(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
本発明のステータには、コイル線端末に接続される配線部材の取り付け及び取り外しが可能な支持構造が形成されている。その配線部材としては、例えば、中性点に接続されるコモン用バスバーや、渡り線部分に接続される渡り線用バスバーなどが考えられる。
【0012】
以下の実施形態では、配線部材が、渡り線用バスバーである場合(第1実施形態)と、中性点用バスバーである場合(第2実施形態)を例に挙げ、本発明について説明する。特にその中でも第2実施形態において詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[モータの全体構成]
図2に、本実施形態のモータを示す。このモータ1Aは、車載用のインナロータ型ブラシレスモータであり、例えば、電動パワーステアリングを駆動するために使用される。特に、このモータ1Aは、組立時に、ステータに渡り線用バスバーを取り付けたり取り外したりすることで、1つのステータを共用して、パラレル結線とシリーズパラレル結線とに切り替えられる機能を有している。
【0014】
同図に示すように、このモータ1Aには、ケーシング2やバスバーユニット11、ステータ12、ロータ13、シャフト6などが備えられている。ロータ13やステータ12、バスバーユニット11の中心は、いずれもシャフト6の中心S(モータ1Aの回転軸)と一致するように配置されている。
【0015】
ケーシング2は、有底円筒形状をした容器体2aと、略円盤状の蓋体2bとを有している。容器体2aの開口の周囲に張り出すフランジに蓋体2bが締結固定され、容器体2aの内部にステータ12等が収容されている。蓋体2bの中央部には貫通孔3が形成されており、この貫通孔3に対向して容器体2aの底面に軸受部4が形成されている。
【0016】
軸受部4と貫通孔3の内側には、それぞれベアリング5,5が設けられ、これらベアリング5,5を介してシャフト6がケーシング2に回転自在に支持されている。シャフト6の一方の端部は、貫通孔3を通じて蓋体2bの外側に突出しており、その端部が電動パワーステアリングに減速機を介して接続される(図示せず)。
【0017】
シャフト6の中間部には、ロータ13がシャフト6と同軸に固定されている。ロータ13は、円筒状のロータコア13aや磁石13bなどで構成されている。磁石13bはロータコア13aの外周面に設けられている。磁石13bの磁極は、N極とS極とが円周方向に交互に並ぶように配置されている。なお、磁石13bはロータコア13aの外周部分にあればよく、ロータコア13aの内側に設けてあってもよい。本実施形態のモータ1Aは、異なる磁極に対して1つのステータが共用可能となっているので、ロータ13の磁極数(ポール数)は、例えば、8や14等に設定できる。
【0018】
容器体2aの内周面には、ロータ13の周りを囲むように円筒形状のステータ12が固定されていて、ステータ12の内周面とロータ13の外周面とが僅かな隙間を隔てて対向している。バスバーユニット11は、ステータ12の端部に取り付けられている。なお、同図中、符号7は回転角度を検出する回転角センサである。
【0019】
[ステータの構成]
ステータ12は、複数(本実施形態では12個)の分割ステータ50を連結して形成されている。
図3、
図4に示すように、分割ステータ50は、分割コア51やインシュレータ52、コイル53、樹脂層54を備えている。具体的には、分割コア51は略T字形状をした複数の鋼板を積層して形成されている。分割コア51は、互いに連結される横断面劣弧状のコアバック部51aと、コアバック部51aの中央部位から径方向を中心に向かって延びるティース部51bなどを有している。分割コア51には絶縁性のインシュレータ52(絶縁層)が装着されている。
【0020】
コイル53は、インシュレータ52が装着されたティース部51bのそれぞれにエナメル被覆銅線等の導電線を巻き付けることによって形成されている。すなわち、本実施形態では、コイル53は12個設けられている。ステータ12のティース部51bの間には12個のスロット(隙間)が形成されていて、これらスロットにコイル53の導電線が収容されている。コイル53の巻回方向は、いずれの分割ステータ50も同じである。
【0021】
ティース部51bに巻き付けられた導電線の端部(コイル線端末55ともいう)は、2本とも分割ステータ50の一方の端部(容器体2aの開口側に位置する端部、開口側端部50aともいう)に導出されている。これらコイル線端末55は、モータ1Aに組み付けられたときにはシャフト6と略平行になる。なお、コイル線端末55は分割ステータ50ごとに導出されるため、本実施形態の場合、ステータ12から24本のコイル線端末55が導出されている。
【0022】
(樹脂層)
コイル53は、2本のコイル線端末55の先端部分を除き、モールドによって形成された樹脂層54に埋設されている。コイル線端末55の基端部分は樹脂層54でモールドされているので、コイル線端末55は所定位置に位置決めされている。また、基端部分が樹脂層54に埋設されることにより、樹脂層54から突出するコイル線端末55の先端部分が撓み難くなるので、コイル線端末55の先端部分を直線状に安定して保持できる。
【0023】
(分割支持構造)
開口側端部50aに面する樹脂層54の端面に、後述する渡り線用バスバー24が収容可能な分割配線溝21a(分割支持構造)が形成されている。詳しくは、分割配線溝21aはコアバック部51aに沿って円弧状に形成されている。分割ステータ50を連結することにより、隣接する分割配線溝21aどうしが連結され、ステータ12の周方向に延びる円環状の配線溝21が形成される。コイル線端末55は、この配線溝21に沿ってステータ12の周方向に並ぶように配置されている。
【0024】
樹脂層54には、後述するアダプター62を固定する第1固定部22が形成されている。
図5に示すように、本実施形態の第1固定部22は、開口側端部50aに面する樹脂層54の所定部位から半径方向内側に張り出す張出形状に形成されている。また、樹脂層54には、アダプター62を周方向に位置決めする第1位置決め部23が形成されている。
図6に示すように、本実施形態の第1位置決め部23は、開口側端部50aに面する樹脂層54の端面の所定部位に窪む凹み形状に形成されている。なお、
図3や
図4、
図8、
図9では第1固定部22や第2固定部25の図示は省略している。
【0025】
分割ステータ50の開口側端部50aには、樹脂層54からコアバック部51aの一部(長手向の中間部分)が露出する第1コア露出部51cが設けられている。分割ステータ50の開口側端部50aの反対側の端部には、樹脂層54からコアバック部51aの大部分が露出する第2コア露出部51dが設けられている。
図7に示すように、樹脂層54をモールド成形する際、第2コア露出部51dを金型の基準面Hで受け止めて、矢印のように、第1コア露出部51cを基準面H側に押し付け、第1コア露出部51c及び第2コア露出部51dを金型で挟み込むことにより、分割コア51等が支持される。ゲートは第2コア露出部51d側に設けられている。従って、分割ステータ50の開口側端部50aの反対側の端部にはゲート痕28が形成されている。
【0026】
バスバーユニット11は、開口側端部50aに面する樹脂層54の端面に受け止められる。従って、連結した時に、この端面が面一になるように、各分割ステータ50の端面とコアバック部51aとの間の寸法Lを精度高く確保する必要がある。それに対し、上述したように第1コア露出部51c及び第2コア露出部51dを支持してモールド成形することで、量産する際にもその寸法Lを安定して精度高く確保することができる。
【0027】
図8、
図9に示すように、コイル線端末55が導出されるステータ12の一方の端部(容器体11の開口側の端部、開口側端部12aともいう)にバスバーユニット11や渡り線用バスバー24が取り付けられる。
【0028】
本実施形態のモータ1Aは、コイル53がパラレル結線される場合(第1の結線状態)と、コイル53がシリーズパラレル結線される場合(第2の結線状態)とに切り替え可能である。
図8はパラレル結線の場合を、
図9はシリーズパラレル結線の場合をそれぞれ示している。
【0029】
パラレル結線及びシリーズパラレル結線の場合のそれぞれに対応して、モータ1Aでは、パラレル結線用のバスバーユニット11A(
図8等)と、シリーズパラレル結線用のバスバーユニット11B(
図9等)とがバスバーユニット11に用いられている。バスバーユニット11には、複数(本実施形態では4個)のバスバー61と、これらバスバー61を支持する絶縁性のアダプター62とが備えられている。例えば、パラレル結線の場合に用いられるバスバーユニット11Aの詳細を
図10、
図11に示す。
【0030】
(バスバー)
本実施形態のバスバー61は、ステータ12のU相、V相、W相のそれぞれに接続される3つの相用バスバー61u,61v,61wと、中性点に接続される1つのコモン用バスバー61xとで構成されている。すなわち、本実施形態の各コイル53はY結線されている。
【0031】
バスバー61は、全体が概ね同じ厚みに形成された帯状導体である。バスバー61には、厚み方向に環状(C字状であってもよい)に屈曲された細長い帯板状の本体部65と、本体部65と一体に設けられる複数の帯板状の端子部66とが備えられている。本実施形態では、相用バスバー61u,61v,61wそれぞれの本体部65u,65v,65wに端子部66u,66v,66wがそれぞれ4個ずつ設けられ、コモン用バスバー61xの本体部65xに12個の端子部66xが設けられている(以下、U相、V相、W相、コモン相を説明する上で識別する必要がない場合は、例えばバスバー61というようにu、v、w、xは省略する)。
【0032】
なお、シリーズパラレル結線に用いられるバスバー61は、端子部66の数がパラレル結線のバスバー61と異なっている。シリーズパラレル結線用のバスバー61では、各相用バスバー61の端子部66はそれぞれ2個であり、コモン用バスバー61xの端子部66xの数は6個である。その他、シリーズパラレル結線用のバスバー61の形状等はパラレル結線用のバスバー61と同様である。
【0033】
相用バスバー61には、更にそれぞれ2個(接合されて1個になっている場合もある)の帯板状の接続端部67u,67v,67wが本体部65と一体に設けられている。接続端部67は、長方形状を呈し、本体部65の両端のそれぞれから本体部65に略直交して同じ方向に延びている。接続端部67は本体部65を挟んで端子部66の反対側に設けられている。
【0034】
端子部66(66u,66v,66w,66x)のそれぞれは、フック形状を呈し、本体部65の側端の所定部位に設けられている。端子部66は、本体部65の長手方向の中間の所定部位から側方に張り出す端子張出部63と、端子張出部63の先端に連なる端子先端部66cとを有している。詳しくは、端子張出部63は、本体部65の側端の所定部位から側方に張り出して本体部65と略直交する方向に延びる短寸の端子基部66aと、端子基部66aの先端に連なって本体部65の半径方向外側に屈曲し、端子基部66aと略直交する方向に延びる端子中間部66bとを有している。端子先端部66cは、端子中間部66bに連なって本体部65と対向する側に屈曲し、端子中間部66bと略直交する方向に延びている。
