(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密閉容器(41)と、該密閉容器(41)内に配置された圧縮機構部(40a,40b)と、上記密閉容器(41)内に配置されると共に、上記圧縮機構部(40a,40b)を駆動するモータ(61)とを備えた圧縮機であって、
上記モータ(61)は、平板状の本体部(94)を有する端部材(93)がロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の少なくとも一端面に配置されて形成されるロータ(90)と、該ロータ(90)の回転軸(64)の軸方向に延びる外側部を囲んで配置されるステータ(62)とを備え、
上記本体部(94)には、それぞれ上記回転軸(64)の軸方向に突出し、且つ該回転軸(64)の回転中心と同心に形成されて上記ロータコア(91)の熱を放熱する複数の環状の突起部(95a,95b,95c)が、上記回転軸(64)の周囲から径方向外方に向かって順に形成され、
上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に形成された突起部(95c)の厚みが径方向の内方に形成された突起部(95b)の厚みよりも厚くなるように形成されている
ことを特徴とする圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したロータの冷却手段では、ヒートシンクがロータコアと共に回転するため、周囲の流体の攪拌抵抗となり、出力損失が生じてしまう。
【0008】
また、上述した他のロータの冷却手段では、シャフトの中空部分に冷却用の冷媒の流入および排出のための機構が必要となり、冷凍装置のコストが高くなってしまう。さらに、この冷却手段では、中空部分を通過する冷媒がシャフトを介してロータを冷却するため、直接的にロータを冷却できず、このため冷却性能が十分でない。
【0009】
つまり、従来のロータの冷却手段では、モータの出力損失を抑えつつ、且つ簡易な構成でもって充分にロータを冷却することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、モータの出力損失を抑えつつ、且つ簡単な構成でもって充分にロータを冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、平板状の本体部(94)を備え、ロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の一端面に配置されるロータの端部材であって、上記本体部(94)は、上記回転軸(64)の軸方向に突出し、且つ該回転軸(64)の回転中心と同心に形成されて上記ロータコア(91)の熱を放熱する環状の突起部(95)を備えているものである。
【0012】
上記第1の発明のロータの端部材では、平板状の本体部(94)が、回転軸(64)の中心と同心に形成され、且つ回転軸(64)方向に突出する環状の突起部(95)を備えている。ロータコア(91)の熱は、本体部(94)を介して突起部(95)に伝わり、該突起部(95)が、その周囲の流体に放熱することでロータコア(91)が冷却される。
【0013】
第1の発明のロータ端部材では、突起部(95)が回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成されているため、ロータが回転しても、該ロータ周囲の流体の攪拌抵抗の増加が抑えられる。このため、モータの出力損失が増加しない。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記本体部(94)には、径方向外方に向かって複数の環状の突起部(95a,95b,95c)が形成される一方、上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に形成された突起部(95c)の高さが径方向の内方に形成された
突起部(95b)の高さよりも低くなるように形成されているものである。
【0015】
上記第2の発明では、本体部(94)には、径方向の外方に向かって複数の環状の突起部(95a,95b,95c)が形成されている。そして、径方向の外方の突起部(95c)の高さは、その内側(径方向の内方)に形成された突起部(95b)の高さよりも低く形成されている。つまり、各突起部(95a,95b,95c)の高さは、径方向外方に向かって低くなるように形成されている。
【0016】
