(54)【発明の名称】タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラム及びタイヤ・ホイール組立体のシミュレーション方法、並びにタイヤ・ホイール組立体モデルの作成装置
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記埋め込みステップは、前記結合ステップで、前記タイヤモデルと結合されたリムモデルを前記ホイールモデルに埋め込むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記結合ステップは、前記埋め込みステップで、前記ホイールモデルに埋め込まれた前記リムモデルを、前記タイヤモデルと結合させることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記リムモデル作成ステップは、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分を構成する要素の平均寸法を、前記ホイールモデルの前記接触部分に対応する領域の要素の平均寸法よりも小さくすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記リムモデル作成ステップは、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分を構成する要素の平均寸法を、接触部分以外の要素の平均寸法よりも小さくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルとして、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分のみで構成されるモデルを作成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルの子午断面における端部を、タイヤ径方向内側に折り返した形状とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記結合ステップは、前記リムモデルと前記タイヤモデルとの静摩擦係数が、前記リムモデルと前記タイヤモデルとの動摩擦係数よりも大きい設定で接触計算を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記結合ステップは、前記動摩擦係数を、前記タイヤモデルと前記リムモデルの相対的な滑り速度に応じて変化する値として接触計算を行うことを特徴とする請求項8に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記結合ステップは、接触計算を行い前記リムモデルに対して前記タイヤモデルを嵌合させた後は、前記リムモデルに対して前記タイヤモデルが滑らないように設定することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記ホイールモデルは、質量・重心位置・慣性モーメント・固有値が、リムモデルを埋め込んだホイールモデルの質量・重心位置・慣性モーメント・固有値と同等であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
前記タイヤモデル作成ステップは、前記タイヤモデルを子午断面の2次元タイヤモデルで作成し、前記結合ステップの処理が終了した後、前記2次元タイヤモデルを周方向に展開して、3次元のタイヤモデルを作成し、
前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルを子午断面の2次元リムモデルで作成し、前記結合ステップの処理が終了した後、前記2次元リムモデルを周方向に展開して、3次元のリムモデルを作成することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法。
請求項1から13のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラム。
コンピュータが、請求項1から13のいずれか1項に記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法によって作成された前記タイヤ・ホイール組立体モデルを用いて解析を実行するタイヤ・ホイール組立体のシミュレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、タイヤモデルとホイールモデルとを組み合わせたタイヤ・ホイール組立体モデルを作成し、タイヤ・ホイール組立体の解析を行う場合、タイヤモデルとホイールモデルとを組み合わせるために、嵌合計算を行い、組み立て時のタイヤモデルの形状、具体的には、タイヤに空気を充填した時(インフレート時)の形状を算出する。
【0005】
ここで、解析対象のホイールモデルの要素の分割数を少なくするとモデルのリム部分の形状が実際のリムとは異なる形状となり、嵌合計算の結果と実際の組み立て時(リム組み時)の形状との間にずれが生じる。これに対しては、ホイールモデルの分割数を増やし、より細かい要素に分割し、ホイールモデルを正確に表現することで、タイヤの形状をより正確に算出することができる。しかしながら、ホイールモデルの分割数を増やすと、計算対象のモデルが大きくなり、計算量が増加し、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成に時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができるタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラム及びタイヤ・ホイール組立体のシミュレーション方法、並びにタイヤ・ホイール組立体モデルの作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法は、コンピュータが、解析対象のタイヤを複数の要素に分割して、タイヤモデルを作成するタイヤモデル作成ステップと、前記コンピュータが、前記タイヤと接触する部分を要素に分割して、リムモデルを作成するリムモデル作成ステップと、前記コンピュータが、解析対象のホイールモデルを複数の要素に分割して、ホイールモデルを作成するホイールモデル作成ステップと、前記タイヤモデルと前記リムモデルとの接触計算を行い、前記タイヤモデルと前記リムモデルとを結合する結合ステップと、前記リムモデルを前記ホイールモデルに埋め込む埋め込みステップと、を含むことを特徴とする。これにより、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができる。
