(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740862
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】オーニング装置
(51)【国際特許分類】
E04F 10/08 20060101AFI20150611BHJP
E06B 9/36 20060101ALI20150611BHJP
E06B 3/38 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
E04F10/08
E06B9/36 A
E06B3/38
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-169983(P2010-169983)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-31583(P2012-31583A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 寿是
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−137849(JP,A)
【文献】
特開平08−254068(JP,A)
【文献】
実開平04−014674(JP,U)
【文献】
特表2004−530818(JP,A)
【文献】
実開平04−122181(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/08
E06B 3/38
E06B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方にて壁面に支持され、支点を中心に回動自在なフレームと、壁面に対して回動自在となり、前記フレームを回動させるアームとを備えたオーニング装置において、
前記フレームの内に、前記フレームに沿って設けられた自軸の中心に回動自在なシャフトと、
前記アームと固定され、前記シャフト上を噛合しつつ移動する移動部材と、
前記フレームに対して前記シャフトの回動方向と同方向に開閉自在な複数のスラットとを備え、
前記フレームの側面に溝部を形成し、該溝部内を前記アームの端部が前記移動部材により移動することで、前記フレームが壁面に対して回動することを特徴とするオーニング装置。
【請求項2】
前記移動部材は、前記シャフトの回動により前記フレームに沿って移動する請求項1に記載のオーニング装置。
【請求項3】
前記シャフトは、前記フレームに固定されたモータにより回動する請求項1又は請求項2に記載のオーニング装置。
【請求項4】
前記モータは、前記フレーム内の上部に固定されている請求項3に記載のオーニング装置。
【請求項5】
前記アームは窓枠に対して左右一対で設けられ、両アームを繋ぐ連結部を有する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のオーニング装置。
【請求項6】
前記溝部は、前記フレームの両側に設けられ、前記連結部の両端が両側の前記溝部に挿通されている請求項5に記載のオーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光や採光を行うオーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、面格子を有する窓装置について開示されている。この窓装置は、建物の窓枠に配置された回動自在な複数のスラット(ルーバー)を有する面格子を、リニアアクチュエータによって駆動するリンク機構を用いて回動させる構造となっている。また、この窓装置のスラットは、面格子枠に対して水平方向に延びる横長の形状である。このリンク機構は、窓装置が固定される固定枠に取り付けられた取付部材に一端が枢着された第1リンクと、面格子に取り付けられた取付部材に一端が枢着された第2リンクとを回動自在に連結し、リニアアクチュエータの伸縮動作する可動体により、面格子を開閉する構成となっている。このとき、リニアアクチュエータの出力となる可動体が伸張作動すると面格子は開動作し、可動体が収縮動作すると面格子は閉動作する。
【0003】
