特許第5740964号(P5740964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5740964回転速度検出器及びこれを備えた車輪用軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5740964
(24)【登録日】2015年5月15日
(45)【発行日】2015年7月1日
(54)【発明の名称】回転速度検出器及びこれを備えた車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/488 20060101AFI20150611BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20150611BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20150611BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20150611BHJP
【FI】
   G01P3/488 F
   F16C19/18
   F16C41/00
   F16C33/78 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-284619(P2010-284619)
(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公開番号】特開2012-132770(P2012-132770A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−225931(JP,A)
【文献】 特開平09−263221(JP,A)
【文献】 特開2009−053137(JP,A)
【文献】 特開2005−291478(JP,A)
【文献】 特開2001−336525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/487−3/488
F16C 19/18,41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受の外方部材に固定される円環状のセンサ取付部材と、
前記センサ取付部材に取り付けられ、車軸の回転速度を検出するためのセンサ素子、及び前記センサ素子に接続する外部接続用の出力線を有する回転速度センサとを備え、
前記回転速度センサは、前記出力線が前記センサ取付部材の軸線と直交する仮想面に沿って引き出され、
前記センサ取付部材は、各口径を互いに異にする複数の胴部、及び前記複数の胴部のうち少なくとも一つの胴部を貫通する貫通窓を有する段状の円環部材によって形成され、かつその円周方向一方側に前記回転速度センサを位置決めする位置決め片を有し、前記位置決め片が前記複数の胴部の一部を周方向に切り起こし形成することにより設けられ、
前記回転速度センサは、前記センサ素子を樹脂封止してなるパッケージを含み、前記パッケージに前記貫通窓の開口端縁を挿入させるスリットが設けられ、かつ前記位置決め片を挿通するパッケージ取付部材を結合させる結合部材が前記パッケージに埋設されている
回転速度検出器。
【請求項2】
前記回転速度センサは、前記センサ取付部材の径方向内側から前記貫通窓の開口端縁を前記スリットに挿入させて取り付けられている請求項に記載の回転速度検出器。
【請求項3】
前記回転速度センサは、前記センサ取付部材の径方向外側から前記貫通窓の開口端縁を前記スリットに挿入させて取り付けられている請求項に記載の回転速度検出器。
【請求項4】
車軸と共に回転する内方部材、車体側に固定される外方部材、及び前記外方部材と前記内方部材との間を転動する複数の転動体を有する軸受と、
前記軸受の軸線上に配置された請求項1乃至のいずれか1項に記載の回転速度検出器と
を備えた車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転速度検出器及びこれを備えた車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車輪用軸受装置には、中心軸線の回りに回転可能な内方部材と、この内方部材の外周囲に配置された外方部材と、この外方部材と内方部材との間に介在する複列の転動体と、これら複列の転動体のうち車両インナ側の転動体に対向するパルサリングと、このパルサリングと共にドライブシャフトの回転速度を検出するABSセンサ(Anti-Lock Brake System)とを備えたものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