第2の発明のように突起部(95a,95b,95c)を形成すると、径方向の外方において突起部(95c)の高さが低いため、外側ほど大きい遠心力の上昇が抑制される。このため、突起部(95a,95b,95c)が遠心力で変形や破損し難くなる。
【0017】
また、第
1の発明は、上記
構成に加え、上記本体部(94)には、径方向外方に向かって複数の環状の突起部(95a,95b,95c)が形成される一方、上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に形成された突起部(95c)の厚みが径方向の内方に形成された突起部(95b)の厚みよりも厚くなるように形成されているものである。
【0018】
上記第
1の発明では、本体部(94)には、径方向の外方に向かって複数の環状の突起部(95a,95b,95c)が形成されている。そして、径方向外方の突起部(95c)の厚みは、その内側(径方向の内方)に形成された突起部(95b)の厚みよりも厚く形成されている。つまり、各突起部(95a,95b,95c)の厚みは、径方向外方に向かって厚くなるように形成されている。
【0019】
第
1の発明のように突起部(95a,95b,95c)を形成すると、遠心力が大きくなる径方向の外方において突起部(95c)が厚く形成されているため、遠心力に耐えることができる。このため、突起部(95a,95b,95c)が遠心力で変形や破損し難くなる。
【0020】
第
3の発明は、平板状の本体部(94)を有する端部材(93)がロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の少なくとも一端面に配置されて形成されるロータ(90)と、該ロータ(90)の回転軸(64)の軸方向に延びる外側部を囲んで配置されるステータ(62)とを備え、上記端部材(93)の本体部(94)には、
それぞれ上記回転軸(64)の軸方向に突出し、且つ該回転軸(64)の回転中心と同心に形成されて上記ロータコア(91)の熱を放熱する
複数の環状の突起部
(95a,95b,95c)が
、上記回転軸(64)の周囲から径方向外方に向かって順に形成され
、上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に形成された突起部(95c)の厚みが径方向の内方に形成された突起部(95b)の厚みよりも厚くなるように形成されている。
【0021】
上記第
3の発明では、平板状の本体部(94)を有する端部材(93)がロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の少なくとも一端面に配置されてロータ(90)が形成されている。端部材(93)の本体部(94)には、回転軸(64)の中心と同心に形成され、且つ回転軸(64)方向に突出する環状の突起部(95)を備えている。そして、ステータ(62)は、ロータ(90)の回転軸(64)の軸方向に沿って延びる外側部を囲んで配置されている。
【0022】
ロータ(90)の熱は、ロータコア(91)および本体部(94)を介して突起部(95)に伝わり、該突起部(95)が、その周囲の流体に放熱することでロータ(90)が冷却される。
【0023】
ここで、モータの駆動によってロータが回転すると、ロータコアに取り付けられた端部材によって、ロータの周囲の流体の攪拌抵抗が大きくなってしまう。ところが、第
3の発明のモータでは、ロータ(90)の端部材(93)に突起部(95)が回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成されているため、ロータ(90)が回転しても、該ロータ(90)の周囲の流体の攪拌抵抗の増加が抑えられる。このため、モータの出力損失が増加しない。
【0024】
第
4の発明は、密閉容器(41)と、該密閉容器(41)内に配置された圧縮機構部(40a,40b)と、上記密閉容器(41)内に配置されると共に、上記圧縮機構部(40a,40b)を駆動するモータ(61)とを備えた圧縮機であって、上記モータ(61)は
、平板状の本体部(94)を有する端部材(93)がロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の少なくとも一端面に配置されて形成されるロータ(90)と、該ロータ(90)の回転軸(64)の軸方向に延びる外側部を囲んで配置されるステータ(62)とを備え、上記本体部(94)には、
それぞれ上記回転軸(64)の軸方向に突出し、且つ該回転軸(64)の回転中心と同心に形成されて上記ロータコア(91)の熱を放熱する
