特許第5740910号(P5740910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740910
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】溶接ワイヤ矯正装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20150611BHJP
【FI】
   B23K9/12 311
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-236593(P2010-236593)
(22)【出願日】2010年10月21日
(65)【公開番号】特開2012-86257(P2012-86257A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年8月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100087527
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 光雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】西見 昭浩
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3232607(JP,B2)
【文献】 特開平10−324458(JP,A)
【文献】 特開平08−117909(JP,A)
【文献】 実開平07−026063(JP,U)
【文献】 特開2001−150134(JP,A)
【文献】 特開昭60−206571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 9/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようにし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成を有することを特徴とする溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項2】
溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記別の矯正ローラの外径を、上記複数の矯正ローラの外径よりも大径とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成を有することを特徴とする溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項3】
溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤを軟質金属製とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成を有することを特徴とする溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項4】
溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の溶接ワイヤ入口側と溶接ワイヤ出口側に、案内ローラをそれぞれ設けて、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラ、及び上記各案内ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、上記各矯正ローラの外周、及び上記各案内ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成を有することを特徴とする溶接ワイヤ矯正装置。
【請求項5】
溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の溶接ワイヤ入口側と溶接ワイヤ出口側に、案内ローラをそれぞれ設けて、上記溶接ワイヤを軟質金属製とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラ、及び上記各案内ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、上記各矯正ローラの外周、及び上記各案内ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成を有することを特徴とする溶接ワイヤ矯正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤの曲り癖を矯正するために用いる溶接ワイヤ矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤスプール、ペールパックなどに巻かれて収納されている溶接ワイヤを溶接トーチに供給する前に、溶接ワイヤの曲り癖を矯正して、溶接トーチ先端での溶接ワイヤの振れを防止することが行われている。
