkyl C−H),1623.8(N−H),1511.9(Ar C−C),1238.1(Si−C)
【0198】
H NMR測定結果:(300 MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.74(d,J=8.7,ArH, 4H),6.63(d,J=9.0,ArH,4H),3.87(t,J=6.3,−CH−,4H),3.39(s,NH,4H),1.81−1.71(m,−CH−,4H),1.54−1.43(m,−CH−,4H),0.61−0.55(m,−CH−,4H),0.07(s,Si−CH,12H),0.02(s,Si−CH,6H)
【0199】
13C NMR測定結果:(75 MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.7,68.4,33.1,19.9,18.1,1.45,0.344
【0200】
<液晶性ポリイミド(6b)の合成>
【化53】
0.899g(1.68mmol)の1,5−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(3b)を7.15gのNMPに溶かし、ここに0.366g(1.68mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6b)のフィルムを得た。
【0201】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1782(C=O),1724(C=O),1400(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C3644:C,60.30;H,6.19;N,3.91.Found:C,60.11;H,6.14;N,3.75
【0202】
[実施例5]
【化54】
1.09g(2.04mmol)の1,5−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(3b)を9.54gのNMPに溶かし、ここに0.599g(2.04mmol)のBPDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6g)のフィルムを得た。
【0203】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2954(Alkyl C−H),1770(C=O),1716(C=O),1389(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C4042:C,66.82;H,5.89;N,3.90.Found:C,66.58;H,5.96;N,3.74
【0204】
[実施例6]
【化55】
【0205】
0.994g(1.49mmol)の1,7−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ヘキシル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3d)を9.54gのNMPに溶かし、ここに0.439g(1.49mmol)のBPDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6i)のフィルムを得た。
【0206】
IR測定結果:(Si wafer),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1770(C=O),1712(C=O),1389(C−N),1254(Si−C).Anal.Calcd.For C4862:C,62.44;H,6.77;N,3.03.Found:C,62.01;H,6.65;N,2.77
【0207】
[結果]
上記実施例1〜6、及び参考例1〜4で得たポリイミドの反応経路を下記化学反応式に示す。
【化56】
【0208】
実施例1〜6、及び参考例1〜4で得たポリイミドの相転移点を下記表1に示す。
【表1】
【0209】
[実施例7]
<4−(3−ブテニロキシ)−3−フルオロニトロベンゼン(1d)の合成>
2−フルオロ−4−ニトロフェノール(2.36g;15.1mmol)と炭酸カリウム(2.77g;20.1mmol)のアセトニトリル(40mL)溶液に、4−ブロモ−1−ブテン(2.81g;20.4mmol)を加え、混合物を還流し16時間反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示される4−(3−ブテニロキシ)−3−フルオロニトロベンゼン(1d)、(2.57g、収率81%、淡黄色状のオイル)を得た。
【0210】
【化57】
【0211】
得られた4−(3−ブテニロキシ)−3−フルオロニトロベンゼン(1d)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0212】
IR測定結果:IR (NaCl),ν(cm−1):2935(Alkyl C−H),1643(C=C),1581(Ar C−C),1512,1338(−NO
【0213】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.06−8.01(m,ArH,1H),7.96(dd,J=11.0,2.4,ArH,1H),7.02(t,J=8.7,ArH,1H),5.96−5.94(m,vinyl proton,1H),5.23−5.22(m,vinyl proton,2H),4.18(t,J=6.6,−CH−,2H),2.66−2.59(m,−CH−,2H)
【0214】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):153.0(d,J=5.0),151.3(d,J=234.2),140.9(d,J=10.1),133.3,121.0(d,J=3.5),118.1,113.1(d,J=2.4),112.4(d,J=22.8),69.1,33.3
【0215】
<1,7−ビス[4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2f)の合成>
10mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(1.15g;3.87mmol)に、上記4−(3−ブテニロキシ)−3−フルオロニトロベンゼン(1d)(2.12g;10.0mmol)と、カルステッド触媒(10滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス[4−(2−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2f)(2.46g、収率90%)を得た。