複数の環状の突起部
(95a,95b,95c)が
、上記回転軸(64)の周囲から径方向外方に向かって順に形成され
、上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に形成された突起部(95c)の厚みが径方向の内方に形成された突起部(95b)の厚みよりも厚くなるように形成されているものである。
【0025】
上記第
4の発明では、密閉容器(41)内に圧縮機構部(40a,40b)と該圧縮機構部(40a,40b)を駆動するモータ(61)とが配置されている。モータ(61)は、ステータ(62)とロータ(90)とで構成されている。ロータ(90)は、平板状の本体部(94)を有する端部材(93)がロータコア(91)の回転軸(64)の軸方向の少なくとも一端面に配置されて形成されている。この端部材(93)の本体部(94)には、回転軸(64)の中心と同心に形成され、且つ回転軸(64)の軸方向に突出する環状の突起部(95)が設けられている。また、ステータ(62)は、ロータ(90)の回転軸(64)の軸方向に沿って延びる外側部を囲んで配置されている。
【0026】
ロータ(90)の熱は、ロータコア(91)および本体部(94)を介して突起部(95)に伝わり、該突起部(95)が、その周囲の流体に放熱することでロータコア(91)が冷却される。
【0027】
ここで、モータの駆動によってロータが回転すると、ロータコアに取り付けられた端部材によって、ロータの周囲の流体の攪拌抵抗が大きくなってしまう。ところが、第
4の発明の圧縮機では、ロータ(90)の端部材(93)に突起部(95)が回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成されているため、ロータ(90)が回転しても、該ロータ(90)の周囲の流体の攪拌抵抗の増加が抑えられる。このため、モータ(61)の出力損失が増加しない。
【発明の効果】
【0028】
上記第1の発明によれば、本体部(94)に環状の突起部(95)を設けたため、ロータの端部材の表面積を増加させることができる。これにより、簡易的な構成でもってロータコア(91)への冷却性能を向上させることができる。一方、突起部(95)の形状を回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成したため、回転するロータ(90)の周囲の流体の攪拌抵抗を抑えることができる。この結果、モータの出力損失を大きくすることなく、且つ簡単な構成でもってロータを充分に冷却することができる。
【0029】
上記第2の発明によれば、複数の突起部(95)を径方向外方に向かって低くなるように形成したため、径方向外方の突起部(95c)へ加わる遠心力の上昇を抑えることができる。これにより、ロータの端部材が回転するロータコア(91)に取り付けられたときに、その回転の遠心力によって突起部(95c)が変形・破損するのを確実に防止することができる。
【0030】
上記第
1の発明によれば、複数の突起部(95)を径方向外方に向かって厚くなるように形成したため、径方向外方の突起部(95c)の強度を高めることができる。これにより、ロータの端部材が回転するロータコア(91)に取り付けられたときに、その回転の遠心力によって突起部(95c)が変形・破損するのを確実に防止することができる。
【0031】
上記第
3の発明によれば、本体部(94)に環状の突起部(95)を設けたため、ロータの端部材の表面積を増加させることができる。これにより、簡易的な構成でもってロータコア(91)への冷却性能を向上させることができる。一方、突起部(95)の形状を回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成したため、回転するロータ(90)の周囲の流体の攪拌抵抗を抑えることができる。この結果、モータの出力損失を大きくすることなく、且つ簡単な構成でもってロータ(90)を充分に冷却することができる。
【0032】
上記第
4の発明によれば、本体部(94)に環状の突起部(95)を設けたため、ロータ(90)の端部材の表面積を増加させることができる。これにより、簡易的な構成でもってロータコア(91)への冷却性能を向上させることができる。一方、突起部(95)の形状を回転軸(64)の回転中心と同心の環状に形成したため、密閉容器(41)内で回転するロータ(90)の攪拌抵抗となるのを防ぐことができる。この結果、モータ(61)の出力損失を大きくすることなく、且つ簡単な構成でもって充分にロータ(90)を冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