【0003】
このような溶接ワイヤの曲り癖を矯正する矯正装置としては、たとえば、ペールパックに収納された溶接ワイヤを、コンジットチューブ内を通した後、同径の5個の矯正ローラを溶接ワイヤ送給経路に沿って上下にジグザグ状に配置してなる矯正ローラ組に送って、該矯正ローラ組で上記溶接ワイヤを一旦直線状に矯正し、更に、上記矯正ローラ組の下流側に配置された巻付けローラに上記溶接ワイヤを巻き付けることにより一定曲率の曲り癖を与えて、該溶接ワイヤを溶接トーチに送るようにしたものがある(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
又、従来の溶接ワイヤ矯正装置の他の例としては、ガイドチューブ、ガイド装置を介してワイヤリールから送られる溶接ワイヤを、溶接ワイヤ送給経路に沿って所定の間隔で配置される第1と第2の2つの受けローラと該受けローラ間に配置される成形ローラとからなる曲げローラ組で一旦所定の曲率に変形させた後、上記成形ローラと該成形ローラの下流側に配置される第2の受けローラと該第2の受けローラに対向して配置される加圧ローラとからなる矯正ローラ組により、上記溶接ワイヤを上記曲げローラ組による曲げ方向と反対方向に曲げて直線状に矯正して、該溶接ワイヤを溶接トーチに送るようにしたものがある(たとえば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−277047号公報
【特許文献2】特許第3232607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1,特許文献2に記載された如き溶接ワイヤ矯正装置では、一般的に、溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するのに用いるローラを鉄鋼材製としているため、溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際に、該溶接ワイヤが上記ローラに擦れて溶接ワイヤの削り屑が発生し、この溶接ワイヤの削り屑がワイヤスプールに溜まることで溶接ができなくなるという問題がある。特に、溶接ワイヤがアルミニウムなどの軟質金属製の場合には、該溶接ワイヤと上記ローラとの間の擦れ、及び、溶接ワイヤ矯正装置の上流側、下流側に配置される送給チューブと上記溶接ワイヤとの間の擦れにより、溶接ワイヤが磨耗して、溶接ワイヤの削り屑が大量に発生してしまうことがある。
【0007】
ところで、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するのに用いるローラを、溶接ワイヤよりも硬度の低い材質、たとえば、樹脂材料製にして、溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際に生じる溶接ワイヤの削り屑の量を減らすことが考えられる。しかし、上記ローラの外周に設けられる溝は、上記ローラと溶接ワイヤとの間の擦れにより生じる磨耗を避けるため、曲率の大きな円弧形状とすることが技術常識となっており、単に上記ローラを樹脂材料製にした場合には、溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際に溶接ワイヤが横滑りを起こして、溶接ワイヤの曲がり癖の矯正を正常に行うことができない。このため、溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するのに用いるローラを、溶接ワイヤよりも硬度の低い樹脂材料製とすることは実現できていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、矯正ローラに溶接ワイヤが擦れることにより発生する溶接ワイヤの削り屑の量を低減できるようにした溶接ワイヤ矯正装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようにし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成とする。
【0010】
又、本発明は、溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記別の矯正ローラの外径を、上記複数の矯正ローラの外径よりも大径とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成とする。
【0011】
更に、本発明は、溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤを軟質金属製とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、該各矯正ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成とする。