得られた(2f)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0216】
【化58】
【0217】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1605(Ar C−C),1524,1346(−NO),1257(Si−C)
【0218】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.05−8.01(m,J=9.9,ArH,2H),7.96(dd,J=10.5,2.4,ArH,2H),7.01(t,J=7.8,ArH,2H),4.13(t,J=6.6,−CH−,4H),1.94−1.84(m,−CH−,4H),1.61−1.48(m,−CH−,4H),0.63−0.58(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0219】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):153.2(d,J=17.9),151.4(d,J=257.1),140.7(d,J=6.8),121.0(d,J=4.0),112.9(d,J=2.1),112.4(d,J=23.0),69.6,32.4,19.7,18.0,1.30,0.291
【0220】
<1,7−ビス[4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3f)の合成>
2.18gの上記(2f)(3.09mmol)と10mLの10重量%Pd/C(0.0233g)酢酸エチル溶液とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,7−ビス[4−(4−アミノ−2−フルオロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3f)(1.98g、収率99%)を得た。得られた(3f)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0221】
【化59】
【0222】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3375(N−H),2958(Alkyl C−H),1639(N−H),1589(Ar C−C),1257(Si−C)
【0223】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.79(t,J=9.0,ArH,2H),6.44(dd,J=12.6,2.4,ArH,2H),6.37−6.33(m,ArH,2H),3.94(t,J=6.6,−CH−,4H),3.49(s,NH,4H),1.83−1.73(m,−CH−,4H),1.55−1.44(m,−CH−,4H),0.62−0.56(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0224】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):153.9(d,J=244.2),141.3(d,J=9.3),139.6(d,J=11.3),118.0(d,J=2.6),110.5(d,J=3.2),104.2(d,J=21.8),70.8,33.1,19.8,18.1,1.31,0.284
【0225】
<液晶性ポリイミド(6k)の合成>
【化60】
1.083g(1.68mmol)の(3f)を8.19gのNMPに溶かし、ここに0.366g(1.68mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6k)のフィルムを得た。
【0226】
[実施例8]
<4−(3−ブテニロキシ)−2−フルオロニトロベンゼン(1g)の合成>
3−フルオロ−4−ニトロフェノール(1.57g;10.0mmol)と炭酸カリウム(2.09g;15.1mmol)のアセトニトリル(25mL)溶液に、4−ブロモ−1−ブテン(2.21g;16.0mmol)を加え、混合物を還流し終夜反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたカラムクロマトグラフィー(溶媒、ヘキサン:塩化メチレン=6:4)により精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示される4−(3−ブテニロキシ)−2−フルオロニトロベンゼン(1g)(1.71g、収率81%、淡黄色状のオイル)を得た。
【0227】
【化61】
【0228】
得られた4−(3−ブテニロキシ)−2−フルオロニトロベンゼン(1g)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0229】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2947(Alkyl C−H),1643(C=C),1612(Ar C−C),1520,1346(−NO
【0230】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.11−8.05(m,ArH,1H),6.77−6.70(m,ArH,2H),5.93−5.80(m,vinyl proton,1H),5.22−5.12(m,vinyl proton,2H),4.09(t,J=6.9,−CH−,2H),2.61−2.54(m,−CH−,2H)
【0231】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.8(d,J=10.8),157.6(d,J=263.4),133.4,128.0(d,J=1.9),118.0,110.9(d,J=4.0),103.9,103.6,68.6,33.3
【0232】
<1,7−ビス[4−(3−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2g)の合成>
8mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(0.705g;2.49mmol)に、上記4−(3−ブテニロキシ)−2−フルオロニトロベンゼン(1g)(1.55g;7.34mmol)と、カルステッド触媒(10滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス[4−(3−フルオロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2g)(1.66g、収率95%)を得た。