内方部材は、ハブ輪及び内輪からなり、中心軸線上に回転可能に配置されている。ハブ輪は、車輪取付用のフランジを外周面に有し、車輪取付用フランジを介して車輪に取り付けられている。内輪は、複列の転動体を転動させる内側軌道面を外周面に有し、ハブ輪の外周面に取り付けられている。
【0004】
外方部材は、車体取付用のフランジを外周面に、また複列の転動体を転動させる外側軌道面を内周面にそれぞれ有し、車体側に懸架装置のナックルを介して取り付けられている。そして、外方部材は、車輪用軸受装置の外輪として機能するように構成されている。
【0005】
複列の転動体は、ボールからなり、外方部材の外側軌道面と内輪の内側軌道面との間に介在して転動可能に配置されている。
【0006】
パルサリングは、円周方向に沿ってN極とS極とが着磁された磁石からなり、内輪の外周面に取り付けられている。
【0007】
ABSセンサは、出力線(ハーネス)を接続する磁気検出用のIC(Integrated Circuit)チップ、及びこのICチップを樹脂封止するパッケージを有し、外輪の外周面に円環状のセンサ取付部材を介して取り付けられている。ハーネスは、センサ取付部材の軸線方向に沿ってパッケージから引き出されている。
【0008】
以上の構成により、車両の走行によって車輪が回転すると、ハブ輪には車輪が取り付けられているため、ハブ輪及び内輪が車輪と共に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−230593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示す車輪用軸受装置によると、ドライブシャフトとハーネスとの干渉を回避するためのスペースがセンサ取付部材の軸線方向に形成されることになり、このスペースを確保するためにドライブシャフトの外周部に切り欠き等を設ける必要があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、ドライブシャフトとハーネスとの干渉を回避するためのスペースをドライブシャフトの径方向に確保することができ、もってドライブシャフトの外周部に切り欠き等を設けることを不要にする回転速度検出器及びこれを備えた車輪用軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)〜(8)の回転速度検出器及びこれを備えた車輪用軸受装置を提供する。
【0013】
(1)軸受の外方部材に固定される円環状のセンサ取付部材と、前記センサ取付部材に取り付けられ、車軸の回転速度を検出するためのセンサ素子、及び前記センサ素子に接続する外部接続用の出力線を有する回転速度センサとを備え、前記回転速度センサは、前記出力線が前記センサ取付部材の軸線と直交する仮想面に沿って引き出され、前記センサ取付部材は、各口径を互いに異にする複数の胴部、及び前記複数の胴部のうち少なくとも一つの胴部を貫通する貫通窓を有する段状の円環部材によって形成され、かつその円周方向一方側に前記回転速度センサを位置決めする位置決め片を有し、前記位置決め片が前記複数の胴部の一部を周方向に切り起こし形成することにより設けられ、前記回転速度センサは、前記センサ素子を樹脂封止してなるパッケージを含み、前記パッケージに前記貫通窓の開口端縁を挿入させるスリットが設けられ、かつ前記位置決め片を挿通するパッケージ取付部材を結合させる結合部材が前記パッケージに埋設されている回転速度検出器。
【0018】
)上記()に記載の回転速度検出器において、前記回転速度センサは、前記センサ取付部材の径方向内側から前記貫通窓の開口端縁を前記スリットに挿入させて取り付けられている。
【0019】
)上記()に記載の回転速度検出器において、前記回転速度センサは、前記センサ取付部材の径方向外側から前記貫通窓の開口端縁を前記スリットに挿入させて取り付けられている。
【0020】
)車軸と共に回転する内方部材、車体側に固定される外方部材、及び前記外方部材と前記内方部材との間を転動する複数の転動体を有する軸受と、前記軸受の軸線上に配置された上記(1)乃至()のいずれかに記載の回転速度検出器とを備えた車輪用軸受装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ドライブシャフトと出力線との干渉を回避するためのスペースをドライブシャフトの径方向に確保することができ、ドライブシャフトの外周部に切り欠き等を設けることが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の全体を説明するために示す断面図。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度検出器を説明するために示す斜視図。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度検出器を説明するために示す断面図。