図1に示すように、空気調和装置(10)は、室外機(20)と3台の室内機(30,30,30)とを備え、室内の空調を行っている。なお、室内機(30)の台数は、単なる例示である。
【0036】
上記空気調和装置(10)は、冷媒が充填されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)は、室外機(20)に収容される室外回路(12)と、各室内機(30)に収容される室内回路(13,13,13)とを備えている。これらの室内回路(13)は、液側連絡配管(14)及びガス側連絡配管(15)によって室外回路(12)に接続されている。各室内回路(13)は、室外回路(12)に対して互いに並列に接続されている。
【0037】
〈室外回路の構成〉
室外回路(12)には、圧縮機(40)、室外熱交換器(21)、室外膨張弁(22)、及び四路切換弁(23)が設けられている。
【0038】
圧縮機(40)は、いわゆるターボ式(遠心式)の圧縮機を構成している。圧縮機(40)は、吐出側が四路切換弁(23)の第2ポート(P2)に接続され、吸入側が四路切換弁(23)の第1ポート(P1)に接続されている。圧縮機(40)についての詳細は後述する。
【0039】
室外熱交換器(21)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室外熱交換器(21)の近傍には、室外ファン(24)が設けられている。室外熱交換器(21)では、室外空気と冷媒との間で熱交換が行われる。室外熱交換器(21)は、一端が四路切換弁(23)の第3ポート(P3)に接続され、他端が室外膨張弁(22)に接続されている。また、四路切換弁(23)の第4ポート(P4)は、ガス側連絡配管(15)に接続されている。
【0040】
室外膨張弁(22)は、室外熱交換器(21)と室外回路(12)の液側端との間に設けられている。室外膨張弁(22)は、開度可変の電子膨張弁として構成されている。
【0041】
四路切換弁(23)は、第1ポート(P1)と第4ポート(P4)とが連通して第2ポート(P2)と第3ポート(P3)とが連通する第1状態(
図1に実線で示す状態)と、第1ポート(P1)と第3ポート(P3)とが連通して第2ポート(P2)と第4ポート(P4)とが連通する第2状態(
図1に破線で示す状態)とが切り換え自在に構成されている。
【0042】
〈室内回路の構成〉
各室内回路(13,13,13)には、そのガス側端から液側端へ向かって順に、室内熱交換器(31,31,31)と、室内膨張弁(32,32,32)とが設けられている。
【0043】
室内熱交換器(31)は、クロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器として構成されている。室内熱交換器(31)の近傍には、室内ファン(33)が設けられている。室内熱交換器(31)では、室内空気と冷媒との間で熱交換が行われる。また、室内膨張弁(32)は、開度可変の電子膨張弁として構成されている。
【0044】
〈圧縮機の構成〉
図2に示す圧縮機(40)は、各摺動部の潤滑油を必要としない、いわゆるオイルレス圧縮機を構成している。また、圧縮機(40)は、冷媒を2段階に圧縮して昇圧する、多段式の圧縮機を構成している。更に、圧縮機(40)は、その内部が低圧の冷媒で満たされる、いわゆる低圧ドーム式の圧縮機を構成している。
【0045】
圧縮機(40)は、密閉容器状の横長のケーシング(41)を備えている。尚、ケーシング(41)は、本発明に係る密閉容器を構成している。ケーシング(41)は、略円筒状の本体ケーシング(42)と、該本体ケーシング(42)の軸方向の一端部(
図2における左側の端部)に形成される第1側板(43)と、上記本体ケーシング(42)の軸方向の他端部(
図2における右側の端部)に形成される第2側板(44)とで構成されている。
【0046】
本体ケーシング(42)は、右側の端部が開放し、左側の端部が閉塞部(46)によって覆われる有底筒状に形成されている。閉塞部(46)の軸心側には、第2側板(44)に向かって膨出する第1軸受け部(51)が形成されている。また、本体ケーシング(42)の外周面には、その下部に2つの脚部(45,45)が取り付けられている。脚部(45,45)は、ケーシング(41)を下側から支持している。
【0047】