【0035】
(バスバーの製造方法)
これらバスバー61は、金属板を打ち抜いて形成した中間部材を折り曲げて形成することもできるが(プレス加工)、本実施形態では、1本の絶縁被膜を有しない裸電線(例えば、裸銅線68)を加工することによって形成されている。
【0036】
図12に、バスバー61の製造工程を示す。まず、同図の(a)に示すように、所定長さの裸銅線68(線材)を1本準備する。裸銅線68には汎用品を用いることができ、例えば、2mm程度の線径のものが利用できる。
【0037】
次に、同図の(b)に示すように、裸銅線68を折り曲げて、本体部65となる本体形成部69、端子部66となる端子形成部70、及び接続端部67となる接続端形成部71を形成する。具体的には、端子形成部70の場合、この裸銅線68の所定の中間部位を折り返し、2本の裸銅線68が実質的に平行になるように近接させる。折り返した裸銅線68の先端から所定の長さの位置で、互いに逆向く方向に裸銅線68を略90度折り曲げる。
【0038】
これを繰り返すことにより、直線状に延びる本体形成部69の側方に略直交して張り出す端子形成部70を複数形成する(相用バスバー61はそれぞれ4個、コモン用バスバー61xは12個)。端子形成部70はいずれも本体形成部69の同じ側に形成する。接続端形成部71は、本体形成部69に対して端子形成部70の反対側に裸銅線68の両端のそれぞれを略90度折り曲げて形成する。端子形成部70及び接続端形成部71は同一平面上に形成され、互いに略平行である。なお、コモン用バスバー61xは接続端部67が無いため、コモン用バスバー61xの場合には接続端形成部71は形成されない。
【0039】
次に、同図の(c)に示すように、端子形成部70等を形成した裸銅線68の全体を折り曲げ方向に直交する方向から圧延して中間部材72を形成する。裸銅線68の全体を圧延することにより、所定の展開形状をした帯板状の中間部材72が得られる。金属板を打ち抜いてこのような形状の中間部材72を形成すると、打ち抜き後に多量の金属屑が発生する。それに対し、この製法によれば、金属屑が発生しない。従って、100%の歩留まりで中間部材72の量産が実現できる。
【0040】
本体形成部69及び接続端形成部71は、1本の裸銅線68が圧延されてほぼ同じ幅の帯板状となり、本体部65及び接続端部67が形成される。端子形成部70では、平行に並ぶ2本の裸銅線68が圧延されて一体化し、幅広な端子部66が形成される。
【0041】
詳細には、本体部65等とほぼ同じ幅に圧延された一対の帯板状の部分(延出部61s)が、互いに突き合わされた状態で本体部65から側方に張り出している。これら一対の延出部61sのそれぞれは、裸銅線68の折り返し部分が圧延されて略U字形状に形成された先端部分(先端部61t)に連なって一体化している。一対の延出部61sや先端部61tは、圧延による変形で一体化している場合もある。ここで言う一対の延出部61sによって端子張出部63が構成され、先端部61tによって端子先端部66cが構成される。
【0042】
最後に、同図の(d)に示すように、中間部材72の所定部位を折り曲げることにより、バスバーが完成する。具体的には、各端子部66の付け根部分を略90度折り曲げて端子基部66aを形成する。更に、各端子部66の中間部分を略90度折り曲げて端子中間部66b及び端子先端部66cを形成する。そして、本体部65を厚み方向に屈曲して接続端部67どうし(コモン用バスバー61xの場合は本体部65の端部どうし)を突き合わせ、同図の(e)に示すように、環状に変形させる。
【0043】
相用バスバー61の端子形成部70は、それぞれ長さが異なるように形成される。それにより、相用バスバー61の端子基部66aはそれぞれ同じ長さに形成される。また、相用バスバー61の端子先端部66cもそれぞれ同じ長さに形成される。それにより、相用バスバー61の端子中間部66bはそれぞれ所定の異なった長さに形成されている。また、相用バスバー61の本体形成部69は、それぞれ長さが異なるように形成されている。それにより、相用バスバー61の本体部65はそれぞれ異なった直径に形成されている。
【0044】
本実施形態のコモン用バスバー61xの端子形成部70は、相用バスバー61よりも長さが短く形成されている。端子基部66a及び端子先端部66cは、相用バスバー61とコモン用バスバー61xとで同じ長さに形成されており、端子中間部66bが相用バスバー61よりもコモン用バスバー61xの方が短く形成されている。コモン用バスバー61xは相用バスバー61よりも端子部66の数が多いため、端子部66の寸法を相対的に小さくすることで、裸銅線68の使用量を抑制することができる。
【0045】
(アダプター)
アダプター62は樹脂の射出成型品である。本実施形態のアダプター62は、ステータ12の形状に合わせて円環形状に形成されている。アダプター62は、パラレル結線とシリーズパラレル結線とで共用できる。アダプター62の横断面は矩形形状をしている。
【0046】
図8,
図9、
図11に示したように、アダプター62は、同心円状に位置して内外に対向する内周面62a及び外周面62bと、これら内周面62a及び外周面62bの各縁に連なって対向する一対の表端面62c及び裏端面62dを有している。アダプター62の表端面62cの3箇所には端子孔73が開口している。これら端子孔73を通じて各相用バスバー61の接続端部67が突出している。アダプター62の裏端面62dには、複数(本実施形態では4個)の本体支持溝74と、複数(本実施形態では24個、シリーズパラレル結線の場合は12個でもよい)の端子支持溝75とが形成されている。
【0047】
図13や
図14にも示すように、本体支持溝74は円環状の溝であり、同心円状に多重に形成されている。本体支持溝74の幅はバスバーの本体部65の厚みよりも僅かに大きく形成されている。本実施形態では、半径方向内側に、相用バスバー61の本体部65を受け入れる第1〜第3の3つの本体支持溝74u,74v,74wが配置され、最も外側にコモン用バスバー61xの本体部65xを受け入れる第4の本体支持溝74xが配置されている。第1〜第4の本体支持溝74の深さはいずれも同じである。
【0048】
端子支持溝75は本体支持溝74と交差して半径方向に延びる溝である。端子支持溝75のそれぞれは放射状に配置されている。端子支持溝75の幅はバスバーの端子部66の幅よりも僅かに大きく形成されている。端子支持溝75は円周方向の24箇所に等間隔で形成されている。本実施形態の端子支持溝75は、第1〜第4の本体支持溝74のそれぞれに連なる第1〜第4の端子支持溝75u,75v,75w,75xで構成されている。
【0049】
第4端子支持溝75xは、円周方向の12箇所に等間隔で形成されている。第1〜第3の端子支持溝75は、これら第4端子支持溝75xの間に、例えば、反時計回りに第1端子支持溝75u、第2端子支持溝75v、第3端子支持溝75wの順に1つずつ配置されている。第1〜第4の端子支持溝75の深さはいずれも同じである。
【0050】
第1〜第4の端子支持溝75の長さはそれぞれ異なる。具体的には、第1〜第4の端子支持溝75の一端はいずれもアダプター62の外周面62bに開口している。そして、第4端子支持溝75xの他端は第4本体支持溝74xに開口し、同様に、第1〜第3端子支持溝75の他端はそれぞれ第1〜第3本体支持溝74に開口している。
【0051】
本体支持溝74には、本体部65及びこれらの端子基部66aが個別に収容され、入れ子状に配置されている。端子支持溝75には、端子部66の端子中間部66bが個別に収容されている。このとき、端子先端部66cは、本体部65と対向する側に位置しているため、アダプター62の外周面62bと対向して位置する。
【0052】
図14の(a)に示したように、端子支持溝75の深さD2は端子部66の厚みtよりも大きく形成されている。従って、端子部66がアダプター62に入り込んでアダプター62の裏端面62d側にバスバー61がはみ出ないので、バスバー61と他の部材との接触を防ぐことができる。
【0053】
本体支持溝74の深さD1は、端子支持溝75の深さD2よりも大きく形成されている。そして、本体支持溝75の深さD1と端子支持溝75の深さD2との差は、本体部65の幅Wよりも大きく形成されている。本体支持溝75に収容されたバスバー61は、本体支持溝75に設けられるスナップフィット等の機構により動きを制限される。従って、バスバー61のいずれかをアダプター62に収容したとき、他のバスバー61の本体部65を跨ぐ端子部66は端子支持溝75に規制されるため、他のバスバー61の本体部65との接触も安定して防ぐことができる。
【0054】
バスバー61の端子先端部66cの半径方向外側には接合面76が設けられている。接合面76のそれぞれは、アダプター62に装着したときに、アダプター62(バスバーユニット11)の中心Sを中心とする第1仮想円77に半径方向内側から接する位置に配置されている(
図13参照)。これら接合面76には、バスバーユニット11をステータ12に組み付けたときにコイル線端末55が接合される。
【0055】
図8,
図9に示したように、バスバーユニット11をステータ12に取り付ける際には、アダプター62の裏端面62dをステータ12の開口側端部12aに向けた状態で取り付けられる。このようにすることで、バスバーがアダプター62から抜け外れることが防止できる。また、本体支持溝74に塵埃等が入り込むのも防止できる。
【0056】
(固定部、位置決め部)
図5に示したように、アダプター62には、ステータ12の第1固定部22に係合してアダプター62をステータ12に固定する第2固定部25が形成されている。本実施形態の第2固定部25は、第1固定部22に弾性変形して掛け止められるフック形状に形成されている。
【0057】
図6に示したように、アダプター62には、ステータ12の第1位置決め部23に係合してアダプター62を周方向に位置決めする第2位置決め部26が形成されている。本実施形態の第2位置決め部26は、第1位置決め部23に嵌り込む凸形状に形成されている。
【0058】
(渡り線用バスバー)
本実施形態の渡り線用バスバー24(部分配線部材)は、シリーズパラレル結線を行う場合に、直列に接続されるコイル53のコイル線端末55どうしを接続するために用いられる。
図9に示したように、渡り線用バスバー24は、帯板状の配線本体24aと、配線本体24aの両端の側縁から略直交して平行に延びる複数(本実施形態では2個)の帯板状の配線端子24bとを有している。配線端子24bの配線本体24a側の基端部分には、配線端子24b及び配線本体24aと略直交する屈曲部24cが設けられている。渡り線用バスバー24もプレス加工又は1本の裸銅線から加工して形成される。
【0059】
シリーズパラレル結線では、
