(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電力変換装置の実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
まず、実施例1に係る電力変換装置の回路構成について
図1を用いて説明する。
図1は、実施例1に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
【0013】
図1に示す電力変換装置1は、直流電源2から入力端子である第一の接続部101,102へ入力される直流電圧を三相の交流電圧へ変換し、かかる三相の交流電圧を出力端子台40に設けられた出力端子から三相モータMへ出力するインバータ部20を備える。なお、第一の接続部101は、直流電源2の負側に接続され、第一の接続部102は、直流電源2の正側に接続される。
【0014】
インバータ部20は、直列接続された一対の半導体スイッチを有するスイッチング素子部20a〜20cを備えたスイッチング回路であり、各スイッチング素子部20a〜20cは、制御装置3からコネクタ22へ入力される駆動信号に基づいて制御される。なお、各スイッチング素子部20a〜20cを構成する半導体スイッチとして、例えば、IGBTやMOSFETなどのパワー半導体素子が用いられる。また、各半導体スイッチに対して、還流ダイオードが接続される。
【0015】
また、インバータ部20と出力端子台40との間には、各スイッチング素子部20a〜20cから三相モータMへ流れる電流の電流値を検出する電流検出器30が設けられる。制御装置3は、かかる電流検出器30による検出結果などに応じた駆動信号をコネクタ22へ入力する。
【0016】
さらに、電力変換装置1には、直流電源2とインバータ部20との間に、電圧を平滑する主回路コンデンサ10が設けられる。かかる主回路コンデンサ10は、複数のコンデンサ素子を含んで構成され、例えば、高周波リップルなどを平滑することができる静電容量を有する。なお、主回路コンデンサ10を一つのコンデンサ素子で構成するようにしてもよい。
【0017】
ここで、主回路コンデンサ10の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、主回路コンデンサ10の内部配線の関係を説明するための図である。
【0018】
図2に示すように、主回路コンデンサ10は、複数のコンデンサ素子121,121,・・・と、第一配線部材13,14と、第二配線部材15,16とを備える。第一配線部材13,14は、第一の接続部101,102および第二の接続部103,104を介して直流電源2とスイッチング素子部20a〜20cとを接続する配線部材である。また、第二配線部材15,16は、第二の接続部103,104を介してコンデンサ素子121,121,・・・とスイッチング素子部20a〜20cとを接続する配線部材である。
【0019】
そして、後述するように、第一配線部材13,14と第二配線部材15,16とを、主回路コンデンサ10のケース内に配置することによって、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの配線距離を短くすることが可能になる。
【0020】
しかも、主に直流成分が流れる経路である第一配線部材13,14と主に交流成分が流れる経路である第二配線部材15,16とを後述のように別部材とすることによって、電流による発熱を分散させることができる。これにより、配線部材の発熱によるスイッチング素子部20a〜20cへの影響を抑えることができる。
【0021】
以下、まず、
図3を参照して電力変換装置1の全体構造を説明した後、主回路コンデンサ10の具体的な構造を説明する。
図3は、実施例1に係る電力変換装置1の外観を示す斜視図である。なお、同図では、主回路コンデンサ10の内部に配置されるコンデンサ素子121を点線によって示している。
【0022】
図3に示すように、本実施例1に係る電力変換装置1は、平坦なベース51の下方に複数の冷却フィン52が形成されたヒートシンク50を有しており、かかるヒートシンク50のベース51上面に、主回路コンデンサ10、インバータ部20、電流検出器30および出力端子台40が取り付けられる。
【0023】