この窓装置に関する機構は、光の遮光や採光をするためのオーニング装置の回動動作に適用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−287192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した面格子を有する窓装置は、火災発生等の緊急時に、窓枠に取り付けられた面格子の開閉動作を自動的に行えるようにしている。この様に防犯対策を目的とした面格子を有している窓装置は、緊急時の開閉を想定しているため、リンク機構による開閉手段には、外部からの力に対してリンク機構の動作を固定し、面格子の開閉を防止する防犯対策がされていない。このため、採光や遮光を行うオーニング装置の場合は、面格子部分の開閉動作を行うことを前提とするため、上記したリンク機構による開閉手段では、面格子の開閉方向に外部から力が加わるとリニアアクチュエータの動きに支障をきたすことやリンク機構が曲がってしまう等の影響が発生する。よって、この様なリンク機構では、防犯対策を目的とした面格子を有するオーニング装置に適用しても十分に防犯性を保つことができない。さらに、面格子に対して水平方向に延びる横型のスラットであるため、オーニングとして採光や遮光を行う際は、太陽の高度に対して調整可能であるが、左右への移動に対して調整が不可能である。
【0006】
したがって、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり採光及び遮光を調整可能で防犯性に優れたオーニング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために講じた手段は、上方にて壁面に支持され、支点を中心に回動自在なフレームと、壁面に対して回動自在となり、フレームを回動させるアームとを備えたオーニング装置において、フレームの内に、フレームに沿って設けられた
自軸の中心に回動自在なシャフトと、アームと固定され、前記シャフト上を移動する移動部材と、フレームに対してシャフトの回動方向と同方向に開閉自在な複数のスラットとを備え、フレームの側面に溝部を形成し、溝部内をアームの端部が移動部材により移動することで、フレームが壁面に対して回動するような構成とする。
【0008】
この場合は、移動部材は、シャフトの
回動により前記フレームに沿って移動すると良い。
【0009】
また、シャフトは、フレームに固定されたモータにより回動すると良い。
【0010】
また、モータは、フレーム内の上部に固定されていると良い。
【0011】
また、アームは窓枠に対して左右一対で設けられ、両アームを繋ぐ連結部を有すると良い。
【0012】
また、溝部は、フレームの両側に設けられ、連結部の両端が両側の溝部に挿通されていると良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、このオーニング装置は、シャフトと移動部材によってアームを回動させてフレームの開閉を行う。このフレームの開閉時には、フレームに加わる外力に対してシャフトと移動部材の歯の噛み合いによってフレームの回動方向への動きを保持できるため、防犯性が向上できる。さらに、フレームには、シャフトの回動方向と同方向に開閉する複数のスラットが設けられており、従来のように防犯性を高めると共に、駆動手段と組み合わせることで採光や遮光の際に角度調整が可能である。この時、オーニング装置は、太陽の動きにあわせて角度調整が可能であり、スラットによって、太陽の東西(左右)への移動に対して調整し、フレームの開閉によって、太陽の高度変化に対して調整することができる。これにより、オーニングとしての採光や遮光の機能を備えつつ、防犯性に優れたオーニング装置を提供できる。
【0014】
また、このオーニング装置は、シャフトが回転することで移動部材がフレームに沿って移動することで、アームを回動させる駆動手段がフレーム内に収められるため、フレームの外側からの防犯性を高めることができる。さらに、このオーニング装置は、シャフトと移動部材とが噛合しているため、シャフトの回転時はフレームが開閉し、シャフトの非回転時にはフレームが停止する。この時、シャフトの回転によってのみ、フレームの開閉が行われるため防犯性が高められる。
【0015】
また、このオーニング装置は、フレームに固定されたモータによりシャフトが回転することで、モータの回転の有無でフレームの開閉を行うことが可能であり、モータは自動で回転も可能であるため、操作部分が隣設していなくても良いため、防犯性が高められる。
【0016】
また、このオーニング装置は、モータがフレーム内の上部に固定されていることにより、フレーム内に駆動源を収容できるため防犯性を高めることができる。
【0017】
また、このオーニング装置は、窓枠に対して左右一対で設けられたアームが連結部によってつながれているため、フレームの開閉の際に両アームが同時に回動できるため、フレームの開閉が円滑にでき、アームの剛性も強化できる。
【0018】
また、このオーニング装置は、連結部分の両端が、フレームに設けられた溝部に挿通されているため、アームはフレームの支持が容易であり、フレームの開閉も円滑に行うことができるため。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のオーニング装置の外観の斜視図(フレーム閉状態時)である。