図1の(b)に示したように、巻回方向が逆向きのコイル53が直列に連なる配線を行う場合がある。このような配線を機械的に処理するのは難しく、生産効率を妨げる要因となっている。本実施形態では、渡り線用バスバー24を用いることにより、同じ方向に巻回された単一の分割ステータ50を用いてシリーズパラレル結線ができる。
【0060】
すなわち、渡り線用バスバー24の配線端子24bは、それぞれ、隣接する2つの分割ステータ50における巻き始め側のコイル線端末又は巻き終わり側のコイル線端末55のいずれか一方に接続される。そうすることで、同じ方向に巻回された単一の分割ステータ50どうしを接続して、簡単に巻回方向が逆向きのコイル53を直列に配線することができる。
【0061】
本実施形態では、シリーズパラレル結線を行う場合には、
図9に示すように、配線溝21の所定部位に、6個の渡り線用バスバー24の配線本体24aが嵌め入れられる。それにより、一対の配線端子24bは所定のコイル線端末55と対向する。
【0062】
配線溝21には、
図15に示すように、所定部位に嵌め入れた渡り線用バスバー24の抜け出しを規制する抜け止め部27が形成されている。詳しくは、抜け止め部27は、配線本体24aの中間部分の上側に半径方向から突出してその抜け出しを規制する第1突部27aと、配線端子24bの屈曲部24cの上側に周方向から突出してその抜け出しを規制する第2突部27bとを有している。
【0063】
従って、渡り線用バスバー24を配線溝21の所定部位に押し込むだけで、簡単に渡り線用バスバー24をステータ12に位置決めして取り付けることができる。また、逆に、渡り線用バスバー24を摘んでステータ12から取り外すこともできる。
【0064】
(組み付け)
図16に示すように、コイル線端末55は、ステータ12の円周方向に等間隔で並んでいる。本実施形態の場合、コイル線端末55は24箇所に設けられているので、隣接する2本のコイル線端末55によって形成される中心角は15度である。なお、バスバーユニット11の端子部66はコイル線端末55の数や位置に対応して設けられている。
【0065】
コイル線端末55は、ステータ12の中心Sを中心とする第2仮想円78に半径方向外側から接する位置に配置されている。第2仮想円78は第1仮想円77と同じ直径に設定されている。従って、それぞれの中心Sを一致させてバスバーユニット11をステータ12に取り付け、コイル線端末55と端子部66とを円周方向に位置決めすれば、
図17にも示すように、コイル線端末55は、半径方向外側から端子部66の接合面76と接した状態になる(接しなくても僅かな隙間を隔てて対向する)。
【0066】
図18に示すように、接合面76は円周方向に拡がっているため、コイル線端末55が多少位置ずれしていたり撓んでいたりした場合でも、コイル線端末55は接合面76に対向して位置する。従って、コイル線端末55と端子部66とを安定して接合することができ、自動化も容易である。
【0067】
渡り線用バスバー24をステータ12に取り付けた時には、その配線端子24bはコイル線端末55に半径方向外側から接した状態になる。従って、コイル線端末55と配線端子24bとの間も安定して接合することができ、自動化も容易である。
【0068】
すなわち、モータ1を製造する際、バスバーユニット11をステータ12に組み付ける一連の工程は機械化することができる。例えば、アダプター62に各バスバー61を装着してバスバーユニット11を組み立てた後、接合面76がコイル線端末55と対向する位置に、所定の組立装置(図示せず)を用いてバスバーユニット11をステータ12に配置する(位置決め工程)。例えば、それぞれの中心線Sを合わせ、中心線Sに沿ってステータ12の開口側端部12aにバスバーユニット11を所定位置まで近づける。そうした後、バスバーユニット11とステータ12とを相対的に回転させてコイル線端末55と端子部66とを円周方向に位置決めする。そうするだけで、簡単に全てのコイル線端末55を端子部66と接した状態にすることができる。
【0069】
次に、
図19に示すように、所定の接合装置30により、半径方向の内外から各端子先端部66cと各コイル線端末55とを挟み込み、接合面76にコイル線端末55を押し付ける。後は、抵抗溶接やTIG溶接、超音波溶接等によりコイル線端末55と端子部66とを溶接する(接合工程)。
【0070】
これと同様に、コイル線端末55と配線端子24bとの間も溶接する。そうすれば、全てのコイル線端末55をまとめて処理できるので、工数が削減でき、生産性に優れる。
【0071】
例えば、8ポール12スロットの場合、
図1の(a)に示したようなパラレル結線が行われる場合がある。その場合には、
図20に示すように、渡り線用バスバー24をステータ12から取り外し、コイル線端末55の全てを、所定の組み合わせにより、各相用バスバー61及びコモン用バスバー61xの端子部66と接続すればよい。
【0072】
一方、14ポール12スロットの場合、
図1の(b)に示したようなシリーズパラレル結線が行われる場合がある。その場合には、
図21に示すように、渡り線用バスバー24をステータ12の所定部位に取り付け、コイル線端末55に、所定の組み合わせにより、各相用バスバー61及びコモン用バスバー61xの端子部66と、渡り線用バスバー24の配線端子24bとを、それぞれ接続すればよい。
【0073】
いずれの場合であっても、容易に組み付けて接続することができ、自動化できるので、生産性に優れる。
【0074】
<第2実施形態>
[モータの全体構成]
図22に、本発明を適用したモータ1を示す。このモータ1は、車載用のインナロータ型ブラシレスモータであり、例えば、電動パワーステアリングを駆動するために使用される。同図に示すように、このモータ1には、ケーシング2やバスバーユニット100、ステータ200、ロータ300、シャフト6などが備えられている。
【0075】
ケーシング2は、有底円筒形状をした容器体2aと、略円盤状の蓋体2bとを有している。容器体2aの開口の周囲に張り出すフランジに蓋体2bが締結固定され、その内部にステータ200等が収容されている。蓋体2bの中央部には貫通孔3が形成されており、この貫通孔3に対向して容器体2aの底面に軸受部4が形成されている。軸受部4と貫通孔3の内側には、それぞれベアリング5,5が設けられ、これらベアリング5,5を介してシャフト6がケーシング2に回転自在に支持されている。シャフト6の一方の端部は、貫通孔3を通じて蓋体2bの外側に突出しており、その端部が電動パワーステアリングに減速機を介して接続される(図示せず)。
【0076】
シャフト6の中間部には、ロータ300が同軸に固定されている。容器体2aの内周面には、ロータ300の周りを囲むようにステータ200が固定されていて、ステータ200の内周面とロータ300の外周面とが僅かな隙間を隔てて対向している。バスバーユニット100は、ステータ200の端部に取り付けられている。なお、同図中、符号7は回転角度を検出する回転角センサである。
【0077】
このモータ1には、生産性の向上や生産コスト等の削減を図るべく様々な工夫が施されている。以下、各構成部品の説明と併せてその内容について詳しく説明する。
【0078】
[バスバーユニットの構成]
バスバーユニット100の構成について詳細に説明する。
図23及び
図24に示すように、バスバーユニット100は、ステータ200の軸方向端部(
図23における上側端部)に配設されると共に、後述するステータ200の複数のコイル線端末204aに電気的に接続されており、電流を後述するステータ200のコイル204へ供給するものである。
【0079】
図25〜
図30に示すように、バスバーユニット100は、ホルダ101u,101v,101wと、バスバー120と、端子部材130と、を備えている。本実施形態のバスバー120は、ステータ200におけるコイル204のu相、v相、w相の各相に対応して、3つ備えられている。ホルダは、各バスバー120を個別に収納保持する、u相ホルダ101uとv相ホルダ101vとw相ホルダ101wの3つ備えられている。そして、各バスバー120には、端子部材130が複数接続されている。
【0080】
図28及び
図29に示すように、各バスバー120は、導電性の線材が環状に形成されてなるものである。具体的に、本実施形態のバスバー120は、絶縁被膜を有しない裸電線(例えば、裸銅線)で形成されている。このバスバー120は、周方向における所定の複数箇所が端子接続部121となっており、その端子接続部121に端子部材130が接続される。バスバー120は、端子接続部121の断面形状は、端子部材130との接続時に矩形に変形され、その端子接続部121以外の部分の断面形状は略円形に形成されている。また、本実施形態では、バスバー120の断面積はステータ200におけるコイル204の断面積よりも大きく形成されている。
【0081】
なお、本実施形態において、バスバー120は、導電性の線材で形成されていれば、その断面形状は問わない。また、バスバー120は、環状ではなくC型状に形成するようにしてもよい。また、バスバー120は、導電性を有する線材の外周に絶縁被膜を有するものであってもよい。その場合、バスバー120の端子接続部121は絶縁被膜を除去する必要がある。この絶縁被膜を除去する手段としては、端子部材130との電気的導通を図ることができるのであれば、機械的に絶縁被膜を剥がしてもよいし、抵抗溶接を行ってもよい。
【0082】
各端子部材130は、
図30に示すように、1つの板材から形成される。端子部材130は、バスバー120に接続されるバスバー接続部131と、ステータ200のコイル線端末204aに接続されるコイル接続部135と、バスバー接続部131とコイル接続部135との間に連続形成される連結部134と、を有している。
【0083】
バスバー接続部131は、2つのC型筒部132と、その両者の端面同士を連結する平板部133とからなっている。2つのC型筒部132は、板材がC型状に折り曲げられてなる筒体であり、互いに同じ軸心上に並設されている。このC型筒部132にバスバー120が挿通する。コイル接続部135は、板材が略C型状に折り曲げられてなる筒体であり、この筒体にコイル線端末204aが挿通する。コイル接続部135の軸心とC型筒部132の軸心とは、互いに直交している。連結部134は、コイル接続部135の端面からバスバー接続部131の平板部133まで延びる板材である。そして、連結部134は、途中で板厚方向に折り曲げられている。具体的に、連結部134は、コイル接続部135の端面からその軸心方向に延びた後、その直交方向に折り曲げられて平板部まで延びている。このように形成された端子部材130の全体は、コイル接続部135の軸心方向の平面視形状が略T字型となり、バスバー接続部131の軸心方向の平面視形状が略L字型となる。
【0084】
また、端子部材130の展開図を
図31に示す。端子部材130は、一枚の板材に対してこの展開図のとおり切断し、その切断したものを曲げ加工することで形成される。このように、本実施形態の端子部材130は、材料の歩留まりが高い形状となっている。
【0085】
また、
