(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、透析治療中には、患者の安全を確保することが最優先課題である。患者の安全を確保するには、治療中に異常が発生した場合にはその異常を医療従事者に的確に報知したり、透析治療を行う際の注意事項を医療従事者に的確に報知する必要がある。
【0007】
しかしながら、透析治療を受ける患者は、それぞれに病状や体調が異なる。そして、各患者に対しては、病状や体調に応じた透析治療を行う必要があるので、血液透析中の異常や注意事項を全ての患者で同じように報知することは適切でない。すなわち、患者毎に、治療時における血圧や脈拍等の上限値及び下限値が異なり、また、患者によって薬剤の投与が必要であったり、透析中に何らかの処置が要求されることがある。さらに、薬剤を投与する場合には、薬剤の種類及び投与方法も患者毎に異なることがあり、また、処置についても、例えばマッサージや酸素吸入等、様々であり、患者毎に異なる。しかも、患者によっては、例えば、血圧の低下に特に注意しなければならない者等がいる。
【0008】
このように患者毎に異常の報知内容や注意事項の報知内容が異なるのであるが、従来は、血液透析装置に予め入力可能な各種パラメーターの中でしか、警報を行う条件を設定することができなかったため、個々の患者の状態や要望に応じた適切な報知を行うことができなかった。また、特許文献1では、単に中央監視装置と血液透析装置との間で情報のやり取りを行っているだけである。従って、透析治療中に異常が起こったり、注意が必要な場合に、その異常が起こったことや注意事項を、対象の患者に応じて的確に報知することができるとは言い難い。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、血液透析治療中に、異常の報知及び注意事項の報知を患者毎に的確に行うことができるようにして、透析治療の安全性をより一層高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、患者の血液透析治療に関する治療情報と、血液透析治療時に所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶させておき、透析治療時に所定条件下で報知情報を血液透析装置の情報表示部にテキストデータとして表示させるようにした。
【0011】
第1の発明は、患者の血液透析治療を行うように構成された血液透析装置と、上記血液透析装置による血液透析治療を監視する中央監視装置とを備え、上記血液透析装置と上記中央監視装置とが通信可能に接続されて構成された血液透析監視システムにおいて、上記血液透析装置は、各種情報を表示する情報表示部と、該情報表示部を制御する制御部と、患者の血液透析治療中における情報を取得する治療時情報取得部と、該治療時情報取得部で取得された患者の治療中の情報を上記中央監視装置に出力する治療時情報出力部とを備え、上記中央監視装置は、患者の血液透析治療に関する治療情報と血液透析治療時における所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶する患者情報記憶部と、上記血液透析装置の治療時情報取得部で取得された治療中の情報と上記患者情報記憶部に記憶された治療情報とを比較して、上記所定条件を満たしたと判断したときに血液透析治療中の患者の報知情報を上記患者情報記憶部から取得する報知情報取得部と、該報知情報取得部で取得した報知情報を上記血液透析装置に出力する報知情報出力部とを備え、上記血液透析装置の制御部は、上記報知情報出力部から出力された報知情報を上記情報表示部にテキストデータとして表示させることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、中央監視装置の患者情報記憶部には、血液透析治療を受ける患者毎に、行われる治療情報と、警報ないし注意事項を表す報知情報とが関連付けてられて記憶される。
【0013】
一方、血液透析装置による血液透析治療中には、治療時情報取得部によって患者の血液透析治療中における情報が取得される。そして、治療時情報取得部によって取得された治療中の情報は、報知情報取得部において、予め記憶されている患者の治療情報と比較される。比較の結果、警報や注意が必要な所定条件を満たしたと判断したときには、血液透析治療中の患者についての報知情報が血液透析装置に送信され、情報表示部にテキストデータとして表示される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、中央監視装置の患者情報記憶部には、患者の過去の血液透析治療中に報知情報が報知された記録が報知記録として当該患者に関連付けられて記憶され、報知情報取得部は、治療時情報取得部で取得された治療中の情報と、上記患者情報記憶部に記憶された報知記録とに基づいて透析治療中に必要な患者の報知情報を上記患者情報記憶部から取得し、血液透析装置に出力するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、過去に報知情報が報知されたことがある患者に血液透析治療を行う場合に、その報知記録に基づいて報知情報が報知されるので、患者の過去の記録に基づき、より的確な報知を行うことが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、中央監視装置の患者情報記憶部には、患者の過去の血液透析治療中に得られた過去治療データが当該患者に関連付けられて記憶され、報知情報取得部は、治療時情報取得部で取得された治療中の情報と、上記患者情報記憶部に記憶された過去治療データとに基づいて透析治療中に必要な患者の報知情報を上記患者情報記憶部から取得し、血液透析装置に出力するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、過去に血液透析治療を行ったことがある患者について、過去治療データとして、例えば、治療中の血圧等を記憶させておくことが可能になる。そして、その患者に血液透析治療を行う場合には、過去治療データに基づいて報知情報が報知されるので、より的確な報知を行うことが可能になる。