【
図2】
図1に示すオーニング装置のスラットを外した状態での内部構造を示す斜視図(フレーム閉状態時)である。
【
図3】
図1に示すオーニング装置の構造を示した側面図である。
【
図4】
図1に示すオーニング装置のフレーム側部における駆動手段の構成を示す側面図である。
【
図5】オーニング装置のフレーム開状態での外観を示す斜視図である。
【
図6】オーニング装置のフレーム開状態での内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係わるオーニング装置1の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1はオーニング装置1の外観の斜視図を示し、
図2は
図1に示すオーニング装置1の内部構造を示す斜視図である。
図3はオーニング装置1の内部構造の側面図を示している。
【0021】
図1に示されるように、オーニング装置1は、壁面11に設けられた窓枠12の外側に取り付けられている。このオーニング装置1は、面格子構造として回動自在な複数の長方形状のスラット30が枠状のフレーム20の内部に設けられている。このスラット30は、
図1において垂直方向に延びる縦型の形状を成している。また、複数のスラット30は、フレーム20内に設けられた回動手段(図示せず)によって、一体となって回動する。
【0022】
図2より、このオーニング装置1の内部構造について説明する。フレーム20の上部20aの少なくとも両端には、フレーム20の支点となる取付部21が設けられている。このフレーム20の上部20aの両端より内側に設けられた一対の取付部21は、壁面11の窓枠12の上部に設けられた被取付部22aに対して回動自在に連結軸23によって軸支されている。このフレーム20の側部20aには、閉状態時に垂直方向に長手の溝部24が左右一対で設けられている。さらに、フレーム20上部20aに備えられたモータ41によって駆動する駆動手段40がフレーム20の片側に設けられている。また、このオーニング装置1は、壁面11の窓枠12の両側部に一対のアーム50が設けられている。このアーム50は、一端にアーム同士を連結する連結部51が取り付けられており、他端に窓枠12の両側部に設けられた被取付部22bにそれぞれ回動自在に取り付けられている。さらに、この連結部51の一端が、後述する駆動手段40と機械的に連結している。また、この連結部51の両端部51a(アーム端部)は、フレーム20の側部20aに設けられた溝部24に摺動自在に保持される。これにより、フレーム20は、連結部51を介してアーム50によって支持される構造となっている。また、駆動手段40は、フレーム20の上部20aに備え付けられたモータ41の駆動によって回動するシャフト42がフレーム20の側面と平行にフレーム20の上部20aからフレーム20の下部20cにかけて設けられ、フレーム20の下部20cに設けられた軸受け43により回転可能に保持されている。さらに、
図2及び
図3より、このシャフト42は、スクリュー形状を成しており、このシャフト42を昇降できる長方体を呈するナット44(移動部材)が設けられている。このナット44の下面には、アーム50に連結されている連結部51を回動自在に保持するシャフト42の軸上にブラケット45が固定されている。これらの機構は、フレーム20内に収容できるため、オーニング装置1を小型化することも容易であり、駆動手段40の確認が外部から困難であるため、オーニング装置1の防犯性の向上にも繋がる。
【0023】
このオーニング装置1の操作は、外部にある駆動手段40をスイッチ(例えば、リモコン)等により駆動させる操作部(図示せず)等により開閉操作が可能である。また、操作部は、モータ41にセンサ(図示せず)を取り付けて図示しない受信部にて信号を受信して遠隔操作を行うことで駆動手段40による開閉操作を可能にしても良い。
【0024】
次に、駆動手段40について、
図4を用いて説明する。
図4は、内部構造のフレーム20側部20aにおける駆動手段40の側面図を示している。
【0025】