本体ケーシング(42)の右側の開放部には、第1隔壁部材(47)と第2隔壁部材(48)とが隣り合うように内嵌している。第1隔壁部材(47)の軸心側には、第1側板(43)に向かって膨出する第2軸受け部(52)が形成されている。また、第1隔壁部材(47)の右側面の中央には、第1側板(43)に向かって陥没する凹部(49)が形成されている。第2隔壁部材(48)は、凹部(49)を塞ぐように第1隔壁部材(47)と当接している。
【0048】
圧縮機(40)では、本体ケーシング(42)と第1隔壁部材(47)との間にモータ室(60)が区画され、第1側板(43)と本体ケーシング(42)との間に第1インペラ室(70)が形成され、第2側板(44)と第2隔壁部材(48)との間に第2インペラ室(80)が形成されている。
【0049】
モータ室(60)には、電動機としてのモータ(61)が収容されている。モータ(61)は、本体ケーシング(42)の内周壁面に固定されるステータ(62)と、ステータ(62)の内側に配置されるロータ(90)とを有している。つまり、ステータ(62)は、ロータ(90)の外周面を覆うようにして本体ケーシング(42)内に配置されている。ロータ(90)の中心部には、本体ケーシング(42)の軸方向に延びる駆動軸(64)が固定されている。駆動軸(64)の一端部は、上記閉塞部(46)を貫通しており、上記第1軸受け部(51)に枢支されている。駆動軸(64)の他端部は、上記第1隔壁部材(47)を貫通しており、上記第2軸受け部(52)に枢支されている。尚、ロータ(90)については後述する。
【0050】
第1インペラ室(70)及び第2インペラ室(80)は、本体ケーシング(42)側に向かうに連れて断面が拡大するような略円錐台状に形成されている。第1インペラ室(70)には、第1インペラ(71)が収容され、第2インペラ室(80)には、第2インペラ(81)が収容されている。各インペラ(71,81)には、その軸周りに複数の三角板状の羽(71a,81a)が放射状に形成されている。各インペラ(71,81)は、駆動軸(64)の端部とそれぞれ連結しており、各インペラ室(70,80)で回転自在となっている。以上のような構成の各インペラ(71,81)は、外周側に向かって半径方向の流れを生じさせる、ラジアル型の羽根車を構成している。
【0051】
第1インペラ室(70)の外周側には、第1側板(43)と本体ケーシング(42)との間に第1渦巻室(72)が形成され、第2インペラ室(80)の外周側には、第2側板(44)と第2隔壁部材(48)との間に第2渦巻室(82)が形成されている。また、第1インペラ室(70)と第1渦巻室(72)との間には、両室(71,72)を連通させる第1ディフューザ(73)が形成され、第2インペラ室(80)と第2渦巻室(82)との間には、両室(81,82)を連通させる第2ディフューザ(83)が形成されている。各ディフューザ(73,83)は、各インペラ(71,81)の遠心力によって外周側に放出される冷媒の動圧を、静圧に変換するための流路を構成している。各渦巻室(72,82)は、昇圧された冷媒を捕集してケーシング(41)の外部へ導くための空間を構成している。
【0052】
尚、第1インペラ室(70)、第1インペラ(71)、第1渦巻室(72)、第1ディフューザ(73)および第1流入口(74)は、第1圧縮機構部(40a)を構成している。また、第2インペラ室(80)、第2インペラ(81)、第2渦巻室(82)、第2ディフューザ(83)および第2流入口(84)は、第2圧縮機構部(40b)を構成している。これらの第1圧縮機構部(40a)および第2圧縮機構部(40b)は、本発明に係る圧縮機構部を構成している。
【0053】
圧縮機(40)には、吸入管(54)と第1中継管(55)と第2中継管(56)と吐出管(57)とが接続されている。吸入管(54)は、その流入端が上記冷媒回路(11)の低圧ラインと繋がり、その流出端が本体ケーシング(42)を貫通してモータ室(60)に臨んでいる。つまり、モータ室(60)は、冷媒回路(11)の低圧冷媒の雰囲気となっている。第1中継管(55)は、その流入端が本体ケーシング(42)を貫通してモータ室(60)に臨んでおり、その流出端が第1側板(43)の頂部を貫通している。第1側板(43)の軸心部には、第1流入口(74)が形成されており、この第1流入口(74)を介して第1中継管(55)と第1インペラ室(70)とが連通している。また、上記吸入管(54)の流出端と、第1中継管(55)の流入端とは、モータ(61)を挟むような配置となっている。つまり、吸入管(54)から流出した低圧冷媒は、モータ室(60)を流通してモータ(61)を通過してから第1中継管(55)へ流入する。これにより、モータ室(60)では、低圧冷媒によってモータ(61)が冷却される。