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度検出器を説明するために示す右側面図。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度検出器を説明するために示す左側面図。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度センサを説明するために示す斜視図。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る車輪用軸受装置の全体を説明するために示す斜視図。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度検出器を説明するために示す断面図。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る車輪用軸受装置の回転速度センサを説明するために示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る車輪用軸受装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(車輪用軸受装置の全体構成)
図1は車輪用軸受装置の全体を示す。図1に示すように、車輪用軸受装置1は、軸受2,シール機構3及び回転速度検出器4とを備え、車体(図示せず)と等速自在継手のステム5との間に配置されている。
【0025】
ステム5は、各外径を互いに異にする大中小3つの胴部5a,5b,5c(大径胴部5a,小径胴部5b,中間径胴部5c)、及びこれら両胴部5a〜5cのうち互いに隣り合う2つの胴部5a,5b間と胴部5b,5c間とにそれぞれ介在する段差面5d,5eを有し、全体が段付きシャフトによって形成されている。ステム5には、内方部材6(後述)のハブ輪9に連結するためのセレーション嵌合部5fが形成されている。セレーション嵌合部5fはステム5の小径胴部5bの外周面に配置されている。
【0026】
(軸受2の構成)
軸受2は、中心軸線Oの回りに回転可能な内方部材6と、この内方部材6の外周囲に配置された外方部材7と、この外方部材7と内方部材6との間に介在する複列の転動体8(車両インナ側列の転動体のみ示す)とを有し、ステム5における小径胴部5bの外周面と車体との間に介在して配置されている。
【0027】
内方部材6は、ハブ輪9及び内輪10からなり、中心軸線O上に回転可能に配置され、かつドライブシャフト(図示せず)に等速自在継手等を介してトルク伝達可能に連結されている。そして、内方部材6は、ドライブシャフトと共に回転するように構成されている。
【0028】
ハブ輪9は、各外径が互いに異なる大小2つの胴部9a,9bを有し、ステム5の小径胴部5bに装着され、全体が例えば機械構造用炭素鋼からなる円筒状の成形体によって形成されている。本実施の形態では、ハブ輪9の材料としてJISS55Cが用いられる。ハブ輪9には、中心軸線Oに沿って両方向に開口する貫通孔9cが設けられている。貫通孔9cの内周部には、ステム5のセレーション嵌合部5fに相対回転不能に嵌合するセレーション嵌合部9dが形成されている。
【0029】
大径胴部9aは、ハブ輪9の車両アウタ側(図1の左側)に配置されている。大径胴部9aには、その外周面に突出し、車輪(図示せず)を取り付けるための円環状の車輪取付用フランジ(図示せず)が一体に設けられている。
【0030】
小径胴部9bは、内輪10を取り付けるためのレース取付部90bを外周面に有し、ハブ輪9の車両インナ側(図1の右側)に配置されている。
【0031】
内輪10は、ハブ輪9のレース取付部90bに固定され、全体が例えば高炭素クロム軸受鋼からなる円筒状の成形体によって形成されている。本実施の形態では、内輪10の材料としてJISSUJ2が用いられる。
【0032】
内輪10の外周面には、転動体8を転動させる内側軌道面10a、及びこの内側軌道面10aに仕切部10bを介して隣接するシール取付面10cが設けられている。
【0033】
内側軌道面10aは、内輪10の車両アウタ側に配置されている。仕切部10bは、内側軌道面10aとシール取付面10cとの間に介在して配置され、内側軌道面10aの外径及びシール取付面10cの外径よりも大きい外径をもつ円筒状の胴部によって形成されている。シール取付面10cは、内輪10の車両インナ側に配置されている。
【0034】
外方部材7は、転動体8を転動させる外側軌道面7aを内周面に有し、車体側に懸架装置(図示せず)のナックル(図示せず)を介して固定され、全体が中心軸線Oの両方向に開口する例えば機械構造用炭素鋼からなる円筒状の成形体によって形成されている。本実施の形態では、外方部材7の材料としてJISS55Cが用いられる。そして、外方部材7は、車輪用軸受装置1の外輪としての機能するように構成されている。