インバータ部20は、プリント配線基板21を有しており、このプリント配線基板21に駆動信号の授受を行うコネクタ22が取り付けられる。また、プリント配線基板21の裏面に取り付けられた半導体スイッチは、ヒートシンク50のベース51上面に当接されており、ヒートシンク50により冷却される。
【0024】
また、インバータ部20には、DC入力端子部24とAC出力端子部23とが設けられ、DC入力端子部24に主回路コンデンサ10が接続され、AC出力端子部23に電流検出器30を介して出力端子台40の出力端子が接続される。
【0025】
主回路コンデンサ10は、インバータ部20との対向面が開口した箱状のケース17を有している。そして、かかるケース17内に、上述したコンデンサ素子121,121,・・・、第一配線部材13,14および第二配線部材15,16が配置され、第一の接続部101,102および第二の接続部103,104の一部がケース17の上記開口から突出している。
【0026】
第二の接続部103,104は、インバータ部20の各スイッチング素子部20a〜20cとの接続部であり、DC入力端子部24の各入力端子に対して直接接続される。したがって、主回路コンデンサ10と各スイッチング素子部20a〜20cとの接続距離を短くすることができる。
【0027】
以下、各スイッチング素子部20a〜20cとの接続距離を短くすることができる主回路コンデンサ10の内部構造について、
図4A〜
図4Cを参照してさらに具体的に説明する。
図4Aは、実施例1に係る主回路コンデンサ10の分解斜視図である。なお、以下において、X軸方向を上下方向とし、Y軸方向を左右方向とし、Z軸方向を前後方向として定義するが、説明の便宜上のものであり限定されるものではない。
【0028】
図4Aに示すように、主回路コンデンサ10のケース17には、内部に複数の部材が積層された構造体が収納される。具体的には、ケース17には第一配線部材13と、絶縁部材19aと、第二配線部材16と、コンデンサ素子部12と、第二配線部材15と、絶縁部材19bと、第一配線部材14とが順次積層された構造体が収納される。
【0029】
なお、第一配線部材14と第二配線部材16とは直流電源2の正側の電圧が印加され、第一配線部材13と第二配線部材15とは直流電源2の負側の電圧が印加される。そこで、説明を分かり易くするために、以下において、「負側の第一配線部材13」、「正側の第一配線部材14」、「負側の第二配線部材15」、「正側の第二配線部材16」と呼ぶことがある。
【0030】
コンデンサ素子部12は、複数のコンデンサ素子121,121,・・・を有しており、各コンデンサ素子121の正極および負極が上下に配置され、複数のコンデンサ素子121,121,・・・が左右に隣接するように配置される。なお、ここでは、図面視において、各コンデンサ素子121の上面側に負極があり、各コンデンサ素子121の下面側に正極があるものとする。
【0031】
各コンデンサ素子121の正極は、正側の第二配線部材16の上面に半田などによって接合され、各コンデンサ素子121の負極は、負側の第二配線部材15の下面に半田などによって接合される。第二配線部材15,16は、例えば、銅のブスバなどの導電性を備えた薄板状の部材であり、前後左右方向においてコンデンサ素子部12の上面と同程度の大きさを有している。
【0032】
負側の第二配線部材15の一端には、側面視L字状に形成された3つの第二の接続片151,151,151が左右方向に間隔を空けて設けられ、また、同様に、正側の第二配線部材16の一端には、側面視L字状に形成された3つの第二の接続片161,161,161が左右方向に間隔を空けて設けられる。
【0033】
これら6つの第二の接続片151,151,151,161,161,161は、第二配線部材15,16がケース17へ収納された際、ケース17の開口から先端が突出するように形成される。
【0034】
正側の第二配線部材16の下面には、絶縁部材19aを介して負側の第一配線部材13が積層され、負側の第二配線部材15の上面には、絶縁部材19bを介して正側の第一配線部材14が積層される。絶縁部材19a,19bは、非導電性を備えた板またはフィルム状の部材である。
【0035】
絶縁部材19aによって、互いに極性の異なる正側の第二配線部材16および負側の第一配線部材13が電気的に絶縁され、絶縁部材19bによって、互いに極性の異なる負側の第二配線部材15および正側の第一配線部材14が電気的に絶縁される。
【0036】