【0018】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、中央監視装置は、各患者の報知情報をテキストで入力するための入力装置を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、報知情報をテキストで入力するための入力装置を各血液透析装置に設けることなく、中央監視装置の入力装置によって各患者の報知情報を入力することが可能になる。よって、血液透析装置の構造がシンプルになる。
【0020】
第5の発明は、血液透析装置により行われる患者の血液透析治療を監視する中央監視装置において、上記血液透析装置と通信可能に接続され、患者の血液透析治療に関する治療情報と、血液透析治療時における所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶する患者情報記憶部と、上記血液透析装置で取得された患者の血液透析治療中における情報と、上記患者情報記憶部に記憶された治療情報とを比較して、上記所定条件を満たしたと判断したときに血液透析治療中の患者の報知情報を上記患者情報記憶部から取得する報知情報取得部と、上記報知情報取得部で取得した報知情報を上記血液透析装置に出力する報知情報出力部とを備え、上記報知情報出力部から出力された報知情報を上記血液透析装置にテキストデータとして表示させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明は、血液透析装置により行われる患者の血液透析治療を監視する中央監視装置に導入される中央監視装置用の制御プログラムであって、患者の血液透析治療に関する治療情報と、血液透析治療時における所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶する患者情報記憶部と、上記血液透析装置で取得された患者の血液透析治療中における情報と、上記患者情報記憶部に記憶された治療情報とを比較して、上記所定条件を満たしたと判断したときに血液透析治療中の患者の報知情報を上記患者情報記憶部から取得する報知情報取得部と、上記報知情報取得部で取得した報知情報を上記血液透析装置に出力する報知情報出力部とを、上記中央監視装置に構成させるとともに、上記報知情報出力部から出力された報知情報を上記血液透析装置にテキストデータとして表示させるように構成されていることを特徴とするものである
。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、患者の血液透析治療に関する治療情報と、血液透析治療時における所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶させておき、患者の血液透析治療中における情報と、記憶されている治療情報とを比較し、警報や注意が必要と判断したときに、血液透析治療中の患者の報知情報を血液透析装置の情報表示部にテキストデータとして表示させることができる。これにより、患者毎に異常の報知内容や注意事項の報知内容が異なる場合に、患者に応じた報知内容を医療従事者に的確に報知することができるので、血液透析治療の安全性をより一層高めることができる。
【0023】
第2の発明によれば、患者情報記憶部に、患者の過去における血液透析治療中に報知された報知記録を当該患者に関連付けて記憶しておき、患者情報取得部で取得された情報と過去の報知記録とに基づいて透析治療中の患者の報知情報を患者情報記憶部から取得するようにしたので、患者の過去の記録に基づいてより的確な報知を行うことができ、血液透析治療の安全性を高めることができる。
【0024】
第3の発明によれば、患者情報記憶部に、患者の過去の血液透析治療中に得られた過去治療データを当該患者に関連付けて記憶しておき、患者情報取得部で取得された情報と過去治療データとに基づいて透析治療中の患者の報知情報を患者情報記憶部から取得するようにしたので、患者の過去治療データに基づいてより的確な報知を行うことができ、血液透析治療の安全性を高めることができる。
【0025】
第4の発明によれば、各患者の報知情報をテキストで入力するための入力装置を中央監視装置に設けたので、テキストで入力するための入力装置を、各血液透析装置に設けずに済み、各血液透析装置のコストを低減でき、ひいては、血液透析監視システムのコストを低減できる。また、各血液透析装置に1台ずつ報知情報の入力作業を行う必要がなく、中央監視装置によって一括して入力し、送信を行うことができるため、医療従事者の労力を低減することができる。
【0026】
第5
及び6の発明によれば、第1の発明と同様に、患者毎に異常の報知内容や注意事項の報知内容が異なる場合に、患者に応じた報知内容を医療従事者に的確に報知することができ、血液透析治療の安全性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態にかかる透析監視システム1の概略図を示すものである。透析監視システム1は、複数の血液透析装置10,10,…と、中央監視装置11とを備えている。血液透析装置10と中央監視装置11とは、信号線12及びネットワーク13を介して通信可能に接続されている。ネットワーク13は、構内ネットワークである。
【0030】
尚、血液透析装置10と中央監視装置11とは、ネットワーク13を介さずに直接接続するようにしてもよいし、周知の無線通信機器を介して無線通信可能に接続するようにしてもよく、通信形態は特に限定されない。
【0031】
透析監視システム1は、例えば、透析クリニックや病院等の医療施設で使用されるものであり、各血液透析装置10により行われる患者への血液透析治療を中央監視装置11で監視するように構成されている。血液透析装置10の台数は医療施設の規模によって異なり、特に限定されないが、この実施形態では、例えば、数十台から数百台程度である場合が好適である。