【0008】
また、前記埋め込みステップは、前記結合ステップで、前記タイヤモデルと結合されたリムモデルを前記ホイールモデルに埋め込むことが好ましい。
【0009】
また、前記結合ステップは、前記埋め込みステップで、前記ホイールモデルに埋め込まれた前記リムモデルを、前記タイヤモデルと結合させることが好ましい。
【0010】
また、前記リムモデル作成ステップは、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分を構成する要素の平均寸法を、前記ホイールモデルの前記接触部分に対応する領域の要素の平均寸法よりも小さくすることが好ましい。これにより、接触計算をより高い精度で行うことができる。
【0011】
また、前記リムモデル作成ステップは、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分を構成する要素の平均寸法を、接触部分以外の要素の平均寸法よりも小さくすることが好ましい。これにより、計算時間を短くすることができる。
【0012】
また、前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルとして、前記タイヤモデルと接触するまたは接触する可能性がある部分である接触部分のみで構成されるモデルを作成することが好ましい。これにより、計算時間をより短くすることができる。
【0013】
ここで、前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルの子午断面における端部を、タイヤ径方向内側に折り返した形状とすることが好ましい。これにより、タイヤの形状をより正確に算出することができ、かつ、計算の収束性をより向上させることができる。
【0014】
また、前記結合ステップは、前記リムモデルと前記タイヤモデルとの静摩擦係数が、前記リムモデルと前記タイヤモデルとの動摩擦係数よりも大きい設定で接触計算を行うことが好ましい。これにより、接触計算をより高い精度で行うことができる。
【0015】
また、前記結合ステップは、前記動摩擦係数を、前記タイヤモデルと前記リムモデルの相対的な滑り速度に応じて変化する値として接触計算を行うことが好ましい。これにより、接触計算をより高い精度で行うことができる。
【0016】
また、前記結合ステップは、接触計算を行い前記リムモデルに対して前記タイヤモデルを嵌合させた後は、前記リムモデルに対して前記タイヤモデルが滑らないように設定することが好ましい。これにより、タイヤ・ホイール組立体モデルの解析をより正確に実行することができる。
【0017】
また、前記ホイールモデルは、質量・重心位置・慣性モーメント・固有値が、リムモデルを埋め込んだホイールモデルの質量・重心位置・慣性モーメント・固有値と同等であることが好ましい。これにより、タイヤ・ホイール組立体モデルの解析をより正確に実行することができる。
【0018】
また、タイヤとホイールとで囲まれた領域をタイヤ空洞としてモデル化するタイヤ空洞作成ステップと、前記タイヤ空洞をタイヤモデル、リムモデルのいずれかと結合させる空洞結合ステップとをさらに有することが好ましい。これにより、タイヤ・ホイール組立体モデルとして実行できる解析をより多くすることができる。
【0019】
また、前記タイヤモデル作成ステップは、前記タイヤモデルを子午断面の2次元タイヤモデルで作成し、前記結合ステップの処理が終了した後、前記2次元タイヤモデルを周方向に展開して、3次元のタイヤモデルを作成し、前記リムモデル作成ステップは、前記リムモデルを子午断面の2次元リムモデルで作成し、前記結合ステップの処理が終了した後、前記2次元リムモデルを周方向に展開して、3次元のリムモデルを作成することが好ましい。これにより、接触計算の計算量をより少なくすることができる。
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラムは、上記のいずれかに記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。これにより、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができる。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体のシミュレーション方法は、コンピュータが、上記のいずれかに記載のタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法によって作成された前記タイヤ・ホイール組立体モデルを用いて解析を実行する。これにより、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができる。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成装置は、解析対象のタイヤを複数の要素に分割して、タイヤモデルを作成し、前記タイヤと接触する部分を要素に分割して、リムモデルを作成し、解析対象のホイールモデルを複数の要素に分割して、ホイールモデルを作成するモデル作成部と、前記タイヤモデルと前記リムモデルとの接触計算を行い、前記タイヤモデルと前記リムモデルとを結合する接触計算部と、前記リムモデルを前記ホイールモデルに埋め込む埋め込み処理部と、を含むことを特徴とする。これにより、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、より正確な形状のタイヤ・ホイール組立体モデルをより短時間で作成可能とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する発明を実施するための形態(以下実施形態という)の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