第一配線部材13,14は、例えば、銅のブスバなどの導電性を備えた薄板状の部材であり、前後左右方向においてコンデンサ素子部12の上面と同程度の大きさを有している。負側の第一配線部材13の一端には、側面視L字状に形成された一つの第一の接続部101と3つの第二の接続片131,131,131とが左右方向に間隔を空けて設けられる。また、正側の第一配線部材14の一端には、側面視L字状に形成された一つの第一の接続部102と3つの第二の接続片141,141,141とが左右方向に間隔を空けて設けられる。
【0037】
このように負側の第一配線部材13の一端に設けられた各第二の接続片131,131,131は、負側の第二配線部材15の一端に設けられた各第二の接続片151,151,151と重なり合う位置に設けられる。また、正側の第一配線部材14の一端に設けられた各第二の接続片141,141,141は、正側の第二配線部材16の一端に設けられた各第二の接続片161,161,161と重なり合う位置に設けられる。
【0038】
そして、各第二の接続片131,131,131と各第二の接続片151,151,151とによって第二の接続部103,103,103(
図3参照)が形成され、各第二の接続片141,141,141と各第二の接続片161,161,161とによって第二の接続部104,104,104(
図3参照)が形成される。なお、第二の接続部103,103,103と第二の接続部104,104,104とは接触しないように間隔を空けて設けられる。
【0039】
このように、負側の第一配線部材13と、絶縁部材19aと、正側の第二配線部材16と、コンデンサ素子部12と、負側の第二配線部材15と、絶縁部材19bと、正側の第一配線部材14とが積層されて、第二の接続部103,103,103,104,104,104が形成される。第二の接続部103,103,103,104,104,104は、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの接続部と、直流電源2とスイッチング素子部20a〜20cとの接続部とが一纏めにされた接続部である。そのため、電力変換装置1の小型化および組立作業性の改善を図ることができる。
【0040】
図4Bは、主回路コンデンサ10のケース17の内部を示す透過説明図であり、
図4Cは、
図4BのA−A線断面図である。
図4Bおよび
図4Cに示すように、主回路コンデンサ10は、負側の第一配線部材13、絶縁部材19a、正側の第二配線部材16、コンデンサ素子部12、負側の第二配線部材15、絶縁部材19b、正側の第一配線部材14が積層されて組み上げられた構造体を有し、かかる構造体がケース17内に配置される。
【0041】
すなわち、直流電源2とスイッチング素子部20a〜20cとを接続する第一配線部材13,14と、コンデンサ素子部12とスイッチング素子部20a〜20cとを接続する第二配線部材15,16とがケース17内に配置される。そして、スイッチング素子部20a〜20cとの接続に必要な6つの第二の接続部103,103,103,104,104,104がケース17の開口側に配置される。したがって、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの配線距離を短くすることができ、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの接続部である第二の接続部103,103,103,104,104,104における発熱量やインピーダンスを低減することができる。
【0042】
すなわち、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとを接続する配線には、スイッチング素子部20a〜20cの動作によってキャリア周波数成分の高周波リップル電流が流れ、表皮効果によって発熱する。かかる発熱の量が大きい場合、周辺回路である主回路コンデンサ10やスイッチング素子部20a〜20cに対して影響を与えるおそれがある。また、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの間に高周波リップル電流が流れる場合、配線部分の長さが長くなるにつれて配線部分のインピーダンスが無視できなくなり、スイッチング素子部20a〜20cのスイッチング時にサージ電圧が発生するおそれもある。
【0043】