【0032】
血液透析装置10は、患者のベッドのそばに、ベッド毎に置かれるものであり、実際に血液透析を行うように構成されている。すなわち、
図2に示すように、血液透析装置10は、血液ポンプ20と、シリンジポンプ21と、コンソールディスプレイ(情報表示部)22と、入出力部(治療時情報出力部)23と、入力インターフェース24と、血圧測定部25と、除水量計測部26と、静脈圧測定部27と、透析液圧測定部28と、脈拍測定部29と、補液量測定部30と、表示灯31と、スピーカー32と、これらが接続される制御部35とを備えている。血液透析装置10は、他にも、血液回路や、透析液回路、ダイアライザー等を備えているが、これらは、周知のものであるため、説明を省略する。また、血液透析装置10は透析液圧を測定するセンサや、透析液温を測定するセンサ等も備えている。これらセンサは周知のものである。
【0033】
血液ポンプ20は、患者の血液が流れるチューブをしごくことによって血液を圧送するように構成された、いわゆるしごき型のポンプであり、制御部35によってON、OFF及び血液の圧送量が制御されるようになっている。また、制御部35は、血液ポンプ20の回転速度によって血流量を推定して得ることができるようになっている。
【0034】
シリンジポンプ21は、薬剤の投与が必要な患者にその薬剤を投与するための周知の機械式ポンプである。シリンジポンプ21には、薬剤が収容されたシリンジがセットされるようになっており、薬剤の投与のタイミング、投与量、投与時間は制御部35によって制御される。
【0035】
コンソールディスプレイ22は、
図3に示すように、透析条件や、透析中における患者の情報等を表示することが可能なものであり、例えば、カラー液晶パネル等で構成され、制御部35により制御される。コンソールディスプレイ22には、透析の残り時間の表示部22a、除水量の表示部22b、目標除水量及び除水速度の表示部22c、静脈圧の表示部22d、透析液圧の表示部22e、シリンジポンプの動作状態の表示部22f、血液ポンプの動作状態の表示部22g、警報及び注意事項の表示部22hとが設けられている。
【0036】
制御部35は、後述する警報や注意事項をテキストデータとしてコンソールディスプレイ22の表示部22hに表示させるように構成されている。
【0037】
尚、各表示部22a〜22hの表示内容は、入力インターフェース24の操作によって切り替えることが可能である。例えば、透析条件を入力するための画面に変更したり、入力した透析条件の確認するための画面に変更することもできるようになっている。
【0038】
入出力部23は、信号線12に接続されている。入出力部23は、患者の血液透析中の情報を所定の信号として中央監視装置11に出力するとともに、中央監視装置11から出力された各種情報を制御部35に入力するように構成されている。
【0039】
入力インターフェース24は、コンソールディスプレイ22の表面に設けられたタッチ式スイッチや、ボタン、操作つまみ等で構成されている。タッチ式スイッチは、例えば、透明電極を有する周知の構造のものである。入力インターフェース24により、透析条件の入力や、画面の切替が行えるようになっている。
【0040】
血圧測定部25は、患者の血圧を略リアルタイムで測定するためのものである。除水量計測部26は、患者の除水量を得るためのものである。静脈圧測定部27は、患者の静脈圧を略リアルタイムで測定するためのものである。透析液圧測定部28は、透析液の圧力を略リアルタイムで測定するためのものである。脈拍測定部29は、患者の脈拍を測定するためのものである。補液量測定部30は、透析が開始されてから行われた補液の量を測定するためのものである。
【0041】
血圧測定部25と、除水量計測部26と、静脈圧測定部27と、透析液圧測定部28と、脈拍測定部29と、補液量測定部30とは、患者の血液透析治療中における情報を取得する治療時情報取得部を構成している。
【0042】
表示灯31は、警報や注意事項を報知する際に点滅ないし点灯するように構成されており、制御部35により制御されるようになっている。表示灯31には、赤色灯、緑色灯、黄色灯、白色灯が設けられており、個別に点滅ないし点灯する。また、制御部35により、各灯の点滅スピードを「速い」と「遅い」との一方に切り替えることも可能になっている。尚、表示灯31には、上記した色以外の灯を設けてもよい。また、点滅スピードを任意にコントロールできるようにしてもよい。
【0043】
スピーカー32は、警報や注意事項を報知する際に音を発するように構成されており、制御部35により制御されて複数種の音色を発する。
【0044】
制御部35は、透析条件に基づいて血液ポンプ20及び各部を作動させるように構成されている。また、薬剤の投与が必要であれば、シリンジポンプ21も作動させる。
【0045】
血液透析治療を行っている間には、患者の血液透析治療中における情報として、除水量、血圧、脈拍、静脈圧等が測定されるとともに、血流量が推定され、これら情報は制御部35に入力される。また、制御部35は、補液が行われた回数を計測するとともに、透析治療が開始されて経過した時間も計測する。制御部35では、患者の血液透析治療中の情報のうち、必要な情報をコンソールディスプレイ22に表示させ、また、患者の血液透析治療中の情報を入出力部23に出力する。入出力部23は制御部35から出力された患者の血液透析治療中の情報を中央監視装置10に出力する。この入出力部23が、本発明の治療時情報出力部である。
【0046】
図4に示すように、中央監視装置11は、ディスプレイ40と、入出力部41と、入力装置42と、制御装置43と、記憶装置44とを備えている。制御装置43は、汎用のパーソナルコンピュータ等で構成されており、図示しないがCPUやROM、RAM等を有している。制御装置43には、中央監視装置11を動作させるための制御プログラムが格納されており、この制御プログラムに従って中央監視装置11が動作するようになっている。