図32に示すように、端子部材130は、環状に形成される前のバスバー120に対して挿通される。つまり、裸電線が環状に形成される前の直線状態のときに、その裸電線に端子部材130のC型筒部132が挿通される。そして、バスバー120の端子接続部121においてC型筒部132が圧着又は溶着される。その後、直線状のバスバー120(裸電線)が環状に形成される。これにより、複数の端子部材130がバスバー120に電気的に接続される(
図28を参照)。なお、本実施形態では、複数の端子部材130が挿通された直線状のバスバー120を環状に形成した後、バスバー120の端子接続部121においてC型筒部132を圧着又は溶着するようにしてもよい。
【0086】
3つのホルダ101u,101v,101wは、それぞれ絶縁材料で一体成型された環状体であり、互いに同一の形状をなしている。
図28に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、環状体であるホルダ本体105を備えている。ホルダ本体105の環状面105aには、その周方向に環状の収容溝106が形成されている。この収容溝106に、複数の端子部材130が接続された環状のバスバー120が収容保持される。収容溝106は、周方向における所定の複数箇所(本実施形態では、6箇所)が端子収容部107となっている。この端子収容部107に、端子部材130が収容保持される。そして、収容溝106において、端子収容部107には端子部材130の抜け止め109が形成され、端子収容部107以外の部分にはバスバー120の抜け止め110が複数形成されている。これら抜け止め109,110は爪状に形成されている。なお、端子収容部107における外側壁には、端子部材130の連結部134がホルダ本体105の径方向外方へ挿通するための切欠き108が形成されている。
【0087】
また、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、ホルダ本体105の内周壁には周方向に等間隔に複数のフック111が形成されている。具体的に、各フック111は、ホルダ本体105の内周壁の一部が軸方向に延びて収容溝106の環状面105aよりも突出するように形成されている。また、ホルダ本体105の内周壁には、各フック111の間であって周方向に等間隔に複数の縦溝112が形成されている。つまり、各縦溝112は、ホルダ本体105の内周壁を軸方向に延びている。各縦溝112には、溝底面から径方向内方へ突出する突起113が形成されている。
【0088】
図33及び
図34に示すように、本実施形態の各バスバー120において、5つの端子部材130のうち4つの端子部材130は互いに90°間隔で接続されており、残りの端子部材130が他の何れかの端子部材130と近接して接続されている。また、本実施形態では、u相ホルダ101u及びv相ホルダ101vと、w相ホルダ101wとでは、バスバー120の収容状態が若干異なる。具体的に、u相ホルダ101u及びv相ホルダ101vでは、収容溝106において互いに近接して配設される3つの端子収容部107のうち最右のものには端子部材130が収容されない(
図33参照)。w相ホルダ101wでは、収容溝106において互いに近接して配設される3つの端子収容部107のうち最左のものには端子部材130が収容されない(
図34参照)。また、バスバー120が収容された各ホルダ101u,101v,101wでは、各端子部材130のコイル接続部135が径方向外側へ突出する状態となる。そして、コイル接続部135の軸心とホルダ101u,101v,101wの軸心とが互いに平行な状態となる。
【0089】
図23や
図25〜
図27に示すように、バスバーユニット100は、各々バスバー120が収容保持された状態の各ホルダ101u,101v,101wが、互いにステータ200の軸方向に積層されている。なお、本実施形態では、軸方向上側から、u相ホルダ101u、v相ホルダ101v及びw相ホルダ101wの順に積層されているが、積層順はこれに限られない。また、
図26や
図27に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、何れも収容溝106の環状面105aが軸方向下向きになるように積層されている。つまり、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wは互いの収容溝106の開口面同士が対向する状態を阻止するように積層されている。
【0090】
また、
図25や
図26に示すように、互いに積層するホルダ101u,101v,101w同士は、上述したフック111と縦溝112の突起113とが係合することで固定される。つまり、一方のホルダ101u,101v,101wのフック111を、他方のホルダ101u,101v,101wの突起113に引っ掛けることで、積層する3つのホルダ101u,101v,101wが相互に固定される。
【0091】
また、
図35に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、軸方向から視て互いの端子部材130(130u、130v、130w)が重ならないように周方向に角度を変えて積層されている。なお、同図において、符号130u、130v、130wは、それぞれu相ホルダ101u、v相ホルダ101v、w相ホルダ101wに設けられている端子部材を示し、括弧付きの符号はそれぞれステータ200のコイル線端末204aに接続されない端子部材を示す。具体的に、本実施形態のモータ1は12スロットの構成を採っている。そして、本実施形態では、コイル線端末204aに接続されない3個の端子部材130を除く12個の端子部材130(130u、130v、130w)が周方向に30°間隔で配列されるように、各ホルダ101u、101v、101wが積層されている。なお、上述したモータ1のスロット数は一例であってこれに限定されるものではない。
【0092】
図27や
図36に示すように、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、収容溝106の環状面105aには、周方向に所定間隔で複数の凸部114が形成されている(
図36(a)参照)。また、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、収容溝106の環状面105aとは反対側の環状面105aには、各凸部114に対応する複数の凹部115が周方向に所定間隔で形成されている(
図36(b)参照)。この凸部114及び凹部115は、各ホルダ101u、101v、101wを積層する際の位置決め手段となる。つまり、互いに積層するホルダ101u,101v,101wの一方の凸部114と他方の凹部115とを嵌合させることで、周方向の位置決めをすることができる。さらに、各凸部114と各凹部115とを嵌合させて積層することで、各ホルダ101u、101v、101wの周方向移動を規制することができる。
【0093】
また、
図25や
図27に示すように、上段に積層されるu相ホルダ101uの端子部材130は、そのu相ホルダ101uの外側で連結部134が軸方向下側へ向かって折れ曲がる状態となるように配設されている。一方、中段のv相ホルダ101v及び下段のw相ホルダ101wの端子部材130は、各v相ホルダ101v及びw相ホルダ101wの外側で連結部134が軸方向上側へ向かって折れ曲がる状態となるように配設されている。つまり、本実施形態のバスバーユニット100は、上段のu相ホルダ101uの端子部材130と下段のw相ホルダ101wの端子部材130とにおいて、互いの連結部134が対向して折れ曲がる状態となるように配設されている。これにより、上段のu相ホルダ101uにおいてその端子部材130が上端面から突出することはなく、下段のw相ホルダ101wにおいてその端子部材130が下端面から突出することはない。そのため、バスバーユニット100の高さを低く抑えることができる。
【0094】
また、
図37及び
図38に示すように、バスバーユニット100は、下段のw相ホルダ101wの各フック111を、ステータ200側に形成された上述の突起113と同様の突起205gに引っ掛けることで、ステータ200の軸方向端部に固定される。また、バスバーユニット100は、下段のw相ホルダ101wの各凸部114を、ステータ200の軸方向端部に形成された凹部205hに嵌合させることで位置決めされる。さらに、これら各凸部114と各凹部205hとを嵌合させることで、バスバーユニット100の周方向移動を規制することができる。
【0095】
また、
図24や
図26、
図38、
図39にも示すように、バスバーユニット100は、軸心がステータ200の軸心と同一となる状態で、ステータ200の軸方向端部に取り付けられる。この状態において、各バスバー120は、ステータ200の軸心回りに環状に延びる状態で配設されることとなる。一方、ステータ200において、各コイル線端末204a(24本)は、その軸方向端部から軸方向に突出している。また、各コイル線端末204aは、ステータ200の軸心回りに15°間隔で配列されている。つまり、各コイル線端末204aは、ステータ200の軸心を中心として同一半径の円周上に配列されている。
【0096】
また、上述したコイル線端末204aは、バスバーユニット100の各端子部材130に接続される各相の相端末20aと、中性点用端末20bとに区分され、相端末20aと中性点用端末20bとが交互に配列されている。中性点用端末20bは、後述する中性点用端子部材250aによって中性点用バスバー250と接続されている。この中性点用バスバー250は、ステータ200の軸方向端部におけるバスバーユニット100の外周側にモールド成型された保持部によって保持されている。このように、中性点用バスバー250についてはステータ200の軸方向端部に固定するようにしたため、バスバーユニット100に中性点用のホルダを設けなくてもよい分、バスバーユニット100自体、引いてはモータ1全体の高さを低くすることができる。また、各バスバー120と中性点用バスバー250との絶縁性をより確保することができる。
【0097】
本実施形態において、バスバーユニット100の各端子部材130は、コイル接続部135の軸方向がステータ200の軸方向と同じである。つまり、コイル接続部135の軸方向とコイル線端末204aの突出方向とが同じとなる。このように、本実施形態では、1つの端子部材130において、周方向に延びる環状のバスバー120に接続するバスバー接続部131と、ステータ200の軸方向に延びるコイル線端末204aに接続するコイル接続部135とを備えるようにした。これにより、バスバーユニット100をステータ200の軸方向端部に向かってその軸方向に移動させるだけで、バスバーユニット100の各端子部材130のコイル接続部135を各コイル線端末204aに挿通させることができる。そのため、コイル線端末204aの向きを変えるという作業を行うことなく、バスバーユニット100の端子部材130、引いてはバスバーユニット100自体を簡易に取り付けることが可能となる。よって、バスバーユニット100の組み付け工程の短縮を図り、引いてはモータ1の生産性を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態では、バスバー120と端子部材130とを別体で備え、バスバー120を線材で形成するようにしたので、従来の端子一体型の帯状導体に比べて、材料の歩留まりが向上する。よって、バスバーユニット100並びにモータ1における材料コスト引いては生産コストを低減することができる。