これに対して、電力変換装置1では、第二の接続部103,103,103,104,104,104によってコンデンサ素子121とスイッチング素子部20a〜20cとが接続される。主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの間の配線距離は短いため、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの接続部分におけるサージ電圧や大きな発熱を抑制することができる。また、主回路コンデンサ10と各スイッチング素子部20a〜20cとの接続距離を短くすることによって、電力変換装置1の軽量化および原価低減を図ることができる。
【0044】
しかも、第一配線部材13,14と第二配線部材15,16とを薄板状の部材で形成しており、絶縁部材19a,19bも薄板状またはフィルム状の部材で形成している。したがって、
図4Cに示すように、主回路コンデンサ10の上下方向(X軸方向)の長さへの影響が少なく、大型化することを防止することができる。
【0045】
さらに、第一配線部材13,14、第二配線部材15,16および絶縁部材19a,19bの前後左右方向の大きさを、コンデンサ素子部12の上下面の大きさと同程度の大きさとしているため、例えば、ケース17の前後方向および左右方向の長さへの影響を抑制することができる。
【0046】
また、第一配線部材13,14および第二配線部材15,16の前後左右方向の大きさを、コンデンサ素子部12の上下面の大きさと同程度の大きさとすることにより、第一配線部材13,14および第二配線部材15,16のインピーダンスをより効果的に低減することができる。そのため、サージ電圧や大きな発熱をより効果的に抑制することができる。
【0047】
また、主に直流成分が流れる経路である第一配線部材13,14と主に交流成分が流れる経路である第二配線部材15,16とを別部材によって形成しているため、電流による発熱を分散させることができる。これにより、配線部材の発熱によるスイッチング素子部20a〜20cへの影響を抑えることができる。
【実施例2】
【0048】
次に、実施例2に係る電力変換装置について説明する。実施例2に係る電力変換装置は、主回路コンデンサの構成だけが実施例1に係る電力変換装置1と異なる。このため、以下では、実施例2に係る電力変換装置の主回路コンデンサについて
図5A〜
図5Cを参照して具体的に説明する。
【0049】
図5Aは、実施例2に係る主回路コンデンサ10aの分解斜視図、
図5Bは、主回路コンデンサ10aのケース17の内部を示す透過説明図、
図5Cは、
図5BのB−B線断面図である。
【0050】
図5Aに示すように、実施例2に係る主回路コンデンサ10aは、正側の第一配線部材14a、正側の第二配線部材16a、コンデンサ素子部12a、負側の第二配線部材15a、負側の第一配線部材13aが積層されて組み上げられ、ケース17内に配置される。
【0051】
第二配線部材15a,16aと
図4Aに示す実施例1の第二配線部材15,16とは、各第二の接続片151a、161aの形成位置が異なる以外は同様の構成である。第一配線部材13a,14aおよび第二配線部材15a,16aは、
図4Aに示す実施例1の第一配線部材13,14および第二配線部材15,16と同様に、例えば、銅のブスバなどの導電性を備えた薄板状の部材であり、コンデンサ素子部12aの上面と同程度の大きさを有している。
【0052】
負側の第一配線部材13aは、
図4Aに示す実施例1の第一配線部材13の積層位置と反対側に配置される。この第一配線部材13aの一端には、側面視L字状に形成された一つの第一の接続部101aと3つの第二の接続片131a,131a,131aとが左右方向に間隔を空けて設けられる。また、正側の第一配線部材14aは、
図4Aに示す実施例1の第一配線部材14の積層位置と反対側に配置される。この第一配線部材14aの一端には、側面視L字状に形成された一つの第一の接続部102aと3つの第二の接続片141a,141a,141aとが左右方向に間隔を空けて設けられる。
【0053】
このように負側の第一配線部材13aの一端に設けられた各第二の接続片131a,131a,131aは、負側の第二配線部材15aの一端に設けられた各第二の接続片151a,151a,151aと重なり合う位置に設けられる。また、正側の第一配線部材14aの一端に設けられた各第二の接続片141a,141a,141aは、正側の第二配線部材16aの一端に設けられた各第二の接続片161a,161a,161aと重なり合う位置に設けられる。