【0047】
ディスプレイ40は、例えば、カラー液晶パネル等で構成され、制御装置43と共に例えば医療施設のナースステーション等に置かれている。また、ディスプレイ40は、制御装置43により制御され、後述する各種画面が表示される。
【0048】
入出力部41は、信号線12に接続されている。入出力部41は、中央監視装置11に記憶されている情報を所定の信号として血液透析装置10に出力するとともに、血液透析装置10から出力された各種情報を制御部43に入力するように構成されている。
【0049】
入力装置42は、マウス及び一般のキーボードを備えており、キーボードによってテキストの入力等が楽に行えるようになっている。
【0050】
記憶装置44は、周知の記憶媒体を備えており、各種情報等が記憶されるようになっている。記憶装置44には、患者情報記憶部44aが設けられている。患者情報記憶部44aには、
図5に示すような患者情報データベースが設けられている。患者情報データベースは、透析条件と、患者固有情報と、報知条件と、報知情報と、報知記録とが患者IDに関連付けて記憶可能に構成されている。患者情報データベースの透析条件と、患者固有情報と、報知条件と、報知情報とは、入力装置42を使用して入力される。
【0051】
患者IDは、患者毎に設定された識別番号である。透析条件データベースは、
図6に示すように、透析治療を受ける患者の当日の体重、除水速度、透析時間を含み、これらは患者IDに対応している。患者固有情報は、
図7に示すように、患者名、年齢、性別、ドライウエイト(標準体重)、既往歴を含み、これらは患者IDに対応している。
【0052】
報知条件は、警報や注意事項を医療従事者に報知するか否かを決定するための条件であり、患者の血液透析治療に関する治療情報である。
【0053】
図8に示すように、報知条件データベースには、第1報知条件、第2報知条件、第3報知条件(図示せず)、…の複数記憶される。そして、これら報知条件の中から選択された報知条件が、
図5に示す患者情報データベースに報知条件として患者IDに関連付けられて記憶される。
図5では、第1報知条件のみが選択されて記憶されているが、第2報知条件のみを選択してもよいし、複数の報知条件を選択してもよい。
【0054】
図8に示すように、第1報知条件は、項目名と設定値とを含んでいる。項目名は、例えば、患者の最高血圧、最低血圧、静脈圧、透析経過時間(透析を開始してから経過した時間)等である。設定値は、例えば、項目名が最高血圧や最低血圧であれば、上限値及び下限値(mmHg)であり、また、項目名が静脈圧であれば上限値であり、また、項目名が透析経過時間であれば、時間(min)である。第2報知条件、第3報知条件、…は第1報知条件と同様である。
【0055】
報知条件データベースに項目名及び設定値を入力する際には、制御装置43は、
図9に示すような報知条件入力画面をディスプレイ40に表示させる。報知条件入力画面は、所定の操作によって他の画面から切り替えてディスプレイ40に表示させることが可能となっている。
【0056】
報知条件入力画面中のNo.1とは、
図8の報知条件データベースにおける第1報知条件であり、報知条件入力画面中のNo.2〜4は、同様に、報知条件データベースにおける第2〜第4報知条件である。報知条件入力画面における項目名は、上記した報知条件データベースの項目名に対応しており、報知条件入力画面における上限値、下限値、経過時間は、報知条件データベースの設定値に対応している。
【0057】
同図に示すように、報知条件入力画面では、項目名が最高血圧や最低血圧の場合には、上限値及び下限値の入力が可能である。項目名が静脈圧の場合には、上限値のみ入力可能である。また、項目名が透析経過時間の場合には、経過時間の入力が可能である。報知条件入力画面の「登録」ボタンは、必要事項(項目名及び設定値)の入力後にマウスでクリック操作することで、入力された情報を患者情報記憶部44aに記憶させるためのボタンである。
【0058】
報知条件データベースに記憶させる報知条件の数は、4つに限られるものではなく、多数記憶させることが可能である。
【0059】
報知条件データベースの項目名としては、
図9に示した最高血圧、最低血圧、静脈圧、透析経過時間の他に、図示しない脈拍、補液回数、補液量、過去治療データとの比較等がある。補液回数を項目名とした場合には、設定値としては、回数を入力する。また、補液量を項目名とした場合には、設定値としては、量(ml)を入力する。過去治療データとは、その患者の過去に行った透析治療時に容態の変化や血圧の急激な変化等の要注意状態となったことがある場合に、その要注意となったときの情報(血圧、静脈圧、経過時間等)と、今回の治療中における対応する情報とを比較して、過去に要注意となったことがある旨を報知するか否かを設定するための項目である。この過去治療データを項目名として入力した場合には、設定値としては、YESかNOを入力する。YESでは、過去に要注意となったことがある旨を報知し、NOでは、その旨を報知しない。
【0060】
報知条件データベースの項目名及び設定値は、入力装置42のキーボードで入力することが可能となっている。よって、多数の報知条件の入力が容易に行えるようになっている。
【0061】
尚、項目名は、例えばプルダウンメニューによって選択して入力できるようにしてもよい。
【0062】
図5に示すデータベースの中の報知情報とは、警報や注意事項を医療従事者にどのようにして報知するかを示す具体的な情報である。報知情報データベースには、
図10に示すように、第1報知情報、第2報知情報、第3報知情報(図示せず)、…が記憶される。そして、これら報知情報の中から選択された報知情報が、
図5に示す患者情報データベースに報知情報として患者IDに関連付けられて記憶される。
図5では、第1報知情報のみが選択されて記憶されているが、第2報知情報のみを選択してもよいし、複数の報知情報を選択してもよい。