【0099】
さらに、本実施形態では、上述したように端子部材130についても材料歩留まりの高い形状としたため、材料コスト及び生産コストを一層低減することができる。
【0100】
また、本実施形態のバスバー120を絶縁被膜を有しない裸電線で形成するようにしたため、端子部材130との接合方法の選択自由度が高まる。例えば、圧着や溶着の別を問わなくてもよくなる。
【0101】
また、本実施形態のバスバーユニット100は、各バスバー120を個別に収容保持する環状の収容溝106を有する環状体からなる複数のホルダ101u,101v,101wをそなえるようにしたため、各バスバー120同士の絶縁性を確保することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wを互いに同一形状となしたので、生産性がさらに向上する。
【0103】
また、本実施形態では、各ホルダ101u、101v、101wにおいて、互いの収容溝106の環状面105a同士(即ち、収容溝106の開口面同士)が対向する状態を阻止するようにしたため、各バスバー120の絶縁性をより確保することができる。
【0104】
また、本実施形態では、バスバーユニット100の各端子部材130を周方向に等間隔に配置するようにしたため、コイル線端末204aの向きを変えるという作業をなくすことができる。
【0105】
なお、本実施形態の端子部材130は
図40に示す端子部材140であってもよい。つまり、この端子部材140は、1つの板材からなり、バスバー120に接続されるバスバー接続部141と、コイル線端末204aに接続されるコイル接続部145と、バスバー接続部141とコイル接続部145との間に連続形成される連結部144と、を有している。そして、バスバー接続部141は、1つのC型筒部142と、その端面に連続形成される平板部143とからなっている。その他の構成、作用及び効果は
図30に示した端子部材130と同様である。つまり、この端子部材140は、
図30の端子部材130においてC型筒部132を1つ削除するようにしたものである。また、この端子部材140の展開図を
図41に示す。端子部材140は、一枚の板材に対してこの展開図のとおり切断し、その切断したものを曲げ加工することで形成される。この端子部材140についても、同様に、材料の歩留まりが高い形状となっている。
【0106】
また、本実施形態では、各ホルダ101u、101v、101wを互いに同一形状としたが、各バスバー120を絶縁した状態で保持できるのであれば、各ホルダ101u,101v,101wは互いに異なる形状であってもよい。
【0107】
また、本実施形態では、3つのホルダ101u,101v,101wで各バスバー120を個別に保持するようにしたが、1つのホルダで全てのバスバー120を保持するようにしてもよい。
【0108】
また、本実施形態では、ホルダ101u,101v,101wを絶縁材料で形成したが、バスバー120が導電性の線材の外周に絶縁被膜を有するものである場合、ホルダ101u,101v,101wは絶縁材料で形成する必要はない。
【0109】
また、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wはバスバー120全体を収容して保持する環状体としたが、バスバー120が導電性の線材の外周に絶縁被膜を有するものである場合、ホルダはバスバー120をその周方向において部分的に配設されて保持するものとしてもよい。
【0110】
また、端子部材130は、周方向に延びる環状のバスバー120に接続するバスバー接続部131とステータ200の軸方向に延びるコイル線端末204aに接続するコイル接続部135とを有する1つの部材で形成されていればよく、その形状は上述した形状に限定されない。
【0111】
[ステータの構成]
本実施形態のステータ200は、複数の分割ステータ201により、
図23に示すように、円筒状に形成されている。この例では、ステータ200を構成する分割ステータ201の数(分割数)は12個である。すなわち、それぞれの分割ステータ201の中心角は30度である。
図42は、分割ステータ201の斜視図である。また、
図43は、分割ステータ201の縦断面図である。
図43に示すように、分割ステータ201は、分割コア202、インシュレータ203、コイル204、及び樹脂層205を備えている。
【0112】
なお、以下の説明において、ステータ200や分割ステータ201の軸方向、あるいは縦方向とはシャフト6の軸心の方向をいい、横方向とはシャフト6の軸心に垂直な方向をいう。また、内周側とはシャフト6により近い側をいい、外周側とは、シャフト6からより遠い側をいう。
【0113】
〈分割コア〉
図44は、分割コア202の斜視図である。分割コア202は、複数の電磁鋼板を積層して軸方向に延びるように形成されている。そして、
図44から分かるように、分割コア202の横断面は略T字状をしている。
【0114】
分割コア202は、より詳しくは、ティース部202a、コアバック部202b、及び内ヨーク部202cを備えている。コアバック部202bは、ステータ200を構成した際に該ステータ200の周方向に延びる部分である。コアバック部202bの2つの周方向側端面壁202eのなす角が分割コア202の中心角であり、この例では30度である。また、ティース部202aは、コアバック部202bからステータ200の径方向に向かって延びる部分である。また、内ヨーク部202cは、ティース部202aの内周側に連なってコアバック部202bよりも小さく周方向に延びる部分である。ティース部202aの両側における内ヨーク部202c及びコアバック部202bの間の空間が、それぞれ、コイル204を収容するスロット202dである。
【0115】
〈インシュレータ(絶縁層)〉
インシュレータ203は、分割コア202とコイル204とを絶縁する絶縁層として、後述するように、コイル204とティース部202aの間に設けてある。すなわち、インシュレータ203は、本発明の絶縁層の一例である。そのため、インシュレータ203は、絶縁性の部材を用いて形成してある。この例では、絶縁性の部材として熱可塑性の樹脂を採用している。
【0116】
図45は、インシュレータ203の構造を示す斜視図である。このインシュレータ203は、具体的には、
図45に示すように、本体部203a、端面壁203b、及び端面壁203cを有している。本体部203aは、略U字状の形状をしていて、ティース部202aに嵌め込まれる。
図46は、分割コア202にインシュレータ203を取り付けた状態を示す斜視図である。この分割ステータ201では、2つのインシュレータ203が用いられ、一方のインシュレータ203は、本体部203aが分割コア202の軸方向の一方の端部側(出力側端部)から分割コア202のティース部202aを覆うように嵌めこまれている。また、もう一方のインシュレータ203は、分割コア202の軸方向のもう一方の端部から、分割コア202に嵌め込まれて、本体部203aがティース部202aを覆っている。
【0117】
また、端面壁203b,203cは、インシュレータ203を分割コア202に取り付けた状態で、分割コア202の軸方向側端面壁よりも突出している。この端面壁203cは、インシュレータ203を分割コア202に取り付けた状態で、分割コア202の内周側面202fよりも外周側に位置している。また、端面壁203cは、分割コア202側における軸方向の端部に段差部203eが形成されている(
図45を参照)。
【0118】
また、インシュレータ203は、分割コア202に取り付けた状態で、その周方向側の端面壁203dが、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、ティース部202a側(周方向内側)に、僅かに後退した位置となるようになっている。この例では、イン
シュレータ203の端面壁203dと分割コア202の周方向側端面壁202eとは、概ね0.1mmの段差がある。
【0119】
〈コイル〉
コイル204は、エナメル被覆銅線等の電線(銅線)が、インシュレータ203を介して分割コア202に整列巻きされて形成されている。このとき、コイル204は、インシュレータ203の端面壁203dから膨出しないように巻回される。
図47は、コイル204を巻回した分割コア202における、スロット202d部分の横断面図である。
図47では、同図の下側がティース部202aであり、同図に示した矢印の順に銅線を巻回している。また、
図47では、コイル204の各段の横に示した数字(8・7…2・1等)は、巻き数を示している。例えば、コイル204の1段目(
図47の最下方側)は、1回目から8回目まで巻回されている。巻回数はモータ1の定格に応じて設定される。このように、コイル204を整列巻きすることで、コイル204が、分割コア202の周方向端面から膨出しないようにすることが可能になる。この例では、インシュレータ203の周方向の端面壁203dのライン(
図47で2点鎖線で示したライン)から、概ね0.1mmのクリアランスを確保している。
【0120】
図48は、インシュレータ203を取り付けた分割コア202にコイル204を巻回した状態を示す斜視図である。
図48に示すように、コイル204は、一対のコイル線端末204aを有している。それぞれのコイル線端末204aは、前記出力側端部側(すなわち、分割ステータ201の軸方向側)に、互いに平行して延びている。一対のコイル線端末204aによって形成される中心角(以下、ピッチ角ともいう)は、分割コア202の中心角の半分の大きさ(この例では15度)である。本実施形態では、これらのコイル線端末204aは、この中心角となるように、樹脂層205によって固定される。これにより、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てた状態で、コイル線端末204aは、15度の等間隔で配置されることになる。なお、インシュレータ203を取り付けた分割コア202にコイル204を巻回した状態を、以下では説明の便宜上、サブアセンブリ206とよぶ。
【0121】
〈樹脂層〉
樹脂層205は、一対のコイル線端末204aを除いたコイル204全体を封止している。このようにコイル204全体を覆うことで、樹脂層205は、他の分割ステータ201との短絡(相間の短絡)の防止する機能を発揮することができる。また、コイル204の励磁振動を低減する機能も発揮できる。
【0122】