【0054】
そして、各第二の接続片131a,131a,131aと各第二の接続片151a,151a,151aとによって第二の接続部103a,103a,103a(
図5B参照)が形成され、各第二の接続片141a,141a,141aと各第二の接続片161a,161a,161aとによって第二の接続部104a,104a,104a(
図5B参照)が形成される。なお、第二の接続部103a,103a,103aと第二の接続部104a,104a,104aとは接触しないように間隔を空けて設けられる。
【0055】
このように、実施例2に係る主回路コンデンサ10aは、実施例1に係る主回路コンデンサ10に対して、正側および負側の第一配線部材の配置が異なる。すなわち、実施例1に係る主回路コンデンサ10では、印加される電圧の極性が異なる第一配線部材と第二配線部材とが絶縁部材を介して積層される構造であるが、実施例2に係る主回路コンデンサ10aでは、印加される電圧の極性が同じ第一配線部材と第二配線部材とが積層される。
【0056】
このように構成することで、
図5Cに示すように、第一配線部材13aと第二配線部材15aとの間、および第一配線部材14aと第二配線部材16aとの間に絶縁部材が不要となる。したがって、製造コストが低減され、また、
図4Bに示す主回路コンデンサ10よりも絶縁部材19a、19bの厚さの分だけ小型化することが可能となる。
【0057】
また、実施例2に係る電力変換装置は、実施例1に係る電力変換装置1と同様に、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの間の配線距離を短くすることができるため、主回路コンデンサ10とスイッチング素子部20a〜20cとの接続部分での発熱量やインピーダンスを低減することができる。
【実施例3】
【0058】
次に、実施例3に係る電力変換装置について説明する。実施例3に係る電力変換装置は、直流電源2の接続箇所の構成が異なる点を除けは、
図3に示した電力変換装置1と同様の構成である。
【0059】
図6は、実施例3に係る電力変換装置1bの外観を示す斜視図である。
図6に示すように、電力変換装置1bでは、ベース51の上面に入力端子台71および接続端子台73が配設される。入力端子台71は、出力端子台40に隣設され、接続端子台73は、主回路コンデンサ10から突出した第一の接続部101,102と対向する箇所に配設される。
【0060】
そして、電力変換装置1bでは、入力端子台71と接続端子台73との間に導電性を備えた一対の配線部材72,72が架設され、配線部材72,72における接続端子台73側の各端部と第一の接続部101,102とがそれぞれ接続される。
【0061】
これにより、電力変換装置1bでは、配線部材72における入力端子台71側の端部が直流電源2との接続部になるため、交流電圧の出力部と直流電圧の入力部とを隣設させることができる。したがって、例えば、交流電圧の出力部と直流電圧の入力部とにそれぞれ配線ケーブルを接続する場合に、配線ケーブルの配線処理が容易になる。また、交流電圧の出力部に加え、直流電圧の入力部をベース51の一辺側に寄せて配置することができるため、例えば、直流電圧の入力部に配線ケーブルを接続する場合に、発熱箇所であるヒートシンク50に配線ケーブルが接触することを回避することができる。
【実施例4】
【0062】
次に、実施例4に係る電力変換装置1cについて説明する。
図7は、実施例4に係る電力変換装置1cの外観を示す斜視図である。なお、同図では、主回路コンデンサ10cの内部に配置されるコンデンサ素子121を点線によって示している。
【0063】
電力変換装置1cは、主回路コンデンサ10cの構成およびヒートシンク50cのサイズが
図3に示した電力変換装置1とは異なり、他の構成については
図3に示した電力変換装置1と同様である。このため、以下では、主回路コンデンサ10cの構成およびヒートシンク50cのサイズについて説明する。
【0064】
図7に示すように、電力変換装置1cでは、主回路コンデンサ10cのケース17cの上面に一対の入力端子台171,172が設けられ、入力端子台171,172の上面に直流電源2(
図1参照)との接続部である第一の接続部101c,102cが設けられる。なお、主回路コンデンサ10cの内部構造の詳細については、