図1は、タイヤ・ホイール組立体の子午断面図である。
図1に示すように、タイヤ・ホイール組立体10は、タイヤ1と、タイヤ1と嵌入されたホイール12とを有する。タイヤ1は、回転軸(Y軸)を中心として回転する環状構造体であり、中心軸の周りに、周方向に向かって同様の形状の子午断面が展開される。
図1に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。タイヤ1は、母材であるゴムを、補強材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層をコード層という。
【0027】
カーカス2は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッドとカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
【0028】
ベルト3の接地面(トレッド)G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。キャップトレッド6の接地面G側には、溝7が形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。
【0029】
ホイール12は、弾性体で構成されており、車両のシャフト等に連結される。また、ホイール12は、タイヤ径方向外側の面が、タイヤ1の径方向内側の面と接触している。ホイール12は、このタイヤ径方向外側の面がリム面14となる。タイヤ・ホイール組立体10は、タイヤ1の内周面とリム面14とが閉じられた空間となり、この空間に空気が充填されることで、タイヤ1がインフレート状態となる。次に、本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及びタイヤ・ホイール組立体の解析を実行する装置について説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及びタイヤ・ホイール組立体のシミュレーション方法を実行する解析装置を示す説明図である。本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及びタイヤ・ホイール組立体の解析方法(シミュレーション方法)は、
図2に示すタイヤ・ホイール組立体の解析装置(以下、解析装置という)50によって実現できる。解析装置50はコンピュータであり、
図2に示すように、処理部52と記憶部54とで構成される。また、この解析装置50には、入出力装置51が接続されており、ここに備えられた入力手段53で解析モデルであるタイヤ・ホイール組立体モデルを構成するタイヤモデル、リムモデル、ホイールモデルの形状、各種物性値、あるいはタイヤの性能解析における境界条件や解析するモードの数等を処理部52や記憶部54へ入力する。ここで、本実施形態の解析装置50は、タイヤ・ホイール組立体モデルを作成する作成装置としての機能と、タイヤ・ホイール組立体モデルを解析する解析装置としての機能の両方を備えているが、これに限定されない。解析装置50は、タイヤ・ホイール組立体モデルを作成する作成装置としての機能のみを備えた装置としてもよい。なお、この場合、解析装置50は、モデル作成装置ともいえる。
【0031】
入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、本実施形態に係るタイヤモデルの作成方法を実現できるコンピュータプログラムやその他のコンピュータプログラムやデータテーブル、データマップ等が格納されている。記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0032】
本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法を実現できるタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラムは、コンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体の解析を実現できる。これらのプログラムの組み合わせ、または、これらのプログラムと同様の処理を実現できるプログラムが、タイヤ・ホイール組立体の解析方法を実現できるタイヤ・ホイール組立体の解析用コンピュータプログラムとなる。また、本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラム及び/またはタイヤ・ホイール組立体の解析用コンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラム及び/またはタイヤ・ホイール組立体の解析用コンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させる。これによって、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及び/またはタイヤ・ホイール組立体の解析方法を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0033】