【0063】
図10に示すように、第1報知情報は、項目名と、テキストと、表示灯制御と、報知音制御とを含んでいる。項目名は、例えば、経過を観察する程度の注意で済む場合の「経過観察」、より注意をする必要がある「軽微」、より一層の注意をする必要がある「重大」等である。
【0064】
テキストは、血液透析装置10のコンソールディスプレイ22に表示するテキストデータであり、様々な文字や文章を任意かつ自由に入力して記憶させることが可能となっている。表示灯制御には、血液透析装置10の表示灯31をどのように点滅ないし点灯させるかが記憶される。報知音制御には、血液透析装置10のスピーカー32から発する音色をどの音色にするか記憶される。
【0065】
報知情報を入力する際には、制御装置43は、
図11に示すような報知情報入力画面をディスプレイ40に表示させる。報知情報入力画面は、所定の操作によって他の画面から切り替えて表示させることが可能となっている。
【0066】
報知情報入力画面中のNo.1とは、
図10の報知情報データベースにおける第1報知情報であり、報知情報入力画面中のNo.2〜4は、同様に、報知情報データベースにおける第2〜第4報知情報である。報知情報入力画面における項目名は、上記した報知情報データベースの報知情報の項目名に対応しており、報知情報入力画面におけるテキスト、表示灯制御、報知音制御は、それぞれ報知情報データベースのテキスト、表示灯制御、報知音制御に対応している。
【0067】
同図に示すように、テキストには、入力装置42によりテキストが自由に入力可能である。図示していないが、テキストの色や大きさ、背景の色等を報知情報入力画面上で任意に設定することも可能である。
【0068】
また、表示灯制御及び報知音制御は、プルダウンメニューにより選択できる。報知情報入力画面の「登録」ボタンは、必要事項(項目名、テキスト、表示灯制御及び報知音制御)の入力後にマウスでクリック操作することで、入力された情報を患者情報記憶部44aに記憶させるためのボタンである。
【0069】
報知情報データベースの項目名としては、
図11に示した経過観察、軽微、重大の他に、図示しないが、注射(薬剤の投与)、血液透析中に行う処置を入力することも可能となっている。
【0070】
報知情報データベースの項目名が注射の場合には、テキストとして、投与薬剤名及び投与方法の入力が可能である。例えば、「エリスロポエチン製剤を投与して下さい。」等を入力することができる。
【0071】
また、報知情報データベースの項目名が処置の場合には、テキストとして、例えば、マッサージ、酸素吸入、補液等の入力が可能である。例えば、「フットマッサージを実施して下さい。」等を入力することができる。
【0072】
報知情報データベースの項目名としては、他に、注意喚起がある。この場合、テキストとしては、例えば、除水過多、除水不足、血圧低下への注意、バイタル(脈拍、血圧)の観察等がある。例えば、「血圧に注意して下さい。」、「循環血液量が低下しています。除水速度を確認して下さい。」、「血圧の低下が発生しやすい時間帯です。注意して下さい。」等を入力することができる。
【0073】
図5に示す患者情報データベースの報知記録は、過去の透析治療時に患者に注意すべき事態が発生した場合に記憶されるものであり、その内容と、発生時の血圧等の患者情報とで構成されている。例えば、透析開始から30分後に血圧が急激に低下したことがある患者の場合には、内容としてテキストで「透析開始から30分後に血圧が急激に低下」と記憶させるとともに、そのときの血圧等を記憶させ、また、設定値として経過時間30分として記憶させる。
【0074】
さらに、記憶装置44の患者情報記憶部44aには、過去治療データベースが設けられている。
図12に示すように、過去治療データベースには、患者の過去の血液透析治療中に得られた過去治療データが当該患者に関連付けられて記憶される。すなわち、過去治療データベースは、患者が透析治療を行った日付(治療日)、その透析治療を開始した時刻、開始時刻からの経過時間(分表示)、除水量、最高血圧(血圧(上))、最低血圧(血圧(下))、脈拍、静脈圧、透析液圧、透析液温等を含み、これらは患者IDに対応している。過去治療データは、これらに限られるものではなく、他のデータを含んでいてもよい。
【0075】
過去治療データは1分毎に透析終了まで記憶される。除水量、血圧等の各データは、透析治療開始から上記治療経過時間(分)、経過した時点における値である。従って、例えば透析時間が
図12に示すように4時間であれば、透析治療1回分の過去治療データは、患者1人につき、60(分)×4(時間)=240(分)となり、240行の大量のデータとなるが、外部の記憶装置44に記憶させておくので、問題とはならない。
【0076】
尚、経過時間は1分に限られるものではなく、1分よりも短くても長くてもよい。
【0077】
制御装置43は、過去治療データベースに記憶されているデータに基づいて、
図13に示すように、透析開始30分経過時におけるデータを抽出して別のデータベースを作成する。これにより、次回の治療時において、透析開始30分経過時に、過去のデータに基づいて患者の異常を判断することが可能になる。これは例示であり、例えば、透析開始直後のデータに基づいて別のデータベースを作成してもよいし、治療開始1時間経過後のデータに基づいて別のデータベースを作成してもよい。
【0078】
また、図示しないが、制御装置43は、過去治療データベースに記憶されているデータに基づいて、患者の透析治療時の平均血圧や、最低血圧、最高血圧等を得ることができるようになっている。平均血圧は、全透析時間を通じての平均値を得ることもできるし、例えば、
図13に示すデータベースに基づいて、透析治療を開始して30分経過した時点の血圧を平均した平均値を得ることもできる。
【0079】