【0054】
上記第2中継管(56)は、その流入端が第1渦巻室(72)と連通しており、その流出端が第2側板(44)の頂部を貫通している。第2側板(44)の軸心部には、第2流入口(84)が形成されており、この第2流入口(84)を介して第2中継管(56)と第2インペラ室(80)とが連通している。吐出管(57)は、その流入端が第2渦巻室(82)と連通しており、その流出端が上記冷媒回路(11)の高圧ラインと繋がっている。
【0055】
上記駆動軸(64)の両端部の外周面には、それぞれヘリングボーン溝(65,65)が形成されている。ヘリングボーン溝(65,65)は、上述した各軸受け部(51,52)に対応する位置に形成されている。ヘリングボーン溝(65,65)は、駆動軸(64)が回転することにより、軸受け部(51,52)と駆動軸(64)との間の隙間に気体圧力による気体膜を形成する。即ち、回転状態の駆動軸(64)と軸受け部(51,52)との間には、駆動軸(64)と軸受け部(51,52)とを非接触状態で支持する動圧気体軸受けとなる、ジャーナル気体軸受け(66)が形成される。
【0056】
また、駆動軸(64)の両端部の外周面には、それぞれラビリンスシール(67,67)も形成されている。ラビリンスシール(67,67)は、ヘリングボーン溝(65,65)よりも駆動軸(64)の端部寄りに形成されている。ラビリンスシール(67,67)は、円形状の複数の溝が軸方向に配列されて構成されている。各ラビリンスシール(67,67)は、インペラ室(70,80)からモータ室(60)への冷媒の漏れを防止するための非接触シールを構成している。
【0057】
また、上記第1隔壁部材(47)の凹部(49)内には、スラスト軸受け板(68)が収容されている。スラスト軸受け板(68)は、駆動軸(64)の端部と一体的に連結されている。スラスト軸受け板(68)の両端面には、螺旋状の溝(図示省略)がそれぞれ形成されている。この螺旋状の溝は、駆動軸(64)が回転することにより、スラスト軸受け板(88)と隔壁部材(47,48)との間の隙間に気体圧力による気体膜を形成する。即ち、回転状態のスラスト軸受け板(68)と隔壁部材(47,48)との間には、駆動軸(64)をスラスト方向に支持する、スラスト気体軸受けが形成される。
【0058】
上記ロータ(90)は、
図2および
図3に示すように、ロータコア(91)と、該ロータコア(91)の軸方向の両端面に取り付けられる端板(93,93)とを備えている。
【0059】
上記ロータコア(91)は、略円筒状に形成され、その軸中心に駆動軸(64)が挿通される軸孔部(92)が形成されている。そして、ロータコア(91)は、駆動軸(64)が軸孔部(92)に挿通されて該駆動軸(64)に取り付けられている。ロータコア(91)は、駆動軸(64)と一体になって回転するように構成されている。
【0060】
上記端板(93)は、上記ロータ(90)の軸方向の両端を構成する部材であって、本発明に係る端部材を構成している。端板(93)は、例えばジュラルミンなどのアルミニウム合金で構成され、端板本体(94)と、該端板本体(94)の表面に形成される突起部(95)とを有して構成されている。尚、端板(93)を構成する材料は、上述したアルミニウム合金に限られず、高強度且つ軽量な金属材料であればよい。端板(93)は、駆動軸(64)に対して圧入や焼き嵌めによって取り付けられる。
【0061】
上記端板本体(94)は、ロータコア(91)に埋め込まれる磁石をロータコア(91)の軸方向の両端面から抑えるものであって、本発明に係る本体部を構成している。端板本体(94)は、略円板状に形成され、その軸中心に駆動軸(64)が挿通される軸孔部(96)が形成されている。端板本体(94)は、ロータコア(91)の軸方向の両端面にそれぞれ配置されている。
【0062】
上記突起部(95)は、端板本体(94)の表面に形成されてロータコア(91)の熱を放熱する放熱部材である。突起部(95)は、駆動軸(64)の周囲から径方向外方に向かって順に形成される第1〜第3突起部(95a,95b,95c)で構成されている。第1〜第3突起部(95a,95b,95c)は、端板本体(94)の表面から駆動軸(64)の軸方向に突出して形成されている。第1〜第3突起部(95a,95b,95c)は、すべて駆動軸(64)の回転中心と同心の環状に形成されている。そして、第1〜第3突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に向かって大径となるように形成されている。つまり、径方向の最も内側に形成される第1突起部(95a)が最も小径に形成され、径方向の最も外側に形成される第3突起部(95c)が最も大径に形成され、径方向の中間位置に形成される第2突起部(95b)がそれらの間の径に形成されている。