図8A〜
図8Cを用いて後述する。
【0065】
このように、電力変換装置1cでは、ケース17cの上面に第一の接続部101c,102cが設けられるので、第一の接続部101,102を第二の接続部103,104の左右方向に隣接させる構造(
図3参照)に比べて主回路コンデンサ10cのベース51c上面に占めるスペースが縮小される。
【0066】
これにより、電力変換装置1cは、
図3に示すベース51よりも上面の面積が小さなベース51cを備えたヒートシンク50cにより構成することができるので、電力変換装置1に比べて、さらに小型化することができる。
【0067】
次に、
図8Aを用いて主回路コンデンサ10cについて説明する。
図8Aは、実施例4に係る主回路コンデンサ10cの分解斜視図、
図8Bは、実施例4に係る主回路コンデンサ10cのケースの内部17cを示す透過説明図、
図8Cは、
図8Bに示すC−C線による断面図である。
【0068】
図8Aに示すように、主回路コンデンサ10cのケース17c内には、複数の部材が積層された構造体が収納される。主回路コンデンサ10cにおける積層構造は、実施例1の主回路コンデンサ10の積層構造と基本的に同じである。すなわち、ケース17cには、第一配線部材13cと、絶縁部材19cと、第二配線部材16cと、コンデンサ素子部12cと、第二配線部材15cと、絶縁部材19dと、第一配線部材14cとが積層された構造体が収納される。絶縁部材19c,19dは、絶縁部材19a,19bと同様に、非導電性を備えた板またはフィルム状の部材である。
【0069】
そして、主回路コンデンサ10cでは、第一の接続部101c,102cの先端部分をケース17cの上面に設けた入力端子台171,172に配置するために、次のように、第一の接続部101c,102cおよび第一配線部材13c,14cが形成される。
【0070】
第一配線部材13cの一端には、一つの第一の接続部101cと、3つの第二の接続片131c,131c,131cとが設けられる。第一の接続部101cは、第二の接続片131c,131c間に設けられ、第一配線部材13cがケース17cへ収納された際、
図8Cに示すように、先端部分がケース17cの上面に位置するように、中途部から断面視略J字状に折り返されて形成される。
【0071】
第一の接続部101cは、
図8Cに示すように、第一配線部材13cの一端から略直角に延伸させた後、断面視略J字状に折り返されて形成されて先端部分がケース17cの上面に位置するようにしている。従って、第一の接続部101cのうちケース17cの開口から突出する部分を減らすことができる。その結果、主回路コンデンサ10cとインバータ部20との間のスペースを広げることができ、また、第一の接続部101cと他の部材との接触の可能性を低減することができる。
【0072】
また、同様に、第一配線部材14cの一端には、一つの第一の接続部102cと、3つの第二の接続片141c,141c,141cとが設けられる。第一の接続部102cは、第二の接続片141c,141c間に設けられ、第一配線部材14cがケース17cへ収納された際、
図8Cに示すように、先端部分がケース17cの上面に位置するように断面視略J字状に折り返されて形成される。このように、第一の接続部102cは、第二の接続片141c,141c間に設けられるため、第一配線部材14cの左右方向の幅を小さくすることができる。
【0073】
なお、第二の接続片131c,131c,131cは、第二配線部材15cの一端に設けられた第二の接続片151c,151c,151cと重なり合う位置に設けられ、
図8Bに示すように、第二の接続部103c,103c,103cが形成される。また、第二の接続片141c,141c,141cは、第二配線部材16cの一端に設けられた第二の接続片161c,161c,161cと重なり合う位置に設けられ、
図8Bに示すように、第二の接続部104c,104c,104cが形成される。
【0074】
このように、第4実施例に係る主回路コンデンサ10cでは、第一の接続部101c,102cは、第二の接続部103c,104cの間から引き出され、第二の接続部103c,104cとは異なる平面上に配置される。このため、電力変換装置1cは、第一の接続部101c,102cと第二の接続部103c,104cが同一平面上に一列に配置された