処理部52は、モデル作成部52aと、接触計算部52bと、埋め込み処理部52cと、解析部52dとを含む。モデル作成部52aは、解析対象のタイヤ・ホイール組立体を構成するタイヤのモデルと、リムのモデルと、ホイールのモデルとを作成し、さらに作成したそれぞれのモデルを複数の要素に分割して、タイヤモデルと、リムモデルと、ホイールモデルとを作成し、記憶部54に格納する。タイヤモデルと、リムモデルと、ホイールモデルとは、コンピュータで取り扱うことにより、種々の解析が可能な解析モデルである。解析モデルは、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む(以下の例でも同様)。接触計算部52bは、モデル作成部52aで作成したタイヤモデルとリムモデルとの接触を計算する。つまり、タイヤモデルがリムモデルと接触することで、生じる変形を計算する。埋め込み処理部52cは、モデル作成部52aで作成したリムモデルをホイールモデルに埋め込む処理を行う。つまり、埋め込み処理部52cは、リムモデルとホイールモデルを重ね合わせて、対応付ける処理を行う。解析部52dは、作成したタイヤ・ホイール組立体の解析を行う。解析部52は、解析として、タイヤ・ホイール組立体の、振動解析、音響解析、接地解析等を行う。なお、解析としては、動的解析、静的解析のいずれも行うことができる。
【0034】
処理部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリにより構成されている。処理部52は、モデル作成部52aが作成したタイヤモデル、リムモデル、ホイールモデル等及び入力データ等に基づいて、処理部52がタイヤ・ホイール組立体モデルの作成用プログラムを処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、記憶部54へ演算途中の数値を適宜保存し、また記憶部54へ格納した数値を読み出して演算を進める。なお、この処理部52は、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成用コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。なお、処理部52は、作成したタイヤ・ホイール組立体モデルを解析する場合、つまり、タイヤ・ホイール組立体の解析を行う場合も同様にメモリで演算を行いつつ、必要に応じて記憶部54に数値を保存することで、演算を進める。
【0035】
表示手段55には、例えば、液晶表示装置を使用することができる。また、判定結果は、必要に応じて設けられたプリンタに出力することもできる。上述した各種情報が格納される記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。次に、本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及びタイヤ・ホイール組立体の解析方法を説明する。
【0036】
図3から
図9を用いて、作成するタイヤ・ホイール組立体の構成について説明する。ここで、
図3は、タイヤ・ホイール組立体モデルを示す斜視図である。また、
図4は、タイヤモデルを示す斜視図であり、
図5は、タイヤモデルを作成するための子午断面モデルを示す断面図である。また、
図6は、リムモデルを示す斜視図であり、
図7は、リムモデルを作成するための子午断面モデルを示す断面図である。また、
図8は、ホイールモデルを示す斜視図であり、
図9は、ホイールモデルのリム部の子午断面モデルを示す断面図である。
【0037】
タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法では、
図3に示すように、タイヤモデル102と、ホイールモデル104と、リムモデル106とを有するタイヤ・ホイール組立体100を作成する。なお、リムモデル106は、
図3では、タイヤモデル102と、ホイールモデル104との間に挟まれ見えない状態になっている。
【0038】
タイヤモデル102と、ホイールモデル104と、リムモデル106とを有するタイヤ・ホイール組立体100は、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて解析を行うために用いるモデルである。本実施形態では、タイヤ・ホイール組立体100の解析に、有限要素法(Finite Element Method:FEM)を使用する。本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、有限差分法(Finite Differences Method:FDM)や境界要素法(Boundary Element Method:BEM)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、または複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤ・ホイール組立体のような構造体に対して好適に適用できる。
【0039】
次に、タイヤモデル102は、
図4に示すように、複数の要素を有する3次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。Y軸は、タイヤモデル102の回転軸であり、Z軸は、回転軸(Y軸)と直交する任意の軸(例えば、タイヤモデル102を用いて接地解析を行う場合には、接地する路面に直交する軸)である。X軸は、Y軸とZ軸とにそれぞれ直交する軸である。
【0040】
タイヤモデル102が有する要素は、例えば、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、2次元モデルでは2次元座標を用いて、3次元モデルでは3次元座標を用いて逐一特定される。
【0041】
図5に示す子午断面モデル102aは、解析対象のタイヤ(例えば、
図1に示すタイヤ1)の子午断面を解析モデル化したものである。子午断面モデル102aは、複数の要素を有する2次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。子午断面モデル102aが有する要素は、三辺形要素、四辺形要素等である。本実施形態において、モデル作成部52aは、子午断面モデル102aを、タイヤモデル102の回転軸(Y軸)となる軸の周りに、周方向に向かって一周分(360度あるいは2×π分)展開することにより、