この樹脂層205は、サブアセンブリ206に、モールドによって形成される。この例では樹脂層205には、インシュレータ203と同様の熱可塑性の樹脂を採用している。勿論、樹脂層205には、一般的にモータに使用される熱硬化性の樹脂を用いてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、樹脂層205の周方向側端面壁205dは、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、周方向内側にある。また、樹脂層205は、インシュレータ203の端面壁203c上および分割コア202の内周側面202f上を避けて設けられている。
【0124】
また、樹脂層205は、前記出力側端部側の端面に、グランド側(中性点)の配線部材として機能する中性点用バスバー250を収容可能な溝205aが形成されている。
図49は、分割ステータ201の溝205aを示す斜視図である。この溝205aは、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てると、連続した円環状の溝になる(
図23を参照)。溝205a付近の断面は、
図38示すようになる。
図38では、中性点用バスバー250を収容した状態を示している。この例では、中性点用バスバー250は、円環状又はC字状の配線部材である。この中性点用バスバー250には、前記分割数と同じ12個の中性点用端子部材250aが取り付けられている。それぞれの中性点用端子部材250aは、バスバーユニット100で用いられる端子部材130と同様の略T字状をしている。また、それぞれの中性点用端子部材250aは、コアバックの中心角で、中性点用バスバー250に対してカシメなどによって固定されている。
【0125】
そして、これらの中性点用端子部材250aは、分割ステータ201の一方のコイル線端末204aに対応するように溝205a内に収容され、対応したコイル線端末204aに取り付けられる。
図50は、中性点用端子部材250aをコイル線端末204aに取り付けた状態を説明する図である。
図50では、説明の便宜のため、中性点用バスバー250の図示を省略してある。
図50に示すように、それぞれの中性点用端子部材250aは、対応した分割ステータ201の一方のコイル線端末204aが軸方向から挿入されて、コイル線端末204aと電気的に接続される。
【0126】
また、溝205aには、内周側の壁面に、複数の突部205bが形成されている(
図49を参照)。これらの突部205bは、中性点用端子部材250aや中性点用バスバー250の抜け止めのために設けてある。
図38に示すように、中性点用端子部材250aは、突部205bと溝205aの底部の間に保持されている。この突部205bにより、中性点用端子部材250a等が溝205aから外れるのが防止され、中性点用端子部材250aとコイル線端末204aと間の電気的な接続をより確実にすることが可能になる。
【0127】
また、樹脂層205には、前記出力側端部側にバスバーユニット100を搭載する平面部205eが形成されている(
図42を参照)。さらに樹脂層205には、前記出力側端部の内周側に、凹部205fが形成されている(
図43や
図38を参照)。本実施形態のステータ200は、12個の分割ステータ201で構成されているので、ステータ200では、凹部205fは、30度の等間隔で配置されることになる。この凹部205fの内部には、ホルダ101wのフック111と機械的に結合する突起205gが形成されている。この凹部205fと突起205gとで、本発明の固定部の一例を形成しているのである。
【0128】
〈樹脂層のモールド〉
図51は、樹脂層205のモールドに用いる金型260の一部を示す斜視図である。また、
図52は、金型260の断面図である。
図52では、サブアセンブリ206を金型260内にセットした状態を示している。この金型260は、固定側型部260a、コイル線端末側型部260b、可動側型部260c、及びスライド部260dを備えている。
【0129】
コイル線端末側型部260bは、一対のコイル線端末204aの位置を規定するようになっている。具体的には、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てた状態でコイル線端末204aが15度の等間隔(ピッチ角=15度)で配置されるように、このコイル線端末側型部260bには、コイル線端末204aを挿入する穴260eが所定間隔で2箇所設けられている。コイル線端末204aとコイル線端末側型部260b(穴260e)との隙間から、注入した樹脂が漏れないように、このコイル線端末側型部260bには所定のシール構造を設けてある。
【0130】
スライド部260dは、樹脂が注入される前に、分割コア202の軸方向他方側(出力側端部の反対側)の端部までスライドして当接する。
【0131】
つぎに、インシュレータ203の段差部203eについて説明する。固定側型部260aは、同一のものを何度も使うので寸法は一定であるのに対して、分割コア202の軸方向寸法には、個体差がある。分割コア202の軸方向寸法が小さいときは、固定側型部2
60a、分割コア202の軸方向他方側端部、インシュレータ203の端面壁203cによって余分な空間が形成される。その空間に樹脂層205を構成する樹脂が流れ込む。この空間に流れ込んだ樹脂の厚みが非常に薄いとき、ステータ内周面からロータ側へ樹脂が剥がれる恐れがある。そこで、インシュレータ203の段差部203eを形成する。この段差部203eには、モールドにより樹脂が流れ込むことになる。したがって、ある程度の厚みがある樹脂層205を形成することができる。
【0132】
固定側型部260aは、インシュレータ203の端面壁203cおよび分割コア202の内周側面202に沿うように形成されている。これにより、樹脂層205は、端面壁203c上および分割コア202の内周側面202f上を避けて設けられることになる。また、固定側型部260aは、段差部203eに回り込んだ樹脂の面205c(
図50参照)と、分割コア202の内周側面202fとが面一となるように形成されている。
【0133】
また、固定側型部260aは、インシュレータ203の両側の端面壁203dに接するようになっている。さらに、固定側型部260aは、分割コア202の両側の周方向側端面壁202eにも接するようになっている。すなわち、樹脂層205のモールドでは、これらの壁面203d,202eを基準としてモールドするのである。このように、固定側型部260aが分割コア202の両側の周方向側端面壁202eに接していると、分割コア202の周方向側端面壁202e上には樹脂層205が形成されないことになる。
【0134】
前記のように、分割コア202の周方向側端面壁202eとインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは段差がある。固定側型部260aにも、この段差に対応した段差(概ね0.1mmの段差)が設けてある。そのため、この金型260でモールドを行うと、樹脂層205の周方向側端面壁205dと、分割コア202の周方向側端面壁202eにも、同程度の段差(概ね0.1mm)ができる。すなわち、樹脂層205の周方向側端面壁205dは、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、周方向内側に形成される。したがって、ステータ200では、分割コア202の周方向側端面壁202e同士は接触するが、樹脂層205同士は周方向側では接触しないのである。
【0135】
図53は、互いに隣接した分割ステータ201における、コイル204付近の横断面の拡大図である。既述したように、分割コア202の周方向側端面壁202eとインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは概ね0.1mmの段差があるので、
図53に示すように、互いに隣接した分割ステータ201間で0.2mm以上の空気絶縁層の確保が可能になる。そして、コイル204とインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは、概ね0.1mmの距離があるので、隣接する銅線間の距離を0.4mm以上確保できる。
【0136】
《分割ステータによる効果》
以上のように本実施形態によれば、ステータ200において、分割コア202の周方向側端面壁202e同士が接触し、樹脂層205同士は周方向側では接触しない。それゆえ、本実施形態では、分割コア202の精度でステータ200を構成することができる。したがって、この分割ステータ201でステータ200を形成すれば、樹脂層同士が周方向側で接触する分割ステータを用いた場合と比べ、ステータの内径真円度をより向上させることが可能になる。ステータの内径真円度はモータ1の特性に影響があるので、本実施形態ではモータ1の特性改善も可能になる。
【0137】
また、インシュレータ203の端面壁203cには段差部203eが設けられているので、この段差部203eの部分で、分割コア202の軸方向寸法の累積誤差を吸収することが可能になる。
【0138】
また、コイル線端末側型部260bで一対のコイル線端末204aの位置を規定した状態で樹脂層205をモールドするので、分割ステータ201におけるコイル線端末204aのピッチ角が所定の精度で定まる。これにより、同一分割ステータ201内におけるコイル線端末204a同士の短絡(いわゆる相内短絡)を防止することが可能になる。また、バスバーユニット100の装着も容易になる。このように、バスバーユニット100の装着が容易になれば、自動機による組み立ても可能になる。また、コイル線端末204aが位置決めされているので、無理な配線の引き回しをなくすことが可能になり、その結果、配線の結合部における応力残渣の低減、延いては電気的結合の信頼性の向上も可能になる。
【0139】
また、凹部205fでバスバーユニット100と機械的に結合しているので、バスバーユニット100の機械的剛性、耐振動・耐衝撃性能の向上も可能になる。
【0140】
また、バスバーユニット100とは別に中性点用バスバー250を収容可能な溝205aを設けたことにより、各相の配線とグランド側の配線とを1つのバスバーユニットで構成するよりもモータ1の全長を抑えることが可能になる。これにより、コストの低減も可能になる。
【0141】
また、インシュレータ203と樹脂層205でコイル204を挟み込むように樹脂層205を充填しているので、コイル204の励磁振動を低減することが可能になる。
【0142】
《分割ステータのその他の実施形態》
なお、前記絶縁層は、インシュレータ203の他に、塗装(例えば電着塗装)により形成することも可能である。
【0143】
また、中性点用バスバー250は、板材を円環状あるいはC字状に打ち抜いて製造してもよい。この場合には、中性点用端子部材250aは、中性点用バスバー250を打ち抜く際に、中性点用バスバー250と一体的に形成してもよい。
【0144】
また、ステータ200の分割数は例示である。
【0145】
また、一対のコイル線端末204aによって形成される中心角の大きさは例示である。すなわち、前記のように、分割コア202の中心角の半分の大きさでなくてもよい。