【0035】
外方部材7の内周面には、内輪10のシール取付面10cと共にシール機構3を取り付けるためのシール取付面7bが設けられている。外方部材7の外周面には、回転速度検出器4を取り付けるためのセンサ取付面7cが設けられている。
【0036】
転動体8は、例えばボールからなり、内輪10の内側軌道面10aと外方部材7の外側軌道面7aとの間に介在して配置され、かつボール保持器11によって転動可能に保持されている。
【0037】
(シール機構3の構成)
シール機構3は、シール部材12及びスリンガ13を備え、内輪10のシール取付面10cと外方部材7のシール取付面7bとの間に介在して配置されている。
【0038】
シール部材12は、芯金14及びシール部15からなり、外方部材7の内周囲に配置されている。
【0039】
芯金14は、円筒状の立ち上がり部14aを有し、外方部材7内に圧入してシール取付面7bに取り付けられ、全体が例えばオーステナイト系ステンレス鋼板等の材料からなる円環部材によって形成されている。
【0040】
シール部15は、スリンガ13のフランジ13aに摺接するサイドリップ15a、車両アウタ側でスリンガ13の外周面に摺接するグリースリップ15b、及び車両インナ側でスリンガ13の外周面に摺接するダストリップ15cを有し、芯金14に接合され、全体が例えばNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる円環部材によって形成されている。
【0041】
スリンガ13は、芯金14にシール部15を介して対向するフランジ13aを有し、内輪10内に圧入してシール取付面10cに取り付けられ、全体が例えばオーステナイト系ステンレス鋼板等の材料からなる円筒部材によって形成されている。
【0042】
スリンガ13には、パルサリング16がその端面をフランジ13aの端面に当接させて取り付けられている。
【0043】
パルサリング16は、その外周縁で円周方向に等間隔をもって並列する複数の透孔(図示せず)を有する円環部材によって形成されている。パルサーリング16としては、例えばフェライト系のステンレス鋼粉を用いた焼結金属が用いられる。
【0044】
(回転速度検出器4の構成)
図2図5は回転速度検出器を示す。図6は回転速度センサを示す。図2図6に示すように、回転速度検出器4は、センサ取付部材17及び回転速度センサ18を有し、ステム5の段差面5d(図1に示す)とシール機構3(図1に示す)との間に介在して軸受2(図1に示す)の軸線上に配置されている。
【0045】
センサ取付部材17は、各口径を互いに異にする複数の胴部17a〜17c、これら胴部17a〜17cのうち互いに隣り合う胴部間に介在する段差部17d,17e、及び複数の胴部17a〜17cのうち最小の内外径をもつ胴部17cを切り欠いて段差部17eを貫通する貫通窓としての切り欠き17fを有し、ステム5(図1に示す)の中間径胴部5cの外周囲に配置され、かつ外方部材7のセンサ取付面7c(図1に示す)に取り付けられ、全体が例えばオーステナイト系ステンレス鋼板からなる段状の円環部材によって形成されている。
【0046】
センサ取付部材17には、その円周方向一方側に回転速度センサ18を位置決めする位置決め片170cが配置されている。
【0047】
位置決め片170cは、複数の胴部17a〜17cのうち胴部17cの一部を切り起こし形成することにより設けられている。
【0048】
回転速度センサ18は、センサ素子(図示せず),ハーネス19及びパッケージ20を有するABSセンサからなり、位置決め片170cを挿通するパッケージ取付部材としてのボルト21によってセンサ取付部材17に取り付けられている。そして、回転速度センサ18は、車輪(ドライブシャフト)の回転速度を周波数の変化として検出するように構成されている。
【0049】
センサ素子は、例えばホール素子等のICチップからなり、パルサリング16の外周縁に所定の間隔をもって対向しパッケージ20に樹脂封止されている。そして、センサ素子は、ドライブシャフトの回転による磁界変動に基づいて変化する周波数を電気信号に変換し、この電気信号をハーネス19によって車両用のECU(Electronic Control Unit:図示せず)に出力するように構成されている。
【0050】
ハーネス19は、センサ素子の出力線としてセンサ取付部材17の軸線と直交する仮想面に沿ってパッケージ20外に引き出され、かつ車両用のECUに接続されている。本実施の形態では、ハーネス引き出し時にハーネス19がセンサ取付部材17の円周方向に沿って引き出される。これにより、ステム5(ドライブシャフト)とハーネス19との干渉を回避するためのスペースS(図4に示す)をドライブシャフトの径方向に確保することができる。
【0051】