図4に示すように、制御装置43は、報知情報取得部43aを備えている。報知情報取得部43aは、患者の透析治療中の情報と、患者情報記憶部44aに記憶された患者の血液透析治療に関する治療情報(報知条件)とを比較して、所定条件を満たすか否かを判断した上で、所定条件を満たしたと判断したときに、血液透析治療中の患者の報知条件に対応した報知情報を患者情報記憶部44aから取得するように構成されている。
【0080】
報知情報取得部43aにおける制御要領を
図14に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、スタート後のステップSA1では、患者情報記憶部44aに記憶されている情報(
図5のデータベース参照)の中から患者の報知条件を取得する。続くステップSA2では、血液透析装置10から出力されている透析治療中の患者の情報(血圧等)を取得する。
【0081】
その後、ステップSA3では、ステップSA1で取得した報知条件と、ステップSA2で取得した透析治療中の患者の情報とを比較し、透析治療中の患者の情報が報知条件を満たしているか否か判断する。
【0082】
ステップSA3でYESと判断されて、透析治療中の患者の治療中の情報が報知条件を満たしている場合には、ステップSA4に進み、患者情報記憶部44aに記憶されている情報(
図5のデータベース参照)の中から当該患者の報知情報を取得する。
【0083】
一方、ステップSA3でNOと判断されて、患者の血液透析治療中の情報が報知条件を満たしていない場合には、ステップSA5に進む。ステップSA5では、過去治療データを取得する。ステップSA5で取得する過去治療データは、例えば、
図13に示す透析開始30分経過時におけるデータである。
【0084】
ステップSA5に続くステップSA6では、過去治療データと治療中の情報との差が所定以上であるか否かを判定する。例えば、過去治療データ中、血圧(下)の平均値を求め、この平均値と、今回の治療における治療開始30分経過したときの最低血圧との差が、所定値以上であればステップSA6でYESと判定する。一方、差が所定値未満であれば、ステップSA6でNOと判定する。治療中の情報は、ステップSA2で取得したものを用いる。
【0085】
ステップSA6でNOと判定されると、後述する
図15のフローチャートのステップSB7に進み、一方、ステップSA6でYESと判定されると、ステップSA4に進む。
【0086】
ステップSA4では、報知情報を取得する。ステップSA4で取得された報知情報は、中央監視装置11の制御装置43から入出力部41に出力される。入出力部41は、報知情報を血液透析装置10に出力するようになっている。報知情報は、血液透析装置10の入出力部23を介して制御部35に入力される。制御部35は、報知情報に基づいてコンソールディスプレイ22、表示灯31及びスピーカー32を制御する。
【0087】
また、中央監視装置11は、患者情報記憶部44aに、
図6に示す透析条件データベースとして記憶されている透析条件を各血液透析装置10に出力するように構成されている。この動作は中央監視装置11の入力装置42の操作により実行される。
【0088】
次に、上記のように構成された透析監視システム1を使用して血液透析治療を行う場合について説明する。
【0089】
まず、
図15のフローチャートに全体の流れを示すように、医療従事者は治療準備を行う(ステップSB1)。すなわち、中央監視装置11の入力装置42を用いて透析条件、報知条件、報知情報を入力し、患者情報記憶44aに記憶させる。尚、中央監視装置11の患者情報記憶部44aには、
図7に示す患者固有情報は既に入力されているものとする。
【0090】
詳しくは、まず、医療従事者は、
図6に示す透析条件データベースに、患者の当日の体重、除水速度、透析時間を入力する。その後、医療従事者は、入力装置42を操作して、
図9に示す報知条件入力画面を表示させる。報知条件入力画面には、項目名及び項目名に応じた設定値を入力する。そして、報知条件入力画面の「登録」ボタンを押すと、報知条件入力画面に入力された情報が患者情報記憶部44aに記憶される。
【0091】
また、入力装置42を操作して、
図11に示す報知情報入力画面を表示させる。報知情報入力画面には、項目名、テキスト、表示灯制御、警報音制御を入力する。そして、報知情報入力画面の「登録」ボタンを押すと、報知情報入力画面に入力された情報が患者情報記憶部44aに記憶される。
【0092】
また、
図5に示す患者情報データベースには、上記報知条件データべースに既に入力されている第1報知条件「最高血圧」を報知条件として選択して入力するとともに、報知情報データベースに既に入力されている第1報知情報「経過観察」を報知情報として選択して入力する。
【0093】
これにより、患者の血液透析治療に関する治療情報と、血液透析治療時における所定条件下で報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて中央監視装置11に記憶させることができる。これが本発明の第1のステップである。
【0094】
また、入力装置42を操作して、患者情報記憶部44aに記憶されている透析情報を各血液透析装置10に出力する。出力された透析条件は、各血液透析装置10の制御部35に入力される。これが透析条件の割付操作であり、その日に患者が透析室に入る前に行われる。
【0095】
尚、患者が透析治療を受けるベッドは予め決められており、そのベッドに対応する血液透析装置10に対して、当該患者の透析条件が出力されるようになっている。よって、別の患者の透析条件が、当該患者以外の血液透析装置10に出力されることはない。
【0096】
図15のステップSB1を経た後のステップSB2では、透析治療を開始する。医療従事者は、血液透析装置10の血液回路及び透析液回路を接続した後、血液透析装置10のスタートボタン(図示せず)を押す。すると、血液透析装置10の制御部35は、先に入力されている透析条件に応じて各機器を制御し、透析治療を開始する。透析治療中には、血圧測定部25、除水量計測部26、静脈圧測定部27、透析液圧測定部28、脈拍測定部29及び補液量測定部30等により各値の測定が行われる。制御部35は、各測定値のうち、必要な情報のみ、コンソールディスプレイ22に表示する。また、血液透析装置10は、各情報を中央監視装置11に出力する。これが本発明の第2のステップである。中央監視装置11では、取得した各情報を