【0146】
[ロータ300の構成]
図54や
図55に示すように、本実施形態のロータ300は、2ステップスキュー構造のロータであり、ロータコア310やマグネット320、スペーサ330、ロータカバー340などで構成されている。ロータコア310やマグネット320、スペーサ330は、接着剤を使用することなく、ロータカバー340によって一体に固定されている。なお、
図55に示しているのは鍔部341を形成する前のロータカバー340(ベース340a)である。
【0147】
本実施形態のロータ300には、2個のロータコア310が備えられている。各ロータコア310は、断面が略8角形の柱状体からなり、その中心には、シャフト6が挿入され、そして回転軸Sを一致させて固定される貫通孔311が形成されている。ロータコア310は、複数の金属板を回転軸S方向に積層して一体化することにより形成されている。
【0148】
本実施形態のロータ300は8極(ポール)のロータであり、各ロータコア310には、マグネット320が8個ずつ備えられている(マグネット群)。各マグネット320は、帯板状に形成されていて、断面劣弧状に突出する曲突面321を有している。各マグネ
ット群のマグネット320は、その曲突面321を径方向外側に臨ませ、貫通孔311と平行に延びるようにして、ロータコア310の外周面に一定の隙間を隔てながら周方向に等間隔で配置される。これらマグネット320は、それぞれ径方向にS極とN極とに着磁されていて、径方向外側においてS極とN極とが周方向に交互に並んでいる。
【0149】
2つあるロータコア310及びマグネット群(ロータアセンブリ301ともいう)は、回転軸S方向に配列される。これらロータアセンブリ301は、周方向に所定のステップ角ずらした状態でロータカバー340の内部に装着される。そうすることで、ロータアセンブリ301ごとに8個のマグネット320がそれぞれ所定のステップ角ずつ周方向にずれた位置に配置され、ステップスキュー構造が構成されている。
【0150】
本実施形態のロータ300には、スペーサ330が2つ備えられている。各スペーサ330は、ロータカバー340の内周面に沿う円環形状をした板状の部材である。スペーサ330の外径はロータカバー340の内径よりも僅かに小さく形成されている。そして、スペーサ330の内径は、貫通孔311の外径よりは大きく、ロータコア310の端面の一部を覆うように少なくともロータコア310の外径よりも小さく形成されている。なお、スペーサ330の素材は非磁性体であれば金属でも樹脂でもよい。
【0151】
スペーサ330は、ロータカバー340に装着された各ロータアセンブリ301の端面とロータカバー340の端部を変形して形成される鍔部341との間に介在される。スペーサ330は、鍔部341と協働してこれらロータアセンブリ301の軸方向への動きを規制する機能を有している。また、詳細は後述するが、鍔部341の加工を容易にするとともに、その際におけるマグネット320やロータコア310の損傷を防ぐ機能も有している。
【0152】
ロータカバー340は、円筒形状をした金属加工品であり、円筒状の周壁342と、その各端に開口する開口344とを有している。ロータカバー340は、シームレスな円筒形状をしたベース340aをプレス加工等して形成される。各開口344を通じてその内部にロータアセンブリ301やスペーサ330がそれぞれ装着される。ロータアセンブリ301はロータカバー340に圧入される。ロータカバー340は、これら各部材を保護するとともに接着剤を使用せずに所定位置に位置決めして一体に保持する機能を有している。
【0153】
ロータカバー340は、鍔部341が形成されている点を除けばベース340aと実質的に同じである。ロータカバー340は、最終的にベース340aの開口344の周りの部分(加工端345ともいう)を変形させ、径方向内側に張り出す鍔部341を形成することによって完成する。従って、ベース340aの軸方向の長さ寸法は、ロータコア310やマグネット320と比べて大きく設計されている。
【0154】
ロータカバー340の周壁342の外面には、回転軸方向に隣接する2つのロータアセンブリ301の間に対応して径方向内側に窪む区画凹部350が形成されている。本実施形態の区画凹部350は、ロータカバーにおける回転軸方向の中央部位を周方向に延びる直線状の溝として形成されている。この区画凹部350によって2つのロータアセンブリ301は接することなく保持される。
【0155】
なお、ロータアセンブリ301の接触を防ぐことができればよいので、区画凹部350によって僅かでも隙間が形成できればよいが、近接し過ぎると高速回転時に渦電流損が発生するおそれがあるため、2つのロータアセンブリ301が1mm以上離れるように区画凹部350を形成するのが好ましい。
【0156】
ロータカバー340の周壁342の外面には、各マグネット320に対応して回転軸方向に延びる複数のリセス346が凹み形成されている。各リセス346は、ロータカバー340における区画凹部350の両側のそれぞれの部分において、両端部を除く部分に形成されている。
【0157】
各リセス346は、開口344側の端部に、ロータカバー340の外周面から径方向内側へ略垂直に入り込む第1端壁346aを有している。各リセス346の第1端壁346aは、周方向にほぼ直線状に並んでいる。一方、各リセス346の区画凹部350側の端部は、先窄まり形状を呈しており、ロータカバー340の外周面から径方向内側へ傾斜して入り込む第2端壁346bを有している。なお、第2端壁346bの形状はリセス346形成時の無理抜きを回避する結果として生じる形状である。
【0158】
図56に示すように、これらリセス346により、ロータカバー340には、その内側に装着される各マグネット320の曲突面321に対応して径方向外側に突出する断面劣弧状の支持領域347が複数形成されている。すなわち、これら各支持領域347に曲突面321が対向するように各マグネット320は配置される。そして、各支持領域347に各マグネット320が接することにより、各マグネット320は周方向への動きが規制され、所定位置に保持される。
【0159】
周方向に隣接する2つの支持領域347の間の部分には、これら支持領域347に連続するとともに、回転軸S方向に延びて線状に窪む凹部348が形成されている。各凹部348は、支持領域347とは逆に、径方向内側に突出する劣弧状の断面を有している。これら凹部348は、隣接する2つのマグネット320の間の隙間に入り込む小さな窪みであり、各リセス346における周方向の中央部分に形成され、第1端壁346aから第2端壁346bの近傍にわたって延びている。これら凹部348の存在により、周方向に隣接するマグネット320どうしの接触を安定して阻止できる。
【0160】
各支持領域347は、各曲突面321と安定して面接触し、マグネット320を適正に保持できるように工夫されている。
【0161】
すなわち、
図57に示すように、支持領域347の内面が曲突面321よりも小さい曲率半径で形成され、支持領域347の内面における周方向の両端部の内側に、曲突面321における周方向の両端部が位置するように寸法設計されている。
【0162】
同図の(a)に示すように、支持領域347に外力が作用していない状態では、支持領域347は曲突面321よりも小さい曲率半径で形成されているので、支持領域347の内面に曲突面321を接触させたときにはその周方向の両端部2箇所が接触し、その中間部分は接触しない。そして、ベース340aにロータコア310等を装着した後には、同図の(b)に示すように、ベース340aの径を拡げる方向に力が作用するため、支持領域347における周方向の両端部が逆向きに引っ張られる。その結果、マグネット320に回転軸側に押し込む力が作用し、支持領域347の内面が曲突面321の略全面と面接触する。
【0163】
そして、支持領域347が曲突面321と密着して同じ曲率半径となった場合に、その弧の長さが曲突面321よりも支持領域347の方が大きくなるように設定されているため、安定して曲突面321は支持領域347と面接触させることができる。その結果、マグネット320は周方向の所定位置に保持される。
【0164】
図58や
図59を参照して、支持領域347の曲率半径等を導出する関係式について説明する。外力が作用していない状態での支持領域347の曲率半径(mm)をRaとし、
その中心角(ラジアン)をαとする。そして、同様に、凹部348の曲率半径をRbとし、その中心角をβとする。
【0165】
ロータカバー340にマグネット320等が装着された変形状態での支持領域347の曲率半径をRa’とし、その中心角をα’とする。同じく変形状態での凹部348の曲率半径をRb’とし、その中心角をβ’とする。なお、Ra’は曲突面321の曲率半径と一致する。
【0166】
ロータカバー340にマグネット320等を装着した状態でのロータカバー340の最大外径(mm)をRとする。そして、ロータ300の1ポール当たりの中心角をθ、ロータカバー340の厚み(mm)をt、ロータカバー340の周方向の長さ(mm)をL、ロータカバー340の縦弾性係数をEとする。
【0167】
この条件の下でロータカバー340を構成することにより、次の幾何学的な関係式が成立する。
【0170】
更に、ロータカバー340にマグネット320等を装着することで、支持領域347や凹部348の周方向の端部には引張り力Fが発生し、これにより支持領域347や凹部348が引き伸ばされるため、次の関係式が成立する。
【0172】
そして、支持領域347に発生した引張り力Fにより、マグネット320に対しては次の関係式が示す力N(支持力)が径方向内側に作用する。
【0174】
従って、これら関係式に基づいて求められる支持力Nを、マグネット320に加わる最大の遠心力より大きくすることでマグネット320を適正に保持することができる。
【0175】
具体的には、各マグネット320の質量をMmとし、貫通孔311の中心からマグネット320の重心までの距離をRmとし、設計に基づくロータ300の最大角速度をSとしたとき、次の関係式を満たすように設計すればよい。
【0177】
[ロータ300の製造方法]
次に、本実施形態のロータ300の製造方法について説明する。
【0178】
このロータ300は、上述したように、接着剤を使用せず、マグネット320等をロータカバー340に装着して一体化する。具体的には、その製造方法は、ロータカバー340のベース340aを形成する工程(ベース形成工程)や、ベース340aに区画凹部350を形成する工程(区画凹部形成工程)、ベース340aに支持領域347を形成する工程(支持領域形成工程)、ロータコア310やマグネット320をベース340aに装着する工程(装着工程)、ベース340aに鍔部341を形成し、ロータカバー340を完成させる工程(鍔部形成工程)などの工程で構成されている。
【0179】
(ベース形成工程)