図4に示すタイヤモデル102を作成する。
【0042】
次に、リムモデル106も、解析対象のタイヤ・ホイール組立体のホイールのリム(例えば、
図1に示すリム面14)のモデルであり、
図6に示すように、複数の要素を有する3次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。リムモデル106が有する要素も、タイヤモデル102と同様に各種要素で構成することができる。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、2次元モデルでは2次元座標を用いて、3次元モデルでは3次元座標を用いて逐一特定される。
【0043】
図7に示す子午断面モデル106aは、解析対象のタイヤ・ホイール組立体のホイールのリム面の子午断面を解析モデル化したものである。子午断面モデル106aは、複数の要素を有する2次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。また、リムモデル106aを構成する複数の要素のうち、領域108a、領域108bで囲われた要素は、タイヤモデル102と接触する要素(接触する可能性がある要素)である。なお、領域108aは、子午断面モデル106aのうち、回転軸に平行な方向の一方の端部を含む領域である。また、領域108bは、子午断面モデル106aのうち、回転軸に平行な方向の他方の端部を含む領域である。子午断面モデル106aが有する要素は、1次元(線分)で構成されたシェル要素等である。つまり、子午断面モデル106aは、厚みのない線分で構成されている。本実施形態において、モデル作成部52aは、子午断面モデル106aを、リムモデル106の回転軸(Y軸)となる軸の周りに、周方向に向かって一周分(360度あるいは2×π分)展開することにより、
図6に示すリムモデル106を作成する。
【0044】
次に、ホイールモデル104は、スポーク部、フランジ部、リム部等を備え、スポーク部、フランジ部、リム部を有限個に分割した要素で構成される3次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。ホイールモデル104が有する要素も、タイヤモデル102と同様に各種要素で構成することができる。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、2次元モデルでは2次元座標を用いて、3次元モデルでは3次元座標を用いて逐一特定される。
【0045】
図9に示す子午断面モデル104aは、解析対象のタイヤ・ホイール組立体のホイールの子午断面を解析モデル化したものである。子午断面モデル104aは、複数の要素を有する2次元の解析モデルである。それぞれの要素は、複数の節点を有する。子午断面モデル104aが有する要素は、三辺形要素、四辺形要素等である。本実施形態において、モデル作成部52aは、子午断面モデル104aを、ホイールモデル104の回転軸(Y軸)となる軸の周りに、周方向に向かって一周分(360度あるいは2×π分)展開することにより、
図8に示すホイールモデル104を作成する。
【0046】
次に、
図10を用いて、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法及びタイヤ・ホイール組立体の解析方法の処理手順を説明する。
図10は、本実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体の解析方法の手順を示すフローチャートである。なお、上述したように
図10に示す処理は、処理部52の各部で処理を行うことで実行する。
【0047】
まず、処理部52は、ステップS12として、モデル作成部52aにより、上述したようなタイヤモデル102、リムモデル106、ホイールモデル104を作成する。なお、モデル作成部52aは、予め作成され、記憶部54に記憶されているモデルを読み出すことで、使用するモデルを作成しても、入力された形状、条件に基づいて処理を行うことで、モデルを作成してもよい。
【0048】
処理部52は、ステップS12で、タイヤモデル102、リムモデル106、ホイールモデル104を作成したら、ステップS14として、接触計算部52bにより、タイヤモデルとリムモデルの接触計算を行う。つまり、処理部52は、タイヤモデル102をリムモデル106に装着した状態のタイヤモデル102の形状を算出する。
【0049】
処理部52は、ステップS14で接触計算を行ったら、ステップS16として、埋め込み処理部52cにより、リムモデルをホイールモデルに埋め込む。つまり、処理部52は、リムモデル106をホイールモデル104の対応する位置(リム面)に重ね合わせて一体化させる。処理部52は、ステップS14でタイヤモデル102とリムモデル106とを接触させ、ステップS16でリムモデル106をホイールモデル104に埋め込むことで、タイヤモデル102がリムモデル106を介してホイールモデル104に装着されたモデル、つまりタイヤ・ホイール組立体モデル100を作成する。
【0050】
処理部52は、ステップS16で埋め込み処理を行ったら、ステップS18として、解析部52dにより、タイヤ・ホイール組立体を解析する。つまり、処理部52は、作成したタイヤ・ホイール組立体モデル100と、設定された条件に基づいて、各種演算を行い、解析を行う。なお、処理部52は、解析結果を表示手段55に表示させても、他の出力手段で出力してもよい。処理部52は、解析が完了したら、本処理を終了する。
【0051】
解析装置50は、以上のようにして、各部で処理を行い、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法、タイヤ・ホイール組立体の解析方法を実行することで、タイヤモデル102と、ホイールモデル104に加え、リムモデル106を作成し、タイヤモデル102と、リムモデル106とで接触計算を行う。このように、タイヤモデル102の接触計算(リムに装着することにより生じるタイヤの変形)を、リムモデル106との間で行うことで、接触計算の実行時の対象の要素を少なくすることができる。これにより、ステップS14の接触計算での処理量を少なくすることができる。