図12のデータベースに記憶させる。
【0097】
また、ステップSB3では、中央監視装置11が監視を開始し、ステップSB4に進む。ステップSB2とSB3とは略同時に行われる。このステップSB4では、
図14に示すフローチャートに従って動作が行われる。
【0098】
すなわち、まず、
図14に示すフローチャートのステップSA1において、中央監視装置11の制御装置43の報知情報取得部43aは、患者情報記憶部44aに記憶されている患者情報データベースの報知条件を取得する。この報知条件は、監視をしている治療中の患者のものである。具体的に
図5に基づいて説明すると、患者情報データベースに、患者IDが100である患者の報知条件として、第1報知条件「最高血圧」が選択されて記憶されている場合には、ステップSA1では、第1報知条件「最高血圧」を取得する。第1報知条件は、
図8に示す報知条件データベースにあるように、項目名は最高血圧であり、設定値は150−90である。この情報が報知情報取得部43aで取得される。
【0099】
その後、ステップSA2において、報知情報取得部43aは、透析治療中の患者の情報(血圧等)を取得する。
【0100】
透析治療中の患者の情報を取得した後、ステップSA3において、透析治療中の患者の情報と、第1報知条件「最高血圧」の設定値とを比較する。そして、透析治療中の患者の情報が第1報知条件を満たしているか否か判断する。具体的には、第1報知条件では、最高血圧の上限値150mmHgで、下限値が90mmHgと設定されているので、患者の最高血圧が150mmHgよりも高くなったとき、又は、90mmHgよりも低くなったときには、ステップSA3で第1報知条件を満たすと判断する。ステップSA3で第1報知条件を満たすと判断すると、ステップSA4に進む。一方、透析治療中の患者の最高血圧が150mmHg〜90mmHgの間であれば、ステップSA3において第1報知条件を満たさないと判断するので、ステップSA5(後述する)に進む。
【0101】
ステップSA5では、
図13に示す透析開始30分経過時におけるデータを取得する。初めて治療を行う患者の場合は過去治療データが無いので、ステップSA5及びSA6を経ることなく、ステップSB7に進む。
【0102】
ステップSA5に続くステップSA6では、過去治療データと治療中の情報との差が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、
図13に示すデータ中、血圧(下)の平均値を求め、この平均値と、今回の治療における治療開始30分経過したときの最低血圧との差が、例えば、20(所定値)以上であればステップSA6でYESと判定する。一方、差が20未満であれば、ステップSA6でNOと判定する。治療中の情報は、ステップSA2で取得したものを用いる。尚、判定のための所定値は、任意に設定することができる。また、ステップSA6では、除水量、脈拍、静脈圧、透析液圧、透析液温等を判定することもできる。
【0103】
ステップSA6でNOと判定されると、後述する
図15のフローチャートのステップSB7に進み、一方、ステップSA6でYESと判定されると、ステップSA4に進む。
【0104】
ステップSA4では、報知情報を取得する。すなわち、上述のとおり、患者IDが100の患者が第1報知条件を満たしている場合には、
図5に示すように、第1報知条件に対応する第1報知情報が取得される。
図10に示すように、第1報知情報の項目名は「経過観察」であり、テキストは「血圧に注意して下さい。」であり、表示灯制御は「赤・点滅 速い」であり、報知音制御は、「警報音A」である。上記ステップSA3とステップSA4が本発明の第3のステップである。
【0105】
また、ステップSA6でYESと判定されてステップSA4に進んだ場合において、ステップSA6で上述の血圧に関する判定を行っている場合には、ステップSA4では、報知情報として血圧に関する情報である「血圧に注意して下さい。」を取得する。
【0106】
その後、
図15に示すフローチャートに戻り、ステップSB5に進む。ステップSB5では、中央監視装置11の報知情報取得部43aで取得された第1報知情報「経過観察」を、入出力部41に出力して、入出力部41によって血液透析装置10に出力する。これが本発明の第4のステップである。中央監視装置11の入出力部41から出力された第1報知情報「経過観察」は、血液透析装置10の制御部35に入力される。
【0107】
次いで、ステップSB6に進み、制御部35は、第1報知情報のテキストである「血圧に注意して下さい。」をコンソールディスプレイ22に表示させる(
図3参照)。これが本発明の第5のステップである。また、制御部35は、表示灯31の赤灯を速く点滅させるとともに、スピーカー32から警報音Aを発生させる。
【0108】
医療従事者は、コンソールディスプレイ22を見ることで、注意事項としての「血圧に注意して下さい。」を確認できる。そして、血圧に注意しなければならない状況であることが容易に、かつ、素早く把握できる。また、表示灯31の点滅及びスピーカー32からの警報音の発生により、医療従事者がその患者のそばから離れていても、注意すべき状況であることを把握できる。
【0109】
医療従事者が注意事項を確認したら、血液透析装置10の所定のボタンを操作してテキストを消去する。これにより、表示灯31が消灯するとともに、スピーカー32から発生している警報音も停止する。
【0110】
しかる後、ステップSB7に進み、透析治療が終了したか否か判断する。これは、血液透析装置10の動作状態を検出することで判断可能である。透析治療が続いている場合には、ステップSB7でNOと判断されてステップSB4に戻る。一方、透析治療が終了した場合にはステップSB7でYESと判断されてステップSB8に進み、監視を終了する。