【0063】
−空気調和装置の運転動作−
空気調和装置(10)の運転動作について
図1を参照しながら説明する。この空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とが実行可能になっており、四路切換弁(23)によって冷房運転と暖房運転との切り換えが行われる。
【0064】
〈冷房運転〉
冷房運転時には、四路切換弁(23)が第1状態に設定される。この状態で、圧縮機(40)の運転が行われると、圧縮機(40)から吐出された高圧冷媒が、室外熱交換器(21)において室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(21)で凝縮した冷媒は、各室内回路(13)へ分配される。各室内回路(13)では、流入した冷媒が、室内膨張弁(32)で減圧された後に、室内熱交換器(31)において室内空気から吸熱して蒸発する。一方、室内空気は冷却されて室内へ供給される。
【0065】
各室内回路(13)で蒸発した冷媒は、他の室内回路(13)で蒸発した冷媒と合流して、室外回路(12)へ戻ってくる。室外回路(12)では、各室内回路(13)から戻ってきた冷媒が、圧縮機(40)で再び圧縮されて吐出される。
【0066】
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四路切換弁(23)が第2状態に設定される。この状態で、圧縮機(40)の運転が行われると、圧縮機(40)から吐出された高圧冷媒が、各室内回路(13)へ分配される。各室内回路(13)では、流入した冷媒が室内熱交換器(31)において室内空気へ放熱して凝縮する。一方、室内空気は加熱されて室内へ供給される。室内熱交換器(31)で凝縮した冷媒は、室外回路(12)で合流する。
【0067】
室外回路(12)で合流した冷媒は、室外膨張弁(22)で減圧された後、室外熱交換器(21)において室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(21)で蒸発した冷媒は、圧縮機(40)で再び圧縮されて吐出される。
【0068】
−圧縮機の運転動作−
次に、圧縮機(40)の運転動作について
図2を参照しながら詳細に説明する。圧縮機(40)では、冷媒回路(11)の低圧冷媒が第1インペラ室(70)で中間圧にまで昇圧され、昇圧後の中間圧冷媒が第2インペラ室(80)で高圧にまで昇圧される。即ち、圧縮機(40)では、いわゆる2段圧縮が行われる。
【0069】
モータ(61)が通電すると駆動軸(64)が高速回転(例えば100,000rpm)で駆動される。駆動軸(64)が回転すると、第1軸受け部(51)と駆動軸(64)との間や、第2軸受け部(52)と駆動軸(64)との間にジャーナル気体軸受け(66)が形成される。これにより、駆動軸(64)は各軸受け部(51,52)と非接触状態でラジアル方向に支持される。また、スラスト軸受け板(68)と第1隔壁部材(47)や、スラスト軸受け板(68)と第2隔壁部材(48)との間には、スラスト気体軸受けが形成される。これにより、駆動軸(64)は、スラスト方向に支持される。以上のように、圧縮機(40)の運転時には、駆動軸(64)のラジアル/スラスト軸受けに気体膜が形成されるので、これらの軸受けを潤滑するための潤滑油は不要となり、いわゆるオイルレスでの圧縮動作が可能となる。
【0070】
また、駆動軸(64)が回転すると、この駆動軸(64)と連結する第1インペラ(71)及び第2インペラ(81)が回転する。両インペラ(71,81)が回転すると、冷媒回路(11)の低圧冷媒が、吸入管(54)を通じてモータ室(60)へ導入される。モータ室(60)に流入した冷媒は、モータ(61)を軸方向に通過した後に第1中継管(55)へ流出する。この際、モータ(61)が低圧冷媒によって冷却され、モータ(61)の発熱が抑制される。
【0071】
第1中継管(55)を流れる冷媒は、第1流入口(74)を通じて第1インペラ室(70)の軸心側へ吸入される。第1インペラ室(70)では、その軸心側の冷媒が複数の羽(71a)に沿うようにして径方向外側の流れとなる。この際、冷媒には、第1インペラ(71)の遠心力が付与される。第1インペラ室(70)の外周側へ送られた冷媒は、第1ディフューザ(73)へ流入する。第1ディフューザ(73)では、冷媒が減速して動圧から静圧となり、昇圧された状態で第1渦巻室(72)へ流入し、その後に第2中継管(56)へ流出する。