【0052】
また、解析装置50は、リムモデル106を、タイヤモデル102と接触する面をモデル化しているため、正確なリム形状のモデルを作成しても、要素数の増加を抑制することができる。これにより、タイヤと接触するリム面を高い精度、つまり、より細かい要素でモデル化しても、計算量の増加を抑制しつつ、接触計算を実行することができる。これにより、タイヤモデル102の接触計算を高い精度で実行することができ、かつ、計算量の増加も抑制することができる。
【0053】
また、解析装置50は、ホイールモデル104を、タイヤモデル102との接触計算を実行することなく、リムモデル106に埋め込むことで、タイヤ・ホイール組立体モデル100を作成することができる。また、ホイールモデル104は、接触計算の対象としないことで、ステップS18で実行する解析に必要な要素でモデル化すればよい。つまり、ホイールモデルとして、ホイール自体の特性が表現できているモデルであればよい。すなわち、ホイールモデル104を接触計算に用いないことで、装着されるタイヤの変形を正確に解析するために、リム面等の形状を高い精度でモデル化する必要がなくなり、モデルの要素数を低減することができる。
【0054】
以上より、解析装置50は、ホイールモデルとして、精度の低いモデルを用いた場合でも、タイヤの接触計算を正確に実行することができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体の解析をより高い精度で実行することができる。また、接触計算に用いるモデルとして、リムモデルを用いることで、タイヤの接触計算を正確に実行することができ、かつ、接触計算の計算量を低減することができる。また、リムモデルとして、タイヤモデルの接触計算をより正確に計算できるモデルを用いることができ、ホイールモデルの形状とは、異なる形状のモデルを用いることもできる。つまり、数値計算の過程により生じるずれを加味して、リムモデルを作成することで、接触計算の結果と実際の装着結果との間でのずれの発生を抑制することができる。
【0055】
ここで、
図11は、ホイールモデルのリム面の両端の形状を示す断面図であり、
図12は、タイヤモデルの空気充填時の表面形状の一例を示す模式図である。なお、
図11は、リム面をタイヤ径方向に平行な軸で折り返し、両端のリム面を重ねた状態を示している。
図11に示すホイールモデルは、回転軸に平行な方向の一方の端部のリム面112の形状と、他方の端部のリム面114の形状とが、異なる形状となる。
【0056】
このように、リム面が非対称な形状のホイールモデルを用いた場合でも、本実施形態のようにリムモデルを用いて、接触計算を行うことで、
図12のプロファイル122に示すように、左右対称に変形したタイヤ形状を算出することができる。これに対して、リムモデルを用いずにホイールモデルを用いて、タイヤモデルとの接触計算を行うと、プロファイル124に示すように左右非対称に変形した形状となる。ここで、プロファイル122、プロファイル124は、ともにタイヤモデルをインフレートした状態のプロファイルである。つまり、タイヤモデルをリムモデル、またはホイールモデルと接触させ、さらに、所定の内圧で空気を充填した状態のタイヤモデルのプロファイル(表面形状)を算出した結果である。なお、実際にタイヤをインフレートしたプロファイルは、プロファイル122と同様に左右対称に変形した形状となる。このように、リムモデルを用いて接触を計算することで、ホイールモデルが非対称な形状であっても、より実際に近いタイヤのプロファイルを算出することが可能となる。
【0057】
また、リムモデルは、ホイールモデルに埋め込むのみであるので、埋め込み処理で実行する計算は、少ない計算量で実行することができる。
【0058】
ここで、上記実施形態では、ステップS14で接触計算を行った後、ステップS16で埋め込み処理を行ったが、これには限定されず、ステップS14とステップS16とを逆の順序で実行してもよい。
【0059】
また、リムモデルは、ホイールモデルと重なる必要はなく、リムモデルがホイールモデルの外周と接する形状としてもよいし、タイヤ径方向において、ホイールモデルの外側となる位置に配置される形状としてもよい。また、リムモデルは、タイヤモデルとの接触計算が実行できるモデルであればよく、質量や弾性係数等の特定の情報は有さなくてもよい。また、タイヤモデルのリム面との接触による変形はリムモデルとの間の計算で実行されるため、ホイールモデルは、リム面の形状情報は、備えなくてもよい。また、ホイールモデルの一部と、タイヤモデルの一部が重なる形状となってもよい。
【0060】
また、リムモデル106は、タイヤモデル102との接触部分、つまり、領域108aと領域108bに囲まれる部分の要素の平均寸法が、ホイールモデル104の領域108aと領域108bに対応する領域に囲まれる部分の要素の平均寸法よりも小さいことが好ましい。例えば、ホイールモデル104の当該領域に囲まれる要素の平均寸法を5.8mmとしたら、リムモデル106の当該領域に囲まれる要素の平均寸法を4.6mmとすることが好ましい。これにより、タイヤモデル102の接触計算をホイールモデル104に接触させて計算する場合よりもよい正確に算出することができる。なお、タイヤモデル102との接触部分は、上述したように接触する可能性がある領域も含み、例えば、リムフランジからハンプまでを含む部分である。
【0061】
また、リムモデルは、
図6及び
図7に示した形状に限定されず、種々の形状とすることができる。以下、
図13から
図17を用いて、リムモデルの他の例について説明する。
図13は、リムモデルの他の例を示す断面図である。