【0012】
更に又、本発明は、溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の溶接ワイヤ入口側と溶接ワイヤ出口側に、案内ローラをそれぞれ設けて、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラ、及び上記各案内ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い材料製とすると共に、上記各矯正ローラの外周、及び上記各案内ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成とする。
【0013】
又、本発明は、溶接ワイヤの送給する方向の上流側と下流側に配置する複数の矯正ローラと、該複数の矯正ローラの間で該複数の矯正ローラと対向する位置に配置する別の矯正ローラとを備えてなる溶接ワイヤ矯正機構に、上記溶接ワイヤを通して、該溶接ワイヤの曲がり癖を矯正するようにしてある溶接ワイヤ矯正装置において、上記溶接ワイヤ矯正機構の溶接ワイヤ入口側と溶接ワイヤ出口側に、案内ローラをそれぞれ設けて、上記溶接ワイヤを軟質金属製とし、上記溶接ワイヤ矯正機構の各矯正ローラ、及び上記各案内ローラを、上記溶接ワイヤの材質よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、上記各矯正ローラの外周、及び上記各案内ローラの外周に上記溶接ワイヤを食い込ませるようにするV字形状の溝を設け、該V字形状の溝を、上記溶接ワイヤの径寸法の全部が収まるように、該溶接ワイヤの径寸法よりも大きい深さ寸法に形成し、更に、上記複数の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、上記別の矯正ローラのV字形状の溝に上記溶接ワイヤが食い込む位置と、が上記溶接ワイヤの送給する方向に対してずらしてあり、上記溶接ワイヤの曲がり癖を矯正する際には、上記各矯正ローラの外周に形成したV字形状の溝の斜面に上記溶接ワイヤをそれぞれ当接させるようし、上記複数の矯正ローラ、又は別の矯正ローラの少なくとも一方の矯正ローラを、スライド軸に沿い移動できるようにしてある矯正ローラ取付座に回転自在に支持させると共に、該少なくとも一方の矯正ローラを、上記矯正ローラ取付座を介して上記スライド軸に沿い上記溶接ワイヤに近接、離反する方向へ変位でき、且つ固定フレームに離脱可能に係止できるようにする矯正ローラ移動機構を備え、該矯正ローラ移動機構を、上記固定フレームから離脱させたときに上記少なくとも一方の矯正ローラが上記スライド軸に沿い溶接ワイヤから離反する方向へ変位させられるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のような溶接ワイヤ矯正装置としてあるので、各矯正ローラに溶接ワイヤが擦れることにより生じる溶接ワイヤの磨耗を原理的にゼロにすることができる。よって、溶接ワイヤの削り屑の発生を劇的に低減することができ、溶接ワイヤの削り屑がワイヤスプールに詰まることによる溶接不能を防止することができる。又、溶接ワイヤを各矯正ローラのV字形状の溝に当接させるようにしてあるので、各矯正ローラが、たとえば、樹脂材料製であったとしても、溶接ワイヤに曲がり癖を直す矯正力を与える際に溶接ワイヤが横滑りを起こして、溶接ワイヤがうねったり、蛇行したりしてしまうのを防止することができ、更に、溶接ワイヤが捩れてしまうのを防止することができる。よって、溶接ワイヤの曲がり癖を正常に治すことができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の溶接ワイヤ矯正装置の実施の一形態を示す概略正面図である。
図2】(イ)は図1のA−A方向概略切断側面図、(ロ)は(イ)のX部拡大図である。
図3図1の概略平面図である。
図4】(イ)は図1のB−B方向概略側面図、(ロ)は(イ)のY部拡大図である。
図5図2(イ)の状態から、大径矯正ローラを溶接ワイヤから離反する方向へ変位させた状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図5は本発明の実施の一形態を示すもので、図示しないワイヤスプール等から引き出されて図示しない送給ホース内を通された二点鎖線で示すアルミニウムの如き軟質金属製の溶接ワイヤ1を溶接トーチへ送給する途中の位置に、該溶接ワイヤ1の曲り癖を矯正するための本発明の溶接ワイヤ矯正装置を設置する。
【0019】