【0072】
第2中継管(56)を流れる冷媒は、第2流入口(84)を通じて第2インペラ室(80)の軸心側へ吸入される。第2インペラ室(80)では、その軸心側の冷媒が複数の羽(81a)に沿うようにして径方向外側の流れとなる。この際、冷媒には、第2インペラ(81)の遠心力が付与される。第2インペラ室(80)の外周側へ送られた冷媒は、第2ディフューザ(83)へ流入する。第2ディフューザ(83)では、冷媒が減速して動圧から静圧となり、昇圧された状態で第2渦巻室(82)へ流入し、その後に吐出管(57)から冷媒回路(11)吐出される。
【0073】
モータ(61)を駆動させると、ロータ(90)と共に駆動軸(64)が回転する。このとき、ロータコア(91)はコイルの通電抵抗などによって発熱する。ロータコア(91)の熱は、端板(93)の端板本体(94)に伝わり、突起部(95)からモータ室(60)内の低圧冷媒に放熱される。本実施形態では、ロータ(90)は高速回転するため、ロータ(90)の周囲の冷媒との間で相対速度が高くなるため、冷却性能がさらに向上する。
【0074】
一方、突起部(95)が駆動軸(64)の回転中心と同心の環状に形成されているため、ロータ(90)が回転してもモータ室(60)の低圧冷媒の攪拌抵抗の増加が抑えられる。このため、突起部(95)を起因とするモータ(61)の出力損失の増加が抑えられる。本実施形態では、モータ(61)の出力損失は、ロータ(90)の回転に対する流体(モータ室(60)の低圧冷媒)の抵抗による損失(ロス)をいう。
【0075】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、端板本体(94)に環状の突起部(95)を設けたため、ロータの端部材の表面積を増加させることができる。このため、簡易的な構成でもってロータコア(91)への冷却性能を向上させることができる。これにより、圧縮機(40)のコストを低減することができる。
【0076】
一方、突起部(95)の形状を駆動軸(64)の回転中心と同心の環状に形成したため、高速回転するロータ(90)の周囲の冷媒の攪拌抵抗の増加を抑えることができる。
【0077】
これら結果、モータ(61)の出力損失を抑えつつ、且つ簡単な構成でもって充分にロータ(90)を冷却することができる。
【0078】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0079】
上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に向かって突起部(95)の厚み(径方向の幅)を漸次、厚くするように形成するようにしてもよい。具体的には、第3突起部(95c)の厚みを最も厚く形成し、第1突起部(95a)の厚みを最も薄く形成する。そして、第2突起部(95b)の厚みは、第1突起部(95a)よりも厚く、且つ第3突起部(95c)よりも薄く形成する。こうすることで、径方向の外方に形成された突起部(95c)の強度が増す。
【0080】
径方向の外方の突起部(95c)は厚みが厚く形成されているため、外側にいくほど大きくなる遠心力に耐えることができる。これにより、ロータ(63)の端板(93)を回転するロータコア(91)に取り付けた際、その回転の遠心力によって第3突起部(95c)が変形・破損するのを抑えることができる。
【0081】
また、上記複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に向かって突起部(95)の高さを漸次、低くするように形成するようにしてもよい。この場合、第3突起部(95c)の高さが最も低く形成され、第1突起部(95a)の高さが最も高く形成される。こうすることで、最も遠心力が加わる径方向の外方で該遠心力の上昇を抑えることができる。これにより、ロータ(63)の端板(93)を回転するロータコア(91)に取り付けた際、その回転の遠心力によって第3突起部(95c)が変形・破損するのを抑えることができる。
【0082】
尚、複数の突起部(95a,95b,95c)は、径方向の外方に向かって突起部(95)の厚み(径方向の幅)を漸次、厚く且つ低くなるように形成してもよい。
【0083】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。