得られた(2g)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0233】
【化62】
【0234】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1612(Ar C−C),1520,1346(−NO),1257(Si−C)
【0235】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.10−8.04(m,ArH,2H),6.76−6.68(m,ArH,4H),4.03(t,J=6.3,−CH−,4H),1.89−1.79(m,−CH−,4H),1.56−1.46(m,−CH−,4H),0.62−0.57(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0236】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):165.1(d,J=10.4),157.6(d,J=262.9),128.0(d,J=2.4),110.9(d,J=3.0),103.8,103.4,69.1,32.4,19.8,17.9,1.34,0.304
【0237】
<1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3g)の合成>
1.66gの上記(2g)(2.35mmol)と10mLの10重量%Pd/C(0.0275g)酢酸エチル溶液とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,7−ビス[4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3g)(1.51g、収率99%)を得た。得られた(3g)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0238】
【化63】
【0239】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3371(N−H),2958(Alkyl C−H),1639(N−H),1593(Ar C−C),1238(Si−C)
【0240】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.70(t,J=8.4,ArH,2H),6.61(dd,J=12.5,2.4,ArH,2H),6.55−6.51(m,ArH,2H),3.86(t,J=6.3,−CH−,4H),3.41(s,NH,4H),1.81−1.72(m,−CH−,4H),1.54−1.43(m,−CH−,4H),0.62−0.56(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0241】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5(d,J=9.3),152.1(d,J=237.6),127.6(d,J=13.6),117.7(d,J=5.0),110.7(d,J=3.5),103.1(d,J=21.6),68.5,32.9,19.9,18.1,1.35,0.332
【0242】
<液晶性ポリイミド(6l)の合成>
【化64】
1.083g(1.68mmol)の(3g)を8.19gのNMPに溶かし、ここに0.366g(1.68mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6l)のフィルムを得た。
【0243】
[実施例9]
<4−(3−ブテニロキシ)−3−クロロニトロベンゼン(1h)の合成>
2−クロロ−4−ニトロフェノール(2.60g;15.0mmol)と炭酸カリウム(2.74g;19.8mmol)のアセトニトリル(40mL)溶液に、4−ブロモ−1−ブテン(2.81g;20.4mmol)を加え、混合物を還流し終夜反応させた。反応終了後、溶液をセライトでろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残留物を、塩化メチレンを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、流出液を濃縮することにより下記式で示される化合物4−(3−ブテニロキシ)−3−クロロニトロベンゼン(1h)(2.32g、収率68%、淡黄色状の固体、融点39−40℃)を得た。
【0244】
【化65】
【0245】
得られた4−(3−ブテニロキシ)−3−クロロニトロベンゼン(1h)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0246】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1643(C=C),1585(Ar C−C),1512,1342(−NO
【0247】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.28(d,J=2.7,ArH,1H),8.14(dd,J=9.0,2.7,ArH,1H),6.97(d,J=9.3,ArH,1H),5.99−5.85(m,vinyl proton,1H),5.25−5.14(m,vinyl proton,2H),4.18(t,J=6.6,−CH−,2H),2.68−2.61(m,−CH−,2H)
【0248】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):159.6,141.1,133.3,126.0,124.0,123.5,118.0,111.8,69.2,33.2
【0249】
<1,7−ビス[4−(2−クロロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2h)の合成>
7mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(0.544g;1.92mmol)に、上記4−(3−ブテニロキシ)−3−クロロニトロベンゼン(1h)(1.37g;6.02mmol)と、カルステッド触媒(10滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,7−ビス[4−(2−クロロ−4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(2h)(1.24g、収率87%)を得た。
得られた(2h)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0250】
【化66】