図13に示すリムモデル130は、タイヤモデル102との接触部分、つまり、領域136aと領域136bに囲まれる部分134a、134bの要素の平均寸法が、その他の部分132、つまり、領域136aと領域136bに囲まれていない部分132の要素の平均寸法よりも小さい。このように、部分134a、134bを構成する各要素の大きさを、部分132を構成する各要素の大きさよりも小さくすることで、タイヤとの接触部分をより詳細にモデル化し、接触しない部分の要素数を省略することができる。つまり、タイヤとの接触しない部分の要素を大きくすることで、接触計算に影響がない部分の計算量を少なくすることができる。これにより、接触計算の精度は維持しつつ、計算時間を短縮することができる。
【0062】
次に、
図14は、リムモデルの他の例を示す斜視図である。
図14に示すリムモデル140は、第1接触部142と、第2接触部144とを有する。ここで、第1接触部142は、リム面において、タイヤモデルと接触する一方の端部をモデル化した部分である。また、第2接触部144は、リム面において、タイヤモデルと接触する他方の端部をモデル化した部分である。つまり、リムモデル140は、タイヤモデルと接触する部分(接触計算で接触する可能性がある領域も含む)のみで構成されたモデルである。リムモデル140は、タイヤモデルとの接触部分のみをモデル化しているため、接触計算の要素数をより少なくすることができる。これにより、接触計算の計算対象の要素数を少なくすることができ、計算時間を短時間にすることができる。
【0063】
ここで、リムモデルは、回転軸に平行な方向の端部(子午断面における端部)をタイヤモデルから離れる方向に折り返した形状、つまり、タイヤモデルから離れる方向(タイヤ径方向内側(中心側)に)に曲がった形状とすることが好ましい。以下、
図15から
図17を用いて説明する。ここで、
図15から
図17は、それぞれリムモデルの他の例を示す断面図である。
図15に示すリムモデル150は、回転軸に平行な方向の端部152a、端部152b、つまり、それぞれ領域154a、領域154bに囲まれる部分が、タイヤ径方向の中心側に折れ曲がった形状である。このように、リムモデル150の形状を径方向内側に折り曲げることによって、接触計算の収束性を改善することができ、特に、リムの端部付近までタイヤが変形するときの収束性を改善することができる。これにより、タイヤモデルとリムモデルとの接触計算をより円滑に実行することができる。
【0064】
次に、
図16に示すリムモデル160は、回転軸に平行な方向の端部162a、端部162b、つまり、それぞれ領域164a、領域164bに囲まれる部分が、タイヤ径方向の中心側に折れ曲がった形状である。なお、端部162a、端部162bは、リム面をモデル化した領域の両端に付加した部分である。つまり、リムモデル160は、上述したリムモデル106の両端にそれぞれ端部162a、端部162bを付加したものである。リムモデル160のように、実際にはリム面がない部分に、径方向内側に折り曲がった端部162aと端部162bとを付加することでも、接触計算の収束性を改善することができる。これにより、タイヤモデルとリムモデルとの接触計算をより円滑に実行することができる。
【0065】
次に、
図17に示すリムモデル170は、リム面のうち、タイヤと接触する部分に相当する第1接触部172と、第2接触部174とを有する。また、第1接触部172は、回転軸に平行な方向におけるタイヤ中心側の端部177a(領域179aに囲まれる部分)と、タイヤ端部側の端部178a(領域176aに囲まれる部分)がタイヤ径方向の中心側に折れ曲がった形状である。また、第2接触部174も、回転軸に平行な方向におけるタイヤ中心側の端部177b(領域179bに囲まれる部分)と、タイヤ端部側の端部178b(領域176bに囲まれる部分)がタイヤ径方向の中心側に折れ曲がった形状である。このように、リムモデル170を、第1接触部172と、第2接触部174とに分けた場合も、その回転軸に平行な方向の端部を、径方向内側に折り曲げることによって、接触計算の収束性を改善することができる。これにより、タイヤモデルとリムモデルとの接触計算をより円滑に実行することができる。
【0066】
また、解析装置は、タイヤモデルとの接触計算を行う際の、静摩擦係数を動摩擦係数よりも大きい設定で接触計算を行うことが好ましい。つまり、リムモデルとタイヤモデルとが相対的に静止している部分の摩擦係数である静摩擦係数が、リムモデルとタイヤモデルとが相対的に滑っている部分の摩擦係数である動摩擦係数よりも大きくなるように、それぞれの摩擦係数を設定することが好ましい。これにより、接触計算(タイヤモデルをリムモデルにはめ込む嵌合計算)で、より正確なインフレート形状を算出することができる。つまり、接触計算により算出されるリムモデルに対するタイヤモデルの移動(滑り)をより正確に算出することができる。これにより、リムに組み込んだ状態のタイヤモデルの形状をより正確に算出することができる。
【0067】
さらに、解析装置は、動摩擦係数をタイヤモデルとリムモデルの相対的な滑り速度に応じて変化する値で接触計算を行うことが好ましい。具体的には、滑り速度が大きくなるほど、動摩擦係数を小さくし、滑り速度が小さくなるほど、動摩擦係数を大きくする設定とすることが好ましい。これにより、タイヤモデルのビード部がリムモデルに対してスリップするときには、滑り速度が大きいほど動摩擦係数が小さくなるため、実際のタイヤとリム(ホイールのリム面)との関係、つまり、ビード部とリムモデルの間の摩擦力の変化の影響を考慮した解析を行うことができ、より正確なタイヤのインフレート形状を算出することができる。
【0068】
また、解析装置は、接触計算を行いタイヤモデルが嵌合された後は、リムモデルに対してタイヤモデルが滑らないように、つまり、移動しないようにすることが好ましい。つまり、リムモデルとタイヤモデルとは、接触計算が完了したら、接触位置を固定(結合)することが好ましい。これにより、タイヤ・ホイール組立体の解析をより適切に実行することができる。
【0069】
なお、タイヤモデルとリムモデルの接触計算時の各種設定は、リムモデルの条件、設定値として設定することに限定されない。例えば、接触計算時の条件として設定しても、タイヤモデルの物性値等の条件として設定してもよい。