図60に示すように、本工程では、ロータカバー340のベース340a(初期状態)を形成する。具体的には、まず、金属板をプレス加工することにより、同図の(a)に示すような、シームレスの有底円筒状のプレス加工品を形成する。金属板の厚みに関しては、耐久性およびモータ性能の観点から、0.2mm〜0.3mmが好ましい。
【0180】
そして、同図の(b)に示すように、その底を切り取って同図の(c)に示すような形態とした後、不要なフランジ部分を切り取る。最終的に同図の(d)に示すような、両端に開口を有するシームレスの円筒体を形成し、これをロータカバー340のベース340a(初期状態)とする。
【0181】
これ以外にも、例えば、
図61に示すように、底部に曲面を有するシームレスの有底円筒状のプレス加工品から形成することもできる。この場合、例えば、底面の一部を切り抜いた後、曲面部分をプレス加工により変形させて筒状に加工し、不要なフランジ部分を切り取って形成すればよい。
【0182】
(区画凹部形成工程)
本工程では、ベース340aの周壁342を径方向外側から凹ませることにより、ベース340aの軸方向の中間部分に区画凹部350を形成する。
【0183】
図62に示すように、具体的には、まず、所定の治具380における半割状の一方の部分に差し込んでベース340aを支持する。半割状の他方の部分を連結した治具の外周面には区画凹部350に対応した窪み380aが形成される。この窪み380aに対し、ベース340aの周壁342の外方から径方向内側に向かって先端に突起を有するプレス具381を押し付け、周壁342の所定部位に区画凹部350を形成する。
【0184】
(支持領域形成工程)
本工程では、ベース340aの周壁342を径方向外側から凹ませ、複数のリセス346を形成することにより複数の支持領域347を複数形成する。また、本実施形態では、支持領域347と同時に凹部348も形成する。
【0185】
更に、本工程では、区画凹部350によってベースが軸方向に2分される一方の部分に、複数の支持領域347を形成する第1の支持領域形成工程と、他方の部分に、周方向に所定のステップ角ずらした状態で複数の支持領域347を形成する第2の支持領域形成工程とで構成されている。
【0186】
図63〜
図66に示すように、本工程では、円柱状の治具360や、片側のロータアセンブリ301のリセス346に対応して設けられる8個のプレスバー361(押圧体)などが用いられる。治具360は、ベース340aの半分程度の軸方向における長さと、ベース340aの内径よりも僅かに小さい外径とを有している。治具360の外周面には、リセス346の断面形状、換言すれば、支持領域347及び凹部348の断面形状に対応して窪み部362が8箇所形成されている。これら窪み部362のそれぞれは、治具360の外周面における軸方向の中間部位から突端まで延びており、径方向に拡がる端面で塞がれた閉塞端362aと開放された開放端362bとを有している。
【0187】
各プレスバー361は、リセス346の断面形状に対応して突出するプレス面を有している。各プレスバー361は、そのプレス面361aを治具360の窪み部362に向けた状態で、治具360の周りに配置され、径方向に進退可能に設けられている。各プレス面361aの軸方向の一端は、窪み部362の閉塞端362aに合わせて位置決めされ、他端は治具360の突端に至る途中の部位に位置するように形成されている。
【0188】
本工程では、まず、
図63に示すように、ベース340aを一方の開口344から治具360の突端(装着端)に被せ付ける。そして、
図64に示すように、他方の開口344から支持用の治具360aを差し込んだ後、ベース340aの外周面に各プレスバー361を押し付け、その周壁342の所定部位をリセス346の形状に変形させる(第1の支持領域形成工程)。
【0189】
窪み部362の突端側は開放端362bとなっているので、無理抜きしなくても、各プレスバー361が退いた後にベース340aを治具360から引き抜けば、容易に治具360からベース340aを取り外すことができる。
【0190】
次に、
図66に示すように、ベース340aを逆向きにし、周方向に所定のステップ角ずらして再度、ベース340aを他方の開口344から治具360の突端に被せ付け、先と同様にしてベース340aの周壁342の所定部位をリセス346の形状に変形させる(第2の支持領域形成工程)。
【0191】
そうすることで、
図54等に示したような、複数のリセス346、つまりは支持領域347を形成することができる。
【0192】
(装着工程)
本工程では、支持領域形成工程の後、ロータコア310やマグネット320、スペーサ330をベース340aに装着して一体に仮組する。
【0193】
まず、ベース340aの一方にロータアセンブリ301を装着する。例えば、支持具を用いて、ロータコア310の外周面の所定位置に各マグネット320を配置した状態で支持する。そうして、これらの軸方向の端部からベース340aを被せ付け、ロータコア310どうしが突き当たるまで、そして、各マグネット320が区画凹部350に突き当たるまで圧入する。そのとき、支持領域347の内面における周方向の両端部の内側に、曲突面321における周方向の両端部が位置するように位置合わせする。
【0194】
そうすれば、曲突面321と支持領域347とが面接触し、各マグネット320は周方向に安定して保持される。また、隣接するマグネット320間に凹部348が入り込むので、マグネット320どうしの接触を避けることができる。
【0195】
同様にして、ベース340aの他方に所定のステップ角ずらした状態でロータアセンブリ301を装着する。
【0196】
最後に、ベース340aに装着された各ロータアセンブリ301の開口344に臨む端面の上に、スペーサ330を入れ込む。ロータコア310、マグネット320、スペーサ330が適正に装着されたベース340aの開口344側の端部は、スペーサ330の端面よりも上方に突出している(加工端345)。
【0197】
(鍔部形成工程)
本工程では、装着工程の後、ベース340aの加工端345を変形させて鍔部341を形成し、ロータカバー340の内部にマグネット320等を封止する。
【0198】
図67〜
図69を参照して、本工程を説明する。本工程では、これら図に示すように、専用の旋盤装置370を用いて鍔部341を形成する。旋盤装置370には、回転軸S周りに回転制御可能なチャック371や、チャック371と回転軸S方向に対向して配置され、スペーサ330を支持しながらチャック371と同期して回転するテールストック装置372などが備えられている。
【0199】
また、この旋盤装置370には、先端に回転自在な小径ローラ(カムフォロア373)が設置され、チャック371等の回転軸Sに対し、その径方向に変位制御可能で、少なくとも回転軸Sとこれに直交する軸との間の範囲で傾動変位制御可能な圧着装置374が備えられている。更に、加工時の基準位置を探るタッチプローブ375も備えられている。その他、これら各装置を統括的に制御する制御装置等も備えられていて(図示せず)、鍔部341を形成する一連の加工処理は自動的に実行できるようになっている。
【0200】
本工程では、まず、チャック371にロータコア310等を装着したベース340aをその一方の開口344側を外方に向けて支持させる。このとき、チャック371の回転軸Sとベース340aの回転軸Sは一致する。そして、旋盤装置370を作動させると、
図67に示すように、タッチプローブ375が駆動され、タッチプローブ375がスペーサ330の端面に接触することにより、加工の基準となる基準面が設定される。なお、基準面に基づいて加工を行うことで部品間の寸法のばらつきに対応することができる。
【0201】
図68に示すように、設定された基準面に基づいてテールストック装置372が作動し、テールストック装置372がスペーサ330を適正にチャック371側に押し付けることにより、ベース340aは旋盤装置370に支持される。そして、チャック371やテールストック装置372とともにベース340aは回転軸S周りに所定の回転数で回転する。
【0202】
図69に示すように、回転しているベース340aの加工端345にカムフォロア373を押し付ける。そして、
図68に示すように、カムフォロア373を段階的に傾動させることで、加工端345を径方向内側に変形させ、鍔部341を形成する。鍔部341を形成することにより、スペーサ330は鍔部341とロータコア310の端部との間に挟み込まれる。
【0203】
このとき、カムフォロア373が適宜回転することにより、加工端345との間に過度な摩擦力(アグレッシブ摩耗)や偏った力の発生が抑制される。また、スペーサ330はマグネット320やロータコア310の端部の損傷を防ぐとともに、リセス346の影響を受けずに加工端345を円形に保持して鍔部341の成形を容易にする機能を果たす。
【0204】
そうすることで、径方向に平坦に拡がる仕上がりの綺麗な鍔部341が形成される。鍔部341はスペーサ330に密着し、その動きを規制する。
【0205】
鍔部341の周壁342からの突出寸法は、1mm以上に設定するのが好ましい。1mm以上であれば、波打つこともなく、平坦な鍔部341を安定して形成することができ、スペーサ330を安定して固定することができる。なお、鍔部341は、全周にわたって均等に形成する必要はなく、部分的に切欠が形成されていてもよい。
【0206】
その後、ベース340aを逆向きに設置して同様に処理を行い、他方の加工端345を変形させて鍔部341を形成する。
【0207】
これら鍔部341の形成により、ロータカバー340が完成する。鍔部341やスペーサ330、区画凹部350の協働により、その内部に装着されたロータコア310やマグネット320は、回転軸方向への動きが規制され、所定位置に保持される。このように、本発明によれば、接着剤を一切使用することなくロータ300を形成することができるので、生産性の向上や製造コストの削減を実現することができる。また、接着剤という介在物を用いないこと、および周方向において等間隔にマグネットが配置されることにより、ロータのインバランス量が改善できる。
【0208】
なお、本発明にかかるロータ300等は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0209】
例えば、ロータコア310の断面形状は8角形に限らない。円形やその他の多角形状等、配置されるマグネット320の数や形状に応じて適宜変更できる。
【0210】
ロータコア310は1つにして、マグネットをその回転軸方向に複数配列してもよい。
【0211】
支持領域形成工程の後に区画凹部形成工程を行ってもよい。また、区画凹部は、マグネットを軸方向に保持できるのであれば、周方向全域に設けるだけでなく、周方向に部分的に形成してもよい。
【0212】
(その他)
第1実施形態のモータ1Aのステータ12等と、第2実施形態のモータ1のステータ200等とでは、基本的な構成は共通している。従って、第2実施形態の説明にモータ1Aの構成の説明が含まれる場合がある。逆に、第1実施形態の説明にモータ1の構成の説明が含まれる場合もある。更に、モータ1Aの構成とモータ1の構成とを適宜組み合わせてもよい。