本発明の溶接ワイヤ矯正装置は、溶接ワイヤ1に逆歪を与えるようにする大径の1つの矯正ローラ(大径矯正ローラ)2と、該大径矯正ローラ2で溶接ワイヤ1に逆歪を与えるときの反力を受ける小径(大径矯正ローラよりも小径)の2つの矯正ローラ3a,3bとを備えてなり、上記大径矯正ローラ2と2つの小径矯正ローラ3a,3bとの間で溶接ワイヤ1の曲り癖を矯正するようにする溶接ワイヤ矯正機構4と、該溶接ワイヤ矯正機構4の入口側と出口側で溶接ワイヤ1の位置を安定させると共にワイヤ供給ホースとの擦れを低減させるための小径の2つの案内ローラ5,6を備える。更に、上記各矯正ローラ2,3a,3b及び案内ローラの5,6の材質は、溶接ワイヤの材質であるアルミニウムの如き軟質金属より硬度が低い材質、たとえば、ポリアセタールの如き樹脂材料製を採用するようにすると共に、溶接ワイヤ1の矯正時に該溶接ワイヤ1を食い込ませて逃がさないように上記2,3a,3b及び案内ローラの5,6の外周にV字形状の溝12,15,27をそれぞれ形成し、上記溶接ワイヤ矯正機構4の大径矯正ローラ2を、溶接ワイヤ1の送給路を挟んで2つの小径矯正ローラ3a,3bに近接、離反する方向に進退動作させるようにする矯正ローラ移動機構10を備えた構成とする。
【0020】
詳述すると、上記1つの大径矯正ローラ2と、2つの小径矯正ローラ3a,3bと、2つの案内ローラ5,6の5個のローラは、上記した如く、アルミニウムの如き軟質金属製とした溶接ワイヤ1に対して、かかる溶接ワイヤ1の材質より硬度が低い樹脂材料(たとえば、ポリアセタール)を、材質として使用するようにし、且つ上記1つの大径矯正ローラ2と、2つの小径矯正ローラ3a,3bと、2つの案内ローラ5,6の各外周面に形成する溶接ワイヤ案内用の溝を、V字形状の溝12,15,27とし、上記各ローラ2,3a,3b,5,6の外周面に沿わされる溶接ワイヤ1を、ワイヤ矯正時に各々V字形状の溝12,15,27に食い込ませて、溶接ワイヤ1が回転して戻ろうとする動きを抑えて溶接ワイヤ1を逃がさないようにする。
【0021】
上記2つの小径矯正ローラ3a,3bは、図2(イ)、図3に示す如く、該小径矯正ローラ3a,3bの内側に嵌合させた図示してない軸受けの内側に嵌合させたスライドブッシュ13を介して上記ローラ取付用フレーム8の外側に水平方向に突出させて取り付けたボルト14に嵌合させて取り付けるようにしてあり、該ボルト14の軸心を中心に回転自在にしてある共に上記ボルト14の頭部14aと上記ローラ取付用フレーム8との間でボルト14の軸方向に移動(変位)できるようにしてある。
【0022】
又、上記矯正ローラ取付座11に取り付ける大径矯正ローラ2は、図2(イ)、図3に示す如く、図示してない軸受けの内側に嵌合させたスライドブッシュ16を介して上記矯正ローラ取付座11の外側(係止用フレーム7が突出してない側)に水平方向に取り付けたボルト17に嵌合させて取り付けてあり、該ボルト17の軸心を中心に回転自在にしてある共に上記ボルト17の頭部17aと上記矯正ローラ取付座11との間でボルト17の軸方向に移動(変位)できるようにしてある。
【0023】
一方、上記溶接ワイヤ矯正機構4の入口側及び出口側の各案内ローラ5と6は、図1図4(イ)(ロ)に示す如く、ローラ取付用フレーム8の溶接ワイヤ送給方向に延びる両端部の外側に水平方向に突出させて取り付けられた各ボルト29に、図示してない軸受けの内側に嵌合させたスライドブッシュ28を介して嵌合させて取り付けてあり、各ボルト29の軸心を中心に回転自在で、且つ上記ボルト29の頭部29aとローラ取付用フレーム8との間でボルト29の軸方向に移動(変位)できるようにしてある。
【0024】
上記溶接ワイヤ矯正機構4は、水平板状の係止用フレーム7と、該係止用フレーム7の一端側(前端側)に上端部を取り付けて横方向(ワイヤ送給方向と平行な方向)に長くした垂直板状のローラ取付用フレーム8とからなる固定フレーム9における上記ローラ取付用フレーム8に、2つの矯正ローラ3a,3bを、該ローラ取付用フレーム8の長手方向、すなわち、該溶接ワイヤ1の送給方向(矢印の方向)に所要間隔を隔ててそれぞれ回転自在に取り付けるようにすると共に、該2つの矯正ローラ3a,3bとの間の位置の下方位置に、1つの大径の矯正ローラ2を、上記係止用フレーム7に上端をナットで締結させて垂下させた2本のスライド軸18に沿い昇降できるようにしてある矯正ローラ取付座11に回転自在に取り付けるようにした構成としてある。上記矯正ローラ取付座11は、スライド部材19の端面(ワイヤ送給路側端面)に固定してあり、該スライド部材19は、上記係止用フレーム7に上端部を取り付けてローラ取付用フレーム8と平行に垂下されている上記2本の平行配置のスライド軸18に下端部が遊嵌されており、該スライド部材19とともに矯正ローラ取付座11が2本のスライド軸18に沿い昇降することにより、大径の矯正ローラ2が上方の2つの矯正ローラ3a,3bに対し近接、離反する方向である上下方向に移動できるようにしてある。
【0025】