【0251】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1585(Ar C−C),1516,1342(−NO),1257(Si−C)
【0252】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.26(d,J=3.0,ArH,2H),8.12(dd,J=9.3,3.0,ArH,2H),6.96(d,J=9.0,ArH,2H),4.13(t,J=6.3,−CH−,4H),1.95−1.86(m,−CH−,4H),1.62−1.52(m,−CH−,4H),0.64−0.59(m,−CH−,4H),0.09(s,Si−CH,12H),0.04(s,Si−CH,12H)
【0253】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):159.9,141.1,126.1,124.1,123.5,111.8,69.7,32.3,19.8,17.9,1.33,0.275
【0254】
<1,7−ビス[4−(4−アミノ−2−クロロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3h)の合成>
0.936gの上記(2h)(1.38mmol)と10mLの10重量%Pd/C(0.0469g)酢酸エチル溶液とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される褐色油状物質として1,7−ビス[4−(4−アミノ−2−クロロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(3h)(0.860g、収率99%)を得た。得られた(3h)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0255】
【化67】
【0256】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1624(N−H),1500(Ar C−C),1257(Si−C)
【0257】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):6.76(d,J=8.1,ArH,2H),6.74(d,J=2.4,ArH,2H),3.93(t,J=6.3,−CH−,4H),3.65(s,NH,4H),1.85−1.76(m,−CH−,4H),1.58−1.47(m,−CH−,12H),0.63−0.57(m,−CH−,4H),0.08(s,Si−CH,12H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0258】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):150.0,140.6,124.3,117.5,116.2,114.6,70.2,33.0,19.8,18.1,1.36,0.333
【0259】
<液晶性ポリイミド(6m)の合成>
【化68】
1.139g(1.68mmol)の上記(3h)を8.53gのNMPに溶かし、ここに0.366g(1.68mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色の液晶性ポリイミド(6m)のフィルムを得た。
【0260】
[実施例10]
実施例7で用いたPMDAをBPDAに変更した以外は、実施例7と同様にして、下記式で表わされるポリイミド(6n)のフィルムを得た。
【化69】
【0261】
[実施例11]
実施例9で用いたPMDAをBPDAに変更した以外は、実施例9と同様にして、下記式で表わされる液晶性ポリイミド(6o)のフィルムを得た。
【化70】
【0262】
実施例7〜11で得た液晶性ポリイミドの相転移点を下記表2に示す。なお、表2中のAr、R、及びRについては、下記化学式中のAr、R、及びRに対応する。
【化71】
【表2】
【0263】
[参考例5]
<1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(1A)の合成>
【化72】
上記のスキームの通り、下記文献に従って、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(1A)を合成した(6.42g、収率50%)。
文献:Journal of Applied Polymer ScienceVol. 108, 1901-1907 (2008).(収率82%)
【0264】
<1,11−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(2A)の合成>
5mLのトルエンに溶かした1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(1A)(0.647g;1.50mmol)に、上記4−(3−ブテニロキシ)ニトロベンゼン(0.709g;3.67mmol)と、カルステッド触媒(10滴;プラチナジビニルテトラメチルジシロキサンコンプレックスの2%キシレン溶液)を加えた。反応溶液を窒素下で24時間加熱還流したのち、減圧下でトルエンを除去した。得られた物質を塩化メチレン:ヘキサン(4:6 体積比)を用いたカラムクロマトグラフィーで精製し、下記式で示される薄黄色油状物質である1,11−ビス[4−(4−ニトロフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(2A)(1.18g、収率96%)を得た。
得られた(2A)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0265】
【化73】
【0266】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):2958(Alkyl C−H),1593 (Ar C−C),1516,1342(−NO),1261(Si−C)
【0267】
H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):8.18(d,J=9.6,ArH,4H),6.93(d,J=9.3,ArH,4H),4.05(t,J=6.3,−CH−,4H),1.89−1.80(m,−CH−,4H),1.57−1.47(m,−CH−,4H),0.63−0.57(m,−CH−,4H),0.09(s,Si−CH,12H),0.06(s,Si−CH,12H),0.05(s,Si−CH,12H)
【0268】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):164.4,141.4,126.0,114.5,68.6,32.6,19.8,18.0,1.33,1.25,0.314