図4より、この駆動手段40は、ウォームギア機構46を用いている。フレーム20の上部20aに取り付けられたモータ41によって回動するウォーム(ねじ歯車)と、ウォームに噛み合うことで回動するウォームホイール(はす歯歯車)とで構成されており、ウォームホイールの軸中心にシャフト42が設けられている。駆動手段40のウォームホイールとフレーム20の上部20aとの間には、シャフト42を軸受け(図示せず)によって回動自在に保持するスペーサー47が設けられている。したがって、シャフト42は、スペーサー47の軸受けとフレーム20の下部20cに設けられた軸受け43とで支持され、シャフト42と噛合するウォームギア機構46のウォームホイールとウォームとの噛み合い位置決めを行うことができる。また、シャフト42に取り付けられたナット44は、ブラケット45を介して連結部51と連結している。これにより、ナット44がシャフト42によって回動することがないため、シャフト42が回転した際に、ナット44は回転せずにシャフト42に対して昇降することが可能となる。また、シャフト42とナット44とは、互いの歯によって噛合しているため、シャフト42が回転しない場合は、ナット44が動くことはない。よって、フレーム20に対して外力が作用しても、ナット44の昇降を抑制できるため、フレーム20の回動も抑制でき、外力に対する防犯性を向上することができる。さらに、ブラケット45は、連結部51を回動自在に保持し、ナット44に対してねじ48(またはピン)によって取り付けられている。このブラケット45は連結部51を保持する保持部45aとナット44へ装着する装着部45bとで構成されている。この保持部45aは連結部51を挟み込むように保持し、装着部45bをねじ48によって締結するため、連結部51が回動しても十分にナット44との固定を維持することが可能である。
【0026】
次に、オーニング装置1の動作について、
図1、
図2及び
図5から
図6を用いて説明する。
図5は、オーニング装置1の外観の斜視図(フレーム20開状態時)を示し、
図6はオーニング装置1の内部構造の斜視図(フレーム20開状態時)を示している。
図1及び
図2はフレーム20の閉状態を示している。
【0027】
図1及び
図2より、このオーニング装置1は、
図2に示されるように連結部51が溝部24のフレーム20の下部20c側にある時、フレーム20は閉状態(壁面と平行な状態)となっている。このフレーム20が閉状態の際は、ブラケット45を介して連結部51に取り付けられているナット44に関してもシャフト42のフレーム20の下部20c側にある。
図5及び
図6より、オーニング装置1は、駆動手段40のモータ41の一方向の回転によってシャフト42が回転することでナット44が上昇する。これにより、オーニング装置1は、ナット44の上昇と共にナット44に固定される連結部51も一緒になって移動し、この連結部51を介してアーム50が水平位置となるように回動する。そして、連結部51を介してアーム50によって支持されているフレーム20は、アーム50とともに開状態へと回動できる。この時、連結部51は、ブラケット45に回動自在に支持されているため、ナット44の動きに合せて滑らかにアーム50を回動させることができる。さらにモータ41を停止した際、開状態及び閉状態の両状態にともにナット44及びシャフト42の移動は、ナット44及びシャフト42に形成された歯の噛み合いによって係止される。このため、オーニング装置1は、フレーム20に外部から力が加わった際に、フレーム20の状態を保持することが可能であり、防犯対策として有効である。また、オーニング装置1に設けられた複数の縦型のスラット30が、回動手段(図示せず)によって
、自軸の中心に回動自在なシャフトの回動方向と同方向に一体となって回動する。このオーニング装置1は、スラット30を設けることで防犯機能を付加することができる。さらに、この縦型スラット30の動きは、フレーム20の回動と組み合わせることで、太陽の移動(高度及び東西又は左右への移動)に追従した角度調整を行う
【0028】
また、このオーニング装置1は、モータ41を逆回転させると、上記とは逆の動作を行いフレーム20を開状態から閉状態にできることは言うまでもない。
【0029】
以上、実施例の構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0030】
・駆動手段40は、モータ41の回転によってシャフト42を回転させる構造に限定する必要はない。この場合、例えば、手動で回転させる回転部材を用いてシャフト42を回転させても良い。
【0031】
・スラット30の回動手段は、例えば、ラックとピニオンによる回動方法やシャフトとナットによる回動方法を用いても良い。
【0032】
・フレーム20の両端に設けられた取付部21及び被取付部22aは、連結軸23によって同時に連結することに限定されること無く、ピン等で回動自在に個別で連結しても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 オーニング装置
20 フレーム
24 溝部
30 スラット
41 モータ
42 シャフト
44 ナット(移動部材)
50 アーム
51 連結部
51a 端部(アームの端部)