更に、上記矯正ローラ移動機構10は、係止用フレーム7の中央部分の他端側に開口させた切欠部7aに挿入させるようにした目盛付き調整ねじ24と、該調整ねじ24の上端部に螺合させて下端面を係止用フレーム7の上面に係止させるようにすると共に、調整ねじ24の調整ねじ支持部材26と係止用フレーム7との間における長さを調整できるようにする調整用つまみ25と、上記調整ねじ24の下端部に上端部を螺着させた調整ねじ支持部材26の下端部を、一端側に矯正ローラ取付座11を取り付けた上記スライド部材19他端部にヒンジ軸20で上下方向に回動可能に連結してなる屈伸式操作ロッド21と、上記2本のスライド軸18と、該2本のスライド軸18の外側に配置して係止用フレーム7の下面とスライド部材19の上端面との間に圧縮して介装させた弾性構造体としてのばね22と、係止用フレーム7の切欠部7aの片側に沿うように他端側へ張り出させたガイド部材23とからなる構成としてある。これにより、調整ねじ24の長さを目盛を見ながら調整して操作ロッド21をヒンジ軸20で屈曲させ、調整ねじ24を係止用フレーム7の切欠部7aに挿入させて、調整用つまみ25を係止用フレーム7に係止させるようにすれば、ばね22の弾性力に打ち勝って調整ねじ支持部材26、スライド部材19を介し、矯正ローラ取付座11がスライド軸18に沿い上昇させられて、大径の矯正ローラ2が2つの矯正ローラ3a,3bに近接させられるようにしてある。又、調整用つまみ25を引き上げるようにして係止用フレーム7の切欠部7aに沿い倒して係止用フレーム7から離脱させるようにすることにより、スライド軸18の外側のばね22の弾性力により大径の矯正ローラ2が2つの矯正ローラ3a,3bから離反するようにしてある。
【0026】
なお、図中30はスライド軸18の下端に設けたストッパーである。
【0027】
かかる構成の溶接ワイヤ矯正装置を用いてアルミニウムの如き軟質金属製の溶接ワイヤ1の曲がり癖を矯正する場合、まず、図示しないワイヤスプール等から引き出されて図示しない送給ホース内を通された溶接ワイヤ1を、入口側の樹脂材料製案内ローラ5のV字形状の溝27の斜面と、樹脂材料製の小径矯正ローラ3aと3bのV字形状の溝15の斜面と、出口側の樹脂材料製案内ローラ6のV字形状の溝27の斜面にそれぞれ当接させて通した後、該溶接ワイヤ1を、出口側の案内ローラ6の下流側に配置される図示しない送給ホース内を通して図示しない溶接トーチに導くようにする。次に、図5に示す如く、固定フレーム9の係止用フレーム7から離脱させた状態にある操作ロッド21を、ヒンジ軸20を中心に回動させて、該操作ロッド21の調整用つまみ25をガイド部材23に沿わせて移動させながらばね22の弾性力に抗してスライド軸18を引き上げ、調整ねじ24を係止用フレーム7の切欠部7a内に挿入し、図2(イ)に示す如く、調整用つまみ25を係止用フレーム7に係止させる。この際、調整ねじ支持部材26は上記調整ねじ24を介して調整用つまみ25と一体的に引き上げられるので、スライド部材19と矯正ローラ取付座11を介して大径矯正ローラ2は2つの小径矯正ローラ3a,3bに近接する方向、すなわち、溶接ワイヤ1に近接する方向へ変位させられて、大径矯正ローラ2のV字形状の溝12の斜面が上記溶接ワイヤ1に当接する。これにより、溶接ワイヤ1に曲がり癖を直す矯正力が加えられることになる。次いで、図示してない溶接ワイヤ送給装置を駆動させることにより、ワイヤスプール等から引き出されて送給ホース内を通された溶接ワイヤ1を、入口側の案内ローラ5を介して溶接ワイヤ矯正機構4に送給して、溶接ワイヤ1の曲がり癖を連続的に矯正し、しかる後、該矯正された溶接ワイヤ1を、出口側の案内ローラ6を介して図示しない送給ホース内に通すようにする。
【0028】
上記において、本発明の溶接ワイヤ矯正装置は、溶接ワイヤ矯正機構4の各矯正ローラ2,3a,3bを溶接ワイヤ1よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、上記各矯正ローラ2,3a,3bの外周に上記溶接ワイヤ1を当接させるための2つの斜面を備えるV字形状の溝12,15をそれぞれ設けるようにした構成としてあるので、各矯正ローラ2,3a,3bに溶接ワイヤ1が擦れることにより生じる溶接ワイヤ1の磨耗を原理的にゼロにすることができる。よって、溶接ワイヤ1の削り屑の発生を劇的に低減することができ、溶接ワイヤ1の削り屑がワイヤスプールに詰まることによる溶接不能を防止することができる。又、溶接ワイヤ1を各矯正ローラ2,3a,3bのV字形状の溝12,15の2つの斜面に当接させるようにしてあるので、各矯正ローラ2,3a,3bが樹脂材料製であったとしても、溶接ワイヤ1に曲がり癖を直す矯正力を与える際に溶接ワイヤ1をV字形状の溝12,15にそれぞれ食い込ませることができて、該溶接ワイヤ1が横滑りを起こして、溶接ワイヤ1がうねったり、蛇行したりすることを防止することができ、更に、溶接ワイヤ1が捩れてしまうのを防止することができる。よって、溶接ワイヤ1の曲がり癖を正常に治すことができる。
【0029】
又、溶接ワイヤ矯正機構4を、2つの矯正ローラ3a,3bと、該2つの矯正ローラ3a,3bよりも大径の矯正ローラ2とからなる構成としてあるので、全ての矯正ローラを同径にしていた場合に比して、溶接ワイヤ1と大径矯正ローラ2との間の接触面圧を小さくすることができ、溶接ワイヤ1の擦れをより少なくすることができる。よって、溶接ワイヤ1の削り屑の発生をより低減することができる。