【0070】
また、ホイールモデルとリムモデルは、ホイールモデルの質量・重心位置・慣性モーメント・固有値が、リムモデルを埋め込んだホイールモデルの質量・重心位置・慣性モーメント・固有値と同等となるように、弾性率、材料密度を定義することが好ましい。これにより、タイヤ・ホイール組立体の解析をより高い精度で行うことができる。具体的には、ホイールモデルとリムモデルとを、上記関係を満足させたモデルとすることで、リムモデルをホイールモデルに組み込んだモデルも、ホイールモデルのみを用いた場合と固有値(各モードにおける固有振動数)を同様の値とすることができる。つまり、リムモデルを設けた場合でも、ホイールモデルの特性を、ホイールモデルのみを用いて解析を行った場合と同様の特性とすることができる。
【0071】
また、モデルの作成方法及び解析装置は、タイヤの内部の空洞、つまり、タイヤとホイールとで囲まれた領域もモデル化する場合は、タイヤモデルとホイールモデルで囲まれた空間、あるいはタイヤモデルとリムモデルで囲まれた空間を空洞モデルとしてモデル化し、この空洞モデルを、タイヤモデル、タイヤモデル、リムモデルのいずれかと結合させることが好ましい。これにより、空洞モデルを的確にモデル化することができ、解析を行うことができる。
【0072】
また、解析装置によるタイヤ・ホイール組立体モデルの作成順序は、つまり、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法は、上記方法に限定されず、タイヤモデルとリムモデルとの間で接触計算を行い、リムモデルをホイールモデルに埋め込めばよい。ここで、
図18は、タイヤ・ホイール組立体モデルの作成方法の他の例を示す模式図である。解析装置は、
図18に示すように、タイヤモデルの子午断面における2次元モデル191と、リムモデルの子午断面における2次元モデル192とを作成し、2次元モデル191と、2次元モデル192との接触計算を行う。これにより、解析装置は、2次元モデル191と、2次元モデル192とが接触したモデル190を作成する。その後、解析装置は、モデル190を回転軸回りに3次元に展開し、3次元のモデル193を作成する。なお、モデル193は、3次元のタイヤモデルと3次元のリムモデルとが接触したモデルとなる。その後、解析装置は、ホイールモデル194を作成し、モデル193のリムモデルを、ホイールモデル194に埋め込むことで、モデル193とホイールモデル194とを一体化させた、タイヤ・ホイール組立体モデル196を作成する。
【0073】
解析装置は、このように、2次元のモデルでタイヤモデルとホイールモデルの接触計算を行った後、3次元に展開するようにすることでも、上述と同様に、計算の負荷を少なくしつつ、高い精度で、タイヤ・ホイール組立体モデルを作成することができる。また、接触計算を2次元モデルで実行できるため、接触計算の計算量を少なくすることができる。
【0074】
[評価例]
次に、ホイールモデルとして、種々のホイールモデルを用意し、それぞれのホイールモデルとタイヤモデルとを用いてタイヤ・ホイール組立体モデルを作成した場合と、本実施形態のリムモデルを用いてタイヤ・ホイール組立体モデルを作成した場合とを比較した。ここで、
図19は、ホイールモデルの他の例を示す斜視図であり、
図20は、
図19に示すホイールモデルのリム部の子午断面モデルを示す断面図である。また、
図21は、ホイールモデルの他の例を示す斜視図であり、
図22は、
図21に示すホイールモデルのリム部の子午断面モデルを示す断面図である。
図23は、ホイールモデルの他の例を示す斜視図であり、
図24は、
図23に示すホイールモデルのリム部の子午断面モデルを示す断面図である。
【0075】
図19及び
図20に示すホイールモデル202は、タイヤとの接触部を正確に再現したモデルであり、子午断面の形状が子午断面モデル202aとなる。なお、ホイールモデル202は、本評価例では、モデル1のホイールモデルとする。ホイールモデル202は、ホイールモデルの要素数が252558である。
図21及び
図22に示すホイールモデル204は、タイヤとの接触部の形状を左右非対称にしたモデルであり、子午断面の形状が子午断面モデル204aとなる。なお、本評価例では、ホイールモデル204をモデル2のホイールモデルとする。ホイールモデル204は、ホイールモデルの要素数が32976であり、ホイールモデル202よりも大きい要素で構成されている。
図23及び
図24に示すホイールモデル206は、タイヤとの接触部の形状を左右非対称にしたモデルであり、子午断面の形状が子午断面モデル206aとなる。なお、本評価例では、ホイールモデル206をモデル3のホイールモデルとする。ホイールモデル206は、ホイールモデルの要素数が7201であり、ホイールモデル204よりも大きい要素で構成されている。
【0076】
本評価例では、モデル1、モデル2、モデル3のそれぞれの場合について、リムモデルを用いることなくタイヤモデルに組み込んだ場合のタイヤ・ホイール組立体を作成し、インフレートプロファイルとリム形状と嵌合計算時間(接触計算に要した時間)について評価を行った。なお、嵌合計算時間は、モデル1を用いたタイヤ・ホイール組立体の接触計算に要した時間を100とした。また、本実施形態のタイヤ・ホイール組立体の作成方法として、モデル2とリムモデルを用いてタイヤ・ホイール組立体を作成し、同様に評価を行った。なお、タイヤモデルは、要素数116688の同様のモデルを用いた。また、リムモデルとしては、要素数3600のリムモデルを用いた。評価結果を下記表1に示す。
【0078】
表1に示すように、リムモデルを用いることで、タイヤとの接触部の形状が左右非対称のモデル2を用いた場合でもリム形状及びインフレートプロファイルを正確に再現することができる。つまり、ホイールモデルを正確に再現したモデル1を用いた場合と同様のインフレートプロファイルとリム形状を算出することができる。また、モデル1を用いた場合よりも計算時間を飛躍的に少なくすることができる。