パッケージ20は、センサ素子を内蔵する基部20a、及びこの基部20aに突出する突出部20bを有し、センサ取付部材17にその段差面17eに当接させて取り付けられ、全体が胴部17cの外周面に適合する例えばエポキシ樹脂等の合成樹脂からなる湾曲部材によって形成されている。
【0052】
パッケージ20には、ボルト21を結合させる結合部材としてのナット22が埋設され、またセンサ取付部材17の径方向内側から切り欠き17fの開口端縁170fを挿入させるスリット23が形成されている。
【0053】
ナット22は、例えば袋ナットからなり、一部をパッケージ20外に露出させてパッケージ20のハーネス引出側端部とは反対側の端部内に配置されている。これにより、センサ取付部材17の位置決め片170cに対する回転速度センサ18の位置決め状態においてボルト21をセンサ取付部材17の径方向に沿って移動させナット22に結合させることができる。
【0054】
スリット23は、パッケージ20におけるナット22の埋設側とは反対側で基部20aと突出部20bとの間に介在して配置されている。そして、スリット23は、センサ取付部材17に対する回転速度センサ18の取付状態において互いに対向する2つのスリット内面間に切り欠き17fの開口端縁170fが介在し、センサ取付部材17の軸線方向に沿うパッケージ20の移動を規制するように構成されている。これにより、回転速度センサ18の振動等に伴う位置ずれが抑制される。
【0055】
このように構成された車輪用軸受装置1の回転速度検出器4において、センサ取付部材17に対する回転速度センサ18の組み付けは、次のようにして行われる。先ず、センサ取付部材17の径方向内側から径方向外側に回転速度センサ18を移動させて切り欠き17fの開口端縁170fをパッケージ20のスリット23に挿入する。次いで、回転速度センサ18を位置決め片170cに当接するまで段差部17eに沿ってセンサ取付部材17の円周方向に移動させる。しかる後、ボルト21を位置決め片170cに挿通させてナット22に結合させる。
【0056】
(回転速度検出器4の組み付け)
次に、本実施の形態に示す回転速度検出器4の組付方法につき、図1及び図4を用いて説明する。
【0057】
本実施の形態に示す回転速度検出器4の組付方法は、図1に示すように、内輪10のシール取付面10cと外方部材7のシール取付面7bとの間にシール機構3及びパルサリング16が予め介在して配置された軸受2において、回転速度センサ18のパッケージ20内のセンサ素子をパルサリング16の外周縁に対向させ、センサ取付部材17の胴部17aを外方部材7のセンサ取付面7cに取り付けることにより行われる。
【0058】
この場合、センサ取付部材17がセンサ取付面7cに取り付けられると、回転速度センサ18のハーネス19が図4に示すようにセンサ取付部材17の円周方向に沿って引き出される。また、センサ取付部材17の取付領域であってステム5の軸線方向と直交する面内にボルト21の頭部が配置される。
【0059】
従って、本実施の形態においては、軸受2に対する回転速度検出器4の組付時にドライブシャフトとハーネス19及びボルト21との干渉を回避するためのスペースSをステム5の径方向に確保することができる。
【0060】
(車輪用軸受装置1の動作)
本実施の形態に示す車輪用軸受装置1の動作は、従来における車輪用軸受装置の動作と同様に行われる。すなわち、車両のエンジン側からトルクがドライブシャフト及び等速自在継手等を介してハブ輪9に伝達されると、ハブ輪9が内輪10と共に回転する。ハブ輪9には車輪が取り付けられているため、エンジン側からのトルクが車輪にも伝達され、車輪がハブ輪9と共に回転する。
【0061】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0062】
ドライブシャフトとハーネス19及びボルト21との干渉を回避するためのスペースSをステム5の径方向に確保することができ、ドライブシャフトの外周部に切り欠き等を設けることが不要になる。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2実施の形態に係る回転速度検出器につき、図7図9を用いて説明する。図7及び図8は回転速度検出器を示す。図9は回転速度センサを示す。図7図9において、図2図3及び図6と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0064】
図7図9に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る回転速度検出器71は、回転速度センサ72がセンサ取付部材17の径方向外側から切り欠き17fの開口端縁をスリット23に挿入させて取り付けられている点に特徴がある。
【0065】
このため、センサ取付部材17には、胴部17cを切り欠いて胴部17b及び段差面17eを貫通する切り欠き17fが設けられている。