【0030】
更に、溶接ワイヤ矯正機構4の上流側及び下流側に案内ローラ5,6を設けて、該各案内ローラ5,6を溶接ワイヤ1よりも硬度の低い樹脂材料製とすると共に、該各案内ローラ5,6の外周に上記溶接ワイヤ1を当接させるための2つの斜面を備えるV字形状の溝27を設けるようにした構成としてあるので、各案内ローラ5,6に溶接ワイヤ1が擦れることにより生じる溶接ワイヤ1の削り屑の発生を低減することができる。又、上記各案内ローラ5,6により溶接ワイヤ1の走行軌道を安定化させるようにしてあるので、本発明の溶接ワイヤ矯正装置の上流側と下流側に配置される図示しない送給ホースと溶接ワイヤ1との間の擦れによる溶接ワイヤ1の削り屑の発生を低減することができる。
【0031】
更に又、矯正ローラ移動機構10を、固定フレーム9の係止用フレーム7に上端部を取り付けたスライド軸18と、一端部に上記矯正ローラ取付座11を取り付けると共に上記スライド軸18を遊嵌して上記矯正ローラ取付座11と一体にスライド軸18に沿って溶接ワイヤ1に近接、離反する方向へ変位するスライド部材19と、該スライド部材19の他端部に一端部をヒンジ軸20を介して回動自在に取り付けると共に他端部を上記固定フレーム9の係止用フレーム7に離脱可能に係止する操作ロッド21と、上記スライド軸18の外周側に同心状に配置して上記係止用フレーム7とスライド部材19との間に圧縮して介装させたばね22を備えた構成としてあるので、操作ロッド21をヒンジ軸20を中心に回動させて係止用フレーム7に対する係止の解除を行うだけで、ばね22の弾性力により大径矯正ローラ2を溶接ワイヤ1から離反する方向に変位させることができる。又、操作ロッド21を回動させて係止用フレーム7に係止させるだけで、大径矯正ローラ2を溶接ワイヤ1に近接する方向に変位させられ、大径矯正ローラ2を元の設置位置に戻すことができる。よって、大径矯正ローラ2の位置再現性を確保することができるので、溶接ワイヤ1の交換の前後で溶接ワイヤ1に加える矯正力が変化することはなく、溶接ワイヤ1の交換の前後に亘って溶接ワイヤ1の削り屑の量を低減した状態を容易に維持することができる。
【0032】
又、大径矯正ローラ2を、矯正ローラ取付座11に取り付けたボルト17の軸方向に移動自在に取り付けると共に、各小径矯正ローラ3a,3b、各案内ローラ5,6を、固定フレーム9のローラ取付用フレーム8に取り付けたボルト17,29の軸方向に移動自在に取り付けるようにした構成としてあるので、本発明のワイヤ矯正装置に送給される溶接ワイヤ1が蛇行していたとしても、上記各矯正ローラ2,3a,3b及び各案内ローラ5,6を溶接ワイヤ1の蛇行に対応させて移動させることができる。よって、蛇行する溶接ワイヤ1の曲り癖を確実に矯正すことができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、一例として、溶接ワイヤ1をアルミニウムの如き軟質金属製として説明してあるが、これに限られるものではなく、溶接ワイヤ1の材質は、硬度に関しては樹脂材料製のローラよりも硬度が高ければ如何なる材質のものであってもよい。
【0034】
又、上記各矯正ローラ2,3a,3bのV字形状の溝12,15及び各案内ローラ5,6のV字形状の溝27を、それぞれV字形状として2つの斜面を備えるものとして、該斜面に溶接ワイヤ1を当接させるようにした場合について説明したが、2つの斜面をそれぞれ複数段の斜面とすることにより溶接ワイヤ1に対する接触面の数を増やして、該複数段とした斜面にそれぞれ溶接ワイヤ1を当接させるようにしてもよい。
【0035】
大径矯正ローラ2を溶接ワイヤ1に対して近接、離反するように変位可能にした場合について説明したが、矯正ローラ移動機構10と同様な機構を小径矯正ローラ3a,3b側に用いるようにして、大径矯正ローラ2を固定させるようにしたり、小径矯正ローラ3a,3b側と大径矯正ローラ2側の双方に矯正ローラ移動機構10と同様な機構を用いるようにしてもよい。
【0036】
溶接ワイヤ矯正機構4を、大径矯正ローラ2と2つの小径矯正ローラ3a,3bとの組み合わせとした場合について説明したが、各矯正ローラ2,3a,3bの個数を適宜増減した構成のものとしてもよい。
【0037】
各矯正ローラ2,3a,3b、各案内ローラ5,6を、スライドブッシュ13,16,28を介してそれぞれ取り付けることにより、ボルト14,17,29の軸方向に移動できるようにした場合について示したが、これに限定されるものではなく、同様の動作が行えるものであれば、他の手段を採用するようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1 溶接ワイヤ
2 大径矯正ローラ(別の矯正ローラ)
3a,3b 小径矯正ローラ(複数の矯正ローラ)
4 溶接ワイヤ矯正機構
5,6 案内ローラ
9 固定フレーム
10 矯正ローラ移動機構
11 矯正ローラ取付座
12 V字形状の溝
15 V字形状の溝
27 V字形状の溝
図1
図2
図3
図4
図5