【0111】
テキストの内容としては、注意事項の他に、患者の状態を医療従事者に前もって知らせるような内容の警報であってもよい。警報の場合のテキストとしては、「血圧低下」等である。
【0112】
報知条件データベースには、他にも、様々な報知条件を入力して記憶させておくことができる。例えば、過去の透析治療時に、透析開始後に血圧が急激に低下した患者の場合には、報知条件としては、項目名を例えば「透析経過時間」とし、設定値を例えば「30分」としておく。そして、報知情報データベースの報知情報には、項目名を「経過観察」とし、テキストを「<透析開始後30分経過>血圧に注意して下さい。」とする。
【0113】
この場合、中央監視装置11は、
図14のフローに従って動作する際、まず、ステップSA1で報知条件として、「透析経過時間」及び「30分」を取得する。ステップSA2では、透析開始から経過した時間を血圧等と共に取得する。そして、ステップSA3では、透析開始から経過した時間が30分以上となったか否かを判断する。透析開始から30分を経過してステップSA3でYESと判断されると、報知情報である「<透析開始後30分経過>血圧に注意して下さい。」を取得して血液透析装置10のコンソールディスプレイ22に表示させる。これにより、医療従事者は、当該患者の過去の治療時の情報に基づいて、血圧に注意しながら透析治療を継続することが可能になる。同様に、透析開始から例えば30分後に、報知情報として、「フットマッサージを実施して下さい。」、「エリスロポエチン製剤を投与して下さい。」等を取得してコンソールディスプレイ22に表示させることも可能である。経過時間は例示であり、任意に設定できる。また、複数の報知情報を取得してコンソールディスプレイ22に一度に表示することも可能である。
【0114】
また、過去に、例えば、血圧の変化に関して注意が報知された患者の場合には、その報知記録が
図5に示す患者情報データベースに記憶される。報知記録としては、血圧の変化に関して注意が行われた場合には、テキストが「血圧に注意して下さい。」であり、設定値は所定の血圧値を記憶させておく。制御装置43は、報知記録が記憶されている患者が透析治療を行う場合には、報知記録の情報(所定の血圧値)と、透析治療中の患者の情報(血圧)とを比較する。そして、透析治療中の患者の情報が、報知記録の情報と略一致するようになった場合には、報知記録のテキストをコンソールディスプレイ22に表示させる。
【0115】
以上説明したように、この実施形態によれば、患者の血液透析治療に関する治療情報と血液透析治療時において報知すべき警報ないし注意事項を表す報知情報とを患者毎に関連付けて記憶させておき、患者の血液透析治療中における情報と、記憶されている治療情報とを比較して警報や注意が必要と判断したときに血液透析治療中の患者の報知情報を取得して、血液透析装置10のコンソールディスプレイ22にテキストデータとして表示させることができる。これにより、患者毎に異常の報知内容や注意事項の報知内容が異なる場合に、患者に応じた報知内容を医療従事者に的確に報知することができるので、血液透析治療の安全性をより一層高めることができる。
【0116】
また、患者情報記憶部44aに、患者の過去における血液透析治療中に報知された報知記録を当該患者に関連付けて記憶しておき、患者情報取得部43aで取得された情報と報知記録とに基づいて透析治療中の患者の報知情報を患者情報記憶部44aから取得するようにしたので、患者の過去の記録に基づいてより的確な報知を行うことができ、血液透析治療の安全性を高めることができる。
【0117】
また、各患者の報知情報をテキストで入力するための入力装置42を中央監視装置11に設けたので、各血液透析装置10に入力装置を設けずに済み、各血液透析装置10のコストを低減でき、ひいては、血液透析監視システム1のコストを低減できる。
【0118】
また、複数の患者の透析治療に関する治療情報を、各患者用の血液透析装置10にそれぞれ送信するようにしたので、治療の開始前に、患者の血液透析治療に関する治療情報をその患者用の血液透析装置10に割り付けることができる。これにより、血液透析装置10毎に治療情報を入力せずに済み、透析治療の現場における準備作業が容易になる。
【0119】
また、上記実施形態では、
図5に示す患者情報データベースにおいて、報知条件を第1報知条件とし、報知情報を第1報知情報とし、第1報知条件が満たされたときに第1報知情報を報知するようにしているが、これに限らず、第1報知条件が満たされたときに第2報知情報や、第3報知情報を報知するようにしてもよい。また、第2報知条件が満たされたときに、第1報知情報や第3報知情報を報知するようにしてもよいし、第1報知条件と第2報知条件とが満たされたときに、第1報知情報や第2報知情報を報知するようにしてもよい。
【0120】
また、過去治療データが中央監視装置11の患者情報記憶部44aに記憶されている場合には、その過去に要注意となったときの情報(血圧、静脈圧、経過時間等)と、今回の治療中における対応する情報とを報知情報取得部43aが比較する。そして、両者が略一致すると判断した場合には、過去に要注意となったことがある旨を報知情報として出力して、血液透析装置10のコンソールディスプレイ22に表示させる。
【0121】
また、上記実施形態では、血液透析装置10と中央監視装置11とを備えた血液透析監視システム1について説明したが、中央監視装置11を他の血液透析装置(図示せず)に接続して血液透析監視システム1を構成してもよい。また、中央監視装置11に導入される制御プログラムは、他の汎用コンピュータに導入することも可能であり、この場合、制御プログラムによって、汎用コンピュータに、患者情報記憶部、報知情報取得部、入出力部が構成され、入出力部から出力された報知情報を血液透析装置にテキストデータとして表示させることが可能になる。