【0066】
また、センサ取付部材17には、その径方向内側への回転速度センサ72の移動を規制する移動規制片17gが設けられている。
【0067】
一方、回転速度センサ72は、パッケージ20がセンサ取付部材17にその移動規制片17gに当接させて取り付けられている。
【0068】
パッケージ20には、センサ取付部材17の径方向外側から切り欠き17fの開口端縁170fを挿入させるスリット23が形成されている。
【0069】
スリット23は、パッケージ20におけるナット22(図4に示す)の埋設側で基部20aと突出部20bとの間に介在して配置されている。
【0070】
このように構成された回転速度検出器71において、センサ取付部材17に対する回転速度センサ72の組み付けは、次に示すようにして行われる。先ず、センサ取付部材17の径方向外側から径方向内側に回転速度センサ72を移動させてパッケージ20の基部20aが移動規制片17gに当接するまで切り欠き17fの開口端縁170fをパッケージ20のスリット23に挿入する。次いで、回転速度センサ18を位置決め片170cに当接するまで段差部17eに沿ってセンサ取付部材17の円周方向に移動させる。しかる後、ボルト21を位置決め片170cに挿通させてナット22に結合させる。
【0071】
また、回転速度検出器71の軸受2に対する組付方法は、第1の実施の形態に示す回転速度検出器4の組付方法と同様にして行われる。
【0072】
すなわち、回転速度検出器71の組付方法は、内輪10のシール取付面10cと外方部材7のシール取付面7bとの間にシール機構3及びパルサリング16が予め介在して配置された軸受2(図1に示す)において、回転速度センサ72のパッケージ20内のセンサ素子をパルサリング16の外周縁に対向させ、センサ取付部材17の胴部17aを外方部材7のセンサ取付面7cに取り付けることにより行われる。
【0073】
この場合、センサ取付部材17がセンサ取付面7cに取り付けられると、回転速度センサ72のハーネス19がセンサ取付部材17の円周方向に沿って引き出される。また、センサ取付部材17の取付領域であってステム5の軸線方向と直交する面内にボルト21の頭部が配置される。
【0074】
従って、本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様、軸受2に対する回転速度検出器71の組付時にドライブシャフトとハーネス19及びボルト21との干渉を回避するためのスペースSをステム5の径方向に確保することができる。
【0075】
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に示す効果と同様の効果が得られる。
【0076】
以上、本発明の回転速度検出器及び車輪用軸受装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0077】
(1)上記実施の形態では、回転速度センサ18,72のセンサ素子がホール素子である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば磁気抵抗素子などのセンサ素子であっても勿論よい。
【0078】
(2)上記実施の形態では、転動体8がボールである軸受装置に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、円筒ころ,針状ころあるいは円錐ころである軸受装置にも実施の形態と同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…車輪用軸受装置、2…軸受、3…シール機構、4…回転速度検出器、5…ステム、5a…大径胴部、5b…小径胴部、5c…中間径胴部、5d,5e…段差面、5f…セレーション嵌合部、6…内方部材、7…外方部材、7a…外側軌道面、7b…シール取付面、7c…センサ取付面、8…転動体、9…ハブ輪、9b…小径胴部、90b…レース取付部、9c…貫通孔、9d…セレーション嵌合部、10…内輪、10a…内側軌道面、10b…仕切部、10c…シール取付面、11…ボール保持器、12…シール部材、13…スリンガ、13a…フランジ、14…芯金、14a…立ち上がり部、15…シール部、15a…サイドリップ、15b…グリースリップ、15c…ダストリップ、16…パルサリング、17…センサ取付部材、17a〜17c…胴部、170c…位置決め片、17d,17e…段差部、17f…切り欠き、170f…開口端縁、17g…移動規制片、18…回転速度センサ、19…ハーネス、20…パッケージ、20a…基部、20b…突出部、21…ボルト、22…ナット、23…スリット、71…回転速度検出器、72…回転速度センサ、O…中心軸線、S…スペース
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図9