【0269】
<1,11−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(3A)の合成>
1.02gの上記(2A)(1.25mmol)と10mLの10重量%Pd/C(0.0203g)酢酸エチル溶液とを混合し、室温下、水素雰囲気で2日間撹拌した。溶液をセライト濾過した後に濃縮し、下記式で示される無色油状物質として1,11−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ブチル]−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチルヘキサシロキサン(3A)(0.943g、収率99%)を得た。得られた(3A)について、測定を行なった結果は以下の通りである。
【0270】
【化74】
【0271】
IR測定結果:(NaCl),ν(cm−1):3363 (N−H),2958(Alkyl C−H),1624(N−H),1512(Ar C−C),1257(Si−C)
【0272】
1H NMR測定結果:(測定条件 300MHz,CDCl3,δ,ppm,25℃):6.74(d,J=9.0,ArH,4H),6.63(d,J=8.7,ArH,4H),3.88(t,J=6.3,−CH−,4H),3.41(s,NH,4H),1.82−1.73(m,−CH−,4H),1.55−1.44(m,−CH−,12H),0.63−0.57(m,−CH−,4H),0.09(s,Si−CH,12H),0.08(s,Si−CH,12H),0.06(s,Si−CH,12H)
【0273】
13C NMR測定結果:(測定条件 75MHz,CDCl,δ,ppm,25℃):152.5,139.9,116.5,115.8,68.4,33.1,19.9,18.1,1.33,1.23,0.314
【0274】
1.272g(1.68mmol)の上記(3A)を9.28gのNMPに溶かし、ここに0.366g(1.68mmol)のPMDAを加え、この溶液を室温で12時間撹拌した。得られたポリアミド酸を窒素下でガラス板上にキャストし、ホットプレートで段階的に加熱(熱イミド化)し、最終的には200℃にて加熱を行って濁った黄色のポリイミド(6A)のフィルムを得た。
【化75】
【0275】
[参考例6]
参考例5で用いたPMDAをBPDAに変更した以外は、参考例6と同様にして、下記式で表わされるポリイミド(6B)のフィルムを得た。
【化76】
【0276】
[評価]
上記実施例7〜11、参考例5及び6で得られたポリイミドについて、液晶性を確認したところ、実施例7〜11で得られた液晶性ポリイミド(6k)、(6l)、(6m)、(6n)、及び(6o)については、液晶性を示すことが確認された。一方、(6A)及び(6B)については、液晶性を示さないことが確認された。これは、スペーサー基の屈曲性が高すぎる(スペーサー基が長すぎる)ために、メソゲン基が配向しなかったものと考えられる。
【0277】
[熱伝導率の評価]
下記の方法により、液晶性ポリイミドフィルムの熱伝導率の評価、及び液晶性ポリイミドと窒化アルミニウムとのコンポジットとした際の熱伝導率の評価を行なった。熱伝導率の評価は、アイフェイズ社のアイフェイズモバイル1uを用いて、周期加熱法にて試料の熱拡散率を評価し、ここに試料の比重と比熱を乗じて、熱伝導率を求めた。
【0278】
・液晶性ポリイミドフィルムの熱伝導率測定
離型PETフィルム上に、実施例1の液晶性ポリイミド(6h)の合成の欄に記載のポリアミド酸を塗布し、このサンプルを大気中、加熱オーブンで100℃で60分、次いで150℃で60分加熱した後に減圧下さらに30分保持後、室温まで放冷して離型PET上にポリイミドフィルム(ポリイミド(6h)(膜厚107μm))を得た。離型PETからフィルムを剥がして得た自立膜の厚み方向の熱伝導率を評価したところ、0.21W/m・Kであった。このフィルムを離型処理したスライドガラスに載せ、ホットプレート上で280℃に昇温して等方相とし10分間保持した。その後、240℃に降温し、30分保持して液晶相を発現させた後に室温まで放冷し、離型ガラス上にポリイミド(6h)の液晶化フィルムを得た。離型ガラスから剥がした自立膜の厚み方向の熱伝導率を評価したところ、0.24W/m・Kと液晶化前に比べて熱伝導率の改善が確認された。
【0279】
・窒化アルミニウム/ポリイミドコンポジットの熱伝導率測定
MEK(2−ブタノン)4.95g中に、分散剤としてBYK−111(ビックケミー社製)を0.05gを加え均一に混合した。さらに5.0gの窒化アルミニウム(AlN;トクヤマHグレード)を加え、超音波を照射することで均一なAlN/MEK分散液(50重量%)を得た。乳鉢に15重量%の、実施例1の液晶性ポリイミド(6h)の合成の欄に記載のポリアミド酸溶液0.372g(溶媒NMP)を加え、ここに50重量%AlN分散液0.278gとMEK0.08gを加えて均一になるまで乳鉢中で混合した。このペーストを離型PETフィルム上にスピンコートし薄膜を得た(スピンコート条件:800rpm×5秒 + 2500rpm×15秒)。この離型PET上のサンプルを80℃で10分間プリベイクし、ポリアミド酸/AlNのコンポジットフィルムを得た。このフィルムを大気中、加熱オーブンで100℃で30分、次いで150℃で30分加熱した後に減圧下でさらに30分保持後、室温まで放冷して離型PET上にポリイミド/AlNのコンポジットフィルムを得た。離型PETからサンプルフィルムを剥がして自立膜を得た。TG−DTA測定より、コンポジットフィルム中のAlNの重量分率は76.5重量%であった。このサンプルフィルムの熱伝導率を評価したところ1.5W/m・Kであった。
【0280】
このフィルムを二枚の離型処理したスライドガラスに挟み、熱プレス機にて約1MPaの圧力をかけ、280℃まで昇温し、10分間保持した。その後、240℃に降温し、30分保持して液晶相を発現させた後に室温まで放冷し、離型ガラス間に液晶性ポリイミド/AlNコンポジットフィルムを得た。このコンポジットフィルムの熱伝導率を評価したところ、2.9W/m・Kと液晶化処理前に比べて顕著な向上が見られた。一方、温度処理条件を280℃で10分+30分加熱の後に放冷した場合(液晶相を発現させない温度処理条件)、その熱伝導率は2.0W/m・Kであった。液晶の発現によるコンポジットの熱伝導率の発現が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明の液晶性ポリイミドは、比較的低温で液晶性を示し、これにより高熱伝導性を示すことが期待されることから、例えば半導体素子等、高熱伝導性が求められ、かつ熱に対して影響を受けやすい部材を用いた素子に用いることができ、種々の分野に適用可能である。
図4
図1
図2
図3