図3に示す電力変換装置1に比べ、主回路コンデンサ10cのベース51c上面に占めるスペースが縮小されるので、さらに小型化することができる。
【0075】
なお、ここでは、第一の接続部101c,102cは、ケース17cの開口側である前面側からケース17cの上面へ引き出されているが、ケース17cの側面側や背面側からケース17cの上面へ引き出されてもよい。
【0076】
すなわち、第一の接続部101c,102cは、ケース17cの任意の箇所から引き出された場合であっても、ケース17cの外形に沿ってケース17cの上面側へ折り曲げられることで主回路コンデンサ10cのベース51c上面に占めるスペースが縮小される。
【0077】
また、実施例3,4の電力変換装置では、印加される電圧の極性が異なる第一配線部材と第二配線部材とが絶縁部材を介して積層される構造の主回路コンデンサの例を示したが、主回路コンデンサはこれに限られない。すなわち、実施例2に係る主回路コンデンサ10aと同様に、印加される電圧の極性が同じ第一配線部材と第二配線部材とが積層される構造を実施例3,4へ適用することもできる。
【0078】
また、実施例1〜4の電力変換装置では、各コンデンサ素子121の上面側に負極があり、下面側に正極があるものとして説明したが、各コンデンサ素子121の上面側に正極があり、下面側に負極があってもよい。この場合、第一の接続部の極性は実施例1〜4に示した例とは逆になる。また、各コンデンサ素子121の上面側と下面側にそれぞれ電極を設けることとしたが、電極の位置はこれに限られない。例えば、各コンデンサ素子121の上面側および下面側のいずれかに正極および負極を設けてもよく、この場合、電極を設けた側にすべての第一配線部材および第二配線部材を積層することで、第一配線部材および第二配線部材をケース内に配置することができる。
【0079】
また、実施例1〜4の電力変換装置では、主回路コンデンサのケースの前方側全体に開口を設けたが、第一の接続部および第二の接続部のみが露出するように、ケースの前方側一部のみに開口を設けても良い。また、実施例1〜4では、第一の接続部および第二の接続部をケースから突出させるようにしたが、例えば、組み立てなどに支障がない場合などには、突出させなくてもよい。
【0080】
また、実施例1〜4の電力変換装置では、第一配線部材および第二配線部材の一例として、銅のブスバで構成される例を説明したが、薄板状の導電部材であればよく、銅のブスバに限定されるものではない。また、絶縁部材19a〜19dは、電力変換装置の性能の範囲内で絶縁性を維持できる材料であればよい。
【0081】
また、実施例1〜4の電力変換装置では、すべての第二の接続部を同一の方向から突出させるようにしたが、第二の接続部のいくつかを異なる方向から突出させるようにしてもよい。また、実施例1〜4の電力変換装置では、スイッチング回路の一例として、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ部を例に挙げて説明したが、インバータ部に代えて、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部を配置するようにしてもよい。
【0082】
なお、本願の開示する技術は、直流電圧を三相以外の複相の交流電圧へ変換する電力変換装置に対しても適用することができる。また、本願の開示する技術は、三相モータ以外の任意の負荷へ交流電圧を出力する電力変換装置に対しても適用することができる。
【0083】
また、上述した実施例では、各第二の接続片が側面視L字状に形成された場合について説明したが、第二の接続片は、主回路コンデンサのケースから突出する形状であれば他の形状に形成されてもよい。
【0084】
たとえば、第一配線部材に設けられる第二の接続片は、第一配線部材と同一平面に形成され、第二配線部材に設けられる第二の接続片は、第一配線部材と同一平面に形成されてもよい。かかる場合、対向する位置に形成された極性が同じ第二の接続片によってインバータ部の各DC入力端子部が狭持されて主回路コンデンサとインバータ部とが接続される。
【0085】
かかる第二の接続片が一端に設けられる第一の配線部材や第二の配線部材は、製造時にプレス加工等が不要であり、型抜きによって容易に形成される。これにより製造工程数の削減を図ることができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。